説明

陰極線管

【目的】電子放出の寿命特性の優れた陰極線管用陰極を得る。
【構成】略々針状のアルカリ土類金属酸化物中に、結晶形状が略々棒状のバリウムスカンデートを分散させ、かつアルカリ土類金属酸化物の平均粒径とバリウムスカンデートの平均粒径とを近似させる。バリウムスカンデートのアルカリ土類金属酸化物中の濃度は、陰極基体と接する部分はゼロで外側程大であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高い電流密度で長時間安定した電子放出特性を示す陰極を有する陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】カラー受像管、データ表示管、撮像管などの高精細度化が進むに伴って、これらの電子管の陰極は高電流密度で長時間安定した電子放出特性を有するものであることが特に強く要望されるようになった。
【0003】このような要望に対応する手段として、これまでに、以下に述べるような幾つかの提案がなされている。
【0004】例えば、特開昭61−271732号、特開昭62−22347号公報には、基体金属上に設けるアルカリ土類金属酸化物層に酸化スカンジウムの粉末を分散させたものが開示されている。ここで、上記酸化スカンジウムが、アルカリ土類金属酸化物例えばBaOと反応し、生成した複合酸化物BaxScyOzが電子放出物質中に分散して存在し、該複合酸化物が陰極の動作中に漸次熱分解して遊離Ba、BaOを生成し、該Ba、BaOが電子放出物質中に放出されるため、陰極を長時間動作させた後においてもアルカリ土類金属酸化物層中の遊離Ba、BaOの濃度が高く保持され、良好な電子放出特性を維持することができるとするものである。
【0005】また、特開昭62−90820号、特開平1−311530号、特開平1−311531号公報には、バリウムとスカンジウムとの複合酸化物をアルカリ土類金属酸化物層中に分散させることが開示されている。
【0006】また、特開昭63−310535号、特開昭63−310536号公報には、アルカリ土類酸化物層中に分散させる酸化スカンジウムの形状を柱状多面体または12面体の結晶とすることが開示されている。
【0007】また、特開昭62−198029号公報には、基体金属上に設ける電子放出物質層を2層とし、基体金属側の1層をスカンジウムの化合物を分散させた層とすることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術においては、陰極の安定した量産性についての配慮がなされていなかった。
【0009】すなわち、本発明者らがアルカリ土類金属酸化物層内に酸化スカンジウムを分散させて含有する上記従来技術による電子管陰極の製造について量産試験を行ったところ、電子放出特性を安定化させるために行うエージングに極めて長時間を要するという問題があり、かつ、酸化スカンジウムをアルカリ土類金属酸化物層内に所定の比率で一様に分散させることが困難であるという問題があり、このため、電子管ごとに電子放出特性が変動するという問題点があった。
【0010】また、バリウムとスカンジウムとの複合酸化物(バリウムスカンデート)の粉末をアルカリ土類金属酸化物層内に分散させたものは、アルカリ土類金属炭酸塩(これを基体金属に塗布し、真空中で加熱して酸化物とする)中への一様な分散が達成できず、個々の陰極ごとにバリウムスカンデートの比率が変動し、電子放出特性が変動するという問題があった。
【0011】また、バリウムスカンデート層あるいは酸化スカンジウムを分散させたアルカリ土類金属酸化物層を基体金属上に直接被覆した陰極は、陰極の動作中に該被覆層と基体金属との結合力が低下し、極端な場合には被覆層が剥離するに到るという問題があった。この現象は該被覆層中のスカンジウム化合物含有量が多ければ多いほど顕著になる傾向がある。
【0012】本発明の目的は、上記従来技術の有していた課題を解決して、高い電流密度で長時間安定した電子放出特性を与えることのできる電子管陰極を各陰極ごとの品質のバラツキなく安定して提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記各陰極ごとの品質の安定を図る目的は、陰極スリーブの一端をカバーするように該スリーブに固着された基体金属表面にアルカリ土類金属酸化物層を設けてなる電子管陰極において、上記アルカリ土類金属酸化物層中にバリウムスカンデートを分散して含み、かつ、該バリウムスカンデートが上記アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる炭酸塩とほぼ同様の形状からなり、その平均粒径を上記炭酸塩の平均粒径と近似させた電子管陰極とすることによって達成することができる。
【0014】
【作用】バリウムスカンデートをアルカリ土類金属炭酸塩と同様形状および近似粒径とすることによってバリウムスカンデートをアルカリ土類金属炭酸塩中に均一に分散させることができる。したがって個々の陰極毎にバリウムスカンデートの比率が変動するという問題は無くなる。
【0015】また、アルカリ土類金属炭酸塩の基体金属からの剥離に対しては、基体金属と接する部分の上記炭酸塩中にはバリウムスカンデートを含まない構成とすることによってSi系中間層の形成を可能とし、これによって上記炭酸塩の剥離を防止することができる。
【0016】
【実施例】本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩は略々針状であり、バリウムスカンデートは略々棒状である。したがって、粒径を問題とする場合は、粒径の測定法が問題となる。本実施例における平均粒径はコールタ原理に基づいた測定法である周知のコールタ・カウンタ法により測定した粒径である。
【0017】コールタ・カウンタ法は、「電解液中に電解液を満した細孔管を浸漬し、両電解液が細孔を有する管壁により隔てられている状態で細孔管の内側と外側に電極を置き、両電極間に電圧を印加して電解液を通して両電極間に電流を流した場合に、微粒子を懸濁させた上記電解液を細孔を通して吸引し、個々の粒子が管壁の細孔を通過する際、粒子体積に相当する電解液が微粒子で置換され両電極間の電気抵抗に変化を生じる事を利用して、この電気抵抗変化を測定することにより粒子サイズを求める方法」である。なお、コールタカウンタ法については「粒度測定技術」(日刊工業新聞社)に詳細が記載されている。
【0018】アルカリ土類金属酸化物層中のバリウムスカンデートの平均含有量はBa2Sc25として0.01wt%より高く、10wt%より低くする。バリウムスカンデートの含有量がBa2Sc25として0.01wt%以下であると電子放出特性改善の効果が認められず、10wt%以上では電子放出物質層の基体金属表面からの剥離傾向が著しくなり、いずれも好ましくない。
【0019】アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる炭酸塩の形状は針状であり、これから形成された酸化物もこの形状を踏襲する。バリウムスカンデートの形状はこの針状形状に類似している事が必要であり、具体的には長さが太さの1.4倍以上の棒状とするのが望ましい。
【0020】コールタ・カウンタ法により測定したバリウムスカンデートの平均粒径S1は、アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられた炭酸塩の平均粒径すなわちこれから形成された酸化物の平均粒径S2と近似している事が必要であり、S1は0.6<S1/S2<1.8なる式を満足する範囲にある事が好ましい。バリウムスカンデートの平均粒径S1が上記範囲外であると、電子放出特性の電子管ごとの変動が著るしくなる。
【0021】バリウムスカンデートは、酸化スカンジウムSc23と炭酸バリウムBaCO3とを混合して空気中で加熱して製造されるが、得られるバリウムスカンデートの形状・寸法は、原料とした酸化スカンジウムの形状・寸法とほぼ同じであり、バリウムスカンデートの形状・寸法のコントロールは原料に所望の形状・寸法の酸化スカンジウムを用いる事により可能である。
【0022】コールタ・カウンタ法により測定したバリウムスカンデートの平均粒径S1を上記の範囲の値とする代わりに、バリウムスカンデートの長さ,太さをそれぞれL1,T1、アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられた炭酸塩の長さ,太さ、すなわちこれから形成された酸化物の長さ,太さをそれぞれL2,T2とするとき、L1とT1をそれぞれ0.2<L1/L2<1.9,0.2<T1/T2<6なる式を満足する範囲にしてもよい。
【0023】なお、基体金属表面上に設ける層のアルカリ土類金属炭酸塩に添加するバリウムスカンデートとしては、BaOとSc23との比でBaOの構成比の最も高いBa2Sc25を用いることが電子管製造工程での陰極の活性化上有利であるが、さらにSc23の量を高めてBaOの構成比を低くしてもよい。原理的にはSc23のみでもよいが、この場合は前述のようにエージングに長時間を要する。
【0024】上記従来技術においてアルカリ土類金属酸化物中へのバリウムスカンデートの一様な分散が得られない理由は、バリウムスカンデートとアルカリ土類金属酸化物形成に使用するアルカリ土類金属炭酸塩との結晶形状,粒径および比重の相違によって混合分散の進行が容易に行われないこと、および、静置・保管の場合に分離・沈降が進行することに起因するものであり、本発明においてはバリウムスカンデートをアルカリ土類金属炭酸塩の形状(針状)と類似の形状(棒状)および近似粒径の結晶とすることによって両者の均一分散およびその保持を容易に達成することができる。
【0025】ここで、バリウムスカンデートの針状結晶は、針状結晶の酸化スカンジウムと炭酸バリウムとを非還元性雰囲気中(例えば、大気中)900〜1100℃で加熱することによって作成することができる。例えば、1000℃で300時間加熱することによりBa2Sc25が作成され、加熱温度が1000℃を越えるとBa2Sc49も形成される。
【0026】また、基体金属表面上に設ける上記バリウムスカンデートを含むアルカリ土類金属酸化物層を複数層からなるものとし、少なくとも基体金属上の第1層をバリウムスカンデートを含まないアルカリ土類金属酸化物層、該第1層上に設ける層をバリウムスカンデートを含むアルカリ土類金属酸化物層とすることによって、さらに優れた特性すなわち、長時間安定した電子放出特性を有する陰極を得ることができる。
【0027】この場合,最下層と最上層の厚さは4μm以上とする。4μm未満では、バリウム化合物結晶の太さ以下の厚さとなることがあり、好ましくない。各層中のバリウムスカンデートの量は、上述のように基体金属上の第1層(すなわち基体金属に接する層)では0,第2層から上の層ではバリウムスカンデートを含むようにするのが一般的であるが、より上層になるに従いすなわち外側の層ほどバリウムスカンデートの濃度を高めるのが、より好ましい。電子管陰極においては、前述のようにアルカリ土類金属酸化物層中のBaとBaO濃度を高く保持することが重要で、外側の層ほどバリウムスカンデートの濃度を高めることによりバリウムの蒸発を防ぐのが好結果をもたらす。最外層部のバリウムスカンデートの濃度は25wt%にすることも可能である。
【0028】アルカリ土類金属酸化物層を複数層設ける場合,バリウムスカンデート含有量は、基体金属上の全酸化物層を平均してBa2SC25として0.01wt%より高く、10wt%より低くする。
【0029】アルカリ土類金属酸化物層の合計の厚さは、従来の単層の場合の厚さと同様に、通常は50〜100μmとしてよいが、これら限定する必要はない。本発明において、アルカリ土類金属酸化物層が単層の場合も、その厚さは上記と同様である。
【0030】ところで、基体金属に接してバリウムスカンデートが存在する場合に基体金属と被覆層との結合力が低下する理由は、通常基体金属と被覆層との結合は基体金属中に含有されている微量Siに基づくSi系中間層が基体金属と被覆層との境界に形成されることによって助長されるものであるが、特開昭62−198029号記載のようにバリウムスカンデート分散層が存在する場合には上記Si系中間層の形成が抑制され、基体金属と被覆層との熱膨張差、静電力によって剥離に到るものと推定される。これに対して、上記本発明のように被覆層を複数層構造としスカンジウム化合物が基体金属と直接接することのない構成とすることによって、安定な寿命特性を得ることができる。
【0031】さらに、アルカリ土類金属酸化物層が実質的に単層とみなせる場合でも、基体金属に接する部分にはバリウムスカンデートが含まれないようにすることにより、バリウムスカンデートが基体金属に接触しないようにして、且つ酸化物層の外側程バリウムスカンデート濃度が高まるようにすることにより(最外層部分は25wt%にすることも可能)、上記複数層のアルカリ土類金属酸化物層を設ける場合と同様の効果を得ることができる。この場合も、バリウムスカンデート含有量は、基体金属上のアルカリ土類酸化物全体を平均して、Ba2Sc25として0.01wt%より高く、10wt%より低くする。
【0032】また、上記のように複数層のアルカリ土類金属酸化物層を設ける場合や、アルカリ土類金属酸化物層中のバリウムスカンデートの濃度に外側程高い勾配を与える場合は、バリウムスカンデートの形状・寸法を上記のようにコントロールしていなくても、バリウムスカンデートの濃度を変化させることによる利益は得られる。
【0033】以下、本発明電子管陰極の構成について実施例によって具体的に説明する。
【0034】実施例1図1は、電子放出物層を2層構造とした場合の本発明電子管陰極の概略構成を示す断面図で、陰極スリーブ1、ニッケル基体2、電子放出物質層3からなり、電子放出物質層3がさらに(Ba、Sr、Ca)CO3からなる第1層4、(Ba、Ca、Sr)CO3に0.8重量%のバリウムスカンデートを分散させた第2層5から構成されていることを示す。ここで上記バリウムスカンデートは棒状結晶の酸化スカンジウム(Sc23)と炭酸バリウム(BaCO3)とを混合し、大気中約1000℃で500時間加熱して作成したものであり、(Ba、Sr、Ca)CO3結晶と類似形状、近似粒径の長さ約10μm、幅約2μmの棒状結晶で、その80重量%以上がBa2Sc25からなるものである。バリウムスカンデートの作成に用いた酸化スカンジウムの形状・寸法は、得られたバリウムスカンデートとほぼ同じものとし、炭酸バリウムは粉状のものを用いた。
【0035】陰極の製作は、まず、(Ba、Sr、Ca)CO3粉末、上記バリウムスカンデートを0.8重量%分散させた(Ba、Sr、Ca)CO3粉末のそれぞれにニトロセルロースラッカ13[リットル]、蓚酸ブチルを5.6[リットル]加え、それそせれ20[リットル]の懸濁液としてからローリング混合して各懸濁液を均一化した(前者の懸濁液をA液、後者の懸濁液をB液とする)。次に、ニッケル基体2上にスプレー法によりA液を約35μmの厚さに塗布して第1層4を作成、次いで、該層4上に同様にしてB液を約35μmの厚さに塗布して第2層5を作成して電子放出物質層3を形成した。さらに、真空排気工程で電子放出物質層3をヒータ6によって加熱して炭酸塩を分解して酸化物とし、さらに900〜1100℃に加熱して活性化を行うことによって陰極を製作した。上記(Ba、Sr、Ca)CO3粉末は長さ約11μm,太さ約1μmの針状結晶であった。また、コールタ・カウンタ法によつて測定した、バリウムスカンデートの平均粒径と酸化物の平均粒径の比S1/S2は約1.2であった。
【0036】本実施例において上記のようにして製作した陰極を、陰極線管に実装した場合の,電子放出特性の経時変化を,図2に曲線(a)として示した。なお、図2R>2の曲線(b)は、1.6wt%のバリウムスカンデートを分散させた(Ba、Sr、Ca)CO3を用いて製作した単層の電子放出物質層を有する場合の電子放出特性の経時変化(後述する実施例2),曲線(c)はスカンジウム化合物を含まない通常の単層の電子放出物質層を有する従来の場合の電子放出特性の経時変化を示す。図2R>2において、横軸は経過動作時間、縦軸は最大陽極電流を示す。
【0037】この結果から、曲線(a)の場合が曲線(c)に比較して格段に優れた特性を示すこと、曲線(b)の場合は経時の途中までは曲線(a)の場合と同様に優れた特性を示すが、長時間動作の後に急激な劣化を示すことが知られる。曲線(b)の場合のこの特性は、電子放出物質層を2層とした場合で電子放出物質層中のBa2Sc25総量を10重量%以上とした場合にも同様に現われるが、この現象は電子放出物質層のニッケル基体からの剥離に起因するものである。なお、分散したBa2Sc25の含有量が0.01重量%以下では、電子放出特性改良の効果は全く現われない。
【0038】なお、Ba2Sc25を(Ba、Sr、Ca)CO3と類似形状、近似粒径とした場合のスプレー用懸濁液内での分散安定性は、例えば20[リットル]の懸濁液タンクを用いてスプレー作業を行った場合の作業開始時と終了時(8時間の時間経過)とでの分散Ba2Sc25の含有量が0.1重量%以下の差を示すに止まり、極めて優れた安定性を示す。これに対して、平均粒径が40%以上異なる場合には懸濁液中でのBa2Sc25の沈降が顕著に進行し、上記と同様な条件で、作業終了時の方が作業開始時より分散したバリウムスカンデートの含有量が1.5倍程度大きくなる。
【0039】実施例2バリウムスカンデートの含有量を1.6wt%にしたこと、アルカリ土類金属酸化物層を厚さ70μmの単層としたことを除いて、実施例1と同様にして陰極を製作し、電子放出特性の経時変化を測定したところ、図2の曲線(b)のような結果が得られ、従来の場合の曲線(c)に比較して、格段にすぐれた特性が得られたが、実施例1で述べたように、長時間動作の後に急激な劣化を示した。
【0040】実施例3実施例1と同様の(Ba、Sr、Ca)CO3粉末とバリウムスカンデート粉末を用い、ニッケル基体上にまずバリウムスカンデートの含まれない(Ba、Sr、Ca)CO3層を形成し、その上に順次、バリウムスカンデートを0.4wt%,0.8wt%,1.2wt%,2wt%をそれぞれ含有する(Ba、Sr、Ca)CO3層を形成した。各層の厚さはいずれも15μmとした。その後、実施例1と同様の加熱処理を行って陰極を製作した。これを陰極線管に実装して、電子放出特性の経時変化を測定したところ、実施例1の場合よりもさらに好ましい結果が得られた。
【0041】なお、実施例3において、アルカリ土類金属酸化物層中のバリウムスカンデート濃度をニッケル基体上からほぼ連続的に0〜2wt%に変化させても良好な結果が得られた。この場合、酸化物層は単層である。
【0042】
【発明の効果】以上述べてきたように、電子管陰極を本発明構成の陰極とすることによって、従来技術の有していた課題を解決して、高い電流密度で長時間安定した電子放出特性を与えることのできる電子管陰極を品質のバラツキなく安定して提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子管陰極の一実施例の概略構成を示す模式断面図。
【図2】種々の陰極を陰極線管に実装した場合の経時変化特性を示す図であり、(a)はBa2Sc25を含まない第1層およびBa2Sc25を含む第2層の2層の電子放出物質層を有する本発明陰極の場合、(b)は1.6重量%のBa2Sc25を分散させた電子放出物質層1層のみからなる陰極の場合、(c)はスカンジウム化合物を含まない電子放出物質層を用いた通常仕様の陰極の場合をそれぞれ示した図である。
【符号の説明】
1・・・陰極スリーブ、2・・・ニッケル基体、3・・・電子放出物質層、4・・・Ba2Sc25を含まない第1層、5・・・Ba2Sc25を含む第2層、6・・・ヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】陰極スリーブの一端をカバーするように該スリーブに固着された基体金属の頂面上にアルカリ土類金属酸化物層を有する電子管陰極において、上記アルカリ土類金属酸化物層中にバリウムスカンデートを分散して含み、かつ、該バリウムスカンデートが上記アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられるアルカリ土類金属炭酸塩とほぼ同様の形状からなり、その平均粒径が上記炭酸塩の平均粒径と近似していることを特徴とする陰極を有する陰極線管。
【請求項2】上記バリウムスカンデートは、長さが太さの1.4倍以上の棒状の形状を有する,クレーム1記載の陰極線管。
【請求項3】コールタ・カウンタ法により測定した上記バリウムスカンデートの平均粒径S1が、アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる上記アルカリ土類金属炭酸塩の、上記コールタ・カウンタ法により測定した平均粒径をS2とするとき、0.6<S1/S2<1.8なる式を満足する範囲にある、クレーム1記載の陰極線管。
【請求項4】上記バリウムスカンデートの長さL1と太さT1が、アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる上記アルカリ土類金属炭酸塩の長さをL2,太さをT2とするとき、それぞれ0.2<L1/L2<1.9,0.2<T1/T2<6なる式を満足する範囲にある、クレーム2記載の陰極線管。
【請求項5】上記アルカリ土類金属酸化物層中の上記バリウムスカンデートの平均含有量が0.01wt%より高く、10wt%より低いクレーム1記載の陰極線管。
【請求項6】陰極スリーブの一端をカバーするように該スリーブに固着された基体金属の頂面上にアルカリ土類金属酸化物層を設けてなる電子管陰極において、該アルカリ土類金属酸化物層中にバリウムスカンデートを分散して含み、且つ該アルカリ土類金属酸化物層における該バリウムスカンデートの濃度が該基体金属と接する部分においてゼロであり、該基体金属から離れるに従って高まっていることを特徴とする陰極を有する陰極線管。
【請求項7】上記バリウムスカンデートが、上記アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられるアルカリ土類金属炭酸塩とほぼ同様の形状からなり、その平均粒径が該炭酸塩の平均粒径と近似しているクレーム6記載の陰極線管。
【請求項8】上記バリウムスカンデートは、長さが太さの1.4倍以上の棒状の形状を有する,クレーム7記載の陰極線管。
【請求項9】コールタ・カウンタ法により測定した上記バリウムスカンデートの平均粒径S1が、アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる上記アルカリ土類金属炭酸塩の,上記コールタ・カウンタ法により測定した平均粒径をS2とするとき,0.6<S1/S2<1.8なる式を満足する範囲にある,クレーム8記載の陰極線管。
【請求項10】上記バリウムスカンデートの長さL1と太さT1が,アルカリ土類金属酸化物の形成に用いられる上記アルカリ土類金属炭酸塩の長さをL2太さをT2とするとき,それぞれ0.2<L1/L2<1.9,0.2<T1/T2<6なる式を満足する範囲にある,クレーム8記載の陰極線管。
【請求項11】上記アルカリ土類金属酸化物層中の上記バリウムスカンデートの平均含有量が0.01wt%より高く、10wt%より低いクレーム6記載の陰極線管。
【請求項12】上記アルカリ土類金属酸化物層の最も外側の部分のバリウムスカンデート含有量が25wt%以下であるクレーム11記載の陰極線管。
【請求項13】陰極スリーブの一端をカバーするように該スリーブに固着された基体金属の頂面上にアルカリ土類金属酸化物の複数の層を設けてなる電子管陰極において、該基体金属に接する層はバリウムスカンデートを含まず,該基体金属に接する層上には少なくとも1層の該アルカリ土類金属酸化物の層を設け、該少なくとも1層のアルカリ土類金属酸化物層はバリウムスカンデートを分散して含むことを特徴とする陰極を有する陰極線管。
【請求項14】上記基体金属に接する上記層の厚さが4μm以上であるクレーム13記載の陰極線管。
【請求項15】上記アルカリ土類金属酸化物の複数の層の,最も外側の層の厚さが4μm以上である,クレーム14記載の陰極線管。
【請求項16】上記アルカリ土類金属酸化物層が2層であるクレーム15記載の陰極線管。
【請求項17】上記アルカリ土類金属酸化物の複数の層の,より外側の層ほど上記バリウムスカンデートの含有量が高い,クレーム13記載の陰極線管。
【請求項18】上記アルカリ土類金属酸化物の複数の層中の上記バリウムスカンデートの平均含有量が0.01wt%より高く、10wt%より低いクレーム17記載の陰極線管。
【請求項19】上記アルカリ土類金属酸化物の複数の層の,最も外側の層中のバリウムスカンデート含有量が25wt%以下であるクレーム18記載の陰極線管。

【図1】
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【図2】
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