説明

階段用踏部および階段

【課題】身体的な負担の低い階段を提供する。
【解決手段】例えば皮むきされた間伐材からなる踏棒20および蹴込棒23を備える。踏棒20は踏面21Aをなす上部踏棒21と上部踏棒21を支持する下部踏棒22とを含み、上部踏棒21および下部踏棒22はそれぞれの延在方向が互いに平行となるように上下に重ね合わせて配置されている。上部踏棒21は水平面Hと所定の角度(例えば−5.2度)をなす踏面21Aと、水平面Hと平行となるように形成された当接面21Dとを有する。下部踏棒22は当接面21Dと当接された当接面22Aを有する。蹴込棒23は、蹴込棒23の側面が踏棒20の端部21C側の側面と接すると共に、蹴込棒23の上面(鼻段23Aの上面)のうち踏棒20側の端部23Cが踏棒20の踏面21Aを含むトレース面Sと接するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体的な負担が軽くなるように改良された階段用踏部および階段に関する。
【背景技術】
【0002】
経済発展に伴い、鉄やコンクリートなどの工業材料が大量に供給され、これらが木材に代わって主要材料となったことから、わが国での1人当たりの木材消費量は大幅に減少している。また、外国から安価な木材が大量に流通するようになったことから、国産の木材の競争力が大幅に低下している。そのため、林業経営はここ数十年の間、悪化の一途をたどっており、高齢化による熟練技術者の減少と相まって、間伐等の手入れすら行われていない地域が多くなっている。間伐等の手入れが行われている場合であっても、間伐等により切り出された木のほとんどは山林に放置されたり、産業廃棄物として焼却処分されたりしている。
【0003】
一方で、今年、京都議定書が発効し、二酸化炭素の吸着固定能力に優れた森林の機能や、公益的機能に注目が集まってきている。そのため、地球温暖化防止等の地球環境に配慮した物作りが活発に行われている。例えば、集中豪雨や地震などにより倒れた木(倒木)や、間伐された木(間伐木)、工事などにより不要となった木(不要木)など、今まで有効利用されずにいた原木を積極的に活用しようとする技術が多数提案されている。そのような技術の1つとして、間伐材の合板を家の壁材に利用する技術が非特許文献1に開示されている。
【非特許文献1】林野庁・各種施策紹介・間伐等推進総合対策の推進について・間伐材利用コンクールの実施・「暮らしに役立つ間伐材利用」部門・間伐推進中央協議会会長賞・概要、http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h16-10gatu/kanbatu/7.htm
【0004】
また、近年、シックハウス症候群に代表される健康問題が社会問題化しており、化学物質が排出されない安心、安全な施設を求める消費者意識の高まりが顕著になっている。また、木のぬくもりや、癒しの効用が再認識されてきている。このような、生活環境に対する関心の高まりと相まって、例えば上記したような技術を利用して、公園や散策道などの屋外に設置される身近な施設を間伐材で製造することが多くなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、身近な施設を間伐材で製造する機会が増加してきているが、そのような施設の多くは高齢者や、身体障害者、女性、子供などが主に利用するような場所に設置されている。そのため、そのような施設を、高齢者や、身体障害者、女性、子供などが身体的な負担を強いられることなく利用できるように設計することが望まれている。
【0006】
そのような施設の中でも特に階段は身体的な負担を強いられるものである。そのため、従来は、階段に沿って手すりや足元照明を設けるなど、階段の周辺に工夫をする他に、蹴上げ(いわゆる段差)を低くしたり、踏面(足を乗せる部分)を広げたり、段鼻(踏面の先端部)の位置に滑り止めを設けたり、段鼻の位置をわかりやすくするために段鼻に目立つ色を付けるなど、階段そのものに工夫をしているが、さらに効果的に身体的な負担を低減する方策が望まれている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、身体的な負担の低い階段用踏部および階段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の階段用踏部は、裏面と所定の角度で対向する傾斜した踏面を備えている。この踏面は、例えば裏面と−5.2度の角度をなしている。
【0009】
本発明の階段用踏部では、裏面と所定の角度で対向する傾斜した踏面が設けられているので、これを利用して階段を構成した場合には、歩行しやすく、疲労を感じにくい。
【0010】
本発明の第1の階段は、水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面を備えている。この踏面は、段鼻が踏面の段鼻とは反対側の端部よりも低くなるように傾斜していることが好ましく、例えば水平面と−5.2度の角度をなしている。
【0011】
本発明の第1の階段では、水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面が設けられているので、歩行しやすく、疲労を感じにくい。
【0012】
本発明の第2の階段は、踏面をなす複数の踏部と、複数の蹴込部とを備えたものである。各踏部は、蹴込部を介して配置されると共に、水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面を有する。
【0013】
本発明の第2の階段では、各踏部が水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面を有するので、歩行しやすく、疲労を感じにくい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の階段用踏部ならびに第1および第2の階段によれば、傾斜した踏面を設けるようにしたので、歩行しやすく、疲労を感じにくくすることができる。これにより、身体的な負担を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る階段1の概略構成を表すものである。この階段1は、屋外または屋内で利用可能なものであり、踏面10Aをなす複数の踏板10(階段用踏部)と、複数の蹴込板11(蹴込部)とを備えている。
【0017】
踏板10は、例えば角材に製材された間伐材からなり、段鼻10B(踏面10Aの先端部)と蹴込板11との間の寸法(蹴込み寸法L)が所定の値となるように蹴込板11を介して配置されている。ここで、踏板10は、段鼻10Bの上面が踏面10Aの段鼻10Bとは反対側の端部10C(踏面10Aの後端部であって、かつ踏板10が蹴込板11に接する部分)の上面よりも高くなるように配置されている。つまり、踏面10Aが水平面Hと所定の角度をなしており、例えば水平面Hと−5.2度の傾斜角θをなしている。なお、図1では、踏面10Aを傾斜させるために、踏板10の踏面10A側の面が斜めに切り欠かれているケースが例示されている。
【0018】
ここで、蹴込み寸法Lは、0cm以上3cm以下となっていることが好ましい。また、踏面10Aの奥行きD1は、30cm以上となっていることが好ましい。なお、図示していないが、段鼻10Bの部位に滑り止めを設けるようにしてもよい。
【0019】
蹴込板11は、例えば角材に製材された間伐材からなり、例えば、蹴込板11の表面端部11Aが隣接する一の踏板10の端部10Cと接すると共に、蹴込板11の端面11Bが隣接する他の踏板10の底面10Dと接するように配置されている。つまり、蹴込板11は、隣接する段鼻10B間の高さ、すなわち蹴上げTを一定に保つために配置されている。蹴込板11は、図1に示したようにほぼ垂直(鉛直)に設けられていてもよいし、図2に示したように傾斜して設けられていてもよい。なお、図2では踏板10の踏面10Aとは反対側の底面10Dが斜めに切り欠かれているケースが例示されている。また、蹴込板11に図3に示したような傾斜面11Cを設けることにより、蹴込板11が外観からは傾斜して見えるようにしてもよい。
【0020】
ところで、踏面10Aを上記したように一定の角度で傾斜させるためには、踏板10および蹴込板11の少なくとも一方に、踏板10と蹴込板11とを接合する際に踏面10Aの角度θが自動的に決まってしまうような構造をあらかじめ作り込んでおくことが好ましい。例えば、図1に示したように、踏板10の踏面10Aをあらかじめ所定の角度で削っておき、この削られた踏面10Aを有する踏板10の端部10Cを蹴込板11に当接することにより、踏面10Aの傾斜角θを所定の角度にすることができる。また、例えば、図3に示したように、蹴込板11の表面端部11Aをあらかじめ所定の角度で切り欠いておき、その切り欠いた表面端部11Aに踏板10の端部10Cを当接することにより、踏面10Aの傾斜角θを所定の角度にすることができる。
【0021】
本実施の形態の階段1では、傾斜した踏面10Aが設けられているので、歩行しやすく、疲労を感じにくくすることができる。これにより、高齢者や、女性、子供などが身体的な負担を強いられることなく階段1を利用(昇降)することが可能となる。
【0022】
また、本実施の形態の階段1において、踏板10および蹴込板11に、踏板10と蹴込板11とを接合する際に踏面10Aの角度θが自動的に決まってしまうような構造をあらかじめ作り込んでおいた場合には、あらかじめ作り込んでおいた形状の踏板10および蹴込板11に対して防腐処理を施すことが可能となる。その結果、階段1を設置する現場で防腐効果を減殺するような穴あけ作業を行う必要がなくなるので、階段1の防腐効果を長期間に渡って持続することが可能となる。また、階段1を設置する現場で穴あけ作業を行う必要がないことから、現場で部材を組み立てるだけで階段1を製作することができ、工期を短縮することができる。
【0023】
[第2の実施の形態]
図4は本発明の第2の実施の形態に係る階段2の概略構成を表す側面図であり、図5は階段2を昇る方向から見たときの階段2の概略構成を表す正面図である。この階段2は、屋外での利用に特化したものであり、踏棒20(階段用踏部)と、蹴込棒23(蹴込部)とを備えている。
【0024】
踏棒20は、踏面21Aをなす上部踏棒21と、上部踏棒21を支持する下部踏棒22とを含んでいる。上部踏棒21および下部踏棒22は、それぞれの延在方向が互いに平行となるように上下に重ね合わせて配置されている。
【0025】
上部踏棒21は、例えば皮むきされた間伐材からなり、互いに斜めに対向するように形成された踏面21Aおよび当接面21Dを有している。この上部踏棒21は、踏面21Aのうち蹴込棒23の段鼻23A(後述)近傍の端部21B(踏面21Aの先端部)の上面が踏面21Aの端部21Bとは反対側の端部21C(踏面21Aの後端部)の上面よりも高くなるように配置されている。つまり、踏面21Aは、水平面Hと所定の角度をなしており、例えば水平面Hと−5.2度の傾斜角θをなしている。他方、当接面21Dは、水平面Hと平行となるように形成されている。つまり、踏面21Aは、当接面21Dと所定の角度をなしており、例えば当接面21Dと−5.2度の傾斜角θをなしているとも言える。なお、踏面21Aは、図6に示したように、上部踏棒21および下部踏棒22のそれぞれの半径が大きい場合であっても、それに依らずに常に一定の幅Wで形成されていることが好ましい。
【0026】
下部踏棒22は、例えば皮むきされた間伐材からなり、上部踏棒21の当接面21Dと当接された当接面22Aを有している。この下部踏棒22は、当接面22Aが水平面Hと平行となるように配置されている。
【0027】
蹴込棒23は、例えば皮むきされた間伐材からなり、例えば、蹴込棒23の側面が踏棒20の端部21B側の側面と接すると共に、蹴込棒23の上面(段鼻23A)のうち踏棒20側の端部23Dが踏棒20の踏面21Aを含むトレース面Sと接するように配置されている。つまり、蹴込棒23の上面は、実質的に、踏棒20の踏面21Aと共に踏面の一部を構成している。この蹴込棒23は、実際に屋外に設置される際には、ほぼ垂直(鉛直)に地面などの固定物に打ち込まれ、固定される。
【0028】
踏棒20および蹴込棒23はボルトなどの締付金具24によって互いに固定される。具体的には、蹴込棒23には、貫通穴部23B,23Cが蹴込棒23の上面と平行な方向に蹴込棒23を貫通して形成されており、貫通穴部23Bは蹴込棒23の上面から所定の距離(穴上寸法F)のところに形成されており、貫通穴部23Cは貫通穴部23Bの蹴込棒23の上面とは反対側(貫通穴部23Bの下側)に、貫通穴部23Bと所定の間隔(穴間寸法G)を空けて形成されている。他方、上部踏棒21には、貫通穴部23Bと対向する位置に、貫通穴部21Eが形成されており、この貫通穴部21Eは蹴込棒23の上面と平行な方向に上部踏棒21を貫通して形成されている。また、下部踏棒22には、貫通穴部23Cと対向する位置に、貫通穴部22Bが形成されており、この貫通穴部22Bは蹴込棒23の上面と平行な方向に下部踏棒22を貫通して形成されている。そして、貫通穴部23Bおよび貫通穴部21Eに締付金具24を挿通すると共に、貫通穴部23Cおよび貫通穴部22Bに締付金具24を挿通することにより、踏棒20が蹴込棒23に固定されている。なお、穴上寸法Fおよび穴間寸法Gは、図6に示したように、上部踏棒21および下部踏棒22のそれぞれの半径が大きい場合であっても、それに依らずに常に一定に形成されていることが好ましい。つまり、上部踏棒21に形成される貫通穴部21Eおよび下部踏棒22に形成される貫通穴部22Bが常に上部踏棒21および下部踏棒22の中心軸(年輪の同心円の中心軸)を貫通している必要はない。
【0029】
ところで、踏面21Aを上記したように一定の角度で傾斜させるためには、踏棒20および蹴込棒23に、踏棒20と蹴込棒23とを接合する際に踏面21Aの角度θが自動的に決まってしまうような構造をあらかじめ作り込んでおくことが好ましい。例えば、踏棒20の踏面21Aを、上部踏棒21および下部踏棒22のそれぞれの半径の大きさに依らずに常に一定の幅Wで形成し、さらに、蹴込棒23の端部23Dが踏面21Aを含むトレース面Sに接するように上部踏棒21および下部踏棒22を配置したときに、踏棒20の当接面21D,22Aが互いにほぼぴったりと当接する(正対する)ように、踏棒20の当接面21D,22Aを同一形状、同一面積で形成しておくことにより、踏面10Aの傾斜角θを所定の角度にすることができる。なお、この場合には、踏棒20の当接面21D,22Aの面積は上部踏棒21および下部踏棒22のそれぞれの半径の大きさに依って異なることになる。
【0030】
本実施の形態の階段2では、傾斜した踏面21Aが設けられているので、歩行しやすく、疲労を感じにくくすることができる。これにより、高齢者や、女性、子供などが身体的な負担を強いられることなく階段2を利用(昇降)することが可能となる。
【0031】
また、本実施の形態の階段2において、踏棒20および蹴込棒23に、踏棒20と蹴込棒23とを接合する際に踏面21Aの角度θが自動的に決まってしまうような構造をあらかじめ作り込んでおいた場合には、あらかじめ作り込んでおいた形状の踏棒20および蹴込棒23に対して防腐処理を施すことが可能となる。その結果、階段2を設置する現場で防腐効果を減殺するような穴あけ作業を行う必要がなくなるので、階段2の防腐効果を長期間に渡って持続することが可能となる。また、階段2を設置する現場で穴あけ作業を行う必要がないことから、現場で部材を組み立てるだけで階段2を製作することができ、工期を短縮することができる。
【0032】
また、本実施の形態の階段2において、踏棒20および蹴込棒23を皮むきされた間伐材で形成した場合には、原木の自然な風合いを活かすことができるので、踏棒20および蹴込棒23を角材で形成した場合と比べて、木のぬくもりをより一層感じることができ、癒しの効用もより一層期待することができる。
【0033】
[実施例]
以下、本発明の一実施例について説明する。
【0034】
踏棒20および蹴込棒23を間伐材で制作し、踏面21Aが水平面と所定の傾斜角θをなすように上部踏棒21の側面を削った。蹴上げTを20cm、踏面21Aの横幅(図4の紙面に対して垂直な方向の幅)を60cm、奥行きDを40cmとした。本実施例として踏面21Aの傾斜角θが−5.2度のものを用意し、比較例として踏面21Aの傾斜角θが0度、−1度、−3度、−7度、−9度のものをそれぞれ用意した。
【0035】
健常な62歳の男性1名の被験者に対してPCI(Physiological Cost Index:生理的コスト指数)を求める試験を行った。具体的には、階段2の昇降運動を10分間行い、メトロノームのリズムに合わせて1分間60歩で歩行し、歩行前と後の脈拍を計測し、PCIを求めた。その結果を図7に示した。
【0036】
また、上記被験者に対して筋放電量を求める試験を行った。具体的には、被験者の利き足側の外側広筋(ふともも前)、ハムストリング(ふともも後)、前脛骨筋(脹脛前)、腓腹筋(脹脛後)、中殿筋(臀部上部)および大殿筋(臀部)の計6箇所の筋肉に表面電極を貼り、表面筋電位計測方法を用いて、これらの筋繊維が活動することによって観測される電位を波形として表し、その波形を筋放電量解析した。その結果を図8に示した。なお、図8には、波形を自動的に全波整流し、波形のピークを線で繋いだものが示されている。また、踏面21Aの傾斜角θが−3度となっている場合には0度の結果とほぼ同等の結果が得られたので、その結果の掲載を省いた。同様に、踏面21Aの傾斜角θが−7度となっている場合には−9度の結果とほぼ同等の結果が得られたので、その結果の掲載も省いた。
【0037】
また、表面筋電位計測方法を用いて観測された各波形のうち前脛骨筋、腓腹筋および大殿筋についての波形を筋電図解析ソフト(BIMUTAS II(キッセイコムテック社製))を用いてFFT解析したのちMedian周波数計測をし、その結果を図9,図10に示した。図9には踏面21Aの傾斜角θが0度のときの結果を示し、図10には踏面21Aの傾斜角θが−5.2度のときの結果を示した。なお、踏面21Aの傾斜角θが−3度、−7度、−9度となっている場合には0度の結果とほぼ同等の結果が得られたので、その結果の掲載を省いた。また、図9,図10には、Median周波数に該当する箇所にMedianという文字を付した。
【0038】
さらに、健常な男性大学生9名と、40歳から60歳までの年齢幅に含まれる健常な男性12名の合計21名の被験者に対して官能検査を行い、階段2を昇ったときの結果を図11(A)に、階段2を下りたときの結果を図11(B)にそれぞれ示した。
【0039】
図7から、PCI値が最低でも0.9(拍/秒)程度となることがわかった。自然行時の健常成人のPCIの標準値は0.2から0.4(拍/秒)であることを勘案すると、階段昇降時は全体的に高い値を示していると言える。しかし、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっている場合に最も低くなることから、この場合には、他の場合よりも歩行しやすく、疲労を感じにくいと言える。
【0040】
また、図8から、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっている場合に、階段を昇降する際によく使われる外側広筋、前脛骨筋および大殿筋における筋放電量が最も小さくなるのがわかった。つまり、この結果からも、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっている場合には、他の場合よりも歩行しやすく、疲労を感じにくいと言える。
【0041】
また、図9、図10から、踏面21Aの傾斜角θが0度となっている場合には、Median周波数が時間の経過と共に最も小さくなるが、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっている場合には、Median周波数は時間の経過とはほぼ無関係にランダムに分布しているのがわかった。踏面21Aの傾斜角θが−3度、−7度、−9度となっている場合についても同様の結果が得られた。一般に、人間が疲労を感じると、Median周波数が徐々に低集波数帯へ移行すると言われており、このことから、この結果からも、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっているときは、他の場合よりも歩行しやすく、疲労を感じにくいと言える。
【0042】
また、図11(A)から、昇りでは、−7度、−9度の傾斜角θとなると歩行しにくいという意見が多いが、−1度、−3度、−5.2度では歩行しにくいという意見が30%を超えることはなかった。一方、図11(B)から、下りでは、昇りに比べて傾斜角θがある程度あった方が歩行しやすいという意見が多く、−5.2度では、非常に歩行しやすいという意見が30%にも達した。これらの意見をふまえると、この結果からも、踏面21Aの傾斜角θが−5.2度となっているときは、他の場合よりも歩行しやすく、疲労を感じにくいと言える。
【0043】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る階段の断面構成図である。
【図2】図1の一変形例に係る階段の断面構成図である。
【図3】他の変形例に係る階段の断面構成図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る階段の側面構成図である。
【図5】図4の階段の背面構成図である。
【図6】図4の一変形例に係る階段の断面構成図である。
【図7】PCIと傾斜角との関係を表す関係図である。
【図8】Median周波数と傾斜角との関係を表す関係図である。
【図9】筋肉疲労と傾斜角(0度)との関係を表す関係図である。
【図10】筋肉疲労と傾斜角(−5.2度)との関係を表す関係図である。
【図11】官能検査結果と傾斜角との関係を表す関係図である。
【符号の説明】
【0045】
1,2…階段、10…踏板、10A,21A…踏面、10B,23A…段鼻、10C,21B,21C,23D…端部、10D…底面、11…蹴込板,11A…表面端部、11B…端面、11C…傾斜面、20…踏棒、21…上部踏棒、21D,22A…当接面、21E,22B,23B,23C…貫通穴部、22…下部踏棒、23…蹴込棒、24…締付金具、D…階段の奥行き、F…穴上寸法、G…穴間寸法、H…水平面、L…蹴込み寸法、S…トレース面、T…蹴上げ、θ…踏面の傾斜角、W…踏面の幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面と所定の角度で対向する傾斜した踏面を備える
ことを特徴とする階段用踏部。
【請求項2】
前記踏面は、前記裏面と−5.2度の角度をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の階段用踏部。
【請求項3】
水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面を備える
ことを特徴とする階段。
【請求項4】
前記踏面は、水平面と−5.2度の角度をなす
ことを特徴とする請求項3に記載の階段。
【請求項5】
踏面をなす複数の踏部と、
複数の蹴込部と
を備え、
前記各踏部は、前記蹴込部を介して配置されると共に、水平面と所定の角度をなす傾斜した踏面を有する
ことを特徴とする階段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−190141(P2008−190141A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22972(P2007−22972)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年12月1日 材料技術研究協会発行の「2006年度 材料技術研究協会討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(505229195)株式会社エコム (6)
【出願人】(593232206)学校法人桐蔭学園 (33)
【Fターム(参考)】