説明

除電ブラシ

【課題】 繊維状電極の脱落が少なく、除電性能も充分発揮出来る除電ブラシを提供する。
【解決手段】 二つ折りに折り曲げた繊維状電極の内側に配された支持部材と前記繊維状電極の外側に配された保持部材とで前記繊維状電極の折曲部の近傍を挟持して固定し、その両端を前記支持部材及び前記保持部材の先端から突出させるとともに、前記支持部材の前記繊維状電極を介して対面する内側面に突条部と溝部を設け、前記繊維状電極を介して前記突条部を前記溝部と嵌合させた除電ブラシとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OA機器(プリンター、複写機、ファクシミリなど)、ATM、発券機、CD・DVDドライブ、プラスチックフィルム製造機などの電気・電子機器の本体に静電気除去のために装着して使用する除電ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器やATM、発券機、CD・DVDドライブ、各種プラスチック加工機器などの電気・電子機器では、出力媒体としての紙や合成樹脂フィルム等の帯電を除去するために自己放電式の除電ブラシが設けられる。
そして、除電ブラシとしては、多数配列した繊維状電極を導電性粘着テープで挟持して保持してなる形態のものが知られている。
【0003】
しかしながら、これら除電ブラシは、高温環境下や有機溶剤蒸気が発生する環境下で使用した場合、繊維状電極を保持している導電性粘着テープの粘着剤や接着剤が軟化及び劣化して保持力を失い、繊維状電極が脱落する問題があった。
【0004】
そこで例えば、繊維状電極を支持板の長手方向に平行な両側端より突出して多数配列させ、かつ該繊維状電極を支持板と導電性粘着テープとで挟着し、導電性粘着テープが内側になるように長手方向に沿って2つ折りに折り曲げた除電ブラシ(特許文献1)や、繊維状電極を導電性粘着テープから突出して多数配列させ、かつ繊維状電極を導電性粘着テープと線状芯材とで挟着し、線状芯材が内側となるように2つ折りに折り曲げた除電ブラシ(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−73598号公報
【特許文献2】実用新案登録第3092624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの形態を有する従来の除電ブラシでも、高温環境下や有機溶剤蒸気が発生する環境下で使用した場合、繊維状電極を保持している導電性粘着テープの粘着剤や接着剤が軟化及び劣化して保持力を失い、繊維状電極が脱落する問題を防ぐのは不十分であった。
そこで本発明は、繊維状電極の脱落が少なく、除電性能も充分発揮出来る除電ブラシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記本発明の目的は以下の構成からなる除電ブラシとすることによって達成される。すなわち、
(1)本発明の除電ブラシは、二つ折りに折り曲げた繊維状電極を保持部材と支持部材とで挟んで固定すると共に、前記繊維状電極の先端部分が前記保持部材と前記支持部材とから突出している除電ブラシであって、前記保持部材は、前記二つ折りに折り曲げた繊維状電極の内側に設けられ、前記支持部材は、前記二つ折りに折り曲げた繊維状電極の外側に設けられ、かつ前記支持部材の対面する内側面において突条部と溝部が設けられ、前記繊維状電極を介して前記突条部が前記溝部と嵌合することを特徴とする。
(2)前記(1)の本発明の除電ブラシは、前記保持部材が、一対の電極用基板を積層させたもの、あるいは一つの電極用基板を二つ折りに折り曲げて一体化させたものであってもよい。
(3)前記(2)の本発明の除電ブラシは、前記一対の電極用基板の間、あるいは前記一つの電極用基板を二つ折りに折り曲げた内側に芯材を挟持させたものであってもよい。
(4)前記(1)〜(3)の本発明の除電ブラシの前記支持部材は、前記突条部を除いて防錆処理がなされていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
前記の構成からなる本発明の除電ブラシは、繊維状電極の脱落が少なく、除電性能も充分発揮出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の除電ブラシの一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の除電ブラシの正面図(a)と、図1のX−X面断面図(b)である。
【図3】本発明の除電ブラシの製造プロセスの一例を説明する概略断面図である。
【図4】本発明の除電ブラシの製造プロセスの他の例を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の除電ブラシの一実施例を示す概略斜視図であり、図2はその正面図(a)および図1におけるX−X面の断面図である。また、図3及び4は本発明の除電ブラシの製造プロセスの一例を説明する概略断面図である。
本発明の除電ブラシ1は、二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6を図1に示すように保持部材5と支持部材7とで挟んで固定すると共に、該繊維状電極6の先端部分が保持部材5と支持部材7とから突出しているものであって、該保持部材5は、二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6に対して該繊維状電極6の内側に設けられ、該支持部材7は、二つ折りに折り曲げられた該繊維状電極6の外側に設けられる。さらに、支持部材7の内側面の繊維状電極6を介して対面する位置には突条部8と溝部9が設けられ、該繊維状電極6を介して突条部8が溝部9と嵌合する。
【0011】
図1〜4に例示するように、本発明の支持部材7(17)は、二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6(16)を保持部材5(15)とともに挟んで固定する部材で、支持部材7(17)の内側面(繊維状電極6(16)と接触する面)に突条部8(18)と溝部9(19)を有する形状であればよく、例えば図1〜4に示すように長板状のアルミニウム板を長手方向に沿う中央線で断面コの字状に折り曲げたもの、あるいは断面アーチ状や断面V字状に折り曲げたもので、繊維状電極6(16)および保持部材5(15)を挟んだ際に、その内側面であって繊維状電極6(16)を介して対面する位置にそれぞれ突条部8(18)と溝部9(19)を有するものであればよい。
なお、断面コの字状、断面アーチ状、断面V字状に折り曲げる前の支持部材7(17)としては長板状、すなわち、長方形のものが用いられているが、支持部材7(17)の形状は特に長方形の形状である必要はなく、長板状であればその形状に関して制限はない。また、断面コの字状、断面アーチ状、断面V字状のアルミ押出材で、内側面に突条部8(18)と溝部9(19)を有するものであってもよい。
【0012】
また、支持部材7(17)は、突条部8(18)の部分を除いた表面にアルマイト処理等の防錆処理を施すことが出来る。その結果、支持部材7(17)自身の防錆効果が得られると共に、繊維状電極6(16)に吸着した電荷を支持部材7(17)の突条部8(18)を介してアースへ逃がすことが出来る。
【0013】
さらに、図2(b)、図3、図4のA部のように支持部材7(17)の折り曲げ部位に段差が設けられていれば、除電ブラシ1(11)の製造に際して、支持部材7(17)を後述のプレス等で押圧した際、支持部材7(17)を変形させることなく押圧できるので好ましい。
【0014】
さらにまた、図2(b)、図3、図4のB部のようにその先端部分を長手方向に沿って面取りしておけば、除電ブラシ1(11)の使用に際して、狭い場所にも取り付けが可能なので好ましい。
【0015】
本発明の保持部材5(15)は電極用基板2(12)からなり、二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6(16)の脱落を防止する部材である。そして、繊維状電極6(16)を保持部材5(15)に固定するための粘着剤や接着剤が軟化及び劣化して保持力を失っても、二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6(16)の折曲部分と対峙する側の保持部材5(15)の端部D(図3(d)、図4(d)参照)がストッパーとして作用し、繊維状電極6(16)の脱落を防止する。保持部材5(15)としては、ストッパーとして作用する部材であれば、後述する電極用基板2(12)のみや、電極用基板2(12)を複数積層させたものでもよく、特に、図3(c)、(d)に例示のように一対の電極用基板2を積層させたものや、図4(c)、(d)に例示のように一つの電極用基板12を二つ折りに折り曲げて一体化させたものが好ましい。更に、図3、4のように、剛性に優れた芯材4を一対の電極用基板2、2で挟持させたもの、あるいは一つの電極用基板12を二つ折りに折り曲げた内側に芯材14を挟持させたものがより好ましい。
【0016】
また、保持部材5(15)の電極用基板2(12)としては、例えばアルミニウム箔などの金属箔、ポリエステルフイルム、ポリエチレン、ポリウレタン等の合成樹脂フィルムもしくはシート、紙、これらの積層体であってもよい。そして、電極用基板2(12)と芯材4(14)とを組み合わせて保持部材5(15)を構成する際には、金属箔に粘着層を設けたテープ状の電極用基板を採用するのが繊維状電極6(16)を固定する観点から好ましい。
【0017】
保持部材の芯材4(14)は、電極用基板2(12)に比べて剛性の大きいアルミニウム板、ステンレス板、ポリエステル樹脂板等の素材が好ましく用いられる。
【0018】
本発明の繊維状電極6(16)は、図2(b)、図3、図4等に示すように二つ折りに折り曲げられた繊維状電極6(16)を保持部材5(15)と支持部材7(17)とで挟んで固定すると共に、繊維状電極6(16)の先端部分が保持部材5(15)と支持部材7(17)とから突出しているものである。例えば、図3(d)、図4(d)に示すように支持部材7(17)の先端部分Cより繊維状電極6(16)の先端部分が突出しているものである。
【0019】
また、繊維状電極6(16)としては、例えばステンレス繊維、銅、アモルファス合金等の金属繊維、カーボン繊維、合成繊維に導電性ポリマーや硫化銅を被覆した導電繊維、金属染色繊維等や、これらの導電性繊維の不織布、織布、編布などの導電性布帛が使用される。
【0020】
図3は、本発明の除電ブラシ1を製造するプロセスを、図1におけるX−X面で切断した断面方向から見ているものとして説明する概略断面図である。なお、便宜上、図3の製造プロセスを説明する図では繊維状電極6の先端部分が水平方向に向いているが、本来は図1や図2の除電ブラシ1と同じように繊維状電極6の先端部分が垂直方向(下方向)に向いているものである。
【0021】
本発明の除電ブラシ1を製造するには、例えば、〔1〕:図3(a)に示すように一対の長板状電極用基板2を一定の間隔を隔てて配置し、長板状電極用基板2の長さ方向と直交するように多数の繊維状電極6を配列し、繊維状電極6の上から接着剤3を塗布し、繊維状電極6を長板状電極用基板2へ固定する。
【0022】
〔2〕:次いで、図3(b)に示すように、一対の電極用基板2の一方において、繊維状電極6が固定されていない側の面に長板状の芯材4を積層させる。
なお、長板状電極用基板2に接着剤を塗布してから芯材4を積層させる、あるいは電極基板2自体が粘着テープであれば接着剤を塗布することなく芯材4を積層させることが出来る。
【0023】
〔3〕:次に、図3(c)に示すように、多数の繊維状電極6が電極用基板2や芯材4よりも外側になるように二つ折りにする。すなわち、二つ折りにした繊維状電極6の内側には、芯材4を電極用基板2で挟持(サンドイッチ)した構造の保持部材5が設けられている。
【0024】
〔4〕:次いで、図3(d)に示すように、芯材4を長板状電極用基板2で挟持(サンドイッチ)した構造の保持部材5と、多数の繊維状電極6の一端部(折曲部側)を内包するように支持部材7を設ける。なお、図のように繊維状電極6の上に両面粘着テープ10を貼着させ、更にその両面粘着テープと支持部材7とを接着させ、支持部材7と内包させたものとが所定位置からずれないように仮止めしてもよい。
【0025】
〔5〕:最後に、図3(e)に示すように、支持部材7をプレス等で押圧することによって、支持部材7の内側面(繊維状電極6と接触する面)に設けられた突条部8が繊維状電極6を介して突条部8と対面する位置に設けられている溝部9へ嵌合し、本発明の除電ブラシ1が得られる。
【0026】
なお、除電ブラシ1の製造方法は、最終的に前記製造方法において得られた除電ブラシ1と同じ構成を有するものであれば、どのような製造方法であってもよい。
【0027】
図4は、本発明に係る別の実施例の除電ブラシ11を製造するプロセスを、図1におけるX−X面で切断した断面方向から見ているものとして説明する概略断面図である。なお、便宜上、図4の製造プロセスを説明する図では繊維状電極16の先端部分が水平方向に向いているが、本来は図1や図2の除電ブラシと同じように繊維状電極16の先端部分が垂直方向(下方向)に向いているものである。
【0028】
本発明の除電ブラシ11を製造するには、例えば、〔1〕:図4(a)に示すように一枚の長板状電極用基板12を配置し、該長板状電極用基板16の長さ方向と直交するように多数の繊維状電極16を配列し、繊維状電極16の上から接着剤13を塗布して繊維状電極16を長板状電極用基板12へ固定する。
【0029】
〔2〕:次に、図4(b)に示すように長板状電極用基板12の1/2幅より短い長さの長板状の芯材14を、繊維状電極16が固定されていない側の面で、かつ長板状電極用基板12の幅方向の一方の端部に揃えるように積層させる。なお、長板状電極用基板12に接着剤を塗布してから芯材14を積層させる、あるいは長板状電極基板12自体が粘着テープであれば接着剤を塗布することなく芯材14を積層させることが出来るので好ましい。
【0030】
〔3〕:次いで、図4(c)に示すように、多数の繊維状電極16が、長板状電極用基板12や芯材14よりも外側になるように二つ折りにする。すなわち、二つ折りにした繊維状電極16の内側には、芯材14を長板状電極用基板2で挟持(サンドイッチ)した構造の保持部材15が設けられる。
【0031】
〔4〕:次いで図4(d)に示すように、芯材14を長板状電極用基板12で挟持(サンドイッチ)した構造の保持部材15と、その外側に固定された多数の繊維状電極16の一端部(折曲部側)を内包するように支持部材17を設ける。なお、図4(d)のように繊維状電極16の上に両面粘着テープ20を貼着させ、更にその両面粘着テープと支持部材17とを接着させ、支持部材と内包させたものとが所定位置からずれないように仮止めしてもよい。
【0032】
〔5〕:最後に、図4(e)に示すように、支持部材17をプレス等で押圧することによって、支持部材17の内側面(繊維状電極16と接触する面)に設けられた突条部18が繊維状電極16を介して突条部18と対面する位置に設けられている溝部19へ嵌合し、本発明の除電ブラシ11が得られる。
【0033】
なお、除電ブラシ11の製造方法は、最終的に前記製造方法において得られた除電ブラシ1と同じ構成を有するものであれば、どのような製造方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の除電ブラシは、長期間使用しても支持部材と保持部材に固定されている繊維状電極の脱落がなく、OA機器(プリンター、複写機、ファクシミリなど)、ATM、発券機、CD・DVDドライブ、プラスチックフィルム製造機などにおける静電気除去用の除電ブラシとして利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1、11 除電ブラシ
2、12 電極用基板
3、13 接着剤
4、14 芯材
5、15 保持部材
6、16 繊維状電極
7、17 支持部材
8、18 突条部
9、19 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ折りに折り曲げた繊維状電極を保持部材と支持部材とで挟んで固定すると共に、前記繊維状電極の先端部分が前記保持部材と前記支持部材とから突出している除電ブラシであって、
前記保持部材は、前記二つ折りに折り曲げた繊維状電極の内側に設けられ、
前記支持部材は、前記二つ折りに折り曲げた繊維状電極の外側に設けられ、かつ前記支持部材の対面する内側面において突条部と溝部が設けられ、前記繊維状電極を介して前記突条部が前記溝部と嵌合することを特徴とする除電ブラシ。
【請求項2】
前記保持部材が、一対の電極用基板を積層させたもの、あるいは一つの電極用基板を二つ折りに折り曲げて一体化させたものであることを特徴とする請求項1に記載の除電ブラシ。
【請求項3】
前記保持部材が、前記積層された一対の電極用基板の間にさらに芯材を挟持させたもの、あるいは前記一つの電極用基板を二つ折りに折り曲げた内側にさらに芯材を挟持させたものであることを特徴とする請求項2に記載の除電ブラシ。
【請求項4】
前記支持部材は、前記突条部を除いて防錆処理がなされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除電ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143168(P2011−143168A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8244(P2010−8244)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】