陳列棚に搭載した商品の加温具
【課題】商品の搭載位置の相違によって、各商品に温度差が生じないように加温する。
【解決手段】陳列棚に敷設する面状発熱体1を複数の区画に分け、一部の区画と他の区画における発熱層の厚さを相違させることによって、区画の発熱温度に差を設ける。これにより外気の影響で商品が冷え易い前面周辺部分12bの発熱温度を高くすると共に、熱が篭り易く商品が熱くなり過ぎる中央部分12aの発熱温度を低くする。したがって商品の搭載位置の相違によらず、全ての商品を均等に加温する。
【解決手段】陳列棚に敷設する面状発熱体1を複数の区画に分け、一部の区画と他の区画における発熱層の厚さを相違させることによって、区画の発熱温度に差を設ける。これにより外気の影響で商品が冷え易い前面周辺部分12bの発熱温度を高くすると共に、熱が篭り易く商品が熱くなり過ぎる中央部分12aの発熱温度を低くする。したがって商品の搭載位置の相違によらず、全ての商品を均等に加温する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンビニエンスストアの陳列棚に搭載した商品の加温具に関し、特に区画によって発熱層の厚みを相違させた面状発熱体を備えた陳列棚に搭載した商品の加温具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば店舗においては、従来から飲料水や食品等の商品の陳列棚に発熱構造を設けて、これらを熱したり、熱が冷めないようにしたりしている。この発熱構造としては、棚やケース本体が発熱する陳列ケースや、内部の空気を循環させて全体的に温度を上げるものがある(例えば特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1は、棚やケース本体の前面にパターン状に塗布した導電膜層に通電して、棚に搭載した商品を均等に発熱する陳列ケースが記載されている。また特許文献2は、天板等にヒータを設け、収納庫内の空気をファンにより循環させて商品を保温できる構造が記載されている。
【0004】
また区画によってニクロム線の配設密度が異なる陳列棚用加温具が使用されている。この陳列棚用加温具は、スチール等のプレートの裏面に、間隔を変えてニクロム線を配設し、間隔の狭い区画の放熱温度を高くして、間隔が広い区画の放熱温度を低くすることによって、中央に熱が篭らないようにして商品を均等に加温するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−000176号公報
【特許文献2】特開2009−34208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した従来の陳列棚の発熱構造には、次の改良すべき課題がある。すなわちパターン状に塗布した導電膜層によって均等に発熱させたとしても、陳列棚のドアを開けると、ケース内の熱が逃げると共に外気に直接触れるため、ドア付近に置いた商品の温度が低下してしまう。また導電膜層をパターン状に塗布する手段では、加熱温度にバラツキが生じないようにするためには、パターンや間隔をきめ細かく調整する必要があるため、製造コストが嵩む。
【0007】
またファンで空気を循環させても、棚や商品自体が障害になって、各棚の領域全体に空気を行き届かせることができず、商品を均等な温度に維持することは困難である。
【0008】
さらにニクロム線の配設密度が異なる陳列棚用加温具は、スチール等のプレートの裏面にニクロム線を這わせ、さらにこのニクロム線をカバーするためにコストが嵩む。またニクロム線とこのニクロム線のカバーとの厚さが大きくなって、商品の陳列領域を狭めてしまう。また重量が重くなるため、陳列棚への設置に手間がかかる。さらにニクロム線の消費電力は多いため、連続稼動させると光熱費が増大してしまう。
【0009】
そこで本発明の第1の目的は、商品の搭載位置にかかわらず、商品を均等に加温することにある。また第2の目的は、既存の陳列棚にも容易に適用できることにある。また第3の目的は、消費電力を削減して省エネを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の特徴は、区画によって発熱層の厚さを相違させることにある。すなわちこの陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有している。上記発熱層は、複数の区画を有し、一部の上記区画における発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違する。
【0011】
ここで商品を取り出す陳列棚の前面の開口付近や右側面及び左側面は、外気に触れ易いため、その周辺に置いた商品は、温度が低くなる傾向がある。反対に、陳列棚の奥や中央は熱が篭り易く、これらに置いた商品は、温度が上昇し過ぎる傾向がある。
【0012】
そこで上記陳列棚は、前面が開口しているものであって、上記複数の区画は、中央部分と、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、上記周辺部分は、上記中央部分の前側に位置する前部周辺部分と、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分と、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分と、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分とからなる。上記発熱層の厚さは、上記前部周辺部分と右側周辺部分と左側周辺部分、後部周辺部分、及び中央部分の順に厚くしてあり、上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に、それぞれ設けてある構造が望ましい。すなわち発熱層が厚い周辺部分における発熱温度を高くすると共に、発熱層が順に薄い後部周辺部分と中央部分とにおける発熱温度を低くすることによって、全ての商品を均等に加温することができる。
【0013】
また上記複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に絶縁されており、上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に替えて、上記複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてあるようにしてもよい。これにより複数の区画における厚さの異なる発熱層に対して、きめ細かく発熱層の温度を設定することができる。
【0014】
ところで発熱層の厚さを相違させる構造とは別の手段として、発熱層の表面を断熱層によって部分的に覆うことにより、同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
そこで本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有している。上記発熱層は、複数の区画を有し、一部の上記区画における発熱層の表面には、断熱層を設けるようにしてもよい。これにより一部の区画における発熱層の放熱を、断熱層で抑制し、例えば陳列棚の温度を区画毎に調整することができる。
【0016】
さらに上記発熱層は、導電性物質を塗布したものであることが望ましい。これによりさらに薄肉かつ軽量な面状発熱体を、容易に形成することができるため、商品の陳列スペースをより一層確保できると共に、製造コストの低減が可能となる。
【0017】
ここで「陳列棚」とは、商品を陳列したり搭載したりするものを意味し、例えばその前面、後面、右側面、左側面及び上面のうち少なくとも一つの面に商品の取り出しや補充をする開口を有するものが該当する。なお、その開口に、扉や引き戸や蓋が有っても無くてもよい。またこの開口を有する面は、全面が開放するものばかりでなく、一部分が窓となって開くものでもよい。
【0018】
また「商品」は、ペットボトル等の飲料品、菓子や惣菜等の加工食品、あるいはその他の温かい状態で販売等するものが該当する。さらに「面状発熱体」は、平面形状のものに限らず、球面あるいは屈曲した面形状であってもよく、さらには可撓性のものであってもよい。
【0019】
また「それぞれ相互に絶縁」とは、上記複数の区画における発熱層同士が接触しないように隙間を設けることや、絶縁素材で発熱層同士を隔てることを意味する。さらに「断熱層」は、例えば発熱層の表面に熱を遮断する物質を塗布したり、断熱シート等を貼り付けたりしたものが該当する。
【0020】
次に、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の作用について説明する。
【0021】
この加温具に備えた面状発熱体の発熱層は、一部の区画においてその厚さが相違するため、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極に通電すると、厚い区画ほど発熱する体積が大きいため放熱の温度が高く、薄い区画ほど発熱する体積が小さいため放熱の温度が低い。
【0022】
例えば前面の開口から商品を取り出す陳列棚においては、前部周辺部分等の周辺部分は、外気に熱を奪われ易い反面、放熱の温度が高いため、この周辺部分に置いた商品の温度は上がり易い。一方、中央部分等は熱が篭り易い反面、放熱の温度が低いため、この中央部分等に置いた商品の温度は上がり難く、熱くなり過ぎなることはない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、面状発熱体の発熱層の厚さを相違させることによって、例えば区画毎に放熱の温度を変えることができる。したがって陳列棚に搭載した商品の温度の上がり易さ、上がり難さ等に基づいて、複数の区画における発熱層の厚さを決めれば、全ての商品の温度を均一にすることができる。これにより購入者は搭載位置にかかわらず、飲食し易い温度で商品を得ることができる。
【0024】
特に熱が篭りやすい陳列棚の中央部分等における発熱層の厚さを薄くすることによって、この中央部分に置いた商品の温度の上昇を抑えて、周辺部分に置いた商品の温度と均等にすることができる。これにより購入者は、例えば熱くなり過ぎた商品を掴んで火傷することもなく、安全に取り出すことができる。また例えドア付近に置かれた商品であっても購入を躊躇することなく、飲食し易い温度で商品を得ることができる。
【0025】
また複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ電極を設けることによって、きめ細かく発熱層の温度を設定し、どの区画からも飲食し易い温度に商品を維持するために適切な放熱を得ることができる。これにより、置いた商品の種類の相違や、置き方に偏りがあった場合でも、全ての商品の温度を均一にすることができる。
【0026】
また一部の区画における発熱層の表面に断熱層を設けることによって、この区画の放熱を抑制し、例えば陳列棚の温度を区画毎に調整することができる。したがって、より製造コストが嵩まない簡易な構造の面状発熱体を加温具に備えることができる。
【0027】
さらに発熱層が導電性物質を塗布したものであれば、薄肉かつ軽量な面状発熱体を安価に製造することができると共に、稼動時の消費電力を抑えて省エネを図ることができる。これにより例えば24時間営業のコンビニエンスストアは光熱費を抑えつつ、購入者に飲食し易い温度の商品を常に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】面状発熱体の平面図である。
【図2】面状発熱体の断面図である。
【図3】面状発熱体の断面図である。
【図4】他の面状発熱体の平面図である。
【図5】他の面状発熱体の断面図である。
【図6】他の面状発熱体の断面図である。
【図7】他の面状発熱体の平面図である。
【図8】他の面状発熱体の断面図である。
【図9】他の面状発熱体の平面図である。
【図10】他の面状発熱体の断面図である。
【図11】他の面状発熱体の断面図である。
【図12】陳列棚に敷設した面状発熱体の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図1〜12を参照しつつ、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の構成と作用とについて説明する。まず最初に図1〜3を用いて、この加温具の構成を説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体1を備える。面状発熱体1は、絶縁シート11と、この絶縁シートの表面に設けた発熱層12と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極13とを有している。発熱層12は、複数の区画を有し、一部の区画におけるこの発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違している。なお面状発熱体1は、上述した構成要素以外に、例えば図示しない電源コード、ON−OFFスイッチ、温度センサー及び発熱の温度や時間を調整する制御装置を有している。
【0031】
ここで絶縁シート11は、例えば合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート:PET、乃至ポリカーボネート等のプラスチック類)、木質系素材、合成ゴム、ガラス、セラミック、耐熱ガラス、鉱物類、または耐熱プラスチックが使用可能である。
【0032】
また発熱層12は、発熱塗料等の導電性物質が好ましく、例えば植物原料カーボンやファインカーボン等と、有機質バインダーや無機質バインダー等とを混合したものを、フィルム状に形成して絶縁シート11の表面に貼着したり、塗料としてこの絶縁シートの表面に塗布したりする。このような構成により、薄肉かつ軽量な面状発熱体を形成できるため、高さのある商品の陳列領域を一層確保することができる。また持ち運びもしやすく、衝撃によって故障することも稀なため、既存の陳列棚にも容易に設けることができる。さらに消費電力の削減が実現する。
【0033】
また電極13は、銀または銅等の薄箔、あるいはこれらの金属粉を混合した塗料を、発熱層12における右側及び左側の両端部の表面に積層したものであって、電源(図示しない)と繋げてこの発熱層に通電する。
【0034】
なお発熱層12及び電極13の表面は、絶縁性と耐久性とを確保するために、図示しない耐水性の絶縁樹脂によって被膜してある。なお面状発熱体1は、合成樹脂製シート等とのサンドイッチ構造による防水機能を有していてもよい。さらに面状発熱体1は、これらの素材に限定されるものではなく、面形状を実現できるものであればよい。また面状発熱体1の寸法に限定はなく、例えばサイズが大きいもの(1000mm×2000mm等)や、サイズが小さいもの(300mm×750mm等)のいずれでもよく、複数の面従発熱体を繋ぎ合わせて一つの面状発熱体1を形成してもよい。また絶縁シート11、発熱層12、電極13及び図示しない耐熱絶縁フィルムや合成樹脂製シート等を積層して形成された面状発熱体1の厚さは、20μmから80μm程度であり、寸法に限定はないが極めて薄いものとなる。
【0035】
また陳列棚は、コンビニエンスストアに設置する。なおその他としては、スーパーマーケット、デパート、百貨店、弁当屋、総菜屋、ドラッグストアー等の飲食品を販売しているところに設置してもよい。これらの陳列棚の寸法や構造等に限定はない。さらに商品は、アルミ缶飲料である。なおその他には、スチール缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料及びビン飲料等や、フライドポテト、フライドチキン、からあげ、フランクフルト、ソーセージ及びたこ焼き等の軽食や惣菜でもよい。
【0036】
以下発熱層12の有する複数の区画及びこの発熱層の厚さについて、特に面状発熱体1を備えた加温具を前面が開口している陳列棚に設けたときの構成を取り上げ、その特徴を説明する。
【0037】
この場合の複数の区画は、発熱層12の中央部分12aと、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、この周辺部分は、この中央部分の前側に位置する前部周辺部分12bと、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分12cと、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分12dと、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分12eとからなる。
【0038】
ここで中央部分12aは、陳列棚の中央に位置し、この中央は熱が篭るため、商品の温度が上がり易く熱くなりすぎる傾向があるところである。また前部周辺部分12bは、陳列棚の前面の開口に最も近く、外気に直接触れて熱が奪われ易いため、商品の温度が上がり難く冷めてしまいがちなところである。また後部周辺部分12cは、陳列棚の後面に最も近く、外に近接しているが陳列棚の最も奥であるため熱が逃げず、商品の温度が上がり易く熱くなりがちなところである。また右側周辺部分12d及び左側周辺部分12eは、陳列棚の右側面及び左側面に最も近く、外に近接しているばかりでなく開口から外気が進入してくるため、熱が奪われ商品の温度が上がり難く冷めてしまいがちなところである。
【0039】
図2は、図1に示す面状発熱体1の断面A−Aを示す。さらに図3は、図1に示す面状発熱体1の断面B−Bを示す。図2及び図3に示すように、上述した陳列棚の区画毎に搭載した商品の温度の上がり易さ、上がり難さ等の加温特性に基づいて、前部周辺部分12bと右側周辺部分12dと左側周辺部分12e、後部周辺部分12c、及び中央部分12aの順に発熱層12を厚くしている。そして両端に設けた電極13からの電流が、厚さが異なる区画を流れることによって、各区画の放熱の温度に差が出る構造となっている。この構造により、層が厚いほど発熱する体積が大きいため放熱の温度が高く、薄いほど発熱する体積が小さいため放熱の温度が低い。
【0040】
ここで、上記の順に区画を厚くした発熱層12の、放熱の温度の試験結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
温度[1]:前部周辺部分12bと右側周辺部分12dと左側周辺部分12e
温度[2]:後部周辺部分12c
温度[3]:中央部分12a
この試験結果から明らかのように、発熱層の厚さの違いにより放熱の温度に差が生じることが判る。すなわち試験開始から5分後、温度[1]を測定した前部周辺部分12b等の周辺部分は65℃、温度[2]を測定した後部周辺部12cは40℃、温度[3]をを測定した中央部分12aは36℃であり、この放熱温度の差は、試験終了までの30分間持続している。また前部周辺部分12b等の周辺部分は、20分(95℃)から25分(140℃)の5分間で55℃上がっており、中央部分12a及び後部周辺部12cのどの試験時間帯よりも温度上昇率が高い。したがって、前部周辺部分12b等の周辺部に搭載した商品の温度は、最も上がり易いと共に、発熱層の厚さを調整すれば、例えば中央部分12a及び後部周辺部12cに搭載した商品の温度を上がり難くすることができることが確認できた。
【0043】
なお、一部の区画における発熱層の厚さと他の発熱層の厚さを相違させる方法は、例えば発熱層を重ね塗りする製法や、別途製造した発熱層を重ね合わせる製法を用いれば、容易に発熱層12を形成することができる。
【0044】
次に図4〜図6を用いて、加温具の他の構成を説明する。なお、図1〜図3を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0045】
図4、図5及び図6に示す面状発熱体101は、発熱層112の中央部分112aにおいて、この発熱層を縞模様状に設けたものである。これにより、中央部分112aに熱が篭ることを防止すると共に、この中央部分の放熱温度を上げて商品の温度を上げ易くすることができる。
【0046】
次に図7及び図8を用いて、加温具のさらなる他の構成を説明する。なお、図1〜図6を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0047】
図7に示すように、面状発熱体201において、複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に隔離されており、電極213a〜213eは、右側周辺部分212dの右側端及び左側周辺部分212eの左側端に替えて、複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてある。
【0048】
複数の区画の発熱層は、各区画の発熱層同士が接触しないように隙間を設けたり、絶縁素材で発熱層同士を隔てて設けたりして、それぞれ相互に絶縁させている。具体的には、図8に示すように、発熱層の中央部分212a及び後部周辺部分212cと右側周辺部分212d、この中央部分及びこの後部周辺部分と左側周辺部分212eは、発熱層同士が接触しないように隙間を設けている。
【0049】
次に図9〜図11を用いて、加温具のさらなる他の構成を説明する。なお、図1〜図8を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0050】
図9及び図10に示すように、この加温具が備える面状発熱体301における発熱層312は、複数の区画を有し、一部の区画である中央部分312a及び後部周辺部分312cの表面には、それぞれ断熱層314aと314cとが設けてある。
【0051】
ここで断熱層314a及び314cは、例えばアルミニウムのような金属箔の熱反射素材や、珪素、亜鉛、チタン、ランタン等の化合物またはこれらの複合物を主体とするセラミック粒子のような熱伝導率が低いだけでなく熱反射率が高い断熱塗料がよい。これらを用いることで、面状発熱体301を薄く保つことができると共に、その厚みを変えれば放熱の温度を調整することができる。
【0052】
そこで図11に示すように、熱が篭り易い中央部分312a及び後部周辺部分312cの表面に断熱層を設けると共に、この中央部分に設ける断熱層314aを、この後部周辺部分に設ける断熱層314cより厚くする。これにより厚いほうの断熱層314aからの放熱を、より一層抑制することができる。
【0053】
次に図12を用いて、陳列棚に搭載した商品の加温具の作用を説明する。
【0054】
この加温具は、前面、後面、右側面及び左側面を有する陳列棚に敷設した面状発熱体401の発熱により、陳列した缶飲料を加温する。この面状発熱体は、
図1〜図3において説明したものを使用している。
【0055】
これにより、前部周辺部分412bと右側周辺部分412dと左側周辺部分412eは、発熱層の放熱の温度が高く、外気等の影響を受けても缶飲料の温度は上がり易く、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0056】
また後部周辺部分412bは、発熱層の放熱の温度を抑えつつ、陳列棚内部の熱気と近接する外の気温とのバランスで、缶飲料の温度は上がり難く熱過ぎず、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0057】
一方、中央部分412aは、周辺部からの放熱により熱が篭り易い反面、発熱層の放熱の温度が低いため、缶飲料の温度は上がり難く熱過ぎず、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0058】
このように、面状発熱体401の発熱層412の厚さを相違させることによって、各区画からの放熱の温度を変えることができる。したがって陳列棚に搭載した缶飲料の温度の上がり易さと、上がり難さ等とに基づいて、複数の区画における発熱層の厚さを決めれば、全ての缶飲料の温度を均一にすることができる。これにより購入者は搭載位置にかかわらず、飲食し易い温度で缶飲料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具は、薄肉かつ軽量で設置が容易であるため、例えば一部の区画において放熱の温度差の利点を活かす価値がある小売業や卸売業のみならず、農作物や植物の栽培、動物や昆虫の飼育等の業界に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、101、201、301、401 面状発熱体
11、111、211、311、411 絶縁シート
12、112、212、312、412 発熱層
12a、112a、212a、312a、412a 中央部分
12b、112b、212b、312b、412b 前部周辺部分
12c、112c、212c、312c、412c 後部周辺部分
12d、112d、212d、312d、412d 右側周辺部分
12e、112e、212e、312e、412e 左側周辺部分
13、113、213a〜213e、313、413 電極
314a、314c 断熱層
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンビニエンスストアの陳列棚に搭載した商品の加温具に関し、特に区画によって発熱層の厚みを相違させた面状発熱体を備えた陳列棚に搭載した商品の加温具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば店舗においては、従来から飲料水や食品等の商品の陳列棚に発熱構造を設けて、これらを熱したり、熱が冷めないようにしたりしている。この発熱構造としては、棚やケース本体が発熱する陳列ケースや、内部の空気を循環させて全体的に温度を上げるものがある(例えば特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1は、棚やケース本体の前面にパターン状に塗布した導電膜層に通電して、棚に搭載した商品を均等に発熱する陳列ケースが記載されている。また特許文献2は、天板等にヒータを設け、収納庫内の空気をファンにより循環させて商品を保温できる構造が記載されている。
【0004】
また区画によってニクロム線の配設密度が異なる陳列棚用加温具が使用されている。この陳列棚用加温具は、スチール等のプレートの裏面に、間隔を変えてニクロム線を配設し、間隔の狭い区画の放熱温度を高くして、間隔が広い区画の放熱温度を低くすることによって、中央に熱が篭らないようにして商品を均等に加温するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−000176号公報
【特許文献2】特開2009−34208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した従来の陳列棚の発熱構造には、次の改良すべき課題がある。すなわちパターン状に塗布した導電膜層によって均等に発熱させたとしても、陳列棚のドアを開けると、ケース内の熱が逃げると共に外気に直接触れるため、ドア付近に置いた商品の温度が低下してしまう。また導電膜層をパターン状に塗布する手段では、加熱温度にバラツキが生じないようにするためには、パターンや間隔をきめ細かく調整する必要があるため、製造コストが嵩む。
【0007】
またファンで空気を循環させても、棚や商品自体が障害になって、各棚の領域全体に空気を行き届かせることができず、商品を均等な温度に維持することは困難である。
【0008】
さらにニクロム線の配設密度が異なる陳列棚用加温具は、スチール等のプレートの裏面にニクロム線を這わせ、さらにこのニクロム線をカバーするためにコストが嵩む。またニクロム線とこのニクロム線のカバーとの厚さが大きくなって、商品の陳列領域を狭めてしまう。また重量が重くなるため、陳列棚への設置に手間がかかる。さらにニクロム線の消費電力は多いため、連続稼動させると光熱費が増大してしまう。
【0009】
そこで本発明の第1の目的は、商品の搭載位置にかかわらず、商品を均等に加温することにある。また第2の目的は、既存の陳列棚にも容易に適用できることにある。また第3の目的は、消費電力を削減して省エネを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の特徴は、区画によって発熱層の厚さを相違させることにある。すなわちこの陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有している。上記発熱層は、複数の区画を有し、一部の上記区画における発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違する。
【0011】
ここで商品を取り出す陳列棚の前面の開口付近や右側面及び左側面は、外気に触れ易いため、その周辺に置いた商品は、温度が低くなる傾向がある。反対に、陳列棚の奥や中央は熱が篭り易く、これらに置いた商品は、温度が上昇し過ぎる傾向がある。
【0012】
そこで上記陳列棚は、前面が開口しているものであって、上記複数の区画は、中央部分と、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、上記周辺部分は、上記中央部分の前側に位置する前部周辺部分と、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分と、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分と、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分とからなる。上記発熱層の厚さは、上記前部周辺部分と右側周辺部分と左側周辺部分、後部周辺部分、及び中央部分の順に厚くしてあり、上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に、それぞれ設けてある構造が望ましい。すなわち発熱層が厚い周辺部分における発熱温度を高くすると共に、発熱層が順に薄い後部周辺部分と中央部分とにおける発熱温度を低くすることによって、全ての商品を均等に加温することができる。
【0013】
また上記複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に絶縁されており、上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に替えて、上記複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてあるようにしてもよい。これにより複数の区画における厚さの異なる発熱層に対して、きめ細かく発熱層の温度を設定することができる。
【0014】
ところで発熱層の厚さを相違させる構造とは別の手段として、発熱層の表面を断熱層によって部分的に覆うことにより、同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
そこで本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有している。上記発熱層は、複数の区画を有し、一部の上記区画における発熱層の表面には、断熱層を設けるようにしてもよい。これにより一部の区画における発熱層の放熱を、断熱層で抑制し、例えば陳列棚の温度を区画毎に調整することができる。
【0016】
さらに上記発熱層は、導電性物質を塗布したものであることが望ましい。これによりさらに薄肉かつ軽量な面状発熱体を、容易に形成することができるため、商品の陳列スペースをより一層確保できると共に、製造コストの低減が可能となる。
【0017】
ここで「陳列棚」とは、商品を陳列したり搭載したりするものを意味し、例えばその前面、後面、右側面、左側面及び上面のうち少なくとも一つの面に商品の取り出しや補充をする開口を有するものが該当する。なお、その開口に、扉や引き戸や蓋が有っても無くてもよい。またこの開口を有する面は、全面が開放するものばかりでなく、一部分が窓となって開くものでもよい。
【0018】
また「商品」は、ペットボトル等の飲料品、菓子や惣菜等の加工食品、あるいはその他の温かい状態で販売等するものが該当する。さらに「面状発熱体」は、平面形状のものに限らず、球面あるいは屈曲した面形状であってもよく、さらには可撓性のものであってもよい。
【0019】
また「それぞれ相互に絶縁」とは、上記複数の区画における発熱層同士が接触しないように隙間を設けることや、絶縁素材で発熱層同士を隔てることを意味する。さらに「断熱層」は、例えば発熱層の表面に熱を遮断する物質を塗布したり、断熱シート等を貼り付けたりしたものが該当する。
【0020】
次に、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の作用について説明する。
【0021】
この加温具に備えた面状発熱体の発熱層は、一部の区画においてその厚さが相違するため、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極に通電すると、厚い区画ほど発熱する体積が大きいため放熱の温度が高く、薄い区画ほど発熱する体積が小さいため放熱の温度が低い。
【0022】
例えば前面の開口から商品を取り出す陳列棚においては、前部周辺部分等の周辺部分は、外気に熱を奪われ易い反面、放熱の温度が高いため、この周辺部分に置いた商品の温度は上がり易い。一方、中央部分等は熱が篭り易い反面、放熱の温度が低いため、この中央部分等に置いた商品の温度は上がり難く、熱くなり過ぎなることはない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、面状発熱体の発熱層の厚さを相違させることによって、例えば区画毎に放熱の温度を変えることができる。したがって陳列棚に搭載した商品の温度の上がり易さ、上がり難さ等に基づいて、複数の区画における発熱層の厚さを決めれば、全ての商品の温度を均一にすることができる。これにより購入者は搭載位置にかかわらず、飲食し易い温度で商品を得ることができる。
【0024】
特に熱が篭りやすい陳列棚の中央部分等における発熱層の厚さを薄くすることによって、この中央部分に置いた商品の温度の上昇を抑えて、周辺部分に置いた商品の温度と均等にすることができる。これにより購入者は、例えば熱くなり過ぎた商品を掴んで火傷することもなく、安全に取り出すことができる。また例えドア付近に置かれた商品であっても購入を躊躇することなく、飲食し易い温度で商品を得ることができる。
【0025】
また複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ電極を設けることによって、きめ細かく発熱層の温度を設定し、どの区画からも飲食し易い温度に商品を維持するために適切な放熱を得ることができる。これにより、置いた商品の種類の相違や、置き方に偏りがあった場合でも、全ての商品の温度を均一にすることができる。
【0026】
また一部の区画における発熱層の表面に断熱層を設けることによって、この区画の放熱を抑制し、例えば陳列棚の温度を区画毎に調整することができる。したがって、より製造コストが嵩まない簡易な構造の面状発熱体を加温具に備えることができる。
【0027】
さらに発熱層が導電性物質を塗布したものであれば、薄肉かつ軽量な面状発熱体を安価に製造することができると共に、稼動時の消費電力を抑えて省エネを図ることができる。これにより例えば24時間営業のコンビニエンスストアは光熱費を抑えつつ、購入者に飲食し易い温度の商品を常に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】面状発熱体の平面図である。
【図2】面状発熱体の断面図である。
【図3】面状発熱体の断面図である。
【図4】他の面状発熱体の平面図である。
【図5】他の面状発熱体の断面図である。
【図6】他の面状発熱体の断面図である。
【図7】他の面状発熱体の平面図である。
【図8】他の面状発熱体の断面図である。
【図9】他の面状発熱体の平面図である。
【図10】他の面状発熱体の断面図である。
【図11】他の面状発熱体の断面図である。
【図12】陳列棚に敷設した面状発熱体の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図1〜12を参照しつつ、本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具の構成と作用とについて説明する。まず最初に図1〜3を用いて、この加温具の構成を説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、陳列棚に搭載した商品の加温具は、陳列棚に敷設する面状発熱体1を備える。面状発熱体1は、絶縁シート11と、この絶縁シートの表面に設けた発熱層12と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極13とを有している。発熱層12は、複数の区画を有し、一部の区画におけるこの発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違している。なお面状発熱体1は、上述した構成要素以外に、例えば図示しない電源コード、ON−OFFスイッチ、温度センサー及び発熱の温度や時間を調整する制御装置を有している。
【0031】
ここで絶縁シート11は、例えば合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート:PET、乃至ポリカーボネート等のプラスチック類)、木質系素材、合成ゴム、ガラス、セラミック、耐熱ガラス、鉱物類、または耐熱プラスチックが使用可能である。
【0032】
また発熱層12は、発熱塗料等の導電性物質が好ましく、例えば植物原料カーボンやファインカーボン等と、有機質バインダーや無機質バインダー等とを混合したものを、フィルム状に形成して絶縁シート11の表面に貼着したり、塗料としてこの絶縁シートの表面に塗布したりする。このような構成により、薄肉かつ軽量な面状発熱体を形成できるため、高さのある商品の陳列領域を一層確保することができる。また持ち運びもしやすく、衝撃によって故障することも稀なため、既存の陳列棚にも容易に設けることができる。さらに消費電力の削減が実現する。
【0033】
また電極13は、銀または銅等の薄箔、あるいはこれらの金属粉を混合した塗料を、発熱層12における右側及び左側の両端部の表面に積層したものであって、電源(図示しない)と繋げてこの発熱層に通電する。
【0034】
なお発熱層12及び電極13の表面は、絶縁性と耐久性とを確保するために、図示しない耐水性の絶縁樹脂によって被膜してある。なお面状発熱体1は、合成樹脂製シート等とのサンドイッチ構造による防水機能を有していてもよい。さらに面状発熱体1は、これらの素材に限定されるものではなく、面形状を実現できるものであればよい。また面状発熱体1の寸法に限定はなく、例えばサイズが大きいもの(1000mm×2000mm等)や、サイズが小さいもの(300mm×750mm等)のいずれでもよく、複数の面従発熱体を繋ぎ合わせて一つの面状発熱体1を形成してもよい。また絶縁シート11、発熱層12、電極13及び図示しない耐熱絶縁フィルムや合成樹脂製シート等を積層して形成された面状発熱体1の厚さは、20μmから80μm程度であり、寸法に限定はないが極めて薄いものとなる。
【0035】
また陳列棚は、コンビニエンスストアに設置する。なおその他としては、スーパーマーケット、デパート、百貨店、弁当屋、総菜屋、ドラッグストアー等の飲食品を販売しているところに設置してもよい。これらの陳列棚の寸法や構造等に限定はない。さらに商品は、アルミ缶飲料である。なおその他には、スチール缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料及びビン飲料等や、フライドポテト、フライドチキン、からあげ、フランクフルト、ソーセージ及びたこ焼き等の軽食や惣菜でもよい。
【0036】
以下発熱層12の有する複数の区画及びこの発熱層の厚さについて、特に面状発熱体1を備えた加温具を前面が開口している陳列棚に設けたときの構成を取り上げ、その特徴を説明する。
【0037】
この場合の複数の区画は、発熱層12の中央部分12aと、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、この周辺部分は、この中央部分の前側に位置する前部周辺部分12bと、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分12cと、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分12dと、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分12eとからなる。
【0038】
ここで中央部分12aは、陳列棚の中央に位置し、この中央は熱が篭るため、商品の温度が上がり易く熱くなりすぎる傾向があるところである。また前部周辺部分12bは、陳列棚の前面の開口に最も近く、外気に直接触れて熱が奪われ易いため、商品の温度が上がり難く冷めてしまいがちなところである。また後部周辺部分12cは、陳列棚の後面に最も近く、外に近接しているが陳列棚の最も奥であるため熱が逃げず、商品の温度が上がり易く熱くなりがちなところである。また右側周辺部分12d及び左側周辺部分12eは、陳列棚の右側面及び左側面に最も近く、外に近接しているばかりでなく開口から外気が進入してくるため、熱が奪われ商品の温度が上がり難く冷めてしまいがちなところである。
【0039】
図2は、図1に示す面状発熱体1の断面A−Aを示す。さらに図3は、図1に示す面状発熱体1の断面B−Bを示す。図2及び図3に示すように、上述した陳列棚の区画毎に搭載した商品の温度の上がり易さ、上がり難さ等の加温特性に基づいて、前部周辺部分12bと右側周辺部分12dと左側周辺部分12e、後部周辺部分12c、及び中央部分12aの順に発熱層12を厚くしている。そして両端に設けた電極13からの電流が、厚さが異なる区画を流れることによって、各区画の放熱の温度に差が出る構造となっている。この構造により、層が厚いほど発熱する体積が大きいため放熱の温度が高く、薄いほど発熱する体積が小さいため放熱の温度が低い。
【0040】
ここで、上記の順に区画を厚くした発熱層12の、放熱の温度の試験結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
温度[1]:前部周辺部分12bと右側周辺部分12dと左側周辺部分12e
温度[2]:後部周辺部分12c
温度[3]:中央部分12a
この試験結果から明らかのように、発熱層の厚さの違いにより放熱の温度に差が生じることが判る。すなわち試験開始から5分後、温度[1]を測定した前部周辺部分12b等の周辺部分は65℃、温度[2]を測定した後部周辺部12cは40℃、温度[3]をを測定した中央部分12aは36℃であり、この放熱温度の差は、試験終了までの30分間持続している。また前部周辺部分12b等の周辺部分は、20分(95℃)から25分(140℃)の5分間で55℃上がっており、中央部分12a及び後部周辺部12cのどの試験時間帯よりも温度上昇率が高い。したがって、前部周辺部分12b等の周辺部に搭載した商品の温度は、最も上がり易いと共に、発熱層の厚さを調整すれば、例えば中央部分12a及び後部周辺部12cに搭載した商品の温度を上がり難くすることができることが確認できた。
【0043】
なお、一部の区画における発熱層の厚さと他の発熱層の厚さを相違させる方法は、例えば発熱層を重ね塗りする製法や、別途製造した発熱層を重ね合わせる製法を用いれば、容易に発熱層12を形成することができる。
【0044】
次に図4〜図6を用いて、加温具の他の構成を説明する。なお、図1〜図3を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0045】
図4、図5及び図6に示す面状発熱体101は、発熱層112の中央部分112aにおいて、この発熱層を縞模様状に設けたものである。これにより、中央部分112aに熱が篭ることを防止すると共に、この中央部分の放熱温度を上げて商品の温度を上げ易くすることができる。
【0046】
次に図7及び図8を用いて、加温具のさらなる他の構成を説明する。なお、図1〜図6を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0047】
図7に示すように、面状発熱体201において、複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に隔離されており、電極213a〜213eは、右側周辺部分212dの右側端及び左側周辺部分212eの左側端に替えて、複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてある。
【0048】
複数の区画の発熱層は、各区画の発熱層同士が接触しないように隙間を設けたり、絶縁素材で発熱層同士を隔てて設けたりして、それぞれ相互に絶縁させている。具体的には、図8に示すように、発熱層の中央部分212a及び後部周辺部分212cと右側周辺部分212d、この中央部分及びこの後部周辺部分と左側周辺部分212eは、発熱層同士が接触しないように隙間を設けている。
【0049】
次に図9〜図11を用いて、加温具のさらなる他の構成を説明する。なお、図1〜図8を用いて説明した内容と異なる部分のみを説明する。
【0050】
図9及び図10に示すように、この加温具が備える面状発熱体301における発熱層312は、複数の区画を有し、一部の区画である中央部分312a及び後部周辺部分312cの表面には、それぞれ断熱層314aと314cとが設けてある。
【0051】
ここで断熱層314a及び314cは、例えばアルミニウムのような金属箔の熱反射素材や、珪素、亜鉛、チタン、ランタン等の化合物またはこれらの複合物を主体とするセラミック粒子のような熱伝導率が低いだけでなく熱反射率が高い断熱塗料がよい。これらを用いることで、面状発熱体301を薄く保つことができると共に、その厚みを変えれば放熱の温度を調整することができる。
【0052】
そこで図11に示すように、熱が篭り易い中央部分312a及び後部周辺部分312cの表面に断熱層を設けると共に、この中央部分に設ける断熱層314aを、この後部周辺部分に設ける断熱層314cより厚くする。これにより厚いほうの断熱層314aからの放熱を、より一層抑制することができる。
【0053】
次に図12を用いて、陳列棚に搭載した商品の加温具の作用を説明する。
【0054】
この加温具は、前面、後面、右側面及び左側面を有する陳列棚に敷設した面状発熱体401の発熱により、陳列した缶飲料を加温する。この面状発熱体は、
図1〜図3において説明したものを使用している。
【0055】
これにより、前部周辺部分412bと右側周辺部分412dと左側周辺部分412eは、発熱層の放熱の温度が高く、外気等の影響を受けても缶飲料の温度は上がり易く、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0056】
また後部周辺部分412bは、発熱層の放熱の温度を抑えつつ、陳列棚内部の熱気と近接する外の気温とのバランスで、缶飲料の温度は上がり難く熱過ぎず、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0057】
一方、中央部分412aは、周辺部からの放熱により熱が篭り易い反面、発熱層の放熱の温度が低いため、缶飲料の温度は上がり難く熱過ぎず、購入者は飲み易い頃合の温度となった缶飲料を手に入れることができる。
【0058】
このように、面状発熱体401の発熱層412の厚さを相違させることによって、各区画からの放熱の温度を変えることができる。したがって陳列棚に搭載した缶飲料の温度の上がり易さと、上がり難さ等とに基づいて、複数の区画における発熱層の厚さを決めれば、全ての缶飲料の温度を均一にすることができる。これにより購入者は搭載位置にかかわらず、飲食し易い温度で缶飲料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明による陳列棚に搭載した商品の加温具は、薄肉かつ軽量で設置が容易であるため、例えば一部の区画において放熱の温度差の利点を活かす価値がある小売業や卸売業のみならず、農作物や植物の栽培、動物や昆虫の飼育等の業界に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、101、201、301、401 面状発熱体
11、111、211、311、411 絶縁シート
12、112、212、312、412 発熱層
12a、112a、212a、312a、412a 中央部分
12b、112b、212b、312b、412b 前部周辺部分
12c、112c、212c、312c、412c 後部周辺部分
12d、112d、212d、312d、412d 右側周辺部分
12e、112e、212e、312e、412e 左側周辺部分
13、113、213a〜213e、313、413 電極
314a、314c 断熱層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、
上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有し、
上記発熱層は、複数の区画を有し、
一部の上記区画における発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違している
ことを特徴とする陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項2】
上記陳列棚は、前面が開口しており、
上記複数の区画は、中央部分と、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、
上記周辺部分は、上記中央部分の前側に位置する前部周辺部分と、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分と、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分と、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分とからなり、
上記発熱層の厚さは、上記前部周辺部分と右側周辺部分と左側周辺部分、後部周辺部分、及び中央部分の順に厚くしてあり、
上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に、それぞれ設けてある
ことを特徴とする請求項1に記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項3】
上記複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に絶縁されており、
上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に替えて、上記複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてある
ことを特徴とする請求項1または2に記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項4】
陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、
上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有し、
上記発熱層は、複数の区画を有し、
一部の上記区画における発熱層の表面には、断熱層が設けてある
ことを特徴とする陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項5】
上記発熱層は、導電性物質を塗布したものである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項1】
陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、
上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有し、
上記発熱層は、複数の区画を有し、
一部の上記区画における発熱層の厚さは、他の区画における発熱層の厚さと相違している
ことを特徴とする陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項2】
上記陳列棚は、前面が開口しており、
上記複数の区画は、中央部分と、この中央部分を取り巻く周辺部分とを有し、
上記周辺部分は、上記中央部分の前側に位置する前部周辺部分と、この中央部分の後側に位置する後部周辺部分と、この中央部分の右側に位置する右側周辺部分と、この中央部分の左側に位置する左側周辺部分とからなり、
上記発熱層の厚さは、上記前部周辺部分と右側周辺部分と左側周辺部分、後部周辺部分、及び中央部分の順に厚くしてあり、
上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に、それぞれ設けてある
ことを特徴とする請求項1に記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項3】
上記複数の区画における発熱層は、それぞれ相互に絶縁されており、
上記電極は、上記右側周辺部分の右側端及び左側周辺部分の左側端に替えて、上記複数の区画における発熱層の両端に、それぞれ設けてある
ことを特徴とする請求項1または2に記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項4】
陳列棚に敷設する面状発熱体を備え、
上記面状発熱体は、絶縁シートと、この絶縁シートの表面に設けた発熱層と、この発熱層の両端にそれぞれ設けた電極とを有し、
上記発熱層は、複数の区画を有し、
一部の上記区画における発熱層の表面には、断熱層が設けてある
ことを特徴とする陳列棚に搭載した商品の加温具。
【請求項5】
上記発熱層は、導電性物質を塗布したものである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の陳列棚に搭載した商品の加温具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−212079(P2011−212079A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80790(P2010−80790)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(593182923)丸和バイオケミカル株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(593182923)丸和バイオケミカル株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
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