説明

除草組成物

【課題】 現在、数多くの除草組成物が開発され使用されているが、防除の対象となる雑草は種類も多く、発生も長期にわたるため、より幅広い殺草スペクトラムを持ち、高活性で且つ持続効果の長い除草組成物の出現が望まれている。
【解決手段】1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレア又はその塩と、N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジン又はその塩との相乗有効量を含有する除草組成物並びにそれを用いた除草方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレア又はその塩(以下化合物Aと略す)と(B)N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジン又はその塩(以下化合物Bと略す)との相乗有効量を含有する除草組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農耕地や、非農耕地における望ましくない植物(以下、単に雑草という)を防除するために、数多くの除草組成物が検討されており、化合物Aと他の除草性化合物とを含有する除草組成物として、例えば特許文献1、2及び3に記載のものが知られている。また、非特許文献1には、化合物Aと他の公知除草剤との組み合わせが記載されている。しかしながら、非特許文献1は、相乗効果を有することは開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−235106
【特許文献2】特開平5−70313
【特許文献3】特開2001−39806
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Weed Technology,2008,22:354−358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、数多くの除草組成物が開発され使用されているが、防除の対象となる雑草は種類も多く、発生も長期にわたるため、より幅広い殺草スペクトルを持ち、高活性で且つ持続効果の長い除草組成物の出現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
化合物Aと化合物Bとの相乗有効量を組合せることにより、幅広い殺草スペクトルを持ち、高活性で且つ持続効果の長い除草組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、幅広い殺草スペクトルを持ち、高活性で且つ持続効果の長い除草組成物を提供することができる。また、その除草効果は、意外にも、化合物A、化合物Bの単独の除草効果の単なる相加的除草効果を超える相乗的除草効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
化合物Aの1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレアは、一般名:フラザスルフロンとして知られている。
【0009】
化合物BのN−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジンは、一般名:ペンディメタリンとして知られている。
【0010】
化合物A又は化合物Bに含まれる塩としては、農業上許容されるものであればいずれのものでもよいが、例えばナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩のような有機酸塩などが挙げられる。
【0011】
化合物Aと化合物Bの混合比率は、製剤形態、気象条件、防除対象雑草の種類や生育状況などに応じ適宜調整する必要があり一概に定めることはできないが、双方を組み合わせたときに、相乗効果が発現される各々の有効量(相乗有効量)となる混合比率とするのが望ましく、例えば重量比で1:10〜1:400、望ましくは1:15〜1:200である。
【0012】
化合物Aと化合物Bの施用量は、化合物Aと化合物Bの混合比率、製剤形態、気象条件、防除対象雑草の種類や生育状況などに応じ適宜調整する必要があり一概に定めることはできないが、相乗効果が発現される各々の有効量(相乗有効量)となる施用量とするのが望ましく、例えば、化合物Aは0.1〜100g/ha、望ましくは1〜60g/haであり、化合物Bは10〜5000g/ha、望ましくは25〜3000g/haである。
【0013】
本発明の相乗的除草効果を奏する除草組成物の施用、或いは化合物Aと化合物Bの相乗有効量となるような施用は、雑草への施用又は雑草が生育する場所への施用のいずれでもよい。また、雑草の発生前後いずれの時期に施用してもよい。そして、土壌処理、茎葉処理、灌水処理、湛水処理のような種々の散布形態を選択することができ、畑地、果樹園、水田等の農耕地、或いは畦畔、休耕田、運動場、ゴルフ場、空き地、森林、工場敷地、線路脇、道路脇のような非農耕地への適用が可能である。
【0014】
本発明の除草組成物は、一年生雑草や多年生雑草などの広範囲の雑草を防除することができる。具体的には、例えばヒメクグ、ハマスゲ、カヤツリグサのようなカヤツリグサ科雑草;イヌビエ、メヒシバ、エノコログサ、オヒシバ、カラスムギ、セイバンモロコシ、シバムギ、スズメノカタビラのようなイネ科雑草;オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリのようなゴマノハグサ科雑草;ウラジロチチコグサ、ハハコグサ、アレチノギク、ヒメムカシヨモギ、セイヨウタンポポ、オナモミのようなキク科雑草;シロツメクサ、コメツブウマゴヤシ、スズメノエンドウのようなマメ科雑草;オランダミミナグサ、ハコベのようなナデシコ科雑草;コニシキソウ、エノキグサのようなトウダイグサ科雑草;オオバコのようなオオバコ科雑草;カタバミのようなカタバミ科雑草;チドメグサのようなセリ科雑草;スミレのようなスミレ科雑草;ニワゼキショウのようなアヤメ科雑草;アメリカフウロのようなフウロソウ科雑草;ヒメオドリコソウ、ホトケノザのようなシソ科雑草;イチビ、アメリカキンゴジカのようなアオイ科雑草;マルバアサガオのようなヒルガオ科雑草;シロザのようなアカザ科雑草;スベリヒユのようなスベリヒユ科雑草;アオゲイトウのようなヒユ科雑草;イヌホオズキのようなナス科雑草;オオイヌタデ、サナエタデのようなタデ科雑草;タネツケバナのようなアブラナ科雑草;などが挙げられる。
【0015】
また、上記雑草が、芝生を植えた場所(例えば、ゴルフ場、グランド、庭、花壇など)やその周辺に生育している場合、本発明の除草組成物を施用することにより、芝生に薬害をもたらすことなく、雑草を防除することが可能である。この場合、芝生の種類としては、例えば、暖地型芝生が挙げられ、更に望ましくは、高麗芝やノシバなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明の目的に適合するかぎり、前記した化合物Aと化合物Bとを含有する除草組成物に対し、更に他の除草有効成分を含有することができる。これにより適用草種の範囲、薬剤処理の時期、除草活性等を、より好ましい方向へ改良できる場合がある。当該他の除草有効成分としては、例えば、以下に記した化合物(一般名)から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられるが、特に記載がない場合であってもこれら化合物に塩、アルキルエステル、水和物、異なる結晶形態、各種構造異性体等が存在する場合は、当然それらも含まれる。本発明の除草組成物に更に他の除草有効成分を含有させる場合、前記化合物Aと更に含有させる他の除草有効成分との混合比は、気象条件、土壌条件、薬剤の製剤形態、施用時期、施用方法などの相違により一概に規定できないが、化合物A1重量部に対し、更に含有させる他の除草有効成分は1種あたり0.001〜10,000重量部、望ましくは0.01〜1,000重量部である。また、更に含有させる他の除草有効成分の施用適量は総有効成分化合物量として0.1〜10,000g/ha、望ましくは0.2〜5,000g/ha、更に望ましくは10〜3,000g/haである。
【0017】
アシュラム、トリクロピル、2,4-D、MCPA、メコプロップ、フルポキサム、スルフェントラゾン、ハロスルフロン、ペノキシスラム、フルアジホップ、クロルチアミド、インダノファン、ジチオピル、オキサジクロメホンなどが挙げられる。
【0018】
本発明の除草組成物は、有効成分である化合物A又は化合物Bを、通常の農薬の製剤方法に準じて各種補助剤と配合し、粉剤、粒剤、顆粒水和剤、水和剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(水溶性フィルムで包装する形態を含む)、水性懸濁剤、油性懸濁剤、マイクロエマルジョン製剤、サスポエマルジョン製剤、水溶剤、乳剤、液剤、ペースト剤などの種々の形態に製剤調製し、施用することができるが、本発明の目的に適合するかぎり、通常の当該分野で用いられているあらゆる製剤形態にすることができる。
【0019】
製剤調製に際しては、化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し製剤調製しても、或はそれらを別々に製剤調製し施用時に混合してもよい。
【0020】
製剤に使用する補助剤としては、カオリナイト、セリサイト、珪藻土、消石灰、炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、カオリン、ベントナイト、クレー、炭酸ナトリウム、重曹、芒硝、ゼオライト、澱粉のような固形担体;水、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アルコールのような溶剤;脂肪酸塩、安息香酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルジグリコールエーテル硫酸塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルアリールリン酸塩、スチリルアリールリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩のような陰イオン系の界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセライド、脂肪酸アルコールポリグリコールエーテル、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、オキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルアリールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステルのような非イオン系の界面活性剤;オリーブ油、カポック油、ひまし油、シュロ油、椿油、ヤシ油、ごま油、トウモロコシ油、米ぬか油、落花生油、綿実油、大豆油、菜種油、亜麻仁油、きり油、液状パラフィンのような植物油や鉱物油などが挙げられる。これら補助剤の各成分は、本発明の目的から逸脱しないかぎり、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。また、前記した補助剤以外にも当該分野で知られたものの中から適宜選んで使用することもできる。例えば、増量剤、増粘剤、沈降防止剤、凍結防止剤、分散安定剤、薬害軽減剤、防黴剤、発泡剤、崩壊剤、結合剤など通常使用される各種補助剤も使用することができる。本発明の除草組成物における有効成分と各種補助剤との配合割合は重量%比で0.001:99.999〜95:5、望ましくは0.005:99.995〜90:10程度とすることができる。
【0021】
本発明の除草組成物の施用方法は、種々の方法を採用でき、施用場所、製剤形態、防除対象植物の種類や生育状況などの各種条件に応じて適宜使い分けることができるが、例えば以下のような方法が挙げられる。
1.化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し、製剤調製したものをそのまま施用する。
2.化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し、製剤調製したものを水等で所定濃度に希釈し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して施用する。
3.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製し、各々をそのまま施用する。
4.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製し、必要に応じて各々を水等で所定濃度に希釈し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して、各々施用する。
5.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製したものを水等で所定濃度に希釈する時に混合し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して施用する。
【0022】
次に、本発明の実施態様として、いくつかを例示する。但し、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
(1)化合物Aと化合物Bとの相乗有効量を含む除草組成物。
(2)化合物Aと化合物Bとの相乗有効量を含有する除草組成物を望ましくない植物又はそれらが生育する場所に施用し、望ましくない植物を防除又はその生育を抑制する方法。
(3)化合物Aと化合物Bとを望ましくない植物又はそれらが生育する場所に相乗有効量となるよう施用し、望ましくない植物を防除又はその生育を抑制する方法。
(4)施用が土壌処理である、前記(2)又は(3)の方法。
(5)施用する場所が、芝生の生育している場所である、前記(2)又は(3)の方法。
(6)施用する場所が、暖地型芝生の生育している場所である、前記(2)又は(3)の方法。
【実施例】
【0023】
本発明をより詳しく述べるために、以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。

















試験例1
1/1,000,000 haポットに畑作土壌をつめ、各種植物(スズメノカタビラ Poa annua L.、イヌビエ Echinochloa crus-galli (L.)、オオイヌタデ Polygonum lapathifolium、タネツケバナ Cardamine scutata)の種子を播種した。その1日後、所定量の除草組成物を2000 L/ha相当の水に希釈し、小型スプレーで土壌処理した。
薬剤処理後、43日目に各種植物の生育状態を肉眼で観察調査し、下記評価基準に従って評価した生育抑制率(%)〔実測値〕及びコルビー(Colby)の方法により算出した生育抑制率(%)〔計算値〕を第1表、第2表、第3表及び第4表に示す。
生育抑制率(%)=0(無処理区同等)〜100(完全枯殺)
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
【表4】

【0028】
試験例2
スズメノカタビラが発生する圃場にて当該雑草が発生する前に除草組成物の所定量を2000 L/haの水に希釈し、さらに展着剤(クサリノー、日本農薬(株)製)を0.02 %v/v加用して、小型スプレーで土壌表面処理した。処理49日後に生育状態を肉眼で観察調査し、前記試験例1と同様の評価基準に従って評価した結果を第5表に示す。
【0029】
【表5】

【0030】
試験例3
1/1,000,000haポットに畑作土壌をつめ、メヒシバ(Digitaria sanguinalis Scop.)の種子を播種した。メヒシバが4.0-5.0葉期に達したとき、シバゲンDF(商品名)の所定量と、ペンディメタリンを有効成分とするSC剤(商品名:ウェイアップフロアブル、BASFジャパン(株)製)の所定量を展着剤(商品名:クサリノー、日本農薬(株)製)を0.02vol%含む水(2000L/ha相当)で希釈して小型スプレーで茎葉処理した。
薬剤処理後、28日目にメヒシバの生育状態を肉眼で観察調査し、前記実施例1と同様に算出した生育抑制率(%)を第6表に示す。
【0031】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレア又はその塩と(B)N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジン又はその塩との相乗有効量を含有する除草組成物。
【請求項2】
(A)と(B)との混合比率が、重量比で1:10〜1:400である、請求項1に記載の除草組成物。
【請求項3】
(A)1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレア又はその塩と(B)N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジン又はその塩との相乗有効量を含有する除草組成物を望ましくない植物又はそれらが生育する場所に施用し、望ましくない植物を防除又はその生育を抑制する方法。
【請求項4】
(A)1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジルスルホニル)ウレア又はその塩と(B)N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジニトロ−3,4−キシリジン又はその塩とを望ましくない植物又はそれらが生育する場所に相乗有効量となるよう施用し、望ましくない植物を防除又はその生育を抑制する方法。
【請求項5】
(A)と(B)との施用比率が、重量比で1:10〜1:400である、請求項3又は4に記載の方法。

【公開番号】特開2012−17319(P2012−17319A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124360(P2011−124360)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】