説明

除黴・防黴・除菌剤

【課題】厨房用品及び厨房の壁、床等、並びに食品製造及び食品加工等の工場の壁、床等、の除黴、防黴、除菌、洗浄及び消臭等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤を提供する。
【解決手段】本発明の除黴・防黴・除菌剤は、炭酸水素ナトリウム等を含む水が電気分解されてなる電解水に、銀イオン及びサポニンが含有されてなる。電解水は、珪素化合物を主成分とする半導体セラミックを濾材としてろ過された活性水により3〜25倍に希釈されて用いられることが好ましい。また、除黴・防黴・除菌剤は、0.1〜1.0質量%(好ましくは0.1〜0.6質量%)の塩化ナトリウムを含有することが好ましい。更に、銀イオンは、電解水と接触している樹脂成形体(ポリエチレン樹脂等からなる。)に含有された銀化合物(AgO等)から供給されることが好ましい。また、サポニンは、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸水素ナトリウム等を含む水が電気分解されてなる電解水に、微量の銀イオン及び少量のサポニンが含有されている除黴・防黴・除菌剤に関する。更に詳しくは、本発明は、安全性が高く、且つ壁面等に用いたときでも流下し難く、優れた除黴、防黴、除菌の作用が長期に渡って維持される除黴・防黴・除菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厨房の壁、床等、及びまな板、包丁等の厨房用品、食品製造、食品加工等の工場の壁、床、コンベアラインなどの除黴、防黴、除菌、洗浄及び消臭等の作用を有する水の必要性がより高まっている。このような各種の作用を有する水として、例えば、水道水を電気分解してなる電解還元水等が知られており(例えば、特許文献1参照)、この電解還元水等は、飲料水の他、例えば、眼鏡のレンズ、医療器具等の洗浄などの用途に用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−361250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水道水を電気分解した上記の電解還元水等は、十分な洗浄及び消臭等の作用を有しているが、昨今の環境浄化、健康保持等に対する意識の高まり等により、更に優れた洗浄、消臭の作用を有し、且つ除黴、防黴、除菌等の作用を併せて有する除黴、防黴、除菌水等の提供が必要とされている。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、炭酸水素ナトリウム等を含む水が電気分解されてなる電解水に、微量の銀イオン及び少量のサポニンが含有されており、銀イオンによる十分な除菌作用が得られるとともに、安全性が高く、優れた起泡性を有するサポニンが含有されているため、壁面等に用いたときでも流下し難く、特にアルカリ性においても安定であり、優れた除黴、防黴、除菌等の作用が長期に渡って維持される除黴・防黴・除菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のとおりである。
1.炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び過炭酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含む水が電気分解されてなる電解水に、銀イオン及びサポニンが含有されていることを特徴とする除黴・防黴・除菌剤。
2.上記水は上記炭酸水素ナトリウムを含む上記1.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
3.上記電解水の水素イオン指数が9.0〜10.5である上記2.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
4.上記サポニンは、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンである上記2.又は3.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
5.上記サポニンの含有量は、上記電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部である上記2.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
6.上記電解水が希釈用水により3〜50倍に希釈されて用いられる上記2.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
7.上記希釈用水が、珪素化合物を含有する半導体セラミックをろ材としてろ過された活性水である上記6.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
8.更に塩化ナトリウムを含有し、上記電解水と該塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、該塩化ナトリウムは0.1〜1.0質量%である上記2.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
9.上記銀イオンの供給源が酸化銀である上記2.乃至8.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
10.上記銀イオンの含有量が上記電解水1ミリリットル当たり30〜80ngである上記2.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
11.上記銀イオンは、上記電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給される上記2.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
12.上記樹脂成形体は、上記銀化合物を含むガラスの粉末を含有し、該粉末と該銀化合物との合計を100質量%とした場合に、該銀化合物はAg換算で0.2〜1.0質量%であり、該樹脂成形体に用いられる合成樹脂と該粉末との合計を100質量%とした場合に、該粉末は5〜30質量%である上記11.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
13.上記水は上記炭酸水素ナトリウムを含み、上記電解水の水素イオン指数が9.0〜10.5であり、上記サポニンは、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンであって、該サポニンの含有量は、上記電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部であり、該電解水は珪素化合物を含有する半導体セラミックをろ材としてろ過してなる活性水を希釈用水として3〜50倍に希釈されて用いられ、更に塩化ナトリウムを含有し、該電解水と該塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、該塩化ナトリウムは0.1〜1.0質量%であり、上記銀イオンの供給源が酸化銀であって、該銀イオンの含有量が該電解水1ミリリットル当たり30〜80ngであり、該銀イオンは、該電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給され、該樹脂成形体は、該銀化合物を含むガラスの粉末を含有し、該粉末と該銀化合物との合計を100質量%とした場合に、該銀化合物はAg換算で0.2〜1.0質量%であり、該樹脂成形体に用いられる合成樹脂と該粉末との合計を100質量%とした場合に、該粉末は5〜30質量%である上記1.に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の除黴・防黴・除菌剤は、炭酸水素ナトリウム等を含む水が電気分解されてなる電解水に、微量の銀イオン及び少量のサポニンが含有されているため、炭酸水素ナトリウム等を溶解させたのみの水に比べて水素イオン指数が高く、優れた洗浄作用等を有し、且つ銀イオンが含有されているため、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を併せて備え、更には少量のサポニンが含有されているため、十分な起泡性を有し、例えば、厨房の壁面等に用いた場合でも、流下し難く、優れた除黴、防黴、除菌等の作用が奏される。
更に、水が炭酸水素ナトリウムを含む場合は、電解水の水素イオン指数が適度に高くなり、人の皮膚等が冒されることがなく、取り扱い易く、且つより優れた洗浄作用等を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、電解水の水素イオン指数が9.0〜10.5である場合は、人の皮膚等が冒されることがなく、取り扱い易く、且つこのような弱アルカリ性であってもサポニンは安定であり、優れた除黴、防黴、除菌の作用とともに十分な洗浄作用等を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
更に、サポニンが、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンである場合は、十分に起泡し、且つ発泡状態が持続し、壁面等に用いたときでも、水は流下してしまっても銀イオンは残留し、優れた除黴、防黴、除菌等の作用が長期に渡って維持される除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、サポニンの含有量が、電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部である場合は、適度に起泡し、取り扱い易く、且つ壁面等に用いたときでも流下し難く、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
更に、電解水が希釈用水により3〜50倍に希釈されて用いられる場合は、希釈に用いる水の種類にもよるが、例えば、水道水を用いたときなど、より安価であり、且つ十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、希釈用水が、珪素化合物を含有する半導体セラミックをろ材としてろ過された活性水である場合は、希釈用水として水道水を用いたときと比べて、より優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
更に、塩化ナトリウムを含有し、電解水と塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、塩化ナトリウムが0.1〜1.0質量%である場合は、特に除黴・防黴・除菌剤を水により希釈して用いるとき、希釈用水として水道水を用いた場合であっても、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、銀イオンの供給源が酸化銀である場合は、電解水に所要量の銀イオンが供給され、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
更に、銀イオンの含有量が電解水1ミリリットル当たり30〜80ngである場合は、銀イオンの含有量が微量であるにもかかわらず、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、銀イオンが、電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給される場合は、電解水に所要量の銀イオンを容易に含有させることができ、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
更に、樹脂成形体が、銀化合物を含むガラスの粉末を含有し、粉末と銀化合物との合計を100質量%とした場合に、銀化合物がAg換算で0.2〜1.0質量%であり、樹脂成形体に用いられる合成樹脂と粉末との合計を100質量%とした場合に、粉末が5〜30質量%である場合は、樹脂成形体の成形が容易であり、且つ銀イオンが電解水に溶出し易く、比較的短時間で電解水に所要量の銀イオンを供給し、含有させることができ、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
また、所定の多くの構成要件のすべてを備える場合は、特に優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の除黴・防黴・除菌剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び過炭酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含む水が電気分解されてなる電解水に、銀イオン及びサポニンが含有されていることを特徴とする。
【0008】
上記「炭酸水素ナトリウム」、「炭酸ナトリウム」及び「過炭酸ナトリウム」は、いずれか1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのナトリウム塩の含有量も特に限定されないが、ナトリウム塩と水との合計を100モル%とした場合に、ナトリウム塩(併用する場合は合計量)は0.8〜2.0モル%とすることができ、1.0〜1.8モル%、特に1.2〜1.4モル%であることが好ましい。ナトリウム塩の含有量が0.8〜2.0モル%であれば、所定の水素イオン指数(以下、「pH」という。)を有し、優れた洗浄作用等を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
尚、この除黴・防黴・除菌剤は、酸化還元電位が体液に近似の−50〜−200mVになるため、生体にとって有用な除黴・防黴・除菌剤となり、生体に用いることもできる。
【0009】
上記のナトリウム塩は、所要の除黴、防黴、除菌等の作用と、除黴・防黴・除菌剤を用いるときの作業のし易さ等とを勘案して選定することが好ましく、十分な除黴、防黴、除菌等の作用と、安全性、及び作業のし易さ等とを併せて有する除黴・防黴・除菌剤が得られる炭酸水素ナトリウムが好ましい。2種以上のナトリウム塩を併用するときは、ナトリウム塩の合計を100モル%とした場合に、炭酸水素ナトリウムが50モル%以上、特に70モル%以上、更に90モル%以上であることが好ましく、このナトリウム塩は、特に、その全量が炭酸水素ナトリウムであることがより好ましい。
【0010】
上記「水」は特に限定されず、水道水、自然水、水道水等を蒸留してなる蒸留水、ろ過及び蒸留により水道水等から不純物を除去してなる精製水、半導体セラミック等のセラミックの粒子又は多孔質成形体によりろ過されて有機塩素化合物が除去された(有機塩素化合物が含有されていない。)活性水(以下、活性水とはこの意味である。)、イオン交換樹脂等を用いて精製水を脱イオン化した純水などを用いることができる。この水として水道水を用いた場合であっても、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができ、精製水等のより純度の高い水、また、特に活性水を用いたときは、より優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
尚、上記の半導体セラミックとしては、例えば、珪素等の複数の元素を有する複合半導体セラミック(商品名「マリンストーン」)等が挙げられる。
【0011】
水として水道水を用いる場合、通常の水道水には少なくとも100ppm程度の金属イオンが含有されているため、それらの金属イオンによって電気分解に必要な通電性は確保されるが、必要に応じてNa、Ca、Mg等を有する塩を少量溶解させ、その後、電気分解することもできる。また、本発明において用いる水は炭酸水素ナトリウム等を含んでおり、精製水、活性水等を用いた場合であっても、電気分解に必要な通電性は確保されるが、同様に金属塩を少量溶解させ、その後、電気分解することもできる。このように少量の金属イオンを含有させることにより、電気分解の効率を高め、電解水の生産性を向上させることもできる。特に、蒸留、ろ過、イオン交換等の操作を施した水を用いるときは、必要に応じて所要量の上記の塩等を溶解させ、その後、電気分解してもよい。
【0012】
上記「電解水」は、炭酸水素ナトリウム等を含む水が電気分解されたものであるが、この電気分解の方法は特に限定されず、隔膜法等の通常の方法により電解分解させることができる。この電気分解により炭酸水素ナトリウム等を含む水のpHが上昇するが、電解水のpHは9.0〜10.5、特に9.5〜10.0であることが好ましい。この範囲のpHであれば、優れた洗浄作用等を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができ、併せて除黴等の作業時に作業者の皮膚等が冒されることもなく、作業のし易い除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
【0013】
また、上記のように炭酸水素ナトリウム等を含む水を電気分解することにより電解水のpHが上昇するが、例えば、炭酸水素ナトリウムを溶解させたのみで、電気分解しないときは、水溶液のpHはそれほど上昇せず、高々8.0前後であり、このpHでは十分な洗浄作用等を得ることはできない。一方、本発明の除黴・防黴・除菌剤、特に炭酸水素ナトリウムを用いた除黴・防黴・除菌剤では、水溶液を電気分解することにより電解水のpHは9.0〜10.5、特に9.5〜10.0に上昇し、より優れた洗浄作用等を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
【0014】
上記「銀イオン」を電解水に含有させるための銀イオンの供給源は特に限定されず、種々の銀化合物を用いることができる。この銀化合物としては、例えば、酸化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、フッ化銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、クエン酸銀等を用いることができる。これらの銀化合物は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この銀化合物としては、酸化銀、塩化銀が好ましく、特に酸化銀がより好ましい。
【0015】
本発明の除黴・防黴・除菌剤では、含有される銀イオンは多くを必要とせず、極めて微量の銀イオンが含有されておればよい。電解水における銀イオンの含有量は特に限定されないが、電解水1ミリリットル当たり30〜80ng、特に40〜60ngであればよく、このように微量の銀イオンが含有されておれば、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
尚、この銀イオンの含有量は、例えば、後記の実施例の(2)のようにして作製した樹脂成形体1本を、100ミリリットルの電解水又は希釈電解水に浸漬し、20℃で5時間経過した後、ICP発光分析することにより定量することができる。
【0016】
上記「サポニン」は、ステロイド、ステロイドアルカロイド又はトリテルペンの配糖体であり、食品等の添加剤として用いられるように十分に安全であり、且つ水に溶解したときに優れた発泡作用を有し、このサポニンを含有することにより十分な起泡性を備える除黴・防黴・除菌剤とすることができる。このサポニンは多くの植物、例えば、キラヤ、ムクロジ、トチノキ、サボンソウ、ブドウ、オリーブ、ダイズ、キキョウ、セネガ等の樹皮、果皮等に含有されている。除黴・防黴・除菌剤に含有させるサポニンは特に限定されず、上記の各種の植物のうちの1種又は2種以上の植物の抽出物に含有されるサポニン等を用いることができる。サポニンとしては、キラヤの抽出物に含有されるキラヤサポニンが好ましく、このキラヤサポニンを含有する除黴・防黴・除菌剤は、より十分に発泡し、特に壁面等に用いたときでも、優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
【0017】
除黴・防黴・除菌剤におけるサポニンの含有量は特に限定されないが、電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部であることが好ましく、0.6〜4.5質量部、特に0.7〜4質量部、更に0.8〜3.5質量部であることがより好ましい。サポニンの含有量が0.5〜5質量部であれば、十分な起泡性を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができ、除黴・防黴・除菌剤を壁面等に用いたときでも、容易に流下することがなく、且つ水が流下しても銀イオン等が壁面等に十分に浸透して残留し、黴の再発生が抑えられ、長期に渡って優れた除黴、防黴、除菌等の作用が維持される。また、サポニンは、除黴・防黴・除菌剤に含有させた場合に、除黴・防黴・除菌剤が着色したり、臭気を帯びたりすることもほとんどなく、この意味でも好ましい起泡剤である。
【0018】
前記の各種の植物からサポニンを抽出する場合、抽出に用いる溶媒としては、水、メチルアルコール、及び水とメチルアルコールとの混合溶媒を用いることができる。この水とメチルアルコールとの混合溶媒において、水とメチルアルコールとの合計を100質量%とした場合に、メチルアルコールは50質量%以下、特に35質量%以下、更に20質量%以下であることが好ましい。また、エチルアルコールも併用することができるが、溶媒の全量を100質量%とした場合に、10質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。
【0019】
溶媒としては、安全性が高く、取り扱い易い水が特に好ましい。更に、抽出時の温度は室温(例えば、15〜35℃)でもよく、溶媒を加熱してもよいが、加熱溶媒により抽出することが好ましい。特に熱水により抽出することがより好ましく、50〜100℃、特に60〜100℃、更に70〜90℃の熱水を用いて抽出することが特に好ましい。このように熱水を用いたときは、サポニンを短時間で効率よく抽出することができる。
【0020】
サポニンの抽出に用いる植物と溶媒との質量割合は特に限定されず、植物と溶媒との合計を100質量%とした場合に、植物の質量割合は、1〜10質量%、特に2〜9質量%、更に3〜8質量%とすることができる。このような質量割合であれば、十分な起泡性を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。また、抽出時の抽出時間も特に制限されない。この抽出時間は、抽出温度等にもよるが、0.5〜6時間とすることができ、1〜5時間、特に1.5〜4時間とすることが好ましい。このような抽出時間であれば、所要量のサポニンを含有する抽出物を得ることができる。更に、サポニンは、電解水に銀イオンを供給する前に配合してもよく、銀イオンを供給しながら配合してもよく、銀イオンを供給した後に配合してもよいが、銀イオンを供給した後に配合することが好ましい。
【0021】
この除黴・防黴・除菌剤は、電解水をそのまま用いて、この電解水に銀イオン及びサポニンを含有させたものでもよく、電解水を水により希釈して、この希釈電解水に銀イオン及びサポニンを含有させたものでもよい。電解水を希釈して用いる場合、希釈倍率は特に限定されないが、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を得るためには、希釈倍率は3〜50倍とすることができ、5〜45倍、特に7〜40倍であることが好ましい。この希釈倍率は除黴、防黴、除菌等をする対象により選定することが好ましく、例えば、厨房用品、及び厨房の壁、床等の除黴、防黴、除菌等では5〜20倍、特に7〜15倍とすることが好ましい。また、この除黴・防黴・除菌剤は、犬、猫等の動物の体毛、皮膚などの洗浄、除菌、消臭等に用いることもでき、この場合、希釈倍率は20〜40倍、特に25〜35倍とすることが好ましい。
【0022】
電解水の希釈に用いる希釈用水は特に限定されず、前記の水道水、自然水、蒸留水、精製水、活性水、純水などを用いることができる。この希釈用水は、除黴・防黴・除菌剤のコストと所要の除黴、防黴、除菌等の作用とによって選定することが好ましい。水道水を用いれば安価な除黴・防黴・除菌剤とすることができるが、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を得るためには、被除黴・防黴材、被除菌材等とより長時間接触させなければならないことがある。一方、精製水、活性水等を用いたときは、コスト高にはなるが、より優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。また、より優れた作用、効果が得られる活性水を希釈用水として用いることがより好ましい。
【0023】
更に、この除黴・防黴・除菌剤では、特に、pHが9.0〜10.5、銀イオンの含有量が電解水1ミリリットル当たり30〜80ngであり、且つサポニンがキラヤサポニンであって、その含有量が0.5〜5質量部(電解水を100質量部とする。)であれば、十分な除黴、防黴、除菌等の作用が得られるが、更に塩化ナトリウムを含有していることが好ましい。この塩化ナトリウムの含有量は特に限定されないが、電解水と塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、0.1〜1.0質量%とすることができ、0.1〜0.9質量%、特に0.1〜0.6質量%であることが好ましい。このように所定量の塩化ナトリウムを含有させることにより、除黴、防黴、除菌等の作用をより向上させることができる。塩化ナトリウムとしては食用の塩を用いることができ、この塩における塩化ナトリウムの含有量は特に限定されないが、塩化ナトリウムの含有量が99質量%以上の精製塩を用いることが好ましい。
【0024】
塩化ナトリウムは、電解水に銀イオンを供給する前に配合してもよく、銀イオンを供給しながら配合してもよく、銀イオンを供給した後に配合してもよいが、銀イオンを供給した後に配合することが好ましい。更に、塩化ナトリウムを配合する場合、サポニンと塩化ナトリウムの配合順序は特に限定されず、これらを同時に配合してもよく、いずれかを先に配合してもよい。
【0025】
上記のように除黴、防黴、除菌等の作用を向上させるための添加物としては、塩化ナトリウムの他に、除黴・防黴・除菌剤において、亜鉛イオン、銅イオン等が生成する、特に安全性の高い亜鉛イオンが生成する化合物等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種の添加物(塩化ナトリウムも含む。)を、例えば、上記の質量割合で含有する除黴・防黴・除菌剤は、より優れた除黴、防黴、除菌等の作用を有する。この他の添加物の場合、モル量で上記の塩化ナトリウムのときと同様の含有量とすることができる。
尚、除黴・防黴・除菌剤には、電解水、銀イオン、サポニン、及び塩化ナトリウム等の添加物を除く他の成分が含有されていてもよい。これらの他の成分が含有される場合、他の成分の含有量は、除黴・防黴・除菌剤を100質量%としたときに、合計で5質量%以下、特に3質量%以下、更に1質量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の除黴・防黴・除菌剤において銀イオンを電解水に含有させる方法は特に限定されない。例えば、この銀イオンは、電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給させ、含有させることができる。樹脂成形体の成形に用いられる合成樹脂は特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種の合成樹脂を用いることができる。この合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0027】
また、樹脂成形体に銀化合物をそのまま含有させた場合、電解水に銀イオンが供給され難く、十分な除黴、防黴、除菌等の作用が得られないことがある。そのため、電解水に溶出し易い材料に銀化合物を予め混合し、これを合成樹脂に配合し、この合成樹脂からなる樹脂成形体を用いることが好ましい。電解水に溶出し易い材料は特に限定されないが、例えば、SiOを5〜45モル%、Bを40〜85モル%、NaOを5〜20モル%含有するガラスを用いることができる。また、この銀化合物を含むガラスを合成樹脂に配合し易くするため、ガラスは粉末であることが好ましい。
【0028】
ガラスの粉末の粒径は特に限定されないが、5〜60μm、特に10〜40μmであることが好ましい。この粒径が5〜60μmであれば、銀イオンが樹脂成形体から放出され易く、所要量の銀イオンの放出に長時間を必要とせず、例えば、電解水と樹脂成形体とを18〜30時間、特に20〜28時間、更に22〜26時間接触させれば、所要量の銀イオンが電解水に供給される。
尚、接触時間を30時間を越えてより長時間にしてもよいが、その場合、最長でも168時間(7日間)以下とすることが好ましい。
【0029】
銀化合物が配合されたガラスからなる粉末における銀化合物の含有量は、除黴・防黴・除菌剤の除黴、防黴、除菌等の作用が十分に得られる限り、特に限定されないが、粉末と銀化合物との合計を100質量%とした場合に、銀化合物はAg換算で0.2〜1.0質量%とすることができ、0.3〜0.8質量%、特に0.4〜0.6質量%であることが好ましい。銀化合物の含有量がAg換算で0.2〜1.0質量%であれば、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができ、粉末の合成樹脂への配合量も多くを必要とせず、樹脂成形体の成形性が低下することもない。
【0030】
また、粉末が配合された合成樹脂を用いてなる樹脂成形体における粉末の含有量は、除黴・防黴・除菌剤の除黴、防黴、除菌等の作用が十分に得られる限り、特に限定されないが、樹脂成形体に用いられる合成樹脂と粉末との合計を100質量%とした場合に、粉末は5〜30質量%とすることができ、5〜20質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。粉末の含有量が5〜30質量%であれば、樹脂成形体の成形性が低下することがなく、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。
【0031】
樹脂成形体と電解水とを接触させる方法も特に限定されないが、樹脂成形体から電解水に所要量の銀イオンを放出させるためには、樹脂成形体を電解水に浸漬する方法が好ましい。この浸漬の条件も特に限定されず、浸漬時の電解水の温度は常温(15〜35℃)でもよく、必要に応じて電解水を加熱してもよい。加熱する場合、電解水の温度は35℃を越え、50℃以下とすることができ、特に35℃を越え、45℃以下とすることができる。また、この温度は15℃未満でもよいが、5℃以上、特に10℃以上とすることが好ましい。更に、電解水と樹脂成形体とを接触させる時間は特に限定されないが、好ましい接触時間は前記のとおりである。
【0032】
樹脂成形体の形状は特に限定されないが、電解水に効率よく銀イオンを放出させるためには、質量当たりの面積が大きいことが好ましい。このような樹脂成形体としては、フィルム、シート等が挙げられる。これらの樹脂成形体の厚さは特に限定されないが、フィルムでは50〜500μm、特に100〜300μm程度とすることができ、シートでは500μmを越え、3mmまで、特に800μmから2mmまでとすることができる。また、電解水への出し入れ等の取り扱い易さを考慮すると、細片ではなく所定形状の成形体であることが好ましい。
【0033】
樹脂成形体としては、例えば、図1のような樹脂成形体が挙げられる。この図1の樹脂成形体であれば、質量当たりの面積が大きく、より短時間で電解水に所定量の銀イオンを放出させることができ、且つ取り扱い易く、樹脂成形体の電解水への出し入れ等が容易である。更に、電解水が投入された容器の形状、及び特に開口部の寸法等により、成形体の寸法を調整することで、どのような形状、寸法の容器であっても容易に用いることができる。
【0034】
銀イオンは電解水に銀化合物を配合することにより含有させることもできる。この場合の銀化合物としては、前記の銀化合物を用いることができ、酸化銀、塩化銀が好ましく、酸化銀が特に好ましい。また、銀化合物の電解水への配合量は特に限定されないが、電解水と銀化合物との合計を100質量%とした場合に、銀化合物はAg換算で0.05〜1.0質量%とすることができ、0.1〜0.8質量%、特に0.1〜0.6質量%であることが好ましい。銀化合物の配合量がAg換算で0.05〜1.0質量%であれば、より短時間で電解水に所定量の銀イオンを放出させることができる。
【0035】
上記のように電解水に銀化合物を配合したとき、電解水に所要量の銀イオンが放出されるのに必要な時間は、電解水と樹脂成形体とを接触させた場合と同様であり、銀化合物の配合時から18〜30時間経過した時点、特に20〜28時間、更に22〜26時間経過した時点で、所要量の銀イオンが電解水に供給され、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。更に、銀化合物を配合するとき、及び配合した後の電解水の温度も電解水と樹脂成形体とを接触させる場合と同様とすることができる。
【0036】
銀イオンは、電解水と、銀化合物が配合された多孔質樹脂成形体とを接触させることにより含有させることもできる。この場合、電解水に多孔質樹脂成形体を浸漬して接触させてもよいし、多孔質樹脂成形体の一面から他面へと電解水を流通させて含有させることもできる。この多孔質樹脂成形体には前記の樹脂成形体のときと同様の合成樹脂を用いることができる。また、樹脂成形体のときと同様に銀化合物をガラスに配合し、このガラスの粉末を含有する合成樹脂を成形してなる多孔質樹脂成形体を用いることもできる。
【0037】
電解水と多孔質樹脂成形体との接触時間は、浸漬の場合は、浸漬開始から5〜15時間経過、特に7〜10時間経過と比較的短時間でよく、これにより所要量の銀イオンが電解水に供給され、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を有する除黴・防黴・除菌剤とすることができる。また、電解水を流通させるときは、必要に応じて複数回流通させることで、所要量の銀イオンを電解水に供給させることができる。更に、多孔質樹脂成形体を浸漬する場合の温度、及び電解水を流通させるときの温度は、いずれの場合も電解水と樹脂成形体とを接触させる場合と同様とすることができる。
【0038】
樹脂成形体との接触、銀化合物の配合、多孔質樹脂成形体との接触により、電解水に銀イオンを含有させて得られた銀イオン含有電解水は、樹脂成形体又は多孔質樹脂成形体を浸漬した場合は、これらを取り出し、そのまま用いてもよいし、ろ過して用いてもよい。銀化合物を配合したとき、及び電解水を多孔質樹脂成形体に流通させたときも、夾雑物等は微量であるため特にろ過は必要としないが、必要に応じてろ過して用いてもよい。
【0039】
また、サポニンは水に可溶であり、除黴・防黴・除菌剤に起泡性を付与するための配合量、例えば、電解水を100質量部とした場合に、5質量部以下の配合量であれば、容易に溶解させ、含有させることができる。更に、銀イオンを含有する電解水にサポニンを配合する場合、電解水は予めろ過してもよく、ろ過しなくてもよく、サポニンを配合した除黴・防黴・除菌剤をろ過してもよい。また、銀イオンが供給されつつある電解水にサポニンを配合する場合も、サポニンと銀イオンとを含有する除黴・防黴・除菌剤はろ過してもよく、ろ過しなくてもよい。更に、サポニンを含有する電解水に銀イオンを供給する場合、サポニンと銀イオンとを含有する除黴・防黴・除菌剤はろ過してもよく、ろ過しなくてもよい。
【0040】
更に、本発明の除黴・防黴・除菌剤の被除黴・防黴材、被除菌材等との接触時間は特に限定されないが、5分間から5時間、特に10分間から4時間とすることができる。これにより、十分な除黴、防黴、除菌等の作用が得られる。また、この除黴・防黴・除菌剤によれば、黴等が十分に除去され、且つ菌がより発生し難いため、黴の再発生が十分に抑えられ、除黴、防黴、除菌の作用、効果が長期間持続する。
【0041】
本発明の除黴・防黴・除菌剤は速効性にも優れ、被除黴・防黴材、被除菌材等と短時間接触させることにより、十分な除黴、防黴、除菌等の作用を得ることもできる。この除黴・防黴・除菌剤は、被除黴・防黴材、被除菌材等と5〜50分、特に5〜40分接触させることによっても、被除黴・防黴材を十分に除黴及び防黴することができ、被除菌材を十分に除菌することができる等の優れた作用を有する。このように短時間の接触で十分な作用、効果が得られ、且つこの作用、効果が持続するため、本発明の除黴・防黴・除菌剤は速効性及び作用、効果の持続性を必要とする除黴、防黴等の場合に特に有用である。例えば、レストラン等の外食産業、特に油汚れの激しい中華レストランなどにおける厨房用品、及び厨房の壁、床等の除黴、防黴、除菌、消臭などに好適である。
【0042】
本発明の除黴・防黴・除菌剤の用途は特に限定されず、除黴、防黴、除菌等を必要とする多くの被除黴・防黴材、被除菌材などの除黴、防黴、除菌等に用いることができる。この被除黴・防黴材、被除菌材等としては、例えば、(1)前記の中華レストラン等の外食産業、病院、老健施設などにおける厨房用品、及び厨房の壁、床、(2)一般家庭の台所用品、及び台所の壁、床、(3)食品産業等におけるコンベアライン、(4)ホテル、旅館、レストラン、公共施設、病院、老健施設、一般家庭等におけるトイレ、(5)ホテル、旅館、病院、老健施設、一般家庭等における浴槽、及び浴場の壁、床、(6)公共施設、オフィスビル等の不特定多数の人が利用する施設の廊下等、及び(7)眼鏡の枠、レンズなどが挙げられる。また、本発明の除黴・防黴・除菌剤は、犬、猫等の動物の体毛、皮膚などの、洗浄、除菌、消臭等に用いることもできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]銀イオンの有無、検体調製後経過日時及び添加物(NaCl)の評価
実験例1−1〜1−15
2000ミリリットルの水道水に125gの重曹を溶解させ、電気分解し、pH9.7の電解水を得た。その後、活性水により10倍に希釈し、この希釈水から各々500ミリリットルの希釈電解水を分取し、以下のそれぞれの検体を調製した。
【0044】
(1)実験例1−3、1−5
SiO10モル%、B80モル%及びNaO10モル%の組成のガラスに、AgOを0.5質量%(ガラスとAgOとの合計を100質量%とする。)配合し、これを粉砕して粒径40μm以下の粉末とした。その後、この粉末を低密度ポリエチレンに10質量%(低密度ポリエチレンと粉末との合計を100質量%とする。)配合し、図1のような形状の樹脂成形体を作製した。次いで、この樹脂成形体1本を上記の500ミリリットルの希釈電解水に浸漬し、24時間静置し、その後、ろ過して検体を調製した。
尚、図1の樹脂成形体の寸法は、長さが60mm、6枚の放射状の突出片の幅(中心から両側に突出している全幅)が各々9mm、突出片の厚さが1mmである。これにより、希釈電解水には1ミリリットル当たり50ng程度の銀イオンが放出されることになる。
【0045】
(2)実験例1−7、1−9、1−11、1−12、1−14、1−15
上記[1]のようにして調製した希釈電解水に0.1質量%のNaCl(実験例1−7、1−9)、0.2質量%のNaCl(実験例1−11、1−12)、0.5質量%のNaCl(実験例1−14、1−15)(いずれも希釈電解水とNaClとの合計を100質量%とする。)を溶解させ、その後、これらの溶液に上記(1)のようにして作製した樹脂成形体1本を浸漬し、24時間静置し、その後、ろ過して検体を調製した。
【0046】
蒸留水及び上記(1)及び(2)のようにして調製した検体を用いて、各々の検体を調製した翌日及び7日間経過後のそれぞれの検体に、大腸菌群を常温(20〜30℃)で攪拌しながら1時間接触させ、接触前後の各々の大腸菌数を測定し、下記のようにして滅菌率を算出した。
滅菌率(%)=(接触後の大腸菌数/接触前の大腸菌数)×100
結果を表1に併記する。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果によれば、蒸留水を用いた場合(実験例1−1、1−4、1−6、1−8、1−10、1−13)は、いずれの実験例でも大腸菌数の減少はみられなかった。また、電解水に銀イオンが含有されていない実験例1−2では、十分に滅菌されていないことが分かる。
【0049】
一方、銀イオンを含有する各々の実験例では92.3〜99.9%の滅菌率となっており、銀イオンを含有させることによる優れた作用、効果が裏付けられている。また、NaClを含有しない場合、及び含有量が0.1質量%である場合は、検体を調製した翌日に比べて7日間経過後に大腸菌群と接触させたときは滅菌率がやや低下しており、NaClを含有しないとき、及び含有量が少量であるときは検体調製後長時間経過しないうちに用いることが好ましいと推定される(実験例1−3と1−5との比較及び実験例1−7と1−9との比較)。更に、NaClを配合した場合は、その配合量によらず、いずれの実験例でも滅菌率がより向上しており、NaClを配合することによる相乗効果が裏付けられている(実験例1−3と1−7、1−11、1−12との比較及び実験例1−5と1−9、1−14、1−15との比較)。
【0050】
[2]電解水の希釈倍率の高い場合の評価
実験例2−1〜2−4
電解水の希釈倍率を30倍とした他は、上記[1]の実験例1−11他と同様にして検体を調製し、各々の検体を調製した翌日、検体に大腸菌群を上記[1]と同様にして接触させ、接触時間を1時間又は3時間としたときの、接触前後のそれぞれの大腸菌数を測定し、前記のようにして滅菌率を算出した。
結果を表2に併記する。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果によれば、蒸留水を用いた場合(実験例2−1、2−3)は、いずれの実験例でも細菌数の減少はみられなかった。一方、銀イオンとNaClとを含有する各々の実験例では滅菌率は100%であり、希釈倍率が30倍と高いにもかかわらず十分な除菌作用を有していることが分かる。
尚、この電解水の希釈倍率が高い場合は、前記の各種の用途において用いることができる他、特に犬、猫等の動物の体毛、皮膚等の洗浄、除菌、消臭などに有用である。
また、上記[1]、[2]における実験例ではサポニンは配合されていないが、サポニンは除黴・防黴・除菌剤に起泡性を付与するための成分であり、サポニンが配合された除黴・防黴・除菌剤を検体として上記[1]、[2]と同様に評価をした場合、同様の滅菌効果を得ることができる。
【0053】
実施例1
上記[1]の実験例1−11の検体の調製において、NaClを溶解させ、この溶液に樹脂成形体を浸漬し、24時間静置した後、サポニン(丸善製薬株式会社製、商品名「キラヤサポニン」)を4g(0.8質量%濃度になる。)溶解させ、ろ過して除黴・防黴・除菌剤を製造した。
【0054】
上記のようにして製造した除黴・防黴・除菌剤を、家庭の台所の壁面の黴が発生していた箇所に塗布した。その結果、除黴・防黴・除菌剤は十分に発泡し、壁面から流れ落ちることはなかった。また、泡が消え、5分経過した後、水溶液となった除黴・防黴・除菌剤をブラシ及び布等で擦り取ったところ、目視で確認できる黴はまったくみられなかった。更に、30日経過した後、同じ箇所を目視で確認したところ、黴の再発生はまったく認められなかった。これは、本発明の除黴・防黴・除菌剤が十分に発泡し、汚れが除去されるとともに、水が流下しても銀イオンは残留し、優れた除菌作用が持続するためである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、厨房用品、及び厨房の壁、床、食品産業等におけるコンベアライン、トイレ、浴槽、及び浴場の壁、床、眼鏡の枠、レンズなどの、除黴、防黴、除菌、洗浄及び消臭、並びに犬、猫等の動物の体毛、皮膚などの、洗浄、除菌、消臭等において利用することができ、特に壁面等の液体が流下し易い面に用いても、十分な除黴、防黴、除菌の作用が長期に渡って持続する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】銀化合物を含むガラスの粉末を含有する樹脂成形体の一例の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1;樹脂成形体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び過炭酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含む水が電気分解されてなる電解水に、銀イオン及びサポニンが含有されていることを特徴とする除黴・防黴・除菌剤。
【請求項2】
上記水は上記炭酸水素ナトリウムを含む請求項1に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項3】
上記電解水の水素イオン指数が9.0〜10.5である請求項2に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項4】
上記サポニンは、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンである請求項2又は3に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項5】
上記サポニンの含有量は、上記電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部である請求項2乃至4のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項6】
上記電解水が希釈用水により3〜50倍に希釈されて用いられる請求項2乃至5のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項7】
上記希釈用水が、珪素化合物を含有する半導体セラミックをろ材としてろ過された活性水である請求項6に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項8】
更に塩化ナトリウムを含有し、上記電解水と該塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、該塩化ナトリウムは0.1〜1.0質量%である請求項2乃至7のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項9】
上記銀イオンの供給源が酸化銀である請求項2乃至8のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項10】
上記銀イオンの含有量が上記電解水1ミリリットル当たり30〜80ngである請求項2乃至9のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項11】
上記銀イオンは、上記電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給される請求項2乃至10のうちのいずれか1項に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項12】
上記樹脂成形体は、上記銀化合物を含むガラスの粉末を含有し、該粉末と該銀化合物との合計を100質量%とした場合に、該銀化合物はAg換算で0.2〜1.0質量%であり、該樹脂成形体に用いられる合成樹脂と該粉末との合計を100質量%とした場合に、該粉末は5〜30質量%である請求項11に記載の除黴・防黴・除菌剤。
【請求項13】
上記水は上記炭酸水素ナトリウムを含み、上記電解水の水素イオン指数が9.0〜10.5であり、上記サポニンは、バラ科の植物であるキラヤの樹皮を抽出して得られたサポニンであって、該サポニンの含有量は、上記電解水を100質量部とした場合に、0.5〜5質量部であり、該電解水は珪素化合物を含有する半導体セラミックをろ材としてろ過してなる活性水を希釈用水として3〜50倍に希釈されて用いられ、更に塩化ナトリウムを含有し、該電解水と該塩化ナトリウムとの合計を100質量%とした場合に、該塩化ナトリウムは0.1〜1.0質量%であり、上記銀イオンの供給源が酸化銀であって、該銀イオンの含有量が該電解水1ミリリットル当たり30〜80ngであり、該銀イオンは、該電解水と接触している樹脂成形体に含有された銀化合物から供給され、該樹脂成形体は、該銀化合物を含むガラスの粉末を含有し、該粉末と該銀化合物との合計を100質量%とした場合に、該銀化合物はAg換算で0.2〜1.0質量%であり、該樹脂成形体に用いられる合成樹脂と該粉末との合計を100質量%とした場合に、該粉末は5〜30質量%である請求項1に記載の除黴・防黴・除菌剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−156253(P2008−156253A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344965(P2006−344965)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(505053235)株式会社アリカコーポレーション (5)
【出願人】(597122666)株式会社サンテック (2)
【Fターム(参考)】