説明

階間搬送装置

【課題】 高搬送能力を有する階間搬送装置を提供すること。
【解決手段】 各階にて互いに並設された搬入用コンベヤ16の搬入側端部16Eと搬出用コンベヤ14の搬出側端部14Eとに対し搬送物12を搬送する階間搬送装置10において、階間に設けられた搬送室18と、各階の搬入出用コンベヤの端部に対向するよう、各階毎に搬送室に形成された入出庫口20D,20Uと、搬送室内に昇降自在に配置された昇降ケージ22と、昇降ケージを昇降させるための昇降機構24,26,28,30と、昇降ケージ内に互いに並設された2台の入出庫用コンベヤ32,34とを備え、昇降ケージがいずれかの入出庫口の位置に置かれた場合に、入出庫用コンベヤがそれぞれ、当該入出庫口に対向するコンベヤ14,16と接続するようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階間において半導体ウェハ等を搬送する階間搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造工場においては、半導体ウェハの大径化及びミニエンバロイメント(局所清浄空間)化に伴って、半導体ウェハはFOUP(Front Openeing Unified Pod)と呼ばれる密閉容器に複数枚収納された状態で、工程間搬送(inter−bay transportation)及び工程内搬送(intra−bay transportation)が行われることが一般的となっている。
【0003】
また、工場建家内のスペースを有効に活用するため、階毎にクリーンルームを構築することが多く、そのような工場では、一連の工程が階間に跨った場合には、FOUPを、例えば下記の特許文献1に開示されているような階間搬送装置を用いて、それぞれの階へ搬送し、工程間搬送部との間で受渡しを行うこととしている。
【0004】
特許文献1に開示されている従来の階間搬送装置は、階間に設けられた搬送室に昇降可能に配置された昇降ケージと、昇降ケージ内に設けられた、搬送物の出入れのためのコンベヤとを備えている。一般に、昇降ケージ内のコンベヤは1台だけであるので、例えば2階に昇降ケージが到着したならば、まずケージ内のコンベヤに載っているFOUPを排出し、その後、2階の工程間搬送部から送られてきた別のFOUPをケージ内のコンベヤに送り込むこととなっている。
【特許文献1】特開平11−209033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FOUPに関しては、ベイを構成するウェハ処理装置のロードポート(入出庫口)が標準化(SEMI規格E15.1)されている。かかるロードポートは、上方からのアクセスに適している。そのため、一般に工程間搬送及び工程内搬送は天井搬送装置により行われ、階間搬送装置と工程間搬送部との間におけるFOUPの受渡しも天井搬送装置により行われる。
【0006】
しかしながら、天井搬送装置はそれ自体、搬送能力が低いという問題点がある。このため、工程間搬送及び工程内搬送における搬送効率の向上が強く求められている。同時に、階間搬送装置の搬送能力の向上も望まれ、これが本発明の目的となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、本発明を成すに際し、その前提として、本発明者は、工程間搬送においてコンベヤ、好ましくはローラコンベヤを用いることを提案している。すなわち、工程間搬送部の主搬送経路となる部分をループ状のコンベヤで構成し、その周囲にベイを配置するのである。コンベヤは、天井搬送装置に比し、高搬送能力を有し、ベイへの分岐やショートカット等も容易であるという利点がある。
【0008】
コンベヤを利用した場合、工程間搬送部の主搬送経路から搬入出用コンベヤを分岐させて、階間搬送装置の入出庫口に繋ぐことが考えられるが、受渡し効率をより高めるためには、搬入出用コンベヤを1本とせず、搬入用と搬出用とに別個独立に設けることが好ましい。かかる構成は、従来知られておらず、新規な構成である。
【0009】
本発明は、工程間搬送部の上記新規構成に関連して考えられたものであり、各階にて互いに並設された搬入用コンベヤの搬入側端部と搬出用コンベヤの搬出側端部とに対し、FOUPのような搬送物を搬送する階間搬送装置であって、階間に設けられた搬送室と、各階の搬入用コンベヤの搬入側端部及び搬出用コンベヤの搬出側端部に対向するよう、各階毎に搬送室に形成された入出庫口と、搬送室内に昇降自在に配置された昇降ケージと、昇降ケージを昇降させるための昇降機構と、昇降ケージ内に互いに並設された2台の入出庫用コンベヤとを備え、昇降ケージがいずれかの入出庫口の位置に置かれた場合に、2台の入出庫用コンベヤがそれぞれ、当該入出庫口に対向する搬入用コンベヤの搬入側端部又は搬出用コンベヤの搬出側端部と接続するようになっている階間搬送装置を特徴としている。
【0010】
この階間搬送装置では、昇降ケージ内に2台の入出庫用コンベヤが設けられ、それぞれ、搬入用コンベヤ及び搬出用コンベヤと接続可能となっているため、搬送物の搬出と搬入とを同時に行うことが可能となる。
【0011】
また、より搬送能力を高めるために、昇降ケージ内を上下に複数段に区画し、各段毎に2台の入出庫用コンベヤを並設することが有効である。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、各階での昇降ケージに対する搬送物の搬出と搬入とを同時に行うことができるため、搬送能力が向上する。特に、半導体製造工場における工程間搬送部がコンベヤで構成された場合、その搬送能力の向上に階層搬送においても十分に対応可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0014】
図1は、本発明による階間搬送装置の一実施形態を概略的に示す全体図である。図示実施形態に係る階間搬送装置10は、2階建ての半導体製造工場において半導体ウェハをFOUP(搬送物)12に収納した状態で1階と2階との間で搬送するものである。なお、図には示していないが、各階には、一つの工程間搬送部と、この工程間搬送部に沿って設けられた複数のベイにおける工程内搬送部とが設けられており、それぞれ、コンベヤ、好ましくはローラコンベヤで構成されている。図1に示す符号14,16は、工程間搬送部の主搬送路経路から分岐して延びているコンベヤである。一方のコンベヤ14は、工程間搬送部から階間搬送装置10にFOUPを搬出するためのコンベヤ(以下「搬出用コンベヤ」という)であり、他方のコンベヤ16は階間搬送装置10から工程間搬送部にFOUPを搬入するためのコンベヤ(以下「搬入用コンベヤ」という)である。搬出用コンベヤ14及び搬入用コンベヤ16は、複数のゾーンに区切られ、各ゾーンが独立して起動・停止することができる分散駆動型のローラコンベヤから構成されることが有効である。必要に応じて、これらのコンベヤ14,16上でFOUP12を待機させることが可能となるからである。搬出用コンベヤ14及び搬入用コンベヤ16は、互いに平行に隣接した状態で設置され、その搬出側端部14E及び搬入側端部16Eは階間搬送装置10の隣接位置に配置されている。
【0015】
階間搬送装置10は、図1において二点鎖線で示す搬送室18を備えている。図示の搬送室18は、四角柱形状の筒状体となっているが、フレームワークで構成されたものであってもよい。
【0016】
搬送室18には、各階において、その正面部に入出庫口20D,20Uが形成されている。各入出庫口20D,20Uは、それぞれの階における搬出用コンベヤ14の端部14E及び搬入用コンベヤ16の端部16Eと対向している。
【0017】
また、搬送室18内には昇降ケージ22が配置されている。昇降ケージ22は箱状体であり、昇降機構によって搬送室18内を昇降できるようになっている。昇降機構としては種々考えられるが、図示実施形態では、搬送室18の天井部に固定された電動モータ24と、この電動モータ24のプーリ又はスプロケット26に巻き掛けられ、一端に昇降ケージ22に接続され、他端に重錘28が接続されたワイヤ、ベルト又はチェーン30とから構成されており、電動モータ24を制御することで、昇降ケージ22を、1階の入出庫口20Dと2階の入出庫口20Uとの間で昇降することができるようになっている。昇降ケージ22の正面側は開放されている。従って、昇降ケージ22が入出庫口20D,20Uの位置にある時、昇降ケージ22の内外が連通する。
【0018】
更に、昇降ケージ22内には2台の入出庫用のコンベヤ32,34、好ましくはローラコンベヤが互いに平行に設けられている。これらのコンベヤ32,34は正逆両方向に搬送することが可能な型式である。昇降ケージ22が1階の入出庫口20Dの位置にある状態では、コンベヤ32,34はそれぞれ、1階の搬入用コンベヤ16の搬入側端部16E及び搬出用コンベヤ14の搬出用端部14Eと同一高さで正対し、コンベヤ32とコンベヤ16、及び、コンベヤ34とコンベヤ14はそれぞれ一連のコンベヤとして接続される。また、図1に示すように、昇降ケージ22が2階の入出庫口20Uの位置とされた状態では、同様に、コンベヤ32,34はそれぞれ、2階の搬出用コンベヤ14の搬出側端部14E及び搬入用コンベヤ16の搬入用端部16Eと同一高さで正対する。
【0019】
なお、入出庫用のコンベヤ32,34は、搬送能力を上げるために、2個のFOUP12を前後に並べて置くことが可能となっている。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、上記構成の階間搬送装置10によるFOUP搬送方法の一例について説明する。
【0021】
図2の(a)に示す状態は、1階で昇降ケージ22内のコンベヤ34上にFOUP12が載置され、昇降ケージ22が上昇されて2階に到着した際の状態である。この時、2階の搬出用コンベヤ14の搬出側端部14Eには、1階に降ろすためのFOUP12が待機している。
【0022】
昇降ケージ22が2階に到着し、コンベヤ32,34が2階の搬出用コンベヤ14及び搬入用コンベヤ16と接続したならば、コンベヤ32,34,14,16を同時に駆動し、搬出用コンベヤ14上のFOUP12をコンベヤ32上に送り込むとともに、コンベヤ34上のFOUP12を搬入用コンベヤ16に送り出す(図2の(b))。この工程は、従来の階間搬送装置であれば、一旦昇降ケージ内のFOUPを外に排出した後、外部の搬入用コンベヤと搬出用コンベヤを切り換えて、FOUPを昇降ケージ内に送り込む必要があり、時間がかかる工程となっていたが、本実施形態によれば、昇降ケージ22に対するFOUP12の入出庫を同時に行うことができ、しかも、搬入用コンベヤ14と搬出用コンベヤ16の切替という作業も不要であるので、短時間で階間搬送を行うことが可能となる。
【0023】
この後、電動モータ24を制御して昇降ケージ22を1階に下降させる(図2の(c))。そして、1階に到着したならば、コンベヤ32,34の駆動方向を上記とは逆方向とする他は、上記と同様にして、搬出用コンベヤ14上で待機していたFOUP12をコンベヤ34に載せ、それと同時にコンベヤ32上のFOUP12を搬入用コンベヤ16に移載する(図3の(d)及び(e))。そして、図3の(f)に示すように、再度、昇降ケージ22を上昇させ、以降は図2の(a)〜(c)及び図3の(d)〜(f)の繰り返しとなる。
【0024】
このように、本実施形態による階間搬送装置10は、各階で工程間搬送部へのFOUP12と工程間搬送部からのFOUP12とを同時に昇降ケージ22に出入れすることができるため、搬送能力は格段に向上し、工程間搬送部及び工程内搬送部をコンベヤで構成したことによる搬送の高速化にも十分対応することが可能となる。
【0025】
図4及び図5は、本発明による階間搬送装置の第2実施形態を示す、図2及び図3と同様な説明図である。この階間搬送装置100は、昇降ケージ122の内部が上下2段に区分され、各段に入出庫用コンベヤ32U,34U;32D,34Dが設置されている点でのみ、図1〜図3に示す階間搬送装置10と異なっている。
【0026】
この階間搬送装置100による動作は次の通りである。まず、上下のコンベヤ34上にFOUP12が載置されている状態で、昇降ケージ122が1階から2階に上昇されているものとする(図5の(h))。そして、昇降ケージ122が2階に近づき、図4の(a)に示すように昇降ケージ122内の上段のコンベヤ32U,34Uが2階の搬出用コンベヤ14及び搬入用コンベヤ16と接続したならば、そこで、昇降ケージ122を一旦停止させ、上段のコンベヤ32U,34Uとコンベヤ14,16を同時に駆動し、搬出用コンベヤ14上のFOUP12を2個だけコンベヤ32U上に送り込むとともに、コンベヤ34U上のFOUP12を搬入用コンベヤ16に送り出す(図4の(b))。この後、昇降ケージ122を僅かに上昇させ、下段のコンベヤ32D,34Dとコンベヤ14,16とを接続させる。そして、同様に、搬出用コンベヤ14上のFOUP12を下段のコンベヤ32上に移載すると同時に、下段のコンベヤ34上のFOUP12を搬入用コンベヤ16に排出する(図4の(c))。1階に降ろす場合は、下段のコンベヤ32D,34Dを先に1階のコンベヤ16,14と接続し、その後で上段のコンベヤ32U,34Uをコンベヤ16,14に接続する点を除き、上記と同様にしてFOUP12の載せ換えを行うことができる(図4の(d)〜図5の(g))。
【0027】
第2実施形態に係る階間搬送装置100は、上述したように、昇降ケージ122内に2組のコンベヤ32U,34U;32D,34Dが設けられているので、搬送能力は更に向上するものであるが、特に、上下2段に配置したことで、上昇中又は下降中の連続工程中に僅かな時間停止するだけで、各段のコンベヤ32U,34U;32D,34Dを搬出用コンベヤ14及び搬入用コンベヤ16と順次接続して、FOUP12の載せ換えを効率よく行うことが可能となる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について使用債に説明したが、本発明は上記実施形態に限られないことは言うまでもない。
【0029】
例えば、上記実施形態は2階建ての半導体製造工場での階間搬送に関するものであるが、本発明は3階以上の階間搬送にも適用可能である。
【0030】
また、搬送物は、半導体ウェハを収容したFOUPに限らず、ウェハカセットや、パネルディスプレイ用のガラスプレートを収容した容器、その他の物品であってもよい。
【0031】
更に、昇降ケージ22,122内のコンベヤ32,34を3段以上とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る階間搬送装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の階間搬送装置を用いての階間搬送の手順を示す概略説明図である。
【図3】図1の階間搬送装置を用いての階間搬送の手順を示す概略説明図であり、図2と続くものである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る階間搬送装置を、階間搬送の手順とともに示す、図2と同様な概略説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る階間搬送装置を、階間搬送の手順とともに示す、図3と同様な概略説明図であり、図4と続くものである。
【符号の説明】
【0033】
10,100…階間搬送装置、14…搬出用コンベヤ、14E…搬出側端部、16…搬入用コンベヤ、16E…搬入側端部、18…搬送室、20D,20U…入出庫口、22,122…昇降ケージ、24…電動モータ、32,34…入出庫用コンベヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階にて互いに並設された搬入用コンベヤ(16)の搬入側端部(16E)と搬出用コンベヤ(14)の搬出側端部(14E)とに対し搬送物(12)を搬送する階間搬送装置(10)であって、
階間に設けられた搬送室(18)と、
各階の前記搬入用コンベヤ(16)の搬入側端部(16E)及び前記搬出用コンベヤ(14)の搬出側端部(14E)に対向するよう、各階毎に前記搬送室(18)に形成された入出庫口(20D,20U)と、
前記搬送室(18)内に昇降自在に配置された昇降ケージ(22)と、
前記昇降ケージ(22)を昇降させるための昇降機構(24,26,28,30)と、
前記昇降ケージ(22)内に互いに並設された2台の入出庫用コンベヤ(32,34)と
を備え、
前記昇降ケージ(22)がいずれかの前記入出庫口(20D,20U)の位置に置かれた場合に、前記2台の入出庫用コンベヤ(32,34)がそれぞれ、当該入出庫口(20D,20U)に対向する前記搬入用コンベヤ(16)の搬入側端部(16E)又は前記搬出用コンベヤ(14)の搬出側端部(14E)と接続するようになっている、階間搬送装置。
【請求項2】
前記昇降ケージ(122)内が上下に複数段に区画され、各段毎に2台の入出庫用コンベヤ(32U,34U;32D,34D)が設けられている、請求項1に記載の階間搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111421(P2006−111421A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302088(P2004−302088)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(502380361)トーヨーカネツソリューションズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】