説明

除電装置及び半導体製造装置並びに搬送装置

【課題】無電源で除電することができ、且つ、帯電物が損傷することを防止できる除電装置及び半導体製造装置並びに搬送装置を提供する。
【解決手段】除電装置10は、放電針12と、放電針12を接地する接地線14と、接地線14に設けられ、電流又は電圧を制御する制御装置16とを備える。放電針12に帯電物18が接近した際、放電針12から帯電物18に向けてイオンが放出されるとともに、放電針12に流れる放電電流又は放電針12にかかる放電電圧が制御装置16によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除電装置及び半導体製造装置並びに搬送装置に係り、特に半導体製造工場で半導体製品から静電気を除去する除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの製造工場、特に高性能化・高集積化が進む半導体デバイスや大型化が進むフラットパネルディスプレイを製造する製造工場では、静電気によるデバイスの破壊や塵埃の付着が問題となっている。これらの静電気障害を防止するため、空気をイオン化して供給することによって、発生した電位を低減する除電装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ゴムチューブの側方に放電部材を設け、この放電部材をアースさせた減電装置が記載されている。この減電装置では、ゴムチューブ等が帯電した際にその反対電極の電荷が放電部材に発生する。そして、放電部材の電位がある程度まで高くなると、放電部材から空気イオンが発生するため、ゴムロール等の帯電物が除電される。したがって、特許文献1によれば、無電源で除電を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−15702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の除電装置は、帯電物に過剰な放電電流が流れて帯電物が損傷するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、無電源で除電することができ、且つ、帯電物が損傷することを防止できる除電装置及び半導体製造装置並びに搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、放電針と、該放電針を接地する接地線と、該接地線に設けられ、電流又は電圧を制御する制御装置とを備え、前記放電針に帯電物が接近した際に、前記放電針から前記帯電物に向けてイオンが放出されるとともに、該放電針に流れる放電電流又は前記放電針にかかる放電電圧が前記制御装置によって制御されることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、放電電流または放電電圧を制御する制御装置を設けたので、帯電物が過剰な放電によって損傷することを防止することができる。また、請求項1の発明によれば、電源を用いずに帯電物の静電気を除去することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記放電針は、その先端が装置表面の凹部内に設けられ、前記帯電物が前記装置表面に近接した際に前記放電針から前記装置表面に向けてイオンが放出されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、装置表面の凹部内に放電針が設けられるので、帯電物が放電針に接触したり、放電針に近づきすぎたりすることを防止することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の除電装置を備えた半導体製造装置であって、前記帯電物は半導体製品であり、該半導体製品が除電されることを特徴とする。半導体製品は、放電によって過剰な電流が流れると、破損したり品質に影響したりするため、本発明を適用することが好ましい。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記帯電物を搬送する搬送部を備えた搬送装置であって、前記搬送部に請求項1又は2に記載の除電装置が設けられることを特徴とする。請求項4の発明によれば、帯電物を搬送しながら、帯電物を除電することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放電電流または放電電圧を制御する制御装置を備えているので、帯電物が損傷することなく、帯電物の除電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面に従って本発明に係る除電装置及び半導体製造装置並びに搬送装置の好ましい実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る除電装置を模式的に示す構成図である。同図に示す除電装置10は主として、放電針12、接地線14、制御装置16で構成される。
【0015】
放電針12は、金属等の導電材料によって針状または線状に形成されており、その先端が帯電物18に向けて設置される。放電針12は、接地線14によって接地されており、その接地線14の途中には制御装置16が設けられる。制御装置16は、流れる電流を制御するものであり、たとえば、サイリスタを使った電流リミッタが用いられる。図2に示すように、制御装置16は、放電電圧が過剰に大きくなった場合にも、放電電流の設定値以上の電流が流れないように構成される。したがって、放電針12に過剰な放電電流が流れることを防止することができる。なお、放電針12を多数設けた場合には、各放電針12に対して制御装置16を設けるとよい。また、本実施の形態では、放電電流を制御する例で説明するが、放電電圧を制御するようにしてもよい。この場合には、放電針12に設定値以上の放電電圧がかからないように、制御装置16によって制御する。また、放電電圧を制御する場合には、多数の放電針12を一つの制御装置16に接続して同時に制御してもよい。
【0016】
次に上述した除電装置10の作用について説明する。
【0017】
帯電物18が放電針12に接近すると、接地線14を通って誘導電荷が放電針12に移動し、放電針12の電圧が上昇する。そして、放電針12の電圧が所定値を超えた際に放電針12からイオン19が放出され、このイオン19が帯電物18に接触して帯電物18が除電される。
【0018】
その際、放電針12の電圧上昇に伴い、放電針12からの放電電流も上昇する。したがって、放電針12の電圧が大き過ぎると、帯電物18に過剰な電流が流れて損傷するおそれがある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、制御装置16によって放電針12に流れる電流を制御している。具体的には、放電電圧が上昇しても放電電流が設定値以上にならないようにしている。したがって、本実施の形態によれば、放電針12に過剰な放電電流が流れることを防止することができ、帯電物18の損傷を防止することができる。
【0020】
図3は、本発明の除電装置10が適用される半導体製造装置20の構成を模式的に示す断面図である。
【0021】
同図に示す半導体製造装置20は、クリーンルーム設備の清浄室22に設置される。清浄室22の天井面には、複数台のFFU(ファンフィルタユニット)24、24…が設けられ、このFFU24によって天井裏空間26のエアが除塵されてダウンフローされる。清浄室22の床面28はグレーチング床になっており、FFU24からダウンフローされた清浄エアは、床面28から床下空間30に吸い込まれる。床下空間30はリターンチャンバ31を介して天井裏空間26に連通されており、床下空間30に吸い込まれたエアはリターンチャンバ31を介して天井裏空間26に送気され、再びFFU24から清浄エアとして清浄室22に吹き出される。これにより、清浄室22には清浄エアが常にダウンフローされ、清浄室22が高い清浄度に維持される。
【0022】
清浄室22内に設置される半導体製造装置20は主として、密閉容器32、ロードポート34、搬送装置36、ロードロック室38、処理室40を備える。密閉容器32は、半導体製品(ウエハやプリント基板等の製造途中のものを含む)42を収納して気密状態を保持する容器であり、その側面に開閉自在な扉(不図示)を備える。この密閉容器32は、不図示の自走台車によって搬送され、扉が半導体製造装置20側(図3の左側)となるようにしてロードポート34に載置される。
【0023】
ロードポート34は、半導体製造装置20の入口部であり、ロードポート34上に載置された密閉容器32の扉を所定のタイミングで開閉するように構成される。すなわち、ロードポート34は、搬送装置36が密閉容器32内の半導体製品42を取り出す際、または、搬送装置36が半導体製品42を密閉容器32の内部に収納する際に、密閉容器32の扉を開閉するように構成される。
【0024】
搬送装置36は、ロードポート34とロードロック室38との間に設けられたミニエンバイロメント44内に配置される。ミニエンバイロメント44は、側方が全て仕切られており、その天井面にはFFU46が設けられる。このFFU46によってミニエンバイロメント44外のエアが除塵されてミニエンバイロメント44内にダウンフローされ、ミニエンバイロメント44内が高い清浄度に維持される。
【0025】
搬送装置36は、半導体製品42を把持するロボットハンド48を備え、このロボットハンド48によって半導体製品42が把持し、ロードポート34とロードロック室38との間で半導体製品42を搬送するように構成される。
【0026】
ロードロック室38は、処理室40に半導体製品42を搬入・搬出するための装置であり、処理室40とミニエンバイロメント44とで圧力が異なる場合に圧力の調節が行われる。処理室40は、半導体製品42に様々な処置を施す装置部分であり、たとえば洗浄処理等が行われる。
【0027】
ところで、ロボットハンド48、ロードロック室38、処理室40には、本発明の除電装置10が設けられる。すなわち、図4に示すようにロボットハンド48は、半導体製品42を載置するための載置面(装置表面に相当)48Aを有し、この載置面48Aに複数の凹部48Bが形成され、凹部48Bの内部に放電針12が設けられる。放電針12は、半径0.2〜1mmの針状のものが用いられ、その尖端が載置面48Aに向けて配置される。また、放電針12は、互いの放電に影響しないように、所定の間隔(1〜6mm程度)で配置される。放電針12の先端と載置面48Aとの距離は、放電に適した距離(たとえば、1〜6mm)に設定される。放電針12には、接地線14が接続されており、各接地線14に制御装置16(一個のみ図示)が設けられる。なお、放電針12は、その先端が載置面48Aの凹部48Bの内部に配置されていればよく、たとえば、ロボットハンド48に上下に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔に下側から放電針12を装着して、放電針12の先端が貫通孔の内部に配置されるようにしてもよい。
【0028】
図5に示すように、ロードロック室38は、床面(装置表面に相当)38Aに凹部38Bが形成され、この凹部38Bの内部に放電針12が配置される。また、ロードロック室38の天井面38Cには放電針12が突出して設けられる。各放電針12には、接地線14が接続され、各接地線14に制御装置16(上下一個ずつのみ図示)が設けられる。制御装置16は、半導体製品42が損傷しないような放電電流に制御し、たとえば半導体製品42が銅箔厚0.035mmを有するプリント基板の場合には導体幅によって設定し、導体幅が0.25mmの場合は5A未満、0.50mmの場合は7A未満、1.0mmの場合は16mm未満に設定する。
【0029】
図6に示すように、処理室40は、床面(装置表面に相当)40Aに凹部40Bが形成され、この凹部40Bの内部に放電針12が配置される。また、処理室40の天井面40C及び側面40Dには放電針12が突出して配置される。各放電針12には、接地線14が接続され、各接地線14に制御装置16が設けられる。
【0030】
次に上記の如く構成された半導体製造装置20の作用について説明する。
【0031】
密閉容器32内の半導体製品42は、ロボットハンド48によって取り出され、ロードロック室38に搬送される。その際、半導体製品42が帯電することがあるが、ロボットハンド48には放電針12が設けられているので、半導体製品42(帯電物)が放電針12に接近することによって、接地線14を通って誘導電荷が放電針12に移動し、放電針12の電圧が上昇する。そして、放電針12の電圧が所定値を超えた際に放電針12からロボットハンド48の載置面48Aに向けてイオンが放出され、このイオンが半導体製品42に接触して静電気が除去される。
【0032】
その際、放電針12の電圧上昇に伴い、放電針12からの放電電流も上昇するが、制御装置16によって放電針12に流れる電流が制御されるので、放電針12に過剰な放電電流が流れることを防止でき、半導体製品42を損傷することなく、除電することができる。
【0033】
また、放電針12が載置面48Aの凹部48Bの内部に設けられているので、半導体製品42が放電針12に接触したり、近づき過ぎたりすることを防止できる。したがって、半導体製品42に流れる放電電流が不必要に増加することを防止できる。
【0034】
除電された半導体製品42は、ロードロック室38の内部においても同様に除電される。すなわち、ロードロック室38には放電針12が設けられているので、半導体製品42が放電針12に接近することによって、接地線14を通って誘導電荷が放電針12に移動し、放電針12からロードロック室38内の半導体製品42に向けてイオンが放出され、このイオンが半導体製品42に接触して静電気が除去される。その際、放電針12の電圧上昇に伴って放電針12からの放電電流も上昇するが、制御装置16によって放電針12に流れる電流が制御されるので、放電針12に過剰な放電電流が流れることを防止でき、半導体製品42が損傷することを防止できる。さらに、ロードロック室38の下面の放電針12は凹部38B内に設けられるので、半導体製品42が放電針12に接触したり、半導体製品42が放電針12に近づき過ぎたりすることを防止でき、半導体製品42に過剰な放電電流が流れることを確実に防止できる。
【0035】
このように、密閉容器32内の半導体製品42をロードロック室38に搬送する際、半導体製品42が帯電しても、ロボットアーム48やロードロック室38に設けた除電装置10によって半導体製品42を除電して搬送することができる。
【0036】
ロードロック室38に搬送された半導体製品42は処理室40に移送され、処理室40の内部で各種の処理が施される。その際、半導体製品42が帯電することがあるが、処理室40に放電針12が設けられているので、半導体製品42を除電することができる。すなわち、半導体製品42が放電針12に接近することによって、接地線14を通って誘導電荷が放電針12に移動し、放電針12から処理室40内の半導体製品42に向けてイオンが放出され、このイオンが半導体製品42に接触して静電気が除去される。この場合にも放電針12の電圧上昇に伴って放電針12からの放電電流も上昇するが、制御装置16によって放電針12に流れる電流が制御されるので、放電針12に過剰な放電電流が流れることを防止でき、半導体製品42を損傷することなく、除電することができる。
【0037】
処理室40で処理された半導体製品42は、ロードロック室38に移送された後、ロボットアーム48によって密閉容器32に搬送される。この場合にも半導体製品42が帯電することがあるが、ロードロック室38及びロボットアーム48に放電針12が設けられているので、半導体製品42を除電することができる。
【0038】
このように本実施の形態の半導体製造装置20によれば、ロボットハンド48、ロードロック室38、処理室40に放電針を設け、この放電針12を接地線14で接地させ、且つ、接地線14に制御装置16を設けたので、半導体製品42が帯電した場合にもすぐに除電することができ、且つ、除電時に半導体製品42が損傷することを防止できる。よって、本実施の形態によれば、高品質の半導体製品42を製造することができる。
【0039】
図7は、本発明が適用された搬送装置50を示す斜視図であり、図8は、支持板52の断面図である。
【0040】
これらの図に示す搬送装置50は、製品54をカセット56内に収納、又はカセット56から取り出す装置である。カセット56の内部には、幅方向の両側面に棚58、58…が形成されており、この棚58に製品54の両端部が係合されて収納される。
【0041】
また、搬送装置50は、本体60と、本体60に回動自在に支持されたアーム62と、アーム62の先端に設けられた支持板52とで構成される。図7に示すように支持板52の上面52Aには、凹部52Bが形成されており、この凹部52Bの内部に放電針12が設けられる。放電針12は接地線14を介して接地され、接地線14には制御装置16が設けられる。
【0042】
上記の如く構成された搬送装置50によれば、製品54をカセット56内から取り出す際、または、製品54をカセット56内に収納する際に、製品54が帯電することがあるが、支持板52に放電針12が設けられているので、製品54が放電針12に接近した際に、放電針12から製品54に向かってイオンが放出され、製品54が除電される。この場合にも、制御装置16によって、製品54に過剰な放電電流が流れることを防止することができる。したがって、搬送装置50によれば、製品54を損傷することなく除電して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る除電装置の構成を模式的に示す構成図
【図2】制御装置の制御を説明する説明図
【図3】本発明が適用される半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図
【図4】図3のロボットハンドの断面図
【図5】図3のロードロック室の断面図
【図6】図3の処理室の断面図
【図7】本発明が適用された搬送装置を示す斜視図
【図8】図7の支持板の断面図
【符号の説明】
【0044】
10…除電装置、12…放電針、14…接地線、16…制御装置、18…帯電物、20…製造装置、22…清浄室、24…FFU、32…密閉容器、34…ロードポート、36…搬送装置、38…ロードロック室、40…処理室、42…半導体製品、44…ミニエンバイロメント、48…ロボットハンド、50…搬送装置、52…支持板、54…製品、56…カセット、58…棚、60…本体、62…アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電針と、該放電針を接地する接地線と、該接地線に設けられ、電流又は電圧を制御する制御装置とを備え、
前記放電針に帯電物が接近した際に、前記放電針から前記帯電物に向けてイオンが放出されるとともに、該放電針に流れる放電電流又は前記放電針にかかる放電電圧が前記制御装置によって制御されることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記放電針は、その先端が装置表面の凹部内に設けられ、前記帯電物が前記装置表面に近接した際に前記放電針から前記装置表面に向けてイオンが放出されることを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の除電装置を備えた半導体製造装置であって、
前記帯電物は半導体製品であり、該半導体製品が除電されることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】
前記帯電物を搬送する搬送部を備えた搬送装置であって、
前記搬送部に請求項1又は2に記載の除電装置が設けられることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−269896(P2008−269896A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109685(P2007−109685)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】