説明

階段用板材、これを用いた踏板、および階段構造

【課題】表面の平滑性を保ちつつ、化粧用樹脂シートの剥離を抑制することができる階段用板材、これを用いた踏板、および階段構造を提供する。
【解決手段】木質系基板からなる基材層12、該基材層に積層された木質繊維板からなる木質繊維板層13、および木質繊維板層に積層された突板からなる突板層14を少なくとも備えた木質系複合基材11と、木質系複合基材11の突板層の少なくとも表面に貼着された化粧用樹脂シート17と、を少なくとも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基板の表面に樹脂シートが貼着された板材に係り、特に、階段に用いるのに好適な階段用板材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅用等の階段は、木質系板材を用いて製造されるのが一般的である。図10は、階段の一例として示す箱型階段であり、階段90は、階段用板材で構成されている。具体的には、床面に対して一対の側板95、95は対向して立設しており、対向する側板95、95の間には、複数の踏板91、91…と、各踏板91の裏面から垂下した蹴込み板92が配置されている。
【0003】
より具体的には、図11(a)に示すように、一対の側板95の対向する内側面には、横溝95aと縦溝95bとからなる収容溝95cが形成されている。横溝95aには、各踏板91の両端部が収容されており、縦溝95bには、各蹴込み板92の両端が収容されている。さらに、収容溝95cの横溝95aには、踏板91を固定するための固定用楔96が、踏板91の裏面側に挿入されている。このような踏板91および側板95は、合板に、木目模様が印刷された化粧用樹脂シートが被覆されている。
【0004】
しかしながら、合板に化粧用樹脂シートを貼着した場合、合板の表面の凹凸に倣って、化粧用樹脂シートの表面がその凹凸を拾ってしまい、階段用板材の表面の平滑性が損なわれることがある。このような点を鑑みて、例えば、図11(b)に示すように、合板91aの表面に、MDF91bを貼着し、MDF91bの表面に、化粧用樹脂シート91cを貼着した踏板91Aが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような踏板によれば、MDF91bの表面は、合板91aの表面に比べて平滑であるため、この表面に貼着された化粧用樹脂シート91cの表面の平滑性を確保することができる。
【0006】
また、意匠性を高める化粧板として、例えば、表面に透明樹脂シートを接着した化粧単板を、木質系基板に貼着した化粧板が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、木質系基板は、合板、木質繊維板等が組み合わされた複合基材であってもよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−119984号公報
【特許文献2】特開平8−25571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の如き、階段用板材を用いて、図10に示す階段を組み立てた場合、階段用板材同士(例えば側板の収容溝近傍と踏板または蹴込み板の端部)が接触した際に、収容溝の縁部、または踏板の端部から化粧用樹脂シートが剥離し易い。
【0009】
一方、特許文献2の如き、化粧板を階段用板材に適用した場合、確かに、透明樹脂シートにより化粧単板の意匠性を高めることができるが、この技術をそのまま化粧用樹脂シートに適用できるわけではなく、化粧用樹脂シートを用いた場合の上述した問題は依然として解決されるわけではない。
【0010】
本発明は、このような点を鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、表面の平滑性を保ちつつ、化粧用樹脂シートの剥離を抑制することができる階段用板材、これを用いた踏板、および階段構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らが検討した結果、MDFのような木質繊維板に化粧用樹脂シートを貼着し、ピーリング試験(180°剥離)を実施した場合、木質繊維板の厚さ方向の引張り強度が他の木材と比べて比較的低いため、化粧用樹脂シートと木質繊維板の接着強度を高めたとしても、材破した木質繊維板が接着剤と共に化粧用樹脂シート裏面に付着し、比較的低い数値で化粧用樹脂シートが剥離するとの知見を得た。
【0012】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、第1の発明に係る階段用板材は、木質系基板からなる基材層、該基材層に積層された木質繊維板からなる木質繊維板層、および該木質繊維板層に積層された突板からなる突板層を少なくとも備えた木質系複合基材と、該木質系複合基材の突板層の少なくとも表面に貼着された化粧用樹脂シートと、を少なくとも備えることを特徴とするものである。
【0013】
一方、第2の発明に係る階段用板材は、木質系基板からなる基材層、および該基材層に積層された突板からなる突板層を少なくとも備えた木質系複合基材と、該木質系複合基材の突板層の少なくとも表面に貼着された化粧用樹脂シートと、を少なくとも備えることを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明によれば、木質系基板の凹凸のある表面に木質繊維板層が積層されているので、板材の表面をより平滑化することができる。さらに、この平滑な表面状態の木質繊維板層の表面に突板層がさらに積層されているので、木質系複合基材の突板層の表面は、平滑な表面状態を維持することができる。また、第2の発明によれば、木質系基板の凹凸のある表面に突板層が積層されているので、木質系複合基材の突板層の表面は、平滑な表面状態を維持することができる。
【0015】
このような結果、いずれの発明の場合であっても、平滑化された突板層の表面に化粧用樹脂シートが貼着されているので、化粧用樹脂シートそのものが有する意匠性(平滑性)を高めるばかりでなく、化粧用樹脂シートの密着性を高めることができる。
【0016】
また、突板層は、上述したこれまでの木質繊維板層に比べて厚さ方向の引張り強度が高いので、突板層と化粧用樹脂シートの間のピーリング強度は、従来の木質繊維板に化粧用樹脂シートを貼着したものに比べて高くなる。この結果、従来の板材に比べて、化粧用樹脂シートは、剥離し難くなる。
【0017】
さらに、第1および第2の発明に係る階段用板材の化粧用樹脂シートを故意に引き剥がそうとした場合、積層された突板層は化粧用樹脂シートに比べて剛性が高く、突板層の表面に貼着された化粧用樹脂シートは突板層に比べて可撓性が高いので、突板層と化粧用樹脂シートの間で化粧用樹脂シートの剥離が生じる。ここで、第1の発明の場合、木質繊維板層に比べて厚さ方向の引張り強度の高い突板層が木質繊維板層に貼着されているため、化粧用シートが材破する、もしくは化粧用樹脂シートがその接着界面で剥離する。
【0018】
ここで、本発明でいう「階段用板材」とは、階段を構成する板材のことをいい、踏板、側板、および蹴込み板を含むものである。「突板」とは、「木質系基板の表面よりも、平滑な表面を有した木質系の単板」のことをいう。ここで、突板は、木質系基板よりも、平滑な表面を有していれば、化粧用単板の如く、表面に必ずしも意匠性を有した単板であることは要さず、化粧用樹脂シートを貼着するための下地用の単板(下地用突板)であればよい。また、この突板層が形成される面は、踏板である場合には、少なくとも踏面、側板の場合には、階段の側面に相当する面である。さらに、「化粧用樹脂シート」とは、不透明であり、木目模様などの模様が印刷された樹脂製のシートのことをいう。
【0019】
以下、第1および第2の発明(本発明)において共通した好ましい態様を説明する。
本発明に係るより好ましい態様としては、前記突板層は、前記突板が複数枚積層された層である。この態様によれば、突板を複数枚積層することにより、化粧用樹脂シートのピーリング強度がさらに向上する。
【0020】
さらに、より好ましい階段用板材は、踏板であって、該踏板の段鼻部の表面と、前記踏板の踏面側の表面の一部とを少なくとも覆うように、一体成形された化粧用樹脂カバーが取り付けされている。
【0021】
本発明によれば、踏板の段鼻部の表面に化粧用樹脂カバーを取り付けることにより、段鼻部の表面の凹凸の影響を受けることなく、段鼻部表面の平滑性を高めることができる。さらに、該踏板の段鼻部の表面と、踏板の踏面とを少なくとも覆うように一体成形されているので、カバーの位置決めを容易に行うことができる。
【0022】
また、踏板の別の態様としては、該踏板の段鼻部の表面には、化粧用縁材が貼着されていてもよい。この態様によれば、段鼻部の表面に化粧用縁材を貼着することにより、段鼻部の表面の凹凸の影響を受けることなく、その表面の平滑性を高めることができる。このような化粧用縁材は、化粧用単板または化粧用樹脂材等、段鼻部の平滑性を高めることができる部材である。
【0023】
さらに、踏板の別の態様としては、該踏板の段鼻部の表面には、縁材が貼着されており、該段鼻部に貼着された縁材の表面には、前記化粧用樹脂シートが貼着されている。このような態様によれば、踏板の段鼻部に縁材が貼着されることにより、縁材が貼着された段鼻部の表面は平滑化されるので、段鼻部においても、化粧用樹脂シートの密着性を高めることができる。また、この縁材は、木質縁材であってもよく、樹脂製の縁材であってもよい。
【0024】
上述した如く、段鼻部表面に化粧用縁材を貼着した踏板、または、段鼻部に縁材を用いてこの表面に化粧用樹脂シートを貼着した踏板の好ましい態様としては、前記踏板の段鼻部近傍の踏面に、前記踏板の幅方向に沿って、溝部が形成されている。
【0025】
この態様によれば、溝部が前記踏板の段鼻部近傍の踏面に、前記踏板の幅方向に沿って形成されているので、段鼻部近傍の視認性を向上させることができる。さらに、より好ましい態様としては、このような溝部には、成形された樹脂材が嵌合するように配置されている。この態様によれば、溝部の形状に応じて成形された樹脂材を溝部に嵌め込むことにより、段鼻部近傍の視認性をさらに高めることができる。
【0026】
上述した、階段用板材、または踏板を用いることにより、表面が平滑性された、化粧用樹脂シートが剥がれ難い階段構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、表面の平滑性を保ちつつ、化粧用樹脂シートの剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の発明に係る第1実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式図であり、(a)は、踏板の斜視図、(b)は、(a)の側面図。
【図2】図1に示す別の態様を示した踏板の模式的側面図。
【図3】第1の発明に係る第1実施形態の変形例を示した模式的側面図であり、(a)は、図1の踏板の変形例を示した側面図、(b)は、図2に示す踏板の変形例を示した側面図。
【図4】第1の発明に係る第2実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第2実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した側面図。
【図5】第1の発明に係る第3実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図。
【図6】第2の発明に係る第1実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第1実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した図。
【図7】第2の発明に係る第1実施形態のさらなる変形例を示した模式的側面図であり、(a)は、図6(a)の踏板の変形例を示した側面図、(b)は、図6(b)に示す踏板の変形例を示した側面図。
【図8】第2の発明に係る第2実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第2実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した側面図。
【図9】第2の発明に係る第3実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図。
【図10】従来の箱型階段の模式的斜視図。
【図11】図10に示す箱型階段の詳細を説明するための図であり、(a)は、図10の箱型階段の断面を部分的に拡大した断面図、(b)は、図10に示す踏板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本実施形態に基づき第1および第2の発明を説明する。図1は、第1の発明に係る第1実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式図、(a)は、踏板の斜視図、(b)は、(a)の側面図である。踏板の幅方向に対して垂直方向の断面は一様であり、この側面図に示す構造と同の構造である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る階段用板材は、踏板10であり、踏板10は、木質系複合基材11と、化粧用樹脂シート17と、を少なくとも備えている。木質系複合基材11は、複数の木質材料が積層された構造であり、木質系基板からなる基材層12と、基材層12に積層された木質繊維板からなる木質繊維板層13と、木質繊維板層13に積層された突板からなる突板層14とを少なくとも備えた積層構造体である。
【0031】
基材層12を構成する木質系基板は、踏板10の剛性および強度を確保するための基材であり、3〜80mmの厚さを有しており、材料としては、合板、LVL、LVB、集成材、これらを任意に積層した積層板等を挙げることができる。
【0032】
木質繊維板層13を構成する木質繊維板は、木質繊維に合成樹脂等を加え板状に熱圧成型したものである。この木質繊維板は、0.5〜5.0mmの厚さを有しており、その材質としては、例えばMDF、いわゆるHDF(高密度木質繊維板)等からなる板材を挙げることができる。
【0033】
木質繊維板を基材層12に積層するにあたっては、基材層(木質系基板)12の表面、または木質繊維板の表面の少なくとも一方の表面に、接着剤を塗布し、接着剤が硬化することにより、木質系基板と木質繊維板とを接着する。接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂系、ビニル共重合樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、ゴムラテックス系、ホットメルト系、水性高分子−イソシアネート系、ユリア系樹脂系、メラミン樹脂系、またはフェノール樹脂系等の接着剤を挙げることができ、木質系基板と木質繊維板とを接着することができるのであれば、特にその種類は限定されるものではない。
【0034】
突板層14を構成する突板は、少なくとも木質系基板の表面よりも、平滑な表面を有した木質系の単板であり、化粧用樹脂シート17を貼着するための下地層である。この突板は、0.1〜3.0mmの厚さを有しており、その材質としては、例えば、ビーチ、オーク、メイプル、ケヤキ、ウォールナット、シナ、ナラ、ヤチダモ、キリ、ヒノキ、スギ、マホガニー、チーク、ローズウッドトチ、クロガキ、シオジ、ニレ、カバ、シタン、またはコクタなどを挙げることができる。
【0035】
突板を木質繊維板層13に積層するにあたっては、木質繊維板層(木質繊維板)13の表面、または突板層の表面の少なくとも一方に、上述した接着剤を塗布し、上述した接着剤が硬化することにより、木質繊維板層13の表面に突板を接着する。また、このようにして得られた木質系複合基材の踏み面側の段鼻部15近傍の縁部には、踏面10aに対して傾斜したテーパ面15bが形成されたカバー収容凹部15aが設けられている。
【0036】
また、木質系複合基材11の突板層14の少なくとも表面には、化粧用樹脂シート17が、上述した種類から選択された接着剤で貼着されている。化粧用樹脂シート17は、不透明であり、踏板10の意匠性を確保するために、木目柄や抽象柄などが印刷された樹脂製のシートである。また、化粧用樹脂シート17は、0.05〜1.0mmの厚みを有しており、その材質としては、オレフィン系の樹脂シート、塩化ビニル系などの樹脂シートを挙げることができる。
【0037】
また、化粧用樹脂シート17の段鼻部側の端部17aは、カバー収容凹部15aのテーパ面15bにまで貼着されており、これにより、後述する化粧用樹脂カバー18を取り付けたときに、化粧用樹脂シート17の端部17aは、踏板10に入り込む(露出しないので)ので、端部17aにおいてシートが剥がれ難くなる。
【0038】
さらに、化粧用樹脂カバー18は、踏板10の段鼻部15を化粧するための部材であり、0.5〜5.0mmの厚みを有しており、その材質として、ABS、エラストマー、または塩化ビニル等を挙げることができる。
【0039】
このような、化粧用樹脂カバー18は、踏板10の段鼻部15の表面と、踏板10の踏面10a側の表面の一部(具体的にはカバー収容凹部15aの表面15c)と、踏板10の裏面の一部と、を覆うように、断面コの字状に一体成形された樹脂製のチャンネル状の形状をしており、上述した接着剤を用いて木質系複合基材11の表面に接着することにより、木質系複合基材11に取り付けられている。また、化粧用樹脂カバー18が、カバー収容凹部15aに収容された状態で、化粧用樹脂カバー18と、化粧用樹脂シート17とは、段差なく面一になっている。
【0040】
このように、踏板10の段鼻部15の表面に化粧用樹脂カバー18を取り付けることにより、段鼻部15の表面の凹凸の影響を受けることなく、段鼻部15の表面の意匠性ないし表面平滑性を高めることができる。さらに、踏板10の段鼻部15の表面と、踏板10の表面の一部とを少なくとも覆うように一体成形されているので、化粧用樹脂カバー18の位置決めを容易に行うことができる。
【0041】
なお、木質系複合基材の裏面側には、意匠性を付与するために上述したのと同様の突板19aと化粧用樹脂シート19bが順次貼り付けられている。ここでは、これらを順次貼り付けているが、意匠性(表面平滑性)を保つことができるのであれば、化粧用樹脂シート19bのみであってもよく、この部分を直接塗装してもよい。
【0042】
このような踏板10によれば、基材層12の凹凸のある表面に木質繊維板層13が積層されているので、踏板10の表面をより平滑化することができる。さらに、この平滑な表面状態の木質繊維板層13の表面に突板層14がさらに積層されているので、木質系複合基材11の突板層14の表面は、平滑な表面状態を維持することができる。
【0043】
このような結果、平滑化された突板層14の表面に化粧用樹脂シート17が貼着されているので、化粧用樹脂シート17そのものが有する表面平滑性を高めるばかりでなく、化粧用樹脂シート17の密着性を高めることができる。
【0044】
また、突板層14は、木質繊維板層に比べて厚さ方向の引張り強度が高いので、突板層14と化粧用樹脂シート17の間のピーリング強度は、従来の木質繊維板に化粧用樹脂シートを貼着したものに比べて高くなる。この結果、従来の踏板に比べて、化粧用樹脂シート17は、剥離し難くなる。
【0045】
さらに、化粧用樹脂シート17を故意に引き剥がそうとした場合、木質繊維板層13には、突板層14が積層されているため、木質繊維板層13に比べて厚さ方向の引張り強度が高い突板層14は材破することなく、化粧用樹脂シート17が材破する、もしくは化粧用樹脂シート17がその接着界面で剥離する破壊形態となる。
【0046】
図2は、図1に示す別の態様を示した踏板の模式的側面図である。図3は、第1の発明に係る第1実施形態の変形例を示した模式的側面図であり、(a)は、図1の踏板の変形例を示した側面図、(b)は、図2に示す踏板の変形例を示した側面図である。
【0047】
図1に示す踏板に対して、図2に示す踏板10は、突板層の構造が相違し、図3(a)に示す踏板は、化粧用樹脂シートの構造が相違し、図3(b)に示す踏板は、化粧用樹脂カバーの構造および踏板裏面の化粧用樹脂カバー構造が相違するので、これらの相違点のみを説明し、他の部材は同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
図2に示す踏板10の突板層14Aは、突板が2枚(複数枚)積層された層であり、突板同士は、上述した種類から選択した接着剤で貼り合わされている。すなわち、この突板層14Aは、接着剤層を介して2つの突板層14a、14bからなる。ここで、この接着剤として、硬化時に、例えば、その指標として突板の硬さよりも硬い接着剤を採用することにより、1枚の突板からなる突板層に比べて、突板層の強度を高めることができる。このような結果、後述する発明者らの化粧用樹脂シートのピーリング強度の実験からも明らかなように、突板を複数枚積層することにより、踏板10のピーリング強度をさらに向上させることができる。
【0049】
上述したように、化粧用樹脂シートのピーリング強度は、これまでのものに比べて、高いので、図3(a)に示すように、化粧用樹脂シート17Aの端部17bが、踏板10の表面に露出していてもよい。さらに、図3(b)に示すように、化粧用樹脂カバー18Aは、踏板10の段鼻部15の表面と、踏板10の踏面10a側(具体的にはカバー収容凹部15aの表面)と、を覆うように、断面Lの字状に一体成形された樹脂製のチャンネル状の形状であってもよく、これにより、段鼻部15の意匠性を確保することができる。また、木質系複合基材の裏面側は、化粧用樹脂シート19bのみであってもよく、塗装のみであってもよい。
【0050】
図4は、第1の発明に係る第2実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第2実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した側面図である。図1に示す踏板に対して、図4(a)および(b)に示す踏板は、段鼻部の化粧の構造、および段鼻部近傍の踏面の構造が相違するので、この相違点のみを説明し、他の部材は同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
図4(a)に示す踏板10Aの段鼻部15の表面には、化粧用縁材18Bが貼着されている。この化粧用縁材18Bは、化粧用単板または化粧用樹脂材のいずれであってもよい。化粧用単板の場合、その材料としては、表面が意匠性を有した(例えば意匠性を有するように光沢性のある)ビーチ、オーク、メイプル、ケヤキ、ウォールナット、シナなどの材料を挙げることができる。
【0052】
一方、化粧用樹脂材の場合には、0.5〜2.0mmの厚みで成形されたABS樹脂などを挙げることができる。この踏板10Aによれば、段鼻部15の表面に化粧用縁材を貼着することにより、段鼻部15の表面の凹凸の影響を受けることなく、その表面の平滑性を高めることができる。
【0053】
また、踏板10Aの段鼻部15近傍の踏面10aには、踏板10Aの幅方向に沿って、溝部16が形成されている。ここでは、溝部16は、踏板10Aの幅方向に沿って、踏板の一方の端部から他方の端部まで形成されているが、双方の端部の一部を残すように、形成されていてもよい。このように踏板10Aには、溝部16が踏板の段鼻部15近傍の踏面10aに、踏板10Aの幅方向に沿って形成されているので、段鼻部15近傍の視認性を向上させることができる。
【0054】
この視認性をさらに向上させるべく、この溝部16の表面16aが塗装されていてもよく、この塗装に用いる塗料は、着色した塗料、着色していない塗料いずれの塗料であってもよい。
【0055】
また、図4(b)に示すように、このような態様において、図2に示す踏板と同様に、突板層は、前記突板が複数枚積層された層であってもよく、この構造において、図4(a)と同様の構造の溝部16を形成してもよい。
【0056】
さらに、図4(b)に示すように、溝部16に、成形された樹脂材16bが嵌合するように配置されていてもよく、樹脂材16bが露出する表面に凹部が形成されていてもよい。このように踏板10Aに、図4(a)と同様の溝部16を形成し、溝部16の形状に応じて成形された樹脂材16bが溝部16に嵌め込まれるので、段鼻部15近傍の視認性をさらに高めることができる。なお、段鼻部15近傍の視認性を高めることができるのであれば、樹脂材16bは、必ずしも着色されていなくてもよい。
【0057】
図5は、第1の発明に係る第3実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図である。図1に示す踏板に対して、図5に示す踏板は、段鼻部の化粧の構造が相違するので、この相違点のみを説明し、他の部材は同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
図5に示すように、踏板10Bの段鼻部15の表面には、木材または樹脂からなる縁材18Cが貼着されており、突板層14の表面、縁材18Cの表面、および踏板10Bの裏面10bの一部を覆うように、化粧用樹脂シート17Bが貼着されている。
【0059】
このような態様によれば、踏板10Bの段鼻部15に縁材18Cが貼着されることにより、縁材18Cが貼着された段鼻部15の表面は平滑化されるので、貼着された化粧用樹脂シート17Bの密着性を高めることができる。さらに、図4(b)に示す構造と同じように、踏板10Bの幅方向に沿って形成された溝部16に、成形された樹脂材16bが嵌合するように配置されていてもよい。
【0060】
図6は、第2の発明に係る第1実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第1実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した図である。図7は、第2の発明に係る第1実施形態のさらなる変形例を示した模式的側面図であり、(a)は、図6(a)の踏板の変形例を示した側面図、(b)は、図6(b)に示す踏板の変形例を示した側面図である。
【0061】
第2の発明に係る踏板は、第1の発明のものに対して木質繊維板からなる木質繊維板層を含まない構造であり、図6(a)、図6(b)、図7(a)、および図7(b)に示す踏板は、それぞれこれに対応する、図1(b)、図2、および図3(a)、(b)に示す踏板に対して木質繊維板層を含まない構造である。従って、同じ機能を有する部材には、同じ符号を付してその詳細な説明を一部省略する。
【0062】
図6(a)に示すように、本実施形態に係る踏板10Cの木質系複合基材11Aは、木質系基板からなる基材層12Aと、基材層12Aに積層された突板からなる突板層14とを少なくとも備えた積層構造体である。また、第2の発明に係る基材層を構成する木質系基板は、合板、LVL、LVB、集成材、これらを任意に積層した積層板の他に、MDF等の木質繊維板であってもよい。
【0063】
突板を基材層12に積層するにあたっては、基材層(木質系基板)12Aの表面、または突板の表面の少なくとも一方の表面に、上述した接着剤を塗布し、接着剤が硬化することにより、木質系基板と木質繊維板とを接着する。このような、踏板10Cによれば、木質系基板の凹凸のある表面に突板層14が積層されているので、木質系複合基材の突板層14の表面は、平滑な表面状態を維持することができる。
【0064】
このような結果、平滑化された突板層14の表面に化粧用樹脂シート17が貼着されているので、化粧用樹脂シート17そのものが有する意匠性ないし表面平滑性を高めるばかりでなく、化粧用樹脂シートの密着性を高めることができる。また、図6(b)に示すように、突板層14Aを、突板が2枚(複数枚)積層された層にすることにより、さらに、化粧用樹脂シート17の密着性を高めることができる。
【0065】
さらに、図7(a)に示すように、化粧用樹脂シート17Aの端部17bが、踏板10の表面に露出していてもよく、図7(b)に示すように、段鼻部15を化粧するための化粧用樹脂カバー18Aが、踏板10の段鼻部15の表面と、踏板10の踏面10a側と、を覆うように、断面Lの字状に一体成形された樹脂製のチャンネル状の形状であってもよい。
【0066】
図8は、第2の発明に係る第2実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図であり、(a)は、第2実施形態に係る踏板の側面図、(b)は、その変形例を示した側面図である。図9は、第2の発明に係る第3実施形態の階段用板材(踏板)を示した模式的側面図である。
【0067】
上述したように、第2の発明に係る踏板は、第1の発明のものに対して木質繊維板からなる木質繊維板層を含まない構造であり、図8(a)、(b)、および図9に示す踏板は、それぞれこれに対応する、図4(a)、(b)、および図5に示す第1の発明の踏板に対して木質繊維板層を含まない構造である。従って、同じ機能を有する部材には、同じ符号を付してその詳細な説明を一部省略する。
【0068】
すなわち、第2の発明においても、図8(a)に示すように、踏板10Dの段鼻部15の表面には、化粧用縁材18Bが貼着されていてもよく、さらに、踏板10Dの段鼻部15近傍の踏面10aに、踏板10Dの幅方向に沿って、溝部16が形成されていてもよい。また、図8(b)に示すように、踏板10Dの突板層14Aは、突板が複数枚積層された層(接着剤層を挟んだ突板の2層構造)であってもよく、溝部16に、一体成形された樹脂材16bが嵌合するように配置されていてもよい。
【0069】
さらに、図9に示すように、踏板10Eの段鼻部15の表面に、木質または樹脂製の縁材18Cを貼着し、段鼻部15に貼着された縁材18Cの表面に、化粧用樹脂シート17Bを貼着してもよく、溝部16に、一体成形された樹脂材16bが嵌合するように配置されていてもよい。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、1枚または2枚の突板で突板層としたが、これらの枚数には特に限定されるものではなく、3枚以上の突板で突板層を形成してもよく、これに応じて、化粧用樹脂シートのピール強度は向上すると考えられる。さらに、上述した実施形態では、踏板に関して例示したが、側板、蹴込み板に対して、同様の構造としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10、10A〜10E:踏板,10a:踏面,10b:踏板の裏面,11、11A:木質系複合基材,12、12A:基材層、13:木質繊維板層,14、14a、14b、14A:突板層,15、15A:段鼻部、15a:カバー収容凹部,15b:テーパ面,15c:カバー収容凹部の表面,16:溝部,16a:溝部の表面,16b:樹脂材,17、17A、17B:化粧用樹脂シート,17a、17b:化粧用樹脂シートの端部,18、18A:化粧用樹脂カバー,18B:化粧用縁材,18C:縁材,19a:突板,19b:化粧用樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基板からなる基材層、該基材層に積層された木質繊維板からなる木質繊維板層、および該木質繊維板層に積層された突板からなる突板層を少なくとも備えた木質系複合基材と、
該木質系複合基材の突板層の少なくとも表面に貼着された化粧用樹脂シートと、を少なくとも備えることを特徴とする階段用板材。
【請求項2】
前記突板層は、前記突板が複数枚積層された層であることを特徴とする請求項1に記載の階段用板材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面と、前記踏板の踏面側の表面の一部とを少なくとも覆うように、一体成形された化粧用樹脂カバーが取り付けられていることを特徴とする踏板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面には、化粧用縁材が貼着されていることを特徴とする踏板。
【請求項5】
請求項1または2に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面には、縁材が貼着されており、該段鼻部に貼着された縁材の表面には、前記化粧用樹脂シートが貼着されていることを特徴とする踏板。
【請求項6】
木質系基板からなる基材層、および該基材層に積層された突板からなる突板層を少なくとも備えた木質系複合基材と、
該木質系複合基材の突板層の少なくとも表面に貼着された化粧用樹脂シートと、を少なくとも備えることを特徴とする階段用板材。
【請求項7】
前記突板層は、前記突板が複数枚積層された層であることを特徴とする請求項6に記載の階段用板材。
【請求項8】
請求項6または7に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面と、前記踏板の踏面側の表面の一部とを少なくとも覆うように、一体成形された化粧用樹脂カバーが取り付けられていることを特徴とする踏板。
【請求項9】
請求項6または7に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面には、化粧用縁材が貼着されていることを特徴とする踏板。
【請求項10】
請求項6または7に記載の階段用板材が踏板であって、該踏板の段鼻部の表面には、縁材が貼着されており、該段鼻部に貼着された縁材の表面には、前記化粧用樹脂シートが貼着されていることを特徴とする踏板。
【請求項11】
前記踏板の段鼻部近傍の踏面には、前記踏板の幅方向に沿って、溝部が形成されていることを特徴とする請求項4、5、9、または10に記載の踏板。
【請求項12】
前記溝部には、成形された樹脂材が嵌合するように配置されていることを特徴とする請求項11に記載の踏板。
【請求項13】
請求項1、2、6または7に記載の階段用板材、または請求項3〜5または8〜12のいずれかに記載の踏板を備えた階段構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−122255(P2012−122255A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273924(P2010−273924)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)