説明

陽極化成装置及びそれを備えた陽極化成システム並びに半導体ウエハ

【課題】基板を保持、移送し陽極化成槽の一部とする機構を有する、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置と、多孔質層を形成した半導体基板を提供する。
【解決手段】左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69で複数枚の基板Wを保持した状態で処理位置に移動させ、上側ホルダ部71及び下部ホルダ39と連結させ、貯留槽11の内部で複数枚の基板Wの全周面が電解質溶液に対して液密にされる。この状態で化成反応処理を行った後、基板Wが貯留槽11から搬出される。従って、左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69が上側ホルダ部71及び下部ホルダ39と協働して基板Wを液密に保持可能な構成とし、複数枚の基板Wを搬送し、多孔質層を形成でき、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置1を実現でき又、表裏、両表面に効率良く、かつ均一に形成された多孔質層を具備する半導体基板を本装置により提供可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機ELデバイス用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板、Micro-electro-mechanical system(MEMS)用基板、三次元集積回路用半導体ウエハ、光電子集積回路用基板、生体工学用基板、医薬応用基板、光導波路用基板、人工光合成用基板などの各種基板に対して、電解エッチング処理を行う陽極化成装置及びそれを備えた陽極化成システム並びに半導体ウエハに係り、特に、複数枚の基板を同時に高スループットで処理するバッチ処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置(第1の装置)として、フッ素樹脂化成槽(2)と、一対の白金電極(3a、3b)と、基板(1)を保持する基板支持具(4)とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フッ素樹脂化成槽(2)は、電解液(6a、6b)を貯留する。一対の白金電極(3a、3b)は、フッ素樹脂化成槽(2)内で離間された状態で配置される。基板支持治具(4)は、基板(1)の外形寸法と同様の開口を有し、切り欠き部を拡げて基板(1)を基板支持治具(4)に挿入し、シール材(5a)を介して一枚の基板(1)を電解液(6a、6b)に対して液密に保持する。基板支持治具(4)を基板(1)とともにフッ素樹脂化成槽(2)内の電解液(6a、6b)に浸漬させ、一対の白金電極(3a、3b)に対して通電することで、化成反応が始まり、開口を通して基板(1)に対して多孔質化処理が行われる。
【0004】
また、この種の他の装置(第2の装置)として、電解溶液槽(11)と、一対の電極(14A、14B)と、基板(S)を保持する基板保持部材(15)とを備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
電解溶液槽(11)は、電解液を貯留する。一対の電極(14A、14B)は、電解溶液槽(11)の対向する内壁に取り付けられている。基板保持部材(15)は、第1のカセット(21)と第2のカセット(22)とを備え、これらで基板(S)を挟持する。第1のカセット(21)は、基板(S)の直径とほぼ等しい開口部(21A)を備え、第2のカセット(22)は、同様の開口部(22A)を備えている。基板保持部材(15)は、第1のカセット(21)と第2のカセット(22)で基板(S)を挟み込み、基板(S)の周縁部を押圧して基板(S)を係止する。基板保持部材(15)を電解溶液槽(11)のガイド溝(16)に挿入し、一対の電極(14A、14B)に通電することにより、化成反応が生じ、開口部(21A、22A)を通して基板(S)に対して多孔質処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−198556号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2003−45869号公報(図1,図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の第1の装置において、基板支持治具(4)に基板(1)を支持させるには、基板支持治具(4)の切り欠き部を拡げてから基板(1)を開口に挿入する必要がある。したがって、機械的な機構により基板(1)を基板支持治具(4)に自動で支持させることが困難であり、さらに、複数枚の基板(1)を同時に処理するバッチ処理に適用する場合、自動化して好適に処理することはより困難となる。
【0008】
また、従来の第2の装置は、基板保持部材(15)に基板(S)を保持させるには、第1のカセット(21)と第2のカセット(22)で基板(S)を挟持する必要がある。したがって、第1の装置と同様に、自動化できないという問題がある。また、二枚の基板(S)を処理する実施例が開示されてはいるものの、基板保持部材(15)がかなりの厚みを有する構造であるので、より多くの基板(S)を処理するバッチ処理には不適であるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板を保持する機構を熟慮、考察を極めることにより、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置及び陽極化成システム並びに半導体ウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、電解質溶液に基板を浸漬させて陽極化成反応を行う陽極化成装置において、電解質溶液を貯留する貯留槽と、複数枚の基板を、基板の周面と液密な状態で接触して保持可能な保持手段と、前記貯留槽の外部にあたる受け渡し位置と、前記貯留槽の内部にあたる処理位置とにわたって前記保持手段を移動する移動機構と、前記貯留槽内において、前記保持手段と協働して前記保持手段が保持する前記複数枚の基板の周面の液密な閉止を完成する閉止手段とを備え、複数枚の基板を保持した前記保持手段を前記処理位置に移動させるとともに前記閉止手段を作動させて、複数枚の基板の周面を液密にした状態で化成反応処理を行わせ、化成反応処理が終了した後、前記閉止手段を非作動とするとともに前記保持手段を前記処理位置から離反させて、複数枚の基板を前記貯留槽から搬出することを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、保持手段で複数枚の基板を保持した状態で移動機構が保持手段を処理位置に移動させるとともに閉止手段を作動させると、貯留槽の内部において、複数枚の基板の周面が電解質溶液に対して液密にされる。この状態で化成反応処理を行った後、閉止手段を非作動とするとともに移動機構が受け渡し位置にまで保持手段を複数枚の基板とともに移動させることにより、複数枚の基板が貯留槽から搬出される。したがって、保持手段が閉止手段と協働して基板を液密に保持可能な構成とすることにより、複数枚の基板を機械的に貯留槽に対して搬入出させることができる。その結果、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置を実現することができる。
【0012】
また、本発明において、前記保持手段は、前記複数枚の基板を所定の間隔で整列させて保持することが好ましい(請求項2)。
【0013】
複数枚の基板が所定の間隔で整列されているので、各基板の間に電解質溶液が均等に流入する。したがって、化成反応処理の際の注入電流密度が各基板で均一になり、各基板の処理を均一にすることができる。
【0014】
また、本発明において、前記貯留槽は、前記保持手段に保持された前記複数枚の基板の整列方向における一方側と他方側に電極を備え、前記各電極は、前記保持手段と前記閉止手段により周面が閉止された両端の基板の主面に対向して配置されていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
一端側と他端側で対向して配置された電極により、複数枚の基板に対して同時に化成反応処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記保持手段は、基板の一方側周面に当接する第1ホルダ部と、基板の他方側周面に当接する第2ホルダ部と、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とを互いに接近させて基板を保持させ、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とを互いに離反させて基板を開放させる開閉駆動部と、を備えていることが好ましい(請求項4)。
【0017】
開閉駆動部は、保持手段の第1ホルダ部と第2ホルダ部とを互いに接近させたり離反させたりすることで、基板を保持させたり基板を開放させたりすることができる。
【0018】
また、本発明において、前記閉止手段は、基板の周面のうち前記保持手段と非接触である部位と液密な状態で接触する閉止部材を備えていることが好ましい(請求項5)。
【0019】
保持手段と基板の周面が非接触である部位に対して閉止部材が液密な状態で接触するので、閉止手段によって基板の周面の液密な閉止を完成させることができる。したがって、閉止手段によって基板の周面の液密度合いを高めることができる。
【0020】
また、本発明において、前記閉止手段は、前記貯留槽内に固定された第1閉止部材を含むことが好ましい(請求項6)。
【0021】
貯留槽の内部に固定された第1閉止部材が保持手段と協働することにより、基板の周面の液密な閉止を完成させることができる。
【0022】
また、本発明において、前記閉止手段は、前記保持手段に保持された基板の周面に対して加圧して接触し、液密を保持する第2閉止部材を含むことが好ましい(請求項7)。
【0023】
保持手段に保持された基板の周面に第2閉止部材を加圧して接触させることにより、基板の周面の液密度合いを高くして、基板の周面の液密を完成させることができる。
【0024】
また、本発明において、前記保持手段と前記閉止手段のうち、基板の周面に当接する部分には、弾性部材が設けられていることが好ましい(請求項8)。
【0025】
弾性部材が介在することにより、基板の周面の液密度合いを高くできる。このことにより、基板端面周辺からの漏洩電流を減滅することが可能となり、多孔質の均一性を決定付ける、基板へ注入する化成電流の面内全域における電流密度をより均一にすることが可能となる。
【0026】
また、本発明において、前記弾性部材は、電気絶縁性を有し、基板と当接する部位が基板の全周面にわたって均一に形成されていることが好ましい(請求項9)。
【0027】
弾性部材が基板の全周面にわたって均一に形成されているので、基板の周面に近い基板の表裏面に電解質溶液がムラなく接する。また、弾性部材が電気絶縁性を有するので、基板の周面を除いた、基板の全面に均一な化成反応処理を行わせることができる。このように、絶縁性の高い弾性部材を使用することで、基板端面周辺からの漏洩電流を減滅することが可能となり、多孔質の均一性を決定付ける、基板へ注入する化成電流の面内全域における電流密度をより均一にすることが可能となる。特に、液密を可能とする上記保持手段により基板の周面(端面)部分を保持して基板を整列、正立させるので、基板の主面の周辺部分を、基板を保持するためのツメなどで押さえたり接触させたりする必要がなく、基板の主面の平面内の全域に渡る対称性と均一性を高度に達成できる。
【0028】
また、本発明において、前記弾性部材は、基板の周面側に第1の部材を備え、前記第1の部材の外側に第2の部材を備えた二層構造であって、前記第1の部材は、前記第2の部材よりも弾性率が小さいことが好ましい(請求項10)。
【0029】
弾性部材が二層構造であって、第1の部材は第2の部材よりも変形しやすい。したがって、第1の部材が基板の周面に密着しやすく、基板の周面を確実に液密にできる。この構成により、第一の弾性部位に埋没する基板端面の領域を制御することが可能となり、より基板端面の最短部分に近接した領域まで多孔質層を形成することが可能となる。
【0030】
また、本発明において、前記第2閉止部材を前記処理位置にある前記第1ホルダ部および前記第2ホルダ部に対して押圧する押圧機構をさらに備えていることが好ましい(請求項11)。
【0031】
押圧機構により第2閉止部材を第1ホルダ部及び第2ホルダ部に押圧するので、基板の周面の液密度合いを高めることができる。したがって、基板の周面を確実に液密にすることができる。
【0032】
また、本発明において、前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部には、外側が低くなる第1傾斜面が形成され、前記第1傾斜面に対応する前記第2閉止部材の位置には、外側が低くなる第2傾斜面が形成され、前記処理位置にある前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部に対して前記第2閉止部材を押圧したとき、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが係合して、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とが互いに接近する方向に押圧されることが好ましい(請求項12)。
【0033】
処理位置において第1ホルダ部および/または第2ホルダ部に対して第2閉止部材を押圧すると、第1傾斜面と第2傾斜面とが係合し、第1ホルダ部と第2ホルダ部とが互いに接近する。したがって、第1ホルダ部と第2ホルダ部とによる基板の保持を確実に行わせることができる。
【0034】
また、本発明において、前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部には、外側が高くなる第3傾斜面が形成され、前記第3傾斜面に対応する前記第1閉止部材の位置には、外側が高くなる第4傾斜面が形成され、前記処理位置にある前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部に対して前記第2閉止部材を押圧したとき、前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部が前記第1閉止部材に対して押圧され、前記第3傾斜面と前記第4傾斜面とが係合して、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とが互いに接近する方向に押圧されることが好ましい(請求項13)。
【0035】
処理位置において第1ホルダ部および/または第2ホルダ部に対して第2閉止部材を押圧すると、第3傾斜面と第4傾斜面とが係合し、第1ホルダ部と第2ホルダ部とが互いに接近する。したがって、第1ホルダ部と第2ホルダ部とによる基板の保持を確実に行わせることができる。
【0036】
また、本発明において、前記各電極は、高稠密、高密度、高純度の炭素よりなることが好ましい(請求項14)。
【0037】
すなわち、高稠密、高密度、高純度の炭素よりなる電極を使用することが、不純物の電解質溶液への混入防止や耐久性の面から好ましい。
【0038】
また、本発明において、前記第2閉止部材は、内側天井面から外側面に連通し、上部開口部が前記貯留槽の液面よりも上に位置するとともに、平面視で各基板の間に形成されている複数個の排気通路を備え、前記弾性部材は、前記各排気通路に対応した位置に形成され、前記各排気通路に連通した複数個の弾性部材通路を形成されていることが好ましい(請求項15)。
【0039】
化成反応処理により気体が発生し、第2閉止部材の内部に気泡として滞留すると、反応ムラが生じる恐れがある。しかし、第2閉止部材に複数個の排気通路を備え、弾性部材に複数個の弾性部材通路を備えているので、発生した気体が上側ホルダ部に滞留せず、外部に排出される。したがって、気泡に起因する処理ムラを防止できる。
【0040】
また、本発明において、前記第2閉止部材の内側天井面と前記弾性部材の上面との間に排気通路ブロックを備え、前記排気通路ブロックは、前記複数個の排気通路と前記複数個の弾性部材通路とに連通する複数個のブロック通路を形成された板状部材と、前記板状部材の各ブロック通路の間であって、前記板状部材の前記弾性部材側に突出して形成された隔壁部とを備え、前記隔壁部の下端部のみを前記弾性部材に挿入した状態で設けられていることが好ましい(請求項16)。
【0041】
排気通路ブロックは複数個のブロック通路を形成された板状部材と、各ブロック通路の間に隔壁部とを備えているので、弾性部材の下面が基板の上部周面で押圧されても弾性部材によって第2閉止部材の排気通路が塞がるのを防止できる。したがって、気泡からの気体を排気通路を通して確実に排出できる。したがって、気泡に起因する処理ムラを確実に防止できる。
【0042】
また、本発明において、前記一方側電極と前記他方側電極とに印加する直流電圧の極性を交互に切り替える切り替え回路をさらに備えていることが好ましい(請求項17)。
【0043】
切り替え回路が一方側電極と他方側電極とに印加する直流電圧の極性を交互に切り替えるので、基板の両面に対して化成反応処理を行うことができる。
【0044】
また、本発明において、複数枚の基板を互いに平行に整列させて支持する整列台と、前記整列台を前記受け渡し位置と、前記受け渡し位置とは異なる前記外部受け渡し位置との間で移動させる整列台移動機構とを備え、前記移動機構は、前記受け渡し位置にある整列台に支持された複数枚の基板を前記保持手段により保持させた後、前記貯留槽に搬送することが好ましい(請求項18)。
【0045】
整列台に複数枚の基板を載置することにより、複数枚の基板を互いに平行に整列させることができる。整列された複数枚の基板は、整列台ごと整列台移動機構により受け渡し位置と外部受け渡し位置との間で移動される。受け渡し位置に整列台が移動されたときに、保持手段が貯留槽に複数枚の基板を搬送できるので、貯留槽内で複数枚の基板を整列状態で処理でき、化成反応処理を各基板に対して均等に行わせることができる。
【0046】
また、本発明において、前記整列台移動機構の移動経路近傍に、当該移動経路にある前記整列台の前記基板に対して洗浄液を供給する洗浄機構をさらに備えたことが好ましい(請求項19)。
【0047】
整列台移動機構の移動経路近傍には、洗浄機構が配置されているので、整列台を移動している間に整列台に載置された基板を洗浄することができる。したがって、処理のスループットを向上させることができる。
【0048】
また、本発明において、上記の陽極化成装置と、前記陽極化成装置の上流側に隣接して配置され、前記整列台を備えた待機槽と、前記待機槽の上流側に配置され、未処理の基板を載置するローダと、前記陽極化成装置の下流側に配置され、化成反応処理を終えた基板に対して洗浄処理を行う洗浄槽と、前記洗浄槽の下流側に配置され、洗浄処理を終えた基板に対して乾燥処理を行う乾燥槽と、前記乾燥槽の下流側に配置され、処理済の基板を載置するアンローダと、前記ローダと前記待機槽との間で基板を搬送する第1の搬送機構と、前記待機槽と前記陽極化成装置との間、及び、前記陽極化成装置と前記洗浄槽との間で基板を搬送する前記保持手段および前記移動機構とを備えた第2の搬送機構と、前記洗浄槽と前記乾燥槽との間で基板を搬送する第3の搬送機構と、前記乾燥槽と前記アンローダとの間で基板を搬送する第4の搬送機構と、を備えていることが好ましい(請求項20)。
【0049】
ローダに載置された未処理の基板は、第1の搬送機構により待機槽に搬送されて整列され、待機槽に載置された未処理の基板は、整列された状態で第2の搬送機構によって陽極化成装置に搬送される。陽極化成装置で処理された基板は、第2の搬送機構により陽極化成装置から洗浄槽に搬送される。洗浄槽にて洗浄された基板は、第3の搬送機構により洗浄槽から乾燥槽へ移動され、乾燥槽で処理された基板は、第4の搬送機構により乾燥槽からアンローダへ搬送される。したがって、陽極化成装置で処理された複数枚の基板が、処理のための次の槽に効率的に搬送されるので、化成反応処理のスループットを向上させることができる。
【0050】
また、本発明において、上記の陽極化成装置を複数台並設して備え、前記複数台の陽極化成装置の最上流側に配置され、未処理の基板を載置するローダと、前記複数台の陽極化成装置の最下流側に配置され、化成反応処理および洗浄処理を終えた基板に対して乾燥処理を行う乾燥槽と、前記乾燥槽の下流側に配置され、処理済の基板を載置するアンローダと、前記ローダと前記各外部受け渡し位置との間で基板を搬送する第1の搬送機構と、前記各外部受け渡し位置と前記乾燥槽との間で基板を搬送する第2の搬送機構と、前記乾燥槽と前記アンローダとの間で基板を搬送する第3の搬送機構と、を備えていることが好ましい(請求項21)。
【0051】
陽極化成装置を複数台並設して備え、複数台の陽極化成装置の最下流側には乾燥槽を備えている。ローダに載置された未処理の基板は、第1の搬送機構により、各外部受け渡し位置に搬送され、各陽極化成装置で化成反応処理が行われる。陽極化成処理が行われた基板は、洗浄機構で洗浄された後、第2の搬送機構により、乾燥槽へ搬送される。乾燥処理が行われた基板は、第3の搬送機構により、アンローダへ搬送される。したがって、複数台の陽極化成装置を備えて大量の基板を処理することができるとともに、処理された複数枚の基板が、処理のための次の槽に効率的に搬送されるので、化成反応処理のスループットをより向上させることができる。
【0052】
また、請求項22に記載の発明は、電解質溶液に基板を浸漬させて陽極化成反応を行う陽極化成装置において、電解質溶液を貯留する貯留槽と、前記基板と同形状の断面を有する中空部を内部に形成し、前記中空部の内部に複数枚の基板を、それぞれの基板の周面を液密な状態で保持可能な保持手段と、保持手段が形成する前記中空部の両端に配置された一対の電極と、前記一対の電極に直流電圧を印加する電気回路と、前記貯留槽の外部にあたる受け渡し位置と、前記貯留槽の内部にあたる処理位置とにわたって前記保持手段を移動する移動機構とを備え、複数枚の基板を保持した前記保持手段を前記処理位置に移動させて、前記中空部を前記電解質溶液で満たし、前記複数枚の基板の周面を液密、かつ、電気的に分離絶縁にした状態で化成反応処理を行わせ、化成反応処理が終了した後、前記保持手段を前記処理位置から移動させて、複数枚の基板を前記貯留槽から搬出することを特徴とするものである。
【0053】
[作用・効果]請求項22に記載の発明によれば、複数枚の基板を保持した保持手段を処理位置に移動させて、中空部を電解質溶液で満たし、複数枚の基板の周面を液密、かつ、電気的に分離絶縁にした状態で化成反応処理を行わせ、化成反応処理が終了した後、保持手段を処理位置から移動させて、複数枚の基板を貯留槽から搬出する。したがって、保持手段の中空部に複数枚の基板を保持させることにより、複数枚の基板を機械的に貯留槽に対して搬入出させることができる。その結果、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置を実現することができる。
【0054】
また、請求項23に記載の半導体ウエハは、上記の陽極化成装置を用いて陽極化成処理を行うことにより、半導体ウエハの表裏両面において、面内に渡り、均一な厚み、孔径、孔密度に形成した多孔質層を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る陽極化成装置によれば、保持手段で複数枚の基板を保持した状態で移動機構が保持手段を処理位置に移動させるとともに閉止手段を作動させると、貯留槽の内部において、複数枚の基板の周面が電解質溶液に対して液密にされる。この状態で化成反応処理を行った後、閉止手段を非作動とするとともに移動機構が受け渡し位置にまで保持手段を複数枚の基板とともに移動させることにより、複数枚の基板が貯留槽から搬出される。したがって、保持手段が閉止手段と協働して基板を液密に保持可能な構成とすることにより、複数枚の基板を機械的に貯留槽に対して搬入出させることができる。その結果、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示し、正面からみた縦断面図である。
【図2】実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示し、側面から見た縦断面図である。
【図3】実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示す平面図である。
【図4】搬送ロボット及び下部ホルダの概略構成を示す正面図である。
【図5】下部ホルダの概略構成を示す正面図である。
【図6】上部ホルダの概略構成を示す正面図である。
【図7】上側ホルダ部及び左側ホルダ部並びに下部ホルダを中心部側から見た一部断面図である。
【図8】排気機構の概略構成を示す縦断面図である。
【図9】整列台の一部を切り欠いた正面図である。
【図10】整列台から基板を搬送する際の動作説明図であり、(a)は下降時の状態を示し、(b)は把持した状態を示す。
【図11】貯留槽に基板を搬入する際の動作説明図であり、(a)は下降時の状態を示し、(b)は閉止した状態を示す。
【図12】実施例に係る陽極化成システムの概略構成を示す平面図である。
【図13】他の実施例に係る陽極化成システムの概略構成を示す平面図である。
【図14】陽極化成装置による基板Wの多孔質化の原理を示す模式図である。
【図15】陽極化成装置の変形例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
<陽極化成装置>
以下、図面を参照して本発明に係る陽極化成装置の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示し、正面からみた縦断面図であり、図2は、実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示し、側面から見た縦断面図であり、図3は、実施例に係る陽極化成装置の概略構成を示す平面図である。
【0058】
実施例に係る陽極化成装置1は、複数枚の基板Wに対して同時に陽極化成反応を生じさせて、例えば、シリコン基板に対して多孔質化の処理を行う機能を備えている。この陽極化成装置1は、外容器3と、内容器5とを備えている。内容器5は、外容器3の内部に配置されている。なお、図1では、図示の関係上、外容器3を省略している。また、本実施例では、基板Wとして矩形状の角形基板を例に採って説明する。
【0059】
内容器5の内部には、内槽13が配置され、その内槽13と外容器5との間に外槽15が形成される。内槽13と外槽15とから貯留槽11が構成される。貯留槽11は、電解質溶液を貯留している。電解質溶液は、例えば、フッ化水素酸溶液:イソプロピルアルコール:純水=1:1:1の混合溶液であって、図示しない秤量槽から内槽13の底部に供給される。内槽13を構成する隔壁13aは、外槽15を構成する内容器5の高さより若干低くなっていて、内槽13から溢れた電解質溶液が外槽15で回収される。
【0060】
内槽13内には、内槽13内に貯留される電解質溶液に浸漬する位置に電極17,19が設けられている。
【0061】
電極17,19は、図2に示すように、直流電圧の極性を所定の周期で交互に切り替える切り替え回路21に電気的に接続されている。切り替え回路21には、一対の電極17,19に直流電圧を印加する電気回路22が接続されている。電極17,19は、切り替え回路21側に接続される金属と、電解質溶液に触れる側にシリコン基板とを備えた二重構造であることが好ましい。金属としては、電解質溶液に耐性を有するものであればどのようなものであってもよいが、例えば、白金、パラジウム、金、銀、銅などが挙げられる。電解質溶液は、上述したようにフッ化水素酸が含まれるので、たとえ、フッ化水素酸に対してある程度の耐性を有していても金属成分が溶出する。しかし、電解質溶液に触れる側にシリコン基板を備えた二重構造とすることにより、処理対象の基板が異種の金属によって汚染されることを防止できる。
【0062】
また、あるいは、電極17,19として、炭素グラファイトを用いることができる。例えば、不純物濃度5ppm以下の高純度の炭素グラファイトであって、一般的な炭素グラファイトに存在する気孔に高純度グラファイトを充填して高稠密化、高密度化したものが、不純物の電解質溶液への混入防止や耐久性の面から好ましい。
【0063】
電極17,19は、図2に示すように、それぞれ電気絶縁性をもつ隔壁23、29に取り付けられている。以下さらに詳細に説明する。隔壁23、29は、それぞれ内槽13の底部に設けられた軸Pに回動可能に取り付けられている。そして、内槽13内において、後述のように「処理位置」に上部ホルダ61が位置しているときに、その上部ホルダ61が保持している複数の基板Wのうち、両端にある基板Wにそれぞれ臨むように、隔壁23、29は配置されている。電極17,19は、それぞれ隔壁23、29の「処理位置」側の面に取り付けられている。隔壁23の電極17の周囲には、電極17を囲う環状の突起35が設けられている。同様に、隔壁29の電極19の周囲には、電極19を囲う環状の突起37が設けられている。環状の突起35,37は電気絶縁性を持つ素材により形成され、その内径は、後述する中空部107の内径と同程度にされている。また、隔壁23,29は、図示しない揺動機構により、揺動駆動される。基板Wの搬入出時に、すなわち上部ホルダ61の内槽13への出し入れ時は、隔壁23,29は、図2中に二点鎖線で示すように軸P周りに、上部が互いに離れる方向に開放するように揺動される。これにより、後述する上部ホルダ61の搬入出時の干渉を防止する。また、上部ホルダ61が処理位置に移動した後に、隔壁23,29は、隔壁23,29の上部が互いに近づく方向に閉止するように揺動されることで、後述する弾性部材47に対して環状の突起35、37の先端側が食い込み、中空部107内の電解質溶液と、その外側の内槽13内の電解質溶液との間を隔絶し、その間における電解質溶液の移動を防止するようになっている。これにより、処理中における電解質溶液の中空部107からの漏出や濃度変動を防止でき、処理ムラを防止できる。
【0064】
内槽13の底部には、下部ホルダ39が設けられている。この下部ホルダ39が設けられているのは、基板Wの「処理位置」の下方にあたる位置である。下部ホルダ39の上方には、下部ホルダ39の上部にあたる「処理位置」と、外容器3の外部にあたる「受け渡し位置」との間で基板Wを搬送可能な搬送ロボット41が設けられている。
【0065】
ここで、図4〜図6を参照する。なお、図4は、搬送ロボット及び下部ホルダの概略構成を示す正面図であり、図5は、下部ホルダの概略構成を示す正面図であり、図6は、上部ホルダの概略構成を示す正面図である。
【0066】
図5を参照する。下部ホルダ39は、ホルダ本体43と、V溝部45と、弾性部材47と、係合部材49と、移動片51とを備えている。ホルダ本体43は、ブロック状を呈し、図3に示すように、ホルダ本体43の短辺における中央部に、ホルダ本体43の長辺に沿ってV溝部45が形成されている。このV溝部45には、弾性部材47の両端部がV溝部45の上部から突出し、V溝部45の上面に沿うように弾性部材47が取り付けられている。V溝部45の左右方向におけるホルダ本体43の側面には、ホルダ本体43の上面から突出した状態で係合部材49が取り付けられている。ホルダ本体43の上面であってV溝部45の側方には、移動片51が水平方向に移動自在に取り付けられている。
【0067】
弾性部材47は、電気絶縁性及び電解質溶液への耐性を有するものであって、弾性を有するものであれば、どのような部材であってもよい。弾性部材47の具体的な部材としては、例えば、フッ素系の材料からなる発泡体が挙げられる。より具体的には、Zotefoams社のZOTEK(登録商標)が挙げられる。なお、弾性部材47は、例えば、基板Wの周面側に位置する第1の部材53と、第1の部材53と、第1の部材53より外側に位置する第2の部材55との二層構造で構成することが好ましい。また、第1の部材53と第2の部材55とは、異なる弾性率とするのが好ましく、第1の部材53は第2の部材55よりも弾性率が小さいことが好ましい。つまり、第1の部材53は、第2の部材55よりも柔らかいことが好ましい。また、別の定義では、第1の部材53は、第2の部材55よりも圧縮硬さが小さいことが好ましい。第1の部材53は、基板Wの周面側が、溝や突起などが一切なく、平坦で均一な面を備えている。したがって、基板Wの周面に隣接する基板Wの主面(表裏面)への電解質溶液の回り込みを阻害する部材がなく、電解質溶液中を進行する化成電流の均一な流動を阻害することがないので、基板Wの主面での処理ムラが防止できる。
【0068】
上記のように弾性率が異なる二種類の部材により弾性部材47が二層構造で構成されているので、基板Wを挟み込んだ際に、基板Wの位置を安定的に保持することができるとともに、基板Wの周面を確実に液密できる。また、二種類の部材の弾性率などを適当に選択することによって、基板Wの周縁が弾性部材47に押し付けられて食い込み密接する幅(深さ)を設定することができる。弾性部材47に食い込んで密接する基板Wの部位には電解質溶液は作用せず、当該部分には多孔質層は形成されないので、上述した第1の部材53、第2の素材や形状構造等を適切に選択するなど弾性率を設定することで、この多孔質層の未形成部分の幅を任意に設定することができ、例えば、より基板端面に近接した領域まで多孔質層を形成することが可能となる。
【0069】
弾性部材47は、その外面が、V溝部45の中央部に形成された凹部58に中央部が差し込まれて取り付けられている。したがって、弾性部材47は、その内面を矩形状の基板Wの角部に近い形状とすることができ、基板Wの角部における密着性を向上できる。
【0070】
ホルダ本体43の両側面に取り付けられている係合部材49は、上部の内側に、外側に向かって高く形成された傾斜面57が形成されている。これらの傾斜面57は、後述する左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69の下部係合凹部79と係合する。
【0071】
ホルダ本体43の上面のうち、弾性部材47の両上端部の外側には、一対の移動片51が取り付けられている。これらの移動片51は、弾性部材47のうち、ホルダ本体43の上面から突出した部分の外側面を押圧する位置と、押圧しない位置とにわたって移動可能に取り付けられている。これらの移動片51自身は、移動手段を備えず、後述する左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69の下部押圧ネジ83が移動してくることによって移動される。これにより、弾性部材47の両上端部が基板Wの周面側へ押圧される。
【0072】
なお、上述した下部ホルダ39が本発明における「閉止手段」及び「第1閉止手段」に相当する。また、上述した傾斜面57が本発明における「第4傾斜面」に相当する。
【0073】
図2に示すように、搬送ロボット41は、吊り下げユニット59と、上部ホルダ61と、移動機構63とを備えている。
【0074】
吊り下げユニット59は、下部に4本の懸垂アーム65を備えている。上部ホルダ61は、これらの懸垂アーム65に支持されている。左右の懸垂アーム65は、図4中に実線及び二点鎖線で示すように、互いに近づいたり離れたりするように水平方向に移動可能に上部が吊り下げユニット59に取り付けられている。その移動は、吊り下げユニット59によって行われる。上部ホルダ61は、移動機構63により、内槽13の内部にあたる「処理位置」と、外容器3の外部にあたる「受け渡し位置」との間で移動される。移動機構63は、上部ホルダ61を昇降移動させたり、水平移動させたりすることができる。
【0075】
上部ホルダ61は、左側ホルダ部67と、右側ホルダ69部と、上側ホルダ部71とを備えている。左側ホルダ部67は、正面から見て基板Wの左側周面に当接する。右側ホルダ部69は、正面から見て基板Wの右側周面に当接する。
【0076】
左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とは、同一の構成を左右反転した構造であるので、ここでは左側ホルダ部67について説明する。
【0077】
左側ホルダ部67は、懸垂アーム65の下端側に設けられている。但し、懸垂アーム65の下端部において上下方向に移動降自在に取り付けられている。ホルダ本体73は、弾性部材47と、横V溝部75と、上部係合凹部77と、下部係合凹部79と、上部押圧ネジ81と、下部押圧ネジ83とを備えている。横V溝部75には、弾性部材47の上下端部が横V溝部75の側方及び上下方向に突出し、横V溝部75の側面に沿うように弾性部材47が取り付けられている。また、ホルダ本体73の中央部に凹部85が形成されており、弾性部材47の中央部が凹部85に差し込まれて取り付けられている。
【0078】
上部係合凹部77は、ホルダ本体73の上面であって、懸垂アーム65側に形成されている。また、上部係合凹部77は、弾性部材47側の側壁に、外側が低くなる傾斜面87を形成されている。また、下部係合凹部79は、ホルダ本体73の下面であって、懸垂アーム65側に形成されている。また、下部係合凹部79は、弾性部材47側の側壁に、外側が低くなる傾斜面89を形成されている。
【0079】
なお、上述した傾斜面87が本発明における「第1傾斜面」に相当し、傾斜面89が本発明における「第3傾斜面」に相当する。また、上述した上側ホルダ部71が本発明における「第2閉止部材」に相当する。
【0080】
上側ホルダ部71は、ホルダ本体91と、逆V溝部93と、弾性部材47と、係合部材95と、移動片97と、係止バー99とを備えている。ホルダ本体91は、逆V溝部93が中央部下面に形成されている。この逆V溝部93には、弾性部材47の両端部が逆V溝部93の下部から突出し、逆V溝部93の天井面に沿うように弾性部材47が取り付けられている。また、ホルダ本体91の中央部には、凹部101が形成されており、弾性部材47の中央部が凹部101に差し込まれて取り付けられている。
【0081】
係合部材95は、ホルダ本体71の両側面に、ホルダ本体71の下面から突出した状態で取り付けられている。係合部材95は、下部の内側に、外側に向かって低くなる傾斜面103が形成されている。係合部材95は、左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69の上部係合凹部77に対応する位置に取り付けられている。
【0082】
ホルダ本体91の下面のうち、弾性部材47の両下端部の外側には、一対の移動片97が取り付けられている。これらの移動片97は、弾性部材47のうち、ホルダ本体91の下面から突出した部分の外側面を押圧する位置と、押圧しない位置とにわたって移動可能に取り付けられている。これらの移動片97自身は、移動手段を備えず、左側ホルダ部69及び右側ホルダ部71の上部押圧ネジ81が押圧することで移動される。これにより、弾性部材47の両下端部が基板Wの周面側へ押圧される。
【0083】
上述した上側ホルダ部71は、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69の上部に載置されているだけであり、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とは固定されていない。また、上側ホルダ部71は、4本の懸垂アーム65のうち、前後の2本の懸垂アーム65の間に位置するように、左右で2本、合計4本の係止バー99をホルダ本体91の側面に備えている。これらの係止バー99は、後述する整列台131から基板Wを受け取る際に、基板Wの上方に一時的に係止されるのに利用される。
【0084】
上述した上側ホルダ部71は、上部に排気機構105を備えている。図1及び図2に示すように、上部ホルダ61と下部ホルダ39とが連結されると、弾性部材47で囲われた中空部107が形成される。この中空部107では、陽極化成反応により気泡が生じて、浮力により中空部107の天井部に集まってくる。この気泡を排出するのが排気機構105である。
【0085】
なお、上述した上部ホルダ61と、上側ホルダ部71と、左側ホルダ部67と、右側ホルダ部69とが本発明における「保持手段」に相当する。また、上述した左側ホルダ部67が本発明における「第1ホルダ部」に相当し、右側ホルダ部69が本発明における「第2ホルダ部」に相当し、吊り下げユニット59が本発明における「開閉駆動部」に相当する。また、傾斜面103が本発明における「第2傾斜面」に相当する。
【0086】
ここで、図7及び図8を参照する。なお、図7は、上側ホルダ部及び左側ホルダ部並びに下部ホルダを中心部側から見た一部断面図であり、図8は、排気機構の概略構成を示す縦断面図である。
【0087】
排気機構105は、複数個の排気通路113と、複数個の弾性部材通路115とを備えている。複数個の排気通路113は、上側ホルダ部71のホルダ本体91における凹部101の内側天井面から上面に連通し、上部開口部が貯留槽11の液面より上に位置するように形成されている。また、弾性部材通路115は、上側ホルダ部71の弾性部材47に形成されており、各弾性部材通路115は各排気通路113に対応する位置に形成され、連通接続されている。各弾性部材通路115は、複数枚の基板Wを保持した際に、各基板Wの間に位置するように形成されている。
【0088】
また、排気機構105は、排気通路ブロック117と、取付部材119とを備えている。排気通路ブロック117は、複数個のブロック通路121と、板状部材123と、複数個の隔壁部125とを備えている。複数個のブロック通路121は、各排気通路113に連通するように板状部材123に形成されている。複数個の隔壁部125は、各ブロック通路121の間で、弾性部材47側に突出して形成されている。各隔壁部125の下端部は、弾性部材47の上面に差し込まれている。取付部材119は、ホルダ本体91の上面に取り付けられ、各排気通路113の気体を排出する。
【0089】
上述した弾性部材47は、図7に示すように、上側ホルダ部71のホルダ本体91と、左側ホルダ部67のホルダ本体73と、下部ホルダ39のホルダ本体43とに樹脂製の複数個のピン127と、取付ネジ129とで固定されている。複数個のピン127は、V溝部45、横V溝部75、逆V溝部93の表面から突出して形成されており、弾性部材47に差し込まれているが貫通しておらず、取付ネジ129は、基板Wの保持位置から外れた位置に弾性部材47の表面側から取り付けられている。したがって、弾性部材47は、基板Wの全周面にわたって平坦で均一になっている。これにより、電解質溶液が基板Wの表裏面に均等にゆきわたる上に、化成電流の注入が阻害されずに、処理ムラを防止できる。
【0090】
また、貯留槽11は、図1に示すように、加圧アーム130を備えている。この加圧アーム130は、上述した上部ホルダ61が処理位置(図1)に移動した状態で、上側ホルダ部71の上面を押圧して、上側ホルダ部71を介して左側ホルダ部67と右側ホルダ部69を下部ホルダ39側へ加圧する。
【0091】
なお、上述した加圧アーム130が本発明における「押圧機構」に相当する。
【0092】
次に、図9を参照する。なお、図9は、整列台の一部を切り欠いた正面図である。
【0093】
整列台131は、上述した搬送ロボット41の受け渡し位置に配置される。整列台13は、頂部保持部133と、一対の辺保持部135とを備えている。整列台131は、これらの保持部により、矩形状の基板Wを、対向する一方の一対の角が垂直に、対向する他方の一対の角が水平になるように保持する。また、各辺保持部135は、基板Wの下向きとなる辺の中央部を当接して保持する。各頂部保持部133と各辺保持部15とは、図9の紙面の奥方向に所定の間隔で複数個設けられている。
【0094】
次に図10を参照する。なお、図10は、整列台から基板を搬送する際の動作説明図であり、(a)は下降時の状態を示し、(b)は把持した状態を示す。
【0095】
まず、移動機構63が吊り下げ機構59を整列台131の上方に位置させる。そして、懸垂アーム65を端部側に移動させて、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とを互いに離反させる。次に、吊り下げ機構59を下降させて、上部ホルダ61を整列台131に向かって移動させる(図10(a))。このとき、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とは離反しているので、基板Wの角が接触することはない。なお、下降時には、図示しない係止部に係止バー99が係止され、上側ホルダ部71は、基板Wの上の角から離れた位置に停止する。したがって、基板Wに負荷がかからず、基板Wの破損を防止できる。そして、懸垂アーム65を中央側に移動させて、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とを互いに接近させて、基板Wの水平方向にある一対の角を把持させる(図10(b))。
【0096】
次に、吊り下げ機構59を上昇させる。すると、上に位置する上側ホルダ部71が左側ホルダ部67と右側ホルダ部69と連結される。このとき、係合部材95が上部係合凹部77にはまり込む。すると、係合部材95の傾斜面103と上部係合凹部77の傾斜面87との摺動により、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とが基板Wの中心側へ加圧される。したがって、基板Wの周面が確実に液密に保持される。また、このとき移動片97が上部押圧ネジ81により中央部側へ移動されるので、上側ホルダ部71の弾性部材47と、左側ホルダ部67の弾性部材47及び右側ホルダ部69の弾性部材47との端部が押圧される。したがって、弾性部材47同士の継ぎ目を密着させることができ、基板Wの周面を確実に液密にできる。
【0097】
次に図11を参照する。なお、図11は、貯留槽に基板を搬入する際の動作説明図であり、(a)は下降時の状態を示し、(b)は閉止した状態を示す。なお、このとき(基板Wの搬入出時)、隔壁23,29は、図2中で二点鎖線で示すように軸P周りに、上部が互いに離れる方向に開放するように揺動されている。
【0098】
移動機構63が吊り下げ機構59を移動させて、前述の電解質溶液を貯留した状態の貯留槽11の上方に移動させる。そして、上部ホルダ61を内槽13内の下部ホルダ39に向かって下降させる(図11(a))。このとき、上部ホルダ61に保持されている基板Wの上部と下部は開放されており、基板Wの間に電解質溶液が流れ込んで満たされる。基板Wの下部の角が下部ホルダ39の弾性部材47に当接した時点で下降を停止させる(図11(b))。このとき、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69の下部係合凹部79に、下部ホルダ39の係合部材49がはまり込む。すると、係合部材49の傾斜面57と左側ホルダ部67と右側ホルダ部69の傾斜面89とが摺動し、左側ホルダ部67と右側ホルダ部69とが基板Wの中心側へ加圧される。したがって、基板Wの周面が確実に液密にされる。また、このとき移動片51が中心側へ下部押圧ネジ83によって移動されるので、下部ホルダ39の弾性部材47と、左側ホルダ部67の弾性部材47及び右側ホルダ部69の弾性部材47との端部が押圧される。したがって、弾性部材47の同士の継ぎ目を密着させることができ、基板Wの全周面を確実に液密にできる。このときの上部ホルダ61の位置が処理位置である。
【0099】
さらに、加圧アーム130を作動させて、上側ホルダ部71を左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69に押圧させる。したがって、上側ホルダ部711と、左側ホルダ部67と、右側ホルダ部69とが、下部ホルダ39に押圧される。その結果、基板Wの中心部に向かって各弾性部材47が密着されるので、基板Wの全周面が強固に液密な状態とされる。この結果、上部ホルダ61と下部ホルダ39により形成される中空部107内において、保持されている基板Wの間に流れ込んだ電解質溶液は、中空部107の外側の内槽13内の電解質溶液とは隔絶され、電気的にも絶縁される。
【0100】
このとき、さらに、隔壁23,29が、隔壁23,29の上部が互いに近づく方向に閉止するように揺動される。これにより、上部ホルダ61と下部ホルダ39の弾性部材47に対して環状の突起35、37の先端側が食い込み、保持されている複数の基板Wのうち両端の基板Wと電極17、19の間の電解質溶液も、その外側の内槽13内の電解質溶液との間が隔絶されることになる。
【0101】
上記のように複数枚の基板Wを貯留槽11の内槽13内の処理位置に移動させて、中空部107の内側と外側の電解質溶液を電気的に絶縁した状態で、電気回路22から所定の電圧を印加し、切り替え回路21でその極性を所定の周期で切り替える。すると、中空部107の複数枚の基板Wに対しては、電極17−電解質溶液−基板W−電解質溶液−基板W−……−電解室溶液−基板W−電解質溶液−電極19の回路が形成され、流れる電流により、全周面を除く表裏面に陽極化成反応が生じ、多孔質化が行われる。ただし、弾性部材47と密接していて電解質溶液と接触していない基板Wの全周面には反応は起こらず、多孔質化は行なわれない。複数枚の基板Wは、整列台131で所定の間隔に整列されて貯留槽1に搬入されているので、化成反応処理を各基板Wに対して均等に行わせることができる。
【0102】
図14はこの処理の様子を模式的に示す図である。両端の電極17、19と隔壁23、29によって閉止された中空部107内の電解質溶液L’は、中空部107の外部の電解質溶液Lとは完全に隔絶され、かつ隣接する基板Wと基板Wの間隙にある処理液L’に関しても、隣接する間隙ごとに隔絶され、電気的にも絶縁されている。この状態で、電気回路22、切り替え回路21により電流が供給されると、中空部107内の基板W全てに均一な電流が流れ、全ての基板Wの表面と裏面に均一な多孔質層plが形成される。ここで形成される多孔質層plは、基板の表裏に渡っても、同一の均一性と対象性を持ったものであり、このような多孔質層plの形成は過去に実現しえたことが無かった。
【0103】
所定時間の陽極化成反応を行った後、上述した搬送手順を逆に行うことにより、複数枚の基板Wを整列台131に払い出す。これにより、複数枚の基板Wの多孔質化を行うことができ、しかも、両面に均一な厚み、孔径、孔密度の多孔質層を形成することができる。
【0104】
上述した実施例に係る陽極化成装置1は、左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69で複数枚の基板Wを保持した状態で移動機構63が左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69を処理位置に移動させるとともに、それらを上側ホルダ部71及び下部ホルダ39と連結させると、貯留槽11の内部において、複数枚の基板Wの全周面が電解質溶液に対して液密にされる。この状態で化成反応処理を行った後、上側ホルダ部71及び下部ホルダ39と左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69との連結を解除するとともに移動機構63が受け渡し位置にまで左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69を複数枚の基板Wとともに移動させることにより、複数枚の基板Wが貯留槽11から搬出される。したがって、左側ホルダ部67及び右側ホルダ部69が上側ホルダ部71及び下部ホルダ39と協働して基板Wを液密に保持可能な構成とすることにより、複数枚の基板Wを機械的に貯留槽11に対して搬入出させることができる。その結果、自動化及びバッチ処理に好適な陽極化成装置1を実現することができる。
【0105】
<陽極化成システム1>
次に、図12を参照して、上述した陽極化成装置1を備えた陽極化成システムS1について説明する。なお、図12は、実施例に係る陽極化成システムの概略構成を示す平面図である。
【0106】
この陽極化成システムS1は、陽極化成装置1の上流側に隣接して配置され、整列台131を備えた待機槽201と、待機槽201の上流側に配置され、未処理の基板Wを載置するローダ203と、陽極化成装置1の下流側に配置され、化成反応処理を終えた基板Wに対して洗浄処理を行う洗浄槽205と、洗浄槽205の下流側に配置され、洗浄処理を終えた基板Wに対して乾燥処理を行う乾燥槽207と、乾燥槽207の下流側に配置され、処理済の基板Wを載置するアンローダ209と、ローダ203と待機槽201との間で基板Wを搬送する第1の搬送機構211と、待機槽201と陽極化成装置1との間、及び、陽極化成装置1と洗浄槽205との間で基板Wを搬送する第2の搬送機構213と、洗浄槽205と乾燥槽207との間で基板Wを搬送する第3の搬送機構215と、乾燥槽207とアンローダ209との間で基板Wを搬送する第4の搬送機構217とを備えている。
【0107】
なお、第2の搬送機構213は、上述した搬送ロボット41である。
【0108】
このような構成の陽極化成システムS1によると、ローダ203に載置された未処理の基板Wは、第1の搬送機構211により待機槽210に搬送されて整列され、待機槽210に載置された未処理の基板Wは、整列された状態で第2の搬送機構213により陽極化成装置1に搬送される。陽極化成装置1で処理された基板Wは、第2の搬送機構215により陽極化成装置1から洗浄槽205に搬送される。洗浄槽205にて洗浄された基板Wは、第3の搬送機構215により洗浄槽205から乾燥槽207へ移動され、乾燥槽207で処理された基板Wは、第4の搬送機構217により乾燥槽207からアンローダ209へ搬送される。したがって、陽極化成装置1で処理された複数枚の基板Wが、処理のための次の槽に効率的に搬送されるので、化成反応処理のスループットを向上させることができる。
【0109】
<陽極化成システム2>
次に、図13を参照して、上述した陽極化成装置1を備えた陽極化成システムS2について説明する。なお、図13は、他の実施例に係る陽極化成システムの概略構成を示す平面図である。
【0110】
この陽極化成システムS2は、上記の陽極化成装置1を例えば3台並設して備え、3台の陽極化成装置1の最上流側に配置され、未処理の基板Wを載置するローダ301と、3台の陽極化成装置1の最下流側に配置され、化成反応処理および洗浄処理を終えた基板Wに対して乾燥処理を行う乾燥槽303を例えば3台並設して備え、乾燥槽303の下流側に配置され、処理済の基板Wを載置するアンローダ305と、ローダ301と各外部受け渡し位置307との間で基板Wを搬送する第1の搬送機構309と、各外部受け渡し位置307と乾燥槽303との間で基板Wを搬送する第2の搬送機構311と、3台の乾燥槽303とアンローダ305との間で基板Wを搬送する第3の搬送機構313とを備えている。
【0111】
整列台131は、陽極化成装置1と第1の搬送機構309の搬送経路との間にわたって移動可能に構成されている。具体的には、陽極化成装置1に隣接した受け渡し位置315と、第1の搬送機構309の搬送経路側の外部受け渡し位置307とにわたって、整列台131を移動する整列台移動機構317を備えている。また、この整列台131の移動経路に沿って、洗浄機構319を備えている。
【0112】
洗浄機構319は、整列台131に対して純水などの洗浄液を供給する。洗浄液の供給は、整列台131に処理済の基板Wが載置された時点から、整列台131が外部受け渡し位置307に移動されるまで行われる。この洗浄液の供給により、陽極化成装置1から受け渡し位置315の整列台131に搬出された処理済の基板Wを洗浄することができる。したがって、陽極化成システムS1のように洗浄槽205に移動させる手間が省けるので、スループットを向上させることができる。また、基板Wに電解質溶液が付着したままの時間を一定化することができ、基板Wの仕上がり状態を一定にすることができる。
【0113】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0114】
(1)本装置で処理可能な基板Wの形状は、上述した実施例の正方形の角型基板である必要は無く、一般に集積回路の製造に使用される円形状で基板の面内方位を指示するノッチや、所謂オリエンテーションフラット部を持った基板でも、当該基板を包囲するホルダ類の形状を整合させることにより、同様にして基板表面および裏面に対して均一な多孔質層の形成が可能となる。例えば、図15(a)の模式的正面図に示すように、陽極化成装置の上部ホルダ61を構成する左側ホルダ部67と右側ホルダ69部と上側ホルダ部71と、下部ホルダ39の形状を、円形の基板Wの周縁と適合する形状に構成すれば、円形基板Wの処理が可能である。
【0115】
また、図示は省略するが、多角形や長方形、又、楕円形状などのいかなる形状を持った基板に対しても、それらを処理するために本方式の陽極化成装置を適用することができ、また多孔質層を形成したそれらの形状の基板を得ることができる。
【0116】
(2)上述した実施例に係る陽極化成装置1では、上側ホルダ部71と、左側ホルダ部67と、右側ホルダ部69との3つの部材で保持手段を構成した。しかしながら、本発明は、このような構成の保持手段に限定されるものではない。例えば、左側ホルダ部と右側ホルダ部とを下向きの挟みのように構成して保持手段としてもよい。
【0117】
具体的には、例えば、図15(b)、(c)の模式的正面図に示すように、上部ホルダ61を、主として左側ホルダ部67と右側ホルダ69部の2つの部材から構成してもよい。この場合、左側ホルダ部67と右側ホルダ69部とは、複数の基板Wの周面と液密な状態で接触して保持して搬送可能であり、かつ処理時においては下部ホルダ39と協働して基板Wの周面の液密な閉止を基板Wの全周面にわたって完成することができる形状となっている。なお、これら図15は各部の大まかな形状を説明するための模式的な図であるから、各部の詳細な図示は省略しているが、上述した実施例で説明した弾性部材や排気通路などが適宜に設けられていることは言うまでもない。
【0118】
(3)上述した実施例に係る陽極化成装置1では、処理対象の矩形状の基板Wを、対向する一方の一対の角が垂直に、対向する他方の一対の角が水平になるように保持している。しかしながら、本発明はこのような姿勢での保持に限定されない。例えば、矩形状の基板Wの対向する二辺が水平となる姿勢での保持としてもよい。
【0119】
(4)上述した実施例に係る陽極化成装置1では、矩形状の基板Wを処理対象としているが、本発明はそれ以外の形状の基板Wを処理対象とすることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 … 陽極化成装置
W … 基板
7,9 … 一対の電極槽
11 … 貯留槽
13 … 内槽
15 … 外槽
39 … 下部ホルダ
41 … 搬送ロボット
47 … 弾性部材
61 … 上部ホルダ
67 … 左側ホルダ部
69 … 右側ホルダ部
71 … 上側ホルダ部
131 … 整列台
S1,S2 … 陽極化成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質溶液に基板を浸漬させて陽極化成反応を行う陽極化成装置において、
電解質溶液を貯留する貯留槽と、
複数枚の基板を、基板の周面と液密な状態で接触して保持可能な保持手段と、
前記貯留槽の外部にあたる受け渡し位置と、前記貯留槽の内部にあたる処理位置とにわたって前記保持手段を移動する移動機構と、
前記貯留槽内において、前記保持手段と協働して前記保持手段が保持する前記複数枚の基板の周面の液密な閉止を完成する閉止手段とを備え、
複数枚の基板を保持した前記保持手段を前記処理位置に移動させるとともに前記閉止手段を作動させて、複数枚の基板の周面を液密にした状態で化成反応処理を行わせ、化成反応処理が終了した後、前記閉止手段を非作動とするとともに前記保持手段を前記処理位置から離反させて、複数枚の基板を前記貯留槽から搬出することを特徴とする陽極化成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の陽極化成装置において、
前記保持手段は、前記複数枚の基板を所定の間隔で整列させて保持することを特徴とする陽極化成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の陽極化成装置において、
前記貯留槽は、前記保持手段に保持された前記複数枚の基板の整列方向における一方側と他方側に電極を備え、
前記各電極は、前記保持手段と前記閉止手段により周面が閉止された両端の基板の主面に対向して配置されていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記保持手段は、基板の一方側周面に当接する第1ホルダ部と、基板の他方側周面に当接する第2ホルダ部と、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とを互いに接近させて基板を保持させ、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とを互いに離反させて基板を開放させる開閉駆動部と、を備えていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記閉止手段は、基板の周面のうち前記保持手段と非接触である部位と液密な状態で接触する閉止部材を備えていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の陽極化成装置において、
前記閉止手段は、前記貯留槽内に固定された第1閉止部材を含むことを特徴とする陽極化成装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の陽極化成装置において、
前記閉止手段は、前記保持手段に保持された基板の周面に対して加圧して接触し、液密を保持する第2閉止部材を含むことを特徴とする陽極化成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記保持手段と前記閉止手段のうち、基板の周面に当接する部分には、弾性部材が設けられていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の陽極化成装置において、
前記弾性部材は、電気絶縁性を有し、基板と当接する部位が基板の全周面にわたって均一に形成されていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の陽極化成装置において、
前記弾性部材は、基板の周面側に第1の部材を備え、前記第1の部材の外側に第2の部材を備えた二層構造であって、前記第1の部材は、前記第2の部材よりも弾性率が小さいことを特徴とする陽極化成装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記第2閉止部材を前記処理位置にある前記第1ホルダ部および前記第2ホルダ部に対して押圧する押圧機構をさらに備えていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の陽極化成装置において、
前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部には、外側が低くなる第1傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面に対応する前記第2閉止部材の位置には、外側が低くなる第2傾斜面が形成され、
前記処理位置にある前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部に対して前記第2閉止部材を押圧したとき、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが係合して、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とが互いに接近する方向に押圧されることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の陽極化成装置において、
前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部には、外側が高くなる第3傾斜面が形成され、
前記第3傾斜面に対応する前記第1閉止部材の位置には、外側が高くなる第4傾斜面が形成され、
前記処理位置にある前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部に対して前記第2閉止部材を押圧したとき、前記第1ホルダ部および/または前記第2ホルダ部が前記第1閉止部材に対して押圧され、前記第3傾斜面と前記第4傾斜面とが係合して、前記第1ホルダ部と前記第2ホルダ部とが互いに接近する方向に押圧されることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項14】
請求項3に記載の陽極化成装置において、
前記各電極は、高稠密、高密度、高純度の炭素よりなることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項15】
請求項7から14のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記第2閉止部材は、内側天井面から外側面に連通し、上部開口部が前記貯留槽の液面よりも上に位置するとともに、平面視で各基板の間に形成されている複数個の排気通路を備え、
前記弾性部材は、前記各排気通路に対応した位置に形成され、前記各排気通路に連通した複数個の弾性部材通路を形成されていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項16】
請求項15に記載の陽極化成装置において、
前記第2閉止部材の内側天井面と前記弾性部材の上面との間に排気通路ブロックを備え、
前記排気通路ブロックは、前記複数個の排気通路と前記複数個の弾性部材通路とに連通する複数個のブロック通路を形成された板状部材と、前記板状部材の各ブロック通路の間であって、前記板状部材の前記弾性部材側に突出して形成された隔壁部とを備え、前記隔壁部の下端部のみを前記弾性部材に挿入した状態で設けられていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項17】
請求項3から16のいずれかに記載の陽極化成装置において、
前記一方側電極と前記他方側電極とに印加する直流電圧の極性を交互に切り替える切り替え回路をさらに備えていることを特徴とする陽極化成装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の陽極化成装置において、
複数枚の基板を互いに平行に整列させて支持する整列台と、
前記整列台を前記受け渡し位置と、前記受け渡し位置とは異なる外部受け渡し位置との間で移動させる整列台移動機構とを備え、
前記移動機構は、前記受け渡し位置にある整列台に支持された複数枚の基板を前記保持手段により保持させた後、前記貯留槽に搬送することを特徴とする陽極化成装置。
【請求項19】
請求項18に記載の陽極化成装置において、
前記整列台移動機構の移動経路近傍に、当該移動経路にある前記整列台の前記基板に対して洗浄液を供給する洗浄機構をさらに備えたことを特徴とする陽極化成装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の陽極化成装置と、
前記陽極化成装置の上流側に隣接して配置され、前記整列台を備えた待機槽と、
前記待機槽の上流側に配置され、未処理の基板を載置するローダと、
前記陽極化成装置の下流側に配置され、化成反応処理を終えた基板に対して洗浄処理を行う洗浄槽と、
前記洗浄槽の下流側に配置され、洗浄処理を終えた基板に対して乾燥処理を行う乾燥槽と、
前記乾燥槽の下流側に配置され、処理済の基板を載置するアンローダと、
前記ローダと前記待機槽との間で基板を搬送する第1の搬送機構と、
前記待機槽と前記陽極化成装置との間、及び、前記陽極化成装置と前記洗浄槽との間で基板を搬送する前記保持手段および前記移動機構とを備えた第2の搬送機構と、
前記洗浄槽と前記乾燥槽との間で基板を搬送する第3の搬送機構と、
前記乾燥槽と前記アンローダとの間で基板を搬送する第4の搬送機構と、
を備えていることを特徴とする陽極化成システム。
【請求項21】
請求項19に記載の陽極化成装置を複数台並設して備え、
前記複数台の陽極化成装置の最上流側に配置され、未処理の基板を載置するローダと、
前記複数台の陽極化成装置の最下流側に配置され、化成反応処理および洗浄処理を終えた基板に対して乾燥処理を行う乾燥槽と、
前記乾燥槽の下流側に配置され、処理済の基板を載置するアンローダと、
前記ローダと前記各外部受け渡し位置との間で基板を搬送する第1の搬送機構と、
前記各外部受け渡し位置と前記乾燥槽との間で基板を搬送する第2の搬送機構と、
前記乾燥槽と前記アンローダとの間で基板を搬送する第3の搬送機構と、
を備えていることを特徴とする陽極化成システム。
【請求項22】
電解質溶液に基板を浸漬させて陽極化成反応を行う陽極化成装置において、
電解質溶液を貯留する貯留槽と、
前記基板と同形状の断面を有する中空部を内部に形成し、前記中空部の内部に複数枚の基板を、それぞれの基板の周面を液密な状態で保持可能な保持手段と、
保持手段が形成する前記中空部の両端に配置された一対の電極と、
前記一対の電極に直流電圧を印加する電気回路と、
前記貯留槽の外部にあたる受け渡し位置と、前記貯留槽の内部にあたる処理位置とにわたって前記保持手段を移動する移動機構とを備え、
複数枚の基板を保持した前記保持手段を前記処理位置に移動させて、前記中空部を前記電解質溶液で満たし、前記複数枚の基板の周面を液密、かつ、電気的に分離絶縁にした状態で化成反応処理を行わせ、化成反応処理が終了した後、前記保持手段を前記処理位置から移動させて、複数枚の基板を前記貯留槽から搬出することを特徴とする陽極化成装置。
【請求項23】
請求項17に記載の陽極化成装置を用いて、陽極化成処理を行うことにより、半導体ウエハの表裏両面において、面内にわたり、均一な厚み、孔径、孔密度に形成した多孔質層を具備することを特徴とする半導体ウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112880(P2013−112880A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262421(P2011−262421)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(510318723)ソレクセル インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Solexel, Inc.
【住所又は居所原語表記】1530 McCarthy Blvd Milipitas, CA 95035
【Fターム(参考)】