説明

除電器

【課題】ケースの後加工を極力少なくすることのできる除電器を提供する。
【解決手段】除電器1の外側ケース6は、射出成形品の本体ケース8と、押し出し成形品の延長ケース10とで構成されている。本体ケース8には、除電器1に組み込まれる全ての基板が収容されている。本体ケース8には内部壁12が一体成形されており、この内部壁12を使って除電器1に組み込まれる基板が位置決めされると共に、少なくとも電源基板B(p)は樹脂モールドされる。本体ケース8には伝熱性に優れたアルミニウムプレート14がインサートされている。除電器1の本体ケース8及び延長ケース10には、互いに凹凸嵌合により連結された複数の電極ユニット支持部材22が組み込まれ、その一つの電極ユニット支持部材22は本体ケース8と延長ケース10との連結部分を跨いで位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊粒子の帯電防止などの環境の静電気制御のために除電器が使われている。除電器は、一般的に、細長いバー形状を有し、長手方向に複数の放電電極を備えている。そして、各放電電極に高電圧を印加することによりイオンを発生して、例えばワークを除電する。放電電極に対する高電圧の印加のやり方としてAC式とDC式とに大別できるが、放電電極に高電圧を印加することに着目すればAC式とDC式とに大差はない。
【0003】
特許文献1は、細長いバー形状の除電器の典型例を開示している。具体的には、除電器のケースは断面U字状の押し出し成形品が用いられ、このケースの長手方向に間隔を隔てて放電電極を含む電極ユニットが脱着可能に配置される。また、ケースには、高電圧ユニット、表示回路基板、制御基板が収容されて、高電圧ユニットが生成した高電圧が各放電電極に供給される。この各放電電極への高電圧の分配は、ケースの長手方向に連続して延びる高電圧分配板を介して行われる。なお、特許文献1には開示されていないが、市販の除電器の中には、各放電電極毎に配線を通じて高電圧を供給する方式を採用した除電器も存在している。
【0004】
特許文献2は除電器のケースを左右に分割することを提案しているが、この特許文献2には、高電圧電源基板、制御基板、表示基板を互いに配線又はケーブルで接続した例が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−163950号公報
【特許文献2】特開2010−272532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細長いバー形状の除電器のケースに成形品を使う場合、その成形法として押し出し成形品を使った場合、この押し出し成形法は、長手方向に同じ断面形状を作る手法であるため、除電器の長さ寸法の違いに対応するのに効果的であり且つバー形状の除電器のケースに適した成型方法であると言うことができる。
【0007】
しかしながら、除電器には、ユーザインターフェースの表示入力部を設ける必要があり、この表示入力部を設置するために一部を切り欠いたり、穴を開ける機械加工が、押し出し成形後に必要となる。この後処理は、工数が増加することに伴うコストアップの要因となる。
【0008】
本発明の目的は、ケースの後加工を極力少なくすることのできる除電器を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、長尺のケースの折り曲がりを抑制することのできる除電器を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、樹脂製ケースの放熱性を高めることのできる除電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
長尺の外側ケースを備え、該外側ケースの長手方向に間隔を隔てて複数の放電電極が配置される除電器において、
前記外側ケースが、前記除電器に含まれる回路基板を収容した本体ケースと、該本体ケースに必要に応じて連結される延長ケースとで構成され、
前記延長ケースが、長手方向に同じ断面U字状の形状に成形された成形品から作られ、
前記本体ケースが、前記回路基板を位置決めするための内部壁と、表示及び入力部が設置されるインターフェース設置部とを一体成形した断面U字状の形状を有することを特徴とする除電器を提供することにより達成される。
【0012】
本発明によれば、本体ケースに表示及び入力部が設置されるインターフェース設置部が一体成形されていることから、表示及び入力部を設置するために本体ケースに後加工する必要は無い。また、本体ケースに回路基板を位置決めするための内部壁が一体成形されているため回路基板を本体ケースに挿入だけで本体ケースに回路基板を位置決めすることができ、回路基板の組み付けが容易になる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、
各放電電極が組み付けられた電極ユニットと、
複数の電極ユニットを脱着自在に受け入れて、該複数の電極ユニットを支持する長尺の電極ユニット支持部材とを更に有し、
前記電極ユニット支持部材が、前記外側ケースの長手方向に沿って前記本体ケースと前記延長ケースとの連結箇所を跨いで配置されており、これにより、本体ケースと延長ケースとで除電器の外側ケースを構成したときに、本体ケースと延長ケースとを跨いで位置する電極ユニット支持部材によって本体ケースと延長ケースとの間の折れ曲がりを抑制することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、
前記複数の放電電極の各々に対応した複数の開口が形成され、各開口が各放電電極と対応するように配置された導電性のGNDプレートを更に有し、
該GNDプレートが、前記外側ケースの長手方向に沿って前記本体ケースと前記延長ケースとの連結箇所を跨いで配設されており、これにより、本体ケースと延長ケースとで除電器の外側ケースを構成したときに、本体ケースと延長ケースとを跨いで位置するGNDプレートによって本体ケースと延長ケースとの間の折れ曲がりを抑制することできる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、
前記本体ケースが、熱伝導性金属プレートをインサートした合成樹脂材料の成形品で構成され、この熱伝導性金属プレートによって、基板を収容する樹脂製の本体ケースの放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電極ユニット及びGNDプレートを装着する前の実施例の延長ケース付き除電器の側面図である。
【図2】図1の除電器の断面図である。
【図3】実施例の除電器に組み込まれる電源回路図である。
【図4】電極ユニットの図示を省いた実施例の除電器の分解斜視図である。
【図5】電極ユニットを装着した状態の実施例の除電器の斜視図である。
【図6】外側ケースが本体ケースだけで構成された除電器の断面図である。
【図7】除電器に装着した電極ユニットの部分の断面図であり、放電電極の沿面距離を説明するための図である。
【図8】除電器に組み込まれた電源基板を示すための図であり、本体ケースの断面図である。
【図9】互いにコネクタ連結された2つの基板が互いにオーバーラップした状態で本体ケースに組み込まれていることを説明するために本体ケースを斜め上から見た図である。
【図10】本体ケースの長手方向に延びる開口から本体ケースの内部を見た図であり、電源回路が装着される部分に樹脂が充填されて、電源回路がモールドされることを説明するための図である。
【図11】本体ケースの延長ケースが連結される端部に形成された凹部を示す本体ケースの部分側面図であり、この凹部に側面キャップが装着されることで本体ケースの側面及び頂面は面一の外形輪郭となることを説明するための図である。
【図12】図11に図示の凹部に脱着可能に装着される側面キャップの斜視図である。
【図13】図11に関連して、本体ケースの凹部に側面キャップを装着した状態を示す本体ケースの側面図であり、側面キャップを装着することで本体ケースの側面及び頂面が面一の外形輪郭を形成した状態を示す図である。
【図14】側面キャップを装着した本体ケースを断面した図であり、図13のX14−X14に沿った断面図である。
【図15】本体ケースだけで除電器を構成するときに、延長ケースが連結される側の端部にエンドカバーを装着した状態を示し、本体ケースの長手方向に延びるネジをエンドカバーの外方からねじ込むことでエンドカバーが側面キャップを介して本体ケースに固定されている状態を説明するための側面図である。
【図16】延長ケースを含む除電器において、延長ケースの部分において隣接する電極ユニットの中間部分を断面した図である。
【図17】延長ケースを含む除電器(電極ユニット装着前)の縦断面図である。
【図18】GNDプレートの設置経路を説明するための図であり、本体ケースの端部(延長ケースを連結する側の端部とは反対側の端部)に装着されるガスアダプタにアース端子が設けられて、このアース端子がGNDプレートの端部に接触することを説明するための図である。
【図19】本体ケースの端部(延長ケースを連結する側の端部とは反対側の端部)にGNDプレートが半径方向に延びるネジで固定され、このネジがエンドカバーで包囲されることを説明するための図である。
【図20】GNDプレートの側面に形成した開口に電極ユニット支持部材の爪が入り込むことでGNDプレートが位置決め固定されることを説明するため図であり、電極ユニットが装着された除電器の部分図である。
【図21】除電器から電極ユニットを取り外した状態を示す、図20に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0018】
図1、図2は実施例の除電器1を示し、図1は側面図、図2は断面図である。なお、これら図1、図2は後に説明する放電電極を含む電極ユニット及びグランド(GND)プレートを装着する前の状態の除電器を図示している。
【0019】
除電器1は、従来と同様に、長手方向に延びる細長い形状を有し、そして、長手方向に互いに離間して複数の電極ユニット(放電電極)が脱着可能に装着され、除電器1の内部で生成した高電圧を各放電電極に印加することによりイオンを生成する。
【0020】
この除電器1に搭載される駆動電源回路2の一例を図3に示す。なお、図3の駆動電源回路2はパルスAC式であるが、除電器1のケースやGNDプレートなどの構造体に関してはパルスAC式に限定されずDC式でもよく、駆動方式は任意である。
【0021】
図3を参照して、駆動電源回路2の高電圧電源回路202を有し、この高電圧電源回路202で生成した正極性と負極性の高電圧を共通の放電電極4に交互に印加することにより、この共通の放電電極4を使ってプラスイオンとマイナスイオンとが交互に生成される。
【0022】
高電圧電源回路202は、正極性の高電圧発生回路204と負極性の高電圧発生回路206とを有し、この2つの高電圧発生回路204、206は、夫々、巻き線トランスで構成される一次昇圧回路210、212と、コッククロフト・ウオントン回路(倍電圧整流回路)で構成される二次昇圧整流回路214、216とを含んでいる。
【0023】
正極性の一次昇圧回路210を構成する巻き線トランスには、第1のメインスイッチ素子218を介して電源220が供給される。他方、負極性の一次昇圧回路212を構成する巻き線トランスには、第2のメインスイッチ素子222を介して電源224が供給される。
【0024】
図3の下方に描かれている正極性の一次昇圧回路210を構成するトランスの二次巻き線210aの接地側端子210bは接地されていると共に正極側の二次昇圧整流回路214を構成するコッククロフト・ウオントン回路の基準電位側に接続されている。この正極性の二次昇圧整流回路214は出力線226は、図3の上方に描かれている負極性の二次昇圧整流回路216の基準電位側に結線されている。
【0025】
負極性の二次昇圧整流回路216は、コッククロフト・ウオントン回路からなる倍圧整流回路で構成され、この負極性の二次昇圧整流回路216の出力は直接的に高電圧電源回路202の出力経路228を通じて放電電極4に印加される。勿論、放電電極4は単数であってもよいし複数であってもよい。
【0026】
負極性の一次昇圧回路212を構成するトランスの二次巻き線212aの接地側端子212bは接地されており、この接地側端子212bは、前述した負極性の二次昇圧整流回路216から断絶されている。換言すると、負極側の一次昇圧回路212を構成するトランスの二次巻き線212aの接地側端子212bは、この一次昇圧回路212に続く負極性の二次昇圧整流回路216には接続されていない。
【0027】
なお、正極側及び負極側のメインスイッチ素子218、222は、従来と同様に、除電器1に収容されたコントローラから出力されるON/OFF信号によって駆動される。コントローラは、その大半が制御基板に実装され、一部が電源基板B(p)にも実装される。
【0028】
負極側メインスイッチ素子222がONされ、他方、正極側メインスイッチ素子218がOFFされると、負極性の高圧電源回路206で生成された負極性の高電圧が出力経路228を通じて放電電極4に印加され、放電電極4で負極性のイオンが生成される。
【0029】
逆に、正極側メインスイッチ素子218がONされ、他方、負極側メインスイッチ素子222がOFFされると、正極性の高圧電源回路204で生成された正極性の高電圧が、その出力線226及び負極性の二次昇圧整流回路216を介して、この負極性の二次昇圧整流回路216の出力経路でもある高圧電源回路302の出力経路228を通じて共通放電電極4に印加される。これにより、放電電極4で正極性のイオンが生成される。
【0030】
なお、図示の例では、負極性の二次昇圧整流回路216の出力経路228を放電電極4に接続し、他方、正極性の二次昇圧整流回路214の出力線226を負極性の二次昇圧整流回路216の基準電位側に接続して、この負極性の二次昇圧整流回路216の出力経路でもある高電圧電源回路202の出力経路228を通じて放電電極4に正極性の高電圧を印加するようにしてあるが、その変形例として、正極性の二次昇圧整流回路214の出力線226を高電圧電源回路202の出力経路とし、負極性の二次昇圧整流回路216の出力線228を正極性の二次昇圧整流回路214の基準電位側に接続して、この負極性の二次昇圧整流回路216で生成した負極性の高電圧を、正極性の二次昇圧整流回路214の出力経路を介して放電電極4に出力するようにしてもよい。
【0031】
図示の正極性及び負極性の二次昇圧整流回路214、216を構成する倍圧整流回路が3段のコッククロフト・ウオントン回路で構成されているが、その段数は単数であってもよいし、3段以外の他の複数段であってもよい。また、正極性及び負極性の二次昇圧整流回路214、216の倍圧整流回路の段数が異なっていてもよい。
【0032】
また、図示の駆動電源回路2では電源220、224として交流電源(正弦波)が図示されているが、これに代えてパルス波の電源を採用してもよい。また、図3では、別々の交流電源として図示してあるが、これを一つの交流電源で構成してもよいし、直流電源と共振回路との組み合わせからなる交流電源であってもよい。
【0033】
更に、図3に図示の電源220、224を直流電源で構成し、メインスイッチ素子218、222を制御することにより一次昇圧回路210、212にパルス状の交流電源を供給するようにしてもよい。より具体的に説明すると、例えば正極側のメインスイッチ素子218がONされるべき期間にON/OFFを繰り返して一次昇圧回路210にパルス状の電圧が印加されるようにし、正極側のメインスイッチ218がOFFされるべき期間は、この正極側のメインスイッチ218がOFF状態に保持される。負極側のメインスイッチ素子222も同様にONされるべき期間にON/OFFを繰り返し、この負極側のメインスイッチ222がOFFされるべき期間は、この負極側のメインスイッチ222がOFF状態に保持される。
【0034】
一次昇圧回路212、214は、図3などに示す巻き線トランスに代えて、図示を省略した圧電素子(圧電トランス)で構成してもよい。
【0035】
図3に図示の駆動電源回路2によれば、正極性の高電圧発生回路204は、負極性の二次昇圧整流回路216の基準電位側に接続されている。したがって、正極性の高電圧発生回路204が生成した高電圧Vpは、負極性の二次昇圧整流回路216の出力線228を通じて放電電極4に印加される。また、負極性のトランス122の二次巻き線212aの接地側端子は接地され、この接地側端子は、正極性の高電圧発生回路204の出力線226から断絶されている。
【0036】
図示の駆動電源回路2によれば、正及び負の一次昇圧回路210、212を構成する典型的にはトランスのような昇圧部品に関して高度な絶縁性が要求されない。また、正負の二次昇圧整流回路214、226の出力電圧を実質的に独立して共通の放電電極4に印加することができる。したがって、この正負の二次昇圧整流回路214、226は、共通の放電電極4に印加する正極性、負極性の高電圧を生成できる能力を実質的に備えていればよい。このことから、これら正負の二次昇圧整流回路214、226を例えばコッククロフト・ウオントン回路で構成するときには、その段数を少なくすることができる。
【0037】
上記の説明から判るように、図3に図示の駆動電源回路2及びその変形例を採用することで、従来と比較して電源回路基板を小型化することができる。
【0038】
図4は除電器1の分解斜視図である。なお、この図4は、電極ユニットの図示及び制御基板、電源基板、表示基板などの回路基板の図示が省かれている。図1、図2及び図4を参照して、除電器1の概要を説明すると、除電器1の外側ケース6は、本体ケース8と、この本体ケース8を延長するための延長ケース10とで構成される。延長ケース10は必ずしも必須ではなく延長ケース10無しで除電器1が構成される場合もある。本体ケース8は約200mmの長さ寸法L(m)を有する。延長ケース10の長さ寸法L(e)は任意であり、顧客の要請又は製品仕様によって自在に設定することができる。
【0039】
本体ケース8は複雑な形状を成形するが容易な成形法、具体的には射出成形法によって形作られた合成樹脂製の成形品であり、材料は電気的な絶縁性及び難燃性の合成樹脂が採用されているが、これに限定されない。例えば熱伝導性及び軽量なアルミニウム、マグネシウムのような金属であってもよい。他方、延長ケース10は、長手方向に同じ断面形状の長尺物を成形するのが容易な成形法、典型的には押出成形法によって形作られた合成樹脂製の成形品であるが、材料は、本体ケース8と同様に、電気的な絶縁性及び難燃性の合成樹脂に限定されず金属であってもよい。変形例として、押出成形法に代えて、ロールフォーミング成形法を採用してもよい。図示の除電器1は本体ケース8と延長ケース10の外形輪郭が同じであり、除電器1の見た目を高めるために本体ケース8と延長ケース10とを付き合わせる端部が同じ外形輪郭を備えている。勿論、本体ケース8の端と延長ケース10の端との間に段部ができる形状であってもよい。
【0040】
本体ケース8は一体成形された断面U状の形状を有し、また、その内部に複数の互いに離間した内部壁12(図10)が一体成形されている。この複数の内部壁12は基板位置決めを目的としており、この内部壁12の例えば縦溝に回路基板を挿入することで基板の位置決めが行われる。必要であれば、本体ケース8の開口側に、成形したプレート部材(後に説明する参照符号42の部材)を定置することで基板の上下の位置決めを行えばよい。
【0041】
回路基板同士の接続は、基板に位置決めされたコネクタ同士を連結することによって行うのがよい。これにより基板同士が相互に位置決めされるため、本体ケース8に基板を組み込むときに、互いにコネクタ接続した複数の基板を単に本体ケース8内に挿入するだけでよく、従来のように複数の基板同士を配線を使って接続した後にケースに設置する手間や複数の基板をケース内に固定する作業が必要なくなる。勿論、本発明の実施例において配線を使って基板同士を接続する方法を採用してもよいし、コネクタと配線とを併用して基板同士を接続するようにしてもよい。
【0042】
複数の基板Bは物理的に別体の電源基板や制御基板を含み、これらの基板B、特に電源基板B(p)は熱源となる。本体ケース8をアルミニウムのような伝熱性に優れた材料で作る場合は別であるが、典型的には樹脂製の本体ケース8に伝熱性に優れた金属材料、例えばアルミニウムプレート14(図2)をインサートして本体ケース8を成形するのがよい。これにより本体ケース8の放熱性が高まるため、本体ケース8内の基板実装密度を高めることができ、本体ケース8の長さ寸法や幅寸法を小さくすることができる。このことは、延長ケース10無しの除電器1の長さ寸法を小さく設定することができるため、小さな幅の除電エリアに対して効率的に適用できる。
【0043】
本体ケース8には、ユーザインターフェースカバー16で覆われるインターフェース設置部18(図4)が本体ケース8を成形するときに同時に成形され、このインターフェース設置部18に表示部や入力部が設置される。したがって、従来のように押し出し成形品でケースを製造して後加工でインターフェース設置部18b等を作る、その手間及び機械加工コストが不要になる。
【0044】
本体ケース8と延長ケース10とは、本体ケース8の長手方向に伸びる複数のネジ(後に説明する)によって連結され、この連結部位はスナップ嵌めされる側面キャップ52によって包囲される。この側面キャップ52の取り外しは作業者の意図的な操作によって可能であることから、側面キャップ52が不用意に外れることはない。この側面キャップ52を取り付けることにより、長尺の除電器1の場合には本体ケース8の一端部の凹所つまり本体ケース8と延長ケース10との境界領域に存在する凹所(側面キャップ52を取り付ける部位)又は本体ケース8だけで構成した短尺の除電器1の場合には、この除電器1の一端部分に存在する凹所を上記の側面キャップ52によって埋めることで、除電器1の外側ケース6の外形輪郭を、外側ケース6の一端から他端に亘って面一の状態にすることができる。除電器1の外側ケース6に凹所が存在する場合に、この凹所に埃が蓄積し易いが、側面キャップ52を取り付けて外側ケース6の外形輪郭を面一にすることで、外側ケース6に埃が蓄積するのを抑制することができる。
【0045】
図4の参照符号22は電極ユニット支持部材を示す。電極ユニット支持部材22は長尺の樹脂成形部材であり、この電極ユニット支持部材22には電極ユニット24(図5)を受け入れる複数の開口26が長手方向に離間して形成されている。この複数の開口26は好ましくは等間隔に位置するのがよい。実施例の除電器1はガス(典型的には浄化したエアや不活性ガス)によってイオンを搬送する機能を備えており、電極ユニット支持部材22には、従来と同様に、その長手方向に延びるガス通路Gpを有し、このガス通路Gpから各電極ユニット24にガスが供給されて、このガスは放電電極4(図5)の周囲から外部に吐出される。
【0046】
除電器1の外側ケース6が延長ケース10によって本体ケース8よりも延長されるときには、複数の電極ユニット支持部材22をその長手方向に互いに連結した状態で除電器1の外側ケース6に装着される。電極ユニット支持部材22の長さ寸法L(sp)は本体ケース8の長さ寸法L(m)よりも相当に小さな長さ寸法に設定されている。これにより、本体ケース8と延長ケース10との連結部分と、電極ユニット支持部材22の連結部分とは、外側ケース6の長手方向にオフセットされている。より具体的には、電極ユニット支持部材22の連結部分が本体ケース8側にオフセットしている。すなわち、本体ケース8と延長ケース10との連結部の近傍に電極ユニット支持部材22の連結部分が位置しておらず、一つの長尺な電極ユニット支持部材22が本体ケース8と延長ケース10との連結部を跨いで位置しているため、本体ケース8と延長ケース10との連結部に対して、この連結部を跨いで位置する電極ユニット支持部材22が補強材となって、除電器1が本体ケース8と延長ケース10との連結部で折れ曲がってしまうのを防止することができる。
【0047】
前述したように除電器1はその長さ寸法が様々に設定される。最も長さ寸法の短い除電器1の外側ケース6は本体ケース8だけで構成される。このことを考慮に入れて、上記の例では、電極ユニット支持部材22の長さ寸法L(sp)が設定されている。これとは別の態様として、本体ケース8と延長ケース10とで外側ケース6を作るタイプの除電器1のために、電極ユニット支持部材22の長さ寸法L(sp)を大きく設定してもよい。この場合、電極ユニット支持部材22の長さ寸法L(sp)は、本体ケース8の長さ寸法L(m)よりも大きな値に設定して、上述した例と同様に、本体ケース8よりも長尺な電極ユニット支持部材22が本体ケース8と延長ケース10との連結部を跨いで位置させるようにするのがよい。
【0048】
電極ユニット支持部材22の一端面には、内部ガス通路に通じる円筒状の連結筒部28が突設され、電極ユニット支持部材22の他端面には、この連結筒部28を受け入れる断面円形の連結凹所が形成されている。この連結凹所は作図上の理由から図面には現れていない。互いに隣接する電極ユニット支持部材22の連結は、連結凹所に筒部28を挿入する凹凸嵌合により行われる。電極ユニット支持部材22の各端には、連結筒部28又は連結凹所にガスアダプタ30が連結される。このガスアダプタ30の連結は、電極ユニット支持部材22同士の連結と同様に、凹凸嵌合によって行われる。
【0049】
電極ユニット支持部材22の上述した開口26つまり電極ユニット24を受け入れる開口26が形成された面22aは平らな面で構成されている(図4)。この電極ユニット支持部材22の平らな面22aは、導電性金属の平板材からなるGNDプレート32によって覆われる。GNDプレート32は、これを端面から見たときに、好ましくは平らな主なる面32aの両側縁で屈曲して互いに略平行に延びる一対の側面32bを有する断面略コ字状の形状に形作られており、平らな主なる面32aには、その長手方向に離間した複数の開口34が形成されている。なお、平らな主なる面32aは、これに代えて従来と同様に外方に向けて突出した湾曲面であってもよい。電極ユニット支持部材22の電極ユニット24の取付位置つまり開口26に対応してGNDプレート32の開口34が同心に位置しており、このGNDプレート32の開口34は好ましくは略円形の開口であるのがよい。GNDプレート32が汚れ易い面が平らな主なる面32aで構成されていることからその拭き掃除を容易に行うことができる。
【0050】
本体ケース(図4、図6〜図9)
本体ケース8には、除電器1に含まれる回路基板及び表示や操作に関するユーザインターフェースカバー16の全てが集中して配置される。この本体ケース8の複数の放電電極4、また延長ケース10を備えている場合には、この延長ケース10の複数の放電電極4に対して配線によって高電圧を供給してもよいし、従来から知られている長手方向に延びる高電圧分配板を使って各放電電極4に高電圧を供給するようにしてもよい。
【0051】
図6から最もよく分かるように、本体ケース8の電源基板B(p)を受け入れる部位には、この本体ケース8を横断する内部壁12を有し、この端部の内部壁12によって本体ケース8が外部から仕切られている。この内部壁12は電源基板B(p)を受け入れる縦溝12a及び縦スリット12bを有し、この縦溝12a及び縦スリット12bに電源基板B(p)の端部を挿入することで電源基板B(p)が位置決めされる。本体ケース8の2つの内部壁12は本体ケース8の中央部分に電源基板B(p)を収容し且つ少なくともこの電源基板B(p)の周りに樹脂が充填される空間Sを形成する。すなわち、図6の左右の内部壁12は電源基板B(p)を位置決めする機能と、本体ケース8の中央部分つまり電源基板B(p)や、これに隣接した図外のメイン制御基板を取り付けるために仕切られた空間Sを形成する機能を有する。この空間Sには、回路基板Bを組み付けた後に樹脂が充填され、この樹脂によって回路基板Bがモールドされる。少なくとも電源基板B(p)の周りに樹脂充填することにより、絶縁性能の向上と電源基板B(p)の本体ケースへの固定ないし取付けが補強される。この樹脂モールドと前述したアルミニウムプレート14(図2)との組み合わせにより特に電源基板B(p)の放熱を促進することができる。
【0052】
本体ケース8は断面U字形の形状を有し、その左右の側壁6aの開放端部には、長手方向に間隔を隔てて複数の突起40が形成されている。長手方向に間隔を隔てた複数の突起40は射出成形法によれば本体ケース8を成形するときに一緒に形作ることができる。この突起40は電極ユニット支持部材22の本体ケース8に対する縦方向の変位を規制するための手段の一部を構成する。なお、図6には電極ユニット支持部材22(図4)の図示を省略してある。図7を参照して、電極ユニット支持部材22は、その基端部の両側が外方に向けて突出した形状を有し、この突出部分22sは本体ケース8及び延長ケース10に対する取付部を構成する。突出部分22s(取付部)は電極ユニット支持部材22の長手方向に連続して形成してもよいし、上記の突起40に対応した部分だけ限定的に形成するようにしてもよい。この突出部分22sは、電極ユニット支持部材22を本体ケース8に対してその長手方向に挿入するのではなくて、電極ユニット支持部材22を本体ケース8の長手方向に延びる開口部から押し込むことで、本体ケース8の段部8sと上述した突起40とによって電極ユニット支持部材22の本体ケース8に対する縦方向の変位が規制される。なお、従来の押し出し材からなる外側ケースでは、外側ケースの長手方向の一端から電極ユニット支持部材を挿入する方式が採用されており、このため、電極ユニット支持部材を係止するための要素(長手方向に連続して延びる溝)を外側ケースが備えていた。これに対して、上述した間欠的に設けてある複数の突起40を使って且つ電極ユニット支持部材22を本体ケース8の長手方向に延びる開口部から押し込む形式を採用することで、本体ケース8が電極ユニット支持部材22を支持するための支持構造が本体ケース8の長手方向に間欠的となるため、この支持構造のために必要とされたスペースを有効活用することができる。
【0053】
電極ユニット支持部材22の長手方向の変位の規制はエンドカバー20によって行われる。なお、図6は、本体ケース8の両端にエンドカバー20を取り付けて、このエンドカバー20によって本体ケース8の両端を閉塞することにより延長ケース10(図4)無しで除電器1を構成した例を図示してあるが、電極ユニット支持部材22の長手方向の変位の規制に関しては、延長ケース8を設けた場合も同様にエンドカバー20によって行われる。
【0054】
図2及び図9、図10を参照して、参照符号B(d)は表示基板を示し、この表示基板B(d)は本体ケース8のインターフェース設置部18に対面して配置される。この表示基板B(d)の内部壁12の縦溝12aによって位置決めされると共に、図4及び図7の参照符号42で示す位置決めプレートで縦方向の位置決めが行われる。図7を参照して、この位置決めプレート42は、その左右の両端部に段部42aを有し、この段部42aを、本体ケース8の第2の段部8hに載置させ、そして、電極ユニット24を組み付けることで位置決めプレート42が固定される。位置決めプレート42は回路基板Bの縦方向の位置決めと共に本体ケース8内のハーネスの変位を規制する。表示基板B(d)と電源基板B(p)や制御基板とがコネクタ連結されるのは前述した通りであり、図9、図10に電源基板B(p)側のコネクタを参照符号44で図示してある。これら図9、図10から理解できるように、電源基板B(p)と表示基板B(d)とは端部で左右方向つまり本体ケース8の幅方向にオーバーラップして配置され、このオーバーラップした部分で互いにコネクタ連結される。従来のように、各回路基板をケーブルで互いに接続する構成では、回路基板をオーバーラップさせて配置させることは事実上不可能である。
【0055】
延長ケース(図4、図17)
延長ケース10は、図4から最も良く分かるように、U字状の断面形状を有し、その両側壁の開口端部には長手方向に延びる水平溝10aが形成されている。この水平溝10aには、電極ユニット支持部材22の前述した突出部分22sが受け入れられ、これにより延長ケース10に対する電極ユニット支持部材22の相対的な縦方向の変位が規制される。
【0056】
電極ユニット支持部材22は、従来と同様に、延長ケース10の端から長手方向に挿入され、電極ユニット支持部材22の突出部分22sを延長ケース10の水平溝10aに沿ってスライドさせることにより延長ケース10に対して組み付けられる。
【0057】
長手方向に互いに隣接する電極ユニット支持部材22、22同士は、前述したように、互いに対向する面に形成された突出部(連結筒部28:図2、図4)と、この突出部を受け入れる凹部との凹凸嵌合によって連結される。なお、実施例では、電極ユニット支持部材22がガス通路Gp(図2)を有し、このガス通路Gpに通じる連結筒部28及び凹部を使って隣接する電極ユニット支持部材22、22同士を連結する構造が採用されているが、ガス通路無しの電極ユニット支持部材の場合には各電極ユニット支持部材の一端面に長手方向に延びる突出部を設け、他多面に凹部を設ければよい。
【0058】
長手方向に互いに隣接する電極ユニット支持部材22、22同士を長手方向に相対変位させることにより、この隣接する電極ユニット支持部材22、22同士が連結される構造が採用されていることから、電極ユニット支持部材22、22を連結した状態を維持しつつ、互いに隣接する電極ユニット支持部材22、22の相対位置を調整することができる。
【0059】
インターフェース設置部18(図4)
インターフェース設置部18には、図示を省略したが、表示手段と入力手段を配設され、入力手段には、DIPスイッチ、ロータリースイッチ、プッシュスイッチなどの操作部材、リモートコントローラからの操作信号を受信する受信手段、典型的にはパーソナルコンピュータで構成される外部機器からの設定情報などを受け入れる通信接続手段が含まれる。
【0060】
インターフェース設置部18に配設される表示手段には、イオン生成量、正イオンと負イオンとの間のイオンバランスなど除電機能に関する現在値の表示が行われる。また、表示手段には、各種のアラームを表示する機能が付加されるのがよい。好ましい態様として、表示手段は、ワーク(除電対象物)が「+(プラス)」又は「−(マイナス)」の極性にどれだけ帯電しているかの表示、つまりワークの「プラス」極性又は「マイナス」極性の帯電量を表示する機能を有しているのがよく、この帯電量の表示は複数の発光ダイオード(LED)の列を使ってバー形式で表示するのがよい。
【0061】
インターフェース設置部18に配設される入力手段は、除電器1の目標イオン生成量の設定に用いられるが、除電器1がパルス方式の場合には、プラス高電圧とマイナス高電圧が交番制御されることから、交番周波数やプラス高電圧とマイナス高電圧の印加時間の比率又は印加電圧比率の設定に用いられる。インターフェース設置部18に配設される入力手段によって、また、上記の表示手段の表示モードの切り替えや表示項目の切り替えが行われる。
【0062】
本体ケースと延長ケースとの連結(図2、図11〜図15)
本体ケース8と延長ケース10とは、本体ケース8の端部からネジ50を挿入して、このネジ50を延長ケース10に螺着させることにより連結される。本体ケース8の一端部つまり延長ケース10と連結する部位には周囲方向に延びる凹部8aが形成されている(図11)。そして、この凹部8aは、後付の断面U字状の側面キャップ52(図12)によって包囲され、この側面キャップ52によって本体ケース8の側面及び頂面は面一の外形輪郭になる(図13)。側面キャップ52は、図12から最もよく分かるように、両側壁52aの自由端に、夫々、爪54を有し、他方、本体ケース8の凹部8aには、この爪54を係止するための爪受け部56が形成されている(図11)。側面キャップ52の両側壁52aの自由端部には切り欠き窓57が形成されており、側面キャップ52を取り外す必要があるときには、図12に矢印58で示すように例えばマイナスドライバの先端を切り欠き窓57に挿入して爪54を押すことで、爪54と爪受け部56との係合を解除することができる。
【0063】
図15は、本体ケース8だけで除電器1を構成したときの側面キャップ52の取り付け後の端部構造を示す。エンドカバー20は、外部から本体ケース8の長手方向に差し込んだ複数のネジ50によって本体ケース8の端に固定される。このネジ50が螺着するための部位が側面キャップ52に形成され、この側面キャップ52を介してエンドカバー20が本体ケース8に固定される。側面キャップを示す図12の参照符号58はネジ50が螺着される部位を示す。
【0064】
高電圧の分配(図7、図8、図16)
本体ケース8に収容した電源基板B(p)が生成した高電圧は高電圧分配板60によって各放電電極4に分配される。高電圧分配板60は、電極ユニット支持部材22に埋設された導電性金属プレートで構成されている。この高電圧分配板60は電極ユニット支持部材22の長手方向に連続して延びており、電極ユニット支持部材22に電極ユニット24を装着することで各放電電極4の端面が高電圧分配板60に圧接し、これにより高電圧分配板60と各放電電極4とが電気的に接続される。なお、高電圧分配板60の各放電電極4が圧接する部位は構造的にバネ性が付与されている。この構造は従来から既知であるので、その説明は省略する。
【0065】
電源基板B(p)と高電圧分配板60とは高電圧接点機構64(図8)によって電気的に接続される。この高電圧接点機構64によって、本体ケース8に電極ユニット支持部材22を位置決めすることで電源基板B(p)と高電圧分配板60とが電気的に接続することができる。
【0066】
引き続き図8を参照して、一方の電極ユニット支持部材22と他方の電極ユニット支持部材22との間の高電圧分配板60の接続は、一方の電極ユニット支持部材22の端面から長手方向に突出する折り返し60aが、他方の電極ユニット支持部材22の高電圧分配板60の端と接することにより行われる。この接続部分は凹凸嵌合構造が採用されており、2つの電極ユニット支持部材22の端同士を長手方向に押し付けることで、2つの電極ユニット支持部材22同士が機械的に連結されると共にその高電圧分配板60同士が電気的に接続される。
【0067】
GNDプレート(図4、図7、図16〜図18)
GNDプレート32は、除電器1の長さ寸法と実質的に同じ長さ寸法に設定される。換言すると、GNDプレート32は、除電器1の外側ケース6と実質的に同じ長さ寸法に設定される。勿論、GNDプレート32を電気的に接続した複数のプレート部材で構成してもよい。外側ケース6が本体ケース8と延長ケース10とで構成されている場合に、GNDプレート32が本体ケース8と延長ケース10との連結部位を跨いで位置していることに注目されたい。GNDプレート32を本体ケース8と延長ケース10との連結部位を跨いで位置させることで、このGNDプレート32が補強材となって、除電器1が本体ケース8と延長ケース10との連結部で折れ曲がってしまうのを防止することができる。GNDプレート32が前述したように断面略コ字状の形状の成形体であることから、この断面形状によってもGNDプレート32による補強効果を高めることができる。
【0068】
図7、図17などを参照して、GNDプレート32の左右の側面32bの下端部32cはヘミング処理によって折り返されており且つGNDプレート32の内方に折り曲げられている。このGNDプレート32の内方に屈曲した下端部32cに対応して本体ケース8及び延長ケース10の側面には長手方向に連続して延びる溝66が形成され、この溝66に、GNDプレート32の下端部32cが受け入れられている。GNDプレート32の下端部32cを切りっぱなしではなくてヘミング処理により折り返すことにより、GNDプレート32を装着するときなどでの怪我を確実に防止できる。
【0069】
GNDプレート32の左右の側面32bの高さ方向中間部分には、また、長手方向に間隔を隔てて複数の開口70が形成されている。そして、電極ユニット支持部材24には、各開口70に対応した位置に突起72(図16)が形成されており、この突起72が開口70と機械的に係合つまりスナップ嵌合することによりGNDプレート32の縦方向の位置決め及び電極ユニット支持部材24に対する固定が行われる。勿論、GNDプレート32は、その両端がエンドカバー20に受け入れられるため、このエンドカバー20によって長手方向のGNDプレート32の長手方向の変位が規制された状態で本体ケース8、延長ケース10との関係で正規位置に位置決めされる。
【0070】
電極ユニット支持部材24に対するGNDプレート32の取り付けに関し、本体ケース8と延長ケース10とに夫々対応する電極ユニット支持部材24を用意して、本体ケース8に対応する電極ユニット支持部材24にはGNDプレート32の側面32bに係合する手段、具体的には上述した突起72を省いてもよい。また、これにあわせて、GNDプレート32の両側面32bにも、本体ケース8に対応する電極ユニット支持部材24に関連する部分には上述した開口70を省いてもよい。更なる変形例として、除電器1を本体ケース8だけで構成する場合には、この本体ケース8に対応する電極ユニット支持部材24に上述した突起72を設けると共にGNDプレート32の側面32bに開口70を設けて、突起72と開口70との係合及び両端のエンドカバー20によってGNDプレート32を固定してもよいし、突起72と開口70とを省いて両端のエンドカバー20だけでGNDプレート32を固定するようにしてもよい。
【0071】
また、GNDプレート32と電極ユニット支持部材24との機械的係合、典型的にはスナップ嵌合の具体的な構成つまり突起72と開口70とは相対的であり、GNDプレート32に例えば係合爪を形成し、この係合爪を受け入れる溝を電極ユニット支持部材24に設けるようにしてもよい。
【0072】
電極ユニット支持部材24は、GNDプレート32の長手方向に間隔を隔てた複数の箇所でスナップ嵌めされることにより、このGNDプレート32を介して本体ケース8及び延長ケース10に対して相対的な位置決めが行われる。また、長手方向に隣接する電極ユニット支持部材24同士の連結構造が前述した凹凸嵌合で構成されているため、隣接する電極ユニット支持部材24の間の間隔調整が上記の凹凸嵌合によって可能である。したがって、電極ユニット支持部材24がGNDプレート32によって位置決めされることにより、隣接する電極ユニット支持部材24の間の間隔調整が自動的に行われ、これにより、GNDプレート32の各開口34と、この開口34と実質的に同心に配置される電極ユニット24(放電電極4)との相対位置の整合が自動的に行われることになる。
【0073】
図7、図17を参照して、GNDプレート32は電極ユニット支持部材22と接していないことに注目されたい。換言すると、GNDプレート32は、電極ユニット支持部材22から離間して位置しており、そして、GNDプレート32は、本体ケース8及び延長ケース10の突起40と接している。したがって、放電電極4の沿面距離を図7で太い実線76で示すことができる。比較例として、GNDプレート32を電極ユニット支持部材22と当接した状態で配置させた場合に比較して沿面距離を拡大することができる。したがって、放電電極4の先端をほぼGBDプレート32の高さレベルに設定しても、放電電極4の沿面距離76(図7)を確保することができる。具体的には、図7から最も良く分かるように、電極ユニット支持部材22は、その平らな端面22fが、GNDプレート32の平らな主なる面32aと同じ高さレベルに設定され、そして、電極ユニット支持部材22の平らな端面22fの中心部から放電電極4の先端部が突出する構成を有している。この構成の適用は、実施例の除電器1の構造に限定されないのは当業者であれば容易に理解できるであろう。従来の押し出し成形によるケースに対しても適用可能であるのは言うまでもない。
【0074】
GNDプレート32の接地は、本体ケース8の端部(延長ケース10が連結される端とは反対側の端部)に装着するガスアダプタ30に図18に示すようにアース端子78がネジ止めされ、このアース端子78にGNDプレート32の端部が電気的に接続される。そして、ガスアダプタ30のアースのアース端子78は導線80を介して電源基板B(p)に接続され、この電源基板B(p)の接地経路を通じてGNDプレート32が接地される。
【0075】
エンドカバー20(図4、図19)
上述した端子78はGNDプレート32の端部に半径方向に延びる金属ネジ80で固定される。そして、この金属ネジ80はエンドカバー20で包囲され、外部から見えない状態になる。図18は一連の工程を示す図である。本体ケース8の端にガスアダプタ30を嵌合させると(図19の(I))、端子78とGNDプレート32とが位置決めされ、GNDプレート32の穴32dを通じて半径方向に延びる金属ネジ80によってGNDプレート32が端子78に固定される(図19の(II))。そして、その後でエンドカバー20を本体ケース8の端に、長手方向に延びるネジを使って固定することで上述した金属ネジ80はエンドカバー32に覆われた状態となり、この金属ネジ80は外部から見ることができなくなる。
【0076】
電極ユニット24の交換(図20、図21)
放電電極4が摩耗したり、GNDプレート32が汚れたときには、電極ユニット24を半ひねりすることで電極ユニット24を除電器1から取り外すことができる。この操作は、電極ユニット24のフィンガーガード84を手がかりに電極ユニット24を回転させることで電極ユニット24を除電器1から取り外すことができる。図示の例では、フィンガーガード84は放電電極4の周囲に配置された4つの突起で構成されているが、特にこの形式に限定されない。例えば放電電極4と同心の周囲壁や開口を備えた周囲壁で構成してもよい。放電電極4を取り外したとき、図21から分かるように、GNDプレート32は平らな主なる面32aで構成されていることから、汚れをぬぐい去る作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 除電器
4 放電電極
6 外側ケース
8 本体ケース
8a 本体ケースの端部に形成された凹部(側面キャップを受け入れる)
10 延長ケース
12 基板位置決め内部壁
12a 内部壁の縦溝
12b 内部壁の縦スリット
14 アルミニウムプレート(熱伝導性金属プレート)
18 インターフェース設置部
20 エンドカバー
22 電極ユニット支持部材
24 電極ユニット
30 ガスアダプタ
32 グランド(GND)プレート
44 基板同士を電気的に連結するコネクタ
50 ネジ
52 断面U字状の側面キャップ
60 高電圧分配板
B 回路基板
B(p) 電源基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の外側ケースを備え、該外側ケースの長手方向に間隔を隔てて複数の放電電極が配置される除電器において、
前記外側ケースが、前記除電器に含まれる回路基板を収容した本体ケースと、該本体ケースに必要に応じて連結される延長ケースとで構成され、
前記延長ケースが、長手方向に同じ断面U字状の形状に成形された成形品から作られ、
前記本体ケースが、前記回路基板を位置決めするための内部壁と、表示及び入力部が設置されるインターフェース設置部とを一体成形した断面U字状の形状を有することを特徴とする除電器。
【請求項2】
各放電電極が組み付けられた電極ユニットと、
複数の電極ユニットを脱着自在に受け入れて、該複数の電極ユニットを支持する長尺の電極ユニット支持部材とを更に有し、
前記電極ユニット支持部材が、前記外側ケースの長手方向に沿って前記本体ケースと前記延長ケースとの連結箇所を跨いで配置される、請求項1に記載の除電器。
【請求項3】
前記複数の電極ユニット支持部材が長手方向に沿って連結され、該電極ユニット支持部材の連結箇所が、前記本体ケースと前記延長ケースとの連結箇所から長手方向に沿ってオフセットしている、請求項2に記載の除電器。
【請求項4】
前記複数の放電電極の各々に対応した複数の開口が形成され、各開口が各放電電極と対応するように配置された導電性のGNDプレートを更に有し、
該GNDプレートが、前記外側ケースの長手方向に沿って前記本体ケースと前記延長ケースとの連結箇所を跨いで配設されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の除電器。
【請求項5】
前記回路基板がイオンを発生させるために前記放電電極へ供給される高電圧を生成する電源基板を含み、
該電源基板が前記本体ケース内に充填された樹脂によってモールドされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の除電器。
【請求項6】
前記本体ケースが、熱伝導性金属プレートをインサートした合成樹脂材料の成形品である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の除電器。
【請求項7】
前記電極ユニット支持部材が、前記放電電極に周りから外部に吐出するガスを前記電極ユニットに分配するためのガス通路と、前記放電電極に高電圧を分配するための高電圧分配板とを含んでおり、
前記ガス通路と前記高電圧分配板が前記電極ユニット支持部材の一端から他端まで連続して延びている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の除電器。
【請求項8】
前記本体ケースが射出成形された成形品であり、前記延長ケースが押出成形又はロールフォーミング成形された成形品である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の除電器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate