説明

階層的バーコードスタンプを用いてバーコードの改変を検出する文書認証

【課題】自己認証的な印刷文書の生成方法及び該印刷文書の認証方法を提供する。
【解決手段】印刷文書の裏面は、文書内容の抽出された特徴をコード化する2次元バーコードを含んでいる。これらの特徴はハッシュコードにハッシュされ、バーコードスタンプ要素に変換され、該スタンプ要素の反復により階層的バーコードスタンプに変換される。階層的バーコードスタンプは、印刷文書の同じ紙の表面にグレー背景パターンとして印刷される。印刷文書を認証するため、裏面のバーコードが読み取られて文書の特徴が抽出される。これらの特徴はハッシュコードにハッシュされ、文書の表面の階層的バーコードスタンプから抽出されたハッシュコードと比較されて、裏面のバーコードが改変されたか否かが判断される。更に、文書の表面及び裏面から抽出された文書の特徴が比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書内容のコード化にバーコードを用いる文書認証方法に関し、特に、このような文書認証方法であって、バーコードの改変の影響を低減するために、階層的バーコードスタンプを背景パターンとして用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードは、データをコード化するための機械読み取り可能な記号表示の一種であって、様々な応用分野に広く導入されている。2次元バーコード(2dバーコード)は、そのような記号表示の一態様である。それは一般に、テキスト、数字、画像及び2値データストリームをコード化するために用いることが可能であり、身分証明書、出荷ラベル、証明書及び他の文書等に用いられている。一般に使用される二次元バーコード規格の例には、PDF417規格及びQRコード(登録商標)が含まれ、このような二次元バーコードを印刷し、読み取るソフトウェア及びハードウェア製品が利用可能となっている。
【0003】
テキスト、グラフィックス、画像等を含み得るデジタル原稿の多くは印刷され、印刷されたハードコピーは分配され、コピー等された後、多くの場合にスキャンされてデジタル形式に戻る。これを閉ループ処理という。スキャンデジタル文書の認証とは、スキャン文書がデジタル原稿の真正コピーであるか否か、すなわち、スキャン文書がハードコピー形式であった際に改変されたか否かを決定することである。改変は、意図的な試み、又は予期しない出来事によって起こりうる。印刷文書を認証するには2つの方法がある。1つ目の方法は、原稿画像を記憶するデータベースを用いて、スキャン文書画像をオリジナル画像と比較する。
【0004】
2つ目の方法は、オリジナル画像データベースへの依存を排除する。特に、2次元(2d)バーコードを用いて印刷文書を認証する方法が開発されている。通常、このような方法は、原稿の内容、又は原稿の認証に使用することができる、該原稿から抽出された他の情報(一般に認証情報と呼ばれる)を2次元バーコード(認証バーコードと呼ばれる)にコード化する。前記バーコードは、印刷文書と同じ記録媒体上、例えば、前記印刷文書の表面又は裏面上に印刷される。文書の内容は、該文書のページのビットマップ画像、該文書内に含まれるテキスト、グラフィックス若しくは画像、又はそれらの組合せであってもよい。認証バーコードを有する印刷文書を認証するために、該文書はスキャンされ、ビットマップ画像、光学式文字認識(OCR)技術を用いて抽出されたテキスト等の文書内容を表すスキャンデータが得られる。また、認証バーコードもスキャンされ、そこに含まれるデータ(認証データ)が抽出される。その後、スキャンデータは認証データと比較され、印刷文書に当初印刷されたときから改変された部分があるか否か、すなわち、前記文書が真正であるか否かが決定される。一部の認証記述は、単に改変があったか否かを決定するものであり、また一部は、如何なる内容が改変されたか、そして改変は如何なるものかを決定することができる。認証バーコードを有する印刷文書は、その内容の認証に、印刷文書にある情報以外の如何なる情報も必要としないため、自己認証的であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2次元バーコードを有する自己認証的文書において、文書が公表された後、バーコード自体は改変に対して脆弱である。したがって、本発明は、従来の技術における制限や不都合に起因する一以上の問題を大幅に除去する文書認証方法及びその関連装置を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、認証バーコードの如何なる改変も検知することができる文書認証方法を提供することである。
【0007】
本発明の追加的な特徴及び利点は以下の記載において述べられ、その一部は当該記載から明らかであるか、本発明の実施により知るところとなる。本発明の目的及び他の利点は、明細書の記載、特許請求の範囲、及び添付図面で詳しく示された構造により実現され、取得される。
【0008】
これらの及び/他の目的を達成するために、具現化され広く記載されているように、本発明は、データ処理及び印刷システムにおいて実施される自己認証的な印刷文書の生成方法であって、(a)原稿画像を取得する工程と、(b)前記原稿画像を処理して処理済データを生成する工程と、(c)前記工程(b)で生成された前記処理済データをコード化する第1のバーコードスタンプを生成する工程と、(d)予め定義されたパターンに従って、前記工程(b)で生成された前記処理済データから計算されたコードをコード化するバーコードスタンプ要素を反復することにより、階層的バーコードスタンプを生成する工程と、(e)記録媒体の表面に前記階層的バーコードスタンプ及び前記原稿画像を印刷すると共に、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に前記第1のバーコードスタンプを印刷し、前記印刷文書を生成する工程と、を有する方法を提供する。
【0009】
他の側面では、本発明は、データ処理システムにおいて実施される印刷文書の認証方法であって、前記印刷文書は、記録媒体の表面に印刷された階層的バーコードスタンプ及び文書画像と、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に印刷された第1のバーコードスタンプと、を含み、前記方法は、(a)前記印刷文書から表面画像及び裏面画像を取得する工程と、(b)前記表面画像から前記文書画像及び前記階層的バーコードスタンプを抽出する工程と、(c)前記工程(b)で抽出した前記文書画像を処理して第1の処理済データを取得する工程と、(d)前記工程(b)で抽出した前記階層的バーコードスタンプから第1のコードを抽出する工程と、(e)前記表面画像及び/又は前記裏面画像における前記第1のバーコードスタンプを読み取り、デコードして、そこにコード化された第2の処理済データを取得する工程と、(f)前記第2の処理済データから第2のコードを計算する工程と、(g)前記第1のコート及び第2のコードを比較して、前記第1のバーコードスタンプが改変されたか否かを決定する工程と、(h)前記第1の処理済データ及び第2の処理済データを比較して、前記印刷文書が改変されたか否かを決定する工程と、を有する方法を提供する。
【0010】
他の側面では、本発明は、データ処理装置に上記の方法を実行させるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0011】
上述した概要及び以下の詳細な説明は共に、例示的かつ説明的なものであって、特許請求の範囲に記載された本発明について更なる説明を提供することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】クロネッカー積の演算を用いた階層的バーコードスタンプの生成の例を示す。
【図2】本発明の実施形態による背景としてのバーコードパターンを有する印刷文書の全面を示す。
【図3】本発明の実施形態による自己認証的文書の生成方法を示す。
【図4】本発明の実施形態による印刷文書の認証の決定方法を概略的に示す。
【図5】本発明の実施形態による印刷文書の認証の決定方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、自己認証的な印刷文書を生成し、その後、印刷文書を認証する方法を提供する。自己認証的文書は、その裏面(又は表面)に、文書画像又は該文書の表面の文書内容から抽出した特徴をコード化する2次元バーコードスタンプを有する。2次元バーコードの安全性を高めるため、文書画像又は該文書の抽出された特徴は、任意に所望のメタデータと共に、適度に短いハッシュコードにハッシュされ、2次元バーコードスタンプ要素に変換される。その後、スタンプ要素は、予め定義されたパターンに従ってスタンプ要素を反復することにより、クロネッカー積の行列演算の使用によって達成しうる階層的バーコードスタンプに変換される。階層的バーコードスタンプは、印刷文書の表面に背景パターン(グレーパターン等)として印刷され、この背景パターンの上に文書画像が印刷される。表面画像及び(もしあれば)裏面画像は、記録媒体の1枚に印刷されて配布される。
【0014】
印刷文書を認証するため、裏面(又は表面)の2次元バーコードにコード化されたデータ(抽出した特徴や圧縮画像等)は抽出され、ハッシュコードにハッシュされて、文書の表面の階層的バーコードから抽出されたハッシュコードと比較される。これは、前記文書の裏面(又は表面)の2次元バーコードが改変されたか否かを決定するのに役立つ。
【0015】
2次元バーコードは、印刷文書の表面及び/又は裏面に印刷することができる。一般に、2次元バーコードが抽出テキスト等の比較的小さい量のデータをコード化する場合、2次元バーコードスタンプの数は比較的少なくなることから、2次元バーコードは文書の表面に印刷することができる。2次元バーコードが原稿画像をコード化する場合には、2次元バーコードスタンプの数は比較的多くなることから、2次元バーコードのすべてを表面に印刷することは実用的ではないだろう。後述の実施形態において2次元バーコードは裏面に印刷されるが、表面、又は表面及び裏面に印刷してもよいことは勿論である。
【0016】
丸付き乗算記号で示されるクロネッカー積は、結果としてブロック行列となる2つの行列の演算である。Aがm×n行列、Bがp×q行列の場合、クロネッカー積A*B(*は丸付き乗算記号)は、mp×nq行列となる。図1は、スタンプ要素11、及びスタンプ要素11とそれ自体とのクロネッカー積(階層的バーコード)12を示す。この例におけるクロネッカー積は、下記のような行列形式で表すことができる。
【0017】
【数1】

【0018】
この例では、スタンプ要素はm×n=3×2行列であり、該スタンプ要素とそれ自体とのクロネッカー積はm×n=9×4行列である。
【0019】
階層的バーコードは、スタンプ要素と予め定義された行列とのクロネッカー積を形成することによって生成することもできる。すなわち、このような階層的バーコードは、スタンプ要素を予め定義された方法によって反復して形成することができる。例えば、予め定義された行列は以下の行列であってもよい。
【数2】

【0020】
クロネッカー積の演算は階層的バーコードを生成するのに便宜な方法であるが、階層的バーコードは他の適切な方法によって生成することも可能である。より一般的には、階層的バーコードは、予め定義されたパターンに従ってスタンプ要素を反復することによって生成される。反復回数は整数である必要はなく、例えば、記録媒体のサイズによって、スタンプ要素の最後の反復はスタンプ要素全体の一部のみを含んでいてもよい。また、反復されるスタンプ要素の間に所望の幅の空白があってもよい。階層的バーコードは、スタンプ要素さえ反復されていれば、このようなパターンも含みうる。下記の説明では、クロネッカー積の演算が階層的バーコードの生成の例として用いられる。
【0021】
図2は、階層的バーコード21を背景パターンとして有する文書20の表面を示す。階層的バーコード21の各タイルは2進数を表す。階層的バーコードはグレートーンで印刷される。すなわち、各バーコードタイルはグレー又は白(無印刷)である。グレートーンのグレースケール値は、例えば100である(黒を255とした場合)。文書内容22(例えば、テキスト、グラフィックス、画像等)は、背景パターン21の上に黒で印刷される(つまり両者は重ねられる)。
【0022】
バーコードタイル21aのサイズは、文書認証において用いられる従来の2次元バーコードのタイルサイズより大きい。従来の2次元バーコードでは、情報密度を最大化するためにタイルサイズを最小化する必要性から、タイルサイズは5〜7ピクセル程度の小ささだった。本発明の実施形態では、階層的バーコードが背景パターンとして使用され、その上に文書内容に従ってバーコードタイル21aが印刷されることから、好ましくは、バーコードタイルは、大部分のタイルが印刷文書内容によって完全に覆い隠されることのないような適度なタイルサイズを有する。好ましくは、タイルサイズは、タイルの一部が印刷文書内容によって覆い隠されている場合でも、大部分のタイルの2進数が読み取れるように決定されている。一つの例では、タイルサイズは(600dpiの解像度で)60×60ピクセルであり、階層的バーコードを形成するバーコードスタンプ要素は21×21のタイルを有し、前記バーコードスタンプ要素は、クロネッカー乗算によって5(縦)×4(横)行列と乗算され、レターサイズの用紙に一致する105×84タイルの階層的バーコードを形成する。他の例では、タイル21aのサイズは(600dpiの解像度で)100×100ピクセルであり、階層的バーコードを形成するバーコードスタンプ要素は21×21のタイルを有し、前記バーコードスタンプ要素は、クロネッカー乗算によって3(縦)×2(横)行列と乗算され、レターサイズの用紙に一致する63×42タイルの階層的バーコードを形成する。
【0023】
図2におけるタイル21aのサイズ及び内容22のサイズは、説明の便宜上、実際よりも大きく表している。図1に示す例示的な階層的バーコード12は、図2における例示的な背景パターン21を構成するのに用いられている(3回繰り返されている)。これは非常に簡略化した例であり、図示のみを目的としている。
【0024】
図2における背景バーコードパターンは実質的にページ全体を覆っているが、例えば、背景パターンはページの一部のみを覆ってもよく、前記バーコードはページの空きスペースや余白、線の間の空白等に存在してもよい。
【0025】
前述のように、階層的バーコード21は、バーコード要素と他の行列とのクロネッカー積であり、他の行列はバーコード要素自体であってもよい(図1参照)。階層的バーコードは重複しているため、デコードをより確実かつ容易にする。そのため例えば、いくつかのバーコードタイルが印刷内容に覆い隠されて読めない場合でも、他のタイル(読めるもの)の値の使用が可能であり、階層的バーコードのデコードが可能である。
【0026】
図3は、表面背景パターンとして階層的バーコードを有する自己認証的文書を生成するための、本発明の実施形態によるコード化及び印刷方法を概略的に示すものである。図3に示すように、ハードコピー形式又は電子的形式である原稿30は、処理されて2値の原稿画像31が生成される(ステップS301)。原稿30がハードコピー形式の場合、ステップS301はスキャニング工程を含んでもよく、また、スキャンした原稿又はデジタル原稿がグレースケール画像の場合、ステップS301は閾値処理工程を含んでもよい。
【0027】
2値の原稿画像31は処理され、文書画像から処理済データ32が生成される(ステップS302)。処理工程は、処理済データ32が抽出した特徴の場合、文書画像からグラフィックス又はビットマップ画像オブジェクトを抽出する工程、OCR技術等によってテキストを抽出する工程を含んでもよい。文書画像から特徴を抽出する工程は多くの文書認証方法において共通の工程であり、この工程の実施には適切な技術を用いることができる。処理済データ32は、原稿画像の空間解像度がより低いバージョンであってもよい。あるいは、処理済データ32は、原稿画像自体の圧縮バージョンであってもよい。より一般的には、処理工程S302では、原稿画像31を処理してデータ容量を減らす。これには適切な処理を適用しうる。処理済データ32は、このような処理工程によって生成されたデータであり、データの如何なる適切な種類であってもよい。
【0028】
その後、処理済データ32はコード化されて2次元バーコードスタンプ34となり、印刷文書の裏面に印刷される(ステップS303)。任意に、時間情報、オペレータ情報等の印刷文書に関する所望のメタデータ33も、処理済データと共に2次元バーコード34にコード化されうる(ステップS303)。
【0029】
あるいは、ステップS302が実施されない場合、2次元バーコードスタンプは、(非圧縮)原稿画像を直接コード化してもよい。しかしながら、原稿画像は一般に大量のデータを含んでおり、原稿画像を(圧縮なしで)2次元バーコードに直接コード化することは実用的でないことが多い。
【0030】
一方で、処理済データ32にハッシュ機能が適用され、ハッシュコード35が生成される(ステップS304)。好ましくは、ハッシュコードは、64,128,256ビット等の妥当な短さである。その後、ハッシュコード35からスタンプ要素36が生成される(ステップS305)。任意に、ハッシュコードと共にメタデータ33もスタンプ要素にコード化される(ステップS305)。その後、クロネッカー演算がスタンプ要素36に適用され、階層的バーコードスタンプ37が生成される(ステップS306)。階層的バーコードスタンプ37は、スタンプ要素36とそれ自体とのクロネッカー積であってもよく、スタンプ要素36と予め定義された行列とのクロネッカー積であってもよい。ここで、スタンプ要素36及び階層的バーコードスタンプ37は行列の形式(例えば、コンピュータに記憶されたデータ)であってもよく、必ずしもバーコードスタンプの2次元画像というわけではない。
【0031】
階層的バーコードスタンプ37が生成された後、それは2値の原稿画像31と組み合わされ、スタンプ画像38が生成されて印刷文書の表面に印刷される(ステップS307)。スタンプ画像38は、階層的バーコードスタンプ37を表すグレー(印刷)及び白(無印刷)タイルを含む背景パターンを有している。2値(黒及び白)の原稿画像31は、背景パターンの上に重ねられる。スタンプ画像38の例を図2に示す。
【0032】
表面画像38は記録媒体の表面に印刷され、2次元バーコードスタンプ34は同じ記録媒体の裏面に印刷されて、印刷文書39が作成される(ステップS308)。
【0033】
印刷文書39が公表され、配布された後、該文書又はそのコピーは、図4及び5に示す方法で認証することができる。図4に示すように、印刷文書400の両面がスキャンされ(ステップS501及びS502)、表面画像401及び裏面画像402が取得される。表面画像401(表面画像38と実質的に同じであると思われる)は背景パターン及び文書内容を含むスタンプ画像であり、裏面画像402は2次元バーコード(2次元バーコードスタンプ34と同じであると思われる)を含む。ここで、「同じであると思われる」とは、印刷文書が改変されていなければ、印刷文書400の関連項目は、印刷文書39の対応項目と実質的に同じであるということを意味する(勿論、所定の人為的な影響は、印刷及びスキャニング処理の正常な現象として発生しうるが、これらは画像を実質的に変更するものではない)。
【0034】
表面画像401は解析され、文書画像(文書内容)403が抽出されると共に(ステップS503)、階層的バーコードスタンプ404が抽出される(ステップS504)。ステップS503及びS504において、階層的バーコードスタンプ404は、前記ピクセルのグレースケール値によって文書画像403から区別することができる。
【0035】
コード化及び印刷処理の間(図3)、ステップS302が原稿画像から特徴を抽出する工程又は原稿画像の解像度がより低いバージョンを生成する工程を含む場合は、同じ抽出処理が文書画像403に適用され、処理済データ405が生成される。ステップS302が原稿画像の圧縮バージョンを作成するのみであり、特徴を抽出する工程又は解像度がより低いバージョンを生成する工程を含まない場合は、ステップS505は実行されない。
【0036】
抽出された階層的バーコードスタンプ404は、更に解析され、スタンプ要素406が抽出される(ステップS506)。ステップS504及びS506の好ましい実施において、認証アルゴリズムは、タイルサイズ、スタンプ要素の寸法(m及びn)、及び(もしあれば)クロネッカー積に用いられる予め定義された行列等の、階層的バーコードスタンプに関する非経験的知識(priori knowledge)を有している。前述したように、階層的バーコードの多くのタイルは、文書内容によって(部分的に、更には完全に)覆い隠される。階層的バーコードスタンプの非経験的知識は、アルゴリズムが階層的バーコードの重複性を利用してスタンプ要素の値を正確に決定することを可能とする。あるいは、タイルサイズ、スタンプ要素の寸法(m及びn)等の階層的バーコードスタンプに関する情報は、2次元バーコードスタンプ34にコード化され、又は文書の表面若しくは裏面に印刷された別のバーコードスタンプにコード化されうる。認証アルゴリズムが階層的バーコードスタンプに関するそのような知識を(非経験的に又はバーコードスタンプから得て)有しない場合は、表面画像401の隠されたデータに最も適合するこれらのパラメータ(タイルサイズ、m及びn等)の値を決定するために、より高度なマッチングアルゴリズムが必要とされる。
【0037】
当然ながら、ステップS506の間に、背景パターンが、階層的バーコードスタンプに関する知識に合致するクロネッカー積の形式に一致しないことがわかった場合は、文書は改変されたと決定される。
【0038】
スタンプ要素406が決定された後は、デコードされ、ハッシュコード407及び(もしあれば)そこにコード化されたメタデータ408が得られる(ステップS507及びS508)。デコード処理は、ステップS305のコード化処理の逆である。
【0039】
その一方で、裏面画像の2次元バーコード402は読み取られ、バーコードデータ409(ビットストリーム)が得られる(ステップS509)。前述のように、バーコードデータ409は(任意に)メタデータをコード化しており、また、ステップS302で生成される、オリジナル画像から抽出した特徴、オリジナル画像の解像度が低いバージョン、又はオリジナル画像データの圧縮バージョン等の処理済データ32をコード化している。したがって、バーコードデータ409がデコードされると、そこにコード化されていたメタデータ410及び処理済データ411が得られる(ステップS510及びS511)。デコード処理は、ステップS303のコード化処理の逆である。処理済データ411は、抽出した特徴、解像度が低いバージョン、及び圧縮画像等を含みうる。ハッシュ機能(ステップS304で用いられたハッシュ機能と同様)が処理済データ411に適用され、ハッシュコード412が計算される(ステップS512)。
【0040】
その後、図5に示すように、比較処理が行われ、印刷文書400の真正性が決定される。まず、ステップS513において、(前面画像からの)スタンプ要素406から得たハッシュコード407が、(裏面画像からの)2次元バーコード402から得た(計算された)ハッシュコード412と比較される。2つのハッシュコードが異なる場合(ステップS514:N)、2次元バーコードは改変されたと判明し、印刷文書400は改変されており真正ではないと判断される(ステップS517)。
【0041】
2つのハッシュコードが同じ場合(ステップS514:Y)、(表面画像からの)スタンプ要素406から得られたメタデータ408が、(裏面画像からの)2次元バーコード402から得られたメタデータ410と比較される(ステップS515)。2つのメタデータが異なる場合(ステップS516:N)、やはり2次元バーコードは改変されたと判明し、印刷文書400は改変されており真正ではないと判断される(ステップS517)。ステップS515及びS516は任意であり、メタデータがバーコードにコード化された場合に実行される。また、ステップS515及びS516は、ステップS513及びS514の前に行うこともできる。
【0042】
2つのハッシュコードが同じであり(ステップS516:Y)、2つのメタデータが同じ場合(ステップS516:Y)、表面画像401から得られた文書画像403は、裏面画像402から得られた処理済データ411と比較される(ステップS518)。この比較工程は、処理済データ411が如何なる種類のデータを含むかに応じて、多くの代替実施手段を取りうる。第1に、処理済データ411がオリジナル画像の圧縮バージョンを含む場合は、圧縮データを解凍することにより文書画像を生成し、文書画像403に対するピクセル対ピクセルの画像比較を行いうる。このような実施形態では、ステップS505は不要である。第2に、処理済データ411が抽出された特徴又は解像度がより低い画像を含む場合は、これらの特徴は処理済データ405の対応する特徴と比較される。この比較において、文書画像403と処理済データ411とが互いに一致した場合は(ステップS519:Y)、印刷文書400は真正であると判断される(ステップS520)。そうでない場合は(ステップS519:N)、印刷文書400は改変されており真正ではないと判断される(ステップS520)。
【0043】
上述した文書認証スキームには、多くの利点がある。階層的バーコードスタンプは、その構造上の重複性及び階層的性質から、汚れに強く、温度耐性がある。また、階層的スタンプは文書の表面に背景パターンとして存在することから、改竄される可能性は低い。更に、ハッシングで情報容量を低減することにより、バーコードスタンプ要素を簡易な方法でコード化することが可能となり、階層的バーコードスタンプの可読性及び強健性を改善することができる。認証処理は、3段階の比較を必要とし、これにより認証方法の安全性が著しく改善される。
【0044】
他の実施形態では、階層的バーコードスタンプは、文書がハードコピー形式である間、人間(肉眼)に不可視である。この場合、バーコードスタンプは、地紋(tint block)技術を用いて文書の表面に隠すことができる。特に、スタンプの各タイルを不可視の分散微小ドットによって形成することにより、ハードコピー文書がスキャンされてデジタル形式に戻る際に、バーコードスタンプが検知され又は現れるようにすることができる。
【0045】
上述の文書認証方法は、メモリに記憶されたソフトウェア又はファームウェアによって実施することができ、コンピュータ、及びプリンタ若しくはデータ処理部を有するスキャナ等の如何なる適切なデータ処理装置によっても実施することができる。この点、コンピュータにより実施可能なソフトウェア、すなわち図3〜5の処理を実現するコードは、適切なデータ処理装置の中央処理装置(CPU)又はマイクロプロセッサ(MPU)からアクセスされるコンピュータメモリに格納される。印刷又はスキャニング工程は、プリンタ及びスキャナ、又は印刷部及びスキャニング部が1つの装置に一体化されたオールインワンデバイスによって実行することができる。これらのデバイス及び装置の構造は周知であり、本明細書では説明を省略する。
【0046】
あるいは、スキャナの代わりに、デジタルカメラ又は他の撮像装置をステップS501及びS502に用いることができる。この点で、本願の明細書及び特許請求の範囲において用いられる「スキャン画像」という用語は、広く、スキャニング、写真撮影、又は他の適切な方法によって生成されたデジタル画像を意味する。
【0047】
本発明の改変検出方法及び関連する装置に、本発明の要旨から逸脱することなく種々の改良及び変更を加え得ることは、当業者において明らかであろう。このように、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内における改良及び変更を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理及び印刷システムにおいて実施される自己認証的な印刷文書の生成方法であって、
(a)原稿画像を取得する工程と、
(b)前記原稿画像を処理して処理済データを生成する工程と、
(c)前記工程(b)で生成された前記処理済データをコード化する第1のバーコードスタンプを生成する工程と、
(d)予め定義されたパターンに従って、前記工程(b)で生成された前記処理済データから計算されたコードをコード化するバーコードスタンプ要素を反復することにより、階層的バーコードスタンプを生成する工程と、
(e)記録媒体の表面に前記階層的バーコードスタンプ及び前記原稿画像を印刷すると共に、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に前記第1のバーコードスタンプを印刷し、前記印刷文書を生成する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(e)は、前記階層的バーコードスタンプを表す背景パターンを生成する工程と、前記背景パターンを前記記録媒体の表面において前記原稿画像と重ねて印刷する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記背景パターンは、グレートーンで印刷された、又は無印刷のバーコードタイルを含み、前記原稿画像は、黒で印刷された2値画像であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(d)は、
(d1)前記工程(b)で生成された前記処理済データからハッシュコードを生成する工程と、
(d2)前記ハッシュコードをコード化する前記バーコードスタンプ要素を生成する工程と、
(d3)前記予め定義されたパターンに従って前記バーコードスタンプ要素を反復することにより、前記バーコードスタンプ要素から前記階層的バーコードスタンプを生成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(c)において、前記第1のバーコードは前記印刷文書に関連するメタデータを更にコード化し、前記工程(d)において、前記階層的バーコードスタンプは前記メタデータを更にコード化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理済データは、抽出されたグラフィックスオブジェクト、抽出されたビットマップ画像オブジェクト、抽出されたテキスト、前記原稿画像の空間解像度がより低いバージョン、及び前記原稿画像の圧縮バージョンのうちの一以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
データ処理システムにおいて実施される印刷文書の認証方法であって、
前記印刷文書は、記録媒体の表面に印刷された階層的バーコードスタンプ及び文書画像と、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に印刷された第1のバーコードスタンプと、を含み、
前記方法は、
(a)前記印刷文書から表面画像及び裏面画像を取得する工程と、
(b)前記表面画像から前記文書画像及び前記階層的バーコードスタンプを抽出する工程と、
(c)前記工程(b)で抽出した前記文書画像を処理して第1の処理済データを取得する工程と、
(d)前記工程(b)で抽出した前記階層的バーコードスタンプから第1のコードを抽出する工程と、
(e)前記表面画像及び/又は前記裏面画像における前記第1のバーコードスタンプを読み取り、デコードして、そこにコード化された第2の処理済データを取得する工程と、
(f)前記第2の処理済データから第2のコードを計算する工程と、
(g)前記第1のコート及び第2のコードを比較して、前記第1のバーコードスタンプが改変されたか否かを決定する工程と、
(h)前記第1の処理済データ及び第2の処理済データを比較して、前記印刷文書が改変されたか否かを決定する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記階層的バーコードスタンプは前記文書の前記表面において背景パターンを形成し、前記文書画像は前記背景パターンに重なっていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記背景パターンは、グレートーンで印刷された、又は無印刷のバーコードタイルを含み、前記文書画像は、黒で印刷された2値画像であり、前記工程(b)は、前記表面画像においてグレーピクセルと黒ピクセルとを識別する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(d)は、
(d1)予め定義されたパターンに従って反復されたバーコードスタンプ要素を含む前記階層的バーコードスタンプからバーコードスタンプ要素を生成する工程と、
(d2)前記バーコードスタンプ要素をデコードして前記第1のコードを取得する工程と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記工程(b)で抽出された前記階層的バーコードスタンプから第1のメタデータを抽出する工程と、
(j)前記第1のバーコードスタンプにコード化された第2のメタデータを取得する工程と、
(k)前記第1のメタデータ及び前記第2のメタデータを比較して、前記印刷文書が改変されたか否かを判断する工程と、
を更に有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の処理済データは、抽出されたグラフィックスオブジェクト、抽出されたビットマップ画像オブジェクト、抽出されたテキスト、前記文書画像の空間解像度がより低いバージョン、及び前記文書画像の圧縮バージョンのうちの一以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
データ処理装置を制御するための、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを内蔵したコンピュータ使用可能な媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、前記データ処理装置に、自己認証的な印刷文書の生成処理を行わせるように構成され、
前記処理は、
(a)原稿画像を受信する工程と、
(b)前記原稿画像を処理して処理済データを生成する工程と、
(c)前記工程(b)で生成された前記処理済データをコード化する第1のバーコードスタンプを生成する工程と、
(d)予め定義されたパターンに従って、前記工程(b)で生成された前記処理済データから計算されたコードをコード化するバーコードスタンプ要素を反復することにより、階層的バーコードスタンプを生成する工程と、
(e)記録媒体の表面に前記階層的バーコードスタンプ及び前記原稿画像を印刷すると共に、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に前記第1のバーコードスタンプを印刷し、前記印刷文書を生成するようにプリンタを制御する工程と、
を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
前記工程(e)は、前記階層的バーコードスタンプを表す背景パターンを生成する工程と、前記背景パターンを前記記録媒体の表面に前記原稿画像と重ねて印刷する工程と、を含むことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
前記背景パターンは、グレートーンで印刷された、又は無印刷のバーコードタイルを含み、前記原稿画像は、黒で印刷された2値画像であることを特徴とする請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記工程(d)は、
(d1)前記工程(b)で生成された前記処理済データからハッシュコードを生成する工程と、
(d2)前記ハッシュコードをコード化する前記バーコードスタンプ要素を生成する工程と、
(d3)前記予め定義されたパターンに従って前記バーコードスタンプ要素を反復することにより、前記バーコードスタンプ要素から前記階層的バーコードスタンプを生成する工程と、
を有することを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記工程(c)において、前記第1のバーコードは前記印刷文書に関連するメタデータを更にコード化し、前記工程(d)において、前記階層的バーコードスタンプは前記メタデータを更にコード化することを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記処理済データは、抽出されたグラフィックスオブジェクト、抽出されたビットマップ画像オブジェクト、抽出されたテキスト、前記原稿画像の空間解像度がより低いバージョン、及び前記原稿画像の圧縮バージョンのうちの一以上を含むことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
データ処理装置を制御するための、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを内蔵したコンピュータ使用可能な媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、前記データ処理装置に、記録媒体の表面に印刷された階層的バーコードスタンプ及び文書画像と、前記同じ記録媒体の表面又は裏面に印刷された第1のバーコードスタンプと、を含む印刷文書の認証処理を行わせるように構成され、
前記処理は、
(a)前記印刷文書から表面画像及び裏面画像を受信する工程と、
(b)前記表面画像から前記文書画像及び前記階層的バーコードスタンプを抽出する工程と、
(c)前記工程(b)で抽出した前記文書画像を処理して第1の処理済データを取得する工程と、
(d)前記工程(b)で抽出した前記階層的バーコードスタンプから第1のコードを抽出する工程と、
(e)前記表面画像及び/又は前記裏面画像における前記第1のバーコードスタンプを読み取り、デコードして、そこにコード化された第2の処理済データを取得する工程と、
(f)前記第2の処理済データから第2のコードを計算する工程と、
(g)前記第1のコート及び第2のコードを比較して、前記第1のバーコードスタンプが改変されたか否かを決定する工程と、
(h)前記第1の処理済データ及び第2の処理済データを比較して、前記印刷文書が改変されたか否かを決定する工程と、
を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
前記階層的バーコードスタンプは前記文書の前記表面において背景パターンを形成し、前記文書画像は前記背景パターンに重なっていることを特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
前記背景パターンは、グレートーンで印刷された、又は無印刷のバーコードタイルを含み、前記文書画像は、黒で印刷された2値画像であり、前記工程(b)は、前記表面画像においてグレーピクセルと黒ピクセルとを識別する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
前記工程(d)は、
(d1)予め定義されたパターンに従って反復されたバーコードスタンプ要素を含む前記階層的バーコードスタンプからバーコードスタンプ要素を生成する工程と、
(d2)前記バーコードスタンプ要素をデコードして前記第1のコードを取得する工程と、
を有することを特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
(i)前記工程(b)で抽出された前記階層的バーコードスタンプから第1のメタデータを抽出する工程と、
(j)前記第1のバーコードスタンプにコード化された第2のメタデータを取得する工程と、
(k)前記第1のメタデータ及び前記第2のメタデータを比較して、前記印刷文書が改変されたか否かを判断する工程と、
を更に有することを特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
前記第1の処理済データは、抽出されたグラフィックスオブジェクト、抽出されたビットマップ画像オブジェクト、抽出されたテキスト、前記文書画像の空間解像度がより低いバージョン、及び前記文書画像の圧縮バージョンのうちの一以上を含むことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147114(P2011−147114A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−259075(P2010−259075)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】