説明

陽イオン性ポリマー分散液、前記分散液の調製方法およびその使用

本発明は、陽イオン性モノマー分画を最高で60重量%まで含むポリマーAと、75,000〜350,000 g/molの平均分子量を有する陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドをベースにした少なくとも1種のポリマー分散剤Bとを含有する水中水型ポリマー分散液に関する。本発明は、この分散液の調製方法、およびこの分散液の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最高で60重量%までの陽イオン性モノマー含有量を有し、微分散された、水溶性もしくは水膨潤性のポリマーAと、陽イオン性ポリマー分散剤Bを含有する連続的な水相とを含有する水中水型ポリマー分散液、この分散液の調製方法、およびこの分散液の(例えば、抄紙または固体の沈殿における)凝集剤としての使用にも関する。
【0002】
以下の本文において、略記「(メタ)アクリル(系)」は、アクリル(系)およびメタクリル(系)の両方を表す。例えば、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドとメタクリルアミドの両方を意味する。
【背景技術】
【0003】
水中水型ポリマー分散液、およびその調製は、従来技術において繰り返し記載されている。一般に、このような分散液は、水性溶液中の低分子量ポリマー分散液を、陽イオン性モノマー成分と混合し、次いでこれらを重合することによって調製される。本質的に試みられていることは、これらの調製時のレオロジーの問題を回避し、取扱いがより容易な水中水型分散液を得ることである。
【0004】
国際公開第WO98/14405号は、重合時に、コスモトロピック塩とカオトロピック塩またはアニオン性有機塩との混合物を単に存在させることにより、得られる水中水型分散液の粘度を低減することが可能であることを教示している。例えば、高分子量ポリマー分画中に20%〜83%の陽イオン性モノマー含有量を有する分散液と、180,000〜1,500,000の平均分子量を有するポリマー性分散剤との分散液が用いられる。上述した塩の添加にのかかわらず、陽イオン性モノマーの含有量とは無関係に、予想外に大規模な、制御不能な粘度上昇が、塩の含有量がわずかに逸脱した場合または陽イオン性モノマー成分が少量変動した場合に起こり得る。
【0005】
国際公開第WO98/31748号には、ジアミンとエピクロロヒドリンとの縮合生成物をベースにした低分子量ポリマーアミンをポリマー性分散剤として2重量%〜3重量%含有する陽イオン性水中水型分散液が記載されている。この分散液は安定であり、分散されたポリマーの割合が比較的高いにもかかわらず注ぐことができる。ただし、少なくとも10重量%の水溶性無機塩と有機酸とを、調製時、分散したモノマー溶液の重合の前に添加することを条件とする。このような多量の塩は、水中水型分散液の多くの意図された用途に受け入れられないものである。
【0006】
国際公開第WO98/31749号は、重合時にポリヒドロキシ化合物(例えば、ポリエチレングリコール)を追加的に用いる点で、同第WO98/31748号とは異なる。加えて、ポリ−DADMACおよびポリジシアンジアミドが、例えばポリマー性分散剤として用いられる。得られる水中水型分散液(場合により塩も含む)は、注ぐことができる、貯蔵した場合にいかなる不可逆的な凝集も呈さない。しかし、さらに希釈すると、この分散液は特定のレベル超えてさらに希釈しなければならなくなる。なぜなら、そうしないと、希釈中に、希釈していない水中水型分散液と比較して、ブルックフィールド粘度の望ましくない大きな上昇が起こるからである。しかし、このことは、水中水型分散液を利用する場合の不利である。
【0007】
重合時に現れる粘度のピークを低下させるために、欧州特許出願公開第EP-A-0630909号は、水中水型分散液の分散剤ポリマーを初めに水性溶液中に導入し、ある割合の重合すべきモノマーを、時間をかけて配分して添加する重合方法を提案している。このような方策にもかかわらず、粘度を制御するために、多価の陰イオン性塩を少なくとも15重量%の量で添加する必要がある。加えて、さらなる塩が、得られる水中水型分散液の粘度を低下するために添加される。この事例の場合も、水中水型分散液は、塩の量が多量であるために、意図される全ての用途に問題なく利用可能ではない。
【0008】
2つの異なるポリマー成分からなる陽イオン性凝集剤およびそれらの調製方法は、欧州特許出願公開第EP 262 945 A2号により知られている。ポリマー成分を混合することによるのではなく、これらは低分子量陽イオン性ポリマー成分(凝固剤)の存在下で陽イオン性モノマーを重合することによって形成されて、高分子量陽イオン性ポリマー成分(凝集剤)を生成する。この凝固剤は、1,000,000 g/mol未満の平均分子量MWを有する。重合反応中、グラフト反応が、最初に導入したポリマー上で進行し得る。これらがアクリレートモノマーをベースにした凝集剤と不相容性であるため、好ましくは、以下の凝固ポリマー:アリルモノマーのポリマー、特にポリ-DADMACおよびアミン−エピクロロヒドリンポリマーが用いられる。凝固剤と高分子量高分子電解質成分との比は、10:1〜1:2、特に5:1〜1:1.5に特定されている。すなわち、好ましい実施態様では、ポリマー混合中の凝固剤の割合は、83重量%〜40重量%である。重合溶液の調製時の凝固剤のこの高い割合は、粘度の問題を引き起こす。開示された凝集剤の性質は、迅速性および有効性の点で、工業的な凝集プロセスにおける要求を満足しない。
【0009】
独国特許出願公開公開第DE 10061482 A1号は、少量の塩および酸を添加することによって長期の貯蔵寿命をもつ分散性を達成する、水中水型分散液の調製方法を教示している。この出願書類には、調製時のレオロジーの問題についての情報は全くない。
【0010】
水中水型分散液の調製時に、トルクの大規模な増加が、重合バッチの増粘の結果として攪拌器でしばしば起こり、これにより重合反応器の攪拌機による操作がそれ以上できなくなる。しばしば、トルクの増大は、重合バッチの冷却後だけに観察される。このような重合バッチは、もはや使用することができず、廃棄しなければならない。従来技術は、塩を含まないかまたは塩濃度の低いポリマー分散液のレオロジーの問題について、いかなる解決策を教示することもできていない。
【0011】
さらに、従来技術で知られている水中水型分散液は、長期間の貯蔵中、特に過酷な条件(例えば、25℃より高く50℃までの温度等)の下で変化を受ける可能性がある。すなわち、水中水型分散液の有利な特性が損なわれ、例えば、結果として脱水時間が長くなる可能性がある。
【特許文献1】国際公開第WO98/14405号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO98/31748号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO98/31749号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第EP-A-0630909号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第EP 262 945 A2号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第DE 10061482 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、塩を含まないかまたは塩濃度の低い陽イオン性水中水型ポリマー分散液であって、過酷な条件(例えば最高で40℃までの温度等)下での貯蔵時に、実質的に使用特性が変化しないものを提供することである。さらに、可能であれば、5%溶液の粘度が1000 mPa・s未満に低下するべきではなく、製品の粘度が25,000 mPa・sより高くなるべきではない。好ましくは、1000 ppm未満という残存モノマーの低い値が達成されるべきである。可能であれば、ポリマー分散液はさらに、従来技術の製品と比較して同等または改善された、凝集剤としての特性プロファイルを有しているべきである。
【0013】
本発明の別の目的は、前述の陽イオン性水中水型ポリマー分散液の調製方法を提供することである。この方法によって、重合時に制御不能なレオロジー的な増粘現象がまったく起こらないこと、および、この方法の生成物が、貯蔵中でさえも全く増粘しないと共に良好な流動性を有し、残存モノマーの含有量が低く、凝集剤に対する最新の工業的な要求を満足することを確実にすることが意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的は、陽イオン性ポリマーAと少なくとも1種のポリマー性陽イオン性分散剤Bとを含有する陽イオン性水中水型ポリマー分散液であって、
ポリマーAが、
a1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/または陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのタイプの陽イオン性モノマー 1重量%〜60重量%と、
a2)非イオン性モノマー 99重量%〜40重量%と
から形成され、
ポリマー性陽イオン性分散剤Bが、75,000〜350,000 g/molの平均分子量Mを有し、かつ、
b1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/または陽イオン化されたN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド 30重量%〜100重量%と、
b2)非イオン性モノマー 0重量%〜70重量%と
から形成されることを特徴とする分散液の提供によって達成される。
【0015】
陽イオン性分散剤Bの分子量が、本発明の陽イオン性水中水型ポリマー分散液の安定性および特性に実質的な影響を与えることが見出された。本発明のポリマー分散液中に存在する分散剤は、75,000〜350,000 g/molの平均分子量M(1.5%ギ酸を溶離液として用いるゲル浸透クロマトグラフィーによってプルラン標準に対して測定されたもの)を有し、貯蔵中のレオロジー挙動、使用のために希釈された溶液の粘度、およびこれらの貯蔵特性の点で高い安定性を有する製品をもたらす。好ましくは、90,000〜280,000 g/molの平均分子量M、より好ましくは95,000〜235,000 g/molの平均分子量Mを有するポリマー性分散剤を用いる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ポリマー性分散剤Bとして、陽イオン性ポリマーが使用される。この陽イオン性ポリマーは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/またはN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドのタイプの陽イオン性、エチレン性の不飽和モノマーに由来する陽イオン性単位 30重量%〜100重量%、好ましくは50重量%〜100重量%、さらに好ましくは100重量%から合成される。
【0017】
このようなモノマーの例は、アルキル基またはアルキレン基中に1個〜6個、好ましくは1個〜3個の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等)、および1個〜6個の炭素原子のアルキル残基を有する陽イオン化されたN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド等)である。
【0018】
上記基本的なモノマーは、無機酸もしくは有機酸で中和された形態、または四級化された形態で用いられる。この四級化は、好ましくは、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチルまたは塩化ベンジルを用いて生成される。好ましい実施態様では、塩化メチルまたは塩化ベンジルで四級化されたモノマーが用いられる。
【0019】
好ましい陽イオン性モノマー成分は、(メタ)アクリル酸の陽イオン化されたアミドであり、それぞれ四級化されたN原子を有する。特に好ましくは、四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミドが用いられる。
【0020】
場合によって、ポリマー性分散剤Bは、最高で60重量%、好ましくは最高で40重量%、さらに好ましくは最高で25重量%の追加の陽イオン性モノマー〔例えばジアルキルアミノ(メタ)アクリレート等〕を含有することができる。
【0021】
上述した陽イオン性モノマーに加えて、他の非イオン性および両性モノマーを、ポリマー性分散剤Bの合成中に含ませることができる。
【0022】
一般式(I):
【化1】

(式中、
は、水素またはメチル残基を表し、
およびRは、互いに独立に、水素、炭素原子1個〜5個を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル残基を表す)
の化合物を、分散剤ポリマーBの調製において非イオン性モノマーとして用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドまたはN,N-置換(メタ)アクリルアミド〔例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミドまたはN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等〕が用いられる。アクリルアミドが特に好ましい。非イオン性モノマー成分は、最高で70重量%、好ましくは最高で50重量%の量で、重合によって分散剤ポリマー中に組み込むことができる。
【0023】
一般式(III):
【化2】

(式中、
は、O、NH、NR4を表し、Rは、炭素原子1個〜4個を有するアルキルを表し、
は、水素またはメチル残基を表し、
は、炭素原子1個〜6個を有するアルキレンを表し、
およびRは、互いに独立に、炭素原子1個〜6個を有するアルキル残基を表し、
は、炭素原子8個〜32個を有するアルキル、アリール、および/またはアラルキル残基を表し、かつ、
は、ハロゲン、擬ハロゲン、SO4CH3、またはアセテートを表す)
、または一般式(IV):
【化3】

(式中、
は、O、NH、NR4を表し、Rは、炭素原子1個〜4個を有するアルキルを表し、
は、水素またはメチル残基を表し、
10は、水素、炭素原子8個〜32個を有するアルキル、アリール、および/またはアラルキル残基を表し、
は、炭素原子2個〜6個を有するアルキレン残基を表し、かつ、
nは、1〜50の整数を表す)
の化合物を、分散剤ポリマーBの両親媒性モノマー成分として用いることができる。
【0024】
これらは、好ましくは、(メタ)アクリル酸の、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド単位が10〜40のもの)との反応生成物(脂肪アルコールでエーテル化されたもの)、または(メタ)アクリルアミドとの対応する反応生成物を含む。両親媒性モノマー成分は、分散剤ポリマーの合成に、最高で30重量%まで、好ましくは最高で15重量%の量で含めることができる。しかし、いすれにしても、両親媒性、エチレン性の不飽和モノマーからなる任意選択的な水不溶性モノマーの割合を、重合によって得られるポリマーAの水溶性または水膨潤性が損なわれないように注意して選択する必要がある。
【0025】
ポリマー性分散剤BとポリマーAとは互いに異なり、この差異は、物理的変数(例えば、異なった分子量および/または化学構造等)、ならびに異なったモノマー組成を含みうる。
【0026】
本発明の陽イオン性水中水型ポリマー分散液の陽イオン性ポリマーAは、非イオン性モノマーおよび任意選択による両親媒性モノマーとの組み合わせで、陽イオン性モノマー単位から構成される。
【0027】
ポリマーAの調製に好適な陽イオン性モノマーは、アルキルまたはアルキレン残基中に炭素原子1個〜6個を有し、陽イオン化された、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドである。
【0028】
好ましくは、プロトン化または四級化された、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(そのアルキルもしくはアルキレン基中に炭素原子1個〜3個を有するもの)が好適である。より好ましくは、塩化メチルで四級化された、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよび/またはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアンモニウム塩である。ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノプロピルアクリルアミドを用いることが好ましく、特にジメチルアミノエチルアクリレートが好ましい。
【0029】
この基本的なモノマーは、無機酸もしくは有機酸で中和された形態、または四級化された形態で用いられる。この四級化は、好ましくは、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチルまたは塩化ベンジルを用いて生成される。好ましい実施態様では、塩化メチルまたは塩化ベンジルで四級化されたモノマーが用いられる。
【0030】
ポリマーAは、それぞれモノマーの総重量に対して1重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜55重量%、より好ましくは20重量%〜50重量%の陽イオン性モノマーを含むモノマー組成を有する。
【0031】
ポリマー性分散剤Bの組成において記載したものと同じモノマー化合物を、陽イオン性ポリマーAの非イオン性または両親媒性モノマー構成単位と考えることができる。ポリマーA中の非イオン性モノマーの割合は、99重量%〜40重量%、好ましくは95重量%〜45重量%、より好ましくは80重量%〜50重量%である。ポリマーA中の両親媒性モノマーの割合は、0重量%〜30重量%、好ましくは0重量%〜15重量%である。
【0032】
好ましくは、ポリマーAは、非イオン性モノマー(好ましくはアクリルアミド)と、陽イオン性モノマー〔好ましくは、四級化された、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド〕とからなる。塩化メチルで四級化された、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0033】
本発明の水中水型ポリマー分散液中に存在するポリマーAは、高分子量であり、さらに、GPC法によって測定した平均分子量MWが1.5 x 106 g/molより大きい、水溶性または水膨潤性ポリマーである。
【0034】
本発明の水中水型ポリマー分散液は、高分子量陽イオン性ポリマーAを、ポリマーAおよびポリマー性分散剤Bを含むポリマー画分に対して30重量%〜70重量%、好ましくは50重量%〜65重量%の量で含有する。
【0035】
本発明の水中水型ポリマー分散液は、水を、40重量%〜90重量%の割合、好ましくは50重量%〜80重量%の割合で含有する。
【0036】
ポリマーA中の固形分が高いかまたは陽イオン性モノマーの割合が高い状態では、本発明のポリマー分散液中の分散剤ポリマーBの量を増量して用いることが有利であることが立証された。
【0037】
追加の水溶性分散剤成分をポリマー性分散剤Bと共に用いる場合、ポリマー性分散剤Bと前述の成分との重量比を1:0.01〜0.5、好ましくは1:0.01〜0.3に保持つことが望ましい。例えば、追加的な分散剤として、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、澱粉、澱粉誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル2-メチルスクシンイミド、ポリビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、ポリビニル-2-メチルイミダゾリン、ならびに/または、これらとマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、および/もしくは(メタ)アクリルアミド化合物との共重合体を挙げることができる。
【0038】
場合によって、本発明の水中水型ポリマー分散液は、さらなる従来の成分を、例えば、水溶性の酸および/または塩の形態で含有することができる。最大で、それぞれ分散液全体に対して、酸は0.1重量%〜3重量%の量で、塩は0.1重量%〜3重量%の量で存在していてよい。さらに、酸および塩は、合計して分散液全体に対して最高で5重量%、好ましくは最高で4重量%の量で存在していてよい。
【0039】
水溶性の有機酸および/または無機酸も存在していてよい。より具体的には、好適な水溶性の有機酸は、有機のカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸であり、好ましくは、脂肪族または芳香族のモノ-、ジ-、ポリカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸(好ましくは、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、特に好ましくはクエン酸、アジピン酸、および/または安息香酸)である。好適な無機酸は、水溶性の鉱酸(好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸、および/またはリン酸)である。クエン酸、アジピン酸、安息香酸、塩酸、硫酸、および/またはリン酸が、非常に特に好ましい。
【0040】
水溶性の塩として、アンモニウム塩、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(好ましくはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、および/またはマグネシウム塩)を用いることができる。このような塩は、無機酸の塩または有機酸の塩(好ましくは、有機カルボン酸塩、有機スルホン酸塩、有機ホスホン酸塩、または鉱酸)であってよい。水溶性の塩は、脂肪族または芳香族のモノ-、ジ-、ポリカルボン酸および/もしくはヒドロキシカルボン酸(好ましくは、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸)の塩、または硫酸、塩酸、もしくはリン酸の塩である。非常に特に好ましくは、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、および/または硫酸ナトリウムが、水溶性の塩類として用いられる。これらの塩は、重合の前、重合時、または重合の後に添加され、重合反応が水溶性塩の存在下で行われることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明の水中水型ポリマー分散液は、水溶性多官能性アルコールおよび/またはこれらと脂肪アミンとの反応生成物を、ポリマー性分散剤Bに対して最高で30重量%、好ましくは最高で15重量%、より好ましくは最高で10重量%の量で含有していてよい。この関連においてより特に好ましいものは、水溶性多官能性アルコールとしての、ポリアルキレングリコール〔好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレン/エチレンオキシドのブロックコポリマー(50〜50,000、好ましくは1,500〜30,000の分子量を有するもの)〕、多官能性水溶性アルコールとしての低分子量多官能性アルコール(例えば、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、および/もしくはソルビトール)、ならびに/または、これらと、アルキルもしくはアルキレン残基中にC6〜C22を有する脂肪アミンとの反応生成物である。
【0042】
本発明はまた、本発明の水中水型ポリマー分散液の調製のための重合法を提供する。
【0043】
本発明によれば、陽イオン性ポリマーAと少なくとも1種のポリマー性陽イオン性分散剤Bとからの水中水型ポリマー分散液の調製は、重合反応器内で、
− b1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/または陽イオン化されたN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド 30重量%〜100重量%と、
b2)非イオン性モノマー 0重量%〜70重量%と
から合成された、75,000〜350,000 g/molの平均分子量Mを有するポリマー性陽イオン性分散剤Bの水溶液、ならびに、
− a1)陽イオン化されたモノ-および/もしくはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/または陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド 1重量%〜60重量%と、
a2)非イオン性モノマー 99重量%〜40重量%と
のモノマー混合物、
を混合し、フリーラジカル開始剤の添加によって、前記モノマー混合物のフリーラジカル重合を行わせることを特徴とする。
【0044】
本発明の方法は、高分子量ポリマー分画中に陽イオン性分画を1重量%〜60重量%有する水中水型ポリマー分散液を、レオロジー問題を回避しつつ確実に調製することを可能にし、かつ、このポリマー分散液の貯蔵に対して極度に安定な特性を付与し、有利な溶液粘度および使用特性を達成することを可能にする。
【0045】
本発明の方法を実施するために、ポリマー性分散剤Bと、場合によりさらなる添加剤(例えば、塩、酸、または多官能性アルコール)とを含有する連続的な水相を、公知の分散法(好ましくは撹拌)にしたがって、モノマーもしくはその水溶液を分散することによって調製する。
【0046】
モノマー(好ましくは水溶液の形態のモノマー)が分散された水相は、重合時に形成されるポリマーAが分散されたまま維持され、ポリマー粒子の制御不能の成長および/または形成されたポリマー粒子の凝集が回避されるように十分な水溶性ポリマー性分散剤Bを含有していなければならない。好ましくは、ポリマー性分散剤Bを、20重量%〜80重量%、好ましくは30重量%〜50重量%の水溶液の形態で用いる。
【0047】
モノマー(溶液の全重量もしくは得られる全分散液に対して5重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜50重量%の量)は、少なくとも1種の分散剤Bを含有する水相中に分散される。このモノマーは、重合して高分子量ポリマーAを形成する。
【0048】
ポリマー性分散剤Bと共に追加的な水溶性分散剤成分を同時に用いる場合は、さまざまな分散剤を、水相中に一緒に溶解するか、または(好ましい実施態様では)事前に別個に溶解し、その後混合して単一の溶液を形成させる。ポリマー性分散剤Bと追加的な成分との重量比は、1:0.01〜0.5、好ましくは1:0.01〜0.3である。
【0049】
形成されるポリマーAのモノマーは、ポリマー性分散剤を含有する連続的な水相にそのまま直接組み込むか、あるいは、好ましくは、水性モノマー溶液の形態で組み込むことができる。同様に、モノマーもしくはモノマー溶液の全部もしくは一部の分散剤B中への分散を重合の開始時に達成させ、残りのモノマーもしくはモノマー溶液を、重合の全過程に亘って配分される、部分量ずつの計量供給または連続供給によって添加することができる。
【0050】
例えば、フリーラジカル開始剤(いわゆる重合開始剤)を、重合を開始させるために用いることができる。フリーラジカル開始剤として、好ましくは、アゾ化合物〔例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)ジヒドロクロリド、または好ましくは、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素を、任意に還元剤(例えば、アミンまたは亜硫酸ナトリウム)と組み合わせて用いることができる。開始剤の量は、重合されるモノマーに対して、一般に10-3重量%〜1重量%の範囲、好ましくは10-2重量%〜0.1重量%の範囲である。開始剤は、重合の開始時に全部することができ、あるいは一部だけを添加し、その後、残りの量を重合の全過程に亘って配分して添加することもできる。好ましい実施態様では、重合を、レドックス開始剤系によって開始させて極大温度に達した後、アゾ開始剤で継続させて残存モノマーの濃度を低下させる。
【0051】
別の有利な実施態様では、発熱的な重合反応が完結した後に(すなわち、一般に極大温度に達した後に)、残存モノマーの含有量を、続いてのレドックス開始剤の添加によってさらに低下させる。
【0052】
本発明の別の有利な実施態様では、モノマー溶液と分散剤溶液の両方を、重合時、重合反応器に分割して添加する。一般に、例えば、モノマー溶液および分散剤溶液の10重量%〜20重量%の量を最初に導入する。重合の開始後に、上述した配分した添加を行い、任意で、さらなる重合開始剤の配分した添加を行う。
【0053】
加えて、参照により関連する開示を本明細書に組み込んだ欧州特許出願公開第EP-A-0664302号公報の方法にしたがって、水中水型分散液の調製を実施することも可能である。基本的に、この手順には、重合時の水の除去、およびポリマー性分散剤Bの任意的な添加が含まれる。
【0054】
重合温度は、一般に、0℃〜120℃、好ましくは30℃〜90℃である。重合は、系が不活性ガスでパージされ、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で重合されるように実施されることが好ましい。重合の転化率および重合の終了は、残存モノマーの含有率を測定することによって容易に検知することができる。この目的のための方法は、当技術分野で周知である。
【0055】
重合後は、分散液に塩または酸などのさらなる添加剤を任意に(好ましくは撹拌しながら)添加する前に、反応混合物を冷却することが有利になり得る。酸の添加を想定すると、酸は、分散液全体の量に対して0.1重量%〜3.0重量%の量で添加する。このような添加は、重合の前、重合時、または重合の後に行うことができる。重合の後の添加が好ましい。有利な実施態様では、酸成分を添加すると、ポリマーを5%溶液に希釈したときのpHが3〜4になる。
【0056】
水中水型ポリマー分散液の調製時に塩を用いる場合、塩は、分散液全体に対して好ましくは0.1重量%〜3.0重量%の量で添加する。塩は、重合の前、重合時、または重合の後に添加することができる。重合の前の添加が好ましい。添加される水溶性の酸および任意で添加される水溶性の塩の量は、分散液全体に対して最高で5重量%、好ましくは4重量%である。
【0057】
ポリマー性分散剤Bを、水溶性多官能性アルコールおよび/またはこれらと脂肪アミンとの反応生成物と共に用いる場合、ポリマー性分散剤Bの溶液へのこれらの添加は、重合の前に行う。
【0058】
本発明の方法にしたがって調製したポリマーAは、高分子量であり、さらに、水溶性または水膨潤性のポリマーである。ポリマーAとポリマー性分散剤Bとを含む本ポリマー分散液中に存在するポリマー混合物の平均分子量MWは、GPC法による測定で、1.5 x 106 g/molより大きい範囲にある。
【0059】
本発明により得られる水中水型ポリマー分散液は、固体の沈殿(好ましくは、水処理およびプロセス用水処理、または廃水の浄化)、または原料(好ましくは石炭、アルミニウム、もしくは石油)の回収における優れた凝集剤として、抄造における助剤として、あるいは油および/または脂肪を含有する水性混合物の分離における解乳化剤として、優れた増粘剤として、紙の抄造における歩留り向上剤および脱水剤として、および/または場合により他の生物活性物質と併用して植物免疫剤または防食剤のための添加剤として、実際にその調製後(すなわちその貯蔵前)のものだけに限られず任意に水で希釈された後も、予想外の優位性を有する。本発明により得られる水中水型ポリマー分散液は、前述の顕著な効果を、過酷な条件(例えば、高温、すなわち25℃より高く、最高で50℃までの温度)で長期間貯蔵した後でも、実質的に変わらずに示す。本発明により得られるこのような分散液の品質の保持は、これまで満たされていなかったユーザー産業の要求であり、とりわけ、過酷な気候条件の地域に分散液が輸送され使用される場合に必須である。
【実施例】
【0060】
[測定方法]
〔溶液の粘度〕:
本発明により調製された水中水型ポリマー分散液の溶液粘度を測定するために、5%溶液を調製する。測定には、前述の5%溶液340 gが必要である。本目的のため、必要量の脱イオン水を400 mlビーカーに入れる。その後、最初に入れた水を、フィンガー攪拌機で、形成される渦巻きがビーカーの底に届くほど激しく撹拌する。5%溶液を調製するのに必要な量の水中水型分散液を、最初に入れた撹拌されている水中に、使い捨てシリンジを用いて一度に注入する。次に、この溶液を300 rpm(±10 rpm)で1時間撹拌する。10分間静置した後、RVT-DV II ブルックフィールド粘度計を使用し、no. 2スピンドルを用いてスピード10で、ブルックフィールド粘度を測定する。
【0061】
〔塩の粘度〕:
289 gの脱イオン水を400 mlのビーカーに秤量して入れる。最初に入れた水を、フィンガー攪拌機で、形成される渦巻きがビーカーの底に届くほど激しく撹拌する。本発明により調製された水中水型分散液17 gを使い捨てシリンジを用いて一度に注入する。水中水型分散液が溶解した時点で、(工業用)塩化ナトリウム34 gを振りかけて入れる。この溶液を300 rpm(±10 rpm)で16分間撹拌した後、さらに10分間放置する。その後、RVT-DV II ブルックフィールド粘度計を使用し、no. 1スピンドルを用いてスピード10で、ブルックフィールド粘度を測定する。
【0062】
[実施例]
実施例で用いたポリマー性分散剤はいずれも、40重量%溶液の形態で用いた。
【0063】
[実施例E1〜E4および比較実施例C1](いずれも、ポリマーA中に25重量%の陽イオン性モノマーを含有する)
360 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)300 g、水244 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)62.5g、および硫酸アンモニウム9.5 gの溶液に添加する。pHを4に調節する。この混合液を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度42℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、200 ppmのVA 044を添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(二硫化ナトリウム1500 ppm、ペルオキシ二硫酸ナトリウム1500 ppm)を添加し、これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0064】
以下の表1に、さまざまな平均分子量(MW)を有する分散剤についての試験結果を示す。
【表1】

E2中の残存モノマーの含有量は、アクリルアミド10 ppm未満である。
【0065】
[実施例E5〜E11](いずれも、ポリマーA中に35重量%の陽イオン性モノマーを含有する)
360 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)245 g、水295 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)84 gの溶液に添加した。この混合物を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度35℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、50 ppmの二硫化ナトリウム、40 ppmのペルオキシ二硫酸ナトリウム、および5 ppmのtert-ブチルヒドロペルオキシドを添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(ABAH 400 ppm)を添加し、これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0066】
以下の表2に、さまざまな平均分子量(MW)を有する分散剤についての試験結果を示す。
【表2】

【0067】
[実施例E12〜E16](いずれも、ポリマーA中に50重量%の陽イオン性モノマーを含有する)
360 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)190 g、水316 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)119 gの溶液に添加する。この混合物を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度35℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、50 ppmの二硫化ナトリウム、50 ppmのペルオキシ二硫酸ナトリウム、および5 ppmのtert-ブチルヒドロペルオキシドを添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(ABAH 400 ppm)を添加する。これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0068】
以下の表3に、さまざまな平均分子量(MW)を有する分散剤についての試験結果を示す。
【表3】

E14中の残存モノマーの含有量は、アクリルアミド620 ppmである。
【0069】
[実施例E17](ポリマーA中に60重量%の陽イオン性モノマーを含有する)
450 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)144 g、水245 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)135 gの溶液に添加した。この混合物を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度35℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、50 ppmの二硫化ナトリウム、50 ppmのペルオキシ二硫酸ナトリウム、および5 ppmのtert-ブチルヒドロペルオキシドを添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(ABAH 400 ppm)を添加する。これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0070】
以下の表4に、試験結果を示す。
【表4】

【0071】
[比較実施例C2](ポリマーA中に70重量%の陽イオン性モノマーを含有する)
450 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)108 g、水234 g、硫酸アンモニウム9.8 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)158 gの溶液に添加する。この混合物を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度35℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、50 ppmの二硫化ナトリウム、50 ppmのペルオキシ二硫酸ナトリウム、および5 ppmのtert-ブチルヒドロペルオキシドを添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(ABAH 400 ppm)を添加した。これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0072】
以下の表5に、試験結果を示す。明らかに、本発明で使用する分散剤は、高度に陽イオン性のポリマー分散液には不向きである。
【表5】

【0073】
[実施例E18および比較実施例C3およびC4](いずれも、ポリマーA中に50重量%の陽イオン性モノマーと、180,000のMWを有する分散剤Bとを含有する)
360 gの分散剤〔ポリ(トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロライド)〕を、アクリルアミド(50%)190 g、水316 g、Versenex 80(5%)2 g、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライド(80%)119 gの溶液に添加する。この混合物を、KPG攪拌機を備えた2リットルのフラスコに入れ、初期温度35℃に加熱する。窒素によるパージによって酸素を除去した後、50 ppmの二硫化ナトリウム、50 ppmのペルオキシ二硫酸ナトリウム、および5 ppmのtert-ブチルヒドロペルオキシドを添加する。温度が極大値に達した時点で、さらなる開始剤(ABAH 400 ppm)を添加する。これをこの温度でさらに15分間反応させる。次いで、5 gのクエン酸を添加する。最終生成物を冷却し、包装する。
【0074】
以下の表7に、試験結果を示す。
【表6】

【0075】
[工業的な応用の実施例]
〔製紙用パルプ懸濁液の脱水速度の測定〕
BTG Mutek社からのDFS 03装置を使用して、本発明のポリマー分散液を特定の製紙用パルプ懸濁液に添加することによって、時間の関数としての脱水速度を測定する。
【0076】
本目的のために、本発明のポリマー高分子分散液を、脱イオン水を用いて、0.1%の濃度に調節する。1%の標準古紙パルプ懸濁液(灰分15%、57 °SR*)300 gを、ショッパー−リーグラーろ水度試験機中で、水道水で希釈して1000 mlにする。脱水速度試験を、3種の異なる濃度の本発明のポリマー分散液(400/800/1200 g/l)で行う。全体として、パルプ−水混合液を600 min-1で25秒間維持し、希釈した本発明の分散液を最初の10秒後に配分する。脱水は60秒以内に進行するが、最高で500 gまでとする。様々なポリマー分散液500 gの脱水速度および濃度を下記の表に示す。
【0077】
*精製工程中の特定のパルプの状態を、ろ水度(°SR)(ショッパー−リーグラー度)で表す。
【表7】

【0078】
[歩留りおよび灰分歩留りの測定]
BTG Mutek社からのDFS 03装置を使用して、本発明のポリマー分散液を特定の製紙用パルプ懸濁液に添加することによって、歩留りを測定する。
【0079】
本目的のために、本発明のポリマー分散液を、脱イオン水を用いて、0.1%の濃度に調節する。1%の標準古紙パルプ懸濁液500 gを、ショッパー−リーグラーろ水度試験機中で、水道水で希釈して1000 mlにする。歩留り試験を、3種の異なる濃度の本発明のポリマー分散液(400/800/1200 g/l)で行う。全体として、パルプ−水混合液を600 min-1で25秒間維持し、希釈した本発明の高分子分散液を最初の10秒後に配分し、さらに15秒後に歩留り用の濾液を取り出し、Schwarzbandグレードフィルターを通過させ、恒量に達するまで105℃で1時間乾燥する。灰分歩留りを測定するために、灰化を550℃で2時間行い、絶対乾燥条件で灰分の重さを再び量る。
【0080】
【数1】

PD流入:流入液(パルプ懸濁液)のパルプ濃度(重量%)
PD流出:濾液(背水)のパルプ濃度(重量%)
灰分流入:流入液(パルプ懸濁液)の無機燃焼残渣の割合(重量%)
灰分流出:濾液(背水)の無機燃焼残渣の割合(重量%)
【0081】
【表8】

【表9】

【表10】

【0082】
[製紙パルプ懸濁液の脱水速度の測定ならびに地合(透過性)および濁度の同時評価]
Akribi Kemiconsulter社からのDynamic Drainage Analyser(DDA)を使用して、本発明のポリマー分散液を特定の製紙用パルプ懸濁液に添加することによる真空での脱水時間を測定する。濁度および透過性を測定する。これらから、流出した製紙用パルプ懸濁液の地合についての結論が引き出される。
【0083】
本目的のために、1%の製紙用パルプ懸濁液500 gを撹拌下の容器に入れ、実施例1および2の本発明の製品ならびに以下の表の製品を添加し、600 rpmで10秒間撹拌した後、500 mbarの真空下でスクリーン上に排出した。この装置は、脱水時間を秒で示し、透過性をミリバールで示す。濾液を集め、濁度を別個に測定する。
【0084】
二成分系では、Polymin SK 6 kg/tを添加し、1200 rpmで15分間せん断力をかける。この後、Organopol 0.6 kg/tを添加し、600 rpmで10秒間撹拌する。さらなる試験手順は、上述した手順と同様である。
【0085】
使用するポリマーは、脱イオン水を用いて0.1重量%の濃度に調節する。
【表11】

Polymin(登録商標)SKは、BASF社からの変性陽イオン性ポリエチレンイミンであり、Organopol(登録商標)5670は、CIBA社からのポリアクリルアミドである。
【0086】
これらの結果は、本発明のポリマー分散液の利点を示している。同様の結果が、低濃度で達成され、もはや2段階でポリマーを添加する必要がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン性ポリマーAと少なくとも1種のポリマー性陽イオン性分散剤Bとを含有する陽イオン性水中水型ポリマー分散液であって、
前記ポリマーAが、
a1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/または陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのタイプの陽イオン性モノマー 1重量%〜60重量%と、
a2)非イオン性モノマー 99重量%〜40重量%と
から形成され、
前記ポリマー性陽イオン性分散剤Bが、75,000〜350,000 g/molの平均分子量Mを有し、かつ、
b1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/または陽イオン化されたN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド 30重量%〜100重量%と、
b2)非イオン性モノマー 0重量%〜70重量%と
から形成されることを特徴とする、分散液。
【請求項2】
前記ポリマー性分散剤Bが、重合によってその中に組み込まれた両親媒性モノマーを最高で30重量%まで含有することを特徴とする、請求項1に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項3】
前記陽イオン性ポリマーAが、重合によってその中に組み込まれた両親媒性モノマーを最高で30重量%まで含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項4】
前記陽イオン化されたモノマーa1)およびb1)が、それぞれ、前記アルキル基中またはアルキレン基中に炭素原子1個〜6個を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項5】
モノマーa1)として、陽イオン化されたジメチルアミノエチルアクリレートおよび/またはジメチルアミノプロピルアクリルアミドを選択することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項6】
モノマーb1)として、陽イオン化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミドを選択することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項7】
前記非イオン性モノマーa2)およびb2)が、一般式(I):
【化1】

(式中、
は、水素またはメチル残基を表し、
およびRは、互いに独立に、水素、炭素原子1個〜5個を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル残基を表す)
の化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項8】
非イオン性モノマーa2)およびb2)として、アクリルアミドを選択することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項9】
前記陽イオン性ポリマーAが、1,500,000 g/molより大きな分子量を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項10】
前記陽イオン性ポリマーAが、ポリマーAとポリマー性分散剤Bとを含むポリマー分画に対して30重量%〜70重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項11】
前記分散液が、40重量%〜90重量%の割合の水を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項12】
前記分散液が、水溶性の塩および/または水溶性の酸を、それぞれ分散液全体に対して0.1重量%〜3重量%の量で含み、かつ、酸と塩とが存在する場合には、合計5重量%より多く存在することがないことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項13】
前記分散液が、水溶性多官能性アルコールおよび/または水溶性多官能性アルコールと脂肪アミンとの反応生成物を、最高で30重量%まで含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項14】
前記分散液が、希釈して5%水溶液を形成させた後で、3〜4のpH値を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項15】
前記分散液が、希釈して5%水溶液を形成させた後で、少なくとも1000 mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液。
【請求項16】
陽イオン性ポリマーAと、少なくとも1種のポリマー性陽イオン性分散剤Bとからの請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の調製方法であって、重合反応器内で、
− b1)陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/または陽イオン化されたN-アルキル-もしくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド 30重量%〜100重量%と、
b2)非イオン性モノマー 0重量%〜70重量%と
から合成された、75,000〜350,000 g/molの平均分子量Mを有するポリマー性陽イオン性分散剤Bの水溶液、ならびに、
− a1)陽イオン化されたモノ-および/もしくはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/または陽イオン化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド 1重量%〜60重量%と、
a2)非イオン性モノマー 99重量%〜40重量%と
のモノマー混合物、
を混合し、フリーラジカル開始剤の添加によって、前記モノマー混合物のフリーラジカル重合を行わせることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ポリマー性分散剤Bが、20重量%〜80重量%の水溶液の形態で用いられることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
重合させる前記モノマーが、モノマーと分散剤水溶液との混合液全体の5重量%〜60重量%の量で存在することを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
重合させる前記モノマーの一部だけを最初に投入し、残りを、フリーラジカル重合反応の過程において、部分量ずつの計量供給または連続供給によって添加することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
重合させる前記モノマーの一部と、前記分散剤水溶液の一部とだけを最初に投入し、残りを、フリーラジカル重合反応の過程において、部分量ずつの計量供給または連続供給によって添加することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フリーラジカル重合を、レドックス開始剤および/またはアゾ系開始剤を用いて0℃〜120℃の温度で行うことを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記フリーラジカル重合の開始剤系を、重合の全過程を通して連続添加することを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
酸を、前記フリーラジカル重合の前、重合の間、または重合の後に添加することを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の、固体の沈殿(好ましくは水処理およびプロセス用水処理、または排水の浄化)における凝集剤、または原料(好ましくは石炭、アルミニウム、もしくは石油)の回収における凝集剤としての、あるいは油および/または脂肪を含有する水性混合物の分離における解乳化剤としての使用。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の、抄造における歩留り向上剤および脱水剤としての使用。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の、増粘剤としての使用。
【請求項27】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の、任意に他の生物活性物質と併用しての、植物検疫剤における添加剤としての使用。
【請求項28】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の水中水型ポリマー分散液の、防食剤用の添加剤としての使用。

【公表番号】特表2008−527057(P2008−527057A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548709(P2007−548709)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012759
【国際公開番号】WO2006/072294
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】