説明

階段用化粧シート及びそれを用いた階段の踏み板

【課題】階段の踏み板表面にクッション性を有し、かつ角部や前面部にもクッション性を有し、表面の耐久性や意匠感も統一される階段用化粧シート及びそれを用いた階段の踏み板を提供すること。
【解決手段】階段の踏み板表面に貼り合わせて用いる階段用化粧シートにおいて、階段用化粧シートが少なくとも表面側からポリオレフィン系樹脂からなる非発泡層、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡層をこの順に有してなり、前記非発泡層の層厚が0.1〜0.5mmであり、前記発泡層の層厚が0.5〜2.0mmで発泡倍率6.0〜20.0倍であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段用の踏み板およびその表面に貼り合わせる階段用化粧シートに関し、特には屋内の階段の踏み板であって、貼り変えによりリフォーム可能とする化粧シートを貼り合せた階段の踏み板に関する。
【背景技術】
【0002】
前記階段用の踏み板は、階段を昇降する際の足への負担を軽減し、また踏み板にかかる荷重による衝撃から踏鳴り音が室内空間での騒音となるのを軽減するため、クッション材を貼り合わせること行われている。
【0003】
しかし、このような踏み板表面にクッション材を貼り合せたとしても、蹴込みの部分つまり踏み板の角部から前面部分に対して、階段を上っていくときにつま先が当たったりするときの音や痛みを軽減することはできない。
【0004】
階段の前面に別途クッション材を貼り合わせることも考えられるが、工程や部材が増えて製造時間やコストが大幅に増加するので好ましくない。またクッション材を化粧シートとして表面意匠を付与する場合、表面と前面を別にして貼り合わせると表面と前面の意匠の統一感がとれなくなったりするなどの問題もあった。
【0005】
クッション材の表面に意匠を設けた化粧シートを表面から前面に曲げて貼り合わせることも考えられるが、クッション材を曲げて貼り合わせることは困難であり、厚みを薄くして貼り合せ可能とするとクッション性が低下するかあるいは表面の耐久性が落ちるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3934592号
【特許文献2】特開2010−106550
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、階段の踏み板表面にクッション性を有し、かつ角部や前面部にもクッション性を有し、表面の耐久性や意匠感も統一される階段用化粧シート及びそれを用いた階段の踏み板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、階段の踏み板表面に貼り合わせて用いる階段用化粧シートにおいて、前記階段用化粧シートが少なくとも表面側からポリオレフィン系樹脂からなる非発泡層、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡層をこの順に有してなり、前記非発泡層の層厚が0.1〜0.5mmであり、前記発泡層の層厚が0.5〜2.0mmで発泡倍率6.0〜20.0倍であることを特徴とする階段用化粧シートである。
【0009】
またその請求項2記載の発明は、請求項1記載の階段用化粧シートを階段の踏み板の表面から角部を経て前面にまでかけて覆うように貼り合せてなることを特徴とする階段の踏み板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明はその請求項1記載の発明により、ポリオレフィン系樹脂を用い、限定された層構成と層厚と、限定された範囲の発泡倍率を有する発泡層と非発泡層により、十分なクッション性を有しつつ、表面の耐久性を有し、階段の踏み板の角部から前面にまでかけて覆うように貼り合せられる階段用化粧シートを提供することが可能となる。
【0011】
またその請求項2記載の発明により、前記の階段用化粧シート用いて階段の踏み板の表面から角部を経て前面にまでかけて覆うように貼り合せてなることで、角部や前面部にもクッション性を有して意匠感の統一も得られる階段の踏み板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の階段用化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【図2】本発明の階段の踏み板の一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の階段用化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。発泡層1と非発泡層2から階段用化粧シート3が形成されて成る。
【0014】
本発明における発泡層1としては、ポリオレフィン系樹脂からなり、層厚が0.5〜2.0mmで発泡倍率6.0〜20.0倍のものを用いる。発泡倍率はさらには7〜15倍が好適であり、これにより歩き心地、反発性がより良いものとなる。層厚は0.5mmを下回ると歩行感が感じられないものとなり、2.0mmより厚いと、歩き心地は上がるがフワフワ感があり、階段の踏み板としては不安定感が増す。またラッピングで前方まで巻き込んで貼り合わせることが困難なものとなる。
【0015】
本発明における非発泡層2としては、ポリオレフィン系樹脂からなり、層厚が0.1〜0.5mmのものを用いる。非発泡層2は、2層あるいはそれ以上の層の積層構造からなってもよく、適宜着色や印刷による絵柄模様層、表面保護層などを組み合わせても良い。厚みが0.1mmを下回ると表面耐久性に劣るものとなり、0.5mmを超えると非発泡層2と合わせてラッピングで前方まで巻き込んで貼り合わせることが困難なものとなる。
【0016】
図2に本発明の階段の踏み板の一実施例の断面の状態を示す。階段段用化粧シート3は踏み板材4の表面から角部で折り曲げて前面までを覆い、さらに前面下端から下面の一部まで回りこむようにラッピングにより貼り合せることで、角部や前面部にもクッション性を有して意匠感の統一も得られる階段の踏み板とすることが可能となる。
【0017】
階段用化粧シート3を踏み板材4の表面に貼り合わる方法としては踏み板材4の材質にもよるが、階段用化粧シート裏面側の発泡層1の裏面側及び/または踏み板材4の表面に接着剤を塗布し、ラッピング方式にて接着するのが好ましい。具体的には湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などが好適に用いられる。
【実施例1】
【0018】
<非発泡層の作成>
厚み0.070mmのポリプロピレン樹脂製着色熱可塑性樹脂シート(リケンテクノス(株)製:「RIVEST TPO」)に絵柄模様として2液ウレタン樹脂系バインダー樹脂製のグラビアインキにて木目柄を印刷し、その上に透明ポリプロピレン樹脂を厚み0.070mmで押出しラミネートし、その上にリコート層として2液ウレタン樹脂を乾燥後の塗布量が1.3g/mとなるように塗布し、最後に表面保護層として紫外線硬化型塗料を10g/m塗布し硬化させ、層厚0.15mmの非発泡層となる化粧シートを作成した。
【0019】
<発泡層の作成>
低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、メルトインデックス:3.6g/10分)100重量部に発泡剤としてアゾジカルボンアミド10重量部をヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで3分間回転させ、さらに1000rpmで3分間回転させ、ポリエチレンフォームを作成した。それを160℃のT台から押出し、架橋させた後、230℃の縦型熱風発泡機に連続的に導入し、厚み1.0mmで発泡倍率10倍の発泡層を作成した。
【0020】
<階段用化粧シートの作成>
前記非発泡層の裏面に、2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/mになるように塗工して、前記発泡層とドライラミネート方式で貼り合わせた。その後、発泡層の非発泡層を設けた面が反対側となるようにプライマーとしてシリカ粉末を含有する2液ウレタン系を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア塗工を施し、本発明の階段用化粧シートを作成した。
【0021】
<階段の踏み板の作成>
前記階段用化粧シートの裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(大日本インキ(株)製「タイフォース」)を乾燥後の塗布厚が50μmとなるように塗布し、ラッピング方式で集成材(大きさ900mm×300mm×35mm)の踏み板表面から段鼻を通り側面部にかけて貼り合せて階段用踏み板を作成した。その後、ささら板等の部材を用いて試作用階段を作成した。
【0022】
<比較例1>
発泡層として、厚み0.3mmで発泡倍率10.0倍のポリエチレンフォームを用いた以外は、実施例1と同様にして階段用化粧シートおよび階段用踏み板を作成した。
【0023】
<比較例2>
発泡層として、厚み5.0mmで発泡倍率10.0倍のポリエチレンフォームを用いた以外は、実施例1と同様にして階段用化粧を作成した。
【0024】
<比較例3>
実施例1の階段用化粧シートを用いて、階段の踏み板表面のみラッピングで貼り合せた階段用踏み板を作成した。
【0025】
<評価>
実施例1は、歩き心地もよく、段鼻部や踏み板側面部に足の指がぶつかっても痛くない。比較例1は、歩き心地は普通の踏み板と変わらず硬さが残った。比較例2は、歩き心地は良いが、発泡層が厚すぎて段鼻から側面部にかけてのラッピングが出来なかった。(シートが巻ききれなかった。)比較例3は、階段の踏み面(表面)は歩き心地は良いが、段鼻や側面部に、足の指が当った場合痛かった。試験結果を表1にまとめて示す。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の階段用化粧シートは階段の踏み板に使用可能であり、特には踏み板にかかる荷重による衝撃の緩和や、衝撃から踏鳴り音が室内空間での騒音となるのを軽減するため、落下や転倒により怪我が問題となる幼稚園や老人ホームの階段、騒音が問題となる録音スタジオなどの階段などに特に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…発泡層
2…非発泡層
3…階段用化粧シート
4…踏み板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の踏み板表面に貼り合わせて用いる階段用化粧シートにおいて、前記階段用化粧シートが、少なくとも表面側からポリオレフィン系樹脂からなる非発泡層、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡層をこの順に有してなり、前記非発泡層の層厚が0.1〜0.5mmであり、前記発泡層の層厚が0.5〜2.0mmで発泡倍率6.0〜20.0倍であることを特徴とする階段用化粧シート。
【請求項2】
請求項1記載の階段用化粧シートを階段の踏み板の表面から角部を経て前面にまでかけて覆うように貼り合せてなることを特徴とする階段の踏み板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−122199(P2012−122199A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271361(P2010−271361)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】