説明

階段

【課題】設計プランの自由度を確保できるとともに、組み立て施工を容易に行うことができる階段を提供する。
【解決手段】複数の階段ユニット23と複数の踊り場ユニット22とを交互に組み立てることにより、階段21を構築する。階段ユニット23をその上下に隣接する他の階段ユニット23に対して直角配置となるように組み立てる。階段ユニット23は、平行に配置された一対のささら板51と、そのささら板51の複数の段部上に取り付けられた踏み板52とより構成する。踊り場ユニット22は、4本の支柱24と、それらの支柱24に四隅が支持された踊り場床組25とより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば建築物の避難用階段として組み立てられるようにした階段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の階段としては、例えば特許文献1の構成が提案されている。この従来構成の屋外階段は、図19に示すように、階段フレーム81と、下側階段パーツ82と、上側階段パーツ83と、一対の踊り場床84とから構成されている。階段フレーム81は4本の支柱81aと、上端部階段支持梁81bと、中央部階段支持梁81cと、下側階段梁81dと、上側階段梁81eとから構成されている。
【特許文献1】特開2004−353251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の従来構成の屋外階段では、下側階段パーツ82及び上側階段パーツ83が平面視で平行に延びるように配置されるとともに、下側の踊り場床84及び上側の踊り場床84が下側階段パーツ82及び上側階段パーツ83の外側に突出状態で配置されている。そのため、この屋外階段は全体として図19示す長方形状をなす。すなわち、特許文献1の従来構成の屋外階段では、一対の踊り場床84や上端部階段支持梁81b、中央部階段支持梁81c等が下側階段パーツ82及び上側階段パーツ83の2倍の幅を有している。このため、この屋外階段においては、下側階段パーツ82及び上側階段パーツ83を平行に配置した図19のレイアウトを選択せざるを得ない。従って、この屋外階段を例えば建築物Bの隅角部に設置する場合、長方形状の設置スペースを必要として、建築物Bに対する収まりが悪く、設計プランの自由度を確保しにくいという問題があった。また、この屋外階段においては、各梁81b〜81eが4本の支柱81aに支持され、各梁81b〜81eに階段パーツ83や踊り場床84が組み立てられる。従って、組み立て前の状態では、各梁81b〜81e及び4本の支柱81aと階段パーツ83及び踊り場床84とが別部材であるため、設置現場における屋外階段の組み立てにおいてその組み立て工数が増え、施工に手間がかかるものであった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、設計プランの自由度を確保できるとともに、設置現場での組み立て施工を容易に行うことができる階段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数の踏み板を有する階段ユニットと、踊り場床組を支柱に支持した踊り場ユニットとを組み立てて構成したことを特徴とするものである。
【0006】
従って、この発明においては、設置現場においては、階段ユニットと踊り場ユニットとを組み立てることにより、階段の施工を行うことができるため、組み立てが容易で施工性を向上させることができる。しかも、階段ユニットと踊り場ユニットとを自在に組み合わせて階段を構成することができる。従って、階段のレイアウトを自在に設定できて、設計プランの自由度を確保できる。
【0007】
前記の構成において、階段ユニットと踊り場ユニットとを交互に、かつ階段ユニットがその上下に隣接する他の階段ユニットに対して直角配置となるように組み立てることが好ましい。
【0008】
このようにすれば、この発明においては、例えば、階段を建築物の隅角部の屋外側に隣接して設置する場合、長方形状の広い設置スペースを必要とすることなく、ほぼ正方形状の設置スペースで建築物に対して収まりよく設置することができる。また、建築物の間取りの自由度が向上し、結果として設計プランの自由度が向上する。
【0009】
また、前記の構成において、前記階段ユニットは、平行に配置された一対のささら板と、そのささら板の複数の段部上に取り付けられた踏み板とより構成するとよい。
このように構成した場合には、ささら板と複数の踏み板とよりなる階段ユニットを、工場においてあらかじめ製作することができるとともに、設置現場において踊り場ユニットと容易に組み立てることができる。
【0010】
さらに、前記の構成において、前記踊り場ユニットは、4本の支柱と、それらの支柱に四隅が支持された踊り場床組とにより構成するとよい。このように構成した場合には、4本の支柱と踊り場床組とよりなる踊り場ユニットを、工場においてあらかじめ製作することができるとともに、設置現場において階段ユニットと容易に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、設置現場での組み立て施工を容易に行うことができるとともに、設計プランの自由度を向上できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図17に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、この実施形態の階段21は、複数の踊り場ユニット22と複数の階段ユニット23とを交互に組み立てることにより、建築物Bの隅角部の屋外側において平面正方形をなすように構築されている。この場合、各階段ユニット23がその上下に隣接する他の階段ユニット23に対して踊り場ユニット22を間に挟んで直角配置となるように組み立てられている。
【0013】
すなわち、階段21の設置位置には、4つの踊り場ユニット22が相互に間隔をおいた状態で、対角線上の四コーナ部に位置するように配置されている。さらに、各踊り場ユニット22上には、別の踊り場ユニット22が積み上げられている。そして、最下階と最上階とを除き、ひとつの階につき、それぞれ4組の踊り場ユニット22と、踊り場ユニット22間を連結する4組の階段ユニット23とが用いられている。そして、図2に示すように、各組の踊り場ユニット22の踊り場床組25の位置が、右回り方向へ順に高くなるように配置されている。図3及び図4に示すように、最下階の避難口(出入り口)Baと対応する位置においては、踊り場ユニット22は設けられておらず、4本の短い補助支柱26のみが立設されている。従って、最下階の踊り場ユニット22は3組である。図6から明らかなように、最上階と対応する位置においては、3組の踊り場ユニット22と2組の階段ユニット23とが設けられている。そして、後述の説明から理解されるように、この実施形態において、工場において溶接及びボルト締め等によりあらかじめ製作され、施工現場においては、それらのあらかじめ製作された部材を、溶接を用いることなく、ボルト締めすることによって階段が組み立てられる。
【0014】
図1〜図4に示すように、前記踊り場ユニット22は、断面形L字状の鋼材,すなわちアングル材よりなり、コーナ部を内側に向けた4本の支柱24と、それらの支柱24の上端部付近に四コーナ部が固定支持された平面正方形状をなす鋼材製の踊り場床組25とより構成されている。そして、最下階の踊り場ユニット22を除く各階の踊り場ユニット22においては、支柱24の長さが、階段を付設する建築物Bの階の床面からその上階の床までの間隔とほぼ等しくなるように形成されている。
【0015】
一方、建築物Bの最下階としての1階及び最上階と対応する部分に設置される踊り場ユニット22においては、図4に示すように、設置現場において支柱24に支柱24と同じ断面形状の補助支柱26を継ぎ足したり、支柱24の端部を切断したりして、支柱24の長さが踊り場床組25の高さ位置に対応できるように形成されている。
【0016】
そして、各階ごとの4つの踊り場ユニット22のうちで、1つの踊り場ユニット22の踊り場床組25が建築物Bの2階以上の各階の床と同一高さに配置されて、建築物Bの各階の避難口Baから踊り場床組25上を通って避難できるようになっている。また、図3に示すように、階段21の最下部及び建築物Bの1階の避難口Baからは、踊り場ユニット22の支柱24間を通って、出口27より外部に避難できるようになっている。
【0017】
図1〜図3に示すように、4つの踊り場ユニット22において内側に隣接配置された支柱24間には、手すり28がボルト(図示しない)により取り付けられている。この手すり28は、各踊り場ユニット22間の各階段ユニット23の内周側に沿ってその階段ユニット23の傾斜に沿って傾斜しながら延びるように配置されている。なお、図面(図2等)においては、手すり28は板材により構成されたものが描かれているが、パイプ材により構成されたものを使用してもよい。このように構成した場合は、パイプ材の両端に板材を溶接するとともに、支柱24に別の板材を溶接し、それらの板材をボルトにって固定することにより、手すり28が設置される。
【0018】
図1、図4及び図6に示すように、前記複数の踊り場ユニット22において建築物Bの本体部に隣接配置された踊り場ユニット22の支柱24は、建築物Bの壁面から突設された複数の連結金具29に連結固定されて補強されている。
【0019】
図5及び図6に示すように、建築物Bの屋上階Bbと対応する部分においては、最上部の踊り場ユニット22の踊り場床組25と建築物Bの屋上階Bbとの間に、前記踊り場ユニット22間の階段ユニット23に代えて、前記階段ユニット23の2組分のスペースを有する屋上用階段ユニット30が架設されている。屋上用階段ユニット30の両側上部には、手すり31が設けられている。そして、この屋上用階段ユニット30を通り、パラペットBpを越えて建築物Bの屋上階Bb側にも避難できるようになっている。
【0020】
図7に示すように、踊り場ユニット22及び階段ユニット23の両側に位置するように、各支柱24間には、図示しないボルトにより側壁32が取り付けられている。そして、これらの側壁32により、各階段ユニット23及び各踊り場ユニット22の踊り場床組25の側部の外側が覆われている。なお、この側壁32は、必要な箇所に適宜に設けられるものである。
【0021】
前記踊り場ユニット22,階段ユニット23,手すり31等の金属部品には、防錆メッキあるいは防錆塗装が施されている。
次に、前記踊り場ユニット22の構成について詳細に説明する。図8〜図10に示すように、踊り場ユニット22は、製造工場において4本の支柱24間に踊り場床組25を溶接またはタッピングネジ41によって固定することにより製造されている。図9及び図10において、符号48が溶接部分を示す。踊り場床組25は、複数の鋼材製の第1補強部材35A,35Bと、複数の鋼材製の第2補強部材36と、複数の鋼板製の床板37とより構成されている。前記各第1補強部材35A,35Bは、対角線上に位置する4本の支柱24間において互いに交叉するように溶接固定されている。各第2補強部材36は、隣接する第1補強部材35A,35B間に架設されるように溶接固定されている。各床板37は平面三角形状をなし、両補強部材35A,35B,36の上面に取付金具38A〜38Eを介してタッピングネジ41により固定支持されている。
【0022】
すなわち、図9及び図11に示すように、前記踊り場床組25における各補強部材35A,35B,36の両側面には、断面形ほぼL字状をなす複数の前記取付金具38が複数のボルト39及びナット40により固定されている。各取付金具38A〜38Eの上壁には、複数の取付孔38aが補強部材35A,35B,36の延長方向に間隔をおいて形成されている。そして、図9に示すように、製造工場において、床板37上から取付金具38の取付孔38aに複数のタッピングネジ41を螺合することによって、2枚の床板37が補強部材35A,35B,36上に固定されている。また、残りの2枚の床板37は、階段21の設置現場において、踊り場ユニット22に階段ユニット23を組み立てた後に、前記の場合と同様に複数のタッピングネジ41により、補強部材35A,35B,36上に固定される。
【0023】
図8〜図10に示すように、前記踊り場ユニット22の踊り場床組25において、階段21の設置現場で床板37が取り付けられる側の隣接する各一対の支柱24間の位置には、一対の鋼板製のブラケット42が間隔をおいた状態で第1補強部材35A,35Bに対して溶接固定されている。そして、これらのブラケット42に対して、後述する階段ユニット23のささら板51の上端取付部51b及び下端取付部51cが固定されることにより、踊り場ユニット22と階段ユニット23とが組み立てられる。
【0024】
図8〜図10に示すように、前記ブラケット42が設けられていない側の隣接する各一対の支柱24間の位置には、上下に対をなす鋼材製の補助補強部材43が溶接により架設固定されている。
【0025】
図1〜図4に示すように、各踊り場ユニット22間に階段ユニット23が組み立てられた状態で、各踊り場ユニット22間において外側に隣接する支柱24の間には、上下に対をなす鋼材製の連結部材44がボルトにより架設固定されている。すなわち、図9に示すように、製造工場においてブラケット48が支柱24に溶接により固定され、そのブラケット48に連結部材44の両端部がボルト49により固定されている。そして、この連結部材44により、隣接配置された踊り場ユニット22が、相互間で相対移動を生じないように連結固定されている。
【0026】
図4、図6、図12及び図13に示すように、積み上げ状態にある踊り場ユニット22の支柱24間、及び継ぎ足し状態にある踊り場ユニット22の支柱24と補助支柱26との間は、一対の固定金具45により連結固定されている。すなわち、断面形ほぼL字状をなす支柱24間の連結部、及び支柱24と補助支柱26との間の連結部には、内外一対の固定金具45が接合配置され、複数のボルト46及びナット47により固定されている。そして、これらの固定金具45により、支柱24間の連結部、及び支柱24と補助支柱26との間の連結部が、位置ずれを生じないように固定されている。
【0027】
次に、前記階段ユニット23の構成について詳細に説明する。図14及び図15に示すように、階段ユニット23は、平行に配置された一対の鋼板製のささら板51と、そのささら板51間に架設された複数の鋼板製の踏み板52とから構成されている。各ささら板51の上端面には、踏み板52を支持するための複数の段部51aが形成されている。各踏み板52は、ほぼ水平に延びる踏み板本体部52aと、その踏み板本体部52aの後端縁から垂直上方に起立する蹴上げ板部52bとを有するように、断面形ほぼL字状に形成されている。踏み板本体部52aの前端縁には、折り曲げ部52cが下方に向かって形成されている。
【0028】
そして、図14に示すように、製造工場において複数の踏み板52が一対のささら板51の各段部51a上に配置された状態で、両ささら板51に対して溶接固定されることにより、階段ユニット23が形成されている。この場合、各踏み板52の両端部がささら板51から両側方へ突出されるように、両ささら板51が踏み板52の両端部よりも内側に位置している。このため、階段ユニット23の両側面にささら板51が露出しないように構成されている。
【0029】
図14及び図15に示すように、前記各ささら板51の上下両端部には、上端取付部51b及び下端取付部51cが突出形成されている。そして、図2及び図9に示すように、このささら板51の上端取付部51b及び下端取付部51cをボルト53及びナット54によって、踊り場ユニット22における踊り場床組25のブラケット42に固定することにより、階段ユニット23が隣接する踊り場ユニット22の踊り場床組25間に組み立てられている。
【0030】
図4及び図16に示すように、建築物Bの1階と対応する部分に設置される隣接の支柱24の下端部間、あるいはその支柱24に継ぎ足された隣接の補助支柱26の下端部間には、鋼板製の第1固定板58が製造工場において溶接固定されている。また、建築物Bの1階と対応する部分に配置される最下部の階段ユニット23におけるささら板51の下端取付部51c間には、鋼板製の第2固定板59が製造工場において溶接固定されている。
【0031】
そして、第1固定板58の孔が設置現場の基礎コンクリート60に埋め込まれた一対の第1ボルト61に挿通された状態で、それらの第1ボルト61に複数のナット62が螺合されることにより、各踊り場ユニット22における支柱24または補助支柱26の下端部が基礎コンクリート60に対して固定されている。また、第2固定板59孔が基礎コンクリート60に埋め込まれた一対の第2ボルト63に挿通された状態で、それらの第2ボルト63に複数のナット64が螺合されることにより、最下部の階段ユニット23におけるささら板51の下端部が基礎コンクリート60に対して固定されている。そして、前記第1,第2固定板58,59が埋設されるように、基礎コンクリート60上に仕上げのコンクリート65が打設されている。
【0032】
図6及び図17に示すように、前記屋上用階段ユニット30は、平行に配置された一対の鋼板製の第1ささら板67と、その第1ささら板67に製造工場においてボルト74及びナット75により連結された一対の鋼板製の第2ささら板68と、両ささら板67,68上の複数の段部67a,68aに製造工場において溶接固定された複数の踏み板69と、両ささら板67,68の上端部に跨って製造工場において溶接固定された頂板70とから構成されている。第1ささら板67は、最上部の踊り場ユニット22の踊り場床組25から建築物B側に向かって上昇傾斜するように延長配置されている。第2ささら板68は、第1ささら板67の上端部から建築物Bの屋上階Bb側に向かって下降傾斜するように延長配置されている。
【0033】
前記各第1ささら板67の下端部には、最上部の踊り場ユニット22における踊り場床組25のブラケット42に取り付けるための取付部67bが形成されている。両第2ささら板68の下端部間には固定板71が製造工場において溶接固定されている。そして、この固定板71が屋上階Bbの床に埋め込まれた複数のボルト72に挿通された状態で、それらのボルト72に複数のナット73が螺合されることにより、屋上用階段ユニット30における第2ささら板68の下端部が屋上階Bbの床に対して固定されている。
【0034】
次に、前記のように構成された階段21の設置方法について説明する。
図1に示すように、階段21を建築物Bのコーナ部の屋外側に隣接して構築する場合には、あらかじめ製造工場において踊り場床組25を含む必要数の踊り場ユニット22,階段ユニット23,30,補助支柱26等が製造される。そして、図3及び図4に示すように、建築物Bの1階と対応する部分の基礎コンクリート60上に、踊り場床組25を含む踊り場ユニット22と補助支柱26とを相互に間隔をおいた状態で、対角線上の四コーナに位置するように立設して配置する。この場合、1階の踊り場ユニット22の支柱24はその長さが複数段階となるように工場においてあらかじめ加工されている。
【0035】
また、図4及び図16に示すように、各踊り場ユニット22の支柱24の下端部間、あるいは補助支柱26の下端部間に第1固定板58が工場においてあらかじめ溶接固定されている。そして、これらの第1固定板58の孔を基礎コンクリート60に埋め込まれた一対の第1ボルト61に挿通するとともに、それらの第1ボルト61にナット62を螺合することにより、各踊り場ユニット22における支柱24または補助支柱26の下端部を基礎コンクリート60に固定する。この状態で、図2に示すように、4つの踊り場ユニット22の踊り場床組25の位置が、右回り方向へ順に高くなるように配置される。それとともに、図1に示すように、ひとつの踊り場ユニット22の踊り場床組25が、建築物Bの二階の避難口Baと対応する位置に配置される。
【0036】
その後、4つの踊り場ユニット22の踊り場床組25間に、階段ユニット23を順に組み立てる。この場合、図2及び図9に示すように、各階段ユニット23のささら板51の上端取付部51b及び下端取付部51cをボルト53及びナット54によって、踊り場床組25のブラケット42に固定することにより、階段ユニット23を隣接する踊り場ユニット22の踊り場床組25間に組み立てることができる。また、この階段ユニット23の組み立て時には、図9に示すように、踊り場床組25における2枚の床板37が製造工場で未装着の状態にあって、ブラケット42の上方が開放されている。このため、ささら板51の上端取付部51b及び下端取付部51cとブラケット42との固定作業を、踊り場床組25の上方から容易に行うことができる。
【0037】
さらに、図4及び図16に示すように、建築物Bの一階と対応する部分に配置される最下部の階段ユニット23については、ささら板51の下端取付部51c間に第2固定板59が工場においてあらかじめ溶接固定されている。そして、この第2固定板59の孔を基礎コンクリート60に埋め込まれた一対の第2ボルト63に挿通するとともに、それらの第2ボルト63に複数のナット64を螺合することにより、最下部の階段ユニット23におけるささら板51の下端部を基礎コンクリート60に固定する。その後、第1,第2固定板58,59が埋設されるように、基礎コンクリート60上に仕上げのコンクリート65を打設する。
【0038】
そして、この踊り場ユニット22に対する階段ユニット23の組み立て後に、各踊り場ユニット22の踊り場床組25上に未装着状態の2枚の床板37をタッピングネジ41により取り付ける。また、図2〜図3に示すように、各踊り場ユニット22間において外側に隣接する支柱24の間に、上下一対の連結部材44をボルト49(図9参照)により固定して、隣接配置された踊り場ユニット22間を連結固定する。さらに、図1及び図4に示すように、建築物Bに隣接配置された踊り場ユニット22の支柱24を、建築物Bの壁面から突設された連結金具29に連結固定して揺れ止めする。
【0039】
このようにして、建築物Bの一階と対応する部分の階段21、つまり建築物Bの一階の基礎から二階の床までに相当する部分の階段21の組み立て作業が終了する。
続いて、建築物Bの二階と対応する部分の階段21を組み立てる。この場合には、建築物Bの一階と対応する部分に立設された踊り場ユニット22または支柱24上に、新しい踊り場ユニット22をそれぞれ積み上げる。そして、図4、図12及び図13に示すように、積み上げ状態の上下踊り場ユニット22における支柱24間の連結部に跨って、一対の固定金具45を接合配置するとともに、それらの固定金具45を複数のボルト46及びナット47により、上下の支柱24に固定する。この支柱24の固定により、上下の踊り場ユニット22における支柱24間の連結部が、位置ずれを生じないように固定される。なお、この固定金具45は、製造工場において一方の支柱24にあらかじめ溶接固定される。
【0040】
その後、前述した建築物Bの一階と対応する部分における組み立て作業と同様に、積み上げ状態の踊り場ユニット22に対して、階段ユニット23の組み立て、床板37の取り付け、連結部材44のボルトによる固定、及び連結金具29との連結固定を行えば、建築物Bの二階と対応する部分の階段21を組み立てることができる。また、建築物Bの三階以上の複数階と対応する部分についても、前記二階と対応する部分の組み立て作業と同様な作業を繰り返し行うことにより、所要階数に相当する階段21を構築することができる。
【0041】
そして、図5、図6及び図17に示すように、建築物Bの屋上階Bbと対応する部分においては、前記踊り場ユニット22間の階段ユニット23に代えて、最上部の踊り場ユニット22の踊り場床組25と建築物Bの屋上階Bbとの間に、屋上用階段ユニット30を架設する。そして、屋上用階段ユニット30における第1ささら板67の下端の取付部67bを、最上部の踊り場ユニット22における踊り場床組25のブラケット42に取り付ける。そして、この固定板71を屋上階Bbの床に埋め込まれた複数のボルト72に挿通するとともに、それらのボルト72にナット73を螺合することにより、第2ささら板68の下端部を屋上階Bbの床に固定する。
【0042】
その後、図7に示すように、隣接する支柱24間の必要箇所に、側壁32を取り付ける。さらに、階段21の内周側において隣接する支柱24間に手すり31をボルトにより固定する。なお、この側壁32及び手すり31の固定は、踊り場ユニット22及び階段ユニット23の積み上げの進行にあわせて順次行ってもよい。
【0043】
以上のようにして、踊り場ユニット22を4コーナ部に配置するとともに、階段ユニット23を隣接する他の階段ユニット23に対して直角をなすように配置すれば、図1に示すような平面正方形の階段を施工することができる。
【0044】
これに対し、図18(a)に示すように、踊り場ユニット22と階段ユニット23とを直線状に配置すれば、直線状の階段を施工できる。また、図18(b)に示すように、踊り場ユニット22と階段ユニット23とをそれぞれ隣接させれば、ジグザグ状に昇降する階段を施工できる。ただし、この場合は、隣接する踊り場ユニット22間に支柱24の2本分の幅の隙間が形成されるため、その隙間を閉鎖する板材が必要となる。さらに、図18(c),(d)に示すように、踊り場ユニット22と階段ユニット23とを一部で屈曲されるように配置すれば、昇降方向が180度反転したり、クランク状に屈曲したりする階段を施工できる。すなわち、踊り場ユニット22に設けられ、階段ユニット23を連結するためのブラケット42の位置を適宜に選択することにより、様々なレイアウトの階段21を施工することが可能となる。
【0045】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この階段21においては、踊り場ユニット22が、4本の支柱24と、それらの支柱24に四隅が支持された踊り場床組25とより構成されている。このため、4本の支柱24と踊り場床組25とよりなる踊り場ユニット22を、工場においてあらかじめ製作することができる。また、階段ユニット23,30が、平行に配置された一対のささら板51,67,68と、そのささら板51,67,68の複数の段部51a,67a,68a上に取り付けられた踏み板52とより構成されている。このため、ささら板51,67,68と複数の踏み板52とよりなる階段ユニット23,30を、工場においてあらかじめ製作することができる。しかも、踊り場ユニット22や階段ユニット23,30を防錆メッキや防錆塗料の槽中に浸漬すれば、各部品に対する防錆処理を短時間で行うことが可能となる。そして、設置現場においては、踊り場ユニット22と階段ユニット23,30とを組み立てれば、階段21を施工でき、その施工を容易に行うことができる。
【0046】
(2) この実施形態の階段21においては、階段ユニット23と踊り場ユニット22とを適宜に組み合わせることにより、多様なレイアウトの階段の施工が可能となり、設計プランを自在に選択することができる。
【0047】
(3) この実施形態の階段21においては、部材の組み付けにおける溶接を製造工場で行い、施工現場における組み付けはボルトにより行って、溶接を行わないようにしている。従って、施工現場においては、あらかじめ製作された部品をボルト締めすることにより階段21を簡単に施工できる。
【0048】
(4) この実施形態の階段21においては、階段ユニット23と踊り場ユニット22とを交互に組みあわせ、かつ階段ユニット23がその上下に隣接する他の階段ユニット23に対して直角配置となるように構成すれば、平面正方形の階段を施工できる。従って、階段21を建築物Bのコーナ部等に設置する場合、正方形状の狭い設置スペースで建築物Bに対して収まりよく設置することができる。従って、設計プランの自由度を確保できる。
【0049】
(5) この階段21においては、階段ユニット23の各踏み板52の両端が、ささら板51から両側方へ突出するように構成されている。よって、階段ユニット23の両側部にささら板51が露出することを抑制することができて、外観を良好に保つことができる。
【0050】
(6) この階段21においては、支柱24及び補助支柱26としてアングル材を用いている。このため、側壁32を設けた場合、その側壁32間には支柱24及び補助支柱26の厚さによって表れる端面のみが認められることになり、外観を良好に保つことができる。
【0051】
(7) この階段21においては、踊り場ユニット22の踊り場床組25が、対角線上に位置する支柱24間に固定され、互いに交叉する複数の第1補強部材35(35A,35B)と、その第1補強部材35A,35B間に架設された複数の第2補強部材36と、両補強部材35A,35B,36の上面に支持された床板37とから構成されている。このため、踊り場床組25を強固に形成することができて、踊り場床組25、ひいては階段21全体の強度を高めることができる。
【0052】
(8) この階段21においては、踊り場ユニット22の隣接する支柱24間に補助補強部材43が設けられている。このため、補助補強部材43により隣接する支柱24を平行状態に保持することができる。
【0053】
(9) この階段21においては、踊り場ユニット22の隣接する一対の支柱24間に位置するように、踊り場床組25に一対のブラケット42が設けられ、そのブラケット42に階段ユニット23のささら板51の端部が固定されるように構成されている。よって、踊り場床組25のブラケット42に階段ユニット23のささら板51の端部を固定することにより、階段ユニット23を踊り場ユニット22に対して容易に組み立てることができる。
【0054】
(10) この階段21においては、隣接する支柱24間に側壁32を設けることができる。このため、階段ユニット23や踊り場ユニット22の隠蔽することができて、階段21全体の外観を良好に保つことができるとともに、階段21外に対する物等の落下防止を図ることができる。
【0055】
(11) この階段21においては、階段ユニット23の踏み板52,69が蹴上げ板部52b等を備えるように折り曲げられているため、踏み板52,69全体がアングル状をなす。このため、階段ユニット23の強度を向上させ、ひいては階段21全体を頑丈にできる。
【0056】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態においては、踊り場ユニット22の支柱24が断面形ほぼL字状の鋼材により構成されているが、この支柱24を四角筒状,パイプ状,断面H型状等の各種形状の鋼材により構成してもよい。
【0057】
・ 前記実施形態においては、側壁32として板状のものが用いられているが、この側壁32として格子状あるいは網状のものを用いてもよい。
・ 前記実施形態においては、建築物Bの1階と対応する部分に立設する4つの踊り場ユニット22について、支柱24の長さ調整を階段21の設置現場で行うようにしているが、この長さ調整作業を踊り場ユニット22の製造工場で行うようにしてもよい。
【0058】
・ 前記実施形態においては、建築物Bの一階と対応する部分に立設する4つの踊り場ユニット22について、支柱24の下端部に対する第1固定板58の溶接を工場で行うようにしているが、この溶接作業を施工現場で行うようにしてもよい。
【0059】
・ 前記実施形態においては、建築物Bの一階と対応する最下部の階段ユニット23について、ささら板51の下端部に対する第2固定板59の溶接を工場で行うようにしているが、この溶接作業を施工現場で行うようにしてもよい。
【0060】
・ 前記実施形態においては、建築物Bの屋上階Bbに設置する屋上用階段ユニット30について、第2ささら板68の下端部に対する固定板71の溶接を工場で行うようにしているが、この溶接作業を施工現場で行うようにしてもよい。
【0061】
・ 階段ユニット23の踏み板52,69の蹴上げ板部をなくしてもよい。
(別の技術的思想)
さらに、上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について記載する。
【0062】
(A) 前記階段ユニットの踏み板は、その両端がささら板から両側方へ突出されたことを特徴とする前記請求項3に記載の階段。このように構成すれば、ささら板が踏み板の端部から奥まって位置するため、そのささら板が目立つことを防止でき、良好な外観を得ることができる。
【0063】
(B) 前記踊り場ユニットの踊り場床組は、対角線上に位置する支柱間に固定され、互いに交叉する補強部材と、その補強部材の上面に支持された床板とを備えたことを特徴とする請求項4または前記技術的思想(A)項に記載の階段。このようにすれば、踊り場床組及び踊り場ユニット全体の強度を向上できる。
【0064】
(C) 前記踊り場ユニットの隣接する支柱間に補助補強部材を設けたことを特徴とする前記技術的思想(B)項に記載の階段。このようにすれば、支柱間の強度を向上できる。
【0065】
(D) 前記踊り場ユニットの踊り場床組は、隣接する一対の支柱間の位置に一対のブラケットを有し、そのブラケットに前記階段ユニットのささら板の端部を固定したことを特徴とする請求項3、前記技術的思想(A)〜(C)項のうちのいずれか一項に記載の階段。このようにすれば、踊り場ユニットと階段ユニットとを簡単に連結できるとともに、ブラケットの位置を適宜に設定することにより、階段全体の平面形状を自在に選択できる。
【0066】
(E) 前記階段ユニットの上方空間及び前記踊り場ユニットの踊り場床組の上方空間の外側を覆うように、隣接する踊り場ユニットの支柱間に側壁を設けたことを特徴とする請求項3、前記技術的思想(A)〜(D)項のうちのいずれか一項に記載の階段。
【0067】
(F) 請求項1〜4,前記技術的思想(A)〜(E)項のうちのいずれか一項に記載の踊り場ユニット。
(G) 請求項1〜4,前記技術的思想(A)〜(E)項のうちのいずれか一項に記載の階段ユニット。
【0068】
(H) 製造工場において溶接によりあらかじめ製作された部材を用い、施工現場においてあらかじめ製作された部材をボルトにより固定するようにしたことを特徴とする前記技術的思想(F)項または(E)項に記載の階段ユニット。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】一実施形態の階段を建築物の複数階と対応する部分において断面にして示す要部横断面図。
【図2】図1の階段の要部斜視図。
【図3】同階段を建築物の一階と対応する部分において断面にして示す要部横断面図。
【図4】図3の4−4線における部分断面図。
【図5】同階段を建築物の屋上階と対応する部分において断面にして示す要部横断面図。
【図6】図5の6−6線における部分断面図。
【図7】隣接する踊り場ユニットの支柱間に側壁を取り付けた状態を示す要部斜視図。
【図8】1つの踊り場ユニットを拡大して示す斜視図。
【図9】同踊り場ユニットを拡大して示す平面図。
【図10】同踊り場ユニットの要部横断面図。
【図11】図9の11−11線における部分拡大断面図。
【図12】図4及び図6における踊り場ユニットの上下支柱間の連結構造を拡大して示す部分側面図。
【図13】図12の13−13線における拡大断面図。
【図14】1つの階段ユニットを拡大して示す斜視図。
【図15】同階段ユニットの分解斜視図。
【図16】図4の16−16線における部分拡大断面図。
【図17】図6に示す屋上階用の階段ユニットの固定構造を示す要部拡大断面図。
【図18】(a)〜(d)は各種の変形例を示す簡略平面図。
【図19】従来の階段を示す要部横断面図。
【符号の説明】
【0070】
21…階段、22…踊り場ユニット、23…階段ユニット、24…支柱、25…踊り場床組、30…屋上用階段ユニット、32…側壁、35…第1補強部材、35A…第1補強部材、35B…第1補強部材、36…第2補強部材、37…床板、42…ブラケット、43…補助補強部材、45…固定金具、51…ささら板、51a…段部、51b…上端取付部、51c…下端取付部、52…踏み板、52a…踏み板本体部、52b…蹴上げ板部、B…建築物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の踏み板を有する階段ユニットと、踊り場床組を支柱に支持した踊り場ユニットとを組み立てて構成したことを特徴とする階段。
【請求項2】
前記階段ユニットと踊り場ユニットとを交互に、かつ階段ユニットがその上下に隣接する他の階段ユニットに対して直角配置となるように組み立てたことを特徴とする請求項1に記載の階段。
【請求項3】
前記階段ユニットは、平行に配置された一対のささら板と、そのささら板の複数の段部上に取り付けられた前記踏み板とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の階段。
【請求項4】
前記踊り場ユニットは、4本の前記支柱と、それらの支柱に四隅が支持された前記踊り場床組とを有する請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のことを特徴とする階段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−106637(P2010−106637A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282284(P2008−282284)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】