説明

階段用養生ボードとその施工方法

【課題】 階段の踏板における奥行き寸法が異なっていても、その奥行き寸法に応じた寸法調整が可能な階段用養生ボードを提供する。
【解決手段】 階段用養生ボードは、折り目2を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板被覆ボード部1Aと蹴込板被覆ボード部1Bとを一体に設けてなる養生ボード主体1と、折り目4を介して互いに直角に折り曲げ可能な段鼻上面被覆ボード部3Aと段鼻前端面被覆ボード部3Bとを一体に設けてなる段鼻部被覆ボード3とからなり、養生ボード主体1における上記踏板被覆ボード部1Aの前後方向の幅寸法と、段鼻部被覆ボード3における上記段鼻上面被覆ボード部3Aの前後方向の幅寸法との和を、対応する階段の踏板11の奥行き寸法よりも大きくして踏板11の奥行き寸法の大小に応じて踏板11上に設置するこれらのボード部1A、3Aの重ね代を調整可能に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築中の建物において、先に工事を終えた階段が汚損したり損傷するのを防止するための階段用養生ボードとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物の建設現場においては、先に施工された階段を利用して作業者が各種の作業を行っているが、その作業中に階段が汚損されたり作業者の頻繁な昇降等によって損傷を受ける虞れがあるため、建築工事が完了するまで階段を板状物やシート状物等の養生材によって被覆、保護することが行われている。
【0003】
このような階段用養生材としては、例えば、特許文献1に記載されているように、木質繊維を主成分とした木質繊維マットを熱圧プレスしてなる一定幅と長さを有する木質繊維板の所定部分に、表面側から裏面側に突出した凹状部からなる第1折り目と、裏面側から表面側に突出した凸状部とからなる第2折り目を所定間隔を存した互いに平行に形成してなる養生材が知られている。
【0004】
そして、使用に際して、この養生材における端部を上記第1折り目からして裏面側に向かって直角に山折りすることにより、階段の踏板における段鼻部を保護する段鼻被覆部を形成し、第2折り目からく字状に谷折りすることによって階段の踏板被覆部と蹴込板板被覆部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録台3074251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、階段の踏板における奥行き寸法、即ち、踏板における段鼻部の先端と蹴込板の下端に連なる基端との間の寸法が施工現場毎に異なるため、上記のように踏板の段鼻部から踏板の踏面上を介して蹴込板に至るまで一枚の養生材によって被覆、保護しようとすると、踏板の奥行き寸法が大きい場合には踏板被覆部によって踏面全面を完全に被覆できなくなり、踏面被覆部から上方に向かって起立している蹴込板被覆部が上端から下端に向かって斜め前方弍傾斜した設置状態となって下端部が踏面側にはみ出し、階段の昇降時に足の爪先がこの蹴込板被覆部の下端に突き当たって階段を円滑に昇降することができなくなる一方、踏板の奥行き寸法が小さい場合には踏板被覆部の奥行き方向の寸法が踏板よりも大きくなって段鼻被覆部が踏板の段鼻部から前方にはみ出し、階段の昇降に危険を伴うことになる。
【0007】
従って、このような一枚物からなる養生材にあっては、奥行き寸法の異なる踏板毎にその踏板に適用できる養生材を準備しておく必要がある。また、表面硬度の高い養生材は衝撃を受けても窪み変形が生じ難いが、粉塵や切断屑等の異物が多い建築現場においては、この異物が養生材と階段の踏板との間に入り込んで養生材により踏板を保護しているにもかかわらず、養生材を踏みしめた場合に踏板表面を傷つけしてしまうといった問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、階段の踏板における奥行き寸法が現場毎に異なっても、その奥行き寸法に応じた寸法調整が可能であり、また、その下面と踏板との間に異物が入り込んでも、踏板表面を傷つけることなく、さらに、階段の昇降が円滑に行える階段用養生ボードとその施工方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の階段用養生ボードは、折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とを一体に設けてなる養生ボード主体と、折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部とを一体に設けてなる段鼻部被覆ボードとからなり、踏板の奥行き寸法の大小に応じて養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前部と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部との重ね代を調整可能に構成していることを特徴とする。
【0010】
このように構成した階段用養生ボードにおいて、請求項2に係る発明は、上記養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前後端間の幅寸法と、段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の前後端間の幅寸法との和が、対応する階段の踏板の奥行き寸法よりも大きくなるように構成していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、養生ボード主体に設けている折り目はボードの裏面側から表面側に向かって加工された凹溝からなり、段鼻部被覆ボードに設けている折り目はボードの表面側から裏面側に向かって加工された凹溝からなることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、養生ボード主体と段鼻部被覆ボードは裏面を粗面に形成している木質繊維板からなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、養生ボード主体における蹴込板被覆ボード部の表面と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の表面との少なくとも一方に、マーキングを施していることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記階段用養生ボードの施工方法であって、踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部との境界に折り目を設けてなる養生ボード主体を該折り目から互いに直角に折り曲げてその折り目を階段における踏板の後端と蹴込板の下端との連設部である入隅部に合わせることにより、踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とで踏面と蹴込板とをそれぞれ被覆させた設置状態にしてテープにより固定したのち、踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部との境界に折り目を設けてなる段鼻部被覆ボードを該折り目から互いに直角に折り曲げてその折り目を踏板の段鼻部の稜角に合わせることにより、段鼻上面被覆ボード部を上記踏板被覆ボード部の前端部に重ね合わせると共に段鼻前端面被覆ボード部によって踏板の段鼻部の前端面を被覆させた状態にしてテープにより固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とを一体に設けてなる養生ボード主体と、折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部とを一体に設けてなる段鼻部被覆ボードとからなるので、養生ボード主体を折り目から直角に折り曲げることにより、階段の踏板における踏板の踏面から蹴込板の前面にかけて簡単且つ正確に被覆させることができると共に、この養生ボード主体とは別に段鼻部被覆ボードを折り目から直角に折り曲げて階段の段鼻部を被覆することにより、養生ボード主体の設置位置を変動させることなく段鼻部に簡単且つ正確に被覆させることができる。さらに、踏板の奥行き寸法の大小に応じて養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前部と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部との重ね代を調整可能に構成しているので、養生すべき踏板の奥行き寸法に応じた養生ボードを用いる必要もなく、この養生ボード主体と段鼻部被覆ボードとの2枚のボードを使用することによって奥行き寸法の異なる踏板を確実に被覆、保護することができる。
【0016】
その上、請求項2に記載しているように、上記養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前後端間の幅寸法と、段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の前後端間の幅寸法との和が、対応する階段の踏板の奥行き寸法よりも大きくなるように構成しているので、養生ボード主体の踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とを折り目から直角に折り曲げてその折り目を踏板の後端と蹴込板の下端との連設部である入隅部に合わせることにより、踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とで踏面と蹴込板とをそれぞれ被覆させた設置状態にすることができると共に、この養生ボード主体とは別体の段鼻部被覆ボードの段鼻上面被覆ボード部と段鼻前端面被覆ボード部を折り目から直角に折り曲げてその折り目を踏板の段鼻部の稜角に合わせることにより、この段鼻部被覆ボードで段鼻部の上面から前端面に亘って正確に被覆させることができ、従って、養生すべき階段の踏板の奥行き寸法が異なっても、段鼻上面被覆ボード部を上記養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前端部に重ね合わせることができて、これらの踏板被覆ボード部と段鼻上面被覆ボード部により踏板をその前後端間に亘って正確に被覆した施工状態にすることができる。
【0017】
従って、養生ボード主体における蹴込板被覆ボード部がその上端から下端に向かって斜め前方に傾斜した状態となったり、段鼻部被覆ボードが踏板の段鼻部から前方にはみ出したりすることなく、踏板における段鼻部前端面から踏板の後端に至るまで、これらの養生ボード主体と段鼻部被覆ボードとによって正確に被覆した施工状態にすることができ、且つ、段鼻上面被覆ボード部の後端部が、踏板被覆ボード部の前端部上面に重ね合わせられて上位にあることで、スリップ止めとしての機能を備えるため階段の昇り降りに危険を伴うことなく階段を安全に昇降しながら建築作業を行うことができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、上記養生ボード主体に設けている折り目はボードの裏面側から表面側に向かって加工された凹溝からなり、段鼻部被覆ボードに設けている折り目はボードの表面側から裏面側に向かって加工された凹溝からなるので、養生ボード主体や段鼻部被覆ボードの折り曲げが現場で容易に且つ正確に行うことができるのは勿論、凹溝の溝幅を拡げる方向に折り曲げることによって折り曲げが簡単に行え、養生ボード主体や段鼻部被覆ボードの表裏面の向きを間違えることなく階段の各踏板に対する施工が能率よく行うことができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、上記養生ボード主体と段鼻部被覆ボードをその裏面が粗面に形成されている木質繊維板からなるので、踏板と養生ボード主体や段鼻部被覆ボードとの間に砂や小石、或いは粉塵や切断屑等の異物が入った状態になっても、その上を踏みしめた場合に異物が木質繊維板の粗面内に食い込んで踏板の表面が損傷するのを防止することができる。また、養生ボード主体や段鼻部被覆ボードは木質繊維板からなるので、軽量にして取り扱い易く、その上、適度な強度や硬度を有しているので、再利用が可能となって経済的である。
【0020】
さらに、請求項5に係る発明によれば、上記養生ボード主体における蹴込板被覆ボード部の表面と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の表面との少なくとも一方に、マーキングを施しているので、建物の建築現場という比較的暗い室内での階段昇降時において、踏板段鼻部の位置の視認性を高めて、つまずきや踏み外しを防止することができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、上記階段用養生ボードの施工方法であって、まず、折り目を中央にして踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とを有する養生ボード主体を上記折り目から直角に折り曲げてその折り目を階段における踏板の後端と蹴込板の下端との連設部である入隅部に合わせるので、蹴込板被覆ボード部を階段の蹴込板の前面に全面的に当接、被覆させた状態にすることができると共に、踏板被覆ボード部を蹴込板の下端から踏板のの上面に敷設した状態となるように施工することができ、この施工状態をテープにより固定したのち、踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部との境界に折り目を設けてなる段鼻部被覆ボードを該折り目から互いに直角に折り曲げてその折り目を踏板の段鼻部の稜角に合わせてこの段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部を上記踏板被覆ボード部の前端部に重ね合わせると共に段鼻前端面被覆ボード部によって踏板の段鼻部の前端面を被覆させた状態にしてテープにより固定するので、養生ボード主体と段鼻部被覆ボードとによって、階段の踏板における段鼻部から蹴込板の前面にかけて容易に且つ正確に被覆、保護することができ、また、作業終了時においては、これらの養生ボード主体と段鼻部被覆ボードとの取り外しが簡単に行えると共に再利用が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明階段用養生ボードの斜視図。
【図2】折り曲げた状態の斜視図。
【図3】施工した状態の簡略斜視図。
【図4】養生ボード主体を踏板にテープで固定した状態の斜視図。
【図5】段鼻部被覆ボードをテープで固定した状態の斜視図。
【図6】テープによる固定が完了した状態の斜視図。
【図7】奥行き寸法が最小幅の踏板に施工した状態の縦断側面図。
【図8】奥行き寸法が一般的な幅を有する踏板に施工した状態の縦断側面図。
【図9】奥行き寸法が最大幅の踏板に施工した状態の縦断側面図。
【図10】最上段に施工した状態の縦断側面図。
【図11】養生ボードにマーキングを施した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1〜図3において、階段用養生ボードは、養生ボード主体1と、段鼻部被覆ボード3との2枚一組からなり、養生ボード主体1は、その前半部を階段の踏板11の上面を被覆する踏板被覆ボード部1Aに、後半部を階段の蹴込板12の前面を被覆する蹴込板被覆ボード部1Bに形成していると共に、これらの踏板被覆ボード部1Aと蹴込板被覆ボード部1Bとの境界部分に折り目2を全幅に亘って設けてなるものである。即ち、養生ボード主体1は、この折り目2を中央にして踏板被覆ボード部1Aと蹴込板被覆ボード部1Bとを一体に設けた一枚の矩形状ボードからなり、踏板被覆ボード部1Aの後端縁と蹴込板被覆ボード部1Bの前端縁とを折り目2を介して連設した形状に形成されている。
【0024】
一方、段鼻部被覆ボード3は、その後半部を、階段における蹴込板12から前方に突出する踏板11の段鼻部13の少なくとも上面を被覆する段鼻上面被覆ボード部3Aに、前半部を、段鼻部13の前端面を被覆する段鼻前端面被覆ボード部3Bに形成していると共に、これらの段鼻上面被覆ボード部3Aと段鼻前端面被覆ボード部3Bとの境界部分に折り目4を全幅に亘って設けてなるものである。即ち、段鼻部被覆ボード3は、この折り目4を中央にして段鼻上面被覆ボード部3Aと段鼻前端面被覆ボード部3Bとを一体に設けた一枚の矩形状ボードからなり、段鼻上面被覆ボード部3Aの前端縁と段鼻前端面被覆ボード部3Bの後端縁とを折り目4を介して連設した形状に形成されている。
【0025】
さらに、階段における踏板11の前後端間の幅寸法、即ち奥行き寸法は、一般的に使用されるものとしては最も小さい(幅狭い)踏板においては200mm であり、最も大きい踏板においては290mm であって、これらのいずれの踏板に対しても上記養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3とによって被覆、保護可能にするため、踏板11の前端部上において、踏板11に施工、設置した養生ボード主体1における踏板被覆ボード部1Aの前部と、踏板11の段鼻部13に配設した段鼻部被覆ボード3における上記段鼻上面被覆ボード部3Aとを重複させるようにし、踏板11の奥行き寸法の大小に応じてその重ね代を調整可能に構成している。
【0026】
より具体的には、上記養生ボード主体1における踏板被覆ボード部1Aの前後端間の幅寸法と段鼻部被覆ボード3における段鼻上面被覆ボード部3Aの前後端間の幅寸法との和が、対応する階段の踏板11の奥行き寸法よりも大きくなるように構成している。一例として、養生ボード主体1における踏板被覆ボード部1Aの前後端間の幅寸法を、奥行き寸法が最小幅の踏板11A (図7に示す)と同一寸法に形成する一方、段鼻部被覆ボード3における段鼻上面被覆ボード部3Aの前後端間の幅寸法を、奥行き寸法が最大幅の踏板11C (図9に示す)の奥行き寸法から上記踏板被覆ボード部1Aの前後端間の幅寸法を減じた寸法と同じ幅かまたは僅かに幅広い寸法に形成されている。
【0027】
なお、養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3との前後方向に直交する階段幅方向の長さは同一寸法に形成されているが、いずれも踏板11の階段幅方向の長さよりも短く形成されていて踏板11の両側端部以外の部分を被覆、保護するように形成している。
【0028】
これらの養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3は、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、中密度繊維ボード、ハードボードなどの木質系ボードや、硬質の厚紙、或いはアクリル板や塩化ビニル樹脂板などの樹脂系ボードなどから形成することができるが、特に、木質繊維板が軽量で且つ高強度であり、リサイクル性も高くて環境にやさいしいために階段用養生ボードとして適している。
【0029】
さらに、階段用養生ボードとしての木質繊維板は、その密度が0.2 g/cm3 よりも小さいと強度が低くて作業者が階段を繰り返し昇降する際の踏みしめに耐えられなく、密度が1.0 g/cm3 を超えると硬度が高すぎて加工に適さなくなるので、密度が0.2 〜1.0 g/cm3 の木質繊維板を使用することが望ましい。なお、インシュレーションボードやハードボードは、湿式抄造で製造されるために比較的長繊維の繊維を用いており、そのため、繰り返しの折り曲げに対する耐久性が高くて、階段用養生ボードとしての使用に適している。特に、密度が0.8 g/cm3 以上のハードボードは硬度が高くて歩行時の沈み込み感が少なく、且つ、加工も容易で取扱い易いために適している。また、密度が0.35g/cm3 未満のインシュレーションボードに属するものも軽量でクッション性に富むので安全性が高く、使用時における折り曲げも容易に行うことができるため、階段用養生ボードとして適している。
【0030】
養生ボード主体1に設けている上記折り目2は、ボードの裏面側から表面側に向かって幅方向の両側端間に亘り直状に加工された凹溝からなり、段鼻部被覆ボード3に設けている上記折り目4は、ボードの表面側から裏面側に向かって幅方向の両側端間に亘り直状に加工された凹溝からなるが、これらの凹溝の断面形状はV字状であってもU字状であってもよく、さらに、ボードの厚みを貫通しない程度にスリット状に設けられた切溝であってもよい。
【0031】
また、養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3とにおける踏板11側に面した裏面は粗面状に形成されている。なお、粗面状とは平滑ではないという意味であり、網目状や全面に微細孔が設けられている面、或いは、軽微な凹凸状態に形成されている面等、限定されないが、特に、網目状の粗面に形成しておくと、踏板11との摩擦力が大きくなって養生ボードを階段の踏板11に施工した際に、まだ、テープによる固定を行っていない設置状態においてやむをえず階段を昇降しても、養生ボードが滑り難くなって安全性が高い。
【0032】
さらに、養生ボードの裏面が粗面であると、小さな石や塵埃等の異物が養生ボードの裏面と踏板表面との隙間に入り込んでも、凹凸粗面にめり込んで埋設された状態となり易く、踏板表面を傷つけ難くなる。特に、木質繊維板は、繊維に柔軟性があり、且つ、繊維と繊維との間に無数の空隙が存在しているので、異物がその繊維間の空隙に入り込んだりめり込み易くて階段用養生ボード主体として適している。また、木質繊維板は吸放湿性を有しているので、養生ボードとして採用すると階段の踏板11と養生ボードとの間に結露が生じ難く、現場における工事が長期間に亘っても階段を傷めることがない。
【0033】
また、養生ボード主体1や段鼻部被覆ボード3の表裏面の形状、性状等が異なっていると、施工時等において目視や触感で表裏面を容易に判別することができ、表裏面を間違って施工することも防止できる。なお、養生ボード主体1や段鼻部被覆ボード3の表面を平滑面に形成しておくこともできる。平滑面に形成することによって、清掃性が向上し、養生ボード表面に対する日々の掃除がし易くて現場を清潔に保ち、不用意な階段事故を減少させることができる。なお、養生ボードの表面を平滑面とするには、押圧面が平滑な熱圧プレスによって成形してもよく、粗面をサンダーによって平滑化してもよい。勿論、養生ボードの表面を粗面にしたり、細かい凹凸面に形成しておいてもよく、このように形成しておけば、この養生ボードを施工している階段の昇降時の滑りを防止することができる。
【0034】
このように構成した階段用養生ボードの施工方法を説明すると、まず、養生ボード主体1をその折り目2から直角に折り曲げて、図4に示すように、その折り目2を階段における踏板11の後端と蹴込板12の下端との連設部である入隅部に合わせて該入隅部に押し込むことにより、養生ボード主体1における踏板被覆ボード部1Aを踏板11上に敷設状態に設置すると共に蹴込板被覆ボード部1Bを蹴込板12の前面に全面的に当接させた状態にし、この状態にして踏板被覆ボード部1Aの両側端部と前端部とを踏板11に粘着テープ14A によって固定する。なお、折り目2からの養生ボード主体1の折り曲げは、その溝幅を拡がらせる方向に行われるので、簡単に屈折させることができる。
【0035】
次いで、段鼻部被覆ボード3をその折り目4から直角に折り曲げて、図5に示すように、その折り目4を踏板11の段鼻部13の上端側稜角に合わせることにより、この段鼻部被覆ボード3における段鼻上面被覆ボード部3Aを段鼻部13の前端上面から踏板11の前端部を被覆している養生ボード主体における踏板被覆ボード部1Aの前端部上面に亘って重ね合わせると共に、この段鼻前端面被覆ボード部3Bを踏板11の段鼻部13の前端面に全面的に当接させて該段鼻部13の前端面を被覆させた状態にし、この状態にして踏板被覆ボード部1A上に重ね合わせている段鼻上面被覆ボード部3Aの後端部を粘着テープ14B によって踏板被覆ボード部1Aの前端部上面に固定する。なお、折り目4からの段鼻部被覆ボード3の折り曲げは、上記養生ボード主体1と同様にその溝幅を拡がらせる方向に行われるので、簡単に屈折させることができる。
【0036】
しかるのち、図6に示すように、養生ボード主体1における踏板被覆ボード部1Aの幅方向の両側端から段鼻部13を被覆している段鼻部被覆ボード3の両側端部を踏板11の上面両側から段鼻部13の裏面にかけて粘着テープ14C 、14C を貼着することにより固定する。このようにテープ14A 〜14C による養生ボードの施工を階段における全ての踏板11に対して行う。
【0037】
次に、上記養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3とによって奥行き寸法の異なった踏板11に対する施工態様を説明する。まず、養生ボード主体1として、厚さが2mm、幅が720mm 、長さが340mm 、密度が0.8 g/cm3 で、且つ、表面が平滑面に形成されていると共に裏面が網目状粗面に形成されているハードボードを使用し、その長さ方向の前端から200mm 存した部分に裏面側から表面側に向かって断面V字状の溝からなる一条の折り目2を全幅に亘って形成することにより、前半部を奥行き寸法が200mm の踏板被覆ボード部1Aに、後半部を長さ(蹴上げ方向の寸法)が140mm の蹴込板被覆ボード部1Bに形成している養生ボード主体1を得た。同様に、段鼻部被覆ボード3としては、厚さが2mm、幅が720mm
、長さが130mm のハードボードを使用し、その長さ方向の前端から40mm存した部分に表面側から裏面側に向かって断面V字状の溝からなる一条の折り目2を全幅に亘って形成することにより、前半部を長さ(蹴上げ方向の寸法)が40mmの段鼻前端面被覆ボード3Bに、後半部を長さ(踏板の奥行き寸法方向)が90mmの段鼻上面被覆ボード部3Aに形成している段鼻部被覆ボード3を得た。
【0038】
このように構成した階段用養生ボードを、規格されている奥行き寸法が最小である200mm (踏面寸法が185mm 、蹴込板12から突出する段鼻部13の鼻の出寸法が15mm)の踏板11A
と蹴上げ寸法が190mm の蹴込板12とからなり、且つ、階段幅が750mm の階段に施工する場合には、図7に示すように、養生ボード主体1を直角に折り曲げてその折り目2を踏板11の後端と蹴込板12の下端との隅部に押し込むようにして合わせることにより、踏板被覆ボード部1Aを踏板11上に、蹴込板被覆ボード部1Bを蹴込板12の前面に当てがった状態に施工すると、踏板被覆ボード部1Aによって踏板11がその段鼻部前端に至るまで被覆された状態となる。
【0039】
次いで、段鼻部被覆ボード3を直角に折り曲げてその折り目4を段鼻部13の前端における上端稜角に被せるようにして当てがうと、段鼻部13の前端面が段鼻前端面被覆ボード部3Bによって被覆されると共に、段鼻部13の上面を被覆している上記踏板被覆ボード部1Aの前端部上に段鼻上面被覆ボード部3Aが重なり、その重なり代が90mmとなる。
【0040】
また、規格されている奥行き寸法が240mm (踏面寸法が225mm 、蹴込板12から突出する段鼻部13の鼻の出寸法が15mm)の踏板11B と蹴上げ寸法が190mm の蹴込板12とからなり、且つ、階段幅が750mm の階段に施工する場合には、図8に示すように、上記養生ボード主体1を直角に折り曲げてその折り目2を踏板11の後端と蹴込板12の下端との隅部に押し込むようにして合わせることにより、踏板被覆ボード部1Aを踏板11上に、蹴込板被覆ボード部1Bを蹴込板12の前面に当てがった状態に施工すると、踏板被覆ボード部1Aの前端が段鼻部13の前端から後方に40mmを存した部分に達した状態で踏板11を被覆することになる。
【0041】
次いで、上記段鼻部被覆ボード3を直角に折り曲げてその折り目4を段鼻部13の前端における上端稜角に被せるようにして当てがうと、段鼻部13の前端面が段鼻前端面被覆ボード部3Bによって被覆されると共に、段鼻部13の上面を被覆している上記踏板被覆ボード部1Aの前端部上に段鼻上面被覆ボード部3Aが重なり、その重なり代が50mmとなる。
【0042】
さらにまた、規格されている奥行き寸法が最大である290mm (踏面寸法が275mm 、蹴込板12から突出する段鼻部13の鼻の出寸法が15mm)の踏板11C と蹴上げ寸法が190mm の蹴込板12とからなり、且つ、階段幅が750mm の階段に施工する場合には、図9に示すように、養生ボード主体1を直角に折り曲げてその折り目2を踏板11の後端と蹴込板12の下端との隅部に押し込むようにして合わせることにより、踏板被覆ボード部1Aを踏板11上に、蹴込板被覆ボード部1Bを蹴込板12の前面に当てがった状態に施工すると、踏板被覆ボード部1Aの前端が段鼻部13の前端から後方に90mmを存した部分に達した状態で踏板11を被覆することになる。
【0043】
次いで、上記段鼻部被覆ボード3を直角に折り曲げてその折り目4を段鼻部13の前端における上端稜角に被せるようにして当てがうと、段鼻部13の前端面が段鼻前端面被覆ボード部3Bによって被覆されると共に、段鼻上面被覆ボード部3Aの後端面が段鼻部13の上面を被覆している上記踏板被覆ボード部1Aの前端面に突き合わせた状態に接合し、これらの踏板被覆ボード部1Aと段鼻前端面被覆ボード部3Bとによって踏板11をその前端から後端に亘って被覆した状態となる。
【0044】
このように、上記のように構成した養生ボード主体1と段鼻部被覆ボード3とからなる養生ボードを使用することによって、踏板11の奥行き寸法が異なっている階段であっても全ての踏板11を確実に被覆、保護した施工状態を得ることができる。
【0045】
なお、階段の最上段、即ち、2階フロアにおいては図3、図10に示すように、養生ボード主体1を折り目2から直角に折り曲げることなく平板状に展開させた状態でフロア上に敷設しておけばよい。
【0046】
また、図11に示すように、上記養生ボード主体1における蹴込板被覆ボード部1Bの表面と、段鼻部被覆ボード3における段鼻上面被覆ボード部3Aの表面とに、注意書き等の着色されたマーキング5を印刷等のよって設けておいてもよく、このマーキング5を作業者が目視することによって昇降時における安全性等をより高めることができる。なお、マーキング5は、養生ボード主体1における蹴込板被覆ボード部1Bの表面と、段鼻部被覆ボード3における段鼻上面被覆ボード部3Aの表面とのいずれか一方に設けておいてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 養生ボード主体
1A 踏板被覆ボード部
1B 蹴込板被覆ボード部
2 折り目
3 段鼻部被覆ボード
3A 段鼻上面被覆ボード部
3B 段鼻前端面被覆ボード部
4 折り目
11 踏板
12 蹴込板
13 段鼻部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とを一体に設けてなる養生ボード主体と、折り目を介して互いに直角に折り曲げ可能な踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部とを一体に設けてなる段鼻部被覆ボードとからなり、踏板の奥行き寸法の大小に応じて養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前部と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部との重ね代を調整可能に構成していることを特徴とする階段用養生ボード。
【請求項2】
養生ボード主体における踏板被覆ボード部の前後端間の幅寸法と、段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の前後端間の幅寸法との和が、対応する階段の踏板の奥行き寸法よりも大きくなるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の階段用養生ボード。
【請求項3】
養生ボード主体に設けている折り目はボードの裏面側から表面側に向かって加工された凹溝からなり、段鼻部被覆ボードに設けている折り目はボードの表面側から裏面側に向かって加工された凹溝からなることを特徴とする請求項1に記載の階段用養生ボード。
【請求項4】
養生ボード主体と段鼻部被覆ボードは裏面を粗面に形成している木質繊維板からなることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の階段用養生ボード。
【請求項5】
養生ボード主体における蹴込板被覆ボード部の表面と段鼻部被覆ボードにおける段鼻上面被覆ボード部の表面との少なくとも一方に、マーキングを施していることを特徴とする請求項1に記載の階段用養生ボード。
【請求項6】
踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部との境界に折り目を設けてなる養生ボード主体を該折り目から互いに直角に折り曲げてその折り目を階段における踏板の後端と蹴込板の下端との連設部である入隅部に合わせることにより、踏板被覆ボード部と蹴込板被覆ボード部とで踏面と蹴込板とをそれぞれ被覆させた設置状態にしてテープにより固定したのち、踏板段鼻部の上面被覆ボード部と踏板段鼻部の前端面被覆ボード部との境界に折り目を設けてなる段鼻部被覆ボードを該折り目から互いに直角に折り曲げてその折り目を踏板の段鼻部の稜角に合わせることにより、段鼻上面被覆ボード部を上記踏板被覆ボード部の前端部に重ね合わせると共に段鼻前端面被覆ボード部によって踏板の段鼻部の前端面を被覆させた状態にしてテープにより固定することを特徴とする階段用養生ボードの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−57363(P2012−57363A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201708(P2010−201708)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)