説明

陽電子放出断層撮影法に用いられるトレーサー及びその製造方法

【課題】所望の臓器、組織又は細胞に集積させることが可能で、ヒトを含む被検体に投与することができる安全性の高いPET用トレーサー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】糖鎖の非還元末端のシアル酸に18Fが導入された糖ペプチドを含む、陽電子放出断層撮影法に用いられるトレーサーで、ペプチド部分を標的となる臓器、組織又は細胞に対して親和性を有するものとして、集積能力を向上させることが可能となる。また、糖ペプチドの糖鎖に18Fを結合させることで、少ない工程で且つ短時間で製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素18(18F)を導入した糖ペプチドを含む陽電子放出断層撮影法(
Positron emission tomography;PET)用トレーサーに
関する。
【背景技術】
【0002】
PETは、MRIやCTと同様な画像診断法の一種である。PETは、陽電子を放出す
る放射性化合物(トレーサー)を生体に投与し、放出された陽電子と周囲組織の電子との
衝突によって発生するγフォトンを検出する。
陽電子と電子とが衝突すると2個のγフォトンが反対方向に放出される。そこで、被検
体を取り巻くように検出器を配置すれば、2個のγフォトンが検出器に衝突した位置を検
出して、2点の検出位置を結ぶ直線上のどこかに陽電子と電子の衝突位置があると特定す
ることができる。陽電子と電子の衝突位置はトレーサーの位置と考えることができるので
、さらに検出器からの情報を収集してコンピュータによって画像処理を行うと、トレーサ
ーの分布を示す三次元画像を得ることができる。
従って、例えば、特定の細胞に取り込まれるトレーサーを用いれば、当該細胞の位置や
、当該細胞のトレーサーの取り込み活性等を知ることができる。
【0003】
トレーサーとしては、陽電子を放出するポジトロン核種で標識した種々の化合物が用い
られる。ポジトロン核種としては、例えば、酸素15(15O)、炭素11(11C)、
窒素13(13N)、フッ素18(18F)等が挙げられる。これらのポジトロン核種の
半減期は一般に短く、15O、11C、13Nの半減期はそれぞれ2分、20分、10分
程度であるが、18Fの半減期は約110分と比較的長いため、トレーサーの標識として
好適に用いられている。
【0004】
また、18Fはポジトロンエネルギーが低いため、組織内での移動距離が2.3mmと
短く、解像度の高い画像を得ることができる。さらに、トレーサーに用いる化合物に対し
て小さいので、例えばH原子を18Fに置換するなどの単純な方法で化合物に導入するこ
とができ、得られたトレーサーにおいても立体障害が生じにくい。
【0005】
18Fを標識として用いたトレーサーとしては、18F−フルオロデオキシグルコース
18F−FDG)がある(例えば、非特許文献1を参照)。18F−FDGは、癌細胞
などのグルコース消費が激しい細胞に多く取り込まれるが、グルコースのようにすぐに代
謝されないので細胞中に蓄積する。従って、18F−FDGを検出することにより、癌細
胞の位置や活性を特定することが可能である。しかしながら、18F−FDGを用いる方
法は、腫瘍組織以外の組織の検出には適さず、また、生理的にブドウ糖代謝の旺盛な組織
における悪性腫瘍の検出も困難である。さらに、18F−FDGは腎から排出されるため
、腎尿路系の癌細胞の検出にも適していない。また、腸管や炎症巣への生理的な蓄積や良
性腫瘍が偽陽性として検出されることもある。
【0006】
その他の単糖を用いたPET用トレーサーとして、フコース等にポジトロン核種を導入
したものが提案されている。18Fで標識したフコースは、複合糖鎖合成が活発な癌細胞
に取り込まれることが観察され、PET用トレーサーとしての利用が期待されている(例
えば非特許文献2を参照)。
しかしながら、癌細胞以外の検出に適していないこと、生理的に糖代謝の旺盛な組織に
おける悪性腫瘍の検出が困難であること、生理的な蓄積等により偽陽性を生じること等は
18F−FDGと同様であると考えられる。
【0007】
さらに、ガラクトース誘導体やシアル酸(N−アセチルノイラミン酸)にポジトロン核
種を導入したPET用トレーサーも提案されている。
しかしながら、標識したガラクトースアナログは、ほとんど複合糖質に取り込まれない
ものや、ゆっくりと取り込まれるもののすぐに代謝されてしまうものであった(例えば、
非特許文献3、4を参照)
【0008】
一方、18Fで標識したシアル酸としては、下記式に示すものが挙げられる(例えば、
非特許文献5を参照)。
【化1】

【化2】

しかしながら、いずれの化合物も腫瘍組織への有意な集積は認められず、大部分は尿に
排出されてしまい、PET用のトレーサーには適していなかった。
【0009】
癌細胞による糖の取り込み以外の方法で、特定の組織や細胞を標的化するトレーサーと
して、所定の受容体に親和性を有するペプチドやタンパク質を18Fで標識して利用する
方法も提案されている。かかるペプチドやタンパク質を用いれば、当該受容体を有する細
胞にトレーサーを集積させることができる。
しかしながら、ペプチドやタンパク質に直接18Fを導入するためには高温等の比較的
激しい条件にする必要があり、かかる条件下ではペプチドやタンパク質が変性する可能性
が高い。また、18Fは半減期が短いのでトレーサーとして使用するためには短時間で合
成する必要があるところ、ペプチドやタンパク質に18Fを導入する反応は比較的長時間
を要する。
【0010】
ペプチドやタンパク質を用いるトレーサーに18Fを温和な条件で迅速に導入するため
に、キャリア分子又は補欠分子族等と呼ばれる分子に18Fを導入し、当該分子をペプチ
ドやタンパク質に付加する方法が提案されている(例えば非特許文献6、7を参照)。具
体的には、18Fを導入した芳香族化合物又は複素環式芳香族化合物にマレイミド基を結
合させ、当該マレイミド基をペプチド側鎖のチオール基に導入する方法等が挙げられる。
しかしながら、キャリア分子や補欠分子は非天然分子であるため、生体内への投与が好
ましくない場合もある。また、これらの分子を付加すると、ペプチドやタンパク質の受容
体に対する親和性が失われることもある(非特許文献7を参照)。
【0011】
その他のトレーサーとして、脳血流量や酸素代謝量を測定する場合に用いられる15
やH15Oも挙げられるが、これらも限られた測定にしか用いることができない。
【0012】
ところで、シアル酸に18Fを導入したトレーサーについて説明したが、シアル酸にフ
ッ素を導入した例としては、下記式に示すように、シアル酸の3位の炭素にフッ素19(
19F)を導入した試薬が開発されている(例えば、非特許文献8を参照)。
【化3】

[式中、Rは、NH−CO−CH、NH−CO−CH−OH又はOHを示す]
【化4】

[式中、Rは、NH−CO−CH、NH−CO−CH−OH又はOHを示す]
これらの試薬における19Fは、シアリダーゼやシアル酸転移酵素の触媒作用のメカニ
ズムを解明するための動力学的構造解析や結晶構造解析におけるプローブとして重要な役
割を果たす。
この文献では、3位の炭素原子に19Fを導入したCMP−N−アセチルノイラミン酸
及びCMP−N−グリコリルノイラミン酸が、バクテリア由来のシアル酸転移酵素のドナ
ー基質となり得、フッ素化シアロシド類縁体の合成に利用できることが示されている。し
かしながら、転移効率は高くなく、特に、α2,6結合のシアロシドの産生率は5%と低
かった。
【0013】
また、5位の炭素に19Fを導入したシアル酸についても報告があり(非特許文献9)
、水酸基を保護したシアル酸にフルオロ酢酸無水物を反応させて下記式で表わされるフッ
素化シアル酸を得ている。
【化5】

この文献では、フッ素化シアル酸を培養細胞に添加すると、細胞内に取り込まれ、細胞
表層の糖鎖の構成成分として利用されることが示されている。しかしながら、生体内での
集積性については確認されていない。また、細胞表層の糖鎖がシアル酸で修飾されるまで
に2日間要しているので、シアル酸に半減期の短い18Fを導入して糖鎖を修飾する方法
として現実的ではない。また、仮に19Fの代わりに18Fを導入したとしても、生理的
に糖代謝の旺盛な組織における悪性腫瘍の検出が困難であること、生理的な蓄積等により
偽陽性を生じること等は、18F−FDGと同様であるものと考えられる。
なお、この文献には、酵素反応によってフッ素化シアル酸を人為的に糖鎖に結合させる
ことについては記載がない。
【0014】
さらに、非還元末端に少なくとも1つのシアル酸を有する糖鎖であって、当該シアル酸
の7、8又は9位の炭素にフッ素(19F)が導入されたものも開示されている(特許文
献1)。非還元末端のシアル酸がフッ素化された糖鎖は、シアリダーゼによる加水分解に
対して優れた耐性を有するものであり、かかる糖鎖をペプチドやタンパク質に付加すると
、得られた糖ペプチドや糖タンパク質の血中安定性が大きく改善されることが知られてい
る。
しかしながら、シアル酸の7、8又は9位の炭素にフッ素を導入する反応は、工程数が
多く長時間を要する。また、8位の炭素にフッ素を導入したシアル酸は、CMP−シアル
酸合成酵素に認識されないので、糖鎖に結合させるのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2004/058984号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Hamacher, K. et al.; The Journal of Nuclear Medicine (1986) 27:235-238
【非特許文献2】Ishiwata, K. et al.; The Journal of Nuclear Medicine (1990) 31:1997-2003
【非特許文献3】Ishiwata, K. et al.; Nuclear Medicine and Biology (1989) 16:247-254
【非特許文献4】Ishiwata, K. et al.; Nuclear Medicine and Biology (1989) 16:775-781
【非特許文献5】Ishiwata, K. et al.; International Journal of Radiation Applications and Instrumentation. Part B (1990) 17:347-443
【非特許文献6】Okarvi S.M.; European Journal of Nuclear Medicine (2001)28:929-938
【非特許文献7】Miller, P.W.; Angewandte Chemie International Edition (2008), 47, 8998-9033
【非特許文献8】Harshal A. et al.; Journal of the American Chemical Society (2007) 129:10630-10631
【非特許文献9】Oetke, C. et al.; The Journal of Biological Chemistry (2002) Vol. 277, No. 8, 6688-6695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、所望の臓器、組織又は細胞等の標的に集積させることが可能で、ヒトを含む
被検体に投与することができる安全性の高いPET用トレーサーを提供することを課題と
する。
また、本発明は、半減期の短いポジトロン核種を含むトレーサーに適した、工程数が少
なく短時間で行うことのできるPET用トレーサーの製造方法を提供することを課題とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、糖ペプチドの糖鎖にポジ
トロン核種を導入し、ペプチド部分を標的組織等に親和性を有するものとすることにより
、所望の組織等に集積させられ、且つ、安全性の高いPET用トレーサーを得られること
;シアル酸の5位の炭素にフッ素を導入したフッ素化シアル酸は、CMP−シアル酸合成
酵素及びシアル酸転移酵素から認識されやすく、糖ペプチドにおける糖鎖の非還元末端に結合させやすいこと;従って、シアル酸の5位の炭素に18Fを導入し、適当な糖ペプチドの糖鎖に結合させることにより、少ない工程で且つ短時間で、所望の組織等を標的化可能なトレーサーを製造できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕糖鎖の非還元末端のシアル酸に18Fが導入された糖ペプチドを含む、陽電子放出
断層撮影法に用いられるトレーサー;
〔2〕下記式(1)で表わされる、上記〔1〕に記載のトレーサー
【化6】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(2)で表
わされ、式(2)でない場合は水素原子及び式(3)乃至(6)で示される基のいずれか
一つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化7】

〔式中X〜Xは、以下の(a)〜(e)のいずれかの組合せである。
(a)X18F、X=Ac、X=OH、X=OH、X=OH
(b)X=H、X18F−CH−CO−、X=OH、X=OH、X=OH
(c)X=H、X=Ac、X18F、X=OH、X=OH
(d)X=H、X=Ac、X=OH、X18F、X=OH
(e)X=H、X=Ac、X=OH、X=OH、X18F〕
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】


〔3〕下記式(7)で表わされる、上記〔1〕に記載のトレーサー
【化12】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(8)で表
わされ、式(8)でない場合は水素原子及び式(9)乃至(12)で示される基のいずれ
か一つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化13】

〔式中Y〜Yは、以下の(f)〜(j)のいずれかの組合せである。
(f)Y18F、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(g)Y=H、Y18F−CH−CO−、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(h)Y=H、Y=Ac、Y18F、Y=OH、Y=OH
(i)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y18F、Y=OH
(j)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y18F〕
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】


〔4〕前記式(2)において、X〜Xの組合せが、
(b)X=H、X18F−CH−CO−、X=OH、X=OH、X=OH
である、上記〔2〕に記載のトレーサー;
〔5〕前記式(8)において、Y〜Yの組合せが、
(g)Y=H、Y18F−CH−CO−、Y=OH、Y=OH、Y=OH
である、上記〔3〕に記載のトレーサー;
〔6〕前記ペプチドが、前記陽電子放出断層撮影法で検出しようとする標的組織に特異的
に集積する、上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のトレーサー;
〔7〕前記ペプチドが、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、アンギオテ
ンシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、アドレノメジュリン、モチリ
ン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチドならびにその類縁体および断片、イン
シュリン様成長因子1、インシュリン様成長因子2、エンテロガストロン、ソマトスタチ
ン、ソマトトロピン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、プロラ
クチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン類、エンケファリン類、バソプレッシン、
血管作動性腸管ペプチド、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド、セクレチ
ン、オキシトシン、インターフェロン類、抗体、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球・マク
ロファージコロニー刺激因子、インターロイキン類、卵胞刺激ホルモン、黄体刺激ホルモ
ン、及びヒト絨毛性ゴナドトロピンからなる群より選択される、上記〔6〕に記載のトレ
ーサー;
〔8〕下記式(13)で表わされる、18Fを導入したシアル酸
【化18】


〔9〕下記式(14)で表わされる、18Fを導入したCMP−シアル酸
【化19】


〔10〕18F導入糖ペプチドの製造方法であって、
シアル酸の5位の炭素に18Fを導入して18F導入シアル酸を合成する工程と、
前記シアル酸をCMP−シアル酸合成酵素の存在下でシチジン三リン酸と反応させて、
CMP−18F導入シアル酸を合成する工程と、
前記CMP−18F導入シアル酸をシアル酸転移酵素の存在下でアクセプター基質とな
る糖ペプチドと反応させて、該糖ペプチドの糖鎖の非還元末端に18F導入シアル酸を結
合させる工程と、
を含む方法;
〔11〕前記シアル酸の5位の炭素に18Fを導入して18F導入シアル酸を合成する工程が、
シアル酸の5位の炭素に結合したN−アセチル基の炭素に18Fを導入し、18F導入シアル酸を合成する行程である、上記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記シアル酸の5位の炭素に18Fを導入する行程が、
下記式(A)で表わされるメチル(メチル4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3
,5−ジデオキシ−5−アセトアミド−D−グリセロ−α−D−ガラクト−ノヌロピラノ
シドネート)をトリフルオロ酢酸で処理し、アミノ基からBoc基を除去する工程と、
【化20】

さらに、ブロモ酢酸を反応させて、下記式(C)で表わされる化合物を得る工程と、
【化21】

上記式(C)に記載の化合物に、アセトニトリル存在下で[K/222]+18
反応させる工程と、
を含む上記〔10〕に記載の方法;
〔13〕前記シアル酸転移酵素が、α2,3シアル酸転移酵素又はα2,6シアル酸転移酵素である、上記〔10〕〜〔12〕のいずれか一つに記載の方法;
〔14〕陽電子放出断層撮影法を用いて糖ペプチドの体内動態を解析する方法であって、
前記糖ペプチドにおける糖鎖の非還元末端に、18Fを導入したシアル酸を結合させて
18F導入糖ペプチドを得る工程と、
前記18F導入糖ペプチドを生体内に投与する工程と、
前記生体内における糖ペプチドの動態を陽電子放出断層撮影法により検出する工程と、
を含む方法;及び
〔15〕前記18Fを導入したシアル酸が、下記式(13)で表わされる化合物である、
上記〔14〕に記載の方法
【化22】

に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るトレーサーは、標的臓器、組織、細胞又は物質等に親和性を有するペプチ
ドを選択することによって、糖代謝が活発な細胞に限らず所望の標的に集積させることが
できる。
また、本発明のトレーサーに用いられる糖ペプチドは、非天然分子からなるキャリア分
子や補欠分子族を含まず、もともとヒトの生体内に存在する分子なので安全性が高い。
本発明のトレーサーは、ペプチド自体にポジトロン核種を導入しないので、製造する過
程でペプチドが変性して標的組織等への親和性が低下する可能性が低い。
また、本発明に係るトレーサーの製造方法では、シアル酸の5位の炭素に18Fを導入
するので、その後、CMP−シアル酸合成酵素及びシアル酸転移酵素に好適に認識され、
少ない工程で且つ短時間で18F導入糖ペプチドを合成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0021】
(トレーサー)
本発明のPET用トレーサーは、糖鎖の非還元末端のシアル酸に18Fが導入された糖
ペプチドを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のPET用トレーサーに用いられる糖ペプチドのペプチド部分は、2個以上のア
ミノ酸がペプチド結合によって結合したものであり、被検体に投与したときに、PETに
よって検出しようとする標的及びその周辺に集積できるものである限り、いかなるもので
あってもよい。例えば、特定の機能を有するタンパク質、タンパク質において1若しくは
数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたタンパク質アナログ、タンパク質におい
て1若しくは数個のアミノ酸が保存的に置換されたタンパク質アナログ、タンパク質の改
変体、タンパク質の断片、アミノ酸がランダムに結合したペプチドが含まれるがこれらに
限定されない。
【0023】
本明細書において「標的」とは、PETで検出しようとする生体内の臓器、組織、細胞
、物質等を意味する。
【0024】
本明細書において、「標的及びその周辺に集積する」とは、本発明に係るトレーサーを
生体内に投与した場合に、そのペプチド部分が標的臓器等に特異的な親和性を示すことに
より、トレーサーが、PETで検出可能な程度に標的又はその周辺に集まることを意味す
る。
本発明のトレーサーのペプチド部分と標的との組み合わせとしては、例えば、ペプチド
部分が、標的臓器、組織、細胞の表面に発現している受容体のリガンドである場合;ペプ
チド部分が標的細胞に特異的に取り込まれるものである場合;標的が臓器、組織、細胞の
内部又はその周辺に分布する生体高分子や代謝産物であって、ペプチドが当該生体分子や
代謝産物を基質とする酵素である場合等が挙げられる。
【0025】
本発明のトレーサーのペプチド部分が、標的臓器、組織、細胞の表面に発現している受
容体のリガンドである場合、トレーサーを検出することによって、標的臓器、組織、細胞
の分布を調べることができる。また、本発明のトレーサーのペプチド部分が、標的細胞に
取り込まれるものである場合、トレーサーを検出することによって細胞の分布に加え、細
胞が物質を取り込む活性を定量的に調べることができる。トレーサーが酵素の場合、基質
濃度の高いところに集積するので、トレーサーを検出することによって、基質の分布を調
べることができる。
なお、標的は、PETで検出しようとする生体内のいかなる部分であってもよく、病巣
であっても健常な部位であってもよい。
【0026】
本発明のPET用トレーサーのペプチド部分と対応する標的の具体例を表1に示すが、
これらに限定されない。
【表1】

【表2】

【0027】
本明細書においてアミノ酸とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸のみな
らずアミノ酸変異体及び誘導体といったような非天然アミノ酸を含む。当業者であれば、
この広い定義を考慮して、本明細書におけるアミノ酸として、例えば、天然タンパク原性
L−アミノ酸;D−アミノ酸;アミノ酸変異体及び誘導体などの化学修飾されたアミノ酸
;ノルロイシン、β−アラニン、オルニチンなどの天然非タンパク原性アミノ酸;及びア
ミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げら
れることを理解するであろう。非天然アミノ酸の例として、α−メチルアミノ酸(α−メ
チルアラニンなど)、D−アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(2−アミノ−ヒスチジン、
β−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、α−フルオロメチル−ヒスチジン及びα
−メチル−ヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ
酸)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(シス
テイン酸など)が挙げられる。好ましい態様において、本発明の化合物に含まれるアミノ
酸は、天然アミノ酸のみからなる。
【0028】
本明細書において、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された」と
いう場合、置換等されるアミノ酸の個数は、タンパク質が標的化能を有する限り特に限定
されないが、1〜9個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個程度であるかある
いは全体の長さの10%以内、好ましくは5%以内である。置換又は付加されるアミノ酸
は、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸又はアミノ酸アナログであり得、好ましくは天然
のアミノ酸である。これらの条件を満たす限り、欠失、置換及び付加はアミノ酸配列のど
の部分であってもよい。
【0029】
本明細書において、「1若しくは数個のアミノ酸が保存的に置換された」とは、アミノ
酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数及び/又は疎水性指
数が類似している置換であって、そのような置換の前後で、タンパク質の標的化能の明ら
かな低下又は消失を生じない置換をいう。
【0030】
本明細書において、タンパク質の改変体とは、タンパク質を天然又は人工的に改変した
化合物であり、そのような改変としては、例えば、タンパク質の1又は複数のアミノ酸残
基の、アルキル化、アシル化(例えばアセチル化)、アミド化、カルボキシル化、エステ
ル形成、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、水酸化、標識成分の
結合等が挙げられる。
【0031】
本明細書において糖ペプチドとは、上述したペプチドに糖鎖が結合したものをいう。糖
鎖とペプチドの結合部位においては、糖鎖の還元末端がペプチドのアミノ酸の側鎖に直接
結合していてもよいし、リンカーを介して結合していてもよい。糖鎖とペプチドがリンカ
ーを介して結合している場合、リンカーの種類は特に限定されないが、例えば、−NH−
(CO)−(CH−CH−(式中、aは整数であり、目的とするリンカー機能を
阻害しない限り限定されるものではないが、好ましくは0〜4の整数を示す。)、C1−
10ポリメチレン、−CH−R−(式中、Rは、アルキル、置換されたアルキル、アル
ケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換さ
れたアリール、炭素環基、置換された炭素環基、複素環基及び置換された複素環基からな
る群より選択される基から水素原子が1つ脱離して生ずる基である)等を挙げることがで
きる。
【0032】
本明細書において糖鎖とは、単位糖(単糖及び/又はその誘導体)が1つ以上連なって
できた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシ
ド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含
有される単糖類及び多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロ
ース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれら
の複合体及び誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコ
サミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解又は誘導された糖鎖など広範囲なも
のが挙げられるがそれらに限定されない。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよ
い。
【0033】
また、本明細書において、「糖鎖」には糖鎖の誘導体も含まれ、糖鎖の誘導体としては
、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化さ
れてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン
酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グ
ルクロン酸))、アミノ基又はアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)
を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサ
ミンなど)、アミノ基及びカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノ
イラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば
、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖な
どである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
本発明のPET用トレーサーに用いられる糖ペプチドは生体に投与されるという観点か
ら、糖鎖は、生体内で複合糖質(糖ペプチド、プロテオグリカン、糖脂質等)として存在
する糖鎖であることが好ましく、より好ましくは、生体内で糖ペプチドとしてペプチドに
結合している糖鎖であるN結合型糖鎖、O結合型糖鎖等である。
中でもN結合型糖鎖が好ましい。N結合型糖鎖としては、例えば、複合(コンプレック
ス)型、混成(ハイブリッド)型を挙げることができ、特に好ましくは、複合型が良い。
【0035】
本発明のPET用トレーサーに用いられる糖ペプチドの糖鎖は、その非還元末端に、少
なくとも1つの18Fを導入したシアル酸を含む。
本明細書においてシアル酸とは、ノイラミン酸のアミノ基やヒドロキシル基が置換され
た物質の総称を意味し、ノイラミン酸の分子内のカルボキシル基の炭素を1位として炭素
骨格に番号が付けられる。天然には5位がアセチル化されたN−アセチルノイラミン酸(
Neu5Ac)が多く存在し、グリコール酸で修飾されたN−グリコリルノイラミン酸(
Neu5Gc)が次に多く存在する。
【0036】
本発明のPET用トレーサーにおいて、18Fは、シアル酸のどの炭素に導入されてい
てもよいが、例えば、3,5,7,8又は9位の炭素に18Fを有するものが好ましい。
特に、シアル酸の5位の炭素に18Fが導入されたものは、後述するとおり、CMP−
シアル酸合成酵素及びシアル酸転移酵素に好適に認識され、少ない工程で且つ比較的短時
間で糖ペプチドに転移できるので、特に有用である。シアル酸転移酵素を適宜選択するこ
とにより、ヒト型の結合型を有する糖鎖を得ることができる。また、5位の炭素に18
が導入されたシアル酸も、他の炭素に18Fが導入されたシアル酸より、少ない工程で調
製できる。
【0037】
なお、本明細書において、「シアル酸の5位の炭素に18Fが導入された」という場合
、シアル酸の5位の炭素に18Fが直接結合している場合も、他の官能基を介して結合し
ている場合も含まれる。後者としては、例えば、シアル酸がN−アセチルノイラミン酸で
ある場合に、5位の炭素に結合したN−アセチル基の炭素に18Fが導入されたものが挙
げられる。
【0038】
本発明のトレーサーに用いられる糖ペプチドとしては、下記式(1)又は(7)で表わ
されるものが特に好ましい。式(1)で表わされる糖ペプチドにおいては、シアル酸とガ
ラクトースがα2,3結合で結合し、式(7)で表わされる糖ペプチドにおいては、シア
ル酸とガラクトースがα2,6結合で結合している。
【化23】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(2)で表
わされ、式(2)でない場合は水素原子及び式(3)〜(6)で示される基のいずれか一
つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化24】

〔式中X〜Xは、以下の(a)〜(e)のいずれかの組合せである。
(a)X18F、X=Ac、X=OH、X=OH、X=OH
(b)X=H、X18F−CH−CO−、X=OH、X=OH、X=OH
(c)X=H、X=Ac、X18F、X=OH、X=OH
(d)X=H、X=Ac、X=OH、X18F、X=OH
(e)X=H、X=Ac、X=OH、X=OH、X18

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(8)で表
わされ、式(8)でない場合は水素原子及び式(9)〜(12)で示される基のいずれか
一つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化30】

〔式中Y〜Yは、以下の(f)〜(j)のいずれかの組合せである。
(f)Y18F、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(g)Y=H、Y18F−CH−CO−、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(h)Y=H、Y=Ac、Y18F、Y=OH、Y=OH
(i)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y18F、Y=OH
(j)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y18
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【0039】
本発明のPET用トレーサーに用いられる糖ペプチドはどのような方法で合成されたも
のであってもよい。例えば、18Fを導入したシアル酸を合成し、これをCMP−シアル
酸合成酵素の存在下でシチジン5'−三リン酸と反応させてCMP−18F導入シアル酸
を合成し、シアル酸転移酵素の存在下で糖ペプチドと反応させ、糖鎖の非還元末端にCM
P−18F導入シアル酸を転移することによって製造することができる。
このとき、糖ペプチドは、天然の糖ペプチドを精製したものであってもよく、合成した
ものであってもよい。糖ペプチドは、公知の方法又はそれに準ずる方法で所望のものを精
製又は合成することが可能である。
【0040】
本発明のPET用トレーサーは注射剤とすることが好ましく、糖ペプチドのほかに、例
えば無菌等張食塩水又はリン酸緩衝液等の適当な緩衝溶液を含むことができ、溶液中に適
宜添加剤を含んでもよい。当業者は、トレーサーにおける糖ペプチドの濃度や、添加剤や
緩衝溶液の種類や濃度を適宜決定することができる。
【0041】
(トレーサーの製造方法)
次に、本発明に係る糖ペプチドの製造方法について説明する。
本発明は、上述した本発明に係るPET用トレーサーに用いられる糖ペプチドのうち、
特にシアル酸の5位の炭素に18Fが導入された糖ペプチドの製造方法を包含する。
【0042】
本発明に係る18F導入糖ペプチドの製造方法は、シアル酸の5位の炭素に18Fを導
入して18F導入シアル酸を合成する工程と、18F導入シアル酸をCMP−シアル酸合
成酵素の存在下でシチジン三リン酸(CTP)と反応させて、CMP−18F導入シアル
酸を合成する工程と、CMP−18F導入シアル酸をシアル酸転移酵素の存在下でアクセ
プター基質となる糖ペプチドと反応させて、糖ペプチドの糖鎖の非還元末端に18F導入
シアル酸を結合させる工程と、を含む。
【0043】
5位の炭素に18Fが導入されたシアル酸は、CMP−シアル酸合成酵素に認識されや
すい。従って、5位の炭素に18Fが導入されたシアル酸を、CMP−シアル酸合成酵素
存在下でCTPと反応させると、CMP−18F導入シアル酸を効率よく得ることができ
る。CMP−シアル酸合成酵素による反応は、CMP−シアル酸を経る糖ペプチドの製造
過程における律速反応であるため、この反応が効率よく進むことは、半減期の短い18
を導入した糖ペプチドの製造に特に好適である。
【0044】
シアル酸の5位の炭素に18Fを導入する工程は、例えば以下の方法によって行うこと
ができる。
まず、サイクロトロンにて18O(p,n)18F核反応による[18O]濃縮水への
陽電子照射から18Fを発生させる(Appl. Radiat. Isot. 198
7, 38, 979)。続いて、18Fの水溶液に、炭酸カリウムとKryptofi
x−2,2,2([K/222])のアセトニトリル−水(例えば、80:20)を加え
た後、オイルバス上(105℃)でヘリウム気流下(例えば、50mL/minj)にて
濃縮乾燥し、[K/222]+18を含む残渣を得る。
【0045】
この残渣に、下記式(C)に示される5−N−ブロモアセチル誘導体をアセトニトリル
存在下で反応さ、Brの代わりに18Fを導入する。
【化35】

その後、水酸基及びカルボキシル基を酸で脱保護することにより、下記式(E)に示さ
れる18F導入シアル酸を得ることができる。
【化36】

なお、[K/222]+18は、例えば非特許文献1に記載された方法に従って調
製することができる。
【0046】
上記式(C)で示される化合物は、例えば、以下の式(A)で示される化合物をトリフ
ルオロ酢酸で処理してアミノ基の保護基であるBoc基を除去し、ブロモ酢酸を含む試薬
と適宜反応させることによって得ることができる。
【化37】

【0047】
シアル酸の5位の炭素に18Fを導入するための上記方法は、シアル酸の3位、7位、
8位、9位の炭素に18F又は19Fを導入する従来方法に比較して工程が少なく、短時
間で行うことができる。従って、半減期の短い18Fをシアル酸に導入する方法として特
に好適である。
【0048】
18F導入シアル酸を、CMP−シアル酸合成酵素の存在下でCTPと反応させて、C
MP−18F導入シアル酸合成する工程は、通常のシアル酸からCMP−シアル酸を合成
する公知の方法に従って行うことができる。
【0049】
また、CMP−18F導入シアル酸をシアル酸転移酵素の存在下でアクセプター基質と
なる糖ペプチドと反応させて、糖ペプチドの糖鎖の非還元末端に18F導入シアル酸を結
合させる工程は、シアル酸転移酵素を用いて、CMP−シアル酸から糖鎖の非還元末端に
シアル酸を転移させる通常の方法に従って行うことができる。
【0050】
CMP−シアル酸を基質としてシアル酸転移酵素としては、α2,3シアル酸転移酵素
、α2,6シアル酸転移酵素、α2,8シアル酸転移酵素、α2,9シアル酸転移酵素が
あり、いずれを用いてもよいが、シアル酸と糖鎖の非還元末端の糖との結合が、ヒト型と
同じ結合型(α2,3結合又はα2,6結合)となる酵素が好ましい。また、ほ乳類由来
の酵素と細菌由来の酵素を用いることができるが、比較的基質特異性の低い細菌由来の酵
素がより好ましい。
【0051】
α2,3シアル酸転移酵素としては、以下の表2に示すものが挙げられる。
【表3】

【0052】
α2,6シアル酸転移酵素としては、以下の表3に示すものが挙げられる。
【表4】

【0053】
α2,8シアル酸転移酵素としては、以下の表4に示すものが挙げられる。
【表5】

【0054】
シアル酸転移酵素のアクセプター基質となる糖ペプチドとしては、ペプチド部分が、上
述の(トレーサー)の項目で説明した「本発明のPET用トレーサーに用いられる糖ペプ
チドのペプチド部分」であるものが好ましく、具体的には、上述した表1に記載のペプチ
ドが挙げられる。
【0055】
シアル酸転移酵素のアクセプター基質となる糖ペプチドの糖部分は、非還元末端の少な
くとも一つに、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン
、シアル酸を有するものであれば特に限定されないが、例えば、非還元末端にシアル酸を
付加することにより、ヒト体内の糖タンパク質における糖鎖と同一になる糖鎖を有する糖
ペプチドが好ましい。もともとヒトの体内に存在する糖鎖と同一の構造を有する糖鎖が結
合した糖ペプチドであれば、ヒトに投与しても抗原性を示す可能性が低いからである。
また、動物細胞、細菌、酵母、昆虫、あるいは、植物に産生させた糖ペプチドをシアリ
ダーゼ処理でシアル酸除去することにより、その糖ペプチドをシアル酸転移酵素のアクセ
プター基質として用いることもできる。
具体的には、下記式で表わされるようなモノシアロ糖鎖を有する糖ペプチド、
【化38】

下記式で表わされるアシアロ糖鎖、
【化39】

[式中いずれもAcはアセチル基を示し、Pはペプチドを示す。]
その他、GalNAcα1−、Galβ1−3GalNAcα1−、NeuAcα2−
3Galβ1−3GalNAc−、Galβ1−4GlcNAcβ1−3Fucα1−、
Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Gal、Galβ1−4(Fu
cα1−3)GlcNAcβ1−3Gal等のO−結合型糖鎖が結合した糖ペプチドも、
シアル酸転移酵素のアクセプター基質となりうる。なお、これらのO−結合型糖鎖の一部
はN−結合型糖鎖として発現する場合もある。
【0056】
なお、α2,3及びα2,6シアル酸転移酵素は、ガラクトース、N−アセチルグルコ
サミン、N−アセチルガラクトサミンに作用する。α2,8及びα2,9シアル酸転移酵
素はシアル酸に作用する。
【0057】
シアル酸転移酵素のアクセプター基質となる糖ペプチドは、公知の方法又はそれに準ず
る方法によって調製することができる。例えば、生体試料から抽出精製してもよいし、遺
伝子組み換え法により発現させてもよく、また、固相合成法や液相合成法によって合成し
てもよい。遺伝子組換え法により発現させる場合や、固相合成法によって合成する場合、
まずペプチド部分のみを調製し、これに糖鎖を結合させることができる。
ペプチド部分が長い場合には、一部を遺伝子組み換え法により発現させ、一部を固相合
成法によって合成し、得られた各ペプチドを連結してもよい。
ペプチドの連結方法としては、例えば、天然型化学的ライゲーション法(Native
Chemical Ligation;NCL法)やこれを応用したKCL法(Kin
etically Controlled Ligation法)を用いられる。NCL
法は、例えば国際公開第96/34878号パンフレットに、KCL法は例えばBang
D,et al.(Angew.Chem.Int.Ed.(2006)45:398
5−3988)に記載されており、その開示は全体として本明細書に参照として組み込ま
れる。
【0058】
ペプチドへの糖鎖の結合は、公知の方法又はそれに準ずる方法に従って行うことができ
るが、例えば、糖鎖をハロアセチル化(例えばブロモアセチル化)し、ペプチドの側鎖の
チオール基に結合させることによって実現できる。ハロアセチル化による方法は、例えば
、国際公開第2005/10053号パンフレット(US2007060543(A1)
)に記載されており、その開示は全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【0059】
また、ペプチドを固相合成により合成する場合、糖鎖とアミノ酸が結合した糖鎖付加ア
ミノ酸(好ましくは糖鎖付加アスパラギン)を用いて、ペプチド鎖を伸長しながら糖ペプ
チドを合成することもできる。糖ペプチドの固相合成法は、例えば、国際公開第2004
/005330号パンフレット(US2005222382(A1))に記載された方法
を用いることができ、その開示は全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【0060】
本発明に係る18F導入糖ペプチドの製造方法は、被検体に投与するために製剤化する
工程を含んでもよい。例えば、18F導入糖ペプチドを無菌等張食塩水又はリン酸緩衝液
等の適当な緩衝溶液中に溶解して注射剤とすることができ、当該注射剤には適宜公知の添
加剤を添加してもよい。また、生理食塩水にブドウ糖やカリウムを配合した溶液に18
導入糖ペプチドを溶解し、輸液とすることもできる。輸液によれば、投与速度を管理しな
がら静脈内へトレーサーを投与することが可能である。
【0061】
なお、本発明に係る18F導入糖ペプチドの製造方法において、アクセプター基質とし
て、機能がわからない糖ペプチドや、生体内における動態がわからない糖ペプチドを用い
れば、得られた18F導入糖ペプチドを生体内に投与し、PETにより18F導入糖ペプ
チドの分布等を検出することにより、当該糖ペプチドの体内動態を知ることができる。
このように、本発明に係る製造方法で得られる18F導入糖ペプチドは、標的組織等を
検出するためにトレーサー以外の用途にも用いられる。
【0062】
(糖ペプチドの動態解析法)
本発明は、PETを用いて糖ペプチドの動態を解析する方法も包含する。
本発明の糖ペプチドの機能解析法は、前記糖ペプチドにおける糖鎖の非還元末端に、
Fを導入したシアル酸を結合させて、18F導入糖ペプチドを得る工程と、18F導入
糖ペプチドを生体内に投与する工程と、生体内における糖ペプチドの動態を陽電子放出断
層撮影法により検出する工程と、を含む。
糖ペプチドは、18F導入シアル酸を結合させることができる限り、いかなるものであ
ってもよく、18F導入シアル酸の導入工程に先立って、18F導入シアル酸を結合させ
られるように前処理を行ってもよい。
18Fを導入したシアル酸を糖ペプチドに結合させる工程は、どのような方法によって
行ってもよいが、例えば、上述したCMP−シアル酸合成酵素及びシアル酸転移酵素を用
いて、CMP−18F導入シアル酸を介した方法によって行うことができる。
【0063】
18F導入糖ペプチドを投与する生体は特に限定されないが、例えば哺乳動物が好まし
く、ヒト、マウス、ラット等を挙げることができる。
【0064】
PETで全身を検査して、18F導入糖ペプチドの分布を検出することにより、糖ペプ
チドが体内動態を知ることができる。
【0065】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられ
るのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解を
すべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在すること
を意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在する
ことを排除しない。
【0066】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む
。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。こ
こに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野
における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又
は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0067】
本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、
説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素
はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つ
の要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、 例えば、第一の要素
を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸
脱することなく可能である。
【実施例】
【0068】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発
明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定される
ものとして解釈されてはならない。
なお、以下の実施例では、18Fに代えて19Fを用いているが、18Fと19Fは質
量差が小さいので同位体効果も小さく、18Fを使用しても同様に実施できることはいう
までもない。
【0069】
下記式(A)で表わされるメチル(メチル4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3
,5−ジデオキシ−5−アセトアミド−D−グリセロ−α−D−ガラクト−ノヌロピラノ
シドネート)(300mg,0.53mmol)をトリフルオロ酢酸(TFA;3mL)
で室温にて15分間処理した。
【化40】

反応混合物にトルエンを加えた後、ロータリーエバポレータにより反応混合物からTF
Aをトルエンとともに減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルで溶解し、飽和炭酸水素
ナトリウム水溶液で洗浄し、分離した水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物
を飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、ろ過し、濃縮した。これをそのまま真空
ラインで乾燥し、下記式(B)で表わされるアミン誘導体を得た。
【化41】

【0070】
ブロモ酢酸(222mg,1.60mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(D
CC;164mg,0.80mmol)をジクロロメタン(4mL)中で混和した後、氷
冷し、沈殿を生じさせた。このブロモ酢酸試薬を、脱脂綿を詰めたパスツールピペットで
ろ過し、直接化合物(B)のジクロロメタン溶液(5mL)に加えた。室温にて3時間撹
拌した後、反応混合物をろ過し、濾液を10%クエン酸水溶液で洗浄した。分離した水層
をクロロホルムで抽出した。合わせた有機抽出物を蒸留水で洗浄し、乾燥(MgSO
し、ろ過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(3:2,酢酸エチル:ク
ロロホルム)精製、および、結晶化(酢酸エチル/ヘキサン)により下記式(C)で表わ
される化合物を無色針状晶として得た(183mg,59%)。
【化42】

【0071】
上記式(C)で表わされる化合物を、10mLのナス型フラスコ中にてあらかじめ真空
ラインによって乾燥させ(15mg,25.7μmol)、フッ化カリウム(7.5mg
,129μmol)、および、Kryptofix−222(K222;24mg,63
.7μmol)とアセトニトリル(2mL)を加えた。その混合物の入ったフラスコに還
流管を装着し、110℃に設定したオイルバス中で撹拌しながら15分間還流した。反応
混合物を室温にまで冷却した後、ロータリーエバポレータにて溶媒を減圧留去した。残渣
を10%アセトニトリル水溶液(1mL)に溶解し、Sep−Pakカートリッジ(Wa
ters,C18,1g)に吸着させ、まず0.1M塩酸(10mL)で洗浄し、つづい
て段階的に10%→20%→25%アセトニトリル水溶液(各20mL)で溶出させた。
目的化合物を含む画分を集め、濃縮し、下記式(D)で表わされる化合物(9mg,67
%)を得た。
【化43】

【0072】
10mLのナス型フラスコにて、上記式(D)で表わされる化合物(9mg,17.1
μmol)に1.4Nの塩酸(2mL)を加え、冷却管をフラスコに装着し、130℃に
設定したオイルバス中で撹拌しながら10分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却後、
ロータリーエバポレータにて塩酸を減圧留去した。残渣を蒸留水(1mL)に溶解し、化
合物(D)の製造において使用したSep−Pakカートリッジに通し、脱色した。濃縮
後、下記式(E)で表わされる18F導入シアル酸(4mg,71%)を得た。
【化44】

【0073】
続いて、18F導入シアル酸をCMP化した。
それぞれトリス−塩酸緩衝液(0.2M,pH9.5)に溶解した18F導入シアル酸
(100mM,10μL)、CTP(400mM,5μL)、400mMのMgCl
含むBSA(1mg/mL,5μL)に、CMP−シアル酸合成酵素(0.1U,20μ
L;Neisseria meninditidis由来[Calbiochem,Ca
t.No.233266])を加えた後、NaOH水溶液(1.0M,2μL)を加え、
37℃にて一晩インキュベートし、下記式(F)で表わされるCMP−18F導入シアル酸を得た。
【化45】

【0074】
続いて、シアル酸転移酵素の存在下で、アクセプター基質としての糖鎖付加クランビン(配列番号:1。J.Am.Chem.Soc.2004,126,1377)とCMP−18F導入シアル酸とを反応させた。
シアル酸転移酵素としては、Photobacterium damselae JT0160株由来のα2,6−シアル酸転移酵素([日本たばこ産業,Cat.No.pda−160])を用いた。
糖鎖付加クランビンは、配列番号:1に記載されたとおり、天然型ではバリンである8
位が以下に示すアシアロ糖鎖付加アスパラギンに置換され、天然型ではバリンである15
位がアラニンに置換されている。
【化46】

【0075】
アルカリホスファターゼ(2μL)、HEPES緩衝液(0.2M,pH4.5,30
μL)、シアル酸転移酵素(20μL)、クランビン水溶液(0.5mM,10μL)を加え、37℃にて4時間インキュベートした。反応混合液をHPLCで精製後、ESI−MSよりモノシアロ、ジシアロ化されたクランビンの精製を確認した。
ESI−MS(正イオンモード) m/z
ジシアロ型(6959.26)計算値(平均):[M+4H]+4 1740.8 実測
値(平均):[M+4H]+4 1740.9
モノシアロ型(6650.02)計算値(平均):[M+4H]+4 1663.5 実
測値(平均):[M+4H]+4 1663.6
【0076】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、糖鎖付加クランビンのアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖の非還元末端のシアル酸に18Fが導入された糖ペプチドを含む、陽電子放出断層
撮影法に用いられるトレーサー。
【請求項2】
下記式(1)で表わされる、請求項1に記載のトレーサー。
【化1】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(2)で表
わされ、式(2)でない場合は水素原子及び式(3)乃至(6)で示される基のいずれか
一つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化2】

〔式中X〜Xは、以下の(a)〜(e)のいずれかの組合せである。
(a)X18F、X=Ac、X=OH、X=OH、X=OH
(b)X=H、X18F−CH−CO−、X=OH、X=OH、X=OH
(c)X=H、X=Ac、X18F、X=OH、X=OH
(d)X=H、X=Ac、X=OH、X18F、X=OH
(e)X=H、X=Ac、X=OH、X=OH、X18F〕
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
下記式(7)で表わされる、請求項1に記載のトレーサー。
【化7】

〔式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一方は式(8)で表
わされ、式(8)でない場合は水素原子及び式(9)乃至(12)で示される基のいずれ
か一つである。Pはペプチドを示し、Acはアセチル基を示す。〕
【化8】

〔式中Y〜Yは、以下の(f)〜(j)のいずれかの組合せである。
(f)Y18F、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(g)Y=H、Y18F−CH−CO−、Y=OH、Y=OH、Y=OH
(h)Y=H、Y=Ac、Y18F、Y=OH、Y=OH
(i)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y18F、Y=OH
(j)Y=H、Y=Ac、Y=OH、Y=OH、Y18F〕
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項4】
前記式(2)において、X〜Xの組合せが、
(b)X=H、X18F−CH−CO−、X=OH、X=OH、X=OH
である、請求項2に記載のトレーサー。
【請求項5】
前記式(8)において、Y〜Yの組合せが、
(g)Y=H、Y18F−CH−CO−、Y=OH、Y=OH、Y=OH
である、請求項3に記載のトレーサー。
【請求項6】
前記ペプチドが、前記陽電子放出断層撮影法で検出しようとする標的組織に特異的に集
積する、請求項1から5のいずれか1項に記載のトレーサー。
【請求項7】
前記ペプチドが、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、アンギオテンシ
ン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、アドレノメジュリン、モチリン、
グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチドならびにその類縁体および断片、インシュ
リン様成長因子1、インシュリン様成長因子2、エンテロガストロン、ソマトスタチン、
ソマトトロピン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、プロラクチ
ン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン類、エンケファリン類、バソプレッシン、血管
作動性腸管ペプチド、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド、セクレチン、
オキシトシン、インターフェロン類、抗体、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球・マクロフ
ァージコロニー刺激因子、インターロイキン類、卵胞刺激ホルモン、黄体刺激ホルモン、
及びヒト絨毛性ゴナドトロピンからなる群より選択される、請求項6に記載のトレーサー

【請求項8】
下記式(13)で表わされる、18Fを導入したシアル酸。
【化13】

【請求項9】
下記式(14)で表わされる、18Fを導入したCMP−シアル酸。
【化14】

【請求項10】
18F導入糖ペプチドの製造方法であって、
シアル酸の5位の炭素に18Fを導入して18F導入シアル酸を合成する工程と、
前記シアル酸をCMP−シアル酸合成酵素の存在下でシチジン三リン酸と反応させて、
CMP−18F導入シアル酸を合成する工程と、
前記CMP−18F導入シアル酸をシアル酸転移酵素の存在下でアクセプター基質とな
る糖ペプチドと反応させて、該糖ペプチドの糖鎖の非還元末端に18F導入シアル酸を結
合させる工程と、
を含む方法。
【請求項11】
前記シアル酸の5位の炭素に18Fを導入して18F導入シアル酸を合成する行程が、
シアル酸の5位の炭素に結合したN−アセチル基の炭素に18Fを導入し、18F導入シアル酸を合成する工程である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シアル酸の5位の炭素に18Fを導入する工程が、
下記式(A)で表わされるメチル(メチル4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3
,5−ジデオキシ−5−アセトアミド−D−グリセロ−α−D−ガラクト−ノヌロピラノ
シドネート)をトリフルオロ酢酸で処理し、アミノ基からBoc基を除去する工程と、
【化15】

さらに、ブロモ酢酸を反応させて、下記式(C)で表わされる化合物を得る工程と、
【化16】

上記式(C)に記載の化合物に、アセトニトリル存在下で[K/222]+18
反応させる工程と、
を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記シアル酸転移酵素が、α2,3シアル酸転移酵素又はα2,6シアル酸転移酵素である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
陽電子放出断層撮影法を用いて糖ペプチドの体内動態を解析する方法であって、
前記糖ペプチドにおける糖鎖の非還元末端に、18Fを導入したシアル酸を結合させて
18F導入糖ペプチドを得る工程と、
前記18F導入糖ペプチドを生体内に投与する工程と、
前記生体内における糖ペプチドの動態を陽電子放出断層撮影法により検出する工程と、
を含む方法。
【請求項15】
前記18Fを導入したシアル酸が、下記式(13)で表わされる化合物である、請求項
14に記載の方法。
【化17】


【公開番号】特開2011−116736(P2011−116736A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200581(P2010−200581)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】