説明

隔て板

【課題】破壊せずに隔て板の幅のほぼ全域に開設される開口が得られるようにした隔て板を提供する。
【解決手段】マンション等のベランダに設置される隔て板1に開設される開口の上端開口縁に固定される下向き凹溝11を有する上部枠10と、下端開口縁に固定される上向き凹溝21を有する下部枠20と、上端部が上部枠の下向き凹溝内に嵌め込まれ、下端部が下部枠の上向き凹溝内に落とし込んで嵌め込まれる扉体8と、を具備し、下部枠の上向き凹溝内に、扉体の厚さ方向の下端縁と当接する複数の剪断可能な支持ピン70を横架し、上部枠の下向き凹溝内に、回動することにより扉体の上端縁に当接して下方に押圧するレバー50を軸支する。レバーの回動操作により扉体が下方に押圧されると、支持ピンが剪断破壊することによって扉体が下部枠の内向き凹溝の下部まで移動すると共に、扉体の上端縁が上部枠の下向き凹溝よりも下方に位置し、扉体を押し倒し可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばマンションなどの集合住宅におけるベランダ等に使用される扉体を備える隔て板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マンション等の集合住宅においては、プライバシー保護等のために、バルコニーやベランダ〈以下に、ベランダ等という〉における隣家間の境界部分に隔て板が設置されている。
【0003】
火災等により、避難が必要な場合、避難器具は各戸毎には備えられていないため、隔て板は、火災発生等の避難が必要となったとき、蹴破って避難装置のある所まで行くことができるように定められている。
【0004】
従来の隔て板は、珪酸カルシウム板等、破壊可能な材質で形成されており、例えば、隔て板の縦枠と、ベランダの躯体に取り付けられる取付プレートとをボルトとナットを螺合して固定する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−113643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、隔て板を形成する珪酸カルシウム板は破壊可能であっても、力の弱い人は隔て板を蹴破ることは容易ではなく、避難が遅れる危険性を有している。
【0007】
また、隔て板の一部を破壊したとしても、開口を大きくできない上、開口の周囲が鋭利な状態になってしまい、怪我をする危険性を有している。
【0008】
更には、マンションは数年おきに改修工事(防水、塗装等の改修作業)が行われるが、改修工事が必要となったときは、隔て板を破壊する訳にはいかないので、建物の外側に足場を組んで各戸にアクセスしているのが現状である。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、破壊せずに隔て板の幅のほぼ全域に開設される開口が得られるようにした隔て板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明に係る隔て板は、マンション等の集合住宅のベランダにおける隣家間の境界部分に設置される隔て板であって、隔て板を構成する両側枠を残して開設される開口の上端開口縁に固定される下向き凹溝を有する上部枠と、上記開口の下端開口縁に固定される上向き凹溝を有する下部枠と、上端部が上記上部枠の下向き凹溝内に嵌め込まれ、下端部が上記下部枠の上向き凹溝内に落とし込んで嵌め込まれる扉体と、を具備し、上記下部枠の上向き凹溝内に、上記扉体の厚さ方向の下端縁と当接する複数の剪断可能な支持ピンを横架し、上記上部枠の下向き凹溝内に、回動することにより上記扉体の上端縁に当接して下方に押圧するレバーを軸支し、上記レバーの回動操作により上記扉体が下方に押圧されると、上記支持ピンが剪断破壊することによって扉体が上記下部枠の内向き凹溝の下部まで移動すると共に、扉体の上端縁が上記上部枠の下向き凹溝よりも下方に位置し、扉体を押し倒し可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、隔て板を構成する両側枠を残して開設される開口の上下端部に固定される上部枠と下部枠との間に扉体をいわゆる「けんどん式」に嵌め込むことができる。また、避難時には、レバーの回動操作により扉体を下方に押圧して、扉体を支持する支持ピンを剪断破壊することによって扉体を下部枠の内向き凹溝の下部まで移動すると共に、扉体の上端縁を上部枠の下向き凹溝よりも下方に位置させて扉体を押し倒すことにより、避難開口を確保することができる。
【0012】
ここで、「けんどん式」とは、扉体の上端部を上部枠の下向き凹溝に嵌め込み、扉体の下端部を下部枠の上向き凹溝に嵌め落として扉体を嵌め込み、取り外す場合は、扉体の上端部を上方に移動して扉体の下端部を下部枠の上向き凹溝から外した後、扉体を斜め下方に移動して取り外す方式をいう。
【0013】
この発明において、上記支持ピンは、上記下部枠の上向き凹溝の両側壁近傍に中空部が形成されると共に、中央部に中実部が形成され、上記扉体の下端部には、上記支持ピンの両側中空部を剪断破壊するための突条片が設けられている方が好ましい。
【0014】
このように構成することにより、レバーの回動操作によって下方に移動した扉体の下端部に設けられた突条片が支持ピンの両端側の中空部を容易に剪断破壊することができる。
【0015】
また、この発明において、上記レバーは、該レバーの自由端側における上記扉体の表裏面側に延在する操作片が突設されると共に、ばね部材の弾発力の付勢によって上記上部枠の下向き凹溝内に格納されている方が好ましい。
【0016】
このように構成することにより、隔て板の両面側から操作片をもってレバーを容易に回動操作することができると共に、回動操作後に扉体を押し倒して開口を確保した後は、レバーはばね部材の弾発力により、上部枠の下向き凹溝内に格納されるので、避難者の避難の邪魔にならない。
【0017】
また、この発明において、上記上部枠に、該上部枠の下向き凹溝内に位置する上記扉体の上方移動の阻止と、移動阻止の解除が切り換え可能なロック機構を更に具備する方が好ましい。この場合、上記ロック機構は、上記上部枠の両側片に回動可能に装着される一対の回動板と、これら両回動板の外周部に連結される扉体固定片と、上記回動板の外面における偏心位置に突設される操作突起に係合して上記回動板と扉体固定片を上記扉体の移動阻止位置と、解除位置に切り換える工具と、を具備する構造とする方がよい。
【0018】
このように構成することにより、隔て板を構成する両側枠を残して開設される開口の上下端部に固定される上部枠と下部枠との間に、いわゆる「けんどん式」に嵌め込まれた扉体の不用意な取外しをロック機構のロック状態によって阻止することができる。また、回動操作によって扉体のロック状態とロック解除状態を切り換えることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0020】
隔て板を構成する両側枠を残して開設される開口の上下端部に固定される上部枠と下部枠との間に扉体をいわゆる「けんどん式」により落とし込んで嵌め込むことができると共に、レバー回動操作により扉体を下方に押圧して、扉体を支持する支持ピンを剪断破壊することによって扉体を下部枠の内向き凹溝の下部まで移動すると共に、扉体の上端縁を上部枠の下向き凹溝よりも下方に位置させて扉体を押し倒すことにより、広い開口を確保することができる。したがって、隔て板を構成する扉体を破壊することなく、開口の全域を占める扉体を押し倒して広い開口を確保することができるので、避難時には避難開口には破片が発生せず、安全である。また、扉体は破壊しないので、再利用を可能にすることができる。
【0021】
また、ロック機構により上部枠の下向き凹溝内に位置する上記扉体の上方移動の阻止と、移動阻止の解除が切り換え可能であるので、平常時には、ロック機構をロック状態にすることで、隣家間のプライバシーの保護が図れる。また、ベランダ等の空間のメンテナンス(防水、塗装等の改修作業)時には、ロック機構をアンロック(ロック解除)状態にし、扉体を取外して作業者の通行を可能にすることができるので、メンテナンス作業を容易に行うことができる。この場合、ロック機構は、上部枠の両側片に回動可能に装着される一対の回動板の外周部に連結される扉体固定片と、回動板の外面における偏心位置に突設される操作突起に係合して回動板と扉体固定片を扉体の移動阻止位置と、解除位置に切り換える特殊な工具と、を具備することにより、扉体が不用意に開閉することがないので、更に隣家間のプライバシーの保護が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る隔て板の設置状態を示す正面図である。
【図2】上記隔て板の設置状態を示す斜視図である。
【図3】上記隔て板の斜視図である。
【図4】上記隔て板の扉体の支持状態を示す縦断面図(a)及び扉体の支持解除状態を示す縦断面図(b)である。
【図5】この発明における支持ピンの扉体の支持状態を示す拡大断面図(a)及び支持ピンの破壊状態を示す拡大断面図(b)である。
【図6】この発明におけるレバーの取付状態を示す要部正面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図7】上記レバーの取付状態を示す斜視図である。
【図8】この発明における上部枠、レバー及び上部枠小口キャップを示す分解斜視図である。
【図9】上記支持ピンによる扉体の支持状態を示す要部正面図である。
【図10】上記支持ピンの取付状態を示す横断面図(a)及び(a)のII部拡大断面図(b)である。
【図11】上記支持ピンによる扉体の支持状態を示す斜視図である。
【図12】この発明における下部枠と下部枠小口キャップを示す分解斜視図である。
【図13】この発明における扉体の構成部材と開口枠部材を示す分解斜視図である。
【図14】避難時の扉体の開放手順を示す概略斜視図である。
【図15】避難時の扉体の開放状態を示す縦断面図である。
【図16】この発明におけるロック機構の解除状態を示す縦断面図である。
【図17】この発明におけるロック機構のロック状態を示す斜視図である。
【図18】上記ロック機構のロック解除状態を示す斜視図である。
【図19】この発明におけるロック操作用工具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、この発明に係る隔て板の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
この発明に係る隔て板1は、図1及び図2に示すように、マンション等の集合住宅のベランダ2における隣家間の境界部分の建物の躯体3とベランダ2のスラブ4に設置固定されて、隔て板1を構成する方形状に形成された一対の側枠5aと、上部横枠5b,下部横枠5c及び仕切り横枠5dからなる枠材5と、枠材5内に嵌め込まれる例えば珪酸カルシウムボードや、フレキシブルボード(繊維強化セメント板)のような破壊可能な材料からなる板材6と、両側枠5aと仕切り横枠5dと下部横枠5cによって開設される開口7に着脱可能に取り付けられる扉体8とを備えている。
【0025】
この場合、隔て板1は、図4に示すように、隔て板1を構成する両側枠5aを残して開設される開口7の上端開口縁である仕切り横枠5dに固定ねじ9aによって固定される下向き凹溝11を有する上部枠10と、開口7の下端開口縁に固定ねじ9bによって固定される上向き凹溝21を有する下部枠20との間に、着脱可能すなわちいわゆる「けんどん式」の落とし込みにより嵌め込まれている。なお、開口7を形成する側枠5aの開口側には、側部枠25に固定ねじ9cによって固定されている。
【0026】
上部枠10及び下部枠20は夫々例えばアルミニウム製押出形材にて断面コ字状に形成されており、長手方向の両端部には、それぞれ合成樹脂製の上部枠小口キャップ12,下部枠小口キャップ22が被着されている。これら上部枠小口キャップ12と下部枠小口キャップ22は、同様に形成されており、図12を参照して下部枠小口キャップ22を代表して説明すると、下部枠小口キャップ22は、下部枠20の長手方向の端部の開口(小口)を閉塞する蓋部22aと、蓋部22aの両側に下部枠20の側片21aの外側面に当接する側縁部22bと、蓋部22aの閉塞側面に突設され、下部枠20の側片21aの内面に当接する一対の脚片22cとで構成されている。なお、下部枠小口キャップ22の脚片22cを下部枠20の側片21aの内面に当接することにより、下部枠20の上向き凹溝21と扉体8との寸法差による隙間を少なくすることができるので、風圧等による扉体8のガタツキを抑制することができる。
【0027】
また、上部枠10には、下向き凹溝11内に位置する扉体8の上方移動の阻止(ロック状態)と、移動阻止の解除(アンロック状態)が切り換え可能なロック機構40が設けられている。更に、上部枠10には、下向き凹溝11内に位置する扉体8の上端部を押圧する緊急操作用のレバー50が回動可能に軸支されている。
【0028】
また、下部枠20には、上向き凹溝21内に位置する扉体8の厚さ方向の下端縁と当接して扉体8を支持する複数例えば扉体8の幅方向の両端側に位置する2個の剪断可能な支持ピン70が横架されている。
【0029】
なお、側部枠25は例えばアルミニウム製押出形材にて形成されており、断面中空矩形状の基部25aと、基部25aの一側面の両側から平行に突出する一対の脚片25bとを具備している。
【0030】
上記レバー50は、例えばアルミニウム製部材にて形成されており、図6ないし図8に示すように、互いに平行な長尺状の一対の側片51の基端側の一端部の上縁部が連結片52にて連結され、自由端側の他端部の両側片51の下縁部から外側すなわち扉体8の表裏面側に直交状に延在する操作片53が突設されている。なお、操作片53の外面には合成樹脂製の皮膜材がコーティングされている。
【0031】
また、レバー50の基端側の両側片51には、レバー50を回動可能に軸支する枢支軸54が挿通可能な第1の挿通孔51aが穿設されると共に、第1の挿通孔51aより内方側の位置には、一定の荷重によって剪断可能な合成樹脂製の係止ピン55が挿通可能な第2の挿通孔51bが穿設されている。更には、レバー50の両側片51の第2の挿通孔51bより内方側の位置には、レバー50の回動によって扉体8の上端部を押圧する例えばステンレス製の押圧ピン56が横架されている。
【0032】
レバー50は、上部枠10の中央部より端部側に偏倚した位置の両側片51を貫通する枢支軸54が第1の挿通孔51aに挿通されて回動可能に軸支されると共に、枢支軸54に巻装されるばね部材例えば捻りばね57の弾発力の付勢によって常時上部枠10の下向き凹溝11内に格納されている。この場合、捻りばね57は、枢支軸54の外周に巻装されるコイル部57aの一端から軸線に対して直交状に延在する第1の係止部57bが上部枠10の上部片11dの内面に係止し、コイル部57aの他端から軸線に対して直交状に延在する第2の係止部57cがレバー50の連結片52の下面に係止している。
【0033】
捻りばね57の弾発力の付勢によって上部枠10の下向き凹溝11内に格納されるレバー50は、上部枠10の側片11aとレバー50の第2の挿通孔51bを挿通する係止ピン55によって不用意に回動しないように構成されている。なお、係止ピン55は後述する支持ピン70と同様に形成されており、一定の荷重によって剪断可能に形成されている。
【0034】
上記支持ピン70は、図4及び図10に示すように、下部枠20の上向き凹溝21の両側壁すなわち下部枠20の側片21aの近傍に中空部71が形成されると共に、中央部に中実部72が形成されている。また、支持ピン70は、図10に示すように、下部枠20の一方の側片21aに設けられた貫通孔21bを貫通する第1の支持ピン半体73と、下部枠20の他方の側片21aに設けられた貫通孔21bを貫通する第2の支持ピン半体74とで構成されている。この場合、第1の支持ピン半体73は、下部枠20の側片21aの外側に位置する頭部73aと、貫通孔21b内に貫挿される大径部73bと、大径部73bの先端に段部73cを介して延在する小径部73dとを備え、小径部73dの先端から大径部73bに渡って中空部71が形成されている。一方、第2の支持ピン半体は、下部枠20の側片21aの外側に位置する頭部74aと、貫通孔21b内に貫挿される大径部74bと、大径部74bの先端に段部74cを介して延在する小径部74dと、小径部74dの先端に段部74eを介して延在する挿入端部74fとを備え、頭部74aから大径部74bを介して小径部74dの中間部に渡って中空部71が形成され、小径部74dの先端側と挿入端部74fに中実部72が形成されている。
【0035】
上記のように形成される支持ピン70は、下部枠20の両側片21aの外方から下部枠20の上向き凹溝21内に夫々第1の支持ピン半体73と第2の支持ピン半体74を挿入し、第1の支持ピン半体73の小径部73dの開口部と、第2の支持ピン半体74の挿入端部74fとを嵌合して連結することで、下部枠20に横架されて扉体8の下端部を支持する(図4(a)、図11参照)。扉体8を支持した状態で、支持ピン70は、下部枠20の上向き凹溝21の両側壁すなわち下部枠20の側片21aの近傍に中空部71が形成されると共に、中央部に中実部72が形成されるので、両側の中空部71に荷重が加わることで剪断される。
【0036】
次に、扉体8について図4,図5,図10〜図13を参照して説明する。上記扉体8は、板材6と同様の材料すなわち例えば珪酸カルシウムボードにて形成されている。また、扉体8の両側縁部には縦枠30が装着され、扉体8の上縁部には上枠32が装着され、扉体8の下縁部には下枠34が装着されている。この場合、縦枠30,上枠32及び下枠34は例えばアルミニウム製押出形材にて形成されている。なお、扉体8の表裏面における中央上部には吸盤80が吸着可能な例えばアルミニウム又はステンレス製の取付板81が貼着されている。
【0037】
縦枠30の外側には、扉体8と側部枠25との隙間を塞ぐための扉パッキン31が沿設されている。この場合、縦枠30は、図10に示すように、仕切壁30aによって区画される2つの中空部30b,30cを有する中空矩形状基部30dの一端に扉体8を構成する板材6の側縁部を嵌合する扉嵌合溝30eを有しており、扉嵌合溝30eの開口端には外側に向かうフランジ部30fが形成されている。
【0038】
なお、扉パッキン31は、例えばポリエチレンフォーム(PE)又は発泡EPT(エチレンプロピレンゴム){EPDMともいう}等の軟質の断面矩形状の部材にて形成されており、例えば両面接着テープや接着剤等によって縦枠30の側部枠25側面に固着されている。
【0039】
上枠32は、図4に示すように、仕切壁32aによって区画される2つの中空部32b,32cを有する中空矩形状基部32dの一端に扉体8を構成する板材6の側縁部を嵌合する扉嵌合溝32eが形成されている。
【0040】
下枠34は、図4,図5,図10〜図12に示すように、仕切壁34aによって区画される2つの中空部34b,34cを有する中空矩形状基部34dの一端に扉体8を構成する板材6の側縁部を嵌合する扉嵌合溝34eを有しており、扉嵌合溝34eの開口端には外側に向かうフランジ部34fが形成されている。また、中空矩形状基部34dの他端すなわち下端部の長手方向に沿う両側には、支持ピン70の両側中空部71を剪断破壊するための一対の2条の突条片35a,35bが設けられている。この場合、2条の突条片35a,35bのうちの内側の突条片35aは支持ピン70の中実部72側の中空部71を剪断し得る位置に設けられ、外側の突条片35bは支持ピン70の下部枠20側の中空部71を剪断し得る位置に設けられている(図4(a)及び図5(a)参照)。
【0041】
次に、ロック機構40について、図16ないし図18を参照して説明する。ロック機構40は、上部枠10の両側片11aに回動可能に装着される一対の回動板41と、これら両回動板41の外周部に連結される扉体固定片42と、回動板41の外面における偏心位置に突設される2個の操作突起43に係合して回動板41と扉体固定片42を扉体8の移動阻止位置(以下にロック位置という)と、解除位置(以下にアンロック位置という)に切り換える工具60と、を具備する。
【0042】
この場合、回動板41と扉体固定片42とは例えばステンレス製部材によって一体に形成されている。すなわち、一対の円板にて形成される回動板41の外周の一部を例えばプレス加工により屈曲して板状の扉体固定片42が一体に形成される。なお、扉体固定片42の一側辺部には係止片42aが扉体固定片42に対して直交状に延設されている。
【0043】
また、回動板41は、下向き凹溝11を構成する両側片11aに設けられた開口部11c内に回動可能に配設されており、回動板41の外面側に円形に形成される回動パッキン44を介在して回動板41より大径円形の回動板抜け止め円板45が図示しないねじによって固定されて上部枠10から抜け出ないようになっている。回動板抜け止め円板45の中心には、工具60の操作軸部63が挿入可能な貫通孔41aが設けられている。また、回動板41の偏心位置に突設される2個の操作突起43は、回動板抜け止め円板45及び回動パッキン44を貫通して回動板41にねじ固定されている。また、下向き凹溝11の底部を構成する上部枠10の上部片11dには、回動板41と共に回動する扉体固定片42のアンロック位置を規制するための位置規制ねじ46が上部片11dにねじ結合された状態で垂下されている。このように位置規制ねじ46を設けることによって、回動板41と共に扉体固定片42がロック位置から90度回動すると、扉体固定片42に延設された係止片42aの先端が位置規制ねじ46に当接して回動板41すなわち扉体固定片42のアンロック位置が規制される。
【0044】
また、上部枠10におけるロック機構40の取付部には回動板41を外部から目隠しするカバー部材47が固定ねじ9cによって固定されている。この場合、カバー部材47は、回動板41を覆う截頭円錐状の頭部47aと、頭部47aの外周に延設される略楕円形状のフランジ部47bとからなるハット状に形成されており、フランジ部47bを貫通する固定ねじ9cによって固定されている。また、頭部47aの頂部中心位置には、2個の操作突起43を回転させることが可能な工具60の操作軸部63が挿通可能な鍵孔47cが穿設されている。また、頭部47aの頂部の中心と同心円上の1箇所には窓孔47dが設けられている。この窓孔47dは、回動板41と一体に回動する回動板抜け止め円板45の同心円上に施されたロック確認用目印48が外部から確認できるようにしたものである。
【0045】
上記工具60は、図19に示すように、断面円形のL字状の基部61の一端に、ロック機構40の回動板41に突設された2個の操作突起43に係合する一対の係合部62を対称方向に突設する略T字状の操作軸部63を有するステンレス製の専用工具にて形成されている。
【0046】
次に、上記実施形態に係る隔て板1の施工手順について説明する。まず、既設の隔て板1における両側枠5aと、下部横枠5c及び仕切り横枠5dに嵌め込まれている板材6を取り外して開口7を形成する。次に、上部枠10、下部枠20及び側部枠25を開口7の寸法に合わせて切断する。
【0047】
予め工場において、上部枠10の下向き凹溝11内に、枢支軸54と捻りばね57を介してレバー50を回動可能に枢支すると共に、係止ピン55によってレバー50の不用意な回動を阻止した状態に組み立てて出荷する。現場において、レバー50が組み込まれた上部枠10の長手方向の両端開口(小口)に上部枠小口キャップ12を被着する。一方、下部枠20の長手方向の両側に設けられた貫通孔21bを介して上向き凹溝21内に挿入される第1及び第2の支持ピン半体73,74を上向き凹溝21内で嵌合・連結して支持ピン70を横架し、下部枠20の長手方向の両端開口(小口)に下部枠小口キャップ22を被着する。そして、上部枠10、下部枠20、側部枠25を既存の隔て板1の仕切り横枠5d、下部横枠5c及び側枠5aの中心に当て、ドリルで下孔をあけ、固定ねじ9a,9b,9cによって、上部枠10を仕切り横枠5dに固定し、下部枠20を下部横枠5cに固定し、側部枠25を側枠5aに固定する。なお、支持ピン70の下部枠20への取付作業は、下部枠20を下部横枠5cに固定した後に行ってもよい。
【0048】
一方、扉体8を構成する板材6を開口寸法に合わせて切断し、切断された板材6の上下及び両側縁部に上枠32、下枠34及び縦枠30を装着する。
【0049】
上記のように構成された扉体8を開口7に取り付けるには、「けんどん式」で嵌め込む。すなわち、まず、扉体8に設けられた取付板81に吸盤80を吸着して一方の手で扉体8の上部を保持し、他方の手で扉体8の下枠34に設けられたフランジ部34fを掴んで、扉体8を持ち上げ、扉体8の上端部を上部枠10の下向き凹溝11内に差し込む。次いで、扉体8を垂直にして、扉体8の下端部を下部枠20の上向き凹溝21内に落とし込む。
【0050】
開口7内に扉体8を嵌め込んだ後、上部枠10に予め装着されたロック機構40のカバー部材47に設けられた鍵孔47cに工具60の操作軸部63を挿入し、工具60に設けられた係合部62を回動板41に設けられた操作突起43に係合させた状態で工具60によって回動板41を鉛直方向に90度回動して、アンロック位置にある扉体固定片42を扉体8の上端部に移動して扉体8の上方への移動を阻止し、扉体8をロック状態にする。これにより扉体8の取り付けが完了する。
【0051】
次に、緊急時に扉体8を開放して避難する場合の手順について、図1〜図5,図14及び図15を参照して説明する。図14(a)に示すように隔て板1の開口7に扉体8が取り付けられた状態で、レバー50の操作片53を下方に押し下げる。すると、係止ピン55は支持ピン70と同様に中実部72と中空部71を有しているので、所定の荷重以上の力が係止ピン55に加わると、係止ピン55が剪断破壊して、レバー50が回動する。レバー50の回動に伴ってレバー50に取り付けられた押圧ピン56が扉体8の上端部すなわち上枠32の上端縁に当接して扉体8を下方に押圧する。すると、扉体8の下枠34の下端部に設けられた突条片35a,35bが支持ピン70の中実部72側と上向き凹溝21側の中空部71に向かって突入して支持ピン70を剪断破壊する(図4(b),図5(b)参照)。支持ピン70が破壊することによって扉体8が下部枠20の上向き凹溝21内の底部に落とし込まれ、扉体8の上端部が上部枠10の下方に位置する。このとき、レバー50の回動操作を解除すると、捻りばね57の弾発力の付勢によってレバー50は上部枠10の下向き凹溝11内に復帰(格納)する。この状態で、図15に示すように扉体8を足で一方側へ押し倒すことによって、扉体8は開放され、開口7を避難通路として確保することができる(図14(c)参照)。したがって、扉体8は破壊されずに、広い開口7を確保することができるので、避難者は安全にかつ迅速に避難することができる。
【0052】
なお、マンションの改修工事(防水、塗装等の改修作業)が必要となった場合は、ロック機構40のロック状態を解除することによって扉体8を取り外すことができる。すなわち、まず、工具60の操作軸部63をロック機構40のカバー部材47に設けられた鍵孔47cに挿入し、工具60に設けられた係合部62を回動板41に設けられた操作突起43に係合させた状態で工具60によって回動板41を鉛直方向に90度回動して、ロック位置にある扉体固定片42を上方のアンロック位置に移動する。
【0053】
次に、扉体8に設けられた取付板81に吸盤80を吸着して一方の手で扉体8の上部を保持し、他方の手で扉体8の下枠34に設けられたフランジ部34fを掴んで、扉体8を持ち上げる。この状態で、扉体8の下端部を開口7の外側に移動し、扉体8を斜め下方に移動して、扉体8の上端部を上部枠10の下向き凹溝11内から引き出して扉体8を開口7から取り外すことができる。
【0054】
なお、扉体8が取り付けられた平常時において、悪戯等によって万が一レバー50が押し下げられて係止ピン55が剪断破壊し、レバー50が回動したとしても、下部枠小口キャップ22の脚片22cにより、下部枠20の上向き凹溝21と扉体8との隙間が小さいので、扉体8の倒れを少なくすることができる上、扉体8の上端部は回動した状態のレバー50に係止する。したがって、避難時以外に不用意に扉体8は開放することがない。
【0055】
上記実施形態の隔て板1によれば、避難時には、レバー50の回動操作により扉体8を下方に押圧して、扉体8を支持する支持ピン70を剪断破壊することによって扉体8を下部枠20の上向き凹溝21の下部まで移動して扉体8を押し倒すことにより、広い避難開口を確保することができるので、避難者は安全にかつ迅速に避難することができる。
【0056】
また、上記実施形態の隔て板1によれば、隔て板1を構成する両側枠5aを残して開設される開口7の上下端部に固定される上部枠10と下部枠20との間に扉体をいわゆる「けんどん式」に嵌め込むことができるので、改修作業時には、開口7の全域を占める扉体8を取り外して広い通路開口を確保することができる。
【0057】
また、ロック機構40により、平常時には、ロック機構40をロック状態にすることで、隣家間のプライバシーの保護が図れる。また、ロック機構40は、上部枠10の両側片11aに回動可能に装着される一対の回動板41の外周部に連結される扉体固定片42と、回動板41の外面における偏心位置に突設される操作突起43に係合して回動板41と扉体固定片42を扉体8のロック位置と、アンロック位置に切り換える特殊な工具を用いるので、扉体8が不用意に開閉することがないので、隣家間のプライバシーの保護が図れる。
【0058】
なお、上記実施形態では既存の隔て板1に扉体8を取り付ける場合について説明したが、隔て板1の枠材5の仕切り横枠5cと上部枠10、下部横枠5cと下部枠20とを一体に形成すれば、新規の隔て板1にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 隔て板
5 枠材
6 板材
7 開口
8 扉体
10 上部枠
11 下向き凹溝
20 下部枠
21 上向き凹溝
30 縦枠
32 上枠
34 下枠
34f フランジ部
35a,35b 突条片
40 ロック機構
50 レバー
53 操作片
54 枢支軸
55 係止ピン
56 押圧ピン
57 捻りばね(ばね部材)
60 工具
62 係合部
63 操作軸部
70 支持ピン
71 中空部
72 中実部
80 吸盤
81 取付板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンション等の集合住宅のベランダにおける隣家間の境界部分に設置される隔て板であって、
隔て板を構成する両側枠を残して開設される開口の上端開口縁に固定される下向き凹溝を有する上部枠と、
上記開口の下端開口縁に固定される上向き凹溝を有する下部枠と、
上端部が上記上部枠の下向き凹溝内に嵌め込まれ、下端部が上記下部枠の上向き凹溝内に落とし込んで嵌め込まれる扉体と、を具備し、
上記下部枠の上向き凹溝内に、上記扉体の厚さ方向の下端縁と当接する複数の剪断可能な支持ピンを横架し、
上記上部枠の下向き凹溝内に、回動することにより上記扉体の上端縁に当接して下方に押圧するレバーを軸支し、
上記レバーの回動操作により上記扉体が下方に押圧されると、上記支持ピンが剪断破壊することによって扉体が上記下部枠の内向き凹溝の下部まで移動すると共に、扉体の上端縁が上記上部枠の下向き凹溝よりも下方に位置し、扉体を押し倒し可能に形成してなる、
ことを特徴とする隔て板。
【請求項2】
請求項1記載の隔て板において、
上記支持ピンは、上記下部枠の上向き凹溝の両側壁近傍に中空部が形成されると共に、中央部に中実部が形成され、上記扉体の下端部には、上記支持ピンの両側中空部を剪断破壊するための突条片が設けられている、ことを特徴とする隔て板。
【請求項3】
請求項1記載の隔て板において、
上記レバーは、該レバーの自由端側における上記扉体の表裏面側に延在する操作片が突設されると共に、ばね部材の弾発力の付勢によって上記上部枠の下向き凹溝内に格納されている、ことを特徴とする隔て板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の隔て板において、
上記上部枠に、該上部枠の下向き凹溝内に位置する上記扉体の上方移動の阻止と、移動阻止の解除が切り換え可能なロック機構を更に具備する、ことを特徴とする隔て板。
【請求項5】
請求項4記載の隔て板において、
上記ロック機構は、上記上部枠の両側片に回動可能に装着される一対の回動板と、これら両回動板の外周部に連結される扉体固定片と、上記回動板の外面における偏心位置に突設される操作突起に係合して上記回動板と扉体固定片を上記扉体の移動阻止位置と、解除位置に切り換える工具と、を具備する、ことを特徴とする扉体を備える隔て板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−193549(P2012−193549A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58675(P2011−58675)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【出願人】(502266205)大和ライフネクスト株式会社 (4)
【Fターム(参考)】