説明

除電装置

【課題】電子線照射により容器の帯電を、より確実、かつより低コストで解消することのできる除電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】容器100に製品液を充填する充填バルブユニット35と、容器100の外周面に液体を吹き付ける噴射ノズル70とを同電位に設けることで、容器100の外周面と内周面に同電位の液体を接触させ、殺菌装置10において電子線照射を行うことで容器100を形成する材料内に蓄積した電荷を外部に逃がし、容器100を除電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・飲料・医薬品等を充填する容器を電子線により殺菌した場合に用いられる容器の除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品・飲料・医薬品等の充填物を容器に充填する充填工程においては、容器に充填物を充填するのに先立ち、容器の殺菌が行われる。
容器の殺菌には、過酢酸・過酸化水素といった薬液や紫外線照射が多く用いられているが、近年、紫外線よりも殺菌力に勝る電子線照射による殺菌技術が注目され、鋭意開発が行われている。
【0003】
電子線の照射により樹脂製の容器の殺菌を行った場合、容器を形成する樹脂の内部に電荷が残るケースがある。また、容器の内部空間にも、電荷が滞留する。その結果、容器が帯電し、静電気により周囲の埃等を引き寄せたりするなどの問題が発生する。
【0004】
そこで、電子線照射中に、棒状の金属製の接地電極を容器内に挿入し、容器内から電子やイオンを容器外に流す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、電子線照射による容器殺菌後、イオナイザにより、容器に蓄積した電荷と同極性のマイナスイオンを容器の外表面に照射することで、帯電を解消する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−26000号公報
【特許文献2】特開2011−11775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子線照射により容器が帯電するという問題を、より確実に、かつより低コストで解消することが常に望まれている。
この点からすると、例えば特許文献1に記載の技術では、容器から電子やイオンを容器外に流すという点で、より一層の改善の余地がある。
また、特許文献2に記載の技術は、イオナイザを用いるため、複雑な容器表面形状に対してマイナスイオンを均一に当てる必要があり、容器全体を確実に除電できるとは限らない。また飲料充填設備においては、容器は高速度で搬送されるため、短時間で樹脂内部の電荷を確実に取り除くという点で課題がある。また、イオナイザを備えるにはコストが掛かり、イオナイザの放電電極自体のメンテナンスも必要となる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電子線照射により容器の帯電を、より確実、かつより低コストで解消することのできる除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた本発明の除電装置は、電子線照射による殺菌工程を経た容器を保持する容器保持具と、容器保持具に保持された容器内に、導電性を有した第一の媒体を供給する第一の媒体供給部と、容器の外表面に、導電性を有した第二の媒体を接触させる第二の媒体供給部と、を有し、第一の供給部から供給される第一の媒体と、第二の供給部から供給される第二の媒体とが、同電位に設定されていることを特徴とする。
このように、第一の供給部から供給される第一の媒体と、第二の供給部から供給される第二の媒体とを同電位とすることで、容器に蓄積された電荷を逃がすことができ、容器を除電することができる。
【0008】
ここで、第一の媒体と第二の媒体を同電位とするには、第一の媒体供給部が第一の媒体を容器内に充填する充填ノズルであり、第二の媒体供給部が第二の媒体を容器の外表面に噴射する媒体噴射ノズルである場合、充填ノズルおよび媒体噴射ノズルは導電性材料からなるものとし、充填ノズルと媒体噴射ノズルを同電位とするのが好ましい。
ここで、充填ノズルと媒体噴射ノズルを同電位とするには、双方をそれぞれ接地しても良いし、双方を互いに電気的に接続しても良い。さらに、充填ノズルと媒体噴射ノズルに対し、同じ電圧を印加するようにしても良い。
【0009】
第一の媒体は、液体とするのが好ましい。もちろん、第一の媒体を蒸気等とすることも考えられるが、蒸気等は容器に一度入ると容器から出にくい。さらに、液体は容器の内周面の全体に均一に接触するため、除電効果も高い。
ここで、第一の媒体を液体とする場合、この液体は、除電のための専用液とすることもできるが、第一の媒体を、容器に充填される製品液とすることもできる。このようにすると、容器への製品液の充填工程において除電を行うことができる。したがって、除電のために別途工程を設ける必要もなく、低コスト、かつ効率よく除電を行える。
【0010】
一方、第二の媒体は、液体または蒸気とすることができる。これ以外にも、第二の媒体としては、容器の外表面に電気的に接触する部材を用いることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第一の供給部から供給される第一の媒体と、第二の供給部から供給される第二の媒体とを同電位とすることで、容器に蓄積された電荷を逃がすことができ、容器を確実に除電することができる。このとき、容器には、第一の媒体、第二の媒体として液体や蒸気を供給することで、容器の内周面、外周面に対して、その全域で均一に接触することができ、より確実な除電が行われる。また、第一の媒体供給部、第二の媒体供給部は、液体や水を噴射するので、簡易かつ低コストな構成で実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における飲料充填設備の概要を示す図である。
【図2】除電装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における飲料充填設備の概要を示す図である。
図1に示すように、飲料充填設備においては、供給された容器に対し、殺菌装置10において電子線照射により殺菌する殺菌工程、充填装置30において容器に液体を充填する充填工程、液体が充填された容器にキャッパ40においてキャップを装着するキャッピング工程、を順次経ることで、容器への飲料の充填が行われる。なお、互いに前後する装置間においては、スターホイール50や搬送コンベア60により容器が搬送される。
【0014】
殺菌工程において用いられる殺菌装置10は、容器を搬送しながら容器に電子線を照射して殺菌を行う。ここで、殺菌装置10自体については、本発明において何らの限定をする意図はなく、いかなる構成のものを用いても良い。
【0015】
図2に示すように、充填装置30は、円盤状の回転体31の外周部に、供給された容器100を保持するグリッパ(容器保持具)32と、グリッパ32で保持した容器100に製品液を充填する充填バルブユニット35とが、上下に対向するよう複数組配置されている。
充填装置30には、空の容器100が、スターホイール50等の容器搬送手段から一本ずつ受け渡される。充填装置30は、回転体31を回転させながら、受け渡された容器100をグリッパ32で保持する。そして、グリッパ32で保持した容器100を後工程側のスターホイール50に受け渡すまでの間に、容器100の上方に位置する充填バルブユニット35から容器100内への製品液の充填を行うようになっている。
【0016】
充填バルブユニット35は、容器100が当てがわれたときに開となる開閉可能なバルブ機構を備え、その先端部には、容器100の内部に、図示しない貯液タンクから供給される製品液(第一の媒体)を注入する充填ノズル(第一の媒体供給部)36が備えられている。
ここで、充填バルブユニット35は、内部に形成された製品液の流路を製品液が流れ、先端の充填ノズル36の開口から製品液が吐出される。本実施形態においては、充填バルブユニット35は、その全体が導電性材料からなり、製品液が流れる流路の内壁面が導電性を有している。ここで、充填バルブユニット35を非導電性材料で形成する場合には、少なくとも充填ノズル36を導電性材料から形成するのが好ましい。
【0017】
また、グリッパ32で保持された容器100の近傍には、水や湯等の液体(第二の媒体)を噴射する噴射ノズル(第二の媒体供給部)70が配置されている。この噴射ノズル70は、図示しない液体供給源から供給される液体を、グリッパ32で保持された容器100の外周面に向けて噴射する。
【0018】
そして、噴射ノズル70は、充填バルブユニット35と同様、金属製の導電性材料からなる。さらに、噴射ノズル70と充填バルブユニット35とは、同電位となるように設けられている。すなわち、噴射ノズル70、充填バルブユニット35をそれぞれ接地させることで、これらを同電位とすることができる。
【0019】
上述したような構成によれば、除電装置として、噴射ノズル70と充填バルブユニット35とを同電位に設けることで、容器100の外周面と内周面には同電位の液体が接触することになるので、殺菌装置10において電子線照射を行うことで容器100を形成する材料内に蓄積した電荷を外部に逃がすことが可能となる。
これにより、電子線照射による殺菌後の容器100の除電を図ることができる。
また、噴射ノズル70から液体を噴射することにより、容器100の外表面と液体とを短時間で確実に接触させることができ、除電を速やかに行える。
【0020】
また、電子線照射による殺菌工程の後、充填装置30において製品液を充填しながら、その外周面に噴射ノズル70から噴射した液体により除電を図る構成としたので、特に工程を追加することなく、効率よく除電を行える。
【0021】
なおここで、噴射ノズル70から噴射する液体は、いかなるものであってもよいが、コスト面等から水や湯を用いるのが好ましい。特に、湯を用いれば、容器100の温度を上げ、容器100を形成する樹脂材料内部における電子の動きを高めることができ、除電効率が高まる。
【0022】
[他の形態]
なお、上記第一の実施形態においては、噴射ノズル70から液体を噴射するようにしたが、これに代えて、噴射ノズル70から蒸気を噴射し、これを容器100の外表面に接触させるようにすることもできる。
【0023】
これによっても、蒸気と同様、噴射ノズル70と充填バルブユニット35とを同電位に設けることで、容器100の外周面と内周面には同電位の蒸気・液体が接触することになる。したがって、殺菌装置10において電子線照射を行うことで容器100を形成する材料内に蓄積した電荷を外部に逃がすことが可能となり、電子線照射による殺菌後の容器100の除電を図ることができる。
このとき、蒸気は水に比較すれば高温であるため、容器100の温度を上げ、容器100を形成する樹脂材料内部における電子の動きを高めることができ、除電効率が高まる。
【0024】
ところで、充填装置30においては、グリッパ32にロードセル等の重量検出機能が備えられていて、グリッパ32で保持した容器100の重量を検出することによって、容器100への製品液の充填量を検出していることがある。このような構成の場合、グリッパ32で保持した容器100に対し、上述のように蒸気を噴霧すれば、容器100の重量検出に際する誤差が生じるのを防ぐことができ、高精度な充填量管理が行える。
【0025】
なお、上記実施形態においては、噴射ノズル70、充填バルブユニット35を同電位とする構成としたが、双方を接地するのに限らず、電源から双方に同じ電圧を印加することによって、これらを同電位としても良い。
また、容器100の外周部では、水や湯、蒸気の噴射に限らず、導電性材料からなるブラシを容器100の外周面に接触させたり、容器100を導電性材料からなるホルダーで保持したりし、これらブラシやホルダーを充填バルブユニット35と同電位となるように設ける構成とすることもできる。
さらには、上記実施形態では、電子線照射による殺菌工程の後、充填装置30において製品液を充填しながら、その外周面に噴射ノズル70から噴射した液体により、除電を図る構成としたが、充填工程以外において、上記と同様の処理を行うようにしても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 殺菌装置
30 充填装置
31 回転体
32 グリッパ(容器保持具)
35 充填バルブ
36 充填ノズル(第一の媒体供給部)
40 キャッパ
50 スターホイール
60 搬送コンベア
70 噴射ノズル(第二の媒体供給部)
100 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線照射による殺菌工程を経た容器を保持する容器保持具と、
前記容器保持具に保持された前記容器内に、導電性を有した第一の媒体を供給する第一の媒体供給部と、
前記容器の外表面に、導電性を有した第二の媒体を接触させる第二の媒体供給部と、を有し、
前記第一の供給部から供給される前記第一の媒体と、前記第二の供給部から供給される前記第二の媒体とが、同電位に設定されていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記第一の媒体供給部が前記第一の媒体を前記容器内に充填する充填ノズルであり、
前記第二の媒体供給部が前記第二の媒体を前記容器の外表面に噴射する媒体噴射ノズルであり、
前記充填ノズルおよび前記媒体噴射ノズルは導電性材料からなり、前記充填ノズルと前記媒体噴射ノズルを同電位とすることにより、前記第一の媒体と前記第二の媒体とが同電位とされていることを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記第一の媒体は液体であることを特徴とする請求項1または2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記第一の媒体は、前記容器に充填される製品液であることを特徴とする請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
前記第二の媒体は、液体または蒸気であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の除電装置。

【図1】
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【図2】
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