説明

陰極線管の製造方法と露光装置

【課題】 本発明は、例えば、CRT(陰極線管)のカーボン及び蛍光体ストライプを形成する陰極線管の製造方法に関し、露光時間を短縮させることが課題である。
【解決手段】 SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで露光用レンズ4を形成し、該露光用レンズを使用して陰極線管のカーボン若しくは蛍光体ストライプを形成するようにした陰極線管の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、CRT(陰極線管)のカーボン若しくは蛍光体ストライプを効率よく形成する陰極線管の製造方法と、その製造方法に使用する露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、CRT(図3参照)において、例えば、ガラスパネル5の裏面に電子ビームによって発光する蛍光面を形成するには、図4に示すように、露光台にガラスパネル5をセットして、該露光台におけるランプハウス2にセットされた超高圧水銀灯3を発光させる。
【0003】前記超高圧水銀灯3からの紫外線が、露光用レンズ8を透過して色選別機構(例えば、スロット型若しくはアパーチャグリル型等のシャドウマスク)7を透過する。
【0004】前記色選別機構7を透過した紫外線は、前記ガラスパネル5の裏面に塗布された、蛍光体及び感光結合剤(以下、感光性フォトレジスト)を混合してなる蛍光体塗布膜6に到達し、その内の感光性フォトレジストを光硬化反応させる。この露光工程の後に前記色選別機構7をガラスパネル5から外し、該ガラスパネル5を現像すると、前記蛍光体塗布膜6において紫外線で硬化した部分だけが残り、蛍光体パターン若しくはドットが形成される。
【0005】前記超高圧水銀灯3から発光される紫外線は、図5に示すように、Hg固有輝線として波長365nmがあるが、その他にも波長334nm,波長313nm,波長302nm,波長297nmの各輝線がある。一方、前記蛍光体塗布膜6に含有される感光性フォトレジストは、ポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウムとからなる。当該感光性フォトレジストの吸光域は、図6に示すように、波長350nmにおいてピークとなるが、これよりも短波長側の領域においても有効な吸光域がある。
【0006】よって、この感光性フォトレジストの光硬化反応を効率的に反応させ、且つ、短時間で露光完了させるには、前記紫外線のHg固有輝線が、光路途中の露光用レンズを透過する際に、ほぼ吸収されることなく感光性フォトレジストまで到達するようにすることである。即ち、紫外線の短波長側の各輝線が該露光用レンズを透過する際の透過率を、高く且つ維持することである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の前記露光用レンズは、入手しやすい光学ガラスであって、紫外線を照射した場合の透過率の特性曲線は、例えば、ガラス厚を約10mmとし、紫外線照射時間を、0,10,50,100,200,500の各時間としたところ、図7に示すような曲線となる。かかる場合の透過率は、0時間から順に照射時間が長く経過するほど透過率が低くなっている。このように、従来の光学ガラスにおけるガラス組成から、紫外線焼け現象(ソーラリゼーション)によって次第に紫外線の透過率が劣化してしまう特性がある。
【0008】前記紫外線透過率の劣化があると、紫外線の照射前の透過率と、ある程度照射した後の透過率とに差が生じるので、前記感光性フォトレジストにおける光硬化反応が部分的に変化して、その結果、蛍光体パターンのストライプ幅の変化、若しくは、ドット径の分布変化が発生し、CRTの画質の品質低下を招くという課題がある。
【0009】また、前記従来の露光用レンズは、可視領域の波長400nm以上の透過率が良好であるものの、感光性フォトレジストの光硬化反応に使用される、紫外線短波長側領域の透過率が良くない。よって、当該感光性フォトレジストの吸光域が紫外線の短波長側でも有効な吸光域があるにも関わらず、超高圧水銀灯3から照射された紫外線の短波長側のHg固有輝線が、光路途中の露光用レンズでほとんど吸収されてしまい、感光性フォトレジストの光硬化反応に寄与していないという課題がある。本発明に係る陰極線管の製造方法と露光装置は、このような課題を解消するために提案されたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る陰極線管の製造方法の上記課題を解決するための要旨は、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで露光用レンズを形成し、該露光用レンズを使用して陰極線管のカーボン若しくは蛍光体ストライプを形成することである。
【0011】本発明に係る露光装置の要旨は、露光用レンズが、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで形成されていることである。
【0012】本発明に係る陰極線管の製造方法と露光装置とによれば、超高圧水銀灯から照射された紫外線の短波長側領域のHg固有輝線は、露光用レンズを透過する際における透過率が高く、且つ、紫外線焼けが少ないことから高い透過率が維持されるようになる。
【0013】よって、感光性フォトレジストの吸光域に到達する紫外線のHg固有輝線が多くなって、光硬化反応が効率的に促進されることから、露光時間を短縮させることができる。また、蛍光体パターンのストライプ幅若しくはドット径の分布変化を防止する。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る陰極線管の製造方法と露光装置について図面を参照して説明する。なお、発明の理解の容易のため従来例に対応する部分には従来例と同一符号を付けて説明する。
【0015】本発明に係る露光装置1は、図1に示すように、露光台のランプハウス2内にセットされた超高圧水銀灯3と、露光用レンズ4とが設けられており、該露光用レンズ4は、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラス(例えば、ホヤ社製、硝種BK−3,BK−7相当品)で形成されている。当該露光用レンズ4の形成の際には、従来通りに、金型曲面を使用して加熱成形するサギング法を採用することができる。
【0016】露光用レンズ4を形成するために使用される前記光学ガラスの特性は、図2に示すように、紫外線の短波長側領域の透過率が極めて高いものである。また、紫外線照射の時間経過において、紫外線焼け現象(ソーラリゼーション)よる透過率の劣化の程度も非常に低くなっている。
【0017】図2に示した光学ガラスの透過率の特性曲線について、具体的に説明すると、当該光学ガラス厚さを約10mmとし、紫外線の照射強度(mJ)を60mw/cm2(波長365nmにて)とし、照射開始時(0時間)と、10時間経過後との透過率を表したものである。
【0018】この光学ガラスにおける紫外線の透過率を、従来例(図7参照)における光学ガラスの透過率と比較すると、紫外線の波長365nmにおいて、0時間時は、本発明では93%、従来例では85%、10時間後は、本発明では92%、従来例では80.5%となっている。
【0019】また、紫外線の波長334nmにおいて、0時間時は、本発明では93%、従来例では50%、10時間後は、本発明では91%、従来例では45%となっている。
【0020】このように、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで形成された露光用レンズ4は、紫外線の透過率が全体的に従来例の露光用レンズ8よりも大幅に高く、短波長側領域においても格段に高い。
【0021】更に、10時間照射経過後における透過率の劣化の程度も、本発明では1〜2%の差であって、その変化率は1〜2%でほとんど変わらないと言える程であるが、従来例では4.5〜5%の差となり、その変化率は5〜10%であって劣化の程度が比較的大きい。
【0022】上記露光用レンズ4を有する本発明の露光装置1により、CRTのガラスパネル5の蛍光体を形成するには、図1に示すように、ランプハウス2内にセットされた超高圧水銀灯3を発光させる。それにより、紫外線が前記露光用レンズ4を透過する。そこを透過した紫外線は、例えばすだれ格子状のアパーチャグリル等の色選別機構7のスリットを通過して蛍光体塗布膜6に至る。
【0023】前記蛍光体塗布膜6においては、ポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウムとからなる感光性フォトレジストが、前記紫外線により光硬化反応する。当該紫外線は、波長365nmのほか波長334nm、波長313nm等の短波長領域のHg固有輝線も前記露光用レンズ4にほぼ吸収されることなく蛍光体塗布膜6に至る。
【0024】よって、前記蛍光体塗布膜6の感光性フォトレジストにおいて、波長350nmの吸光域で光硬化反応が行われるほかにも、短波長側領域の吸光域でも光硬化反応が行われるようになって、光硬化反応に寄与する有効な吸光域が拡大するものである。こうして、従来例よりも短時間(例えば、30%以上の減少)で露光工程の作業が完了する。
【0025】このように、前記露光用レンズ4を使用することで、生産性を高めて陰極線管のカーボン若しくは蛍光体ストライプを形成できるものである。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る陰極線管の製造方法は、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで露光用レンズを形成し、該露光用レンズを使用して陰極線管のカーボン若しくは蛍光体ストライプを形成することにより、感光性フォトレジストを光硬化反応させる紫外線の短波長側領域のHg固有輝線が露光用レンズを高透過率で透過するようになり、光硬化反応に寄与する有効な吸光域が拡大して露光時間が大幅に短縮されると言う優れた効果を奏するものである。よって、陰極線管の生産効率が従来よりも50%アップと格段に向上する。また、本発明に係る露光装置は、紫外線の透過率を高め、更に、紫外線焼けが少ないという特性から透過率の劣化が少ないので、高透過率を維持させることができて、CRTの画質を高品質に維持すると言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る露光装置の概略構成図である。
【図2】同本発明に係る露光装置における、露光用レンズを形成する光学ガラスの透過率を示す特性曲線図である。
【図3】陰極線管(CRT)の概略構成図である。
【図4】従来例に係る露光装置の概略構成図である。
【図5】超高圧水銀灯の発光波長と輝線強度との関係を示す図である。
【図6】感光性フォトレジスト(ポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウム)の吸光を示す特性曲線図である。
【図7】従来例に係る露光用レンズを形成する光学ガラスの透過率を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 露光装置、 2 ランプハウス、
3 超高圧水銀灯、 4 露光用レンズ、
5 ガラスパネル、 6 蛍光体塗布膜、
7 色選別機構、 8 露光用レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで露光用レンズを形成し、該露光用レンズを使用して陰極線管のカーボン若しくは蛍光体ストライプを形成すること、を特徴とする陰極線管の製造方法。
【請求項2】露光用レンズが、SiO2とB23を主成分として軟化点温度が750℃以下の光学ガラスで形成されていること、を特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−31123(P2003−31123A)
【公開日】平成15年1月31日(2003.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−217095(P2001−217095)
【出願日】平成13年7月17日(2001.7.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】