説明

陰イオン交換物質からの分画溶出によるVII因子ポリペプチドのバルクの精製

【課題】当該分野では特に、シアル酸付加VII因子ポリペプチド構造の所望の高含有量を有するVII因子ポリペプチドの精製されたバルクが必要とされている。
【解決手段】ある濃度のカルシウムイオンを含む溶出バッファーを用いた陰イオン交換物質からの分画された溶出によって、所望の糖形態(glycoforms)に関するVII因子ポリペプチドのバルクからのVII因子ポリペプチドを精製する。VII因子ポリペプチドのバルクを所望の糖形態に関して富ませることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある濃度のカルシウムイオンを含む溶出バッファーを用いた陰イオン交換物質からの分画された溶出によって、所望の糖形態(glycoforms)に関するVII因子ポリペプチドのバルクからのVII因子ポリペプチドの精製に関する。本発明は、VII因子ポリペプチドのバルクを所望の糖形態に関して富ませることを可能にする。また、本発明は、所望の糖形態のVII因子ポリペプチドの存在量が比較的低いVII因子ポリペプチドのバルクを利用することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
例えばVII因子、VIII因子、IX因子、X因子、及びタンパク質Cを含む、凝固カスケードに関与するタンパク質は、種々の病理学的状態を治療するための有用な治療薬剤であることが分かっている。従って、薬剤的に許容され、均一性及び予定された臨床的有効性を示す、それらのタンパク質を含有する製剤への要求が増大している。
【0003】
ヒトの血漿を薬学的生成物の原料として使用することには多くの不利益があるために、それらのタンパク質は組換え系で生産されることが好ましい。凝固タンパク質は、しかしながら、例えばアスパラギン-連鎖(N-連鎖)の糖修飾;O-連鎖の糖修飾;及びGlu残基のγ-カルボキシル化を含む、様々な翻訳同時修飾及び翻訳後修飾を受ける。それらの修飾は、異種性細胞が該タンパク質の大規模生産の宿主として用いられる場合に、質的に又は量的に異なりうる。特に、異種性細胞における生産は、異なる共有結合のオリゴ糖構造を有する同じポリペプチドを代表する糖形態の異なるアレイをもたらすことが多い。
【0004】
異なる系において、治療的タンパク質のオリゴ糖構造における差異は、例えば免疫原生及びインビボでのクリアランスの変化に結び付けられる。よって、所定の糖形態パターンを含有する(又は少なくとも所望の糖形態に富んだ)、市販のためのVII因子ポリペプチド組成物が、当該分野では必要とされており、特に、シアル酸付加VII因子ポリペプチド構造の所望の高含有量を有するVII因子ポリペプチドの精製されたバルクが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、陰イオン交換物質からVII因子ポリペプチドのバルクの分画された溶出を利用することによって、所望の高含有量のシアル酸付加VII因子ポリペプチド構造を有するVII因子ポリペプチドの精製されたバルクを提供するという問題を解決する。
【0006】
従って、本発明の第1の側面は、VII因子ポリペプチドのバルクの精製のための工業的規模での方法に関し、該方法は、次の工程
(a) VII因子ポリペプチドのバルクを、陰イオン交換物質に、該VII因子ポリペプチドのバルクの一部が該陰イオン交換物質へ結合するのを促進する条件下で接触させること;
(b) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値XmMまでの濃度で含有する第1の溶出バッファーで溶出すること;及び、
(c) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出し、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出物として収集すること;を含み、
ここにおいて、前記閾値Xが、前記第1の溶出工程(b)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも5重量%が前記陰イオン交換物質から除去され、前記第2の溶出工程(c)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも50重量%が該VII因子ポリペプチドの精製されたバルクとして収集可能であるように選択される。
【0007】
本発明の第2の側面において、前記閾値は−絶対的な用語において−3〜12 mMの範囲であり、例えば、4〜11 mMの範囲であり、例えば5〜10 mMの範囲である。
【0008】
新規の工業規模の方法は、所望の糖形態、特に、これに限定されないが、VII因子ポリペプチドの所望の糖形態のかなり低い存在量を有する粗製バルクに関して、VII因子ポリペプチドの粗製バルクを精製することを可能にする。
【0009】
よって、本発明の第三の側面は、VII因子ポリペプチドのバルクの生産及び精製のための工業規模での方法に関し、該方法は、
(i) 細胞培養物中でVII因子ポリペプチドの粗製バルクを生産すること、及び、
(ii) 一以上の陰イオン交換精製方法を利用する一連の精製によって、前記VII因子ポリペプチドの粗製バルクを精製すること;を含み、
ここにおいて、そのような陰イオン交換精製方法の少なくとも一つが、上記で定義されるように行われる。
【発明の詳細な説明】
【0010】
上記のように、本発明は、VII因子ポリペプチドのバルクの精製のための工業規模での方法を提供し、該方法は以下の工程
(a) VII因子ポリペプチドのバルクを、陰イオン交換物質に、該VII因子ポリペプチドのバルクの一部が該陰イオン交換物質へ結合するのを促進する条件下で接触させること;
(b) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値XmMまでの濃度で含有する第1の溶出バッファーで溶出すること;及び、
(c) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出し、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出物として収集すること;を含み、
ここにおいて、前記閾値Xが、前記第1の溶出工程(b)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも5重量%が前記陰イオン交換物質から除去され、前記第2の溶出工程(c)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも50重量%が該VII因子ポリペプチドの精製されたバルクとして収集可能であるように選択される。
【0011】
本発明の方法の他の変形において、前記閾値は、絶対的な用語において定義され、即ち、本発明は、VII因子ポリペプチドのバルクの精製のための工業規模での方法をも提供し、該方法は以下の工程
(a) VII因子ポリペプチドのバルクを、陰イオン交換物質に、該VII因子ポリペプチドのバルクの一部が該陰イオン交換物質へ結合するのを促進する条件下で接触させること;
(b) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値XmMまでの濃度で含有する第1の溶出バッファーで溶出すること;及び、
(c) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出し、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出物として収集すること;を含み、
ここにおいて、前記閾値Xは3〜12 mMの範囲である。
【0012】
本発明の方法は特に、VII因子ポリペプチドの「工業規模」(又は「大規模」)のバルクのために特に実行可能なものである。「工業規模」という用語は、典型的には、液体VII因子ポリペプチド組成物の容量が、少なくとも100 L、例えば少なくとも500 L、例えば、少なくとも1000 L、又は少なくとも5000 Lである方法を意味し、或いは、該組成物の重量では、少なくとも100 kg、例えば少なくとも500 kg、例えば少なくとも1000 kg、又は少なくとも5000 kgであり、或いは、産物の重量では、少なくとも1 g (乾燥物質)、例えば少なくとも10g、例えば少なくとも50 g、例えば1〜1000 g又は1〜500 g又は1〜100 gである方法を意味する。
【0013】
本発明の内容において、「糖形態」という用語は、特にシアル基の存在又は非存在に関して、異なる共有結合オリゴ糖構造を有する、他の配列が同一であるVII因子ポリペプチドの形態を称する。
【0014】
本発明の内容において、「精製」という用語は、望ましくない糖形態、即ち、不完全なシアリルパターン(例えば、シアル基なし又は不完全な数)を有する糖形態のVII因子ポリペプチドの除去を意味する。
【0015】
そのような望ましくない糖形態(不完全なシアリルパターンを有する)は、カルシウム(Ca2+)含有バッファーを陰イオン交換クロマトグラフィーと組合せて用いた場合に、「所望の糖形態」(即ち、「完全な」シアリルパターンを有する糖形態)の前に溶出することが見出された。従って、ここで定義される分画された溶出によって、所望の糖形態に富んだVII因子ポリペプチドの精製されたバルクを得ることが可能である。
【0016】
ここで用いられる「バルク(bulk)」という表現は、固体マス(solid mass)並びに液体マス(liquid mass)、例えば、VII因子ポリペプチドを含む溶液又は懸濁液を意味するように意図される。「バルク」という表現は、特に、「大」容量又はマスを指す意味であり、即ち、大規模及び工業規模の方法から知られる容量及びマスを称する。
【0017】
「VII因子ポリペプチド」という用語は、さらに下記に定義される。
【0018】
「閾値」は、Ca2+溶出バッファーを用いた分画溶出のための重要なパラメーターを定義するために、本明細書において最も重要である。該閾値は、集められてVII因子ポリペプチドの精製されたバルクを形成する画分と、廃棄、処理又は再生利用/再利用される先行する画分との間の境界を定義する。カラム中にアレンジされた陰イオン交換物質(最も通常で有用なアレンジメント)のために、該閾値は、カラムの入り口でのバッファー中のCa2+の濃度に対応し、対応する溶出液は、溶出バッファーの「先端」がカラムを通過するために要する時間に対応する時間だけ遅らせて集められる。
【0019】
工程(a)−バルクと陰イオン交換物質の接触
該方法の第1の工程において、VII因子ポリペプチドのバルクは、陰イオン交換物質と接触される。その目的は、前記VII因子ポリペプチドのバルクの一部が前記陰イオン交換物質に結合するのを促進することである。
【0020】
工程(a)と関連して「一部」という用語は、VII因子ポリペプチドのバルク中に存在するVII因子ポリペプチドの質量(mass)の少なくとも30%(即ち、30〜100%)を意味する。ほとんどの場合では、VII因子ポリペプチドの質量の30%よりずっと多く、例えば、少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は支配的な部分が結合することが望ましいことは理解されるであろう。「支配的な部分」という用語は、VII因子ポリペプチドのバルクに存在するVII因子ポリペプチドの質量の少なくとも90%を意味する。例えば、少なくとも該質量の95%、又は、少なくとも該質量の98%、又は、少なくとも該質量の99%、又は前記VII因子ポリペプチドのバルクに存在するVII因子ポリペプチドの質量の実質的に全てのような、より多い部分が該陰イオン交換物質に結合することが好ましい。
【0021】
VII因子ポリペプチドのバルクは、典型的には工業規模の生産方法から生じ、例えば細胞培養、クローン化動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及び魚)又は昆虫など、特に細胞培養から生じる。
【0022】
陰イオン交換物質は、強力な陰イオン交換物質が好ましく、例えば、四級アンモニウム基を有する陰イオン交換物質が好ましい。そのような物質の市販の例は、アマシャム・バイオサイセンス(Amersham Biosciences)のQ-Sepharose Fast Flow及びトソハース(Tosohaas)のPOROS HQ 50である。
【0023】
陰イオン交換物質の最も通常のアレンジメント(arrangement)は、カラムのフォーマット中である。バッチ容器のアレンジメントはもちろん可能である。
【0024】
VII因子ポリペプチドのバルクは典型的には、先行する精製工程から直接得られるか、又は、先行する精製工程に続いて、pH、イオン強度など必要なものをすべて調整して得られる。
【0025】
典型的には、VII因子ポリペプチドのバルクのpHは、7.5〜9.5の範囲であり、例えば、8.0〜9.0の範囲であり、その伝導率は典型的には、5〜30 mS/cmの範囲であり、例えば、10〜20 mS/cmの範囲である。該バルクの温度は、典型的には、これに限定されないが、0〜15℃、例えば約2〜10℃である。
【0026】
VII因子ポリペプチドのバルクの接触は、典型的には、従来のプロトコールに従って行われる、即ち、バルクの濃度、温度、pH、イオン強度などは通常であり、該陰イオン交換物質は通常のように洗浄され平衡化される。
【0027】
VII因子ポリペプチドの添加は、典型的には、マトリックス(湿潤形態の陰イオン交換物質)1リットル当り、10〜40 g、例えば、15〜30 gの範囲の、VII因子ポリペプチドであり、該バルクは、典型的には、1時間当り3〜200カラム容量(CV/h)のフローでアプライされ、例えば少なくとも10 CV/h、例えば少なくとも20 CV/h又は少なくとも40 CV/h又は少なくとも80 CV/h、例えば80〜120 CV/hのフローでアプライされる。
【0028】
接触及びVII因子ポリペプチドの陰イオン交換物質への再度の結合後、一以上の洗浄工程が、溶出工程(b)及び(c)の前に行われ得る。
【0029】
工程(b)−第1の溶出工程
VII因子ポリペプチドのバルクの陰イオン交換物質への結合後、VII因子ポリペプチドのバルクの画分を除去するために、第1の溶出工程(b)が行われ、該除去された画分は、元のバルクよりもシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の含有量が低い。この工程によって、陰イオン交換物質上に残ったVII因子ポリペプチドの(結合)画分は、元のバルクよりも高い含有量のシアル酸付加VII因子ポリペプチド構造を有する。
【0030】
溶出工程(b)は、Ca2+ を閾値X mMまでの濃度で含む第1の溶出バッファーを用いて行われる。
【0031】
第1の溶出バッファーは、Ca2+ (例えば、塩化カルシウムとして)及び緩衝剤を、恐らく他の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、及びマグネシウム ラエブレート(laevulate))と組合せて含有する。緩衝剤は、典型的には、MES、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、TRIS、ヒスチジン、イミダゾール、グリシン、グリシルグリシン、グリシンアミド、リン酸、酢酸(例えば、酢酸ナトリウム)、乳酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びコハク酸の酸及び塩から成る群から選択される少なくとも一つの成分である。該緩衝剤は、二以上の成分を含むことができ、該混合物は、特異的な範囲でpH値を提供することができるということは、理解されるであろう。例として、酢酸及び酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0032】
重大なCa2+濃度の閾値Xは、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%が、第1の溶出工程(b)において前記陰イオン交換物質から除去されるように選択される(さらに下記をも参照されたい)。該画分は従って、望ましくない糖形態のかなり高い割合を表す。
【0033】
好ましい態様において、該閾値Xは、3〜12 mMの範囲、例えば、4〜11 mMの範囲、例えば、5〜10 mMの範囲である。
【0034】
VII因子ポリペプチドが結合した陰イオン交換物質の温度は、典型的には、0〜15℃であり、例えば約2〜10℃であり、例えば、冷却ジャケットを用いて特異的な範囲内に維持される。
【0035】
第1の溶出バッファーにおけるCa2+の濃度は、望ましくない糖形態が第1の溶出工程(b)で除去されるために、0(ゼロ)より大きくなければならず、例えば、少なくとも1 mMである。勾配バッファーが用いられる場合、第1の溶出バッファーのCa2+の平均濃度は、0(ゼロ)より大きくなければならず、少なくとも1 mMである。
【0036】
一つの態様において、第1の溶出バッファーは、(一定)Ca2+ 濃度が1〜8 mMの範囲、例えば、2〜7 mMの範囲であるバッチのバッファーである。
【0037】
さらに好ましい態様において、第1の溶出工程(b)は、勾配バッファーを用いて行われ、特に、Xに相等する最終Ca2+ 濃度を有する勾配バッファーを用いて行われる。初期Ca2+ 濃度は、典型的には、0〜8 mMの範囲であり、例えば0〜5 mMの範囲である。
【0038】
工程(c)−第2の溶出工程
第1の溶出工程(b)の後、陰イオン交換物質は、Ca2+を閾値 X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出され、所望の糖形態のVII因子ポリペプチドに富むVII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出液として収集できる。
【0039】
第2の溶出バッファーは、Ca2+ (第1の溶出バッファーよりも高い濃度である)及び緩衝剤を、恐らく他の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、及びマグネシウム ラエブレート)と組合せて含む。緩衝剤は、典型的には、第1の溶出バッファーについて上記で具体的に述べたように選択される。
【0040】
重大なCa2+濃度の閾値Xは、VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、又は70重量%が、第2の溶出工程(c)でVII因子ポリペプチドの精製されたバルクとして集められるように選択される。
【0041】
上記のように、閾値Xは、好ましくは3〜12 mMの範囲であり、例えば、4〜11 mM、例えば5〜10 mMの範囲である。
【0042】
一つの態様において、該第2の溶出バッファーは、(一定)Ca2+ 濃度が8〜25 mMの範囲、例えば9〜20 mMの範囲であるバッチのバッファーである。
【0043】
この一つの変異形において、第1の溶出工程(b)は、(一定)Ca2+ 濃度が1〜8 mMの範囲、例えば1〜7 mM、2〜7 mM又は2〜8 mMの範囲であるバッファーのバッチの形態にある第1の溶出バッファーを用いて行われ、第2の溶出工程(c)は、(一定)Ca2+ 濃度が8〜25 mMの範囲、例えば、9〜25 mM、8〜20 mM、又は9〜20 mMの範囲であるバッファーのバッチの形態にある第2の溶出バッファーを用いて行われる。
【0044】
さらに好ましい態様において、該第2の溶出工程(c)は、勾配バッファーを用いて行われ、特に、ちょうどXを越える初期Ca2+濃度を有する勾配バッファーを用いて行われる。最終Ca2+ 濃度は、典型的には、10〜25 mMの範囲であり、例えば、12〜20 mMの範囲である。
【0045】
一つの極めて興味深い態様において、該第1の溶出工程(b)及び第2の溶出工程(c)はいずれも、連続勾配バッファーのような勾配バッファーを用いて行われる。一つの態様において、Ca2+の初期濃度は、0〜5 mMであり、例えば、0〜3 mMの範囲であり、例えば、約0 mMであり、Ca2+ の終濃度は、10〜25 mMの範囲であり、例えば、12〜20 mMの範囲であり、例えば、約15 mMである。上記のように、閾値Xは、典型的には、3〜12 mMの範囲であり、例えば、4〜11 mM、例えば5〜10 mMの範囲である。
【0046】
全体的な溶出過程(工程(b)及び工程(c))は、典型的には、1時間当り3〜200カラム容量(CV/h)のフローで行われ、例えば、少なくとも10 CV/h、例えば少なくとも20 CV/h又は少なくとも40 CV/h又は少なくとも80 CV/h、例えば20〜120 CV/h、20〜80 CV/h、20〜60 CV/h、又は80〜120 CV/hのフローで行われる。VII因子ポリペプチドが、中間領域におけるカルシウム濃度を有する溶液中に存在する時間がかなり制限されるために、産物の分解のリスクが最小化される。よって、本発明者らによっては本明細書で定義された方法に関する安定性の問題は何らも確認されていない。
【0047】
第2の溶出工程(c)の他の特徴は、VII因子ポリペプチドが多くの場合に溶出条件下で完全に活性化されるということである。これは、別の活性化工程が不要であるという点で有利である。
【0048】
「精製されたバルク」という用語は、得られたバルク、即ち、工程(c)で集められたバルクが、工程(a)でアプライされたバルクよりも、望ましくない糖形態のVII因子ポリペプチドの含有量が低いことを意味する。「精製」という用語は、精製されたバルクが得られるプロセス、即ち、本発明のプロセスを指す。
【0049】
通常、陰イオン交換マトリクスは、連続する工程によって、その後の使用のために再生される。
【0050】
工業規模の生産及び精製
本発明は、VII因子ポリペプチドのバルクの工業規模での生産及び精製に特に有用である。そのような方法において、VII因子ポリペプチドは典型的には、細胞培養によって生産される。
【0051】
よって、本発明は、VII因子ポリペプチドのバルクの生産及び精製のための、工業規模の方法をも提供し、該方法は以下の工程
(i) 細胞培養物中でVII因子ポリペプチドの粗製バルクを生産すること、及び、
(ii) 一以上の陰イオン交換精製方法を利用する一連の精製によって、前記VII因子ポリペプチドの粗製バルクを精製すること;を含み、
ここにおいて、そのような陰イオン交換精製方法の少なくとも一つが、上記で定義されるように行われる。
【0052】
好ましくは、上記で定義されたような陰イオン交換精製方法は、一以上の陰イオン交換精製方法の最後である。
【0053】
一つの興味深い可能性は、所望の糖形態のVII因子ポリペプチドに関して最適化される必要のない生産工程(i)である。よって、一つの興味深い態様において、該生産工程(i)は、VII因子ポリペプチドの粗製バルクの質量収量に関して最適化される。そのような例において、所望の糖形態のVII因子ポリペプチドの含有量は、80%又はそれより低く、そしてそのような「質量−最適化された」バルクは、望ましくない糖形態を分離することが困難であるために、VII因子ポリペプチド産物の工業的生産のための使用は従来限られていた。本発明は、しかしながら、この問題にも明快な解法を提供する。
【0054】
例えば、それらの一つの変異形において、VII因子ポリペプチドの粗製バルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は、せいぜい80%であり、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は少なくとも90%である。
【0055】
例えば、それらの他の変異形において、VII因子ポリペプチドの粗製バルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は、せいぜい90%であり、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は少なくとも95%である。
【0056】
例えば、それらのさらに他の変異形において、VII因子ポリペプチドの粗製バルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は、せいぜい93%であり、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクにおけるシアル酸付加されたVII因子ポリペプチド構造の質量含量は少なくとも96%である。
【0057】
それらの他の変異形において、細胞培養における粗製バルクの生産は、7.0〜7.6の範囲のpH値で行われる。
【0058】
典型的には、粗製バルクの生産は、真核宿主細胞、例えば哺乳類細胞のような、宿主細胞中で行われる。本発明の一つの態様において、該哺乳類細胞は、HEK細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、及びSP2-0のような骨髄腫細胞から成る群から選択される。
【0059】
言及しているように、生産及び精製(本発明の分画された溶出精製工程は除く)は、当該分野の技術者に既知のように行うことができる。よって、VII因子ポリペプチドの粗製バルクの工業規模の生産は、本願より先の先願、例えば、WO 04/027072 A2、WO 02/29083 A2、WO 02/29025 A2、WO 00/28065 A1、WO 02/77218 A1などに開示されているように行うことができる。
【0060】
VII因子ポリペプチド
ここで用いられるように、「VII因子ポリペプチド」という用語は、野生型VII因子(即ち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)並びに野性型VII因子と比較して実質的に同じであるか又は改善された生物活性を示すVII因子の変異体を包含する。「VII因子」という用語は、未切断(酵素前駆体)形態のVII因子、並びに、タンパク分解的に処理されてそれらのそれぞれの生理活性形態にされたVII因子−これはVIIa因子と称される−を包含するよう意図される。典型的には、VII因子は、残基152と153の間で切断されてVIIa因子を産する。「VII因子ポリペプチド」という用語は、変異体を含むポリペプチドをも包含し、そのVIIa因子生物活性は、野性型VIIa因子の活性と比較して実質的に改変されたか又は幾分減少されたものである。それらのポリペプチドは、これに限定されないが、ポリペプチドの生理活性を改変又は混乱させる特異的なアミノ酸配列変化が導入されたVII因子又はVIIa因子を含む。
【0061】
血液凝固におけるVIIa因子の生物活性は、(i) 組織因子(TF)に結合するその能力、及び(ii) IX因子又はX因子のタンパク分解的な切断を触媒して活性化IX因子又はX因子(それぞれIXa因子又はXa因子)を産するその能力に由来する。
【0062】
本発明の目的のために、VII因子ポリペプチドの生物活性(「VII因子生物活性」)は、例えば本明細書に記載のアッセイ4のように、血液凝固を促進するための製剤の能力を測定することによって定量され得る。このアッセイにおいて、生物活性は、コントロールサンプルと比較した凝固時間の減少として表され、1 ユニット/mLのVII因子活性を含有するプールされたヒト血清標準と比較することによって、「VII因子ユニット」に変換される。或いは、VIIa因子生物活性は、(i) 脂質膜中に包埋されたTF及びX因子を含有する系において活性化X因子 (Xa因子)を産する、VIIa因子又はVII因子関連ポリペプチドの能力を測定すること (Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii) 水性系におけるX因子加水分解を測定すること(「インビトロタンパク分解アッセイ」、下記アッセイ2を参照されたい);(iii) 表面プラスモン共鳴に基づく機器を用いて、VIIa因子又はVII因子関連ポリペプチドのTFへの物理的な結合を測定すること(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);(iv) VIIa因子及び/又はVII因子関連ポリペプチドによる合成基質の加水分解を測定すること(「インビトロ加水分解アッセイ」、下記アッセイ1を参照されたい);又は(v) TF非依存性インビトロ系におけるトロンビンの生成を測定すること(下記アッセイ3を参照されたい)によって、定量化され得る。
【0063】
野性型VIIa因子と比較して実質的に同じか又は改善された生物活性を有するVII因子変異体は、上記のような凝固アッセイ(アッセイ4)、タンパク分解アッセイ(アッセイ2)、又はTF結合アッセイの一以上で試験されたとき、同じ細胞タイプで生産されたVIIa因子の比活性の、少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%及び最も好ましくは少なくとも約90%を示すものを包含する。
【0064】
野性型VIIa因子と比較して実質的に減少された生物活性を有するVII因子変異体は、上記のような凝固アッセイ(アッセイ4)、タンパク分解アッセイ(アッセイ2)、又はTF結合アッセイの一以上で試験されたとき、同じ細胞タイプで生産された野性型VIIa因子の比活性の、約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満及び最も好ましくは約1%未満を示すものである。野性型VII因子と比較して実質的に改変された生物活性を有するVII因子変異体は、これに限定されないが、TF非依存性X因子タンパク分解活性を示すVII因子変異体、及び、TFに結合するがX因子を切断しないものを含む。
【0065】
VII因子の変異体は、野性型VII因子と実質的に同じか又はそれより良い生理活性を示すか、或いは、野性型VII因子と比較して実質的に改変されたか又は減少された生理活性を示すかに関わらず、これに限定されないが、一以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換によって、野性型VII因子の配列と異なったアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0066】
野生型VII因子と実質的に同じ生物活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa (Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);米国特許第5,580,560号に開示されたような、上昇したタンパク分解安定性を示すFVIIa変異体;残基290と291の間、又は残基315と316の間でタンパク分解的に切断されたVIIa因子 (Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);酸化型のVIIa因子 (Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);PCT/DK02/00189に開示されたFVII変異体;及びWO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されたような上昇したタンパク分解安定性を示すFVII変異体;WO 99/20767 (University of Minnesota)に開示されたような、改変されたGla-ドメインを有し、増強された膜結合を示すFVII変異体;及びWO 01/58935 (Maxygen ApS)に開示されたようなFVII変異体を含む。
【0067】
野性型FVIIaと比較して上昇した生物活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、WO 01/83725、WO 02/22776、WO 02/077218、WO 03/27147、WO 03/37932;WO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されたようなFVII変異体;及びJP 2001061479 (Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されたような増強された活性を有するFVIIa 変異体を含む。
【0068】
野性型VII因子と比較して実質的に減少されたか又は改変された生物活性を有するVII因子変異体の非限定的な例は、R152E-FVIIa (Wildgoose et al., Biochem 29:3413-3420, 1990)、S344A-FVIIa (Kazama et al., J. Biol. Chem. 270:66-72, 1995)、FFR-FVIIa (Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15:515-520, 1998)、及びGlaドメイン欠損VIIa因子、(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317:245-249, 1993)を含む。
【0069】
VII因子ポリペプチドの例は、これらに限定されないが、以下のものを含む:野性型VII因子、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII,及びS336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/K337A-FVII、F374Y/V158D-FVII、F374Y/E296V-FVII、F374Y/M298Q-FVII、F374Y/V158T-FVII、F374Y/S314E-FVII、F374Y/L305V-FVII、F374Y/L305V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D-FVII、F374Y/L305V/E296V-FVII、F374Y/L305V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T-FVII、F374Y/L305V/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E-FVII、F374Y/K337A/V158T-FVII、F374Y/K337A/M298Q-FVII、F374Y/K337A/E296V-FVII、F374Y/K337A/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q-FVII、F374Y/V158D/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q-FVII、F374Y/V158T/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E-FVII、F374Y/S314E/M298Q-FVII、F374Y/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII、F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII、F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII、F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII、F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII、F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII、F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII、F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII、F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、S52A-VII因子、S60A-VII因子;R152E-VII因子、S344A-VII因子、Glaドメイン欠損VIIa因子;及びP11Q/K33E-FVII、T106N-FVII、K143N/N145T-FVII、V253N-FVII、R290N/A292T-FVII、G291N-FVII、R315N/V317T-FVII、K143N/N145T/R315N/V317T-FVII;及びアミノ酸配列の233Thr〜240Asnにおいて置換、付加又は欠失を有するFVII、アミノ酸配列の304Arg〜329Cysにおいて置換、付加又は欠失を有するFVII、及びアミノ酸配列のIle153〜Arg223において置換、欠失又は付加を有するFVII。
【0070】
ある態様において、該VII因子ポリペプチドは、ヒトVIIa因子 (hFVIIa)であり、好ましくは組換え的に製造されたヒトVIIa因子 (rhVIIa)である。
【0071】
他の態様において、該VII因子ポリペプチドは、VII因子配列変異体である。
【0072】
ある態様において、該VII因子ポリペプチドは、野生型ヒトVII因子と異なる糖修飾(glycosylation)を有する。
【0073】
多様な態様において、例えばVII因子ポリペプチドがVII因子関連ポリペプチド又はVII因子配列変異体である態様において、VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野性型FVIIa)の活性との比は、本明細書の上記のような「インビトロタンパク分解アッセイ」(アッセイ2)で試験したとき、少なくとも約1.25であり、好ましくは少なくとも約2.0、又は4.0であり、最も好ましくは少なくとも約8.0である。
【0074】
ある態様において、該VII因子ポリペプチドは、VII因子関連ポリペプチドであり、特に変異体であり、ここにおいて、前記VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野性型FVIIa)の活性との比は、「インビトロ加水分解アッセイ」(下記アッセイ1参照)で試験したとき、少なくとも約1.25であり;他の態様において、該比は少なくとも約2.0であり;さらなる態様において、該比は少なくとも約4.0である。
【0075】
VII因子ポリペプチドの精製されたバルクの使用
VII因子ポリペプチドの精製されたバルクに対応する画分を収集した後、溶液中に処方され、これは、バイアルに分配されて凍結乾燥される。商業的に入手可能な、組換え的に製造されたFVIIポリペプチド組成物NovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)に相等する最終産物の例証として、1.2 mgの組換えヒトVIIa因子、5.84 mgのNaCl、2.94 mgのCaCl2、2H2O、2.64 mgのGlyGly、0.14 mgのポリソルベート80、及び60.0 mgのマンニトールを含有するバイアル(1.2 mg) が挙げられる。この産物は、使用の前に注入のために、2.0 mLの水(WFI)でpH 5.5に再構成される。再構成されたとき、該タンパク質溶液は、24時間の使用に安定である。
【0076】
組換え活性化VII因子(rFVIIa)の全体的な製造は、「Jurlander, et al. in Seminars in Thrombosis and Hemostasis, Vol. 27, No. 4, 2001.」に記載されている。
【実施例】
【0077】
VII因子ポリペプチドの生物学的活性の測定に適するアッセイ
本発明のとおりに有用なVII因子ポリペプチドは、インビトロでの簡単な予備的試験として行うことができる適切なアッセイによって選択されることができる。例えば、本明細書ではVII因子ポリペプチドの活性についての簡単な試験(「インビトロ加水分解アッセイ」と表題を付けた)を記載する。
【0078】
インビトロ加水分解アッセイ(アッセイ1)
天然の(野性型) VIIa因子及びVII因子ポリペプチド (いずれもこれ以後「VIIa因子」と称する)の比活性がアッセイされる。それらは、それらの比活性を直接比較するために平行してアッセイされる。該アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)中で行われる。色素生産性基質 D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)の終濃度1 mMを、0.1 M NaCl、5 mM CaCl2及び1 mg/mL ウシ血清アルブミンを含有するpH 7.4の50 mM HEPES中のVIIa因子 (終濃度 100 nM)に加える。405 nmでの吸光度をSpectraMaxTM 340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。20分のインキュベーションの間に発達した吸光度は、酵素を含まないブランクウェルにおける吸光度を減算した後、VII因子ポリペプチドの活性と野性型VIIa因子の活性の間の比を算出するために用いる:
比=(A405 nm VII因子ポリペプチド)/(A405 nm VIIa因子 野性型)。
【0079】
それらに基づいて、天然のVIIa因子と比較してより活性が低いか、又はより活性が高いVII因子ポリペプチドを同定することができ、例えば、VII因子ポリペプチドの活性と天然のVII因子(野性型FVII)の活性との間の比が約1.0対1.0以上であるVII因子ポリペプチドが同定される。
【0080】
VII因子ポリペプチドの活性は、X因子のような生理学的基質を、適切には100〜1000 nMの濃度で用いて測定されることもでき(「インビトロタンパク分解アッセイ」)、ここで、Xa因子の発生は、適切な色素生産性基質(例えばS-2765)を添加した後に測定される。さらに、該活性アッセイは、生理学的温度で行われる。
【0081】
インビトロタンパク分解アッセイ(アッセイ2)
天然(野性型)VIIa因子及びVII因子ポリペプチド(いずれも以降「VIIa因子」と称する)は、それらの比活性を直接比較するために平行してアッセイされる。該アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)中で実行される。0.1 M NaCl、5 mM CaCl2及び1 mg/mL ウシ血清アルブミンを含有するpH 7.4の100 μLの50 mM HEPES中の、VIIa因子(10 nM)及びX因子(0.8 マイクロM)を、15分インキュベートする。次いで、X因子の切断を、0.1 M NaCl、20 mM EDTA及び1 mg/mL ウシ血清アルブミンを含有するpH 7.4の50 μLの50 mM HEPESを添加して停止する。生成したXa因子の量は、色素生産性基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Sweden)、終濃度 0.5 mMの添加によって測定される。405 nmでの吸光度が、SpectraMaxTM 340プレートリーダー (Molecular Devices, USA)で連続的に測定される。10分間に発達した吸光度を、FVIIaを含まないブランクウェルにおける吸光度を減算した後、VII因子ポリペプチドと野性型VIIa因子の間のタンパク分解活性の比を算出するために用いる:
比=(A405 nm VII因子ポリペプチド)/(A405 nm VIIa因子 野性型)。
【0082】
それらに基づいて、天然のVIIa因子と比較してより活性が低いか、又はより活性が高いVII因子ポリペプチドを同定することができ、例えば、VII因子ポリペプチドの活性と天然のVII因子(野性型FVII)の活性との間の比が約1.0対1.0以上であるVII因子ポリペプチドが同定される。
【0083】
トロンビン生成アッセイ(アッセイ3)
VIIa因子又はVII因子ポリペプチドのトロンビンを生成する能力は、生理学的な濃度で全ての関連する凝固因子及び阻害剤(擬血友病A状態の場合マイナスVIII因子)を含み、並びに、活性化血小板(「Monroe et al. (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547」の543頁に記載されたようなもの、該参考文献は本明細書に援用される)を含む、アッセイ(アッセイ3)において測定されることもできる。
【0084】
1工程凝固アッセイ(アッセイ4)
VII因子ポリペプチドの生物活性もまた、1工程の凝固アッセイ(アッセイ4)を用いて測定され得る。この目的のために、試験されるサンプルは50 mM PIPES-バッファー(pH 7.5)、0.1% BSA中に希釈され、40 μlが、40 μlのVII因子欠損血漿及び10 mM Ca2+及び合成リン脂質を含む80 μlのヒト組換え組織因子と共にインキュベートされる。
【0085】
VII因子ポリペプチドの調製及び精製
本発明における使用に適する精製されたヒトVIIa因子は、好ましくは、例えば「Hagen et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 83: 2412-2416, 1986」又は欧州特許第0 200 421 (ZymoGenetics, Inc.)に開示されたように、DNA組換え技術によって作られる。
【0086】
またVII因子も、「Broze and Majerus, J.Biol.Chem. 255 (4): 1242-1247, 1980」及び「Hedner and Kisiel, J.Clin.Invest. 71: 1836-1841, 1983」に開示された方法によって調製され得る。それらの方法は、検出可能な量の他の血液凝固因子なしでVII因子を産する。さらに精製されたVII因子の製剤でさえ、最終精製工程としてさらなるゲル濾過を含むことによって得ることができる。次いでVII因子は、既知の手段によって、例えば、XIIa因子、IXa因子又はXa因子のような、幾つかの異なる血漿タンパク質によって、活性化されたVIIa因子に転換される。或いは、「Bjoern et al. (Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)」に開示されたように、VII因子は、Mono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)などのようなイオン交換クロマトグラフィーカラムを通過させることによって、又は溶液中での自己活性化によって、完全に活性化され得る。
【0087】
VII因子関連ポリペプチドは、野生型VII因子の改変によって、又は組換え技術によって生成され得る。野性型VII因子と比較したとき変化したアミノ酸配列を有するVII因子関連ポリペプチドは、天然のVII因子をコードする核酸において、アミノ酸コドンを変化させるか、又はアミノ酸コドンのいくつかを、既知の方法、例えば部位特異的突然変異誘発によって除去することによって、野性型VII因子をコードする核酸配列を改変することによって生成され得る。
【0088】
置換がVIIa因子の分子の機能に重大な意味を持つ領域の外側で行われ、なお活性なポリペプチドを与えることは、当該分野の技術者には明らかである。VII因子ポリペプチドの活性に必須であり、それ故置換に供されることが望ましくないアミノ酸残基は、部位直接的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発(例えば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照されたい)のような、当該分野で既知の方法によって同定され得る。後者の技術において、突然変異は、分子の正に帯電した残基毎に導入され、結果として生じる突然変異分子は、凝固性について、分子の活性に重大な意味を持つアミノ酸残基を同定するために、それぞれの架橋結合活性が試験される。基質−酵素相互作用のサイトは、核磁気共鳴分析、結晶学又は光親和性ラベリングのような技術による、3次元構造の分析によって決定できる(例えば、de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312;Smith et al., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照されたい)。
【0089】
一つのヌクレオチドを他のヌクレオチドに交換するための、核酸配列への突然変異の導入は、当該分野で既知の任意の方法を用いた部位直接的突然変異誘発によって達成される。関心のある挿入断片を有するスーパーコイルの二重鎖DNAベクター及び所望の突然変異を有する二つの合成プライマーを利用する方法が特に有用である。ベクターの反対の鎖にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによって、温度サイクルの間に伸長する。プライマーの取り込みの際に、ねじれ型のニックを含む突然変異プラスミドが生成される。温度サイクルに続いて、該産物は、DpnIで処理され、これは、メチル化及びヘミ-メチル化DNAに特異的であり、親DNAテンプレートを消化し、突然変異含有合成DNAを選択する。変異体を創造、同定及び単離するための、当該分野で既知の他の方法も用いられ、例えば、遺伝子シャッフリング又はファージディスプレイ技術のような方法である。
【0090】
ポリペプチドをそれらの元の細胞から単離するのは、これらに限定されないが、接着性の細胞培養物から所望の産物を含む細胞培養培地を除去すること;非接着性細胞を除去するための遠心分離又は濾過;などを含む、当該分野において既知の任意の方法によって達成される。
【0091】
任意に、VII因子ポリペプチドはさらに精製されてもよい。精製は、これらに限定されないが、例えば抗-VII因子抗体カラム(例えば、Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; and Thim et al., Biochem. 27:7785, 1988を参照されたい)上でのような親和性クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動的方法(例えば、調製用等電点電気泳動(IEF)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出などを含む当該分野において既知の任意の方法を用いて達成される。一般に、「Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982」;及び「Protein Purification, J.C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989」を参照されたい。精製後、該製剤は、好ましくは、宿主細胞に由来する非VII因子ポリペプチドの10重量%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満を含む。
【0092】
本発明の内容において、該精製は、少なくとも一つの陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む。
【0093】
本発明の方法によって完全に活性化されない場合は、VII因子ポリペプチドは、XIIa因子又は例えばIXa因子、カリクレイン、Xa因子、及びトロンビンのような、トリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼを用いて、タンパク分解的に切断されて活性化され得る。例えば、「Osterud et al., Biochem. 11:2853 (1972)」;「Thomas, U.S. Patent No. 4,456,591」;及び「Hedner et al., J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)」を参照されたい。或いは、VII因子ポリペプチドは、Mono Q(登録商標)(Pharmacia)などのようなイオン交換クロマトグラフィーカラムを通過させることによって、又は、溶液中での自己活性化によって、活性化され得る。得られた活性化VII因子ポリペプチドは、次いで本願に記載したように処方されて投与される。
【0094】
以下の実施例は、本発明の方法の実行を説明する。それらの例は、説明のためだけに含まれ、本発明の範囲を如何なる意味においても制限するようには意図されない。
【0095】
実施例1−Ca2+ 勾配バッファーを用いた陰イオン交換物質からの分画溶出によるVII因子ポリペプチドのバルクの精製
本発明の方法は、以下のように実行することができる:
陰イオン交換物質 (Q-Sepharose FF from Amersham Biosciences)を具備するカラムを、WFI(注入用の水)で洗浄し、続いて、NaCl/Glyglyバッファー(175 mM NaCl及び10 mM Glygly)で平衡化する。
【0096】
細胞培養物から生ずるrFVII (組換えVII因子;Mw 約50,000)のバルクを、pH 8.5でカラムにアプライし、それによって基本的に全てのVII因子ポリペプチドバルクが該カラム物質に結合する。所望の糖形態(glycoform)(シアル酸付加の糖形態)のVII因子ポリペプチドの含有量は、約78%である。VII因子ポリペプチドの添加は、マトリクス(湿潤形態の陰イオン交換物質)1リットル当り約20 gである。
【0097】
該カラムを、NaCl/Glyglyバッファー(175 mM NaCl及び10 mM Glygly)で洗浄し、続いて、他のNaCl/Glyglyバッファー(50 mM NaCl及び10 mM Glygly)で洗浄する。
【0098】
分画溶出は、NaCl/Glyglyバッファー中のCaCl2 の勾配(0〜15 mM CaCl2;50 mM NaCl及び10 mM Glygly)で、1時間当り40カラム容量の流速で行われる。
【0099】
Ca2+ 濃度の閾値Xは7.5 mMに設定される。Ca2+ の濃度範囲7.5〜13.5 mMに対応する分画が収集され、所望の糖形態(シアル酸付加の糖形態)のVII因子ポリペプチドの90%以上の含有量を有することが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VII因子ポリペプチドのバルク(bulk)の精製のための、工業規模(industrial-scale)の方法であって、該方法は以下の工程
(a) VII因子ポリペプチドのバルクを、陰イオン交換物質に、該VII因子ポリペプチドのバルクの一部が該陰イオン交換物質へ結合するのを促進する条件下で接触させること;
(b) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値XmMまでの濃度で含有する第1の溶出バッファーで溶出すること;及び、
(c) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出し、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出物として収集すること;を含み、
ここにおいて、前記閾値Xが、前記第1の溶出工程(b)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも5重量%が前記陰イオン交換物質から除去され、前記第2の溶出工程(c)において、前記VII因子ポリペプチドのバルクの少なくとも50重量%が該VII因子ポリペプチドの精製されたバルクとして収集可能であるように選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記閾値Xが3〜12 mMの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
VII因子ポリペプチドのバルクの精製のための、工業規模の方法であって、該方法は以下の工程
(a) VII因子ポリペプチドのバルクを、陰イオン交換物質に、該VII因子ポリペプチドのバルクの一部が該陰イオン交換物質へ結合するのを促進する条件下で接触させること;
(b) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値XmMまでの濃度で含有する第1の溶出バッファーで溶出すること;及び、
(c) 前記陰イオン交換物質を、Ca2+ を閾値X mMよりも高い濃度で含有する第2の溶出バッファーで溶出し、VII因子ポリペプチドの精製されたバルクを溶出物として収集すること;を含み、
ここにおいて、前記閾値Xが3〜12 mMの範囲であることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記第1の溶出工程(b)が勾配バッファーを用いて行われる、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記勾配バッファーがXに相当する最終Ca2+ 濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の溶出工程(c)が勾配バッファーを用いて行われる、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記勾配バッファーがちょうどXを超える濃度に相当する初期Ca2+ 濃度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の溶出工程(b)及び第2の溶出工程(c)がいずれも勾配バッファーを用いて行われる、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記勾配のCa2+の初期濃度が、0〜5 mMの範囲であり、前記勾配のCa2+ の最終濃度が10〜25 mMの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の溶出工程(b)が、1〜7 mMの範囲の(一定)Ca2+濃度を有するバッファーのバッチの形態である第1の溶出バッファーを用いて行われ、前記第2の溶出工程(c)が、8〜25 mMの範囲の(一定)Ca2+濃度を有するバッファーのバッチの形態である第2の溶出バッファーを用いて行われる、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換物質が強陰イオン交換物質である、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
VII因子ポリペプチドのバルクの生産及び精製のための、工業規模の方法であって、該方法は以下の工程
(i) 細胞培養物中でVII因子ポリペプチドの粗製バルクを生産すること、及び、
(ii) 一以上の陰イオン交換精製方法を利用する一連の精製によって、前記VII因子ポリペプチドの粗製バルクを精製すること;を含み、
ここにおいて、そのような陰イオン交換精製方法の少なくとも一つが、請求項1〜11の何れか一項で定義されるように行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記生産工程(i)が、前記VII因子ポリペプチドの粗製バルクの収量に関して最適化されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞培養物中の前記粗製バルクの生産が、7.0〜7.6の範囲のpH値で行われることを特徴とする、請求項12〜13の何れか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2013−56891(P2013−56891A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−225063(P2012−225063)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2007−534023(P2007−534023)の分割
【原出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstrasse 36/38, CH−8050 Zurich, Switzerland
【Fターム(参考)】