説明

除雪支援システム及び除雪車

【課題】 無積雪時の実写映像に基づき障害物等の構造物と除雪車との位置関係を目視上及び座標計算上で正確に把握することによって、容易に且つ安全に除雪作業を行うことができる除雪支援システムの提供。
【解決手段】 無積雪時に撮像手段1aで同時取得した全方位の実写映像を、映像取得時の車両Aの絶対座標系における車両座標及び移動方向等と結び付けて記録する映像記録手段1と、車両座標、並びに所望の視線から導かれる移動方向等に対応する実写映像を前記映像記録手段1から読み出し表示フレームFに出力する映像出力手段4と、映像記録手段1から読み出した実写映像に含まれる特徴点の絶対座標を当該映像記録手段1から読み出し絶対座標系の三次元モデルを作成する構造物記録手段5を備える除雪支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無積雪時における画像を表示しつつ除雪を行うための除雪支援システム及びそれを用いた除雪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の除雪支援装置又はそのシステムとして、除雪車が走行する際、GPSの位置データにリンクした無積雪時における道路のCG画像を表示して除雪作業を支援する道路除雪ナビゲーションシステム(例えば下記特許文献1参照)が紹介されている。
【0003】
更に、除雪作業の精度を、電子地図上に障害物情報として関連付ける等、高精度の位置情報に依存する手法(例えば下記特許文献2参照)、溝、縁石、ガードレール等の構造物の位置情報に基いて記載したCG画像によるデジタルマップを併用する手法(例えば下記特許文献3参照)が紹介されている。
また、除雪の際、ブレードが集めた雪を交差点等の分岐箇所に積み上げることなく側方へ排出できるように、サイドシャッタの解放スイッチの選択、又はマーカーの検出によって閉鎖板を開閉する手法を採った手段もある(例えば下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−333325号公報
【特許文献2】特許第3852779号公報
【特許文献3】特開2008−224625号公報
【特許文献4】特開平5−287715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1乃至3のいずれに記載の手法にあっても、二次元の平面的なCG画像やデジタル情報がメインであって、不足する情報を実写映像で補完する形態を採っているので、実写映像に表示される構造物や除雪車等のサイズや距離を、実際のものとしてそのまま受け入れることが出来ず、障害物等の構造物との安全な距離を視角的に感得し辛いという問題がある。こう言った問題を解消する措置としても、従来、特許文献4に記載の様に、マーカー等を予め設置し車両との相対距離を導いてアラーム等を出力する措置を講ずるに止まっていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、無積雪時の実写映像に基づき障害物等の構造物と除雪車との位置関係を目視上及び座標計算上で正確に把握することによって、容易に且つ安全に除雪作業を行うことができる除雪支援システム及びそれを用いた除雪車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による除雪支援システムは、無積雪時に撮像手段で同時取得した全方位(前後左右360度に亘り撮像手段の視野を以って得た映像)の実写映像を、映像取得時の車両の絶対座標系における車両座標(全地球測位による三次元座標系の車両座標)、移動方向、及び撮像手段の姿勢情報と結び付けて記録する映像記録手段と、現時点の車両の絶対座標系における車両座標を取得する車両座標検出手段と、現時点の車両の絶対座標系における移動方向を導く移動方向検出手段、現時点の車両の絶対座標系における車両座標並びに所望の視線(通常は運転者の視線に設定すれば良いが、必要に応じて視線を適宜調整しても良い。)から導かれる移動方向及び姿勢情報に対応する実写映像(同じ車両座標において、所望の視線から複数の移動方向及び姿勢情報の組み合わせが導かれる場合があり、それらの組み合わせのいずれを選択しても同様の実写映像が導かれるはずである。)を前記映像記録手段から読み出し表示フレームに出力する映像出力手段と、当該映像出力手段が前記映像記録手段から読み出した実写映像に含まれる特徴点の絶対座標系における位置座標を導き保存する構造物記録手段を備えることを特徴とする。
【0008】
前記構造物記録手段としては、例えば、実写映像に含まれる構造物の特徴点に対する二つの任意の撮影点を結ぶ線分の長さを導くと共に、当該線分と前記各撮影点から各々当該特徴点を結ぶ線分との角度を導き、前方交会法における演算処理によって特徴点の全地球測位による三次元座標系の位置座標を導く座標算出手段を備えたもので良く、前記座標算出手段は、当該特徴点を含む取得フレームを撮影した時点の車両座標を撮影点とし、前記角度を、当該特徴点を撮影した時点の車両座標、移動方向、及び撮像手段の姿勢情報、並びに当該特徴点を含む取得フレームのピクセル座標から算出することができる。
当該座標算出手段で導いた位置座標に基づき特徴点を全地球測位による三次元座標系に配置する配置手段を備えたものであっても良い。
尚、前記ピクセル座標とは、取得フレーム又は表示フレームの表示面を共通の二次元直交座標系(以下相対座標系と記す)で表現した座標であって、取得フレーム又は表示フレームの中心又は四隅のいずれかを原点とするものである(以下相対座標と記す)。
【0009】
前記映像出力手段は、車両座標又は指定座標を含む一定の領域の地図映像を出力する映像編集手段を備える構成としても良く、その際、当該映像編集手段は、取得した実写映像の複数の取得フレームに含まれる平面映像を連結する結合手段を備える構成とすることができる。
【0010】
前記構造物記録手段は、車両座標又は指定座標を含む一定の領域についての地図画像を出力する画像編集手段を備える構成としても良く、その際、当該画像編集手段は、取得した実写映像の複数の取得フレームに含まれる特徴点を絶対座標系における二次元の水平面(X−Y平面)に配置する配置手段を備える構成とすることができる。
【0011】
例えば、当該特徴点の絶対座標系における位置座標と属性を結び付けて記録する等、前記特徴点に属性を与える定義手段を備える構成としても良い。特に、監視対象となる特徴点には、監視対象と特定する属性(監視属性)を与えることもでき、更に、車両の属性を持つ特徴点と監視属性を有する特徴点との距離を各々の絶対座標系における位置座標より導く距離算出手段と、車両の属性を持つ特徴点と監視属性を有する特徴点との距離が所定の距離以内である場合にアラーム出力を発する警報手段を備える構成とすることもできる。
【0012】
上記アラーム出力の出し方には、現時点の車両座標を基準として、例えば、実際の路上における排雪禁止区間の始点に固定したICタグ及び終点に固定したICタグに至る距離又は各ICタグへの方向を導く距離算出手段と、当該距離の増減又は方向の変化を検出し排雪禁止区間でアラーム出力を発する警報手段を備える構成とすることもできる。
【0013】
上記アラーム出力を活用するものであって、上記課題を解決するためになされた本発明による除雪車は、前記警報手段を持つ除雪支援システムと、路上の雪を掻き集める除雪板と、当該除雪板の対雪面に沿って側方へ流れる雪の排雪を止める開閉可能な閉鎖板と、前記警報手段が発するアラーム出力を受けて閉鎖板を開閉する開閉制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く本発明による除雪支援システム及び除雪車によれば、道路沿道の景観や標識、看板などの道路施設が切れ目なく確認でき、除雪車等の運用車両をその表示フレーム内に介在させれば、道路施設と除雪車との位置関係も正確に把握することができる。
これによって、障害物等の構造物のサイズを運転者が判断するまでもなく、表示された実写映像を信頼して安全に除雪作業を行うことができる。
【0015】
映像編集手段や画像編集手段を設けると共に、その視線を適宜変更できる構造とすれば、撮影点の座標と視線を変化させることによって、撮影時の走行位置からは見えない領域であっても、切れ目ない画像で確認することができる他、それらを平面映像又は平面画像として出力すれば、地図として走行位置と道路沿道の景観等を関連付けて除雪計画を練ることが容易となる。
【0016】
また、実写映像に含まれる特徴点の絶対座標系における位置座標を導き保存する構造物記録手段を備えることから、各種制御の用に供される特徴点と実写映像とが相互に結び付けられ、実写映像に映る構造物等のどの部分に注意を払うべきなのかを容易に把握することができる。
【0017】
実写映像の複数の特徴点の位置座標に構造物等の属性を与え、相互に結び付けて保存する定義手段を備えることによって、除雪支援システムにおける構造物認識の正確さが高まり、属性毎に識別可能なパターンを実写映像に割り付ける手段を備えれば、ディスプレイ装置等に走行位置の道路状況を表示した際や地図として出力した際において、各構造物等の境界、属性の視認性を高めることができる。
【0018】
加えて、前記定義手段において、構造物マップの特徴点に障害物又は交差点(道路や出入り口を含む)の属性を与え、又は実際の道路にICタグを固定すると共に、除雪車の位置座標から所定の距離以内に障害物の属性を持つ特徴点又はICタグが存在する場合にアラーム出力を発する警報手段を備えることによって、作業者への注意喚起にも寄与することとなる。
【0019】
更に、前記警報手段から発せられるアラーム出力を受けて閉鎖板を閉じる閉鎖板制御手段を備えれば、除雪した雪が所構わず放置されることによる通行障害を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による除雪支援システムでの処理の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明による除雪支援システムの一例を示すブロック図である。
【図3】本発明による除雪支援システムの(A):映像出力手段の処理、(B):構造物記録手段おける座標算出手段の処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明による除雪支援システムでの位置座標算出手段に要する(A):姿勢情報を導出するイメージ、(B):前方交会法による処理のイメージの一例を示す説明図である。の一例を示す説明図である。
【図5】本発明による除雪支援システムの(A):撮影走行に用いる設備、(B): 除雪板及び閉鎖板の配置状態の一例を示す説明図である。
【図6】本発明による除雪車での閉鎖板の開閉状態の一例を示す説明図である。
【図7】本発明による除雪支援システムの表示フレームの出力態様の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による除雪支援システム及び除雪車の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1に示す除雪支援システムは、
除雪車たる車両Aの全地球測位による三次元座標系(以下絶対座標系と記す)の車両座標及び検出時の時刻を取得する車両座標検出手段2と、
現時点の車両Aの絶対座標系における移動方向を取得する移動方向検出手段3と、
無積雪時に撮像手段1aで同時取得した全方位の実写映像を、映像取得時の車両Aの絶対座標系の車両座標、移動方向、及び撮像手段1aの姿勢情報(撮像手段1aの水平面に対する傾斜を示す情報等)と結び付けて記録する映像記録手段1と、
現時点の車両座標、並びに所望の視線から導いた移動方向及び姿勢情報に対応する実写映像データを前記映像記録手段1から読み出し表示フレームFに区画して出力する映像出力手段4と、
当該映像出力手段4が前記映像記録手段1から読み出した実写映像に含まれる特徴点の絶対座標を導き保存する構造物記録手段5を備えるものである。
【0023】
ここで、所望の視線とは、通常は、運転手の視線として設定した視線であって、車両Aを運転手が車窓を通して車外を見る際に生じ得る視線の中から選択した一の視線であればよい。その他、運転手の視線とは無関係に、運用者が目視することを望む箇所に向かう車両座標及び視線を適宜設定しても良い。
【0024】
当該例における車両座標検出手段2は、地球の周りを廻る複数の人工衛星から継続的に車両Aの絶対座標系の車両座標とその検出時の時刻を取得し出力するGPS(Global Positioning Sistem)である。
【0025】
当該例における車両座標検出手段2は、更に、相互に直行する三軸方向への加速度ベクトルを検知する加速度センサ2aを備える。当該加速度センサ2aで得た相対的な加速度ベクトルから、相対的な速度ベクトル及び移動ベクトルを算出し、GPSにおける衛星非検出時、及びトンネル走行時等において、車両座標検出に算入すると共に、前記移動方向検出手段3としての機能を果たす。
【0026】
当該例における映像記録手段1は、最新映像を撮影できる複数のCCD(撮像手段)1aを備えたカメラと、当該カメラを車両Aに支持するアタッチメントと、カメラの傾斜等の支持状況を出力に反映する姿勢センサ1bと、各CCD1a及び姿勢センサ1bが出力した実写映像の各フレーム(取得フレーム)及びその際の姿勢情報を組み合わせて記録する保存手段を備える。
【0027】
当該例におけるカメラは、全方向(当該例では上下前後左右からなる六方向)の実写映像(カメラを搭載した車両Aの映像を含む)を同時撮影するための六個のCCD1aを備え、各CCD1aの実写映像データを個別に出力するものである。前記姿勢センサ1bは、相互に位置関係が固定された六個のCCD1aの傾斜を各CCD1aの位置関係に照らして一括して検出する。尚、一個のCCD1aについて、全方向の映像を取得できる光学系レンズを利用して一のCCD1aで一個のパノラマ画像を取得できる構造としても良い。
【0028】
当該例における姿勢センサ1bは、前記CCD1aの撮影方向の方位角と仰俯角を測定し、車両Aの前方0°から360°の方位角と車両Aの下方−90°から90°の仰俯角で、カメラの基準姿勢(例えば、方位角0°仰俯角0°の姿勢)に対する相対的な姿勢を特定しそれらを姿勢情報として出力する。
【0029】
当該例における映像記録手段1は、前記CCD1aが出力した実写映像を、その取得フレーム毎に、映像取得時における姿勢センサ1bが出力した姿勢情報、並びに車両Aの移動方向、GPSで取得した車両座標及び時刻等と相互に関連付けた映像情報としてメモリなど所定の保存手段に記録する。
【0030】
この様な構成を持つ映像記録手段1を備えれば、道路及びその沿道の状況の変化に応じて、保存手段の映像情報を適宜更新することができる。この様に、上記例では最新の道路状況を適宜撮影できる撮像手段1aを備えた映像記録手段1を採用したが、予め撮影した除雪対象地域の映像情報等を適宜入力し、それらを除雪に運用することのみを機能とするものでも良い。尚、取得し入力される映像の視線や視野にあっては、除雪対象地域に応じて適当な方位角と仰俯角で定まる範囲で決めれば良い。
【0031】
当該例における映像出力手段4は、視線解析手段4b、結合手段4c、及び映像編集手段4aを備える。
映像出力手段4は、視線解析手段4bを以って、車両座標及び設定された視線から、その組み合わせに対応する車両Aの移動方向及び姿勢情報を導き、当該車両座標、車両Aの移動方向、及び姿勢情報に対応した実写映像を映像記録手段1から読み出し、表示フレームFに区画してディスプレイ等に出力する(表示フレームFに車両Aの実写映像を含ませる場合もある)。
尚、この例では、前記姿勢情報で定まる視線は、出力される表示フレームFの中央を向いているものとし、視野は、原則として実写映像取得時のままである。
【0032】
映像記録手段1に、設定された視線から導かれる車両座標及び車両Aの移動方向、並びに姿勢情報に対応した映像情報が存在しない場合には、映像出力手段4は、映像編集手段4aを以って、当該車両座標及び視線が最も近似する(好ましくは、視野の一部も一致する)複数の実写映像を、各取得フレームに含まれる地点(特徴点を含む)の絶対座標系の位置座標(以下絶対座標と記す)に基いて連結し、表示フレームFに区画して出力する。
【0033】
また、当該例における映像編集手段4aは、車両座標又は指定座標(絶対座標系)を中心とする一定の領域について、実写映像として取得した複数の取得フレームにおいて車両Aに隠れていない地表部分を重畳的に配置連結する結合手段4cを備え、映像出力手段4は、当該処理で得た平面映像を出力する。当該平面映像は、実写地図として利用することができる。
【0034】
一方、当該例における構造物記録手段5は、座標算出手段5a、配置手段5d、結合手段5b、及び画像編集手段5c、特徴点表示手段5f、並びに定義手段5eを備え、当該映像出力手段4が前記映像記録手段1から読み出した実写映像に含まれる特徴点の絶対座標を導き保存する。
【0035】
当該例における座標算出手段5aは、映像記録手段1に記録した映像情報から実写映像に含まれた座標算出の対象とする点(特徴点)を抽出すると共に、抽出した各特徴点について各取得フレーム上でのピクセル座標を導き、当該取得フレームに係る映像情報(取得時における姿勢情報、車両座標、及び移動方向)から各特徴点の絶対座標を導くものである(図3(B)及び図4参照)。
【0036】
即ち、前記座標算出手段5aは、例えば、実写映像における任意の特徴点に対する二つの任意の撮影点(車両座標(X1,Y1,Z1),(X2,Y2,Z2))を結ぶ線分の長さLを各撮影点から当該特徴点を含む取得フレームを撮影した時点の車両座標より算出すると共に、当該線分と前記各撮影点から各々当該特徴手を結ぶ線分とで成す角度θ1,θ2を、各撮影点から当該特徴点を撮影した時点における車両座標、姿勢情報((方位角,仰俯角):(θx1,θz1),(θx2,θz2))、及び特徴点を含んだ取得フレームにおける特徴点の相対座標(x1,y1),(x2,y2)から各々導き(図4(A)参照)、前方交会法(図4(B)参照)における演算処理等によって特徴点の絶対座標(X,Y,Z)を導くものである。
【0037】
この様な演算処理によれば、実写映像とそれに含まれる各特徴点とを、共通の絶対座標系で結び付けることができる。
尚、これらの処理は、必ずしも映像記録手段1に収められた取得フレーム全てについて行うことを要請するものではなく、少なくとも表示フレームFに出力されている実写映像データに含まれる特徴点のみについて行えば良い。当該例における車両座標については、任意の取得フレームとその直前直後の取得フレームとの間で鉛直方向の座標の比高が無視できる程度である場合は、特徴点の絶対座標の算出に対し、車両座標における鉛直方向の座標は無視して算出することができる。
【0038】
また、各特徴点をその絶対座標に基づき絶対座標系に配置する配置手段5dを備えれば、一個の平面的又は立体的な構造物マップを得ることができる。
その際、結合手段5bによれば、数多くの取得フレームに納められた実写映像に含まれる特徴点を、その絶対座標が一致する限りにおいて、同じ特徴点として取り扱うことができ、例えば、車両座標や視線が異なる複数の取得フレームの実写映像に収められた特徴点であっても、共通の絶対座標系に配置することによって、正確な位置関係を持つ一個の立体的な構造物マップを構成することができる。
【0039】
当該例における画像編集手段5cは、特に、車両座標又は適宜入力した指定座標(絶対座標)を中心又はその一部とする一定の領域についての地図画像を出力するものである。
配置手段5dは、実写映像として取得した複数の取得フレームに含まれる特徴点、例えば、各取得フレームにおける車両Aに隠れていない部分に含まれる特徴点を、それらの絶対座標の平面成分に基づき、絶対座標系における二次元の水平面に配置し出力する。
【0040】
特徴点は、ユーザーにより指定された点や明度又は彩度の相違が大きい点など当該システムの運用に必要な点から任意に抽出することができる。
【0041】
前記定義手段5eは、実写映像に含まれる特徴点に属性を与えるものである。例えば、一定の領域若しくは空間を区画し、又は囲む複数の特徴点を構造物の表面を構成する構造物と定義すると共に、それぞれの構造物固有の属性を与えることにより、個々の特徴点が帰属する構造物を明らかにする処理を行うものである。当該例においては、それらの属性固有の属性コードを、取得フレーム各々について、各特徴点の三次元座標と相互に組み合わせた形で保存する。
【0042】
属性コードとは、例えば、特徴点単体としては、実写映像を連結するための連結点であり、近接して繋がる特徴点に与えるものにあっては、道路(路肩、縁石、出入り口)等と識別できるコードであり、一定の領域又は空間を囲む複数の特徴点に与えるものにあっては、車両(当該除雪車を含む)、標識、看板、消火栓等を含む各種建造物や設置物等と識別できるコードである。
【0043】
属性には、監視を要する属性(監視属性)も複数存在するが、当該例における除雪支援システムは、車両Aから所定の距離以内に障害物等の監視属性を持つ特徴点が存在する場合にアラーム出力を発する警報手段6を備える。
【0044】
当該例における警報手段6は、距離算出手段6aと、判定手段6bを備える。
距離算出手段6aは、前記構造物記録手段5から車両Aの属性を有する特徴点の絶対座標及び各構造物の監視属性を有する特徴点の絶対座標を受け、当該車両Aの属性を有する特徴点と各構造物の監視属性を有する特徴点との間における最少距離を算出する。
判定手段6bは、当該距離算出手段6aが出力した距離を受けて、当該距離が所定の閾値を上回るか下回るか否かを判断し、そのいずれかにおいてアラーム出力を発する。
この様な警報手段6による処理を以って、車両Aと各構造物との上下前後左右における接触や過度な近接が回避できることとなる。
【0045】
特徴点表示手段5fは、映像出力手段4の処理で映像記録手段1から読み出された実写映像の表示フレームFに、絶対座標を持つ特徴点を、絶対座標を算出した際に得た各取得フレームにおけるピクセル座標に則って配置すると共に、その近傍に当該絶対座標を表示する(図7参照)。
【0046】
上記除雪支援システムにおいては、表示フレームFに、例えば、車両Aの輪郭又は像を挿入することによって、除雪時における車両感覚を実体目視による感覚に近付けることができる点で便宜であり、車両Aの輪郭又は像を表示フレームFから適宜除くことによって、車両Aに隠れた部分の特徴点又は実写映像も含めて道路状況を検証することができる。
【0047】
当該例における除雪支援システムにおいては、前記結合手段4cによって、表示フレームFに出力された領域について、実写映像として取得した複数の取得フレームにおいて車両Aその他の構造物に隠れていない部分を重畳的に配置連結することによって車両Aその他の構造物を除く手法を採ることができる(図7(A)参照)。
また、特徴点表示手段5fによって表示された特定の属性を持つ特徴点に囲まれた領域へCG画像を挿入し、又は除く処理を行うこともできる(図7(B)参照)。
【0048】
当該例における車両Aは、屋根にカメラ及び姿勢センサ1bを搭載すると共に、除雪車として、車両Aの下部に路上の雪をかき集める除雪板Bを車両Aの前方に向けて水平揺動可能に備える(図5(B)及び図6参照)。
【0049】
当該車両Aは、除雪板Bの左右側方に開閉可能な閉鎖板Cを備える。
当該例は、前記警報手段6が発するアラーム出力に連動して閉鎖板Cを閉じる閉鎖板制御手段7を備える。当該例における閉鎖板制御手段7は、アラーム出力をトリガーとして閉鎖板Cの駆動軸D1を揺動角分だけアクチュエータを正転又は逆転させるものである。
【0050】
当該例では、前記アクチュエータとして除雪板Bの上縁に沿って駆動軸D1を回転自在に支持し、当該駆動軸D1から側方に延びたクランクD2を、除雪板Bの上部に揺動可能に支持したシリンダD3で進退させることにより、当該駆動軸D1の回転を促す。当該駆動軸D1の先端部に閉鎖板Cを固定し、当該駆動軸D1の回転を閉鎖板Cが水平方向から垂直方向へ規律するに至る揺動が得られる様に制御することによって、除雪板Bの端部における閉鎖板Cの開閉が可能となる。
【0051】
例えば、道路の交差点や、道路の出入り口において除雪した雪を排雪放置すれば、当該箇所における人や車両の通行が妨げられることとなるが、出入り口や交差点の始点を示す監視属性データの検出をトリガーとして閉鎖板Cを閉鎖し、終点を示す監視属性データの検出をトリガーとして閉鎖板Cを開放する制御を行えば、道路の交差点や、道路の出入り口において除雪した雪を排出放置することを回避できる。この際、始点検出後、ただちに閉鎖トリガーを発し、終点検出後、所定の遅延時間を経て開放トリガーを発する制御とすることもできる。
【0052】
この様な警報手段6は、路肩や縁石等、雪を放置できない箇所に隣接する構造物の属性(監視属性)を持つ特徴点に対し、出入り口や交差点の始点及び終点を示す監視属性データを予め与えることによって実現できる。
その際、警報手段6は、前記構造物記録手段5から表示フレームFにおける車両Aの属性を有する全ての特徴点、並びに前記始点を示す監視属性を有する特徴点、及び前記終点を示す監視属性を有する特徴点の絶対座標を受けると共に、車両Aの属性を有する全ての特徴点と前記始点及び終点を示す監視属性を有する特徴点のとの間の最短距離及びその方向を導く距離算出手段6aと、当該最短距離の増減又は方向の変化からアラーム出力の要否を決める判定手段6bを備え、排雪禁止区間を避けた位置において確実に閉鎖板Cが開放し、又は閉鎖する様にアラーム出力を発する。
【0053】
上記警報手段6については、排雪箇所を特定する際の精度を更に高めるべく、実際の路上にICタグを埋設し、当該距離の増減又は方向の変化を検出判定することによりアラーム出力を発する警報手段6を採用しても良い。
その際、警報手段6は、現時点の車両座標を基準として、実際の路上における排雪禁止区間(出入り口又は交差点等)の始点に固定したICタグ及び終点に固定したICタグに至る距離又は方向を導く距離算出手段6aと、当該距離の増減又は方向の変化からアラーム出力の要否を決める判定手段6bを備え、排雪禁止区間を避けた位置において確実に閉鎖板Cが開放し、又は閉鎖する様にアラーム出力を発する。
【0054】
排雪禁止区間を避けた位置において閉鎖板Cを開放させる為の前記判定手段6bの具体的な判断基準として、例えば、車両Aの属性を有する全ての特徴点と前記始点及び終点を示す監視属性を有する特徴点のとの間の最短距離の双方が各々の閾値以下に減少し、若しくはその方向角の双方が各々の閾値以上に深くなっており、且つ両最短距離の差が始終点間の距離以上である場合、又は車両座標から位置座標の分っている近隣始終点2点に埋設した各ICタグまでの距離の双方が各々の閾値以下に減少し、若しくは方向角双方が各々の閾値以上に深くなっており、且つ両最短距離の差が始終点間の距離以上である場合には、車両Aが出入り口又は交差点に十分に接近したと推測できるので、この時に閉鎖板Cが閉鎖するようにアラーム出力を発する様にすれば良い。
【0055】
更に、例えば、車両Aの属性を有する全ての特徴点と前記始点及び終点を示す監視属性を有する特徴点のとの間の最短距離の双方が各々の閾値以上に増加し、若しくはその方向角の双方が各々の閾値より浅くなっている時、又は車両座標から位置座標の分っている近隣始終点2点に埋設した各ICタグまでの距離の双方が各々の閾値以上に増加し、若しくは方向角双方が各々の閾値より浅くなっている時には、車両Aが出入り口又は交差点を避けた位置に存在すると推測できるので、この時にのみ閉鎖板Cが開放するようにアラーム出力を発する様にすれば良い。
【符号の説明】
【0056】
1 映像記録手段,1a 撮像手段(CCD),1b 姿勢センサ,
2 車両座標検出手段,2a 加速度センサ,
3 移動方向検出手段,
4 映像出力手段,4a 映像編集手段,4b 視線解析手段,4c 結合手段,
5 構造物記録手段,
5a 座標算出手段,5b 結合手段,5c 画像編集手段,5d 配置手段,
5e 定義手段,5f 特徴点表示手段,
6 警報手段,6a 距離算出手段,6b 判定手段,
7 閉鎖板制御手段,
A 車両,B 除雪板,C 閉鎖板,
D1 駆動軸,D2 クランク,D3 シリンダ,
F 表示フレーム,
L 長さ,θ1,θ2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無積雪時に撮像手段(1a)で同時取得した全方位の実写映像を、映像取得時の車両(A)の絶対座標系における車両座標、移動方向、及び撮像手段(1a)の姿勢情報と結び付けて記録する映像記録手段(1)と、
現時点の車両(A)の絶対座標系における車両座標を取得する車両座標検出手段(2)と、
現時点の車両(A)の絶対座標系における移動方向を導く移動方向検出手段(3)、
現時点の車両(A)の絶対座標系における車両座標並びに所望の視線から導かれる移動方向及び姿勢情報に対応する実写映像を、前記映像記録手段(1)から読み出し表示フレーム(F)に出力する映像出力手段(4)と、
当該映像出力手段(4)が前記映像記録手段(1)から読み出した実写映像に含まれる特徴点の絶対座標系における位置座標を導き保存する構造物記録手段(5)を備えることを特徴とする除雪支援システム。
【請求項2】
映像出力手段(4)が映像記録手段(1)から読み出した実写映像の表示フレーム(F)において、絶対座標を導いた特徴点をマーキングすると共に、その近傍に当該絶対座標を表示する特徴点表示手段5fを備える前記請求項1に記載の除雪支援システム。
【請求項3】
前記構造物記録手段(5)は、実写映像に含まれる構造物の特徴点に対する二つの撮影点を結ぶ線分の長さ(L)を導くと共に、当該線分と各撮影点から各々当該特徴点を結ぶ線分が成す角度(θ1,θ2)を導き、前方交会法の演算処理によって特徴点の絶対座標系における位置座標を導く座標算出手段(5a)を備え、
当該座標算出手段(5a)は、当該特徴点を撮影した時点の車両(A)の絶対座標系における車両座標を撮影点とし、
前記角度(θ1,θ2)を、当該特徴点を含む取得フレームを撮影した時点の車両(A)の絶対座標系における車両座標、移動方向、及び撮像手段(1a)の姿勢情報、並びに当該特徴点を含む取得フレームのピクセル座標から算出することを特徴とする前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載の除雪支援システム。
【請求項4】
前記映像出力手段(4)は、車両座標又は指定座標を含む一定の領域の地図映像を出力する映像編集手段(4a)を備え、
当該映像編集手段(4a)は、取得した実写映像の複数の取得フレームに含まれる平面映像を連結する結合手段(4c)を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の除雪支援システム。
【請求項5】
前記構造物記録手段(5)は、車両座標又は指定座標を含む一定の領域についての地図画像を出力する画像編集手段(5c)を備え、
当該画像編集手段(5c)は、取得した実写映像の複数の取得フレームに含まれる特徴点を絶対座標系における二次元の水平面に配置する配置手段(5d)を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の除雪支援システム。
【請求項6】
前記特徴点に属性を与える定義手段(5e)を備える前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の除雪支援システム。
【請求項7】
監視対象となる特徴点に監視属性を与える定義手段(5e)と、
車両(A)の属性を持つ特徴点と監視属性を有する特徴点との距離を各々の絶対座標系における位置座標より導く距離算出手段(6a)と、
車両(A)の属性を持つ特徴点と監視属性を有する特徴点との距離が所定の距離以内である場合にアラーム出力を発する警報手段(6)を備えることを特徴とする前記請求項6に記載の除雪支援システム。
【請求項8】
現時点の車両座標を基準として、実際の路上における排雪禁止区間の始点に固定したICタグ及び終点に固定したICタグに至る距離又は各ICタグへの方向を導く距離算出手段(6a)と、
当該距離の増減又は方向の変化を検出し排雪禁止区間でアラーム出力を発する警報手段(7)を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の除雪支援システム。
【請求項9】
前記請求項7又は請求項8のいずれかに記載の除雪支援システムと、
路上の雪を掻き集める除雪板(B)と、
当該除雪板(B)の対雪面に沿って側方へ流れる雪の排雪を止める開閉可能な閉鎖板(C)と、
前記警報手段(6)が発するアラーム出力を受けて閉鎖板(C)を開閉する開閉板制御手段(7)を備えることを特徴とする除雪車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33426(P2013−33426A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170087(P2011−170087)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(502366686)株式会社上智 (3)
【Fターム(参考)】