説明

除草土

〔目的〕 撥水性と成育抑制効果とを有する除草土を提供する。
〔構成〕 木材系有機物を粉砕又は造粒して粒度調整したものの表面をシリコンコーティングしてなる除草土。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、除草効果の高い除草土に関するものである。
【0002】
【従来の技術】山土の粒子の表面をシリコンコーティグした除草土は知られている。これは、粒子の表面をシリコンコーティングすると、水が粒子の中に浸透するのが妨げられるから(撥水性を発揮する)、土の粒子は、所謂、含水力を持たず、雑草の種子の成育に必要な水分を補給できないからであると言われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような撥水性は、この除草土を散布した層に限られるから、これよりも下の層に存在する種子の発芽及び成育を阻害するものではない。又、この除草土は比重が重く、輸送等も割高につく。本発明は、散布層に飛散して来た種子の発芽、成育は勿論のこと、それよりも下の層に存在している種子の発芽、成育をも抑制する軽くて取扱いの容易な除草土を現出したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】以上の課題の下、本発明は、木材系有機物を粉砕又は造粒して粒度調整したものの表面をシリコンコーティングしてなる除草土を提供する。ここで木材系有機物とは、木材チップ、おが屑、製紙スラッジ等の木質系有機物の他にバーク等の木皮系有機物も含む。
【0005】粒度調整するのは、取扱いを容易にするためと、後のシリコンコーティグを効果的に行うためであり、この目的の下における好ましい粒径は直径1〜10mm程度である。このため、木材チップ、製紙スラッジ、バーク等の比較的大きな塊状をしたものは粉砕し、おが屑等の小径のものは造粒することになる。
【0006】このように粒度調整したものにシリコンコーティングをするのであるが、その操作は、重量比で3〜5%のシリコン溶液(化学名シロキサン)の中に粒度調整した粒子を混入し、両者をかき混ぜることで達成される。これにより、粒子の表面がシリコンでコーティングされた状態になる。
【0007】
【作用】このような除草土は、雑草を生やしたくない個所に1〜10cmの厚さで散布しておけばよい。この除草土が雑草の成育を抑制するのは以下の二つの理由によると思われる。先ず、第一は、木材系有機物にはリグニン、セルロース、セミセルロース等が多く含まれており、これらが雑草(植物)に対して何らかの成育阻害作用を果たしているのではないかと思われる。勿論、リグニン等は難分解性であるから、雑草に対して栄養源となるものではない。
【0008】この場合において、除草土に含まれるリグニン等は溶解して土中に滲出するのではなく、植物がこれらの物質に接触することでその作用を受けるものと思われる。接触する個所は根、茎、葉いずれでもよく、要は、生体が物理的に接触することで、成育を阻害されるものと思われる。従って、除草土の下にある種子が発芽して成長しても、この除草土に触れると成育が阻害される。尚、隣接する育成植物に対しては、この抑制剤を直接接触させない限り、悪影響は及ぼさない。
【0009】第二の理由は、除草土の粒子がシリコンコーティングされていることで撥水性を発揮し、除草土の粒子は含水できないから、雑草に対してその成育に必要な水分を補給できないからであると思われる。従って、除草土に種子が飛散してもこれを発芽させない。この他、これらの木材系有機物は、いずれも比重が1以下であるから、軽くて取扱いが容易なのが特徴である。
【0010】
【実施例】
〔試験例1〕縦20cm、横30cm、深さ10cmの容器を三つ用意し、各々に適当な量の畑土を入れ、雑草の代わりとして二十日大根の種子を30粒播種して各容器を以下のa〜cの条件に設定した。
a.畑土の上に製紙スラッジを粉砕したものにシリコンコーティングをした除草土を3cmの厚みで散布した。
b.畑土の上に山土にシリコンコーティングをした除草土を3cmの厚みで散布した。
c.畑土の上に畑土を3cmの厚みで散布した。
【0011】a〜cの容器とも露天に晒して成育状態を観察した。その結果は、a〜cの容器の草とも発芽状態になるが、一週間も経過するとa、bの容器の草は枯死し、除草土の層を破ってまでは成育しない。これに対してcの容器の草はそのまま成育した。これは、上から水分が浸透するのをシリコンコーティングをした除草土が遮断し、その結果、草が枯死するからであると思われる。
【0012】〔試験例2〕次に、除草土の層を1cmにしたa、bの容器を用意し、各々に除草土の下に水分を供給しながら成育状態を観察した。その結果は、aの容器からは弱々しい草が5株、bの容器からは12株が除草土を破って成育してきた。上層に撥水層があるだけで草の成育が阻害されるが、製紙スラッジを粉砕したものにシリコンコーティングをしたものは雑草成育抑制効果もあると思われる。
【0013】
【発明の効果】以上、本発明による除草土によれば、木材系有機物に含まれるリグニン等の雑草成育抑制因子による雑草の成育阻害効果と、シリコンコーティングによる撥水性による種子の発芽抑制効果とが相まって高い除草効果を発揮する。そして、木材系有機物は比重が軽くて軽量であるから、取扱い、保管に便利である。又、これらは毒性のある化学薬品類を使用するものではないから、農薬被害等を起こす心配もない。更に、価格も安く製造できる。特に、製紙スラッジの場合は、従来、産業廃棄物として処分していたものであるから、これを使用することは資源の有効利用につながり、公害等の問題を解消することにもなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 木材系有機物を粉砕又は造粒して粒度調整したものの表面をシリコンコーティングしてなる除草土。

【公開番号】特開平6−296449
【公開日】平成6年(1994)10月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−110943
【出願日】平成5年(1993)4月13日
【出願人】(593053830)