階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法
【課題】生産性及び施工性が高く、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々向上させることができる階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法を提供する。
【解決手段】アングル状の固定具の水平面部22の基端部に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している突出部23が一体的に設けられている。作業者は、側板11のビス面11aに形成されている挿入穴51の内奥面51aを壁にビス留めする。次いで、挿入穴51に突出部23を挿入し、この状態で、固定具の鉛直面部21をビス面11にビス留めする。次に、水平面部22の内面22aと踏板10の下面とを対面させた状態で、水平面部22を踏板10にビス留めする。最後に、被覆部材31で鉛直面部21と踏板10の端部とを被覆する。
【解決手段】アングル状の固定具の水平面部22の基端部に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している突出部23が一体的に設けられている。作業者は、側板11のビス面11aに形成されている挿入穴51の内奥面51aを壁にビス留めする。次いで、挿入穴51に突出部23を挿入し、この状態で、固定具の鉛直面部21をビス面11にビス留めする。次に、水平面部22の内面22aと踏板10の下面とを対面させた状態で、水平面部22を踏板10にビス留めする。最後に、被覆部材31で鉛直面部21と踏板10の端部とを被覆する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏板と桁板又は側板等とを用いてなり、蹴込み板を備えない階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内に設置される階段として、露出階段(オープン階段)が用いられている。
図20は、従来の露出階段の構成を示す斜視図である。
従来の露出階段は、建築物の例えば1階の床面と2階との間に夫々斜めに架け渡されている2枚の桁板91,91と、桁板91,91に階段状に固定されている複数枚の踏板92,92,…とを備える。
【0003】
各桁板91には、長辺部を部分的に切削することによって、踏板92,92,…の枚数に等しい個数の踏板支持部911,911,…が形成されている。各踏板92の長辺部には、長手方向に隣り合う2個の矩形状の切り欠き部921,921が形成されている。各踏板支持部911は、踏板92の下面が載置される踏板載置面91aと、切り欠き部921の内法に対応する外法を有し、切り欠き部921に嵌合される嵌合部91bとを有する。
【0004】
所定の階段設置場所に露出階段を設置する作業者は、まず、桁板91,91を左右方向に離隔配置して建築物の1階と2階との間に架設する。
次いで、作業者は、左右一対の踏板支持部911,911に接着剤を塗布してから、図中二点鎖線で示す踏板92の下面が踏板載置面91aに載置され、切り欠き部921が嵌合部91bに嵌合されるよう踏板92を桁板91,91に図中白抜矢符方向へ嵌め込み、固定する。
【0005】
ところで、桁板及び踏板夫々とは別体の固定具を用いて、1枚又は2枚の桁板に複数枚の踏板を階段状に固定してなる露出階段が提案されている(特許文献1〜6参照)。
更に、ささら桁に一体に設けられている受け部に踏板を載置してなる露出階段が提案されている(特許文献7参照)。
【0006】
以上のような露出階段は、ボックス階段(即ち、踏板の一側部又は両側部が壁に取り付けられており、また、蹴込み板を備える階段)に比べて、装飾性が高く、開放感を有するため、例えばリビング・ルームのように、装飾性及び開放感が好まれる空間に設置されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322304号公報
【特許文献2】特開2006−177053号公報
【特許文献3】特開2006−97384号公報
【特許文献4】特開2006−97383号公報
【特許文献5】特開2005−315031号公報
【特許文献6】特開2008−184811号公報
【特許文献7】特開2005−30082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図20に示すような従来の露出階段の場合、切り欠き部921,921が、踏板92の長辺部から短手方向中央部に亘って凹設されているため、踏板92は一枚板の踏板より強度が低いという問題がある。
また、1個の切り欠き部921に対応する踏板支持部911は、桁板91の長辺部の端面と両面夫々とを加工することによって形成しなければならないため、工数が多く、生産性が悪いという問題がある。
【0009】
一般に、桁板91及び踏板92夫々は、踏板支持部911及び切り欠き部921夫々が工場で形成された状態で、露出階段の階段設置場所へ搬入される。つまり、踏板92,92,…夫々の切り欠き部921,921間の距離は一定である。ところが、桁板91の反り、階段設置場所の歪み等によって、桁板91,91の左右一対の踏板支持部911,911間の離隔距離は一定でないことがある。この場合、踏板92を桁板91,91に嵌め込めないという問題が生じる。
更に、踏板支持部911と切り欠き部921とが嵌合する部分で、桁板91が踏板92に干渉するかたちとなるため、踏板92の上面の面積が実際よりも小さいように錯覚し、足場が狭いという印象を使用者が受けるという問題がある。
【0010】
特許文献1〜7に記載の露出階段であれば、図20に示すような従来の露出階段(即ち、切り欠き部921,921を有する踏板92を、踏板支持部911,911を有する桁板91,91に嵌め込み固定する露出階段)とは構成が異なるため、前述の問題は生じない。
【0011】
ところが、特許文献2に記載されている露出階段においては、桁板(階段桁)が歪んだ状態で架設されている、又は、各踏板の寸法にバラつきがある等の理由で、踏板の左右両端と、固定具(固定プレート)が有する端部係止片との間に空隙が生じる虞がある。この場合、露出階段の美観が悪化する。
しかも、固定具がビス留めのみで桁板に固定されているため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスのみで支える必要がある。即ち、荷重に対する強度に不安がある。
【0012】
特許文献3に記載されている露出階段は、踏板を桁板(桁)に固定するために、踏板及び桁板夫々に対する取り付け方が全く異なる2種類の固定具(踏板受け具及び踏板挟持具)を必要とする。このため、露出階段の部品点数が多く、組立手順が煩雑である。以上の結果、このような露出階段には、生産性及び施工性が悪いという問題がある。
特許文献4に記載されている露出階段は、固定具(踏板受け具)がビス留めのみで桁板(桁)に固定されているため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスのみで支える必要がある。即ち、このような露出階段は、荷重に対する強度に不安がある。
【0013】
特許文献5に記載されている露出階段は、単純なT字状の固定具(踏板受け材)を用いてなるが、固定具を取り付けるべき桁板(側桁)の構成が複雑である。
特許文献7に記載されている露出階段は、固定具を使用しない分、桁板(ささら桁)の形状が複雑である。
従って、特許文献5,7に記載の露出階段には、生産性が悪いという問題がある。
【0014】
特許文献1に記載されている露出階段は、1種類且つ単純なアングル状の固定具(取付金具)を用いてなる。桁板(桁)には、固定具の一側面部の板厚に等しい深さを有する台形状、平行四辺形状、又は三角形状等の単純な形状の凹部が形成されている。固定具は、一側面部の大半が桁板の凹部に嵌め込まれた状態でビス留めされるため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスだけではなく、桁板の凹部内下面でも支えることができ、例えば特許文献2,4に記載されている露出階段に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0015】
しかしながら、桁板の凹部は、固定具の一側面部の大半を嵌め込めるだけの開口面積を必要とするため、桁板の加工に手間暇が掛かる。このため、更に加工の手間暇を減少させることが望ましい。
また、桁板の凹部内下面は、固定具の板厚に等しい深さしか有していないため、面積が狭い。このため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、広い面積で支えることができるように工夫して、荷重に対する強度を更に向上させることが望ましい。
【0016】
このような不都合を解消するために、特許文献6に記載されている露出階段を利用することが考えられる。この露出階段は、1種類且つ単純なアングル状の固定具(踏板接合具)を用いてなる。固定具は、一側面部(側桁固定片)が踏板にビス留めされ、他側面部(側桁固定片)が桁板(側桁)がビス留めされる。固定具の他側面部の周縁部には、舌片状の突出部(荷重受片)が突設されており、突出部は、桁板に形成されている嵌合溝(接合具嵌合溝)に嵌合されている。
嵌合溝の開口面積は狭いため、桁板の加工は容易である。また、嵌合溝の内下面の広い面積で、踏板に加えられた荷重を支えることができる。
【0017】
また、嵌合溝は、桁板の一面のみならず、桁板の上側の側端面にも開口している。従って、固定具の突出部を、桁板の手前側から奥側へスライドさせて嵌合溝に嵌入させることができる。
しかしながら、露出階段の美観を向上させるためには、桁板の側端面に嵌合溝が開口していない構成であることが望ましい。
更に、特許文献6に記載の露出階段には、踏板の左右両端部と、固定具が有する踏板位置決め片及び踏板浮上がり防止片夫々との間に空隙が生じた場合に、露出階段の美観が悪化するという問題がある。
【0018】
更にまた、特許文献1,6に記載されているような嵌合溝の寸法は、嵌合溝に対する突出部の嵌入を容易にするために、突出部の寸法よりも僅かに大きく設けられる。従って、嵌合溝に突出部を嵌入した後、固定具をビス留めするまでの間、固定具がガタつき易いため、施工性が悪化する虞がある。
【0019】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、アングル状の固定具の一側面部の外面及び/又は他側面部の基端部に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している突出部を一体的に設け、板部材に形成されている挿入穴に突出部を挿入した状態で、固定具の一側面部を板部材にビス留めしてから、他側面部を踏板にビス留めした後、被覆部材で一側面部と踏板との間を被覆する構成とすることにより、生産性及び施工性が高く、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々向上させることができる階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、突出部は、第1舌片部分と第2舌片部分とが互いに交差する方向に配されてなり、挿入穴が板部材の一面にのみ開口していることにより、固定具の強度を向上させつつ、固定具のガタつきを抑制することができ、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々更に向上させることができる階段構造を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、板部材を、挿入穴の内奥面にて建築物にビス留めする構成とすることにより、建築物に対する板部材の取り付け手順を簡易にすることができ、しかも、更に美観を向上させることができる階段構造及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、側板にビス留めされる一側面部、踏板にビス留めされる他側面部、及び、一側面部と踏板との間を被覆する被覆部材を有し、他側面部の基端部及び/又は一側面部の外面に突出部が設けられていることにより、少なくとも1枚の側板及び踏板を用いてなる階段構造を構成することができる固定具を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、アングル状の固定具の一側面部の先端部及び外面に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している第1及び第2の突出片を一体的に設け、桁板に形成されている嵌合溝に突出片を嵌合させた状態で、固定具の一側面部を桁板にビス留めしてから、他側面部を踏板にビス留めする構成とすることにより、生産性及び施工性が高く、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々向上させることができ、更に、固定具のガタつきを抑制することができる階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、第1の突出片と第2の突出片とが互いに交差する方向に配されており、第1及び第2の嵌合溝が桁板の一面にのみ開口していることにより、美観と荷重に対する強度とを夫々更に向上させることができる階段構造を提供することにある。
【0025】
本発明の更に他の目的は、桁板にビス留めされる一側面部、及び、踏板にビス留めされる他側面部を有し、一側面部の先端部及び外面に第1及び第2の突出片が設けられていることにより、桁板及び踏板を用いてなる階段構造を構成することができる固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1発明に係る階段構造は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造において、前記固定具は、前記他側面部が、該他側面部の内面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆している被覆部材を有し、前記板部材は、前記突出部が挿入されている挿入穴が、前記一面に形成されていることを特徴とする。
【0027】
第2発明に係る階段構造は、前記突出部は、前記他側面部に沿う方向に配されている第1舌片部分と、前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1舌片部分に一体に設けられている第2舌片部分とを有し、前記挿入穴は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする。
【0028】
第3発明に係る階段構造は、前記挿入穴の内奥面は、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有し、前記板部材は、前記内奥面にて前記建築物にビス留めされていることを特徴とする。
【0029】
第4発明に係る固定具は、一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、その内面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と、前記一側面部と前記一の物体との間を被覆する被覆部材とを有し、前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0030】
第5発明に係る固定具は、前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき側板であることを特徴とする。
【0031】
第6発明に係る階段構造の組立方法は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造の組立方法において、前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置される端部との間を被覆する被覆部材を有する固定具を準備し、前記板部材として、前記突出部が挿入される挿入穴が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の板部材を準備し、該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設し、前記突出部を、前記挿入穴へ挿入し、前記一側面部を、前記一面にビス留めし、前記他側面部の内面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、前記他側面部を、前記下面にビス留めし、前記被覆部材を用いて、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆することを特徴とする。
【0032】
第7発明に係る階段構造の組立方法は、前記板部材として、前記挿入穴の内奥面が、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有する板部材を準備し、該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設する場合に、前記板部材を、前記内奥面にて前記建築物にビス留めすることを特徴とする。
【0033】
第8発明に係る階段構造は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造において、前記固定具は、前記他側面部が、該他側面部の外面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記桁板は、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合されている第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されていることを特徴とする。
【0034】
第9発明に係る階段構造は、前記第1の突出片は、前記他側面部に沿う方向に配されており、前記第2の突出片は、前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1及び第2の嵌合溝は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする。
【0035】
第10発明に係る固定具は、一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、その外面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部とを有し、前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0036】
第11発明に係る固定具は、前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき桁板であることを特徴とする。
【0037】
第12発明に係る階段構造の組立方法は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造の組立方法において、前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられている固定具を準備し、前記桁板として、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合される第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の桁板を準備し、該桁板を、前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ前記一面が縦姿勢になるよう斜設し、前記第1及び第2の突出片を、前記第1及び第2の嵌合溝へ嵌入し、前記一側面部を、前記一面にビス留めし、前記他側面部の外面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、前記他側面部を、前記下面にビス留めすることを特徴とする。
【0038】
第1発明にあっては、階段構造は、1枚又は2枚の板部材と、複数枚の踏板とを備え、更に、第4発明又は第5発明の固定具を、踏板毎に少なくとも1個備えている。また、第6発明にあっては、板部材、踏板、及び第4発明又は第5発明の固定具を用いて、第1発明の階段構造が組み立てられる。ただし、第5発明の固定具を用いる場合には、板部材として、側板が用いられる。
【0039】
固定具は、踏板を板部材にビス留め固定するためのものである。固定具は、一側面部と、他側面部とを有するアングル状になしてある。更に、固定具は、突出部と被覆部材とを有する。突出部は、一側面部の外面及び他側面部の基端部の内、両方又は一方に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。以下では、固定具の一側面部、他側面部、及び突出部を一体的に有する部分を固定具本体という。
被覆部材は、固定具の一側面部と踏板の端部(具体的には、一側面部に対向配置される端部)との間を被覆する構成であれば、その形状は限定されない。
以上のような固定具は、固定具本体の形状が簡易であり、被覆部材の設計の自由度が高いため、生産性が高い。
【0040】
以下では、板部材に関し、固定具の一側面部がビス留めされる一面を、ビス面という。
板部材は、建築物の上段と下段(例えば2階と1階)との間にて、縦姿勢で配設される。このような板部材は、例えば側板又は壁パネル等であり、板部材が2枚である場合、これらの組み合わせは限定されない(例えば側板同士、又は壁パネルと側板との組み合わせ等)。また、板部材と壁、柱、又は桁板等とが組み合わせられることがある。このように、板部材の種類及び枚数等が限定されないため、階段構造の設計の自由度が高い。
【0041】
板部材のビス面には、固定具の突出部が挿入されるべき挿入穴が形成されている。このような挿入穴は、突出部が挿入されるために必要な寸法を有する単純な形状であればよいため、短時間で簡単に形成することができる。つまり、加工の手間暇が減少する。更に、固定具本体を板部材に取り付けるために挿入穴以外の凹部又は凸部等を形成する必要はないため、板部材の構成は簡易であり、形状は単純である。従って、板部材は、生産性が高い。
板部材が、例えば工場で生産される場合は、挿入穴が高精度に形成されるため、挿入穴に突出部を挿入することによって、固定具本体の正確な位置決めが容易になされる。つまり、挿入穴は、施工性の向上に寄与する。
なお、挿入穴の深さは、突出部の突出量以上であればよい。
【0042】
複数枚の踏板は、夫々横姿勢で階段状に板部材に固定される。このために、一のビス面に対して、踏板の枚数に対応する個数の固定具が用いられる。また、このビス面には、複数個の固定具が備える突出部を夫々挿入すべき挿入穴が、階段状に配設されている。
階段構造を組み立てる作業者は、固定具の突出部夫々の先端部から基端部までを、対応する挿入穴へ挿入する。
【0043】
次に、作業者は、固定具の一側面部を、板部材のビス面にビス留めする。この結果、固定具本体は、突出部が挿入穴に挿入された状態で、板部材に取り付けられる。このようにして板部材に取り付けられた固定具本体は、例えば特許文献2,4に記載されているようなビス留めのみで板部材に取り付けられている固定具に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0044】
次いで、作業者は、固定具の他側面部の内面(即ち上面)と、踏板の下面とを対面させて、踏板を他側面部に載置し、更に、固定具の他側面部を、踏板の下面にビス留めする。この結果、踏板が板部材に固定される。従って、踏板を受けるための固定具と踏板を挟持するための固定具のような、複数種類の固定具が不要である。
また、このとき、固定具の一側面部と、踏板の一端部とが対向配置される。以下では、踏板の、固定具の一側面部に対向配置される端部を対向端部という。
【0045】
そして、作業者は、固定具の被覆部材で、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間を被覆する。このとき、作業者は、例えば固定具本体に被覆部材を取り付ける。この結果、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じていたとしても、この空隙が目隠しされる。
以上のような階段構造は、建築物の上段から下段に亘って配設されている露出階段であってもよく、一部が露出階段であり、残部がボックス階段である階段の一部分であってもよい。また、上段から下段までの中途に、方向転換のための折り返し部分を有する回り階段状の階段構造であってもよい。
【0046】
第2発明にあっては、固定具の突出部が、第1舌片部分及び第2舌片部分を有する。第1舌片部分は他側面部に沿う方向に配されており、第2舌片部分は他側面部に交差する方向に配されており、第1舌片部分及び第2舌片部分は一体に設けられている。つまり、例えば各1個の第1舌片部分及び第2舌片部分を有する突出部は、T字状又はL字状等の断面を有する。このため、I字状の断面を有する突出部に比べて、突出部の強度、延いては固定具本体の強度が向上される。
【0047】
また、固定具を板部材に取り付けるべく、突出部分が挿入穴に挿入されたとき、各突出部分が、挿入穴の各突出部分に対応する内面によって2点支持される。従って、例えば第1の突出部分のみが挿入穴の内面によって1点支持される場合と比べて、固定具がガタつき難い。
挿入穴は、板部材のビス面にのみ開口している。換言すれば、挿入穴は、板部材の側端面には開口していない。この結果、挿入穴の長さは各突出部分の長さに対応する必要最小限のものであればよいため、板部材の生産性が更に向上され、板部材の強度劣化が抑制され、更に、階段構造の美観が向上する。
このとき、作業者は、板部材のビス面に交差する方向へ固定具を移動させることによって、突出部を挿入穴に挿入する。
【0048】
ところで、第1舌片部分は、アングルの厚みよりも長く突出している。また、挿入穴は、第1舌片部分の突出量以上の深さを有していればよい。このため、挿入穴の内下面は、面積が広い。従って、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重は、ビスと挿入穴の広い内下面とが支える。
【0049】
第3発明及び第7発明にあっては、挿入穴の形状及び寸法が、突出部の形状及び寸法と完全には一致していない。何故ならば、挿入穴の内奥面は、突出部の板部材に対する投影面積よりも広い面積を有するからである。このため、挿入穴には、突出部が挿入される空間と、突出部が挿入されない空間とを有する。
2枚の板部材夫々を、建築物の上段と下段との間にて配設する際に、作業者は、板部材を建築物にビス留めする。このとき、作業者は、挿入穴を利用して、板部材を建築物(例えば、壁又は柱等の躯体)にビス留めする。
【0050】
挿入穴は、予め(例えば工場で板部材が製造されるときに)ビス面に形成されている。また、板部材を建築物に取り付けるためのビス留め位置は、高精度に位置決めする必要がない。
従って、作業者は、挿入穴の内奥面の適宜の位置を、ビス留め位置として利用することができる。
このように、板部材を、挿入穴の内奥面にて建築物にビス留めした場合、ビスの頭部は挿入穴の内部に配置される。挿入穴の内部に配置されている物を使用者が視認することは困難である。換言すれば、板部材を建築物に取り付けているビスは、使用者が容易に視認可能な位置に存在しない。
【0051】
第8発明にあっては、階段構造は、1枚又は2枚の桁板と、複数枚の踏板とを備え、更に、第10発明又は第11発明の固定具を、踏板毎に少なくとも1個備えている。また、第12発明にあっては、桁板、踏板、及び第10発明又は第11発明の固定具を用いて、第8発明の階段構造が組み立てられる。
固定具は、踏板を桁板にビス留め固定するためのものである。固定具は、一側面部と、他側面部とを有するアングル状になしてある。更に、固定具は、第1及び第2の突出片を有する。
【0052】
第1の突出片は、一側面部の先端部に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。第2の突出片は、一側面部の外面に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。
このような固定具は、形状が簡易である。しかも、踏板の端部が、固定具に対向配置されることはないため、固定具と踏板の端部との間に空隙が生じることはない。従って、この空隙を目隠しするための被覆部材は不要である。即ち、固定具を構成する部品点数が少ない。従って、固定具は生産性が高い。
【0053】
以下では、桁板に関し、固定具の一側面部がビス留めされる一面を、ビス面という。
桁板は、建築物の上段と下段(例えば2階と1階)との間にて、長手方向が所定の角度で傾斜し、且つビス面が縦姿勢で斜設される。
桁板が2枚である場合、2枚の桁板は、夫々のビス面が、内面同士か、又は外面同士になるよう離隔配置されることが多い。一方、桁板が1枚である場合、1枚の桁板の両面が、ビス面として用いられることが多いが、桁板と、桁板以外(例えば柱)とが組み合わせられることもある。このように、桁板の枚数及びビス面の向き等が限定されないため、階段構造の設計の自由度が高い。
【0054】
桁板のビス面には、固定具の第1及び第2の突出片が夫々嵌合すべき第1及び第2の嵌合溝が形成されている。各嵌合溝は、各突出片の厚みに対応する幅を有する。つまり、各嵌合溝は、一直線状の単純な形状であり、また、各突出片と嵌合するために必要十分な寸法を有する単純な形状であればよい。このような嵌合溝は、短時間で簡単に形成することができるため、加工の手間暇が減少する。更に、固定具を桁板に取り付けるために嵌合溝以外の凹部又は凸部等を形成する必要はないため、桁板の構成は簡易であり、形状は単純である。従って、桁板は、生産性が高い。
なお、各嵌合溝の深さは、各突出片の突出量以上であればよい。
【0055】
桁板が、例えば工場で生産される場合は、嵌合溝が高精度に形成されるため、嵌合溝に突出片を嵌め入れることによって、固定具の正確な位置決めが容易になされる。つまり、嵌合溝は、施工性の向上に寄与する。
複数枚の踏板は、夫々横姿勢で階段状に桁板に固定される。このために、一のビス面に対して、踏板の枚数に対応する個数の固定具が用いられる。また、このビス面には、複数個の固定具が備える各突出片が嵌合すべき各嵌合溝が、階段状に配設されている。
【0056】
階段構造を組み立てる作業者は、固定具の第1及び第2の突出片夫々の先端部から基端部までを、第1及び第2の嵌合溝へ嵌入する。このとき、固定具は、第1及び第2の突出片夫々が、第1及び第2の嵌合溝の内面によって2点支持されるため、例えば第1の突出片のみが嵌合溝の内面によって1点支持される場合と比べて、固定具がガタつき難い。
次に、作業者は、固定具の一側面部を、桁板のビス面にビス留めする。この結果、固定具は、各突出片が各嵌合溝に嵌合した状態で、桁板に取り付けられる。このようにして桁板に取り付けられた固定具は、例えば特許文献2,4に記載されているようなビス留めのみで桁板に取り付けられている固定具に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0057】
次いで、作業者は、固定具の他側面部の外面(即ち上面)と、踏板の下面とを対面させて、踏板を他側面部に載置し、更に、固定具の他側面部を、踏板の下面にビス留めする。この結果、踏板が桁板に固定される。従って、踏板を受けるための固定具と踏板を挟持するための固定具のような、複数種類の固定具が不要である。
以上のような階段構造は、建築物の上段から下段に亘って配設されている露出階段であってもよく、一部が露出階段であり、残部がボックス階段である階段の一部分であってもよい。また、上段から下段までの中途に、方向転換のための折り返し部分を有する回り階段状の階段構造であってもよい。
【0058】
第9発明にあっては、固定具の第1の突出片は他側面部に沿う方向に配されており、第2の突出片は他側面部に交差する方向に配されている。
第1及び第2の嵌合溝は、桁板のビス面にのみ開口している。換言すれば、各嵌合溝は、桁板の側端面には開口していない。この結果、各嵌合溝の長さは各突出片の長さに対応する必要最小限のものであればよいため、桁板の生産性が更に向上され、桁板の強度劣化が抑制され、更に、階段構造の美観が向上する。
このとき、作業者は、桁板のビス面に交差する方向へ固定具を移動させることによって、各突出片を各嵌合溝に嵌入する。
【0059】
ところで、第1の突出片は、アングルの厚みよりも長く突出している。また、第1の嵌合溝は、第1の突出片の突出量以上の深さを有していればよい。このため、第1の嵌合溝の内下面は、面積が広い。従って、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重は、ビスと第1の嵌合溝の広い内下面とが支える。
【発明の効果】
【0060】
第1発明の階段構造、第4発明又は第5発明の固定具、及び第6発明の階段構造の組立方法による場合、固定具を用いて踏板が板部材に固定されるため、踏板を板部材に嵌め込み固定するための切り欠き部を踏板に形成する必要がない。従って、踏板の強度が弱くなることはない。
また、固定具1個につき、板部材の両面を加工する必要がないため、工数が少なく、生産性が高い。
【0061】
板部材、踏板、及び固定具夫々は、例えば工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。踏板に対する固定具のビス留めは、工場ではなく階段設置場所で施工されるため、例えば2枚の板部材に踏板を固定する場合、階段設置場所に配設された2枚の板部材の離隔距離に応じて2個の固定具が離隔配置されて、踏板にビス留めされる。このため、たとえ板部材間の距離が上下方向の各位置で異なっていても、問題なく踏板を板部材に固定することができる。
また、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じた場合であっても、この空隙を被覆部材で目隠しすることができる。従って、階段構造の美観を向上させることができる。
【0062】
更に、踏板が板部材に嵌め込み固定されないため、踏板と板部材との干渉は生じない。この結果、使用者が目測した踏板の上面の面積と、実際の面積とが感覚的に略一致し、足場が広いという印象を使用者が受ける。
更にまた、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスと挿入穴の内下面とで支えることができるため、安定して荷重を支持することができる。
また、本発明の階段構造は、特許文献5,7に記載されているような複雑な構成の桁板を必要とする露出階段に比べて、板部材の構成が簡単である。
以上の結果、本発明の階段構造は、生産性及び施工性を向上させることができる。
【0063】
第2発明の階段構造による場合、固定具の強度を向上させることができ、しかも、固定具の突出部を板部材の挿入穴に挿入した場合に、固定具のガタつきを抑制することができる。
また、板部材の側端面に開口が存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
しかも、広い面積で荷重を受けることができるため、荷重に対する強度を更に向上させることができる。
【0064】
第3発明の階段構造及び第7発明の階段構造の組立方法による場合、板部材を建築物に取り付けるためのビス留め位置を、挿入穴を利用して位置決めすることができるため、板部材の取り付け手順を簡易にすることができる。
また、板部材を建築物に取り付けているビスが、使用者が容易に視認可能な位置には存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
【0065】
第8発明の階段構造、第10発明又は第11発明の固定具、及び第12発明の階段構造の組立方法による場合、固定具を用いて踏板が桁板に固定されるため、踏板を桁板に嵌め込み固定するための切り欠き部を踏板に形成する必要がない。従って、踏板の強度が弱くなることはない。
また、固定具1個につき、桁板の両面を加工する必要がないため、工数が少なく、生産性が高い。
しかも、固定具の各突出片を桁板の各嵌合溝に嵌入させた場合に、固定具のガタつきを抑制することができる。
【0066】
桁板、踏板、及び固定具夫々は、例えば工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。踏板に対する固定具のビス留めは、工場ではなく階段設置場所で施工されるため、例えば2枚の桁板に踏板を固定する場合、階段設置場所に配設された2枚の桁板の離隔距離に応じて2個の固定具が離隔配置されて、踏板にビス留めされる。このため、たとえ桁板間の距離が上下方向の各位置で異なっていても、問題なく踏板を桁板に固定することができる。
また、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じることはないため、階段構造の美観を向上させることができる。
【0067】
更に、固定具が踏板の下側に配され、しかも、踏板が桁板に嵌め込み固定されないため、踏板と桁板との干渉は生じない。この結果、使用者が目測した踏板の上面の面積と、実際の面積とが感覚的に一致し、足場が広いという印象を使用者が受ける。
【0068】
更にまた、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスと各嵌合溝の内下面とで支えることができるため、安定して荷重を支持することができる。
また、本発明の階段構造は、特許文献3に記載されているような2種類の固定具を必要とする露出階段に比べて部品点数が少なく、特許文献5,7に記載されているような複雑な構成の桁板を必要とする露出階段に比べて、桁板の構成が簡単である。
以上の結果、本発明の階段構造は、生産性及び施工性を向上させることができる。
【0069】
第9発明の階段構造による場合、桁板の側端面に開口が存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
しかも、広い面積で荷重を受けることができるため、荷重に対する強度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る階段構造の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る一の固定具の鉛直面部と、踏板の一端部とが対向配置される部分の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る一の固定具の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る階段構造の組立方法の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る一の固定具の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る階段構造の構成を示す縦断面図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る固定具の構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る階段構造の組立方法の説明図である。
【図18】本発明の実施の形態4に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態5に係る固定具の構成を示す斜視図である。
【図20】従来の露出階段の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0072】
実施の形態 1.
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る階段構造S1の構成を示す斜視図及び縦断面図である。ただし、図2には、図1におけるII−II線の断面図が示されている。また、図1及び図2には、側板11,12の間に、2枚の踏板10,10が、夫々横姿勢で階段状に固定されている状態が示されている。
図3は、本発明の実施の形態1に係る一の固定具2の後述する鉛直面部21(図4参照)と、踏板10の一端部(対向端部)10cとが対向配置される部分の構成を示す正面図である。図3には、建築物の壁W、後述する石膏ボードP1,P2(図1参照)、及び側板11の縦断面図として、挿入穴51の形成位置における縦断面図が含まれている。
【0073】
図4は、固定具2,2の構成を示す斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る階段構造S1の組立方法の説明図である。ただし、図5には、側板11の壁Wに対する取り付け、固定具本体20の側板11に対する取り付け、踏板10の固定具本体20に対する取り付け、及び、被覆部材31の固定具本体20に対する取り付けが説明されている。
【0074】
階段構造S1は、例えば2階建ての建築物の屋内に設置され、いわゆる露出型直階段を構成する(図1参照)。階段構造S1の使用者は、階段構造S1を昇降することによって、1階の水平な床面Fと、2階の図示しない床面との間を行き来する。階段構造S1は、所定の階段設置位置に、床面Fに対して所定の傾斜角度を有するように設置される。
ここで、建築物の2階及び1階は、本発明の実施の形態における建築物の上段及び下段として機能する。
【0075】
この建築物は、1階と2階との間に、互いに対面する壁W,Wを有し(図1及び図3参照)、一方の壁Wには、側板11と石膏ボードP1,P2とが取り付けられ、他方の壁Wには、側板12と石膏ボードP1,P2とが取り付けられる。
石膏ボードP1,P2夫々は、遮音性及び断熱性等を有する板材であり、壁Wの一面を化粧する。
階段構造S1は、2枚の側板11,12と、N枚の踏板10,10,…と、{N×2}個の固定具2,2,…とを備えている。ここで、“N”はN≧2の自然数である。
【0076】
以下では、1階から2階へ上がる使用者から見て手前側、奥側、左側、及び右側を、階段構造S1の前側、後側、左側、及び右側という。つまり、壁W,Wは、左右方向に適長離隔して対向配置されている。また、側板11は左側の壁Wに取り付けられ、側板12は右側の壁Wに取り付けられる。
また、以下では、階段構造S1を組み立てるためのビスV,V,…のサイズは互いに等しいものとする。なお、例えば側板11,12を壁W,Wにビス留めするためのビスV,V,…夫々と、固定具2を側板11,12にビス留めするためのビスV,V,…夫々と、踏板10を固定具2にビス留めするためのビスV,V,…夫々とは、互いにサイズが異なっていてもよい。
【0077】
まず、図1〜図3及び図5を参照しつつ、踏板10について説明する。
各踏板10は、上面10a及び下面10bを有する矩形板状になしてあり、木材又は木質材を用いてなる。上面10a及び下面10b夫々は、水平に配される。
なお、上面10aに、滑り止めが設けられていてもよい。また、下面10bに、2個の位置決め凹部が形成されていてもよい。各位置決め凹部の寸法及び形状は、後述する水平面部22(図4参照)の寸法及び形状に略等しく、2個の位置決め凹部に水平面部22,22を嵌め込むことによって、水平面部22,22が正確に位置決めされるように配置されている。
更に、踏板10は、木材又は木質材に限定されず、例えばアルミニウム又はガラス等を用いてなる構成でもよい。
【0078】
次に、図1〜図3、及び図5を参照しつつ、側板11,12について説明する。側板12の構成は、側板11の鏡像の構成に相当するため、以下では主に側板11について説明する。
側板11は、本発明の実施の形態における板部材に相当し、木材又は木質材を用いてなる。側板11は、縦横比が大きい長方形の長手方向両端部を切断して台形にしたような形状を有する。
側板11の2つの短辺部の内、一方の端面は、床面Fに沿って配される。
【0079】
側板11の2つの長辺部の内、長い方は上向きに配され、短い方は下向きに配される。以下では、上向き(又は下向き)に配されている長辺部を上辺部(又は下辺部)という。
側板11の下側に配される短辺部と、上辺部とがなす角度は、階段構造S1の傾斜角度に等しい。
側板11の一面は、ビス面11aとして用いられる。このために、ビス面11aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置されたN個の挿入穴51,51,…が形成されている。
【0080】
挿入穴51,51,…は、互いに同一形状の矩形状になしてある。
各挿入穴51において、内上面及び内下面夫々は水平面であり、内前面、内後面、及び内奥面51a夫々は鉛直面である。
このような挿入穴51は、ビス面11aにのみ開口しており、側板11の他面(例えば側板11の上辺部及び下辺部夫々の端面。以下、即ち、側板11の側端面)には開口していない。
【0081】
また、挿入穴51の深さは、固定具2の突出部23(図4参照)の突出量に略等しい。更に詳細には、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量よりも僅かに(例えば、約1mm)長い。何故ならば、挿入穴51の深さが突出部23の突出量以下であると、突出部23を先端部から基端部まで完全に挿入穴51に挿入することができないか、挿入が困難だからである。ここで、突出部23の突出量は、固定具2の固定具本体20の厚みよりも十分に長い。
【0082】
更に、挿入穴51の内奥面51aの面積は、突出部23の側板11に対する投影面積よりも広い。何故ならば、階段構造S1は、側板11が、挿入穴51の内奥面51aにて壁Wにビス留めされていることが特徴のひとつだからである。このとき、挿入穴51毎に、2本のビスV,Vが、前後方向に離隔配置される。
【0083】
更に詳細には、挿入穴51の前後方向の内法は、突出部23の前後方向の長さ(以下、奥行きという)に比べて僅かに長い。何故ならば、挿入穴51の前後方向の内法が突出部23の奥行き以下であると、突出部23を挿入穴51に完全に挿入することができないか、挿入が困難だからである。また、挿入穴51の前後方向の内法が突出部23の奥行きよりも過剰に長くても、無駄であるばかりか、突出部23の前後方向の位置決めが困難になり、しかも、側板11の強度が低下するからである。ここで、突出部23の奥行きは、2個のビスV,V夫々のビス頭の外径と、ビスV,Vの離隔距離との和よりも十分に長い。
【0084】
更に、挿入穴51の上下方向の内法は、突出部23の厚みと、ビスVのビス頭の外径との和よりも十分に長い。ただし、挿入穴51の上下方向の内法は、水平面部22の厚みと、鉛直面部21の突出量との和以下である(図4参照)。
換言すれば、挿入穴51の内部において、突出部23が挿入される空間を除いた空間(即ち、突出部23が挿入されない空間)は、ビスV,Vを用いたビス留めに適したサイズを有する。更に、挿入穴51の開口は、固定具2及び踏板10に被覆されて、使用者の視界には露出し難いようにしてある。
このような挿入穴51,51,…夫々の形状及び形成位置等は、例えば板材を生産する工場で、NCルータを用いて高精度に形成することができる。
【0085】
挿入穴51が形成されている位置の側板11の板厚は十分に厚い。このため、側板11のビス留めの際に、又は階段構造S1の使用時に、側板11に印加される外力によって、側板11が損傷すること及び破壊されることが抑制される。
【0086】
一方、側板11の他面、即ちビス面11aの逆側の面(以下、側板11の裏面という)は、壁Wの一面に密着配置される。側板11の裏面の上辺部及び下辺部には、夫々石膏ボードP1,P2夫々の厚みに対応する凹部(いわゆる「しゃくり」)が形成されている。このため、側板11の縦断面は、横転凸字状をなしている。
以上のような側板11は、建築物の1階と2階との間に、ビス面11aが縦姿勢で配設される。
【0087】
側板12は、本発明の実施の形態における板部材に相当し、側板11と同様に、木材又は木質材を用いてなる。
側板12の一面は、ビス面12aとして用いられ、ビス面12aが、側板11のビス面11aに相当する。従って、ビス面12aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置されたN個の挿入穴51,51,…が形成されている。
【0088】
以上のような側板12は、建築物の1階と2階との間に、ビス面12aが縦姿勢で配設される。
このとき、側板11のビス面11aと側板12のビス面12aとは、夫々鉛直に、且つ、互いに平行に対面配置される。即ち、階段構造S1のビス面11a,12aは内向きである。
なお、側板11,12は、木材又は木質材を用いてなる構成に限定されるものではない。
【0089】
次に、図4を参照しつつ、固定具2について説明する。
固定具2は、金属製の固定具本体20と合成樹脂製の被覆部材31とを備え、踏板10を側板11又は側板12に固定する。踏板10を側板11に固定する固定具2(即ち踏板10の左側に配される固定具2)と、踏板10を側板12に固定する固定具2(即ち踏板10の右側に配される固定具2)とは、同一の構成を有する。このため、以下では、側板11に係る固定具2を例示する。
なお、固定具本体20は金属製のものに限定されるものではなく、被覆部材31は合成樹脂製のものに限定されるものではない。
【0090】
固定具本体20は、約5mmの厚みを有するL字型のアングル状になしてあり、鉛直面部21,21と、水平面部22と、突出部23とを一体に有する。固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
鉛直面部21,21は、アングルの一側面部として機能し、鉛直に配される。水平面部22は、アングルの他側面部として機能し、水平に配される。
【0091】
水平面部22は長方形状になしてあり、長方形の一方の長辺部が水平面部22の基端部に相当する。水平面部22には、互いに適長離隔した複数個のビス孔が形成してある。このような水平面部22は、水平面部22の内面22aと踏板10の下面10bとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、踏板10にビス留めされる。水平面部22の奥行きは、踏板10の奥行きに略等しい。
【0092】
鉛直面部21,21夫々は長方形状になしてあり、水平面部22の基端部の前端部及び後端部に直角に突設されている。各鉛直面部21には、互いに適長離隔した複数個のビス孔が形成してある。このような鉛直面部21,21夫々は、鉛直面部21,21の外面と側板11のビス面11aとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、側板11にビス留めされる。側板11における鉛直面部21,21のビス留め位置は、挿入穴51の周縁部前方及び後方である。鉛直面部21,21夫々の水平面部22の内面22aからの突出量は、踏板10の板厚に略等しい。また、鉛直面部21,21夫々の厚みと水平面部22の厚みとは等しい。
【0093】
突出部23は矩形舌片状になしてあり、水平面部22の基端部の中央部から、アングルの厚みよりも長く、アングルの外側(即ちL字の外側)へ突出している。水平面部22の基端部における突出部23の突設位置は、鉛直面部21,21夫々の突設位置の中間である。突出部23の上面及び下面夫々と、水平面部22の内面22a及び外面夫々とは同一平面である。このような突出部23の厚みは、水平面部22の厚みに等しい。
【0094】
被覆部材31は、大略コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。このために、被覆部材31の厚みは適宜に薄い。
図1〜図3に示すように、被覆部材31は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10c(即ち、踏板10の鉛直面部21,21に対向配置されている端部)との間を、前後に挟むようにして上側から被覆する。
【0095】
このために、被覆部材31は、図4に示すように、鉛直面部21,21の上端面と踏板10の対向端部10cの上面10aとを覆う細長帯状の第1被覆部311と、鉛直面部21,21の前端面及び後端面と踏板10の対向端部10cの前端面及び後端面とを覆う帯状の第2被覆部312,312と、水平面部22の外面に係止する係止部313,313とを一体に有する。第2被覆部312,312は、第1被覆部311の長手方向両端部から同一方向に直角に突出しており、係止部313,313は、第2被覆部312,312の先端部から互いに向けて突出している。また、被覆部材31の左右方向の長さ(即ち帯の幅)は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間に生じ得る空隙の左右方向の長さよりも十分に長いが、水平面部22の左右方向の長さに比べれば、十分に短い。
【0096】
次に、図1〜図5を参照しつつ、階段構造S1の組立方法を説明する。
階段構造S1を組み立てる作業者は、側板11、側板12、N枚の踏板10,10,…、{N×2}個の固定具2,2,…、石膏ボードP1,P2、及び複数本のビスV,V,…を準備する。これらは、予め工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。
【0097】
まず、作業者は、側板11の裏面を左側の壁Wの一面に密着させ、側板11の一方の短辺部夫々の端面を床面Fに密着させた状態で、各挿入穴51の内奥面51aにて、側板11を壁Wにビス留めする。この結果、側板11は、建築物の1階と2階との間にて、ビス面11aが縦姿勢で配設される。このとき、床面Fに対する側板11の長手方向の傾斜角度は、階段構造S1の傾斜角度に等しくなる。
【0098】
更に、作業者は、壁Wの一面に石膏ボードP1,P2夫々を貼る。このとき、石膏ボードP1の下端部は、側板11の上辺部に形成されている凹部に嵌め入れられ、石膏ボードP2の上端部は、側板11の下辺部に形成されている凹部に嵌め入れられる。換言すれば、側板11は、石膏ボードP1,P2によって上下に挟まれた状態で壁Wにビス留め固定される。
【0099】
また、作業者は、左側の壁Wに側板11を取り付ける場合と同様にして、側板12を右側の壁Wに取り付ける。このとき、側板11のビス面11aと側板12のビス面12aとが対面する。このとき、対向配置される挿入穴51,51夫々の内下面は、床面Fからの高さが等しい。ここで、ビス面11a,12a間の離隔距離は、踏板10の長手方向の長さと、2枚の鉛直面部21,21の厚みと、2個のビスVのビス頭の厚みとの和に比べて、僅かに長い。
ところで、本実施の形態では、作業者は、壁W,Wに側板11,12を取り付けてから石膏ボードP1,P2を取り付けている(ボード後貼り)が、これに限定されず、石膏ボードP1,P2を取り付けてから側板11,12を取り付けてもよい(ボード先付け)。
【0100】
次いで、作業者は、一の固定具2の固定具本体20を、水平面部22の内面22aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具本体20の突出部23を、先端部から基端部まで側板11の挿入穴51へ挿入し、突出部23の下面を挿入穴51の内下面に載置する。
この状態で、作業者は、鉛直面部21,21夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、鉛直面部21,21を側板11にビス留めする。
このような固定具本体20の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
ところで、側板11を壁Wにビス留めしているビスV,Vは、挿入穴51の内部に配されているため、このビスV,Vが、鉛直面部21,21を側板11にビス留めするビスV,V,…に干渉することはない。
【0101】
また、作業者は、他の固定具2の固定具本体20を、水平面部22の内面22aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具本体20の突出部23を、先端部から基端部まで側板12の挿入穴51へ挿入し、突出部23の下面を挿入穴51の内下面に載置する。
この状態で、作業者は、鉛直面部21,21夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、鉛直面部21,21を側板12にビス留めする。
このような固定具本体20の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
以上の結果、左右2個の固定具本体20,20の水平面部22,22は、床面Fから同一の高さに、且つ床面Fに対して平行に配される。
【0102】
次いで、作業者は、左右2個の水平面部22,22の内面22a,22a夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部22,22に載置する。
この状態で、作業者は、水平面部22,22夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、水平面部22,22を踏板10にビス留めする。
【0103】
このとき、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとは密着しない。何故ならば、鉛直面部21,21の表面と対向端部10cの端面との間に、ビスV,V,…のビス頭が介在するからである。また、側板11,12夫々の反り、又は設置場所の歪み等によって、ビス面11a,12a間の離隔距離にバラつきが生じる可能性が高いからである。特に、階段構造S1の設置現場で踏板10を切り出した場合には、踏板10の左右方向の長さが多少短くなることがある。この結果、固定具本体20と踏板10との間に見苦しい空隙が生じる虞がある。
【0104】
そこで、作業者は、被覆部材31を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、被覆部材31を上方から対向端部10cに覆い被せるようにする。
【0105】
具体的には、作業者は、第2被覆部312,312を互いに離隔する方向に曲げることによって係止部313,313を離隔させた状態で、第1被覆部311を鉛直面部21,21の上端面及び対向端部10cの上面10aに覆い被せ、一方の係止部313を水平面部22の外面の前部に係止させ、他方の係止部313を水平面部22の外面の後部に係止させる。この後、弾性によって被覆部材31が元の形状に戻ると、第1被覆部311が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を上側から目隠しし、第2被覆部312,312が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側及び背面側から目隠しする。
【0106】
作業者は、踏板10の取り付け作業をN回、そして被覆部材31の取り付け作業を{N×2}回、夫々繰り返す。
【0107】
以上のような階段構造S1は、組立方法が簡単であるため、短時間で安価に設置することができる。
また、従来の階段構造同様、ボックス階段に比べて、装飾性が高く、開放感を有する。更に、切り欠き部を有する踏板を、踏板支持部を有する桁板に嵌め込み固定する従来の嵌め込み型の階段構造とは異なり、左右一対の固定具2,2を用いて各踏板10を側板11,12に固定するため、嵌め込み型の階段構造に関して生じる各種の問題(切り欠き部によって踏板の強度が弱くなること、桁板の加工工数が多いこと等)が生じることはない。
【0108】
更にまた、踏板10に加えられて固定具2,2に伝達された荷重は、鉛直面部21,21をビス面11a,12aにビス留めしているビスV,V,…と、挿入穴51,51の内下面の内、突出部23,23の下面が接触している部分とで支持される。この部分は面積が広いため、安定して荷重を支持することができる。
また、側板11,12における挿入穴51,51の形成位置が正確であるため、突出部23,23を挿入穴51,51に挿入し、水平面部22,22に踏板10を載置することによって、固定具2,2に取り付けられる踏板10も正確な位置に配置される。つまり、突出部23,23及び挿入穴51,51は、踏板10の位置決めにも利用される。
【0109】
更に、挿入穴51,51がビス面11a,12a以外には開口していないため、挿入穴51,51を目立たなくして、美観を向上させることができる。また、側板11を壁Wにビス留めしているビスV,Vは、挿入穴51の内部に配されているため、このビスV,Vを目立たなくして、美観を向上させることができる。
更に、石膏ボードP1,P2夫々の表面からの側板11の突出量は、壁Wの一面からの側板11の突出量よりも、石膏ボードP1,P2の厚みの分だけ少ない。このため、使用者には、側板11の厚みが薄く見える。従って、使用者は、石膏ボードP1,P2が存在しない場合よりも、空間を広く感じる。
【0110】
なお、階段構造S1は、各1枚の側板11,12を備える構成に限定されるものではない。例えば、階段構造S1は、一方が側板11又は側板12であり、他方が壁又は柱等の躯体である構成でもよい。この場合、踏板10,10,…は、一端側が固定具2,2,…によって側板11又は側板12に固定され、他端側が従来の工法に則って(例えば、躯体に設けた切り欠きに他端側が載置されることによって)躯体に固定される。
【0111】
また、階段構造S1は、露出型直階段に限定されるものではない。例えば、階段構造S1は、一部が露出階段であり、残部が従来の構成を有するボックス階段又は雛壇階段であってもよい。或いは、階段構造S1は、中途に踊り場を有する折り返し階段若しくはかね折れ階段、又は廻り階段を構成してもよい。ただし、廻り階段を構成する踏板10,10,…は、平面形状が三角形状になしてある。この場合、踏板10,10,…は、一辺部が、廻り階段を構成する側板11又は側板12に固定され、一頂部が、例えば躯体に固定される。
【0112】
更に、側板11,12は、一方又は両方が壁W,Wを全面的に被覆する壁パネル状であってもよい。このような側板11(又は側板12)も、壁Wにビス留め固定される。壁パネル状の側板11,12は、大型であるが、略完全に建築物の壁Wと同化するため、使用者に空間を広く感じさせる、という利点がある。しかも、石膏ボードP1,P2は不要である。
また、側板11,12は、壁Wに取り付けられる構成に限定されず、建築物の柱に取り付けられる構成でもよい。
【0113】
更にまた、側板11,12は、N個の挿入穴51,51,…が形成されている構成に限定されるものではない。例えば、側板11,12は、n個の挿入穴51,51,…が形成され、{N−n}個の横溝状の挿入穴が形成されている構成でもよい。ここで、“n”は0≦n<Nの整数である。この場合、側板11,12が切削される量が減少するため、側板11,12の強度が向上する。ただし、横溝状の挿入穴には突出部23が内嵌めされ、挿入穴の内奥面にてビス留めすることはできない。
【0114】
また、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量よりも十分に長くてもよい。挿入穴51の深さが、突出部23の突出量とビスVのビス頭の厚みとの和以上であれば、挿入穴51の内部で、突出部23の先端部とビスVのビス頭とが対向配置されてもよい。しかしながら、挿入穴51が深くなる分、側板11は挿入穴51の深さよりも十分に厚い板厚を有している必要があり、また、側板11の強度が低下する。このため、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量に略等しいことが望ましい。
【0115】
更にまた、階段構造S1は、固定具2以外の固定具を備えていてもよい。
図6、図7、及び図8は、本発明の実施の形態1に係る他の固定具201,201、固定具202,202、及び固定具2L,2Rの構成を示す斜視図である。
固定具201、固定具202、及び固定具2L,2R夫々における鉛直面部21,21、水平面部22、及び突出部23の構造は、固定具2の鉛直面部21,21、水平面部22、及び突出部23の構造と同様である。このため、側板11,12に形成される挿入穴51,51の形状及び寸法は、固定具2に係る挿入穴51,51の形状及び寸法と同じでよい。
【0116】
ただし、固定具201、固定具202、及び固定具2L,2R夫々に係る固定具本体20は、水平片24を有する。
以下では、まず、図6を参照しつつ固定具201について説明する。
踏板10の左側に配される固定具201と、踏板10の右側に配される固定具201とは、同一の構成を有する。各固定具201は、固定具本体20と、2個の被覆部材32,32とを備える。
【0117】
固定具201が備える固定具本体20は、鉛直面部21,21、水平面部22、突出部23、及び水平片24を一体に有する。このような固定具本体20も、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
【0118】
水平片24は矩形舌片状になしてあり、鉛直面部21,21の先端部から、アングルの内側(即ちL字の内側)へ、水平面部22に平行に突出している。ここで、水平面部22と水平片24との離隔距離は、踏板10の板厚に比べて、僅かに長い。また、水平片24は、鉛直面部21,21の両方に亘って配されている。更に、水平片24の左右方向の長さは、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間に生じ得る空隙の左右方向の長さよりも十分に長いが、水平面部22の左右方向の長さに比べれば、十分に短い。
【0119】
各被覆部材32は、コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。被覆部材32,32は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上下に挟むようにして正面側及び背面側から被覆する。
更に詳細には、被覆部材32は、鉛直面部21,21の前端面(又は後端面)と踏板10の対向端部10cの前端面(又は後端面)とを覆う被覆部321と、水平片24の外面及び水平面部22の外面に係止する係止部322,322とを一体に有する。係止部322,322は、被覆部321の長手方向両端部から同一方向に直角に突出している。
【0120】
固定具201の取り付けは、固定具2の取り付けと略同様である。ただし、側板11,12に固定具本体20,20を取り付けた後、作業者は、左右2個の水平面部22,22の内面22a,22a夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部22,22に載置するときに、水平面部22,22と水平片24,24との間に踏板10を挿入する。このように挿入される踏板10は、水平面部22,22と水平片24,24とに挟持されるかたちになるため、取り付け時に上下方向のガタつきが生じ難い。
また、水平片24は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を上側から目隠しする。
【0121】
そして、作業者は、被覆部材32,32を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、一の被覆部材32を前方から対向端部10cに覆い被せ、他の被覆部材32を後方から対向端部10cに覆い被せるようにする。
【0122】
具体的には、作業者は、被覆部材を変形させることによって係止部322,322を離隔させた状態で、被覆部321を鉛直面部21,21の前端面(又は後端面)及び対向端部10cの前端面(又は後端面)に覆い被せ、一方の係止部313を水平面部22の外面に係止させ、他方の係止部313を水平片24の外面に係止させる。この後、弾性によって被覆部材32が元の形状に戻ると、被覆部321が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側(又は背面側)から目隠しする。
【0123】
なお、固定具201は、被覆部材32,32に替えて、被覆部材31を備える構成でもよい。このとき、被覆部材31の左右方向の長さは、水平片24の無用な露出を防止すべく、水平片24の左右方向の長さ以上であることが望ましい。
また、使用者が背面側から階段構造S1を見る可能性が低い場合には、固定具201は、背面側の被覆部材32を備えていなくてもよい。
【0124】
次に、図7を参照しつつ、固定具202について説明する。固定具202は、固定具201と略同様の構成であるが、2個の被覆部材32,32に替えて、1個の被覆部材33を備える。
被覆部材33は、大略コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。また、被覆部材33は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上下に挟むようにして前側から被覆する。ただし、被覆部材33は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上側及び正面側から目隠しし、背面側からは目隠ししない。しかしながら、背面側は人目に付き難いため、階段構造S1の美観が悪化することは抑制される。
【0125】
最後に、図8を参照しつつ、固定具2L,2Rについて説明する。
踏板10の左側に配される固定具2Lと、踏板10の右側に配される固定具2Rとは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係にある。固定具2L(又は固定具2R)は、固定具本体20と、1個の被覆部材32とを備える。
固定具2L,2R夫々が備える固定具本体20は、鉛直面部21,21、水平面部22、突出部23、水平片24、及び鉛直片25を一体に有する。このような固定具本体20も、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
【0126】
鉛直片25は、4辺部の内の3辺部が、後側の鉛直面部21、水平面部22、及び水平片24夫々の後端部に接触し、且つ、鉛直面部21,21、水平面部22、及び水平片24の全てに対して直交するよう配設されている。鉛直片25が、後側の鉛直面部21、水平面部22、及び水平片24夫々の後端部の内、少なくとも2箇所に一体に設けられている場合、鉛直片25は、固定具本体20の補強部としても機能する。
【0127】
固定具2L,2R夫々の取り付けは、左右の固定具201,201の取り付けと略同様である。ただし、側板11,12に固定具本体20,20を取り付けた後、作業者は、水平面部22,22と水平片24,24との間に踏板10を挿入するときに、踏板10の後端面が鉛直片25,25に当接するまで踏板10を押し込む。従って、踏板10の前後方向の位置決めが更に容易である。
また、鉛直片25は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を背面側から目隠しする。
【0128】
そして、作業者は、被覆部材32を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、被覆部材32を前方から対向端部10cに覆い被せるようにする。この結果、被覆部材32が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側から目隠しする。
なお、固定具2L,2R夫々は、被覆部材32に替えて、被覆部材31又は被覆部材33を備える構成でもよい。
【0129】
実施の形態 2.
図9、図10、図11、図12、及び図13は、本発明の実施の形態2に係る固定具61、固定具62、固定具63、固定具64、及び固定具65の構成を示す斜視図である。
固定具61〜65夫々は、実施の形態1の固定具201又は固定具202に係る固定具本体20と略同様の固定具本体20を備えるが、突出部23の形状は異なる。この場合、側板11,12の挿入穴51は、実施の形態1の挿入穴51と同一形状でよい。
【0130】
更に、固定具61〜65夫々は、実施の形態1の被覆部材31を1個か、被覆部材32を1個又は2個、或いは、被覆部材33を1個備える(図示は省略)。
踏板10の左側に配される固定具61〜65と、踏板10の右側に配される固定具61〜65とは、同一の構成を有する。
なお、各固定具本体20は、実施の形態1の鉛直片25を備えていてもよい。この場合には、左側に配置すべき固定具本体20と右側に配置すべき固定具本体20とは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係になる。
その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0131】
まず、図9及び図10を参照しつつ、固定具61,62について説明する。固定具61,62夫々の固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
図9に示す固定具61に係る突出部23は、実施の形態1の突出部23と同様の下側舌片部231と、水平片24の基端部から下側舌片部231の上方へ下側舌片部231に平行に突出している上側舌片部232とを有する。
【0132】
つまり、固定具61に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の横線状になしてある。
ここで、図6を参照すればわかるように、水平片24の基端部は、本発明の実施の形態における一側面部の外面に相当する。このため、上側舌片部232は、本発明の実施の形態における一側面部の外面に一体的に設けられている突出部として機能する。
【0133】
一方、図10に示す固定具62に係る突出部23は、第1の舌片部233と第2の舌片部234とを有する。第1の舌片部233は矩形状になしてあり、左側(又は右側)に配される固定具本体20の場合には、前側の鉛直面部21の後端部(又は後側の鉛直面部21の前端部)から、アングルの厚みよりも長く、アングルの外側へ、鉛直面部21及び水平面部22の両方に垂直に突出している。第2の舌片部234は第1の舌片部233と略同様の構成であり、左側(又は右側)に配される固定具本体20の場合には、後側の鉛直面部21の前端部(又は前側の鉛直面部21の後端部)から、第1の舌片部233に対面する側へ、第1の舌片部233に平行に突出している。
【0134】
つまり、固定具62に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の縦線状になしてある。
このような固定具61(又は固定具62)に係る突出部23は、挿入穴51へ挿入された場合に、挿入穴51の上内面及び下内面(又は前内面及び後内面)夫々に接触するため、ガタつき難いという利点を有する。
【0135】
次に、図11〜図13を参照しつつ、固定具63〜65について説明する。固定具63〜65夫々の固定具本体20は、金属を用いた成型加工によって形成される。
図11に示す固定具63に係る突出部23は、図9に示す下側舌片部231と略同様の第1舌片部分235と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分235と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具63に係る突出部23は、側面視が、上向きに開口するよう横転したコ字状になしてある。
なお、第1舌片部分235と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0136】
図12に示す固定具64に係る突出部23は、図9に示す上側舌片部232と略同様の第1舌片部分238と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分238と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具64に係る突出部23は、側面視が、下向きに開口するよう横転したコ字状になしてある。
なお、第1舌片部分238と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0137】
図13に示す固定具65に係る突出部23は、図9に示す下側舌片部231及び上側舌片部232と略同様の第1舌片部分235,238と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分235,238と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具65に係る突出部23は、側面視がロ字状になしてある。
なお、第1舌片部分235,238と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0138】
このような固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、挿入穴51へ挿入された場合に、挿入穴51の上内面、下内面、前内面、及び後内面の内、少なくとも3面夫々に接触するため、ガタつき難いという利点を有する。
【0139】
また、このような固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、互いに垂直に配されている第1舌片部分及び第2舌片部分が補強し合うため、実施の形態1の突出部23、及び、固定具61,62夫々に係る突出部23よりも強度が向上されている。従って、固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、固定具本体20の強度の向上に寄与する。
以上のような固定具61〜65夫々は、実施の形態1の固定具2,201,202,2L,2Rと同様にして、階段構造S1を構成することができる。
【0140】
実施の形態 3.
図14及び図15は、本発明の実施の形態3に係る階段構造S2の構成を示す斜視図及び縦断面図である。ただし、図15には、図14におけるXV−XV線の断面図が示されている。
図16は、本発明の実施の形態3に係る固定具4L,4Rの構成を示す斜視図である。
図17は、本発明の実施の形態3に係る階段構造S2の組立方法の説明図である。ただし、図17には、固定具4Lの桁板13に対する取り付けが説明されている。
【0141】
階段構造S2は、実施の形態1の階段構造S1と同様に、例えば2階建ての建築物の屋内に設置される露出型直階段である。また、この建築物は、2階の床面を支持する躯体Bを有する(図15参照)。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
階段構造S2は、左右2枚の桁板13,14と、N枚の踏板10,10,…と、左側に配されるN個の固定具4L,4L,…及び右側に配されるN個の固定具4R,4R,…とを備え、これらは左右対称に配される。
各踏板10は、桁板13,14に、夫々横姿勢で階段状に固定される。
【0142】
桁板13は左側に、桁板14は右側に、互いに適長離隔して対向配置される。桁板14の構成は、桁板13の鏡像の構成に相当するため、以下では主に桁板13について説明する。
桁板13は、木材又は木質材を用いてなる板材であり、縦横比が大きい長方形の長手方向両端部を切断して台形にしたような形状を有する。また、桁板13の板厚は、第1及び第2の嵌合溝53,54の深さよりも厚い。
桁板13の2つの短辺部の内、一方の端面は、床面Fに沿って配され、他方の端面は、例えば躯体Bに沿って配される。
【0143】
桁板13の2つの長辺部の内、長い方は上向きに配され、短い方は下向きに配される。以下では、上向きに配されている長辺部を上辺部という。
桁板13の下側に配される短辺部と、上辺部とがなす角度は、階段構造S2の傾斜角度に等しい。
桁板13の一面は、ビス面13aとして用いられる。このために、ビス面13aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置された各N本の第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…が形成されている。
【0144】
第1の嵌合溝53,53,…は、互いに同一形状の横溝状になしてあり、各第1の嵌合溝53において、内上面及び内下面夫々は水平面である。
一方、第2の嵌合溝54,54,…は、互いに同一形状の縦溝状になしてあり、各第2の嵌合溝54において、内前面及び内後面夫々は鉛直面である。
第1及び第2の嵌合溝53,54夫々は、ビス面13aにのみ開口しており、桁板13の他面(例えば桁板13の上辺部の端面)には開口していない。
【0145】
第1及び第2の嵌合溝53,54の内法は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44(図16参照)の寸法に略等しい。具体的には、第1の嵌合溝53の深さ、前後方向の内法、及び上下方向の内法(即ち溝の幅)は、固定具4Lの第1の突出片43の突出量、奥行き、及び厚みに比べて、僅かに(例えば約1mm)長い。また、第2の嵌合溝54の深さ、前後方向の内法(即ち溝の幅)、及び上下方向の内法は、固定具4Lの第1の突出片43の突出量、厚み、及び奥行きに比べて、僅かに長い。
更に、第1及び第2の嵌合溝53,54の位置関係は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44の位置関係に対応している。
【0146】
このような第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…夫々の形状及び形成位置等は、例えば板材を生産する工場で、NCルータを用いて高精度に形成することができる。また、ビス面13aの裏面に対する加工は不要であり、しかも、各第1及び第2の嵌合溝53,54は一直線状であって、開口面積が狭いため、例えば台形状、平行四辺形状、又は三角形状等の開口面積が広い凹部を形成する場合よりも、短時間で容易に形成することができる。
以上のような桁板13は、建築物の1階と2階との間に、長手方向が傾斜し、且つビス面13aが縦姿勢で斜設される。
【0147】
同様に、桁板14は、各N本の第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…が形成されているビス面14aを有し、建築物の1階と2階との間に、長手方向が傾斜し、且つビス面14aが縦姿勢で斜設される。桁板14に係る第1及び第2の嵌合溝53,54の内法は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44の寸法に略等しく、桁板14に係る第1及び第2の嵌合溝53,54の位置関係は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44の位置関係に対応している。
桁板13,14のビス面13a,14aは、夫々鉛直に、且つ互いに対面する向きに平行に配置される。即ち、階段構造S2のビス面13a,14aは内向きである。
なお、桁板13,14は、木材又は木質材を用いてなる構成に限定されるものではない。
【0148】
次に、固定具4L,4Rについて説明する。固定具4L,4R夫々の形状は、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係にある。このため、以下では主に固定具4Lについて説明する。
固定具4Lは、約5mmの厚みを有するL字型のアングル状になしてあり、鉛直面部41と、水平面部42と、第1及び第2の突出片43,44とを一体に有する。固定具4Lは、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
鉛直面部41は、アングルの一側面部として機能し、鉛直に配される。水平面部42は、アングルの他側面部として機能し、水平に配される。
【0149】
水平面部42は長方形状であり、長方形の一方の長辺部が水平面部42の基端部に相当する。また、水平面部42は、長方形の四隅部に各1個(計4個)のビス孔が形成されている。このような水平面部42は、水平面部42の外面42aと踏板10の下面10bとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、踏板10にビス留めされる。
【0150】
一方、鉛直面部41は台形状であって、更に詳細には、台形の長い方の上底部分が鉛直面部41の基端部に相当し、短い方の下底部分が先端部に相当する直角台形状である。また、鉛直面部41の先端部近傍には、直角台形の直角部分に沿って直角三角形の頂点に相当する位置に配された3個のビス孔が形成されている。このような鉛直面部41は、鉛直面部41の外面と桁板14のビス面14aとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、桁板14にビス留めされる。
【0151】
更に、鉛直面部41の先端部には、長方形状の第1の突出片43が一体に突設されており、鉛直面部41の外面(更に詳細には、鉛直面部41の後端部)には、長方形状の第2の突出片44が一体に突設されている。第1及び第2の突出片43,44夫々は、固定具4Lの厚みよりも長く、且つ、水平面部42の短辺部の長さより短くアングルの外側(L字の外側)へ、鉛直面部41に垂直に突出している。
第1及び第2の突出片43,44は、長方形の一方の長辺部が第1及び第2の突出片43,44の基端部に相当する。また、第1及び第2の突出片43,44の厚みは、鉛直面部41の厚みに等しく、第1及び第2の突出片43,44の鉛直面部41からの突出量は、互いに略等しく、約15mmである。
【0152】
このような第1の突出片43は、水平面部42に沿う方向に(具体的には平行に)配されており、第2の突出片44は、水平面部42に交差する方向に(具体的には垂直に)配されている。
なお、固定具4Lのアングルの内側に、鉛直面部41と水平面部42とを連結して固定具4Lを補強する補強板部が設けられていてもよい。
【0153】
次に、階段構造S2の組立方法を説明する。
階段構造S2を組み立てる作業者は、桁板13,14、N枚の踏板10,10,…、各N個の固定具4L,4R、及び複数本のビスV,V,…を準備する。これらは、予め工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。
【0154】
作業者は、まず、桁板13,14のビス面13a,14を、互いに平行になるように対面させ、更に、桁板13(又は桁板14)の2つの短辺部夫々の端面を床面F及び躯体Bに密着させた状態で、桁板13,14夫々の上部を躯体Bにビス留めする。この結果、各桁板13,14は、建築物の1階と2階との間に、ビス面13a,14aが縦姿勢になるよう斜設される。このとき、床面Fに対する桁板13,14夫々の長手方向の傾斜角度は、階段構造S2の傾斜角度に等しくなる。更に、対向配置される第1の嵌合溝53,53夫々の内下面(又は第2の嵌合溝54,54夫々の内下端)は、床面Fからの高さが等しい。
【0155】
次いで、作業者は、固定具4Lを、水平面部42の外面42aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44を、先端部から基端部まで桁板13の第1及び第2の嵌合溝53,54へ嵌入する。このとき、第1の突出片43の下面は第1の嵌合溝53の内下面に自然と載置され、第2の突出片44の下端は第1の嵌合溝54の内下端に自然と載置される。
この状態で、作業者は、鉛直面部41を桁板13にビス留めする。
【0156】
このとき、第1及び第2の突出片43,44は、第1の突出片43が第1の嵌合溝53の内面に接触し、第2の突出片44が第2の嵌合溝54の内面に接触するため、上下方向及び前後方向の何れの方向にもガタつき難い。従って、固定具4Lの取り付けは、施工性が向上されている。
このような固定具4Lの取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
【0157】
また、固定具4Lを桁板14に取り付ける場合と同様にして、固定具4Rを、水平面部42の外面42aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44を、先端部から基端部まで桁板14の第1及び第2の嵌合溝53,54へ嵌合する。この状態で、作業者は、鉛直面部41を桁板14にビス留めする。
このような固定具4Rの取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
以上の結果、固定具4L,4Rの水平面部42,42は、床面Fから同一の高さに、且つ床面Fに対して平行に配される。
【0158】
次いで、作業者は、固定具4Lの水平面部42及び固定具4Rの水平面部42夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部42,42に載置する。
この状態で、作業者は、水平面部42,42を踏板10にビス留めする。
このような踏板10の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
なお、床面Fに直近の踏板10を桁板13,14に取り付ける場合には、作業者は、固定具4L及び固定具4Rの水平面部42,42を踏板10の下面10bにビス留めしてから、固定具4L及び固定具4Rの鉛直面部41,41を桁板13,14のビス面13a,14aにビス留めしてもよい。
【0159】
ところで、桁板13,14夫々の反り、又は設置場所の歪み等によって、ビス面13a,14a間の離隔距離にバラつきが生じる可能性が高い。この場合でも、踏板10は問題なく桁板13,14に固定される。何故ならば、踏板10には、桁板13,14又は水平面部42,42等に係合することによって踏板10の左右方向の配置を厳密に規定するような切り欠き部又は穴部等が形成されていないからである。
しかも、固定具4L,4Rと踏板10の両端部とが対向配置されないため、固定具4L,4Rと踏板10の両端部との間に見苦しい空隙が生じることがない。従って、この空隙を目隠しするための部材は不要である。
【0160】
以上のような階段構造S2は、組立方法が簡単であるため、短時間で安価に設置することができる。
また、従来の階段構造同様、ボックス階段に比べて、装飾性が高く、開放感を有する。更に、切り欠き部を有する踏板を、踏板支持部を有する桁板に嵌め込み固定する従来の嵌め込み型の階段構造とは異なり、左右一対の固定具4L,4Rを用いて各踏板10を桁板13,14に固定するため、嵌め込み型の階段構造に関して生じる各種の問題(切り欠き部によって踏板の強度が弱くなること、桁板の加工工数が多いこと等)が生じることはない。
【0161】
更に、嵌め込み型の階段構造では、桁板に踏板支持部を形成する必要があるため、例えば60mm〜75mmの範囲の厚みを有する桁板が使用される。しかしながら、階段構造S2の場合、嵌め込み型の階段構造の桁板よりも薄い桁板13,14を用いてもよい。
【0162】
更にまた、踏板10に加えられて固定具4L,4Rに伝達された荷重は、鉛直面部41,41をビス面13a,14aにビス留めしているビスV,V,…と、第1の嵌合溝53,53の内下面の内、第1の突出片43,43の下面が接触している部分とで支持される。この部分は面積が広いため、安定して荷重を支持することができる。
また、桁板13,14における第1及び第2の嵌合溝53,54の形成位置が正確であるため、固定具4L,4R夫々の第1及び第2の突出片43,44を、桁板13,14夫々の第1及び第2の嵌合溝53,54に嵌入することによって、固定具4L,4Rに載置される踏板10も正確な位置に配置される。つまり、第1及び第2の突出片43,44及び第1及び第2の嵌合溝53,54は、踏板10の位置決めにも利用される。
【0163】
更に、階段構造S2の場合、固定具4L,4Rが桁板13,14の内側に配されているため、固定具4L,4Rが目立たず、美観が向上されるという利点がある。また、第1及び第2の嵌合溝53,54がビス面13a,14a以外には開口していないため、第1及び第2の嵌合溝53,54を目立たなくして、美観を向上させることができる。
更に、固定具4L,4Rが踏板10の中央部近傍を支持し、固定具4L,4R間の距離が短いため、踏板に荷重が加えられた場合の踏板10の中央部の撓みが小さいという利点もある。
【0164】
更にまた、階段構造S2の設置場所の右側方又は左側方に近接して建築物の壁が存在していても、壁面とビス面13a,14aとの間にビス留め用の工具を配置する必要がないため、固定具4L,4Rをビス留めする作業に支障が出ないという利点もある。
なお、桁板13,14を左右逆に配置した状態(即ち、ビス面13a,14aが外向きに配される状態)で、各固定具4L,4R及び踏板10を固定する構成でもよい。この場合、固定具4L,4Rが桁板13,14の外側に配されるため、桁板13,14間にビス留め用の工具を配置する必要がない。従って、固定具4L,4Rをビス留めする作業に支障が出ないという利点がある。
【0165】
更にまた、階段構造S2は、桁板13,14に替えて、桁板13よりも厚い1枚の桁板を備える構成でもよい。この場合、1枚の桁板の両面が、ビス面13a,14aに相当するビス面として用いられる。
【0166】
なお、階段構造S2は、各1枚の桁板13,14を備える構成に限定されるものではない。例えば、階段構造S2は、一方が桁板13又は桁板14であり、他方が壁又は柱等の躯体である構成でもよい。この場合、踏板10,10,…は、一端側が固定具4L又は固定具4Rによって桁板13又は桁板14に固定され、他端側が従来の工法に則って(例えば、躯体に設けた切り欠きに他端側が載置されることによって)躯体に固定される。
【0167】
また、階段構造S2は、露出型直階段に限定されるものではない。例えば、階段構造S2は、一部が露出階段であり、残部が従来の構成を有するボックス階段又は雛壇階段であってもよい。或いは、階段構造S2は、中途に踊り場を有する折り返し階段若しくはかね折れ階段、又は廻り階段を構成してもよい。ただし、廻り階段を構成する踏板10,10,…は、平面形状が三角形状になしてある。この場合、踏板10,10,…は、一辺部が、廻り階段を構成する桁板13又は桁板14に固定され、一頂部が、例えば躯体に固定される。
【0168】
実施の形態 4.
図18は、本発明の実施の形態4に係る階段構造S3の構成を示す斜視図である。
階段構造S3は、各1枚の側板11及び桁板14と、N枚の踏板10,10,…とを備えている。図18には、側板11と桁板14と間に、2枚の踏板10,10が、夫々横姿勢で階段状に固定されている状態が示されている。
一方が側板、他方が桁板という組み合わせの場合、側板側にはL字状の固定具が取り付けられ、桁板側には逆L字状の固定具を取り付けられる。
【0169】
このため、階段構造S3は、例えば各N個の固定具2及び固定具4Rとを更に備えている。この場合、各踏板10は、左端部が固定具2によって側板11に固定され、右端部が固定具4Rによって桁板14に固定される。
その他、実施の形態1〜3に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0170】
以上のような階段構造S3は、実施の形態1〜3の階段構造S1,S2と同様の効果を奏する。
なお、階段構造S3は、各1枚の側板12及び桁板13と、N枚の踏板10,10,…と、各N個の固定具2及び固定具4Lとを備えている構成でもよい。この場合、各踏板10は、右端部が固定具2によって側板12に固定され、左端部が固定具4Lによって桁板13に固定される。
【0171】
実施の形態 5.
図19は、本発明の実施の形態5に係る固定具66の構成を示す斜視図である。
固定具66は、図9に示す固定具本体20に類似した固定具本体20を備え、更に、図6に示す被覆部材32,32に類似した被覆部材32,32を備える。
踏板10の左側に配される固定具66と、踏板10の右側に配される固定具66とは、同一の構成を有する。
その他、実施の形態1〜4に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0172】
本実施の形態の固定具本体20は、鉛直面部21,21,210と、水平面部22と、突出部23と、水平片24と、被係止突起26,26とを一体に有する。このような固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
なお、各固定具本体20は、図8に示す鉛直片25を備えていてもよい。この場合には、左側に配置すべき固定具本体20と右側に配置すべき固定具本体20とは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係になる。
【0173】
鉛直面部210は、鉛直面部21,21と共に、アングルの一側面部として機能する。このような鉛直面部210は、前側の鉛直面部21の後端上部と後側の鉛直面部21の前端上部とを連結するように鉛直面部21,21間に架設されている。このため、鉛直面部21,21,210全体は、その前後方向中央部に矩形状の貫通孔が形成された1枚の矩形板状をなしている。また、突出部23は、この貫通孔の周縁部に突設されている。
【0174】
突出部23は、図9に示す下側舌片部231と同様の下側舌片部231と、図9に示す上側舌片部232に類似した上側舌片部239とを有する。つまり、固定具66に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の横線状になしてある。
【0175】
ただし、上側舌片部239は、鉛直面部210の下端部から下側舌片部231の上方へ下側舌片部231に平行に突出している。このため、下側舌片部231と上側舌片部239との離隔距離は、図9に示す下側舌片部231と上側舌片部232との離隔距離よりも短い。従って、側板11,12に形成される挿入穴51,51夫々の上下方向の寸法は、実施の形態1,2,4における挿入穴51の上下方向の寸法よりも短い必要がある。
【0176】
一の被係止突起26は、前側の鉛直面部21の前端部から前方へ突出し、他の被係止突起26は、後側の鉛直面部21の後端部から後方へ突出している。各被係止突起26は、鉛直面部21,21に沿う板状になしてあり、各被係止突起26の基端部の上部及び下部夫々には、後述する係止部323,323の爪部が係合し易いよう、上下方向の凹部が形成されている。
【0177】
各被覆部材32は、図6に示す被覆部321よりも上下方向の寸法が短い被覆部321と、図6に示す係止部322,322に類似した係止部323,323とを一体に有する。図6に示す係止部322,322は、水平片24の外面及び水平面部22の外面に係止するものであるが、本実施の形態における係止部323,323は、被係止突起26に係止するものである。このために、係止部323,323夫々の先端部には、被係止突起26の基端部に係合する爪部が、互いに向かい合う方向に突設されている。
被覆部材32が被係止突起26に取り付けられた場合、上側(又は下側)の係止部323の外面は、水平片24(又は水平面部22)の外面に面一に配される。
【0178】
以上のような固定具66は、実施の形態1の固定具2,201,202,2L,2R及び実施の形態2の固定具61〜65と同様にして、階段構造S1,S3を構成することができる。
【0179】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、階段構造S1〜S3又は固定具2,4L,4R等に、実施の形態1〜5に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0180】
10 踏板(一の物体)
11,12 側板(板部材,他の物体)
13,14 桁板(他の物体)
51 挿入穴
2,201,202,2L,2R,4L,4R,61〜66 固定具
21,41 鉛直面部(一側面部)
22,42 水平面部(他側面部)
23 突出部
235 第1舌片部分
233,234 第2舌片部分
31,32,33 被覆部材
43,44 第1及び第2の突出片
53,54 第1及び第2の嵌合溝
S1,S2,S3 階段構造
W 壁(建築物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏板と桁板又は側板等とを用いてなり、蹴込み板を備えない階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内に設置される階段として、露出階段(オープン階段)が用いられている。
図20は、従来の露出階段の構成を示す斜視図である。
従来の露出階段は、建築物の例えば1階の床面と2階との間に夫々斜めに架け渡されている2枚の桁板91,91と、桁板91,91に階段状に固定されている複数枚の踏板92,92,…とを備える。
【0003】
各桁板91には、長辺部を部分的に切削することによって、踏板92,92,…の枚数に等しい個数の踏板支持部911,911,…が形成されている。各踏板92の長辺部には、長手方向に隣り合う2個の矩形状の切り欠き部921,921が形成されている。各踏板支持部911は、踏板92の下面が載置される踏板載置面91aと、切り欠き部921の内法に対応する外法を有し、切り欠き部921に嵌合される嵌合部91bとを有する。
【0004】
所定の階段設置場所に露出階段を設置する作業者は、まず、桁板91,91を左右方向に離隔配置して建築物の1階と2階との間に架設する。
次いで、作業者は、左右一対の踏板支持部911,911に接着剤を塗布してから、図中二点鎖線で示す踏板92の下面が踏板載置面91aに載置され、切り欠き部921が嵌合部91bに嵌合されるよう踏板92を桁板91,91に図中白抜矢符方向へ嵌め込み、固定する。
【0005】
ところで、桁板及び踏板夫々とは別体の固定具を用いて、1枚又は2枚の桁板に複数枚の踏板を階段状に固定してなる露出階段が提案されている(特許文献1〜6参照)。
更に、ささら桁に一体に設けられている受け部に踏板を載置してなる露出階段が提案されている(特許文献7参照)。
【0006】
以上のような露出階段は、ボックス階段(即ち、踏板の一側部又は両側部が壁に取り付けられており、また、蹴込み板を備える階段)に比べて、装飾性が高く、開放感を有するため、例えばリビング・ルームのように、装飾性及び開放感が好まれる空間に設置されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322304号公報
【特許文献2】特開2006−177053号公報
【特許文献3】特開2006−97384号公報
【特許文献4】特開2006−97383号公報
【特許文献5】特開2005−315031号公報
【特許文献6】特開2008−184811号公報
【特許文献7】特開2005−30082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図20に示すような従来の露出階段の場合、切り欠き部921,921が、踏板92の長辺部から短手方向中央部に亘って凹設されているため、踏板92は一枚板の踏板より強度が低いという問題がある。
また、1個の切り欠き部921に対応する踏板支持部911は、桁板91の長辺部の端面と両面夫々とを加工することによって形成しなければならないため、工数が多く、生産性が悪いという問題がある。
【0009】
一般に、桁板91及び踏板92夫々は、踏板支持部911及び切り欠き部921夫々が工場で形成された状態で、露出階段の階段設置場所へ搬入される。つまり、踏板92,92,…夫々の切り欠き部921,921間の距離は一定である。ところが、桁板91の反り、階段設置場所の歪み等によって、桁板91,91の左右一対の踏板支持部911,911間の離隔距離は一定でないことがある。この場合、踏板92を桁板91,91に嵌め込めないという問題が生じる。
更に、踏板支持部911と切り欠き部921とが嵌合する部分で、桁板91が踏板92に干渉するかたちとなるため、踏板92の上面の面積が実際よりも小さいように錯覚し、足場が狭いという印象を使用者が受けるという問題がある。
【0010】
特許文献1〜7に記載の露出階段であれば、図20に示すような従来の露出階段(即ち、切り欠き部921,921を有する踏板92を、踏板支持部911,911を有する桁板91,91に嵌め込み固定する露出階段)とは構成が異なるため、前述の問題は生じない。
【0011】
ところが、特許文献2に記載されている露出階段においては、桁板(階段桁)が歪んだ状態で架設されている、又は、各踏板の寸法にバラつきがある等の理由で、踏板の左右両端と、固定具(固定プレート)が有する端部係止片との間に空隙が生じる虞がある。この場合、露出階段の美観が悪化する。
しかも、固定具がビス留めのみで桁板に固定されているため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスのみで支える必要がある。即ち、荷重に対する強度に不安がある。
【0012】
特許文献3に記載されている露出階段は、踏板を桁板(桁)に固定するために、踏板及び桁板夫々に対する取り付け方が全く異なる2種類の固定具(踏板受け具及び踏板挟持具)を必要とする。このため、露出階段の部品点数が多く、組立手順が煩雑である。以上の結果、このような露出階段には、生産性及び施工性が悪いという問題がある。
特許文献4に記載されている露出階段は、固定具(踏板受け具)がビス留めのみで桁板(桁)に固定されているため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスのみで支える必要がある。即ち、このような露出階段は、荷重に対する強度に不安がある。
【0013】
特許文献5に記載されている露出階段は、単純なT字状の固定具(踏板受け材)を用いてなるが、固定具を取り付けるべき桁板(側桁)の構成が複雑である。
特許文献7に記載されている露出階段は、固定具を使用しない分、桁板(ささら桁)の形状が複雑である。
従って、特許文献5,7に記載の露出階段には、生産性が悪いという問題がある。
【0014】
特許文献1に記載されている露出階段は、1種類且つ単純なアングル状の固定具(取付金具)を用いてなる。桁板(桁)には、固定具の一側面部の板厚に等しい深さを有する台形状、平行四辺形状、又は三角形状等の単純な形状の凹部が形成されている。固定具は、一側面部の大半が桁板の凹部に嵌め込まれた状態でビス留めされるため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスだけではなく、桁板の凹部内下面でも支えることができ、例えば特許文献2,4に記載されている露出階段に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0015】
しかしながら、桁板の凹部は、固定具の一側面部の大半を嵌め込めるだけの開口面積を必要とするため、桁板の加工に手間暇が掛かる。このため、更に加工の手間暇を減少させることが望ましい。
また、桁板の凹部内下面は、固定具の板厚に等しい深さしか有していないため、面積が狭い。このため、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、広い面積で支えることができるように工夫して、荷重に対する強度を更に向上させることが望ましい。
【0016】
このような不都合を解消するために、特許文献6に記載されている露出階段を利用することが考えられる。この露出階段は、1種類且つ単純なアングル状の固定具(踏板接合具)を用いてなる。固定具は、一側面部(側桁固定片)が踏板にビス留めされ、他側面部(側桁固定片)が桁板(側桁)がビス留めされる。固定具の他側面部の周縁部には、舌片状の突出部(荷重受片)が突設されており、突出部は、桁板に形成されている嵌合溝(接合具嵌合溝)に嵌合されている。
嵌合溝の開口面積は狭いため、桁板の加工は容易である。また、嵌合溝の内下面の広い面積で、踏板に加えられた荷重を支えることができる。
【0017】
また、嵌合溝は、桁板の一面のみならず、桁板の上側の側端面にも開口している。従って、固定具の突出部を、桁板の手前側から奥側へスライドさせて嵌合溝に嵌入させることができる。
しかしながら、露出階段の美観を向上させるためには、桁板の側端面に嵌合溝が開口していない構成であることが望ましい。
更に、特許文献6に記載の露出階段には、踏板の左右両端部と、固定具が有する踏板位置決め片及び踏板浮上がり防止片夫々との間に空隙が生じた場合に、露出階段の美観が悪化するという問題がある。
【0018】
更にまた、特許文献1,6に記載されているような嵌合溝の寸法は、嵌合溝に対する突出部の嵌入を容易にするために、突出部の寸法よりも僅かに大きく設けられる。従って、嵌合溝に突出部を嵌入した後、固定具をビス留めするまでの間、固定具がガタつき易いため、施工性が悪化する虞がある。
【0019】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、アングル状の固定具の一側面部の外面及び/又は他側面部の基端部に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している突出部を一体的に設け、板部材に形成されている挿入穴に突出部を挿入した状態で、固定具の一側面部を板部材にビス留めしてから、他側面部を踏板にビス留めした後、被覆部材で一側面部と踏板との間を被覆する構成とすることにより、生産性及び施工性が高く、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々向上させることができる階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、突出部は、第1舌片部分と第2舌片部分とが互いに交差する方向に配されてなり、挿入穴が板部材の一面にのみ開口していることにより、固定具の強度を向上させつつ、固定具のガタつきを抑制することができ、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々更に向上させることができる階段構造を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、板部材を、挿入穴の内奥面にて建築物にビス留めする構成とすることにより、建築物に対する板部材の取り付け手順を簡易にすることができ、しかも、更に美観を向上させることができる階段構造及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、側板にビス留めされる一側面部、踏板にビス留めされる他側面部、及び、一側面部と踏板との間を被覆する被覆部材を有し、他側面部の基端部及び/又は一側面部の外面に突出部が設けられていることにより、少なくとも1枚の側板及び踏板を用いてなる階段構造を構成することができる固定具を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、アングル状の固定具の一側面部の先端部及び外面に、アングルの厚みよりも長く外側へ突出している第1及び第2の突出片を一体的に設け、桁板に形成されている嵌合溝に突出片を嵌合させた状態で、固定具の一側面部を桁板にビス留めしてから、他側面部を踏板にビス留めする構成とすることにより、生産性及び施工性が高く、しかも、美観と荷重に対する強度とを夫々向上させることができ、更に、固定具のガタつきを抑制することができる階段構造、固定具、及び階段構造の組立方法を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、第1の突出片と第2の突出片とが互いに交差する方向に配されており、第1及び第2の嵌合溝が桁板の一面にのみ開口していることにより、美観と荷重に対する強度とを夫々更に向上させることができる階段構造を提供することにある。
【0025】
本発明の更に他の目的は、桁板にビス留めされる一側面部、及び、踏板にビス留めされる他側面部を有し、一側面部の先端部及び外面に第1及び第2の突出片が設けられていることにより、桁板及び踏板を用いてなる階段構造を構成することができる固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1発明に係る階段構造は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造において、前記固定具は、前記他側面部が、該他側面部の内面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆している被覆部材を有し、前記板部材は、前記突出部が挿入されている挿入穴が、前記一面に形成されていることを特徴とする。
【0027】
第2発明に係る階段構造は、前記突出部は、前記他側面部に沿う方向に配されている第1舌片部分と、前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1舌片部分に一体に設けられている第2舌片部分とを有し、前記挿入穴は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする。
【0028】
第3発明に係る階段構造は、前記挿入穴の内奥面は、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有し、前記板部材は、前記内奥面にて前記建築物にビス留めされていることを特徴とする。
【0029】
第4発明に係る固定具は、一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、その内面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と、前記一側面部と前記一の物体との間を被覆する被覆部材とを有し、前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0030】
第5発明に係る固定具は、前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき側板であることを特徴とする。
【0031】
第6発明に係る階段構造の組立方法は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造の組立方法において、前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置される端部との間を被覆する被覆部材を有する固定具を準備し、前記板部材として、前記突出部が挿入される挿入穴が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の板部材を準備し、該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設し、前記突出部を、前記挿入穴へ挿入し、前記一側面部を、前記一面にビス留めし、前記他側面部の内面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、前記他側面部を、前記下面にビス留めし、前記被覆部材を用いて、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆することを特徴とする。
【0032】
第7発明に係る階段構造の組立方法は、前記板部材として、前記挿入穴の内奥面が、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有する板部材を準備し、該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設する場合に、前記板部材を、前記内奥面にて前記建築物にビス留めすることを特徴とする。
【0033】
第8発明に係る階段構造は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造において、前記固定具は、前記他側面部が、該他側面部の外面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記桁板は、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合されている第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されていることを特徴とする。
【0034】
第9発明に係る階段構造は、前記第1の突出片は、前記他側面部に沿う方向に配されており、前記第2の突出片は、前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1及び第2の嵌合溝は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする。
【0035】
第10発明に係る固定具は、一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、その外面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部とを有し、前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0036】
第11発明に係る固定具は、前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき桁板であることを特徴とする。
【0037】
第12発明に係る階段構造の組立方法は、上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具とを備える階段構造の組立方法において、前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられている固定具を準備し、前記桁板として、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合される第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の桁板を準備し、該桁板を、前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ前記一面が縦姿勢になるよう斜設し、前記第1及び第2の突出片を、前記第1及び第2の嵌合溝へ嵌入し、前記一側面部を、前記一面にビス留めし、前記他側面部の外面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、前記他側面部を、前記下面にビス留めすることを特徴とする。
【0038】
第1発明にあっては、階段構造は、1枚又は2枚の板部材と、複数枚の踏板とを備え、更に、第4発明又は第5発明の固定具を、踏板毎に少なくとも1個備えている。また、第6発明にあっては、板部材、踏板、及び第4発明又は第5発明の固定具を用いて、第1発明の階段構造が組み立てられる。ただし、第5発明の固定具を用いる場合には、板部材として、側板が用いられる。
【0039】
固定具は、踏板を板部材にビス留め固定するためのものである。固定具は、一側面部と、他側面部とを有するアングル状になしてある。更に、固定具は、突出部と被覆部材とを有する。突出部は、一側面部の外面及び他側面部の基端部の内、両方又は一方に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。以下では、固定具の一側面部、他側面部、及び突出部を一体的に有する部分を固定具本体という。
被覆部材は、固定具の一側面部と踏板の端部(具体的には、一側面部に対向配置される端部)との間を被覆する構成であれば、その形状は限定されない。
以上のような固定具は、固定具本体の形状が簡易であり、被覆部材の設計の自由度が高いため、生産性が高い。
【0040】
以下では、板部材に関し、固定具の一側面部がビス留めされる一面を、ビス面という。
板部材は、建築物の上段と下段(例えば2階と1階)との間にて、縦姿勢で配設される。このような板部材は、例えば側板又は壁パネル等であり、板部材が2枚である場合、これらの組み合わせは限定されない(例えば側板同士、又は壁パネルと側板との組み合わせ等)。また、板部材と壁、柱、又は桁板等とが組み合わせられることがある。このように、板部材の種類及び枚数等が限定されないため、階段構造の設計の自由度が高い。
【0041】
板部材のビス面には、固定具の突出部が挿入されるべき挿入穴が形成されている。このような挿入穴は、突出部が挿入されるために必要な寸法を有する単純な形状であればよいため、短時間で簡単に形成することができる。つまり、加工の手間暇が減少する。更に、固定具本体を板部材に取り付けるために挿入穴以外の凹部又は凸部等を形成する必要はないため、板部材の構成は簡易であり、形状は単純である。従って、板部材は、生産性が高い。
板部材が、例えば工場で生産される場合は、挿入穴が高精度に形成されるため、挿入穴に突出部を挿入することによって、固定具本体の正確な位置決めが容易になされる。つまり、挿入穴は、施工性の向上に寄与する。
なお、挿入穴の深さは、突出部の突出量以上であればよい。
【0042】
複数枚の踏板は、夫々横姿勢で階段状に板部材に固定される。このために、一のビス面に対して、踏板の枚数に対応する個数の固定具が用いられる。また、このビス面には、複数個の固定具が備える突出部を夫々挿入すべき挿入穴が、階段状に配設されている。
階段構造を組み立てる作業者は、固定具の突出部夫々の先端部から基端部までを、対応する挿入穴へ挿入する。
【0043】
次に、作業者は、固定具の一側面部を、板部材のビス面にビス留めする。この結果、固定具本体は、突出部が挿入穴に挿入された状態で、板部材に取り付けられる。このようにして板部材に取り付けられた固定具本体は、例えば特許文献2,4に記載されているようなビス留めのみで板部材に取り付けられている固定具に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0044】
次いで、作業者は、固定具の他側面部の内面(即ち上面)と、踏板の下面とを対面させて、踏板を他側面部に載置し、更に、固定具の他側面部を、踏板の下面にビス留めする。この結果、踏板が板部材に固定される。従って、踏板を受けるための固定具と踏板を挟持するための固定具のような、複数種類の固定具が不要である。
また、このとき、固定具の一側面部と、踏板の一端部とが対向配置される。以下では、踏板の、固定具の一側面部に対向配置される端部を対向端部という。
【0045】
そして、作業者は、固定具の被覆部材で、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間を被覆する。このとき、作業者は、例えば固定具本体に被覆部材を取り付ける。この結果、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じていたとしても、この空隙が目隠しされる。
以上のような階段構造は、建築物の上段から下段に亘って配設されている露出階段であってもよく、一部が露出階段であり、残部がボックス階段である階段の一部分であってもよい。また、上段から下段までの中途に、方向転換のための折り返し部分を有する回り階段状の階段構造であってもよい。
【0046】
第2発明にあっては、固定具の突出部が、第1舌片部分及び第2舌片部分を有する。第1舌片部分は他側面部に沿う方向に配されており、第2舌片部分は他側面部に交差する方向に配されており、第1舌片部分及び第2舌片部分は一体に設けられている。つまり、例えば各1個の第1舌片部分及び第2舌片部分を有する突出部は、T字状又はL字状等の断面を有する。このため、I字状の断面を有する突出部に比べて、突出部の強度、延いては固定具本体の強度が向上される。
【0047】
また、固定具を板部材に取り付けるべく、突出部分が挿入穴に挿入されたとき、各突出部分が、挿入穴の各突出部分に対応する内面によって2点支持される。従って、例えば第1の突出部分のみが挿入穴の内面によって1点支持される場合と比べて、固定具がガタつき難い。
挿入穴は、板部材のビス面にのみ開口している。換言すれば、挿入穴は、板部材の側端面には開口していない。この結果、挿入穴の長さは各突出部分の長さに対応する必要最小限のものであればよいため、板部材の生産性が更に向上され、板部材の強度劣化が抑制され、更に、階段構造の美観が向上する。
このとき、作業者は、板部材のビス面に交差する方向へ固定具を移動させることによって、突出部を挿入穴に挿入する。
【0048】
ところで、第1舌片部分は、アングルの厚みよりも長く突出している。また、挿入穴は、第1舌片部分の突出量以上の深さを有していればよい。このため、挿入穴の内下面は、面積が広い。従って、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重は、ビスと挿入穴の広い内下面とが支える。
【0049】
第3発明及び第7発明にあっては、挿入穴の形状及び寸法が、突出部の形状及び寸法と完全には一致していない。何故ならば、挿入穴の内奥面は、突出部の板部材に対する投影面積よりも広い面積を有するからである。このため、挿入穴には、突出部が挿入される空間と、突出部が挿入されない空間とを有する。
2枚の板部材夫々を、建築物の上段と下段との間にて配設する際に、作業者は、板部材を建築物にビス留めする。このとき、作業者は、挿入穴を利用して、板部材を建築物(例えば、壁又は柱等の躯体)にビス留めする。
【0050】
挿入穴は、予め(例えば工場で板部材が製造されるときに)ビス面に形成されている。また、板部材を建築物に取り付けるためのビス留め位置は、高精度に位置決めする必要がない。
従って、作業者は、挿入穴の内奥面の適宜の位置を、ビス留め位置として利用することができる。
このように、板部材を、挿入穴の内奥面にて建築物にビス留めした場合、ビスの頭部は挿入穴の内部に配置される。挿入穴の内部に配置されている物を使用者が視認することは困難である。換言すれば、板部材を建築物に取り付けているビスは、使用者が容易に視認可能な位置に存在しない。
【0051】
第8発明にあっては、階段構造は、1枚又は2枚の桁板と、複数枚の踏板とを備え、更に、第10発明又は第11発明の固定具を、踏板毎に少なくとも1個備えている。また、第12発明にあっては、桁板、踏板、及び第10発明又は第11発明の固定具を用いて、第8発明の階段構造が組み立てられる。
固定具は、踏板を桁板にビス留め固定するためのものである。固定具は、一側面部と、他側面部とを有するアングル状になしてある。更に、固定具は、第1及び第2の突出片を有する。
【0052】
第1の突出片は、一側面部の先端部に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。第2の突出片は、一側面部の外面に一体的に設けられており、アングルの厚みよりも長くアングルの外側へ突出している。
このような固定具は、形状が簡易である。しかも、踏板の端部が、固定具に対向配置されることはないため、固定具と踏板の端部との間に空隙が生じることはない。従って、この空隙を目隠しするための被覆部材は不要である。即ち、固定具を構成する部品点数が少ない。従って、固定具は生産性が高い。
【0053】
以下では、桁板に関し、固定具の一側面部がビス留めされる一面を、ビス面という。
桁板は、建築物の上段と下段(例えば2階と1階)との間にて、長手方向が所定の角度で傾斜し、且つビス面が縦姿勢で斜設される。
桁板が2枚である場合、2枚の桁板は、夫々のビス面が、内面同士か、又は外面同士になるよう離隔配置されることが多い。一方、桁板が1枚である場合、1枚の桁板の両面が、ビス面として用いられることが多いが、桁板と、桁板以外(例えば柱)とが組み合わせられることもある。このように、桁板の枚数及びビス面の向き等が限定されないため、階段構造の設計の自由度が高い。
【0054】
桁板のビス面には、固定具の第1及び第2の突出片が夫々嵌合すべき第1及び第2の嵌合溝が形成されている。各嵌合溝は、各突出片の厚みに対応する幅を有する。つまり、各嵌合溝は、一直線状の単純な形状であり、また、各突出片と嵌合するために必要十分な寸法を有する単純な形状であればよい。このような嵌合溝は、短時間で簡単に形成することができるため、加工の手間暇が減少する。更に、固定具を桁板に取り付けるために嵌合溝以外の凹部又は凸部等を形成する必要はないため、桁板の構成は簡易であり、形状は単純である。従って、桁板は、生産性が高い。
なお、各嵌合溝の深さは、各突出片の突出量以上であればよい。
【0055】
桁板が、例えば工場で生産される場合は、嵌合溝が高精度に形成されるため、嵌合溝に突出片を嵌め入れることによって、固定具の正確な位置決めが容易になされる。つまり、嵌合溝は、施工性の向上に寄与する。
複数枚の踏板は、夫々横姿勢で階段状に桁板に固定される。このために、一のビス面に対して、踏板の枚数に対応する個数の固定具が用いられる。また、このビス面には、複数個の固定具が備える各突出片が嵌合すべき各嵌合溝が、階段状に配設されている。
【0056】
階段構造を組み立てる作業者は、固定具の第1及び第2の突出片夫々の先端部から基端部までを、第1及び第2の嵌合溝へ嵌入する。このとき、固定具は、第1及び第2の突出片夫々が、第1及び第2の嵌合溝の内面によって2点支持されるため、例えば第1の突出片のみが嵌合溝の内面によって1点支持される場合と比べて、固定具がガタつき難い。
次に、作業者は、固定具の一側面部を、桁板のビス面にビス留めする。この結果、固定具は、各突出片が各嵌合溝に嵌合した状態で、桁板に取り付けられる。このようにして桁板に取り付けられた固定具は、例えば特許文献2,4に記載されているようなビス留めのみで桁板に取り付けられている固定具に比べて、荷重に対する強度が向上されている。
【0057】
次いで、作業者は、固定具の他側面部の外面(即ち上面)と、踏板の下面とを対面させて、踏板を他側面部に載置し、更に、固定具の他側面部を、踏板の下面にビス留めする。この結果、踏板が桁板に固定される。従って、踏板を受けるための固定具と踏板を挟持するための固定具のような、複数種類の固定具が不要である。
以上のような階段構造は、建築物の上段から下段に亘って配設されている露出階段であってもよく、一部が露出階段であり、残部がボックス階段である階段の一部分であってもよい。また、上段から下段までの中途に、方向転換のための折り返し部分を有する回り階段状の階段構造であってもよい。
【0058】
第9発明にあっては、固定具の第1の突出片は他側面部に沿う方向に配されており、第2の突出片は他側面部に交差する方向に配されている。
第1及び第2の嵌合溝は、桁板のビス面にのみ開口している。換言すれば、各嵌合溝は、桁板の側端面には開口していない。この結果、各嵌合溝の長さは各突出片の長さに対応する必要最小限のものであればよいため、桁板の生産性が更に向上され、桁板の強度劣化が抑制され、更に、階段構造の美観が向上する。
このとき、作業者は、桁板のビス面に交差する方向へ固定具を移動させることによって、各突出片を各嵌合溝に嵌入する。
【0059】
ところで、第1の突出片は、アングルの厚みよりも長く突出している。また、第1の嵌合溝は、第1の突出片の突出量以上の深さを有していればよい。このため、第1の嵌合溝の内下面は、面積が広い。従って、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重は、ビスと第1の嵌合溝の広い内下面とが支える。
【発明の効果】
【0060】
第1発明の階段構造、第4発明又は第5発明の固定具、及び第6発明の階段構造の組立方法による場合、固定具を用いて踏板が板部材に固定されるため、踏板を板部材に嵌め込み固定するための切り欠き部を踏板に形成する必要がない。従って、踏板の強度が弱くなることはない。
また、固定具1個につき、板部材の両面を加工する必要がないため、工数が少なく、生産性が高い。
【0061】
板部材、踏板、及び固定具夫々は、例えば工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。踏板に対する固定具のビス留めは、工場ではなく階段設置場所で施工されるため、例えば2枚の板部材に踏板を固定する場合、階段設置場所に配設された2枚の板部材の離隔距離に応じて2個の固定具が離隔配置されて、踏板にビス留めされる。このため、たとえ板部材間の距離が上下方向の各位置で異なっていても、問題なく踏板を板部材に固定することができる。
また、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じた場合であっても、この空隙を被覆部材で目隠しすることができる。従って、階段構造の美観を向上させることができる。
【0062】
更に、踏板が板部材に嵌め込み固定されないため、踏板と板部材との干渉は生じない。この結果、使用者が目測した踏板の上面の面積と、実際の面積とが感覚的に略一致し、足場が広いという印象を使用者が受ける。
更にまた、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスと挿入穴の内下面とで支えることができるため、安定して荷重を支持することができる。
また、本発明の階段構造は、特許文献5,7に記載されているような複雑な構成の桁板を必要とする露出階段に比べて、板部材の構成が簡単である。
以上の結果、本発明の階段構造は、生産性及び施工性を向上させることができる。
【0063】
第2発明の階段構造による場合、固定具の強度を向上させることができ、しかも、固定具の突出部を板部材の挿入穴に挿入した場合に、固定具のガタつきを抑制することができる。
また、板部材の側端面に開口が存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
しかも、広い面積で荷重を受けることができるため、荷重に対する強度を更に向上させることができる。
【0064】
第3発明の階段構造及び第7発明の階段構造の組立方法による場合、板部材を建築物に取り付けるためのビス留め位置を、挿入穴を利用して位置決めすることができるため、板部材の取り付け手順を簡易にすることができる。
また、板部材を建築物に取り付けているビスが、使用者が容易に視認可能な位置には存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
【0065】
第8発明の階段構造、第10発明又は第11発明の固定具、及び第12発明の階段構造の組立方法による場合、固定具を用いて踏板が桁板に固定されるため、踏板を桁板に嵌め込み固定するための切り欠き部を踏板に形成する必要がない。従って、踏板の強度が弱くなることはない。
また、固定具1個につき、桁板の両面を加工する必要がないため、工数が少なく、生産性が高い。
しかも、固定具の各突出片を桁板の各嵌合溝に嵌入させた場合に、固定具のガタつきを抑制することができる。
【0066】
桁板、踏板、及び固定具夫々は、例えば工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。踏板に対する固定具のビス留めは、工場ではなく階段設置場所で施工されるため、例えば2枚の桁板に踏板を固定する場合、階段設置場所に配設された2枚の桁板の離隔距離に応じて2個の固定具が離隔配置されて、踏板にビス留めされる。このため、たとえ桁板間の距離が上下方向の各位置で異なっていても、問題なく踏板を桁板に固定することができる。
また、固定具の一側面部と、踏板の対向端部との間に空隙が生じることはないため、階段構造の美観を向上させることができる。
【0067】
更に、固定具が踏板の下側に配され、しかも、踏板が桁板に嵌め込み固定されないため、踏板と桁板との干渉は生じない。この結果、使用者が目測した踏板の上面の面積と、実際の面積とが感覚的に一致し、足場が広いという印象を使用者が受ける。
【0068】
更にまた、踏板に加えられて固定具に伝達された荷重を、ビスと各嵌合溝の内下面とで支えることができるため、安定して荷重を支持することができる。
また、本発明の階段構造は、特許文献3に記載されているような2種類の固定具を必要とする露出階段に比べて部品点数が少なく、特許文献5,7に記載されているような複雑な構成の桁板を必要とする露出階段に比べて、桁板の構成が簡単である。
以上の結果、本発明の階段構造は、生産性及び施工性を向上させることができる。
【0069】
第9発明の階段構造による場合、桁板の側端面に開口が存在しないため、階段構造の美観を更に向上させることができる。
しかも、広い面積で荷重を受けることができるため、荷重に対する強度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る階段構造の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る一の固定具の鉛直面部と、踏板の一端部とが対向配置される部分の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る一の固定具の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る階段構造の組立方法の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る一の固定具の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る更に他の固定具の構成を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る階段構造の構成を示す縦断面図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る固定具の構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る階段構造の組立方法の説明図である。
【図18】本発明の実施の形態4に係る階段構造の構成を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態5に係る固定具の構成を示す斜視図である。
【図20】従来の露出階段の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0072】
実施の形態 1.
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る階段構造S1の構成を示す斜視図及び縦断面図である。ただし、図2には、図1におけるII−II線の断面図が示されている。また、図1及び図2には、側板11,12の間に、2枚の踏板10,10が、夫々横姿勢で階段状に固定されている状態が示されている。
図3は、本発明の実施の形態1に係る一の固定具2の後述する鉛直面部21(図4参照)と、踏板10の一端部(対向端部)10cとが対向配置される部分の構成を示す正面図である。図3には、建築物の壁W、後述する石膏ボードP1,P2(図1参照)、及び側板11の縦断面図として、挿入穴51の形成位置における縦断面図が含まれている。
【0073】
図4は、固定具2,2の構成を示す斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る階段構造S1の組立方法の説明図である。ただし、図5には、側板11の壁Wに対する取り付け、固定具本体20の側板11に対する取り付け、踏板10の固定具本体20に対する取り付け、及び、被覆部材31の固定具本体20に対する取り付けが説明されている。
【0074】
階段構造S1は、例えば2階建ての建築物の屋内に設置され、いわゆる露出型直階段を構成する(図1参照)。階段構造S1の使用者は、階段構造S1を昇降することによって、1階の水平な床面Fと、2階の図示しない床面との間を行き来する。階段構造S1は、所定の階段設置位置に、床面Fに対して所定の傾斜角度を有するように設置される。
ここで、建築物の2階及び1階は、本発明の実施の形態における建築物の上段及び下段として機能する。
【0075】
この建築物は、1階と2階との間に、互いに対面する壁W,Wを有し(図1及び図3参照)、一方の壁Wには、側板11と石膏ボードP1,P2とが取り付けられ、他方の壁Wには、側板12と石膏ボードP1,P2とが取り付けられる。
石膏ボードP1,P2夫々は、遮音性及び断熱性等を有する板材であり、壁Wの一面を化粧する。
階段構造S1は、2枚の側板11,12と、N枚の踏板10,10,…と、{N×2}個の固定具2,2,…とを備えている。ここで、“N”はN≧2の自然数である。
【0076】
以下では、1階から2階へ上がる使用者から見て手前側、奥側、左側、及び右側を、階段構造S1の前側、後側、左側、及び右側という。つまり、壁W,Wは、左右方向に適長離隔して対向配置されている。また、側板11は左側の壁Wに取り付けられ、側板12は右側の壁Wに取り付けられる。
また、以下では、階段構造S1を組み立てるためのビスV,V,…のサイズは互いに等しいものとする。なお、例えば側板11,12を壁W,Wにビス留めするためのビスV,V,…夫々と、固定具2を側板11,12にビス留めするためのビスV,V,…夫々と、踏板10を固定具2にビス留めするためのビスV,V,…夫々とは、互いにサイズが異なっていてもよい。
【0077】
まず、図1〜図3及び図5を参照しつつ、踏板10について説明する。
各踏板10は、上面10a及び下面10bを有する矩形板状になしてあり、木材又は木質材を用いてなる。上面10a及び下面10b夫々は、水平に配される。
なお、上面10aに、滑り止めが設けられていてもよい。また、下面10bに、2個の位置決め凹部が形成されていてもよい。各位置決め凹部の寸法及び形状は、後述する水平面部22(図4参照)の寸法及び形状に略等しく、2個の位置決め凹部に水平面部22,22を嵌め込むことによって、水平面部22,22が正確に位置決めされるように配置されている。
更に、踏板10は、木材又は木質材に限定されず、例えばアルミニウム又はガラス等を用いてなる構成でもよい。
【0078】
次に、図1〜図3、及び図5を参照しつつ、側板11,12について説明する。側板12の構成は、側板11の鏡像の構成に相当するため、以下では主に側板11について説明する。
側板11は、本発明の実施の形態における板部材に相当し、木材又は木質材を用いてなる。側板11は、縦横比が大きい長方形の長手方向両端部を切断して台形にしたような形状を有する。
側板11の2つの短辺部の内、一方の端面は、床面Fに沿って配される。
【0079】
側板11の2つの長辺部の内、長い方は上向きに配され、短い方は下向きに配される。以下では、上向き(又は下向き)に配されている長辺部を上辺部(又は下辺部)という。
側板11の下側に配される短辺部と、上辺部とがなす角度は、階段構造S1の傾斜角度に等しい。
側板11の一面は、ビス面11aとして用いられる。このために、ビス面11aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置されたN個の挿入穴51,51,…が形成されている。
【0080】
挿入穴51,51,…は、互いに同一形状の矩形状になしてある。
各挿入穴51において、内上面及び内下面夫々は水平面であり、内前面、内後面、及び内奥面51a夫々は鉛直面である。
このような挿入穴51は、ビス面11aにのみ開口しており、側板11の他面(例えば側板11の上辺部及び下辺部夫々の端面。以下、即ち、側板11の側端面)には開口していない。
【0081】
また、挿入穴51の深さは、固定具2の突出部23(図4参照)の突出量に略等しい。更に詳細には、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量よりも僅かに(例えば、約1mm)長い。何故ならば、挿入穴51の深さが突出部23の突出量以下であると、突出部23を先端部から基端部まで完全に挿入穴51に挿入することができないか、挿入が困難だからである。ここで、突出部23の突出量は、固定具2の固定具本体20の厚みよりも十分に長い。
【0082】
更に、挿入穴51の内奥面51aの面積は、突出部23の側板11に対する投影面積よりも広い。何故ならば、階段構造S1は、側板11が、挿入穴51の内奥面51aにて壁Wにビス留めされていることが特徴のひとつだからである。このとき、挿入穴51毎に、2本のビスV,Vが、前後方向に離隔配置される。
【0083】
更に詳細には、挿入穴51の前後方向の内法は、突出部23の前後方向の長さ(以下、奥行きという)に比べて僅かに長い。何故ならば、挿入穴51の前後方向の内法が突出部23の奥行き以下であると、突出部23を挿入穴51に完全に挿入することができないか、挿入が困難だからである。また、挿入穴51の前後方向の内法が突出部23の奥行きよりも過剰に長くても、無駄であるばかりか、突出部23の前後方向の位置決めが困難になり、しかも、側板11の強度が低下するからである。ここで、突出部23の奥行きは、2個のビスV,V夫々のビス頭の外径と、ビスV,Vの離隔距離との和よりも十分に長い。
【0084】
更に、挿入穴51の上下方向の内法は、突出部23の厚みと、ビスVのビス頭の外径との和よりも十分に長い。ただし、挿入穴51の上下方向の内法は、水平面部22の厚みと、鉛直面部21の突出量との和以下である(図4参照)。
換言すれば、挿入穴51の内部において、突出部23が挿入される空間を除いた空間(即ち、突出部23が挿入されない空間)は、ビスV,Vを用いたビス留めに適したサイズを有する。更に、挿入穴51の開口は、固定具2及び踏板10に被覆されて、使用者の視界には露出し難いようにしてある。
このような挿入穴51,51,…夫々の形状及び形成位置等は、例えば板材を生産する工場で、NCルータを用いて高精度に形成することができる。
【0085】
挿入穴51が形成されている位置の側板11の板厚は十分に厚い。このため、側板11のビス留めの際に、又は階段構造S1の使用時に、側板11に印加される外力によって、側板11が損傷すること及び破壊されることが抑制される。
【0086】
一方、側板11の他面、即ちビス面11aの逆側の面(以下、側板11の裏面という)は、壁Wの一面に密着配置される。側板11の裏面の上辺部及び下辺部には、夫々石膏ボードP1,P2夫々の厚みに対応する凹部(いわゆる「しゃくり」)が形成されている。このため、側板11の縦断面は、横転凸字状をなしている。
以上のような側板11は、建築物の1階と2階との間に、ビス面11aが縦姿勢で配設される。
【0087】
側板12は、本発明の実施の形態における板部材に相当し、側板11と同様に、木材又は木質材を用いてなる。
側板12の一面は、ビス面12aとして用いられ、ビス面12aが、側板11のビス面11aに相当する。従って、ビス面12aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置されたN個の挿入穴51,51,…が形成されている。
【0088】
以上のような側板12は、建築物の1階と2階との間に、ビス面12aが縦姿勢で配設される。
このとき、側板11のビス面11aと側板12のビス面12aとは、夫々鉛直に、且つ、互いに平行に対面配置される。即ち、階段構造S1のビス面11a,12aは内向きである。
なお、側板11,12は、木材又は木質材を用いてなる構成に限定されるものではない。
【0089】
次に、図4を参照しつつ、固定具2について説明する。
固定具2は、金属製の固定具本体20と合成樹脂製の被覆部材31とを備え、踏板10を側板11又は側板12に固定する。踏板10を側板11に固定する固定具2(即ち踏板10の左側に配される固定具2)と、踏板10を側板12に固定する固定具2(即ち踏板10の右側に配される固定具2)とは、同一の構成を有する。このため、以下では、側板11に係る固定具2を例示する。
なお、固定具本体20は金属製のものに限定されるものではなく、被覆部材31は合成樹脂製のものに限定されるものではない。
【0090】
固定具本体20は、約5mmの厚みを有するL字型のアングル状になしてあり、鉛直面部21,21と、水平面部22と、突出部23とを一体に有する。固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
鉛直面部21,21は、アングルの一側面部として機能し、鉛直に配される。水平面部22は、アングルの他側面部として機能し、水平に配される。
【0091】
水平面部22は長方形状になしてあり、長方形の一方の長辺部が水平面部22の基端部に相当する。水平面部22には、互いに適長離隔した複数個のビス孔が形成してある。このような水平面部22は、水平面部22の内面22aと踏板10の下面10bとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、踏板10にビス留めされる。水平面部22の奥行きは、踏板10の奥行きに略等しい。
【0092】
鉛直面部21,21夫々は長方形状になしてあり、水平面部22の基端部の前端部及び後端部に直角に突設されている。各鉛直面部21には、互いに適長離隔した複数個のビス孔が形成してある。このような鉛直面部21,21夫々は、鉛直面部21,21の外面と側板11のビス面11aとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、側板11にビス留めされる。側板11における鉛直面部21,21のビス留め位置は、挿入穴51の周縁部前方及び後方である。鉛直面部21,21夫々の水平面部22の内面22aからの突出量は、踏板10の板厚に略等しい。また、鉛直面部21,21夫々の厚みと水平面部22の厚みとは等しい。
【0093】
突出部23は矩形舌片状になしてあり、水平面部22の基端部の中央部から、アングルの厚みよりも長く、アングルの外側(即ちL字の外側)へ突出している。水平面部22の基端部における突出部23の突設位置は、鉛直面部21,21夫々の突設位置の中間である。突出部23の上面及び下面夫々と、水平面部22の内面22a及び外面夫々とは同一平面である。このような突出部23の厚みは、水平面部22の厚みに等しい。
【0094】
被覆部材31は、大略コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。このために、被覆部材31の厚みは適宜に薄い。
図1〜図3に示すように、被覆部材31は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10c(即ち、踏板10の鉛直面部21,21に対向配置されている端部)との間を、前後に挟むようにして上側から被覆する。
【0095】
このために、被覆部材31は、図4に示すように、鉛直面部21,21の上端面と踏板10の対向端部10cの上面10aとを覆う細長帯状の第1被覆部311と、鉛直面部21,21の前端面及び後端面と踏板10の対向端部10cの前端面及び後端面とを覆う帯状の第2被覆部312,312と、水平面部22の外面に係止する係止部313,313とを一体に有する。第2被覆部312,312は、第1被覆部311の長手方向両端部から同一方向に直角に突出しており、係止部313,313は、第2被覆部312,312の先端部から互いに向けて突出している。また、被覆部材31の左右方向の長さ(即ち帯の幅)は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間に生じ得る空隙の左右方向の長さよりも十分に長いが、水平面部22の左右方向の長さに比べれば、十分に短い。
【0096】
次に、図1〜図5を参照しつつ、階段構造S1の組立方法を説明する。
階段構造S1を組み立てる作業者は、側板11、側板12、N枚の踏板10,10,…、{N×2}個の固定具2,2,…、石膏ボードP1,P2、及び複数本のビスV,V,…を準備する。これらは、予め工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。
【0097】
まず、作業者は、側板11の裏面を左側の壁Wの一面に密着させ、側板11の一方の短辺部夫々の端面を床面Fに密着させた状態で、各挿入穴51の内奥面51aにて、側板11を壁Wにビス留めする。この結果、側板11は、建築物の1階と2階との間にて、ビス面11aが縦姿勢で配設される。このとき、床面Fに対する側板11の長手方向の傾斜角度は、階段構造S1の傾斜角度に等しくなる。
【0098】
更に、作業者は、壁Wの一面に石膏ボードP1,P2夫々を貼る。このとき、石膏ボードP1の下端部は、側板11の上辺部に形成されている凹部に嵌め入れられ、石膏ボードP2の上端部は、側板11の下辺部に形成されている凹部に嵌め入れられる。換言すれば、側板11は、石膏ボードP1,P2によって上下に挟まれた状態で壁Wにビス留め固定される。
【0099】
また、作業者は、左側の壁Wに側板11を取り付ける場合と同様にして、側板12を右側の壁Wに取り付ける。このとき、側板11のビス面11aと側板12のビス面12aとが対面する。このとき、対向配置される挿入穴51,51夫々の内下面は、床面Fからの高さが等しい。ここで、ビス面11a,12a間の離隔距離は、踏板10の長手方向の長さと、2枚の鉛直面部21,21の厚みと、2個のビスVのビス頭の厚みとの和に比べて、僅かに長い。
ところで、本実施の形態では、作業者は、壁W,Wに側板11,12を取り付けてから石膏ボードP1,P2を取り付けている(ボード後貼り)が、これに限定されず、石膏ボードP1,P2を取り付けてから側板11,12を取り付けてもよい(ボード先付け)。
【0100】
次いで、作業者は、一の固定具2の固定具本体20を、水平面部22の内面22aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具本体20の突出部23を、先端部から基端部まで側板11の挿入穴51へ挿入し、突出部23の下面を挿入穴51の内下面に載置する。
この状態で、作業者は、鉛直面部21,21夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、鉛直面部21,21を側板11にビス留めする。
このような固定具本体20の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
ところで、側板11を壁Wにビス留めしているビスV,Vは、挿入穴51の内部に配されているため、このビスV,Vが、鉛直面部21,21を側板11にビス留めするビスV,V,…に干渉することはない。
【0101】
また、作業者は、他の固定具2の固定具本体20を、水平面部22の内面22aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具本体20の突出部23を、先端部から基端部まで側板12の挿入穴51へ挿入し、突出部23の下面を挿入穴51の内下面に載置する。
この状態で、作業者は、鉛直面部21,21夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、鉛直面部21,21を側板12にビス留めする。
このような固定具本体20の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
以上の結果、左右2個の固定具本体20,20の水平面部22,22は、床面Fから同一の高さに、且つ床面Fに対して平行に配される。
【0102】
次いで、作業者は、左右2個の水平面部22,22の内面22a,22a夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部22,22に載置する。
この状態で、作業者は、水平面部22,22夫々に形成されている各ビス孔にビスV,V,…を通して、水平面部22,22を踏板10にビス留めする。
【0103】
このとき、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとは密着しない。何故ならば、鉛直面部21,21の表面と対向端部10cの端面との間に、ビスV,V,…のビス頭が介在するからである。また、側板11,12夫々の反り、又は設置場所の歪み等によって、ビス面11a,12a間の離隔距離にバラつきが生じる可能性が高いからである。特に、階段構造S1の設置現場で踏板10を切り出した場合には、踏板10の左右方向の長さが多少短くなることがある。この結果、固定具本体20と踏板10との間に見苦しい空隙が生じる虞がある。
【0104】
そこで、作業者は、被覆部材31を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、被覆部材31を上方から対向端部10cに覆い被せるようにする。
【0105】
具体的には、作業者は、第2被覆部312,312を互いに離隔する方向に曲げることによって係止部313,313を離隔させた状態で、第1被覆部311を鉛直面部21,21の上端面及び対向端部10cの上面10aに覆い被せ、一方の係止部313を水平面部22の外面の前部に係止させ、他方の係止部313を水平面部22の外面の後部に係止させる。この後、弾性によって被覆部材31が元の形状に戻ると、第1被覆部311が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を上側から目隠しし、第2被覆部312,312が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側及び背面側から目隠しする。
【0106】
作業者は、踏板10の取り付け作業をN回、そして被覆部材31の取り付け作業を{N×2}回、夫々繰り返す。
【0107】
以上のような階段構造S1は、組立方法が簡単であるため、短時間で安価に設置することができる。
また、従来の階段構造同様、ボックス階段に比べて、装飾性が高く、開放感を有する。更に、切り欠き部を有する踏板を、踏板支持部を有する桁板に嵌め込み固定する従来の嵌め込み型の階段構造とは異なり、左右一対の固定具2,2を用いて各踏板10を側板11,12に固定するため、嵌め込み型の階段構造に関して生じる各種の問題(切り欠き部によって踏板の強度が弱くなること、桁板の加工工数が多いこと等)が生じることはない。
【0108】
更にまた、踏板10に加えられて固定具2,2に伝達された荷重は、鉛直面部21,21をビス面11a,12aにビス留めしているビスV,V,…と、挿入穴51,51の内下面の内、突出部23,23の下面が接触している部分とで支持される。この部分は面積が広いため、安定して荷重を支持することができる。
また、側板11,12における挿入穴51,51の形成位置が正確であるため、突出部23,23を挿入穴51,51に挿入し、水平面部22,22に踏板10を載置することによって、固定具2,2に取り付けられる踏板10も正確な位置に配置される。つまり、突出部23,23及び挿入穴51,51は、踏板10の位置決めにも利用される。
【0109】
更に、挿入穴51,51がビス面11a,12a以外には開口していないため、挿入穴51,51を目立たなくして、美観を向上させることができる。また、側板11を壁Wにビス留めしているビスV,Vは、挿入穴51の内部に配されているため、このビスV,Vを目立たなくして、美観を向上させることができる。
更に、石膏ボードP1,P2夫々の表面からの側板11の突出量は、壁Wの一面からの側板11の突出量よりも、石膏ボードP1,P2の厚みの分だけ少ない。このため、使用者には、側板11の厚みが薄く見える。従って、使用者は、石膏ボードP1,P2が存在しない場合よりも、空間を広く感じる。
【0110】
なお、階段構造S1は、各1枚の側板11,12を備える構成に限定されるものではない。例えば、階段構造S1は、一方が側板11又は側板12であり、他方が壁又は柱等の躯体である構成でもよい。この場合、踏板10,10,…は、一端側が固定具2,2,…によって側板11又は側板12に固定され、他端側が従来の工法に則って(例えば、躯体に設けた切り欠きに他端側が載置されることによって)躯体に固定される。
【0111】
また、階段構造S1は、露出型直階段に限定されるものではない。例えば、階段構造S1は、一部が露出階段であり、残部が従来の構成を有するボックス階段又は雛壇階段であってもよい。或いは、階段構造S1は、中途に踊り場を有する折り返し階段若しくはかね折れ階段、又は廻り階段を構成してもよい。ただし、廻り階段を構成する踏板10,10,…は、平面形状が三角形状になしてある。この場合、踏板10,10,…は、一辺部が、廻り階段を構成する側板11又は側板12に固定され、一頂部が、例えば躯体に固定される。
【0112】
更に、側板11,12は、一方又は両方が壁W,Wを全面的に被覆する壁パネル状であってもよい。このような側板11(又は側板12)も、壁Wにビス留め固定される。壁パネル状の側板11,12は、大型であるが、略完全に建築物の壁Wと同化するため、使用者に空間を広く感じさせる、という利点がある。しかも、石膏ボードP1,P2は不要である。
また、側板11,12は、壁Wに取り付けられる構成に限定されず、建築物の柱に取り付けられる構成でもよい。
【0113】
更にまた、側板11,12は、N個の挿入穴51,51,…が形成されている構成に限定されるものではない。例えば、側板11,12は、n個の挿入穴51,51,…が形成され、{N−n}個の横溝状の挿入穴が形成されている構成でもよい。ここで、“n”は0≦n<Nの整数である。この場合、側板11,12が切削される量が減少するため、側板11,12の強度が向上する。ただし、横溝状の挿入穴には突出部23が内嵌めされ、挿入穴の内奥面にてビス留めすることはできない。
【0114】
また、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量よりも十分に長くてもよい。挿入穴51の深さが、突出部23の突出量とビスVのビス頭の厚みとの和以上であれば、挿入穴51の内部で、突出部23の先端部とビスVのビス頭とが対向配置されてもよい。しかしながら、挿入穴51が深くなる分、側板11は挿入穴51の深さよりも十分に厚い板厚を有している必要があり、また、側板11の強度が低下する。このため、挿入穴51の深さは、突出部23の突出量に略等しいことが望ましい。
【0115】
更にまた、階段構造S1は、固定具2以外の固定具を備えていてもよい。
図6、図7、及び図8は、本発明の実施の形態1に係る他の固定具201,201、固定具202,202、及び固定具2L,2Rの構成を示す斜視図である。
固定具201、固定具202、及び固定具2L,2R夫々における鉛直面部21,21、水平面部22、及び突出部23の構造は、固定具2の鉛直面部21,21、水平面部22、及び突出部23の構造と同様である。このため、側板11,12に形成される挿入穴51,51の形状及び寸法は、固定具2に係る挿入穴51,51の形状及び寸法と同じでよい。
【0116】
ただし、固定具201、固定具202、及び固定具2L,2R夫々に係る固定具本体20は、水平片24を有する。
以下では、まず、図6を参照しつつ固定具201について説明する。
踏板10の左側に配される固定具201と、踏板10の右側に配される固定具201とは、同一の構成を有する。各固定具201は、固定具本体20と、2個の被覆部材32,32とを備える。
【0117】
固定具201が備える固定具本体20は、鉛直面部21,21、水平面部22、突出部23、及び水平片24を一体に有する。このような固定具本体20も、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
【0118】
水平片24は矩形舌片状になしてあり、鉛直面部21,21の先端部から、アングルの内側(即ちL字の内側)へ、水平面部22に平行に突出している。ここで、水平面部22と水平片24との離隔距離は、踏板10の板厚に比べて、僅かに長い。また、水平片24は、鉛直面部21,21の両方に亘って配されている。更に、水平片24の左右方向の長さは、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間に生じ得る空隙の左右方向の長さよりも十分に長いが、水平面部22の左右方向の長さに比べれば、十分に短い。
【0119】
各被覆部材32は、コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。被覆部材32,32は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上下に挟むようにして正面側及び背面側から被覆する。
更に詳細には、被覆部材32は、鉛直面部21,21の前端面(又は後端面)と踏板10の対向端部10cの前端面(又は後端面)とを覆う被覆部321と、水平片24の外面及び水平面部22の外面に係止する係止部322,322とを一体に有する。係止部322,322は、被覆部321の長手方向両端部から同一方向に直角に突出している。
【0120】
固定具201の取り付けは、固定具2の取り付けと略同様である。ただし、側板11,12に固定具本体20,20を取り付けた後、作業者は、左右2個の水平面部22,22の内面22a,22a夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部22,22に載置するときに、水平面部22,22と水平片24,24との間に踏板10を挿入する。このように挿入される踏板10は、水平面部22,22と水平片24,24とに挟持されるかたちになるため、取り付け時に上下方向のガタつきが生じ難い。
また、水平片24は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を上側から目隠しする。
【0121】
そして、作業者は、被覆部材32,32を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、一の被覆部材32を前方から対向端部10cに覆い被せ、他の被覆部材32を後方から対向端部10cに覆い被せるようにする。
【0122】
具体的には、作業者は、被覆部材を変形させることによって係止部322,322を離隔させた状態で、被覆部321を鉛直面部21,21の前端面(又は後端面)及び対向端部10cの前端面(又は後端面)に覆い被せ、一方の係止部313を水平面部22の外面に係止させ、他方の係止部313を水平片24の外面に係止させる。この後、弾性によって被覆部材32が元の形状に戻ると、被覆部321が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側(又は背面側)から目隠しする。
【0123】
なお、固定具201は、被覆部材32,32に替えて、被覆部材31を備える構成でもよい。このとき、被覆部材31の左右方向の長さは、水平片24の無用な露出を防止すべく、水平片24の左右方向の長さ以上であることが望ましい。
また、使用者が背面側から階段構造S1を見る可能性が低い場合には、固定具201は、背面側の被覆部材32を備えていなくてもよい。
【0124】
次に、図7を参照しつつ、固定具202について説明する。固定具202は、固定具201と略同様の構成であるが、2個の被覆部材32,32に替えて、1個の被覆部材33を備える。
被覆部材33は、大略コ字状に形成された帯状になしてあり、弾性を有する。また、被覆部材33は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上下に挟むようにして前側から被覆する。ただし、被覆部材33は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を、上側及び正面側から目隠しし、背面側からは目隠ししない。しかしながら、背面側は人目に付き難いため、階段構造S1の美観が悪化することは抑制される。
【0125】
最後に、図8を参照しつつ、固定具2L,2Rについて説明する。
踏板10の左側に配される固定具2Lと、踏板10の右側に配される固定具2Rとは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係にある。固定具2L(又は固定具2R)は、固定具本体20と、1個の被覆部材32とを備える。
固定具2L,2R夫々が備える固定具本体20は、鉛直面部21,21、水平面部22、突出部23、水平片24、及び鉛直片25を一体に有する。このような固定具本体20も、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
【0126】
鉛直片25は、4辺部の内の3辺部が、後側の鉛直面部21、水平面部22、及び水平片24夫々の後端部に接触し、且つ、鉛直面部21,21、水平面部22、及び水平片24の全てに対して直交するよう配設されている。鉛直片25が、後側の鉛直面部21、水平面部22、及び水平片24夫々の後端部の内、少なくとも2箇所に一体に設けられている場合、鉛直片25は、固定具本体20の補強部としても機能する。
【0127】
固定具2L,2R夫々の取り付けは、左右の固定具201,201の取り付けと略同様である。ただし、側板11,12に固定具本体20,20を取り付けた後、作業者は、水平面部22,22と水平片24,24との間に踏板10を挿入するときに、踏板10の後端面が鉛直片25,25に当接するまで踏板10を押し込む。従って、踏板10の前後方向の位置決めが更に容易である。
また、鉛直片25は、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を背面側から目隠しする。
【0128】
そして、作業者は、被覆部材32を用いて、鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を被覆する。このとき、作業者は、被覆部材32を前方から対向端部10cに覆い被せるようにする。この結果、被覆部材32が鉛直面部21,21と踏板10の対向端部10cとの間を正面側から目隠しする。
なお、固定具2L,2R夫々は、被覆部材32に替えて、被覆部材31又は被覆部材33を備える構成でもよい。
【0129】
実施の形態 2.
図9、図10、図11、図12、及び図13は、本発明の実施の形態2に係る固定具61、固定具62、固定具63、固定具64、及び固定具65の構成を示す斜視図である。
固定具61〜65夫々は、実施の形態1の固定具201又は固定具202に係る固定具本体20と略同様の固定具本体20を備えるが、突出部23の形状は異なる。この場合、側板11,12の挿入穴51は、実施の形態1の挿入穴51と同一形状でよい。
【0130】
更に、固定具61〜65夫々は、実施の形態1の被覆部材31を1個か、被覆部材32を1個又は2個、或いは、被覆部材33を1個備える(図示は省略)。
踏板10の左側に配される固定具61〜65と、踏板10の右側に配される固定具61〜65とは、同一の構成を有する。
なお、各固定具本体20は、実施の形態1の鉛直片25を備えていてもよい。この場合には、左側に配置すべき固定具本体20と右側に配置すべき固定具本体20とは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係になる。
その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0131】
まず、図9及び図10を参照しつつ、固定具61,62について説明する。固定具61,62夫々の固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
図9に示す固定具61に係る突出部23は、実施の形態1の突出部23と同様の下側舌片部231と、水平片24の基端部から下側舌片部231の上方へ下側舌片部231に平行に突出している上側舌片部232とを有する。
【0132】
つまり、固定具61に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の横線状になしてある。
ここで、図6を参照すればわかるように、水平片24の基端部は、本発明の実施の形態における一側面部の外面に相当する。このため、上側舌片部232は、本発明の実施の形態における一側面部の外面に一体的に設けられている突出部として機能する。
【0133】
一方、図10に示す固定具62に係る突出部23は、第1の舌片部233と第2の舌片部234とを有する。第1の舌片部233は矩形状になしてあり、左側(又は右側)に配される固定具本体20の場合には、前側の鉛直面部21の後端部(又は後側の鉛直面部21の前端部)から、アングルの厚みよりも長く、アングルの外側へ、鉛直面部21及び水平面部22の両方に垂直に突出している。第2の舌片部234は第1の舌片部233と略同様の構成であり、左側(又は右側)に配される固定具本体20の場合には、後側の鉛直面部21の前端部(又は前側の鉛直面部21の後端部)から、第1の舌片部233に対面する側へ、第1の舌片部233に平行に突出している。
【0134】
つまり、固定具62に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の縦線状になしてある。
このような固定具61(又は固定具62)に係る突出部23は、挿入穴51へ挿入された場合に、挿入穴51の上内面及び下内面(又は前内面及び後内面)夫々に接触するため、ガタつき難いという利点を有する。
【0135】
次に、図11〜図13を参照しつつ、固定具63〜65について説明する。固定具63〜65夫々の固定具本体20は、金属を用いた成型加工によって形成される。
図11に示す固定具63に係る突出部23は、図9に示す下側舌片部231と略同様の第1舌片部分235と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分235と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具63に係る突出部23は、側面視が、上向きに開口するよう横転したコ字状になしてある。
なお、第1舌片部分235と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0136】
図12に示す固定具64に係る突出部23は、図9に示す上側舌片部232と略同様の第1舌片部分238と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分238と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具64に係る突出部23は、側面視が、下向きに開口するよう横転したコ字状になしてある。
なお、第1舌片部分238と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0137】
図13に示す固定具65に係る突出部23は、図9に示す下側舌片部231及び上側舌片部232と略同様の第1舌片部分235,238と、図10に示す第1及び第2の舌片部233,234と略同様の第2舌片部分236,237とを有する。ただし、第1舌片部分235,238と第2舌片部分236,237とは一体に設けられている。
つまり、固定具65に係る突出部23は、側面視がロ字状になしてある。
なお、第1舌片部分235,238と第2舌片部分236,237とは別体に設けられていてもよい。
【0138】
このような固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、挿入穴51へ挿入された場合に、挿入穴51の上内面、下内面、前内面、及び後内面の内、少なくとも3面夫々に接触するため、ガタつき難いという利点を有する。
【0139】
また、このような固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、互いに垂直に配されている第1舌片部分及び第2舌片部分が補強し合うため、実施の形態1の突出部23、及び、固定具61,62夫々に係る突出部23よりも強度が向上されている。従って、固定具63〜固定具65夫々に係る突出部23は、固定具本体20の強度の向上に寄与する。
以上のような固定具61〜65夫々は、実施の形態1の固定具2,201,202,2L,2Rと同様にして、階段構造S1を構成することができる。
【0140】
実施の形態 3.
図14及び図15は、本発明の実施の形態3に係る階段構造S2の構成を示す斜視図及び縦断面図である。ただし、図15には、図14におけるXV−XV線の断面図が示されている。
図16は、本発明の実施の形態3に係る固定具4L,4Rの構成を示す斜視図である。
図17は、本発明の実施の形態3に係る階段構造S2の組立方法の説明図である。ただし、図17には、固定具4Lの桁板13に対する取り付けが説明されている。
【0141】
階段構造S2は、実施の形態1の階段構造S1と同様に、例えば2階建ての建築物の屋内に設置される露出型直階段である。また、この建築物は、2階の床面を支持する躯体Bを有する(図15参照)。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
階段構造S2は、左右2枚の桁板13,14と、N枚の踏板10,10,…と、左側に配されるN個の固定具4L,4L,…及び右側に配されるN個の固定具4R,4R,…とを備え、これらは左右対称に配される。
各踏板10は、桁板13,14に、夫々横姿勢で階段状に固定される。
【0142】
桁板13は左側に、桁板14は右側に、互いに適長離隔して対向配置される。桁板14の構成は、桁板13の鏡像の構成に相当するため、以下では主に桁板13について説明する。
桁板13は、木材又は木質材を用いてなる板材であり、縦横比が大きい長方形の長手方向両端部を切断して台形にしたような形状を有する。また、桁板13の板厚は、第1及び第2の嵌合溝53,54の深さよりも厚い。
桁板13の2つの短辺部の内、一方の端面は、床面Fに沿って配され、他方の端面は、例えば躯体Bに沿って配される。
【0143】
桁板13の2つの長辺部の内、長い方は上向きに配され、短い方は下向きに配される。以下では、上向きに配されている長辺部を上辺部という。
桁板13の下側に配される短辺部と、上辺部とがなす角度は、階段構造S2の傾斜角度に等しい。
桁板13の一面は、ビス面13aとして用いられる。このために、ビス面13aには、N枚の踏板10,10,…の固定位置に対応する位置に、階段状に配置された各N本の第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…が形成されている。
【0144】
第1の嵌合溝53,53,…は、互いに同一形状の横溝状になしてあり、各第1の嵌合溝53において、内上面及び内下面夫々は水平面である。
一方、第2の嵌合溝54,54,…は、互いに同一形状の縦溝状になしてあり、各第2の嵌合溝54において、内前面及び内後面夫々は鉛直面である。
第1及び第2の嵌合溝53,54夫々は、ビス面13aにのみ開口しており、桁板13の他面(例えば桁板13の上辺部の端面)には開口していない。
【0145】
第1及び第2の嵌合溝53,54の内法は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44(図16参照)の寸法に略等しい。具体的には、第1の嵌合溝53の深さ、前後方向の内法、及び上下方向の内法(即ち溝の幅)は、固定具4Lの第1の突出片43の突出量、奥行き、及び厚みに比べて、僅かに(例えば約1mm)長い。また、第2の嵌合溝54の深さ、前後方向の内法(即ち溝の幅)、及び上下方向の内法は、固定具4Lの第1の突出片43の突出量、厚み、及び奥行きに比べて、僅かに長い。
更に、第1及び第2の嵌合溝53,54の位置関係は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44の位置関係に対応している。
【0146】
このような第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…夫々の形状及び形成位置等は、例えば板材を生産する工場で、NCルータを用いて高精度に形成することができる。また、ビス面13aの裏面に対する加工は不要であり、しかも、各第1及び第2の嵌合溝53,54は一直線状であって、開口面積が狭いため、例えば台形状、平行四辺形状、又は三角形状等の開口面積が広い凹部を形成する場合よりも、短時間で容易に形成することができる。
以上のような桁板13は、建築物の1階と2階との間に、長手方向が傾斜し、且つビス面13aが縦姿勢で斜設される。
【0147】
同様に、桁板14は、各N本の第1の嵌合溝53,53,…及び第2の嵌合溝54,54,…が形成されているビス面14aを有し、建築物の1階と2階との間に、長手方向が傾斜し、且つビス面14aが縦姿勢で斜設される。桁板14に係る第1及び第2の嵌合溝53,54の内法は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44の寸法に略等しく、桁板14に係る第1及び第2の嵌合溝53,54の位置関係は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44の位置関係に対応している。
桁板13,14のビス面13a,14aは、夫々鉛直に、且つ互いに対面する向きに平行に配置される。即ち、階段構造S2のビス面13a,14aは内向きである。
なお、桁板13,14は、木材又は木質材を用いてなる構成に限定されるものではない。
【0148】
次に、固定具4L,4Rについて説明する。固定具4L,4R夫々の形状は、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係にある。このため、以下では主に固定具4Lについて説明する。
固定具4Lは、約5mmの厚みを有するL字型のアングル状になしてあり、鉛直面部41と、水平面部42と、第1及び第2の突出片43,44とを一体に有する。固定具4Lは、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
鉛直面部41は、アングルの一側面部として機能し、鉛直に配される。水平面部42は、アングルの他側面部として機能し、水平に配される。
【0149】
水平面部42は長方形状であり、長方形の一方の長辺部が水平面部42の基端部に相当する。また、水平面部42は、長方形の四隅部に各1個(計4個)のビス孔が形成されている。このような水平面部42は、水平面部42の外面42aと踏板10の下面10bとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、踏板10にビス留めされる。
【0150】
一方、鉛直面部41は台形状であって、更に詳細には、台形の長い方の上底部分が鉛直面部41の基端部に相当し、短い方の下底部分が先端部に相当する直角台形状である。また、鉛直面部41の先端部近傍には、直角台形の直角部分に沿って直角三角形の頂点に相当する位置に配された3個のビス孔が形成されている。このような鉛直面部41は、鉛直面部41の外面と桁板14のビス面14aとが対面した状態で、ビスV,V,…を用いて、桁板14にビス留めされる。
【0151】
更に、鉛直面部41の先端部には、長方形状の第1の突出片43が一体に突設されており、鉛直面部41の外面(更に詳細には、鉛直面部41の後端部)には、長方形状の第2の突出片44が一体に突設されている。第1及び第2の突出片43,44夫々は、固定具4Lの厚みよりも長く、且つ、水平面部42の短辺部の長さより短くアングルの外側(L字の外側)へ、鉛直面部41に垂直に突出している。
第1及び第2の突出片43,44は、長方形の一方の長辺部が第1及び第2の突出片43,44の基端部に相当する。また、第1及び第2の突出片43,44の厚みは、鉛直面部41の厚みに等しく、第1及び第2の突出片43,44の鉛直面部41からの突出量は、互いに略等しく、約15mmである。
【0152】
このような第1の突出片43は、水平面部42に沿う方向に(具体的には平行に)配されており、第2の突出片44は、水平面部42に交差する方向に(具体的には垂直に)配されている。
なお、固定具4Lのアングルの内側に、鉛直面部41と水平面部42とを連結して固定具4Lを補強する補強板部が設けられていてもよい。
【0153】
次に、階段構造S2の組立方法を説明する。
階段構造S2を組み立てる作業者は、桁板13,14、N枚の踏板10,10,…、各N個の固定具4L,4R、及び複数本のビスV,V,…を準備する。これらは、予め工場で生産されて、階段設置場所へ搬入される。
【0154】
作業者は、まず、桁板13,14のビス面13a,14を、互いに平行になるように対面させ、更に、桁板13(又は桁板14)の2つの短辺部夫々の端面を床面F及び躯体Bに密着させた状態で、桁板13,14夫々の上部を躯体Bにビス留めする。この結果、各桁板13,14は、建築物の1階と2階との間に、ビス面13a,14aが縦姿勢になるよう斜設される。このとき、床面Fに対する桁板13,14夫々の長手方向の傾斜角度は、階段構造S2の傾斜角度に等しくなる。更に、対向配置される第1の嵌合溝53,53夫々の内下面(又は第2の嵌合溝54,54夫々の内下端)は、床面Fからの高さが等しい。
【0155】
次いで、作業者は、固定具4Lを、水平面部42の外面42aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具4Lの第1及び第2の突出片43,44を、先端部から基端部まで桁板13の第1及び第2の嵌合溝53,54へ嵌入する。このとき、第1の突出片43の下面は第1の嵌合溝53の内下面に自然と載置され、第2の突出片44の下端は第1の嵌合溝54の内下端に自然と載置される。
この状態で、作業者は、鉛直面部41を桁板13にビス留めする。
【0156】
このとき、第1及び第2の突出片43,44は、第1の突出片43が第1の嵌合溝53の内面に接触し、第2の突出片44が第2の嵌合溝54の内面に接触するため、上下方向及び前後方向の何れの方向にもガタつき難い。従って、固定具4Lの取り付けは、施工性が向上されている。
このような固定具4Lの取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
【0157】
また、固定具4Lを桁板14に取り付ける場合と同様にして、固定具4Rを、水平面部42の外面42aが上向きになるよう配する。そして、作業者は、固定具4Rの第1及び第2の突出片43,44を、先端部から基端部まで桁板14の第1及び第2の嵌合溝53,54へ嵌合する。この状態で、作業者は、鉛直面部41を桁板14にビス留めする。
このような固定具4Rの取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
以上の結果、固定具4L,4Rの水平面部42,42は、床面Fから同一の高さに、且つ床面Fに対して平行に配される。
【0158】
次いで、作業者は、固定具4Lの水平面部42及び固定具4Rの水平面部42夫々と、踏板10の下面10bとを対面させて、踏板10を水平面部42,42に載置する。
この状態で、作業者は、水平面部42,42を踏板10にビス留めする。
このような踏板10の取り付け作業を、作業者はN回繰り返す。
なお、床面Fに直近の踏板10を桁板13,14に取り付ける場合には、作業者は、固定具4L及び固定具4Rの水平面部42,42を踏板10の下面10bにビス留めしてから、固定具4L及び固定具4Rの鉛直面部41,41を桁板13,14のビス面13a,14aにビス留めしてもよい。
【0159】
ところで、桁板13,14夫々の反り、又は設置場所の歪み等によって、ビス面13a,14a間の離隔距離にバラつきが生じる可能性が高い。この場合でも、踏板10は問題なく桁板13,14に固定される。何故ならば、踏板10には、桁板13,14又は水平面部42,42等に係合することによって踏板10の左右方向の配置を厳密に規定するような切り欠き部又は穴部等が形成されていないからである。
しかも、固定具4L,4Rと踏板10の両端部とが対向配置されないため、固定具4L,4Rと踏板10の両端部との間に見苦しい空隙が生じることがない。従って、この空隙を目隠しするための部材は不要である。
【0160】
以上のような階段構造S2は、組立方法が簡単であるため、短時間で安価に設置することができる。
また、従来の階段構造同様、ボックス階段に比べて、装飾性が高く、開放感を有する。更に、切り欠き部を有する踏板を、踏板支持部を有する桁板に嵌め込み固定する従来の嵌め込み型の階段構造とは異なり、左右一対の固定具4L,4Rを用いて各踏板10を桁板13,14に固定するため、嵌め込み型の階段構造に関して生じる各種の問題(切り欠き部によって踏板の強度が弱くなること、桁板の加工工数が多いこと等)が生じることはない。
【0161】
更に、嵌め込み型の階段構造では、桁板に踏板支持部を形成する必要があるため、例えば60mm〜75mmの範囲の厚みを有する桁板が使用される。しかしながら、階段構造S2の場合、嵌め込み型の階段構造の桁板よりも薄い桁板13,14を用いてもよい。
【0162】
更にまた、踏板10に加えられて固定具4L,4Rに伝達された荷重は、鉛直面部41,41をビス面13a,14aにビス留めしているビスV,V,…と、第1の嵌合溝53,53の内下面の内、第1の突出片43,43の下面が接触している部分とで支持される。この部分は面積が広いため、安定して荷重を支持することができる。
また、桁板13,14における第1及び第2の嵌合溝53,54の形成位置が正確であるため、固定具4L,4R夫々の第1及び第2の突出片43,44を、桁板13,14夫々の第1及び第2の嵌合溝53,54に嵌入することによって、固定具4L,4Rに載置される踏板10も正確な位置に配置される。つまり、第1及び第2の突出片43,44及び第1及び第2の嵌合溝53,54は、踏板10の位置決めにも利用される。
【0163】
更に、階段構造S2の場合、固定具4L,4Rが桁板13,14の内側に配されているため、固定具4L,4Rが目立たず、美観が向上されるという利点がある。また、第1及び第2の嵌合溝53,54がビス面13a,14a以外には開口していないため、第1及び第2の嵌合溝53,54を目立たなくして、美観を向上させることができる。
更に、固定具4L,4Rが踏板10の中央部近傍を支持し、固定具4L,4R間の距離が短いため、踏板に荷重が加えられた場合の踏板10の中央部の撓みが小さいという利点もある。
【0164】
更にまた、階段構造S2の設置場所の右側方又は左側方に近接して建築物の壁が存在していても、壁面とビス面13a,14aとの間にビス留め用の工具を配置する必要がないため、固定具4L,4Rをビス留めする作業に支障が出ないという利点もある。
なお、桁板13,14を左右逆に配置した状態(即ち、ビス面13a,14aが外向きに配される状態)で、各固定具4L,4R及び踏板10を固定する構成でもよい。この場合、固定具4L,4Rが桁板13,14の外側に配されるため、桁板13,14間にビス留め用の工具を配置する必要がない。従って、固定具4L,4Rをビス留めする作業に支障が出ないという利点がある。
【0165】
更にまた、階段構造S2は、桁板13,14に替えて、桁板13よりも厚い1枚の桁板を備える構成でもよい。この場合、1枚の桁板の両面が、ビス面13a,14aに相当するビス面として用いられる。
【0166】
なお、階段構造S2は、各1枚の桁板13,14を備える構成に限定されるものではない。例えば、階段構造S2は、一方が桁板13又は桁板14であり、他方が壁又は柱等の躯体である構成でもよい。この場合、踏板10,10,…は、一端側が固定具4L又は固定具4Rによって桁板13又は桁板14に固定され、他端側が従来の工法に則って(例えば、躯体に設けた切り欠きに他端側が載置されることによって)躯体に固定される。
【0167】
また、階段構造S2は、露出型直階段に限定されるものではない。例えば、階段構造S2は、一部が露出階段であり、残部が従来の構成を有するボックス階段又は雛壇階段であってもよい。或いは、階段構造S2は、中途に踊り場を有する折り返し階段若しくはかね折れ階段、又は廻り階段を構成してもよい。ただし、廻り階段を構成する踏板10,10,…は、平面形状が三角形状になしてある。この場合、踏板10,10,…は、一辺部が、廻り階段を構成する桁板13又は桁板14に固定され、一頂部が、例えば躯体に固定される。
【0168】
実施の形態 4.
図18は、本発明の実施の形態4に係る階段構造S3の構成を示す斜視図である。
階段構造S3は、各1枚の側板11及び桁板14と、N枚の踏板10,10,…とを備えている。図18には、側板11と桁板14と間に、2枚の踏板10,10が、夫々横姿勢で階段状に固定されている状態が示されている。
一方が側板、他方が桁板という組み合わせの場合、側板側にはL字状の固定具が取り付けられ、桁板側には逆L字状の固定具を取り付けられる。
【0169】
このため、階段構造S3は、例えば各N個の固定具2及び固定具4Rとを更に備えている。この場合、各踏板10は、左端部が固定具2によって側板11に固定され、右端部が固定具4Rによって桁板14に固定される。
その他、実施の形態1〜3に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0170】
以上のような階段構造S3は、実施の形態1〜3の階段構造S1,S2と同様の効果を奏する。
なお、階段構造S3は、各1枚の側板12及び桁板13と、N枚の踏板10,10,…と、各N個の固定具2及び固定具4Lとを備えている構成でもよい。この場合、各踏板10は、右端部が固定具2によって側板12に固定され、左端部が固定具4Lによって桁板13に固定される。
【0171】
実施の形態 5.
図19は、本発明の実施の形態5に係る固定具66の構成を示す斜視図である。
固定具66は、図9に示す固定具本体20に類似した固定具本体20を備え、更に、図6に示す被覆部材32,32に類似した被覆部材32,32を備える。
踏板10の左側に配される固定具66と、踏板10の右側に配される固定具66とは、同一の構成を有する。
その他、実施の形態1〜4に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0172】
本実施の形態の固定具本体20は、鉛直面部21,21,210と、水平面部22と、突出部23と、水平片24と、被係止突起26,26とを一体に有する。このような固定具本体20は、適宜の形状に切り出された金属平板に曲げ加工を施すことによって形成されるが、金属を用いた成型加工によって形成されてもよい。
なお、各固定具本体20は、図8に示す鉛直片25を備えていてもよい。この場合には、左側に配置すべき固定具本体20と右側に配置すべき固定具本体20とは、同一の構成ではないが、互いに鏡像の関係になる。
【0173】
鉛直面部210は、鉛直面部21,21と共に、アングルの一側面部として機能する。このような鉛直面部210は、前側の鉛直面部21の後端上部と後側の鉛直面部21の前端上部とを連結するように鉛直面部21,21間に架設されている。このため、鉛直面部21,21,210全体は、その前後方向中央部に矩形状の貫通孔が形成された1枚の矩形板状をなしている。また、突出部23は、この貫通孔の周縁部に突設されている。
【0174】
突出部23は、図9に示す下側舌片部231と同様の下側舌片部231と、図9に示す上側舌片部232に類似した上側舌片部239とを有する。つまり、固定具66に係る突出部23は、側面視が、互いに平行な2本の横線状になしてある。
【0175】
ただし、上側舌片部239は、鉛直面部210の下端部から下側舌片部231の上方へ下側舌片部231に平行に突出している。このため、下側舌片部231と上側舌片部239との離隔距離は、図9に示す下側舌片部231と上側舌片部232との離隔距離よりも短い。従って、側板11,12に形成される挿入穴51,51夫々の上下方向の寸法は、実施の形態1,2,4における挿入穴51の上下方向の寸法よりも短い必要がある。
【0176】
一の被係止突起26は、前側の鉛直面部21の前端部から前方へ突出し、他の被係止突起26は、後側の鉛直面部21の後端部から後方へ突出している。各被係止突起26は、鉛直面部21,21に沿う板状になしてあり、各被係止突起26の基端部の上部及び下部夫々には、後述する係止部323,323の爪部が係合し易いよう、上下方向の凹部が形成されている。
【0177】
各被覆部材32は、図6に示す被覆部321よりも上下方向の寸法が短い被覆部321と、図6に示す係止部322,322に類似した係止部323,323とを一体に有する。図6に示す係止部322,322は、水平片24の外面及び水平面部22の外面に係止するものであるが、本実施の形態における係止部323,323は、被係止突起26に係止するものである。このために、係止部323,323夫々の先端部には、被係止突起26の基端部に係合する爪部が、互いに向かい合う方向に突設されている。
被覆部材32が被係止突起26に取り付けられた場合、上側(又は下側)の係止部323の外面は、水平片24(又は水平面部22)の外面に面一に配される。
【0178】
以上のような固定具66は、実施の形態1の固定具2,201,202,2L,2R及び実施の形態2の固定具61〜65と同様にして、階段構造S1,S3を構成することができる。
【0179】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、階段構造S1〜S3又は固定具2,4L,4R等に、実施の形態1〜5に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0180】
10 踏板(一の物体)
11,12 側板(板部材,他の物体)
13,14 桁板(他の物体)
51 挿入穴
2,201,202,2L,2R,4L,4R,61〜66 固定具
21,41 鉛直面部(一側面部)
22,42 水平面部(他側面部)
23 突出部
235 第1舌片部分
233,234 第2舌片部分
31,32,33 被覆部材
43,44 第1及び第2の突出片
53,54 第1及び第2の嵌合溝
S1,S2,S3 階段構造
W 壁(建築物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、
該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造において、
前記固定具は、
前記他側面部が、該他側面部の内面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、
アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、
前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆している被覆部材を有し、
前記板部材は、
前記突出部が挿入されている挿入穴が、前記一面に形成されていることを特徴とする階段構造。
【請求項2】
前記突出部は、
前記他側面部に沿う方向に配されている第1舌片部分と、
前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1舌片部分に一体に設けられている第2舌片部分とを有し、
前記挿入穴は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする請求項1に記載の階段構造。
【請求項3】
前記挿入穴の内奥面は、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有し、
前記板部材は、前記内奥面にて前記建築物にビス留めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の階段構造。
【請求項4】
一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、
前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、
その内面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と、
前記一側面部と前記一の物体との間を被覆する被覆部材と
を有し、
前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項5】
前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、
前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき側板であることを特徴とする請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、
該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造の組立方法において、
前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置される端部との間を被覆する被覆部材を有する固定具を準備し、
前記板部材として、前記突出部が挿入される挿入穴が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の板部材を準備し、
該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設し、
前記突出部を、前記挿入穴へ挿入し、
前記一側面部を、前記一面にビス留めし、
前記他側面部の内面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、
前記他側面部を、前記下面にビス留めし、
前記被覆部材を用いて、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆することを特徴とする階段構造の組立方法。
【請求項7】
前記板部材として、前記挿入穴の内奥面が、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有する板部材を準備し、
該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設する場合に、前記板部材を、前記内奥面にて前記建築物にビス留めすることを特徴とする請求項6に記載の階段構造の組立方法。
【請求項8】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、
該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造において、
前記固定具は、
前記他側面部が、該他側面部の外面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、
アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、
前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられており、
前記桁板は、
前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合されている第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されていることを特徴とする階段構造。
【請求項9】
前記第1の突出片は、前記他側面部に沿う方向に配されており、
前記第2の突出片は、前記他側面部に交差する方向に配されており、
前記第1及び第2の嵌合溝は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする請求項8に記載の階段構造。
【請求項10】
一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、
前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、
その外面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と
を有し、
前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、
前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項11】
前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、
前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき桁板であることを特徴とする請求項10に記載の固定具。
【請求項12】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、
該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造の組立方法において、
前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられている固定具を準備し、
前記桁板として、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合される第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の桁板を準備し、
該桁板を、前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ前記一面が縦姿勢になるよう斜設し、
前記第1及び第2の突出片を、前記第1及び第2の嵌合溝へ嵌入し、
前記一側面部を、前記一面にビス留めし、
前記他側面部の外面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、
前記他側面部を、前記下面にビス留めすることを特徴とする階段構造の組立方法。
【請求項1】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、
該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造において、
前記固定具は、
前記他側面部が、該他側面部の内面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、
アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、
前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆している被覆部材を有し、
前記板部材は、
前記突出部が挿入されている挿入穴が、前記一面に形成されていることを特徴とする階段構造。
【請求項2】
前記突出部は、
前記他側面部に沿う方向に配されている第1舌片部分と、
前記他側面部に交差する方向に配されており、前記第1舌片部分に一体に設けられている第2舌片部分とを有し、
前記挿入穴は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする請求項1に記載の階段構造。
【請求項3】
前記挿入穴の内奥面は、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有し、
前記板部材は、前記内奥面にて前記建築物にビス留めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の階段構造。
【請求項4】
一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、
前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、
その内面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と、
前記一側面部と前記一の物体との間を被覆する被覆部材と
を有し、
前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項5】
前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、
前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき側板であることを特徴とする請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、一面が縦姿勢で配設されている1枚又は2枚の板部材と、
該板部材に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記板部材に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造の組立方法において、
前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している突出部が、前記他側面部の基端部及び/又は前記一側面部の外面に一体的に設けられており、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置される端部との間を被覆する被覆部材を有する固定具を準備し、
前記板部材として、前記突出部が挿入される挿入穴が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の板部材を準備し、
該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設し、
前記突出部を、前記挿入穴へ挿入し、
前記一側面部を、前記一面にビス留めし、
前記他側面部の内面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、
前記他側面部を、前記下面にビス留めし、
前記被覆部材を用いて、前記一側面部と前記踏板の前記一側面部に対向配置されている端部との間を被覆することを特徴とする階段構造の組立方法。
【請求項7】
前記板部材として、前記挿入穴の内奥面が、前記突出部の前記板部材に対する投影面積よりも広い面積を有する板部材を準備し、
該板部材を、前記上段と前記下段との間にて、前記一面が縦姿勢になるよう配設する場合に、前記板部材を、前記内奥面にて前記建築物にビス留めすることを特徴とする請求項6に記載の階段構造の組立方法。
【請求項8】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、
該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造において、
前記固定具は、
前記他側面部が、該他側面部の外面と前記下面とが対面した状態で、前記下面にビス留めされており、
アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、
前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられており、
前記桁板は、
前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合されている第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されていることを特徴とする階段構造。
【請求項9】
前記第1の突出片は、前記他側面部に沿う方向に配されており、
前記第2の突出片は、前記他側面部に交差する方向に配されており、
前記第1及び第2の嵌合溝は、前記一面にのみ開口していることを特徴とする請求項8に記載の階段構造。
【請求項10】
一の物体を他の物体に固定すべく、アングル状になしてある固定具において、
前記他の物体にビス留めされるアングルの一側面部と、
その外面が前記一の物体に対面した状態で該一の物体にビス留めされる前記アングルの他側面部と
を有し、
前記アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、
前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項11】
前記一の物体は、階段構造が備えるべき踏板であり、
前記他の物体は、前記階段構造が備えるべき桁板であることを特徴とする請求項10に記載の固定具。
【請求項12】
上段と下段とを有する建築物の前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ一面が縦姿勢で斜設されている1枚又は2枚の桁板と、
該桁板に、夫々横姿勢で階段状に固定されている複数枚の踏板と、
各踏板を前記桁板に固定しており、一側面部が前記一面にビス留めされており、他側面部が前記踏板の下面にビス留めされているアングル状の固定具と
を備える階段構造の組立方法において、
前記固定具として、アングルの厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第1の突出片が、前記一側面部の先端部に一体的に設けられており、前記厚みよりも長く前記アングルの外側へ突出している第2の突出片が、前記先端部以外の前記一側面部の外面に一体的に設けられている固定具を準備し、
前記桁板として、前記第1及び第2の突出片の厚みに対応する幅を有し、前記第1及び第2の突出片が嵌合される第1及び第2の嵌合溝が、前記一面に形成されている1枚又は2枚の桁板を準備し、
該桁板を、前記上段と前記下段との間にて、長手方向が傾斜し、且つ前記一面が縦姿勢になるよう斜設し、
前記第1及び第2の突出片を、前記第1及び第2の嵌合溝へ嵌入し、
前記一側面部を、前記一面にビス留めし、
前記他側面部の外面と前記下面とを対面させて、前記踏板を前記他側面部に載置し、
前記他側面部を、前記下面にビス留めすることを特徴とする階段構造の組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−140767(P2011−140767A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−747(P2010−747)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
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