説明

除電装置

【課題】電子線照射による容器の帯電を、確実に解消することのできる除電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】除電装置20においては、グリッパ22で保持した電子線照射後の容器100を、回転体21の回転に伴って円弧状の搬送経路に沿って搬送し、紫外線照射部24から容器100に対して紫外線を照射する。容器100に対して紫外線を照射することで、容器100を形成するPET膜の温度を上昇させ、その抵抗値を低下させて、容器100を形成するPET膜の内部に充電された電荷を外部に流出しやすくする。これによって、電極23により電荷を除去しやすくし、帯電を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・飲料・医薬品等を充填する容器を電子線により殺菌した場合に用いられる容器の除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品・飲料・医薬品等の充填物を容器に充填する充填工程においては、容器に充填物を充填するのに先立ち、容器の殺菌が行われる。
容器の殺菌には、過酢酸・過酸化水素といった薬液や紫外線照射が多く用いられているが、近年、紫外線よりも殺菌力に勝る電子線照射による殺菌技術が注目され、鋭意開発が行われている。
【0003】
電子線の照射により樹脂製の容器の殺菌を行った場合、容器を形成する樹脂の内部に電荷が残るケースがある。また、容器の内部空間にも、電荷が滞留する。その結果、容器が帯電し、静電気により周囲の埃等を引き寄せたりするなどの問題が発生する。
【0004】
そこで、電子線照射による容器殺菌後、容器にX線を照射することによって、帯電を軽減する技術(例えば、特許文献1参照。)や、電子線照射による容器殺菌後、イオナイザにより、容器に蓄積した電荷と同極性のマイナスイオンを容器の外表面に照射することで、帯電を解消する技術(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0005】
また、電子線照射中に、棒状の金属製の接地電極を容器内に挿入し、容器内から電子やイオンを容器外に流す技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−68093号公報
【特許文献2】特開2011−11775号公報
【特許文献3】特開2011−26000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電子線照射により容器が帯電するという問題を、より確実に、かつより低コストで解消することが常に望まれている。
特許文献1、2の技術では、容器の表面付近の電荷が除去できるにすぎず、帯電を確実に解消するという点で向上の余地がある。
また、特許文献3に記載の技術では、容器から電子やイオンを容器外に流すという点で、より確実性を高めるには改善の余地がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電子線照射による容器の帯電を、確実に解消することのできる除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもとになされた本発明の除電装置は、電子線照射による殺菌工程を経た容器を保持する容器保持具と、容器の内部に挿入配置され、導電性材料からなる棒状の電極と、容器保持具に保持された容器を加熱する加熱部と、を備えていることを特徴とする。
加熱部により容器を加熱すると、電子線照射後に容器を形成する材料の抵抗値が低下する。これによって、容器を形成する材料内に残存している電荷を流出しやすくすることができる。
【0009】
ここで、加熱部はいかなる構成としても良いが、加熱部が、容器保持具に保持された容器に紫外線を照射する紫外線照射部を有する構成とすることができる。
さらに、紫外線照射部は、容器の口部の近傍に配置され、紫外線照射源から照射される紫外線を反射して口部から容器の内部に照射するミラーをさらに備えている構成とすることもできる。その場合、電極はミラーと一体に設けるのが好ましい。
【0010】
また、加熱部は、容器保持具に保持された容器に加熱媒体を噴射するノズルを有する構成とすることもできる。ここで、加熱媒体としては、高温の蒸気、温風、湯等を用いることができる。
このとき、ノズルは、容器保持具に保持された容器の外周面に加熱媒体を噴射することができる。また、ノズルは、容器保持具に保持された容器の内部に挿入され、当該容器の内周面に加熱媒体を噴射することもできる。この場合、ノズルは、導電性材料からなり、電極として機能する構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱部により容器を加熱すると、電子線照射後に容器を形成する材料の抵抗値が低下する。これによって、容器を形成する材料内に残存している電荷を流出しやすくすることができる。すると、電極により電荷を除去しやすくなり、容器の帯電を確実に解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における飲料充填設備の概要を示す図である。
【図2】紫外線照射装置を用いた除電装置の構成を示す断面図である。
【図3】容器を形成するPET樹脂の温度−電気抵抗特性を示す図である。
【図4】除電装置の他の例を示す図である。
【図5】除電装置のさらに他の例を示す図である。
【図6】加熱流体供給部を備えた除電装置の構成を示す断面図である。
【図7】除電装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における飲料充填設備の概要を示す図である。
図1に示すように、飲料充填設備においては、供給された容器に対し、殺菌装置10において電子線照射により殺菌する殺菌工程、除電装置20において、殺菌工程で殺菌された容器を除電する除電工程、充填装置30において容器に液体を充填する充填工程、液体が充填された容器にキャッパ40においてキャップを装着するキャッピング工程、を順次経ることで、容器への飲料の充填が行われる。なお、互いに前後する装置間においては、スターホイール50や搬送コンベア60により容器が搬送される。
【0014】
殺菌工程において用いられる殺菌装置10は、容器を搬送しながら容器に電子線を照射して殺菌を行う。ここで、殺菌装置10自体については、本発明において何らの限定をする意図はなく、いかなる構成のものを用いても良い。
【0015】
図2に示すように、除電装置20は、円盤状の回転体21(図1参照)の外周部に周方向に間隔を隔てて設けられ、供給された容器100を保持するグリッパ(容器保持具)22と、グリッパ22で保持した容器100内に挿入される棒状の電極23とが、周方向に間隔を隔てて複数組配置されている。
さらに、除電装置20には、グリッパ22で保持した容器100に対して電子線を照射するグリッパ22で保持した容器100に紫外線を照射する紫外線照射部(加熱部)24が設けられている。
【0016】
グリッパ22は、回転体21と等速で回転するスターホイール50等の容器搬送手段から一本ずつ受け渡される空の容器100を、その首部100cを挟み込むことで保持する。
【0017】
グリッパ22で保持された容器100に対し、電極23が、図示しないシリンダ機構等によって挿入されるようになっている。
電極23は、例えばステンレス、タングステン等からなる導電性材料からなり、棒状で、その長さは、容器100内に挿入されたときに、容器100の口部100aから底部100bの近傍まで位置するよう設定されている。
【0018】
電極23は、接地することができる。また、電極23に、直流電源から、電圧を印加した状態とすることもできる。
さらに、電極23には、交流電源を接続し、交流の電圧を印加することもできる。このとき、印加する交流電流は、誘電体である容器100に対して十分な損失作用及び電流通電作用をもたらす周波数が好適であり、100Hz以上は必要である。
【0019】
紫外線照射部24は、回転体21の回転に伴って搬送される容器100の円弧状を描く搬送経路にそって、その両側(内周側と外周側)に、それぞれ平面視円弧状に紫外線光源25が設けられている。また、紫外線照射部24は、紫外線の周囲への散乱を防ぐため、例えばアルミニウム合金等の金属性の囲い26によって覆われている。また、容器100の近傍には、紫外線によって励起され容器100から空気中に出てきた電子を積極的に逃がすため、導電性材料からなり、接地されたメッシュ板27が設けられている。
【0020】
このような除電装置20においては、回転体21を回転させながら、電子線照射後の空の容器100が、スターホイール50等の容器搬送手段から一本ずつ受け渡され、グリッパ22で保持する。そして、グリッパ22で保持した容器100を、回転体21の回転に伴って円弧状の搬送経路に沿って搬送し、後工程側のスターホイール50に受け渡すまでの間に、紫外線照射部24から容器100に対して紫外線を照射する。
【0021】
電子線照射後の容器100に対して紫外線を照射すると、容器100を形成するPET膜の温度が上昇する。
ここで、図3に示すように、容器100を形成するPET樹脂は、誘電体であり、その電気抵抗が、温度が高まるに従い低下することが知られている。容器100を形成するPET膜の抵抗値Rが低下すると、放電時定数τ=CR(C:静電容量、R:抵抗)が小さくなるので、容器100を形成するPET膜の内部に充電された電荷が、PET膜の外部に流出しやすくなる。
これによって、電極23により電荷を除去しやすくし、帯電を解消することができる。
【0022】
また、容器100を形成するPET膜に内在する電子を活性化させ、その導電率を高めることができ、これによっても、電極23により電荷を除去しやすくし、帯電を解消することができる。
また、紫外線は、容器100の内外の空気に照射させることによってオゾンを発生させ、その中和効果によって、容器100を形成するPET膜に内在する電子を引き出しやすくし、この点においても電極23により電荷を除去しやすくし、帯電を解消することができる。
【0023】
なお、上記実施形態において、紫外線光源25を、回転体21の回転に伴って搬送される容器100の円弧状を描く搬送経路に沿って、その両側(内周側と外周側)に設けるようにしたが、これを、図4に示すように、いずれか一方の側に設ける構成としてもよい。その場合、一方の側に紫外線光源25を設け、容器100を挟んだ反対側には、紫外線光源25から照射された紫外線を反射するミラー28を設けるのが好ましい。
【0024】
また、図5に示すように、容器100の口部100aの近傍に、紫外線光源25から照射される紫外線を反射し、容器100の口部100aから内部に向けて照射させるミラー29を備えても良い。
容器100の口部100a近傍の部分は、キャップをねじ込むためのネジ溝が形成される等、形状が複雑で、肉厚も大きく、またグリッパ22によって容器100が保持される部分であるため、紫外線が当たりにくい。また、棒状の電極23を容器100内部に挿入しているため、一層、容器100の口部100a近傍に紫外線が照射しにくくなっている。これに対し、ミラー29を設けることで、容器100の口部100a近傍に紫外線を確実に照射することができ、除電効果を確実に発揮できる。
なお、ミラー29と電極23とは、一体に設けるようにしてもよい。
【0025】
さらに、このミラー29に代えて、容器100の口部100aに向けて紫外線を照射する紫外線光源25Sを設けてもよい。これによっても、紫外線光源25Sから容器100の口部100a近傍に紫外線を確実に照射して、除電効果を確実に発揮できる。
【0026】
[他の形態]
なお、上記実施形態においては、紫外線照射部24から容器100に紫外線を照射するようにしたが、これに代えて、図6に示すように、加熱流体供給部(加熱部)80として、グリッパ22に保持された容器100に対し、高温の蒸気や、温風、あるいは湯を噴射するノズル81を設けることもできる。
ノズル81から、高温の蒸気、温風、湯等の加熱流体を、容器100の外周面に向けて噴射することによって、容器100を構成するPET膜を加熱する。
【0027】
また、図7に示すように、加熱流体供給部80として、グリッパ22に保持された容器100の内部に、筒状のノズル82を挿入し、このノズル82から容器100の内周面に、高温の蒸気、温風、湯等の加熱流体を噴射することもできる。
このノズル82は、筒状とし、その外周面に複数の孔(図示無し)を形成し、これらの孔から容器100の内周面に加熱流体を噴射することができる。
また、ノズル82を筒状とし、その先端部82bに開口を形成し、この開口から容器100の底部100bの内周面に向けて加熱流体を噴射することもできる。
【0028】
さらに、このノズル82を導電性材料で形成することにより、電極23として機能させることもできる。
【0029】
このようにして、ノズル81、82により、容器100の外周面や内周面に、高温の蒸気、温風、湯等の加熱流体を噴射することにより、容器100の温度を上げ、容器100を形成するPET膜の内部における電子の動きを高めることができる。その結果、電極23により電荷を除去しやすくし、帯電を解消することができる。
なお、図6、図7に示した構成は、組み合わせて用いることも出来る。
【0030】
なお、上記実施形態において示した構成はあくまでも例であり、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 殺菌装置
20 除電装置
21 回転体
22 グリッパ(容器保持具)
23 電極
24 紫外線照射部(加熱部)
25、25S 紫外線光源
27 メッシュ板
28 ミラー
29 ミラー
30 充填装置
40 キャッパ
50 スターホイール
60 搬送コンベア
80 加熱流体供給部(加熱部)
81 ノズル
82 ノズル
82b 先端部
100 容器
100a 口部
100b 底部
100c 首部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線照射による殺菌工程を経た容器を保持する容器保持具と、
前記容器の内部に挿入配置され、導電性材料からなる棒状の電極と、
前記容器保持具に保持された前記容器を加熱する加熱部と、
を備えていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記加熱部が、前記容器保持具に保持された前記容器に紫外線を照射する紫外線照射部を有することを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記紫外線照射部は、前記容器の口部の近傍に配置され、紫外線照射源から照射される紫外線を反射して前記口部から前記容器の内部に照射するミラーをさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記電極は前記ミラーと一体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
前記加熱部が、前記容器保持具に保持された前記容器に、加熱媒体を噴射するノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項6】
前記ノズルは、前記容器保持具に保持された前記容器の外周面に前記加熱媒体を噴射することを特徴とする請求項5に記載の除電装置。
【請求項7】
前記ノズルは、前記容器保持具に保持された前記容器の内部に挿入され、当該容器の内周面に前記加熱媒体を噴射することを特徴とする請求項5に記載の除電装置。
【請求項8】
前記ノズルは、導電性材料からなり、前記電極として機能することを特徴とする請求項7に記載の除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234642(P2012−234642A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100686(P2011−100686)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】