説明

除電装置及び放電針ユニット

【課題】 イオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる除電装置を提供する。
【解決手段】 取付面31aから突出するように配置され、先端にエア吐出口331が形成されたエアノズル33と、エア吐出口331から先端を突出させた状態でエアノズル33内に収容され、コロナ放電用の電圧が印加される電極針34とを備え、エアノズル33が導電性部材からなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電装置及び放電針ユニットに係り、さらに詳しくは、コロナ放電用の電圧を電極針に印加することによって、電極針の周辺に正イオン及び負イオンを発生させる除電装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
除電器は、静電気などによって帯電したワークに正イオン又は負イオンを供給することにより、ワークから余分な電気を除去する装置である。電極針にコロナ放電用の高電圧を印加した際に、電極針の先端に生じるコロナ放電を利用する除電装置には、電極針に電圧を印加する際の駆動方式として、DC方式、AC方式、パルスDC方式、パルスAC方式などのタイプがある。DC方式では、大地アースに対し正電位が維持される正側電極針と負電位が維持される負側電極針とが設けられる。AC方式では、単一の電極針に交流電圧が印加される。パルスDC方式では、パルス状の駆動電圧が正側電極針と負側電極針とに交互に印加される。パルスAC方式では、パルス状の交流電圧が単一の電極針に印加される。
【0003】
AC方式やパルスAC方式などの交流式の除電装置の場合、電極針に対し正極性駆動電圧と負極性駆動電圧とが交互に繰返し印加されることから、電極針の周辺における正イオン及び負イオン間のイオンバランスは、交流駆動の周波数で変動する(例えば、特許文献1)。特許文献1では、この様なイオンバランスの変動をリップルと呼んでいる。イオンバランスの変動が大きければ、除電対象物や除電装置周辺の電子デバイスを破壊しかねないという課題があった。
【0004】
図13は、従来の除電装置を用いて測定されたリップルを示した図であり、交流駆動の周波数が33Hzである場合が示されている。図中の(a)には、設置距離が50mmの場合が示され、(b)には、設置距離が200mmの場合が示されている。除電器から50mmの設置距離だけ離間した位置では、イオンバランスが(−500)〜(+400)Vの範囲で変動しているのに対し、200mmの設置距離では、イオンバランスの変動が(−100)〜(+100)Vの範囲内に収まっている。この様に、設置距離を長くし、除電器を除電対象物から遠ざければ、リップルを小さくすることができるが、除電速度が遅くなってしまうという問題があった。
【0005】
通常、交流駆動の周波数を高くすることにより、設置距離が短い場合であってもリップルを低減させることができる。しかし、従来の除電装置では、交流駆動の周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するという問題があった。
【0006】
図14は、従来の除電装置を用いて測定されたイオンバランスの不規則な時間変動をリップルと比較して示した図である。図中の(a)には、交流駆動の周波数が100Hz、設置距離が50mmの場合が示され、(b)には、不規則に変動するイオンバランスの様子が示されている。交流駆動の周波数を高くすれば、設置距離が50mmであっても、リップルを(−100)〜(+100)Vの範囲内に収めることができる。ところが、設置距離を短くし、除電器を除電対象物に近づければ、イオン濃度が濃くなることから、イオンバランスの変動量が大きくなり、イオンバランスの不規則な変動が目立つようになった。この例では、5分程度の時間に、イオンバランスが、(−30)〜(+80)Vの範囲で不規則に変動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−203094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、除電装置に近い距離におけるイオンバランスの変動を抑制することができる除電装置を提供することを目的とする。
【0009】
特に、イオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる除電装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、フィンガーガードの帯電に起因してイオンバランスが不規則に変動するのを効果的に抑制することができる放電針ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明による除電装置は、取付面から突出するように配置され、先端にエア吐出口が形成されたノズルと、上記エア吐出口から先端を突出させた状態で上記ノズル内に収容され、コロナ放電用の電圧が印加される電極針とを備え、上記ノズルが、導電性部材からなるように構成される。
【0012】
この様な構成によれば、導電性部材からなるノズルが電極針の近傍に配置されるので、電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのが抑えられる。このため、電極針の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる。
【0013】
第2の本発明による除電装置は、上記構成に加え、上記電極針及び上記ノズルが、略同電位であるように構成される。この様な構成によれば、ノズルも電極針と同様に駆動されるので、電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのを十分に抑制することができる。
【0014】
第3の本発明による除電装置は、上記構成に加え、上記取付面上において上記ノズルを取り囲むように配置された絶縁性部材からなるフィンガーガードを備えて構成される。フィンガーガードは、電極針の近傍に配置されることから、電極針付近で発生したイオンが付着し易い。イオンの付着によってフィンガーガードが帯電し、ゼロでない電位を有するようになれば、電極針周辺の電界が強められたり弱められたりし、コロナ放電の強さが変化してしまう。その際、イオンの付着によるフィンガーガードの帯電量は不規則に変化することから、イオン発生量が不安定となることが考えられるが、上記構成によれば、イオンの付着によってフィンガーガードが帯電した場合に、帯電したフィンガーガードの影響を打ち消すように、静電誘導によってノズル内の電荷が移動する。このため、フィンガーガードの帯電によって電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのを効果的に抑制することができる。
【0015】
第4の本発明による除電装置は、上記構成に加え、上記フィンガーガードが、上記取付面の周縁に沿って配置された3以上の爪部からなり、上記爪部が、上記取付面からの高さが上記電極針の先端よりも高い形状からなるように構成される。この様な構成によれば、取付面の周縁に沿って配置された複数の爪部によって、指などが電極針の先端に触れるのを防止することができる。
【0016】
第5の本発明による除電装置は、上記構成に加え、上記フィンガーガードが、上記電極針の先端よりも高い位置に配置された環状のリング部と、上記取付面の周縁に沿って配置され、上記リング部を支持する3以上の柱部とからなるように構成される。この様な構成によれば、取付面の周縁に沿って配置された複数の柱部により支持されるリング部によって、指などが電極針の先端に触れるのを防止することができる。
【0017】
第6の本発明による放電針ユニットは、取付面から突出するように配置され、先端にエア吐出口が形成されたノズルと、上記エア吐出口から先端を突出させた状態で上記ノズル内に収容され、コロナ放電用の電圧が印加される電極針と、上記取付面上において上記ノズルを取り囲むように配置された絶縁性部材からなるフィンガーガードとを備え、上記ノズルが、導電性部材からなるように構成される。
【0018】
この様な構成によれば、導電性部材からなるノズルが電極針とフィンガーガードとの間に介在するので、イオンの付着によってフィンガーガードが帯電した場合に、帯電したフィンガーガードの影響を打ち消すように、静電誘導によってノズル内の電荷が移動する。このため、フィンガーガードの帯電によって電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのが抑えられるので、電極針の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による除電装置では、電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのが抑えられるので、電極針の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる。従って、除電装置に近い距離におけるイオンバランスの変動を抑制することができる。
【0020】
また、本発明による放電針ユニットでは、フィンガーガードの帯電によって電極針周辺の電界が強められたり弱められたりするのが抑えられるので、電極針の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による除電器1の一構成例を示した外観図であり、複数の放電針ユニット3が棒状の筐体ユニット2に取り付けられた除電装置が示されている。
【図2】図1の放電針ユニット3が筐体ユニット2の針ユニット収容孔23に取り付けられる様子を示した斜視図である。
【図3】図1の放電針ユニット3の詳細を示した図である。
【図4】図3の電極針34を示した斜視図である。
【図5】図3のエアノズル33を示した斜視図である。
【図6】図4の電極針34を図5のエアノズル33内に圧入する工程を示した斜視図である。
【図7】図3の針キャップ30を示した斜視図である。
【図8】図3の放電針ユニット3をC−C切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図9】図1の除電器1をA−A切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図10】図1の除電器1をB−B切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図11】図1の除電器1を用いて測定されたイオンバランスの時間変動の一例を従来例と比較して示した図である。
【図12】図1の放電針ユニット3の他の構成例を示した斜視図である。
【図13】従来の除電装置を用いて測定されたリップルを示した図であり、交流駆動の周波数が33Hzである場合が示されている。
【図14】従来の除電装置を用いて測定されたイオンバランスの不規則な時間変動をリップルと比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<除電器1>
図1は、本発明の実施の形態による除電器1の一構成例を示した外観図であり、複数の放電針ユニット3が棒状の筐体ユニット2に取り付けられた除電装置が示されている。図中の(a)には、除電器1の側面が示され、(b)には、下面が示されている。この除電器1は、9個の放電針ユニット3と、これらの放電針ユニット3が取り付けられる筐体ユニット2とからなり、例えば、パルス状の交流電圧が各放電針ユニット3に印加されるパルスAC方式のイオナイザーである。
【0023】
放電針ユニット3は、コロナ放電のための駆動電圧が印加される電極針を有し、筐体ユニット2に対し、着脱可能な電極針モジュールである。筐体ユニット2は、細長い直方体形状からなる本体ユニットであり、導電カバー21及びエアコネクタ22が設けられている。
【0024】
導電カバー21は、各放電針ユニット3に共通の接地電極であり、例えば、導電性を有する金属板からなる。導電カバー21は、筐体ユニット2の下面に配置されている。エアコネクタ22は、クリーンエアを外部から筐体ユニット2内に供給するための接続部であり、筐体ユニット2の左右の端面に設けられている。クリーンエアは、電極針が空気中の塵埃や放電によるガスの分解生成物によって汚染されるのを防ぐための清浄なエアであり、各放電針ユニット3から吐出される。
【0025】
各放電針ユニット3は、筐体ユニット2の長尺方向に平行な直線上に概ね一定間隔で配置され、それぞれ電極針を下に向けて固定されている。筐体ユニット2内には、電源回路、駆動電圧の電圧値や印加時間を制御するための制御回路が配置される。
【0026】
<放電針ユニット3の取付構造>
図2は、図1の放電針ユニット3が筐体ユニット2の針ユニット収容孔23に取り付けられる様子を示した斜視図である。放電針ユニット3は、放電用の電極針34と、電極針34の周囲からクリーンエアを吐出するためのエアノズル33と、指などが電極針34に触れるのを防止するための針キャップ30とからなる。
【0027】
針キャップ30は、一端に取付面31aが形成された筐体取付部31と、取付面31a上に形成されたフィンガーガード32とからなり、筐体ユニット2に着脱可能に取り付けられる。取付面31aは、筐体取付部31の端面である。エアノズル33は、取付面31aから突出するように配置されている。電極針34は、エアノズル33のエア吐出口から先端を突出させた状態で、エアノズル33内に収容されている。
【0028】
筐体取付部31は、一端がフランジ形状の円筒体からなり、当該一端側に取付面31aが形成されている。また、筐体取付部31の周面上には、まわり止め用の突起部311が設けられている。フィンガーガード32は、メンテナンス時に指先が電極針34に触れるのを防止するための保護部材であり、取付面31a上においてエアノズル33を取り囲むように配置された4つの爪部からなる。
【0029】
フィンガーガード32の各爪部は、取付面31aの周縁に沿って概ね一定間隔で配置され、これらの爪部は、いずれも取付面31aからの高さが電極針34の先端よりも高い形状からなる。
【0030】
一方、筐体ユニット2の導電カバー21には、放電針ユニット3を挿通させるための貫通孔211が設けられている。貫通孔211は、円形状からなり、放電針ユニット3ごとに形成されている。また、筐体ユニット2の内部筐体には、放電針ユニット3を収容するための針ユニット収容孔23が設けられている。
【0031】
針ユニット収容孔23は、放電針ユニット3を着脱可能に取り付けるための取付部であり、針ユニット受け部231、係合溝232及びストッパー部233が設けられている。針ユニット受け部231は、放電針ユニット3のフランジ部に当接させるためのフランジ当接部であり、針ユニット収容孔23の内壁面に沿って形成されている。
【0032】
係合溝232は、筐体取付部31の突起部311と係合させるための溝であり、針ユニット受け部231の一部を切り欠くように、放電針ユニット3の挿抜方向に形成されている。ストッパー部233は、突起部311に当接させることにより、放電針ユニット3が筐体ユニット2に対して回転しないように当該放電針ユニット3を固定するための当接部である。
【0033】
放電針ユニット3を筐体ユニット2に取り付ける場合、突起部311の位置を係合溝232に合わせた状態で、放電針ユニット3を針ユニット収容孔23内に挿入することにより、突起部311が係合溝232を通過し、筐体取付部31のフランジ部が針ユニット受け部231に当接する。そして、筐体取付部31のフランジ部を針ユニット受け部231に接触させた状態で、放電針ユニット3を所定量だけ回転させれば、突起部311がストッパー部233に当接し、放電針ユニット3が筐体ユニット2に対し固定される。
【0034】
<放電針ユニット3>
図3は、図1の放電針ユニット3の詳細を示した図であり、図中の(a)には、放電針ユニット3を水平方向から見た様子が示され、(b)には、下方向から見た様子が示されている。針キャップ30の筐体取付部31には、4つの突起部311と、取付面31aを有するフランジ部312と、4つのエア供給孔313とが設けられている。
【0035】
突起部311は、筐体取付部31の周面から突出する柱状体からなる。各突起部311は、筐体取付部31の周方向に概ね一定間隔で配置されている。エア供給孔313は、クリーンエアを筐体取付部31内に供給するための貫通孔である。
【0036】
フィンガーガード32は、取付面31aから突出する柱状体からなり、フランジ部312の中心側ほど幅が狭くなっている。また、フィンガーガード32は、取付面31aからの高さが電極針34の先端よりも高い形状からなる。
【0037】
エアノズル33には、その先端にクリーンエアを吐出するためのエア吐出口331が形成されている。電極針34は、エア吐出口331から先端を突出させた状態でエアノズル33内に収容されている。電極針34は、エア吐出口331に対し、略同軸に配置されている。
【0038】
<電極針34>
図4は、図3の電極針34を示した斜視図である。電極針34は、コロナ放電のための駆動電圧が印加される細長い棒状の放電電極であり、先端に放電部341が形成されている。放電部341は、先端ほど径が小さく、尖っている。電極針34は、導電性を有する金属、例えば、タングステンやチタンなどの高融点金属、又は、SUS(ステンレススチール)などの合金からなる。
【0039】
<エアノズル33>
図5は、図3のエアノズル33を示した斜視図である。エアノズル33は、先端にエア吐出口331が形成された円錐体状のノズルであり、先端ほど径が小さなテーパー面332が形成されている。
【0040】
エアノズル33は、導電性を有する金属、例えば、SUSからなり、或いは、導電樹脂からなる。導電樹脂とは、ポリカーボネートなどの絶縁樹脂にカーボン繊維、カーボン粉末、ステンレス繊維、銀粉末、ニッケル粉末などの導電体を混合させたもののことである。或いは、絶縁樹脂の表面にニッケルなどの導電性金属をめっきしたものをエアノズル33として用いても良い。
【0041】
図6は、図4の電極針34を図5のエアノズル33内に圧入する工程を示した斜視図である。エアノズル33内には、電極針34の周面に当接することによって、電極針34を略同軸に保持するための針当接部333と、クリーンエアを通すためのエア流路334とが形成されている。
【0042】
電極針34は、エアノズル33に対し、エアノズル33の先端とは反対側から圧入することによって固定される。電極針34とエアノズル33とは、針当接部333を介して互いに接触しているので、略同電位に保たれる。
【0043】
<針キャップ30>
図7は、図3の針キャップ30を示した斜視図である。針キャップ30は、ポリカーボネートなどの絶縁樹脂又はセラミックなどの絶縁性部材からなる。筐体取付部31のフランジ部312には、エアノズル33を挿通させるための貫通孔314が形成されている。
【0044】
貫通孔314は、取付面31aの中央に配置されている。エアノズル33は、筐体取付部31に対し、フランジ部312とは反対側から挿入することにより、先端を取付面31aから突出させることができる。
【0045】
図8は、図3の放電針ユニット3をC−C切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。エアノズル33内に圧入された電極針34は、針当接部333により、エアノズル33の中心軸と略同軸に保持される。エア流路334は、先端側で狭くなっている。
【0046】
筐体取付部31内に挿入されたエアノズル33は、筐体取付部31に対し、スペーサ35をフランジ部312とは反対側から圧入することによって固定されている。スペーサ35は、電極針34を挿通させるための貫通孔や、クリーンエアを通すための切欠き溝が形成された円柱体であり、例えば、絶縁樹脂からなる。
【0047】
エアノズル33を挟んで対向する2つのフィンガーガード32について、内壁間の距離dは、10mm程度である。このため、指先が電極針34の先端に触れにくくなっている。エア供給孔313から供給されたクリーンエアは、エア流路334を介してエアノズル33のエア吐出口331へ流れ、外部へ吐出される。
【0048】
エア吐出口331から吐出されたクリーンエアは、エアノズル33周辺の雰囲気ガスを巻き込みながら電極針34の軸方向へ流れる層流となる。このため、針キャップ30周辺の雰囲気ガスがフィンガーガード32間を通って取付面31a上に流れ込むことになる。その際、取付面31a上に流れ込んだ雰囲気ガスは、エアノズル33のテーパー面332に沿って流れるので、雰囲気ガス中の塵埃が電極針34の先端に付着するのを抑制することができる。
【0049】
図9は、図1の除電器1をA−A切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。この図9には、放電針ユニット3が破断されずに描かれている。また、図10は、図1の除電器1をB−B切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。放電針ユニット3を筐体ユニット2の針ユニット収容孔23内に収容させた状態では、フィンガーガード32が導電カバー21の貫通孔211から突出している。
【0050】
電極針34は、エアノズル33や針キャップ30を貫通し、共通電極25に当接している。共通電極25は、各放電針ユニット3に共通の電源供給用電極であり、共通電極25を介して、電極針34に放電用の駆動電圧が供給される。
【0051】
エアコネクタ22を介して筐体ユニット2内に供給されたクリーンエアは、エア流路24を流れ、各放電針ユニット3へ供給される。そして、エア供給孔313を介して放電針ユニット3内に供給され、エアノズル33から吐出される。
【0052】
図11は、図1の除電器1を用いて測定されたイオンバランスの時間変動の一例を従来例と比較して示した図であり、(a)には、本発明による除電器1を用いた場合が示され、(b)には、エアノズルが絶縁樹脂からなる従来の除電装置を用いた場合が示されている。
【0053】
エアノズルが絶縁樹脂、例えば、ポリカーボネートからなる除電装置の場合、除電装置周辺のイオンバランスは、5分程度の時間に、(−50)〜(+35)Vの範囲で不規則に変動している。
【0054】
これに対し、エアノズル33が導電樹脂からなる除電器1の場合、イオンバランスは、その変動幅が(−2)〜(+15)Vの範囲内に収まっており、安定している。エアノズル33がSUSなどの他の導電性部材からなる場合も、導電樹脂からなる場合と同様である。
【0055】
本実施の形態によれば、導電性部材からなるエアノズル33が電極針34とフィンガーガード32との間に介在するので、イオンの付着によってフィンガーガード32が帯電した場合に、帯電したフィンガーガード32の影響を打ち消すように、静電誘導によってエアノズル33内の電荷が移動する。このため、フィンガーガード32の帯電によって電極針34周辺の電界が弱められるのが抑えられるので、電極針34の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる。
【0056】
また、電極針34とエアノズル33とが、略同電位に保たれ、エアノズル33も電極針34と同様に駆動されるので、フィンガーガード32の帯電の影響によって電極針34周辺の電界が弱められるのを十分に抑制することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、針キャップ30のフィンガーガード32が、取付面31aの周縁に沿って配置された4つの爪部からなる場合の例について説明したが、本発明はフィンガーガードの構成をこれに限定するものではない。
【0058】
図12は、図1の放電針ユニット3の他の構成例を示した斜視図である。この放電針ユニット3では、針キャップ60が、筐体取付部61及びフィンガーガード62からなる。筐体取付部61には、図7の筐体取付部31と同様に、まわり止め用の突起部611及びフランジ部612が形成され、フランジ部612には、取付面61aが形成されている。
【0059】
フィンガーガード62は、円環状のリング部621と、リング部621を支持する4つの柱部622とからなる。柱部622は、取付面61aから突出する柱状体からなる。各柱部622は、取付面61a上においてエアノズル33を取り囲むように、取付面61aの周縁部に配置されている。また、各柱部622は、取付面61aの周縁に沿って概ね一定間隔で配置されている。
【0060】
リング部621は、取付面61aに対し、電極針34の先端よりも高い位置に配置されている。この様な構成であっても、電極針34の駆動周期よりも長い時間スケールでイオンバランスが不規則に変動するのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、電極針34とエアノズル33とが略同電位に保たれる場合の例について説明したが、本発明は電極針34及びエアノズル33が略同電位であることを限定するものではない。例えば、電極針34及びエアノズル33間の電位差がコロナ放電に必要な電圧の下限値よりも小さければ、電極針34に印加される駆動電圧に対して一定の関係を保持する電圧をエアノズル33に印加するような構成であっても良い。或いは、電極針34に印加される駆動電圧の基準電位に対して一定の関係を保持する電圧をエアノズル33に印加するような構成であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 除電器
2 筐体ユニット
21 導電カバー
22 エアコネクタ
23 針ユニット収容孔
231 針ユニット受け部
232 係合溝
233 ストッパー部
24 エア流路
25 共通電極
3 放電針ユニット
30 針キャップ
31 筐体取付部
31a 取付面
311 まわり止め用の突起部
312 フランジ部
313 エア供給孔
32 フィンガーガード
33 エアノズル
331 エア吐出口
332 テーパー面
333 針当接部
334 エア流路
34 電極針
341 放電部
35 スペーサ
60 針キャップ
61 筐体取付部
61a 取付面
62 フィンガーガード
621 リング部
622 柱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面から突出するように配置され、先端にエア吐出口が形成されたノズルと、
上記エア吐出口から先端を突出させた状態で上記ノズル内に収容され、コロナ放電用の電圧が印加される電極針とを備え、
上記ノズルは、導電性部材からなることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
上記電極針及び上記ノズルが、略同電位であることを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
上記取付面上において上記ノズルを取り囲むように配置された絶縁性部材からなるフィンガーガードを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の除電装置。
【請求項4】
上記フィンガーガードは、上記取付面の周縁に沿って配置された3以上の爪部からなり、上記爪部は、上記取付面からの高さが上記電極針の先端よりも高い形状からなることを特徴とする請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
上記フィンガーガードは、上記電極針の先端よりも高い位置に配置された環状のリング部と、上記取付面の周縁に沿って配置され、上記リング部を支持する3以上の柱部とからなることを特徴とする請求項3に記載の除電装置。
【請求項6】
取付面から突出するように配置され、先端にエア吐出口が形成されたノズルと、
上記エア吐出口から先端を突出させた状態で上記ノズル内に収容され、コロナ放電用の電圧が印加される電極針と、
上記取付面上において上記ノズルを取り囲むように配置された絶縁性部材からなるフィンガーガードとを備え、
上記ノズルは、導電性部材からなることを特徴とする放電針ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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