説明

陰極線管

長方形断面を有する略中空角錐台形状をし、小径の開口部側を電子銃側に向けて配される内部磁気シールド(28)において、小径開口部の短縁辺(52)、(54)をパネル側に落ち込んだ逆台形状とすると共に、長縁辺(56)、(58)を電子銃側に張り出した鈍角二等辺三角形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、陰極線管に関し、特に、内部磁気シールドを備えた陰極線管に関する。
【背景技術】
地磁気その他の外部磁界の影響により、電子銃から射出された電子ビームの軌道が変化する。その結果、カラー陰極線管の場合には、3本の電子ビームが蛍光体スクリーンの正規の位置にランディングしないミスランディングが発生して色ずれ等が生じる。
このような影響を避けるため、略中空角錐台形をした内部磁気シールドが電子ビームの通過領域を取り囲むように設けられる(例えば、特開昭58−178945号公報を参照。)。
しかしながら、上記内部磁気シールドを備えたとしても、水平方向および垂直方向から進入しようとする外部磁界は効果的に遮蔽できるものの、管軸方向から進入する外部磁界を遮蔽しきれない。電子銃から蛍光面に至る電子ビームの軌道を確保するため、管軸方向前後を開口せざるを得ないからである。もっとも、蛍光面側開口部と蛍光面との間に配されているシャドウマスクが磁気シールドの役割を果たすものの、電子銃側の開口部と電子銃の間には磁界を遮蔽する部材は存在しない。
ところで、ストライプ蛍光面を採用しているカラー陰極線管の場合には、特に、水平方向へのミスランディングが色ずれに大きく影響する。すなわち、電子ビームが受けるローレンツ力の内、その水平分力が問題となる。
当該水平分力Fxは次式で表される。

上式(1)において、e:電子の電荷量、By:Y軸方向(垂直方向)の磁束密度、Bz:Z軸方向(管軸方向)の磁束密度、Vz:電子ビームのZ軸方向の速度、Vy:電子ビームのY軸方向の速度である。
式(1)においてFxを決定する要素の内、eは勿論のことVzとVyもほとんど変化させようがない。したがって、Fxを小さくするためには、ByとBzのバランスを調整する必要がある。
ここで、陰極線管が管軸方向を南北に向けて設置されたような場合に、内部磁気シールドによって遮蔽しきれなかった地磁気によるBzが最大になると共に、もともとBzに比してByは小さいため、Fxが最も大きくなり、生じる色ずれも最大となる。
この場合、Bzに対するByの比率が高くなるようにBy、Bzを調整することにより、Fxを小さくでき、もって色ずれの低減を図ることができる。
このような調整を磁気シールドの形状の工夫によって行うべく、従来、種々の試みがなされている。
図1は、その一例を示している。図1に示すように、内部磁気シールド200は、垂直方向に対向する一対の長辺側板202,204と水平方向に対向する一対の短辺側板206,208とが接合されて略中空角錐台形をしてなるものである。そして、短辺側板206、208は、電子銃側となる部分に逆台形状に切り込まれた切込部210を有している。
このような内部磁気シールド200を備えた陰極線管を、その管軸方向が南北を向くように設置すると、当該内部磁気シールド200は、地磁気によって磁化され、その一方の磁極は、電子銃側開口部周縁とその近傍に現れる。なお、消磁処理(陰極線管の外側に設けられた消磁コイルに減衰交番電流を流して減衰交番磁界を発生させておこなうデガウス処理)を行うと、内部磁気シールドは、前記磁極がより強められて外部磁界(地磁気)を打ち消すような方向に磁化する。当該磁極の現れる領域に薄墨を付した。ここで、電子ビーム通過領域における磁束の内、電子銃側開口部のコーナー付近のものは、斜辺210Aとその近傍に現れる磁極から発生する磁束と外部磁界(地磁気)の磁束とのベクトルの合成によって形成され、上向き又は下向き(Y軸方向)に向く。その結果、式(1)における、Bzに対するByの比率が高くなり、Fxが小さくなって、画面コーナー付近の色ずれが低減されることとなる。
しかしながら、上記内部磁気シールド200は、上述したように画面コーナー付近の色ずれ低減には効果を発揮するものの、画面中央上下端部付近の色ずれ低減にはほとんど寄与しない。
上記した課題に鑑み、本発明は、画面のコーナー付近のみならず画面中央上下端部付近の色ずれも低減できる陰極線管を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明に係る陰極線管は、電子銃を収納したネック部を有するファンネルと、略長方形をしたパネルとが接合されてなるガラスバルブと、長方形断面を有する略中空角錐台形状をし、前記ガラスバルブ内に、小径の開口部側を電子銃側に向けて収納された内部磁気シールドとを有し、前記内部磁気シールドは、小径開口部において対向する第1の短縁辺と第2の短縁辺とがパネル側に落ち込んだ谷状をしていると共に、前記小径開口部において対向する第1の長縁辺と第2の長縁辺とが電子銃側に張り出した山状をしていることを特徴とする。これによれば、パネル(画面)のコーナ付近のみならずパネル(画面)中央上下端部付近における色ずれを低減することが可能となる。
また、前記パネルの内面と前記陰極線管の管軸との交点を含み当該管軸に直交する平面からの前記管軸方向の高さが、前記山状をした前記両長縁辺の頂部が最も高く、次いで、前記両長縁辺と前記両短縁辺の連接部、前記両短縁辺の谷底部の順となる関係になるように前記内部磁気シールドを構成することもできる。
さらに、前記小径開口部の縁辺の前記平面からの前記管軸方向の高さが、前記頂部から前記谷底部に向かって漸減するように前記内部磁気シールドを構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来技術に係る磁気シールド構体を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係るカラー陰極線管装置の断面図である。
図3は、上記カラー陰極線管装置における磁気シールド構体の斜視図である。
図4(a)は、上記磁気シールド構体を構成する内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図4(b)は、同下面図である。
図5(a)は、従来技術に係る内部磁気シールドの正面図であり、図5(b)は、同下面図である。
図6は、磁束密度の管軸成分に対する垂直成分の割合の電子ビーム軌道上での変化を示す図である。
図7は、電子ビームの位置ずれの測定箇所を示す図である。
図8は、カラー陰極線管に対し、管軸方向に外部磁界をかけたときの画面各部における電子ビームの水平方向の位置ずれ量の実測結果を示す図である。
図9(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図9(b)は、一変形例に係る同下面図である。
図10(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図10(b)は、同下面図である。
図11(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図11(b)は、同下面図である。
図12(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図12(b)は、同下面図である。
図13(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図13(b)は、同下面図である。
図14(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図14(b)は、同下面図である。
図15(a)は、一変形例に係る内部磁気シールドをモデル化した正面図であり、図15(b)は、同下面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図2は、実施の形態に係るカラー陰極線管装置2の概略構成を示す断面図である。なお、カラー受像管装置2は、アスペクト比が4:3で対角サイズが29インチのカラー陰極線管装置である。
図2に示すように、カラー陰極線管装置2は、カラー陰極線管4と偏向ヨーク6とを備えている。
本明細書において、Z軸をカラー陰極線管4の管軸、Z軸と水平方向に直交する軸をX軸(図2では不図示)、Z軸と垂直方向に直交する軸をY軸として、X−Y−Z直交座標系を定めることとする。また、本明細書では、管軸(Z軸)を境界として上下を規定し、パネル側から見たときの管軸(Z軸)を境界として左右を規定する。
カラー陰極線管4は、略長方形をしたガラスパネル(以下、単に「パネル」と言う。)8とガラスファンネル(以下、単に「ファンネル」と言う。)10とが接合されてなるガラスバルブ12を有する。
ファンネル10のネック部14内には、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応する3本の電子ビーム18を水平方向所定の間隔で管軸方向に射出するインライン型電子銃20が収納されている。
パネル8の内面には、赤・緑・青の蛍光体が縦縞状(ストライプ状)に塗布されてなる(配列された)蛍光体スクリーン22が形成されている。
また、長方形枠体をしたフレーム24に支持されて、色選別電極であるシャドウマスク26が蛍光体スクリーン22とほぼ平行に設けられいる。シャドウマスク26は、垂直方向に張力の掛けられた鉄製テンションマスクである。なお、シャドウマスクとして、張力を掛けていないプレスタイプのマスクを用いても構わない。
図示はしていないが、ファンネル10外周に、上下に対向させて一対の消磁コイルが設けられている。当該消磁コイルに減衰交番電流を通電して減衰交番磁界を発生させることにより、後述する磁気シールド構体に外部磁界(地磁気)の影響を軽減するような磁化を起こさせることができる(デガウス処理)。
偏向ヨーク6は、ファンネル10外周に設けられており、電子銃20から射出される3本の電子ビーム18を上下・左右に偏向し、ラスタースキャン方式で蛍光体スクリーン22を走査させるものである。
上記電子ビーム18の通過領域を取り囲むように配された内部磁気シールド28が前記フレーム24に支持され、ガラスバルブ12内に収納されている。
ここで、内部磁気シールド28とフレーム24とシャドウマスク26との組立体を磁気シールド構体30と称することとする。なお、フレーム24には熱延鋼板が用いられ、内部磁気シールド28には軟鉄が用いられる。
図3に、磁気シールド構体30の斜視図を示す。なお、煩雑さを避けるため、図3においてシャドウマスク26はその輪郭のみで表している。
図3に示すように、内部磁気シールド28は、全体的に、長方形断面を有する略中空角錐台形状をしている。すなわち、垂直方向に対向して配された一対の長辺側板32,34と水平方向に対向して配された一対の短辺側板36,38とが切頭角錐面を成すように接合されて構成されている。
上記のように略中空角錐台形をした内部磁気シールド28の、大径の開口部側にはスカート40,42,44,46,…が延設されている。内部磁気シールド28は、当該スカート40,…においてフレーム24とスポット溶接によって接合されている。また、内部磁気シールド28の水平方向両端部部分とフレーム24とで挟持するように、短冊状をしたエレクトロンシールド板48,50が設けられている。エレクトロンシールド板48,50は、水平方向両端部側にオーバースキャンされた電子ビームを遮蔽するものである。
短辺側板36,38の電子銃20側縁辺(以下、「短縁辺」と言う。)52,54は、パネル8側に逆台形状に落ち込んだ谷状に形成されている。
一方、長辺側板32,34の電子銃20側縁辺(以下、「長縁辺」と言う。)56,58は、鈍角二等辺三角形状に張り出した山状に形成されている。
また、短縁辺52,54と長縁辺56,58は、その連接部60,62,64,66において、段差を生じることなく連続して連なっている。これに加えて、パネル8内面と管軸との交点を含み当該管軸に直交する仮想平面(X−Y平面)からの管軸方向の高さが、長縁辺56,58の頂部56a,58aが最も高く(両頂部56a,58bは同じ高さ)、次いで、前記連接部60,62,64,66(連接部は全て同じ高さ)、短縁辺52,54の谷底部52a,54b(両谷底部52a,54bは同じ高さ)の順となる関係を有している。さらに、小径の開口部における縁辺の前記仮想平面からの管軸方向の高さが、前記頂部56a,58aから前記谷底部52a,54bに向かって漸減している。
上記のように構成された内部磁気シールド28を有するカラー陰極線管4によれば、画面のコーナー(四隅)付近のみならず、画面中央上下端部付近の色ずれも低減することが可能となる。このことを、図1で示した従来の内部磁気シールド200を有するカラー陰極線管と比較しながら説明する。
カラー陰極線管をその管軸が南北を向くように設置すると、内部磁気シールド内に進入する地磁気による磁束が最大となる。また、地磁気中に置かれた内部磁気シールドは磁化し、この場合には、N極、S極の磁極の内、一方の磁極は、内部磁気シールドの小径の開口端部縁辺およびその近傍に現れる。また、前記したデガウス処理を行うことにより、内部磁気シールドは、前記磁極がより強められたかたちで、地磁気を打ち消すように磁化される。図3および図1において、当該磁極の現れる領域に薄墨を付した。
図3や図1に示す内部磁気シールドにおいて、小径の開口部から進入する磁力線の内、開口部縁辺近くを通過する磁力線の流れは、上記磁極から発生する磁力の影響を大きく受け、当該磁極の方へと曲げられる。
このとき、磁力線は管軸方向に流入するのであるから、当該管軸方向に受ける磁極の影響が長ければ長いほど(長距離になるほど)、積分効果により、一層大きく曲げられることとなる。
図1に示す従来の内部磁気シールド200では、斜辺210A近傍に現れる磁極によって、小径の開口部コーナー近傍の磁束212,214の流れは管軸方向に長く影響を受け(積分効果)、垂直上方または下方へと曲げられる。すなわち、式(1)におけるBzが減少しその分Byが増加することとなる。
このことを、言葉を変えて説明すると以下のようになる。
内部磁気シールドの周囲の磁束は、内部磁気シールドの端部に現れる磁極から発生する磁束と地磁気による磁束との合成(ベクトル合成)によって形成される。このうち、内部磁気シールドのコーナー部近傍の磁束は、上述した理由から内部磁気シールドに向かって垂直上方または下方へと向く。図3や図1に示す内部磁気シールドにおいて、切り込み部の斜辺210A(図1)は、電子銃側開口部のコーナー部から略管軸方向に延設されているので、磁極は、略管軸方向に長い範囲に渡って形成される。そのため、式(1)におけるByの値が積分効果によって大きくなる。換言すると、内部磁気シールドの影響を受けていない状態の地磁気による磁束の管軸成分をBzとすると当該Bzの一部が上記磁極の影響を受けてByに変換されるのである。
その結果、Fxが減少して、画面コーナー付近における色ずれが低減されることとなる。
一方、長縁辺216の中央付近における磁束218は、当該長縁辺216近傍に現れる磁極によって、垂直方向上方へ曲げられるものの、影響をうける管軸方向の距離は短いので、BzがByに変換される割合(Byの積分値)は小さい。したがって、画面中央部上下端部付近における色ずれはあまり低減されない。なお、当該磁束218は、前記斜辺210Aからは、遠く離れているので、当該斜辺210A近傍の磁極の影響はあまり受けない。
これに対し、図3に示す実施の形態に係る内部磁気シールド28では、画面コーナー付近のみならず、画面中央部上下端部付近の色ずれが低減されることとなる。画面コーナー付近の色ずれが低減される理由は、上述した従来の磁気シールドにおけるのと基本的に同じなのでその説明については省略する。
図3において、長縁辺56の中央付近に進入する磁束は、当該長縁辺56に現れる磁極によって、垂直方向上方へ曲げられる。しかも、当該長縁辺56は、電子銃20側に張り出した二等辺三角形状に形成されている。したがって、当該磁束は、管軸方向において当該二等辺三角形のほぼ高さに相当する長さに渡って当該磁極の影響を受ける。その結果、従来の内部磁気シールドよりも、BzがByに変換される割合(Byの積分値)が大きくなって、画面中央部上下端部付近における色ずれがより低減されることとなる。
ここで、本願発明者は、実施の形態に係る内部磁気シールド28と従来の内部磁気シールド200との間で、Byの分布(BzのByへの変換効果)を確認すべく、画面中央下端部に到達する電子ビーム軌道上におけるByの値をそれぞれ測定した。
測定に供した内部磁気シールドをモデル化したものを図4と図5にそれぞれ示す。
図4は、図3に示す実施の形態に係る内部磁気シールド28をモデル化した図であり、(a)は正面図を(b)は下面図を示している。図4に示す諸寸法は、L1=120mm、L2=170mm、W1=236mm、h1=150mm、h2=30mmである。
図5は、図1に示す従来の内部磁気シールド200をモデル化した図であり、(a)は正面図を(b)は下面図を示している。図5に示す諸寸法は、L3=140mm、W2=200mm、h3=150mmである。
両内部磁気シールド共、軟鉄製とし、シャドウマスク(テンションマスク)が取り付けられたフレームに接合して磁気シールド構体とした上で、測定に供した。なお、両内部磁気シールドに対して用いたフレームとシャドウマスクは同じものである。また、測定に先立ち、前記したデガウス処理を行った。
両磁気シールド構体に対し、管軸方向に磁界をかけ、画面中央下端部に到達する電子ビーム軌道上におけるByの値をそれぞれ測定した。そして、ByのBz[磁気シールドの影響を受けていない状態の地磁気管軸成分(以下、単に「地磁気管軸成分」と言う。)]に対する割合[%]を算出して、グラフを作成した。
当該グラフを図6に示す。
縦軸は磁束密度の地磁気管軸成分Bzに対する垂直成分Byの百分率[(By/Bz)×100]を示している。負の値をとるのは、上向きを正に下向きを負にしているからである。
横軸は、シャドウマスクを基準に、当該マスク面から電子ビームの偏向中心までの距離を100%とした場合の、マスク面(0%)から電子銃側に向かう管軸方向の距離をパーセンテージで示している。なお、磁気シールド構体で取り囲まれるのは、0〜80%の範囲である
図6から、従来のものも実施の形態のものも、内部磁気シールドの入り口手前20%(グラフ上100%の位置)付近から急激に、Byが負側に大きくなっている。これは、磁極の影響が現れた結果である。しかし、その程度は、実施の形態に係る内部磁気シールド28の方が大きい。
電子ビームは、蛍光体スクリーンに至る間、ずっと地磁気その他の外部磁界によるローレンツ力を受け、その間の累積結果が蛍光体スクリーン上のランディング位置ずれとなって現れる。すなわち、水平方向の位置ずれに関していえば、偏向中心から蛍光体スクリーン面までの軌道上で受ける前記Fxの積分値で決定される。従来の内部磁気シールド200に対して、実施の形態に係る内部磁気シールド28では、100〜55%間の圧倒的な差が、ランディング位置ずれ量の差となって現れ、その結果、色ずれの低減が図れるのである。
本願発明者は、画面(蛍光体スクリーン)上における電子ビームの水平方向の位置ずれ量の実測を行った。
測定位置は、図7に示すように、画面コーナ部(以下、単に「コーナ部」と言う。)、画面中央上下端部(以下、「NS部」と言う。)、コーナ部とNS部の中間部(以下、「NNE部」と言う。)である。
カラー陰極線管に対し、管軸方向に外部磁界をかけたときの上記各部における位置ずれ量の実測結果を図8に示す。
図8から明らかなように、NS部はもちろんのこと、NNE部とコーナ部でも色ずれが低減されることがわかる。
また、カラー陰極線管に対し、水平方向(X軸方向)に外部磁界をかけたときのコーナ部における水平方向の位置ずれ量についても測定を行った。測定結果は、従来の内部磁気シールド200を用いた場合も、実施の形態の内部磁気シールド28を用いた場合も共に、20μmであった。
実施の形態に係るカラー陰極線管によれば、上述した色ずれ低減効果に加え、以下のような効果も奏する。
すなわち、地磁気による電子ビームのミスランディングを小さく抑えることができるので、ブラックマトリックスによるガードバンド幅を縮小して、輝度コントラストを向上させることができる。
地磁気による電子ビームのミスランディングを低減する方法として、一般的に、シャドウマスク(色選別電極)の厚みを増し、もって、磁気シールド構体全体の管軸磁界シールド効果を向上させることが行われている。これに対し、実施の形態では、上述したように、内部磁気シールドの工夫によって、管軸磁界による電子ビームのミスランディングを小さく抑えることができるので、その分、シャドウマスクの厚みを薄くすることができる。その結果、電子ビームのシャドウマスク通過率が向上し、輝度が高くなる。また、シャドウマスクの薄板化により、孔のエッチングが容易となって、孔のファインピッチ化やシャドウマスクの低コスト化を達成することもできる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限定されないことは勿論であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できるものである。特に、内部磁気シールドにおける電子銃側開口部(小径の開口部)の形状については、種々の変形例が考えられる。
当該変形例を図9〜図14に示す。いずれの図においても(a)は、内部磁気シールドの正面図を、(b)は下面図をそれぞれ示しており、図4と同様な表現とした図である。
(1)図9に示す内部磁気シールド110は、短縁辺112を電子銃側に落ち込んだ逆台形状とし、長縁辺114をパネル側に張り出した台形状としたものである。
(2)図10に示す内部磁気シールド120は、短縁辺122を電子銃側に落ち込んだ「U」字状(又は、弓状)とし、長縁辺124をパネル側に張り出した弧状としたものである。
(3)図11に示す内部磁気シールド130は、短縁辺132を電子銃側に落ち込んだ「V」字状とし、長縁辺134をパネル側に張り出した鈍角二等辺三角形状としたものである。
(4)図12に示す内部磁気シールド140は、短縁辺142を電子銃側に落ち込んだ逆台形状とし、長縁辺144をパネル側に張り出した階段状としたものである。
(5)図13に示す内部磁気シールド150は、短縁辺152を電子銃側に落ち込んだ「U」字状(又は、弓状)とし、長縁辺154をパネル側に張り出した鈍角二等辺三角形状としたものである。
(6)図14に示す内部磁気シールド160は、短縁辺162を電子銃側に落ち込んだ逆台形状とし、長縁辺164をパネル側に張り出した二重三角山状としたものである。すなわち、長縁辺164は、図14に示すように、鈍角二等辺三角形の頂部近傍を底辺に平行に切除し、当該切除部分に、前記鈍角三角形よりも頂角の小さい(きつい)二等辺三角形を継ぎ足した形状に形成されている。
(7)図15に示す内部磁気シールド170は、短縁辺172を電子銃側に落ち込んだ逆台形状とし、長縁辺174をパネル側に張り出した台形状としたものにおいて、長縁辺174を含む長辺側板175に、当該長縁辺174の略中心からパネル側に切れ込んだ幅3mm、長さ(深さ)20mm程度のスリット176を設けたものである。この構造により、カラー陰極線管に対し、管軸方向及び水平方向に外部磁界をかけたときの電子ビームの水平方向の位置ずれ、特にコーナー部における位置ずれをさらに低減することができる。
なお、上記のようなスリットは、内部磁気シールド170に限らず、内部磁気シールド28、110、120.130、140、150、160でも設けるようにしても構わない。
(8)短縁辺と長縁辺の形状の組合せは、ここまで説明してきたものに限らず、内部磁気シールド28、110、120.130、140、150、160、170の相互間で任意に組み替えても構わない。例えば、長縁辺を図2に示すような鈍角二等辺三角形の山状とし、短縁辺は、U字(図10)またはV字(図11)の形状をした谷状とすることとしても構わない。また、長縁辺を鈍角二等辺三角形の山状とし、図示はしないが、短縁辺を円弧の形状に落ち込んだ谷状としても良い。
なお、上記実施の形態の内部磁気シールド28のみならず、変形例に係る内部磁気シールド110、120.130、140、150、160、170も、電子ビームの位置ずれの管軸に関する対称性を確保するため、短辺側板はX−Z平面に関し、長辺側板はY−Z平面に関して対称形をなしている。
また、上記実施の形態の内部磁気シールド28と同様に、変形例に係る内部磁気シールド110、120.130、140、150、160、170のいずれにおいても、小径の開口部における縁辺の前記仮想平面(X−Y平面)からの管軸方向の高さが、山状をした長縁辺の頂部から谷状をした短縁辺の谷底部に向かって漸減している。ここで、「高さが〜漸減している。」とは、頂部から谷底部に向かう途中で少なくとも高さが増加することの無いことを意味するものであり、途中に平坦な区間(高さが一定のまま推移する区間)を含んでもよい趣旨である。したがって、「高さが〜漸減している。」といえば、例えば、図12に示すように、長縁辺が階段状に形成されている構成も含むのである。要は、長縁辺がその全長に渡り全体的に山状をしており、短縁辺がその全長に渡り全体的に谷状をしていればよいのである。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明に係る陰極線管は、電子ビームのミスランディングに起因する色ずれの低減を必要とするカラー陰極線管に適する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃を収納したネック部を有するファンネルと、略長方形をしたパネルとが接合されてなるガラスバルブと、
長方形断面を有する略中空角錐台形状をし、前記ガラスバルブ内に、小径の開口部側を電子銃側に向けて収納された内部磁気シールドとを有し、
前記内部磁気シールドは、
小径開口部において対向する第1の短縁辺と第2の短縁辺とがパネル側に落ち込んだ谷状をしていると共に、前記小径開口部において対向する第1の長縁辺と第2の長縁辺とが電子銃側に張り出した山状をしていることを特徴とする陰極線管。
【請求項2】
前記パネルの内面と前記陰極線管の管軸との交点を含み当該管軸に直交する平面からの前記管軸方向の高さが、前記山状をした前記両長縁辺の頂部が最も高く、次いで、前記両長縁辺と前記両短縁辺の連接部、前記両短縁辺の谷底部の順となる関係になるように前記内部磁気シールドが構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の陰極線管。
【請求項3】
前記小径開口部の縁辺の前記平面からの前記管軸方向の高さが、前記頂部から前記谷底部に向かって漸減していることを特徴とする請求の範囲第2項記載の陰極線管。
【請求項4】
前記両短縁辺の前記谷状と前記両長縁辺の前記山状は、各々の縁辺の中心に対して対称形を成していることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の陰極線管。
【請求項5】
前記両短縁辺と前記両長縁辺は、各々の端部において連続していることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の陰極線管。
【請求項6】
前記両短縁辺は逆台形、U字、V字、円弧の内のいずれか一の形状の谷状をしていると共に、前記両長縁辺は鈍角二等辺三角形の山状をしていることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載の陰極線管。
【請求項7】
前記略中空角錐台形状は、前記第1の長縁辺を含む第1の長辺側板と前記第2の長縁辺を含む第2の長辺側板とが対向して配され、前記第1の短縁辺を含む第1の短辺側板と前記第2の短縁辺を含む第2の短辺側板とが対向して配されて形成されており、
前記第1の長辺側板と前記第2の長辺側板は、それぞれの長辺縁の中心部から前記パネル側に切れ込んだスリットを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の陰極線管。
【請求項8】
前記内部磁気シールドを、大径側端部で支持する方形フレームと、
前記方形フレームに支持されるテンションマスクとを有し、
前記パネル内面には赤・緑・青の蛍光体が縦縞状に配列されてなる蛍光体スクリーンが形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載の陰極線管。

【国際公開番号】WO2005/006382
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511555(P2005−511555)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009895
【国際出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】