説明

除電システム、除電方法およびウェブ材処理装置

【課題】自己放電型除電器の弛みを防止し、汚れた部分を容易に交換できる除電システム等を提供すること。
【解決手段】グラビア輪転機1に、除電装置31、表面電位計63、制御部81等からなる除電システム30を設ける。除電装置31は、圧胴11の、印刷用紙5の搬送方向の下流側の近傍に設けられ、除電器41を巻出す巻出し装置37、除電器41を巻取る巻取り装置39、除電器41に所定の張力を付与する張力付与装置を有する。表面電位計63により測定された印刷用紙5の表面電位が所定値以上となった場合、制御部81は、除電装置31を制御して、巻取り装置39を用いて除電器41の汚れ部を巻取るとともに巻出し装置37から除電器41を巻出して、除電器41を交換した後、新たに繰り出された除電器41に所定の張力を付与する。また、制御部81は、ひずみゲージ65で測定した除電器41の張力に基づいて、除電器41にかかる張力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア輪転機等、ウェブ材を搬送し処理を行うウェブ材処理装置などに用いられる除電システム、除電方法、およびウェブ材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブ材を搬送し処理を行うウェブ材処理装置として、グラビア輪転機等の輪転機が用いられている。図7は、グラビア輪転機1の概略を示す図である。図7は、グラビア印刷を行う部分のみが図示されているが、グラビア輪転機1は、このほか、印刷用紙を給排紙する給紙部および排紙部等からなる。
【0003】
グラビア輪転機1は、給紙部(不図示)、排紙部(不図示)、および、複数の印刷部3等からなる。各印刷部3で、各色(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、特色等)の印刷が行われる。
給紙部(例えば、図7の左側にある)から給紙された印刷用紙5は、複数の搬送ローラ23によって、各印刷部3および印刷部3間を搬送され、この間各色の印刷が行なわれる。印刷が行なわれた印刷用紙5は、排紙部(例えば、図7の右側にある)に排紙される。
【0004】
印刷部3は、圧胴11、版胴13、インキパン15、ドクターブレード21、ファニッシャーロール19、エアシリンダー25、巻込み防止バー29等からなる。インキパン15には、各印刷部3の色のインキ17が入っている。インキ17には、有機溶剤が含まれている。版胴13には印刷用の版が巻き付けられており、版胴13に付着したインキパン15内のインキ17により、版胴13と圧胴11の間を走行する印刷用紙5に印刷が施される。印刷用紙5のインキは、複数の搬送ローラ23に沿って搬送される間に乾燥装置27によって乾燥し、印刷用紙5は、次の印刷部3に搬送される。
【0005】
ドクターブレード21は、版胴13に余分についたインキ17をかき落し、ファニッシャーロール19は、インキパン15内で回転して、インキ17を撹拌して一様にする。エアシリンダー25は、圧胴11へかける圧力を調節し、走行する印刷用紙5に一様な圧力がかかるようにする。巻込み防止バー29は、印刷用紙5の版胴13への巻込みを防止するもので、圧胴11と版胴13の間に設けられる。
【0006】
印刷用紙5は、紙、セロハン、OPP(biaxial oriented polypropylene:二軸延伸ポリプロピレン)、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン等のウェブ状部材である。
【0007】
グラビア輪転機1の稼働中、印刷用紙5は、版胴13や圧胴11と摩擦・剥離すること等により帯電する。そして、ある一定の帯電電位を超えることで、印刷用紙5付近に存在する帯電物と電位差のある導体に放電する。放電が発生した場合、印刷用紙5に穴が開くなどの品質不良が発生する。また、放電が発生した箇所に、空気中の酸素とインキ17から揮発した有機溶剤とが一定の割合で存在すると、有機溶剤に着火し、火災が発生する危険性がある。
【0008】
放電に対する対策として、印刷用紙5が不導体単層の場合は、自己放電型除電器である除電ブラシ(例えば、特許文献1参照)や除電紐などを設置して、静電気放電の発生しない電位まで帯電物を除電する方法がある。特に、火災予防としては、酸素と揮発した有機溶剤が一定の割合で存在する可能性の高い、印刷ユニット内の圧胴11(版胴13)周辺での除電を実施している。
【0009】
上述の自己放電型除電器によって除電効果を得るには、以下の2点が重要である。1点目は、除電対象である印刷用紙5と自己放電型除電器との距離を適切に保つことである。2点目は、自己放電型除電器の表面、すなわち、除電対象と対向させる箇所が汚れていないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−258890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、一般に用いられている自己放電型除電器は、経時で伸びるため、最初に所定の張力を保持して設置しても、徐々に弛みが生じ、印刷用紙5の上方に設けられている場合には距離が近づき、下方に設けられる場合には距離が遠ざかり、適正な距離が維持できない。また、火災予防の観点から特に除電対策が必要である印刷ユニット内の圧胴11(版胴13)の周辺は、インキミストが飛散しているため、自己放電型除電器の表面がインキで汚れてしまう。このような状況では、自己放電型除電器の除電効果が落ち、品質不良や火災の発生を確実に防止できないという問題がある。
【0012】
また、印刷用紙5の上方に設けられた自己放電型除電器がたるみ、印刷中の印刷用紙5に接触してしまった場合、印刷後の印刷用紙5上のインキを削り取る、自己放電型除電器の磨耗粉(異物)が混入する、などの不良が発生するという問題もある。
【0013】
このような事態を防止するためには、自己放電型除電器の状態を目視により確認し、清掃や交換等を行なう必要があるが、これらの作業を頻繁に実施することは、作業者の負担を増加させ、生産性を悪化させる要因となる。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、自己放電型除電器の弛みを防止し、汚れた部分を容易に交換できる除電システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するための第1の発明は、ウェブ材の除電を行う除電システムであって、ウェブ材の除電を行なう自己放電型除電器を巻出す巻出し装置と、前記自己放電型除電器を巻取る巻取り装置と、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する張力付与装置とを有する除電装置と、前記ウェブ材の表面電位を測定する表面電位測定装置と、前記表面電位測定装置で測定された前記ウェブ材の表面電位が所定値以上である場合に、前記除電装置を制御して、前記巻取り装置により前記自己放電型除電器を所定長さ巻取り、前記張力付与装置により前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する制御部と、を具備することを特徴とする除電システムである。
【0016】
ウェブ材は、ナイロン、OPP、セロハン、紙、布など、ウェブ材処理装置における処理中に除電が必要となる印刷用紙である。
自己放電型除電器は、紐状、モール状など、リールに巻きつけられる程度の可とう性を有し、フレキシブルに動かせるものである。
【0017】
上記の構成により、ウェブ材の表面電位を測定し、これが所定値以上となる場合には、自己放電型除電器が汚れており除電性能が十分発揮されていないことになるので、自動的に、巻出し装置から自己放電型除電器を巻出しつつ、巻取り装置により使用済みの自己放電型除電器を巻取る。これにより、自己放電型除電器の汚れた部分を最適なタイミングで容易に交換できる。そのうえ、交換後の自己放電型除電器に適正な張力を与えることができ、弛んだりすることがない。
【0018】
前記巻出し装置は、前記自己放電型除電器を巻きつけたリールと、前記自己放電型除電器の巻出しをガイドするガイドローラを有し、前記巻取り装置は、前記自己放電型除電器の巻き取りをガイドするガイドローラと、前記自己放電型除電器を巻きつけるリールを有する。
かかる構成により、自己放電型除電器の巻取り、巻出し位置を定めることが容易になるので、自己放電型除電器とウェブ材の間で適切な間隔を保つことが容易になる。
【0019】
また、前記制御部は、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器について測定された張力に応じて、前記張力付与装置により、前記巻出し装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけたリール、および前記巻取り装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけるリールの回転を制御し、前記自己放電型除電器の張力を調整する。
かかる構成により、自己放電型除電器が弛むなどした場合には、これを検知し、自動的に自己放電型除電器に適正な張力を与えることができるので、自己放電型除電器の張力を継続して監視し適正な張力が加わっている状態を確実に維持することができる。
【0020】
第2の発明は、ウェブ材の除電を行う除電方法であって、ウェブ材の除電を行なう自己放電型除電器を巻出す巻出し装置と、前記自己放電型除電器を巻取る巻取り装置と、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する張力付与装置とを有する除電装置と、前記ウェブ材の表面電位を測定する表面電位測定装置と、制御部と、を具備する除電システムにより、前記制御部が、前記表面電位測定装置で測定された前記ウェブ材の表面電位が所定値以上である場合に、前記除電装置を制御して、前記巻取り装置により前記自己放電型除電器を所定長さ巻取り、前記張力付与装置により前記自己放電型除電器に所定の張力を付与することを特徴とする除電方法である。
【0021】
前記巻出し装置は、前記自己放電型除電器を巻きつけたリールと、前記自己放電型除電器の巻出しをガイドするガイドローラを有し、前記巻取り装置は、前記自己放電型除電器の巻き取りをガイドするガイドローラと、前記自己放電型除電器を巻きつけるリールを有する。
また、第2の発明の除電方法では、前記制御部が、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器について測定された張力に応じて、前記張力付与装置により、前記巻出し装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけたリール、および前記巻取り装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけるリールの回転を制御し、前記自己放電型除電器の張力を調整する。
【0022】
第3の発明は、第1の発明の除電システムが設けられた、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置である。
【0023】
ウェブ材処理装置は、例えばグラビア輪転機、グラビアコーターやラミネーターである。上記除電システムを用いることにより、ウェブ材処理装置において、汚れた自己放電型除電器を交換しつつウェブ材の帯電による品質不良を防ぐことが容易になり、作業性も高まる。
【0024】
前記ウェブ材処理装置が、前記ウェブ材として印刷用紙を搬送し印刷を行うグラビア輪転機であるとき、前記除電装置が、圧胴の、印刷用紙搬送方向の下流側の近傍に配置され、前記表面電位測定装置が、前記除電装置の、印刷用紙搬送方向の下流側に配置されることが望ましい。
【0025】
上記構成により、グラビア輪転機において、表面電位測定装置を除電装置の下流側に配置するので、自己放電型除電器が汚れるなどして適正に除電が行われていない状態を、表面電位測定装置で測定した用紙の帯電量から把握することができる。また、除電装置を、上記のような印刷用紙が帯電しやすく汚れも発生しやすい箇所にとりつけることにより、上記の除電装置の利点が最大限に発揮される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、自己放電型除電器の弛みを防止し、汚れた部分を容易に交換できる除電システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】印刷部3付近の概略構成図
【図2】除電装置31付近の斜視図
【図3】除電装置31の立面図
【図4】巻取り装置39の垂直断面図
【図5】除電システム30の機能構成を示す図
【図6】除電システム30の処理の流れを示すフローチャート
【図7】グラビア輪転機1の概略を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。図1は、グラビア輪転機の印刷部3付近の概略構成図である。図1において、図7に例示したグラビア輪転機1の構成部材と同一の部分は、同じ符号で示し、説明を省略する。
【0029】
図1に示すように、グラビア輪転機の印刷部3には、圧胴11、版胴13、インキ17を貯留するインキパン15、ドクターブレード21、ファニッシャーロール19、巻込み防止バー29等に加え、除電装置31や表面電位計63、制御部81などからなる除電システム30が設けられる。
【0030】
印刷用紙5は、給紙部または前段の印刷部(不図示)から供給され、搬送ローラ23aを介して図のAに示す搬送方向に搬送され、圧胴11と版胴13の間を進み、この際版胴13についたインキパン15のインキ17が印刷用紙5に圧着され、印刷される。印刷された印刷用紙5は、搬送ローラ23bを介して、次段の印刷部または排紙部(不図示)に排出される。印刷用紙5は、ナイロン、OPP、セロハン、紙、布などである。
【0031】
除電装置31は、圧胴11を軸支する支持部33に取り付けられ、圧胴11(版胴13)の、印刷用紙5の搬送方向の下流側の近傍に配置される。除電装置31は、帯電しやすい、圧胴11から剥離した直後の印刷用紙5の除電を行う。
なお、圧胴11の支持部33は上下移動可能である。支持部33の上下により印刷の際の圧胴11の位置が定められる。
【0032】
図2は、除電装置31付近の斜視図である。図2に示すように、除電装置31は、巻出し装置37、巻取り装置39、除電器41等からなる。
巻出し装置37は、アーム35を介して、圧胴11の一方の端部の支持部33に取り付けられる。
巻取り装置39は、アーム(不図示)を介して、圧胴11の他方の端部の支持部33に取り付けられる。
除電器41は、除電対象である印刷用紙5との間で適正な距離を維持しつつ、巻出し装置37と巻取り装置39との間に配置される。除電器41は、自己放電型除電器であり、紐状、モール状など、リールに巻き付けられる程度の可とう性を有しフレキシブルに動かせるものである。
【0033】
図3は、除電装置31の立面図を示す。図3は、除電装置31を図1の矢印Bに示す方向から見た立面図である。なお、図3では、フレーム51、フレーム61の一部の図示を省略している。図4は、巻取り装置39の垂直断面図である。図4は、図3に示す矢印C−Cによる断面図である。
【0034】
図3、図4に示すように、巻出し装置37は、フレーム51、巻出しリール43、回転軸45、ガイドローラ47、回転軸49等からなる。
巻出しリール43は、使用前の除電器41を巻きつけたリールである。巻出しリール43の回転軸45の両端は、軸受(不図示)を介してフレーム51に取り付けられる。巻出しリール43は、張力付与装置であるモータ(不図示)を有する。ガイドローラ47は、巻出しリール43から巻出した除電器41をガイドし所定の巻出し位置に導くためのローラである。ガイドローラ47の回転軸49の両端は、軸受(不図示)を介してフレーム51に取り付けられる。
【0035】
巻取り装置39は、フレーム61、巻取りリール53、回転軸55、ガイドローラ57、回転軸59等からなる。
巻取りリール53は、使用後の汚れた除電器41を巻きつけるリールである。巻取りリール53には、除電器41の一端が固定される。巻取りリール53の回転軸55の両端は、軸受(不図示)を介してフレーム61に取り付けられる。巻取りリール53は、張力付与装置であるモータ(不図示)を有する。ガイドローラ57は、巻取りリール53で巻取る除電器41をガイドし所定の巻取り位置に導くためのローラである。ガイドローラ57の回転軸59の両端は、軸受(不図示)を介してフレーム61に取り付けられる。
なお、除電装置31では、例えば、巻取りリール53を金属製とし、巻取りリール53からアースをとることができる。
【0036】
除電装置31では、巻取り装置39の巻取りリール53を回転させて、使用後の汚れた除電器41を巻取る。巻取り装置39による巻取りに伴い、巻出し装置37の巻出しリール43が回転し、使用前の汚れていない除電器41がガイドローラ47を経て巻出しリール43から巻出されるとともに、汚れた除電器41がガイドローラ57を経て巻取りリール53に巻き取られて除電器41が交換される。このとき、ガイドローラ57は水平方向および垂直方向の巻取り位置を定め、ガイドローラ47は水平方向および垂直方向の巻出し位置を定める。
【0037】
除電器41を巻取りリール53に直接巻取ったり、巻出しリール43から直接巻出したりしてもよいが、この場合、水平方向の巻取り位置、巻出し位置が変化する。また、巻取りリール53や巻出しリール43の径は、除電器41の巻取り、巻出しに伴って変化するため、除電器41を巻取りリール53に直接巻取ったり、巻出しリール43から直接巻出したりすると、垂直方向の巻取り位置、巻出し位置も変化する。
ガイドローラ57、ガイドローラ47を用いることにより、除電器41の水平方向および垂直方向の巻取り位置、巻出し位置を定めることができ、除電器41と印刷用紙5の間で適切な距離を保つことが容易になる。なお、より確実に巻取り位置、巻出し位置を固定するために、ガイドローラ57、47の軸方向に沿った除電器41の位置を固定することもできる。例えば、ガイドローラ57、47に溝を設け、除電器41が当該溝を通過するようにすればよい。
【0038】
また、図3、図4に示すように、巻取り装置39のガイドローラ57には、ひずみゲージ65、および巻取り長さ測定器67が設けられる。
【0039】
ひずみゲージ65は、除電装置31の除電器41の張力を検知するための張力検知手段である。
除電装置31では、除電器41の張力に応じて巻出し装置37と巻取り装置39を互いに引き合う方向の力が作用するが、ひずみゲージ65でこの力によるひずみを検知することにより、張力を検知することができる。ひずみゲージ65は、ガイドローラ57に限らず、例えば巻取り装置39を支持部33に固定するアーム(不図示)やガイドローラ57の回転軸59等に設置してもよい。
【0040】
巻取り長さ測定器67は、除電装置31の除電器41の巻取り長さを測定するため巻き取り長さ測定手段である。巻取り長さ測定器67は、例えば、図3に示すような、ガイドローラ57と接触しガイドローラ57の回転に伴い回転するローラである。当該ローラの回転量より、除電器41の巻き取り長さを算出することができる。
図4に示すように、巻取り長さ測定器67の回転軸69の両端は、軸受(不図示)を介して巻取り装置39のフレーム61に取り付けられる。
【0041】
表面電位計63は、印刷用紙5の帯電に係る表面電位を測定する表面電位測定装置であり、既知のものを使用可能である。表面電位計63は、印刷用紙5の表面電位を50kV程度まで測定可能なものであり、かつ、所定値以上の表面電位を計測した場合に除電器交換信号として電流(電圧)を出力する機能を備えているものとする。表面電位計63は、除電装置31の、印刷用紙5の搬送方向の下流側の近傍で、印刷用紙5に接触しない位置に設けられる。表面電位計63を除電装置31の下流側に配置するので、除電器41の汚れなどにより除電装置31による除電が十分に行われていない状況を、印刷用紙5の帯電量の上昇により検出できる。
【0042】
制御部81は、表面電位計63などからの信号に伴い、除電装置31の制御を行うものである。詳細については後述する。
【0043】
図5は、除電システム30の機能構成を示す概略図である。除電システム30では、制御部81により各計測器の測定値に基づく除電装置31の制御を行なう。制御部81は、除電器交換信号出力部71、回転数制御信号出力部73、張力調整信号出力部75、モータ制御部77、79などの各機能を有する。制御部81は、例えば、シーケンサ等により実現される。
【0044】
除電器交換信号出力部71は、表面電位計63により測定した印刷用紙5の表面電位が所定の値以上か否かを判定し、所定値である場合に、除電器交換信号をモータ制御部77、79に出力する。
【0045】
回転数制御信号出力部73は、巻取り長さ測定器67である前述のローラの回転数の測定値に基づき、除電器41の巻取り長さを算出し、これに基づき巻取りリール53の回転を制御するための信号をモータ制御部79に出力する。
【0046】
張力調整信号出力部75は、ひずみゲージ65で検知した値に基づいて除電器41の張力の演算を行い、これに基づき、張力が適正な範囲か否かについて判定し、適正な範囲でない場合には、モータ制御部77、79に張力調整信号を出力する。
【0047】
モータ制御部77、79はそれぞれ、モータの制御により巻出しリール43、巻取りリール53の回転を制御する。
除電器交換信号が出力されると、モータ制御部79は、巻取り装置39に使用後の汚れた除電器41を巻取るように、巻取りリール53のモータを制御して回転させる。一方、モータ制御部77は、巻出し装置37から使用前の汚れていない除電器41を巻出す際に、巻出しに適した張力となるように、巻出しリール43の回転停止状態(ブレーキ)を解除する。
そして、モータ制御部79は、回転数制御信号出力部73から出力される回転数制御信号に基づいて巻取りリール53の回転を制御し、除電器41を所定の長さだけ巻取る。
【0048】
さらに、モータ制御部79、モータ制御部77は、上記の張力調整信号に基づいて、除電器41の張力が適正な範囲となるように、張力付与装置である巻取りリール53のモータ、巻出しリール43のモータの制御により、巻取りリール53、巻出しリール43の回転を制御する。
【0049】
次に、図6等を参照しながら、グラビア輪転機1の運転時における本実施形態の除電システム30の処理の流れについて説明する。図6は、除電システム30の処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図6に示すように、まず、グラビア輪転機1の運転を開始する(ステップ101)。
除電システム30では、ひずみゲージ65でひずみを測定し(ステップ102)、制御部81により、当該ひずみより除電器41の張力を演算し、除電器41の張力が適正な範囲かを判定する(ステップ103)。
【0051】
ステップ103で張力が適正でないと判定した場合(ステップ103のNo)には、制御部81により、除電器41の張力を調整する(ステップ104)。ステップ104では、図5に示す張力調整信号出力部75から出力された張力調整信号に基づいて、張力付与装置である巻取りリール53のモータおよび巻出しリール43のモータを制御し除電器41に所定の張力を付与する。例えば、除電器41の張力が低い場合には、巻取りリール53に除電器41の巻取り方向の回転トルクを加えるとともに、巻出しリール43に除電器41の巻出し方向と逆方向の所定の回転トルクを加えることにより張力を調整し、除電器41に所定の張力を付与して停止する。なお、巻出しリール43にブレーキをかけ回転停止させた状態で、巻取りリール53に回転トルクを与えることにより除電器41に所定の張力を付与してもよい。
【0052】
さらに、除電システム30では、表面電位計63により除電対象の電位を測定し(ステップ105)、制御部81により電位が適正か否かを判定する(ステップ106)。ステップ106では、計測した表面電位が所定値未満であれば適正とし、所定値以上であれば適正でないと判定する。これは、印刷用紙5の帯電量が多い場合には、除電器41がインキ等により汚れており十分に除電機能が発揮されていないと判定できるためである。
【0053】
ステップ106で、電位が適正でないと判定した場合(ステップ106のNo)には、除電器41の汚れ部を巻取る(ステップ107)。ステップ107では、図5に示す除電器交換信号出力部71から出力された除電器交換信号に基づいて、巻取りリール53のモータ、巻出しリール43の回転を前述のように制御して、巻取り装置39に使用後の汚れた除電器41を所定長さ巻取るとともに、巻出し装置37から使用前の汚れていない除電器41を所定長さ巻出して交換を行う。除電器41を巻き取った後には、上記と同様、巻出しリール43、巻取りリール53のモータの制御により除電器41に所定の適正な張力を加える。
【0054】
なお、ここでは、巻取り長さ測定器67で測定した巻取り長さの累計値から、除電器41の全長との比較により、除電器41の残り長さが所定の長さ未満であると判定される場合には、警報装置(不図示)へ警報信号を送信し、警報装置にて視覚的および/または聴覚的に警報を発し、巻出し装置37の除電器41の補充を促すようにしてもよい。警報装置は、例えば、赤色のランプを点灯させたり、アラームを発するものである。
【0055】
このようにして汚れが生じた場合には除電器41を巻き取りながら、除電器41の張力を適正に維持しつつ、生産を終了するまで(ステップ108のNo)グラビア輪転機1の運転を続け、生産終了(ステップ108のYes)に伴い、グラビア輪転機1の運転を停止(ステップ109)し、処理を終了する。
【0056】
本実施の形態では、表面電位計63を用いて印刷用紙5の表面電位を測定し、測定値が所定の値以上である場合に、巻出し装置39から除電器41を巻出しつつ、巻取り装置37を用いて所定の長さの汚れた除電器41を巻取り、新たに繰り出された除電器に適正な張力を与える。これにより、除電器41の汚れを継続して監視し、除電器41の汚れた部分を最適なタイミングで容易に交換できる。また、交換後は、モータの制御により除電器41に適正な張力が与えられる。これにより、除電器41の点検・交換に伴う作業者の負担を減らし、生産性を向上させることができる。
【0057】
また、巻出し装置37を巻出しリール43とガイドローラ47で構成し、巻取り装置39を巻取りリール53とガイドローラ57で構成するので、除電器41の巻取り、巻出し位置を定めることが容易になり、除電器41と印刷用紙5の間で適切な間隔を保つことが容易になる。
【0058】
また、ひずみゲージ65を用いて検知したひずみから除電器41の張力を算出し、これに基づき各リールの回転をモータにより制御して除電器41の張力を調整し所定の張力を付与する。これにより、グラビア輪転機1の運転中の除電器41の張力を継続して監視し、その弛みを確実に防止できる。
【0059】
なお、巻取り長さ測定器67として、本実施形態では、ガイドローラ57の回転に伴い回転するローラを用いたが、ガイドローラ57にエンコーダを設けて巻取り長さを測定してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、除電装置31を圧胴11の支持部33に取り付けたが、取り付け位置はこれに限らない。但し、圧胴11の支持部33に取り付けることにより、支持部3の上下移動による圧胴11の垂直移動に除電装置31が追随する。そのため、印刷時に圧胴11の位置が変化する場合には、支持部33への取り付けが有効である。
【0061】
本実施の形態では、除電装置31をウェブ材である印刷用紙に印刷処理を行うグラビア輪転機に適用する例を用いて説明したが、適用対象はこれに限られることはなく、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うものであれば適用することが可能かつ有効である。このような例として、グラビアコーターやラミネーターなどがあげられる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる除電システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1………グラビア輪転機
3………印刷部
5………印刷用紙
11………圧胴
13………版胴
31………除電装置
37………巻出し装置
39………巻取り装置
41………除電器
43………巻出しリール
45、49、55、59、69………回転軸
47、57………ガイドローラ
53………巻取りリール
63………表面電位計
65………ひずみゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ材の除電を行う除電システムであって、
ウェブ材の除電を行なう自己放電型除電器を巻出す巻出し装置と、前記自己放電型除電器を巻取る巻取り装置と、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する張力付与装置とを有する除電装置と、
前記ウェブ材の表面電位を測定する表面電位測定装置と、
前記表面電位測定装置で測定された前記ウェブ材の表面電位が所定値以上である場合に、前記除電装置を制御して、前記巻取り装置により前記自己放電型除電器を所定長さ巻取り、前記張力付与装置により前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する制御部と、
を具備することを特徴とする除電システム。
【請求項2】
前記巻出し装置は、前記自己放電型除電器を巻きつけたリールと、前記自己放電型除電器の巻出しをガイドするガイドローラを有し、
前記巻取り装置は、前記自己放電型除電器の巻き取りをガイドするガイドローラと、前記自己放電型除電器を巻きつけるリールを有することを特徴とする請求項1記載の除電システム。
【請求項3】
前記制御部が、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器について測定された張力に応じて、前記張力付与装置により、前記巻出し装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけたリール、および前記巻取り装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけるリールの回転を制御し、前記自己放電型除電器の張力を調整することを特徴とする請求項1または請求項2記載の除電システム。
【請求項4】
ウェブ材の除電を行う除電方法であって、
ウェブ材の除電を行なう自己放電型除電器を巻出す巻出し装置と、前記自己放電型除電器を巻取る巻取り装置と、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器に所定の張力を付与する張力付与装置とを有する除電装置と、
前記ウェブ材の表面電位を測定する表面電位測定装置と、
制御部と、を具備する除電システムにより、
前記制御部が、前記表面電位測定装置で測定された前記ウェブ材の表面電位が所定値以上である場合に、前記除電装置を制御して、前記巻取り装置により前記自己放電型除電器を所定長さ巻取り、前記張力付与装置により前記自己放電型除電器に所定の張力を付与することを特徴とする除電方法。
【請求項5】
前記巻出し装置は、前記自己放電型除電器を巻きつけたリールと、前記自己放電型除電器の巻出しをガイドするガイドローラを有し、
前記巻取り装置は、前記自己放電型除電器の巻き取りをガイドするガイドローラと、前記自己放電型除電器を巻きつけるリールを有することを特徴とする請求項4記載の除電方法。
【請求項6】
前記制御部が、前記巻出し装置と前記巻取り装置の間の前記自己放電型除電器について測定された張力に応じて、前記張力付与装置により、前記巻出し装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけたリール、および前記巻取り装置が有する前記自己放電型除電器を巻きつけるリールの回転を制御し、前記自己放電型除電器の張力を調整することを特徴とする請求項4または請求項5記載の除電方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の除電システムが設けられた、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置。
【請求項8】
前記ウェブ材処理装置は、前記ウェブ材として印刷用紙を搬送し印刷を行うグラビア輪転機であり、
前記除電装置が、圧胴の、印刷用紙搬送方向の下流側の近傍に配置され、
前記表面電位測定装置が、前記除電装置の、印刷用紙搬送方向の下流側に配置されることを特徴とする請求項7記載のウェブ材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−195053(P2012−195053A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55857(P2011−55857)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】