説明

障壁被覆の層を含む被覆積層体

少なくとも一つの劣化性被覆層及び少なくとも一つの障壁被覆層を含む被覆構成体が開示されている。この被覆構成体は、熱、及び塩化物のようなハロゲン化物、硫黄、塩、塩素、アルカリ、及びエナメルのような或る化学物質に曝された後、従来の被覆基体よりも改良された性能を有する被覆基体を製造するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層機能性被覆、特に少なくとも一つの障壁被覆層を含むそのような被覆に関する。
【0002】
参考関連出願
本願は、2001年10月22日に出願された米国特許出願Serial No.10/007,382のCIPである2002年4月25日に出願された米国特許出願Serial No.10/133,805のCIPである2003年3月25日に出願された米国特許出願Serial No.10/397,001のCIPである2003年4月24日に出願された米国特許出願Serial No.10/422,095のCIPである。本願は、2002年4月25日に出願された米国特許仮出願Serial No.60/376,000の利権も主張するものである。それら出願の全ては、参考のため全体的にここに入れてある。
【背景技術】
【0003】
ガラスのような基体は、商業的建造物から、家庭、自動車、機械設備等の範囲の多くの用途で用いられている。それら基体は希望の性能特性を得るため、機能性被覆(functional coating)で屡々被覆される。
【0004】
当分野では、伝導性被覆、太陽光調節被覆、光触媒被覆、低放射性被覆、透明伝導性被覆(それらに限定されるものではない)等を含めた極めて多種類の機能性被覆が知られている。機能性被覆の一例は、誘電体材料の層の間に少なくとも一つの金属層(単数又は複数)を挟んだものを含む金属系高透過率、低放射性被覆である。通常金属層は、金、銅、又は銀であり、誘電体材料は、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、又は亜鉛/錫酸化物のような金属酸化物である。
【0005】
或る用途については、機能性被覆で被覆された基体を加熱する必要がある。例えば、自動車風防ガラスとして用いられる被覆ガラス基体は、そのガラスを曲げるために加熱しなければならないことがある。典型的には、ガラスは、自動車風防ガラスのために必要な湾曲を達成するためには1150°F〜1200°Fの最高温度まで20〜30分間加熱されるであろう。湾曲の複雑性により、温度は一層長くなったり、時間が一層長くなったりする。
【0006】
被覆基体を加熱することは、加熱によって劣化するような層(単数又は複数)を被覆が含む場合には問題になることがある。一般に被覆基体の加熱は、例えば、加熱によって移動性物質が移動し易くなり、或る被覆層から流出すると言う種々の理由から或る温度まで(或る時間の間)有利な結果を生ずるであろうが、それでも悪影響が起きる。被覆の性能が劣化し始める前に被覆層を加熱することができる温度と暴露時間との組合せを、ここでは被覆の「限界熱量(heat budget)」として言及する。被覆の性能は、その限界熱量を越えた後に劣化し始める。なぜなら少なくとも一つの被覆層が劣化し始めるからである。被覆積層体中のどの被覆層も、その被覆を形成するために用いた材料により異なった限界熱量を有する。被覆積層体についての限界熱量は、積層体中で最低の限界熱量を有する被覆層によって決定され、そこでその層が劣化し始める。
【0007】
例えば、上に記載したような高透過率、低放射性被覆では、金属層(単数又は複数)は、被覆積層体中で最も低い限界熱量を有するのが典型的である。そのような被覆で被覆されたガラス基体を曲げに典型的に伴われる加熱条件、例えば、1150°F〜1200°Fに20〜30分間暴露されると、その金属層(単数又は複数)は劣化するであろう。金属層(単数又は複数)の劣化は、光学的及び/又は太陽光調節特性が低下した被覆基体をもたらすことがある。特に機能性被覆は電気抵抗の増大、曇りの増大、太陽光赤外線(IR)反射性の低下、可視光透過率の低下、放射性の増大等を示すことがある。
【0008】
加熱の外に、塩、塩化物、硫黄、塩素、アルカリ、及びエナメルのようなハロゲンを含む或る化学物質(それらに限定されるものではない)に暴露するような他の事柄で機能性被覆中の層の劣化を起こすことがある。
【0009】
被覆基体の最適性能を確実に与えるため、被覆積層体中のどの劣化性(degradable)被覆層(単数又は複数)においても、被覆層の劣化をもたらし、続いてその被覆基体の性能を低下するような条件及び/又は物質から保護することが望ましい。慣用的には、下地層のような犠牲層〔「遮断層(blocker layer)」としても知られている〕が、被覆積層体、例えば、金属系高透過率、低放射性被覆に追加されるか、又は劣化性層(単数又は複数)を保護するために一層厚いレベルに適用されてきている。犠牲層は、望ましくない条件に優先的に呼応するか又は反応し、被覆積層体中の他の選択された層を保護する。下地層(単数又は複数)を追加するか、又は一層厚い下地層(単数又は複数)を用いることに伴う問題は、被覆を加熱した後に、過剰の下地が被覆の個々の層の界面での損傷により接着性を悪くし、曇りを増大する結果になることがあることである。また、過剰の下地は、被覆を柔らかくし、擦ることにより損傷し易くすることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、被覆積層体中のどの劣化性層(単数又は複数)をも保護するための少なくとも一つの障壁被覆層を有する被覆構成体(coating composition)を与える。本発明による被覆構成体は、増大した限界熱量を示し、化学的腐食に耐える改良された能力を示す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの非限定的態様として、本発明は、少なくとも一つの劣化性層及び少なくとも一つの障壁被覆層を含む被覆構成体にあり、この場合、前記障壁被覆層が900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する。
【0012】
別の非限定的態様として、本発明は、基体の少なくとも一部分の上に少なくとも一つの劣化性層及び少なくとも一つの障壁層を含む被覆構成体が適用された被覆基体にあり、この場合、前記障壁被覆層は、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する。
【0013】
別の非限定的態様として、本発明は、基体の上に劣化性被覆層を適用し、そして前記劣化性被覆層の上に障壁被覆層を適用することを含む多層被覆基体を形成する方法にあり、この場合、前記障壁被覆層は、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する。
【0014】
発明の記述
ここで用いられる、「左」、「右」、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「より上に(above)」、「より下に(below)」、「一番上(top)」、「一番下(bottom)」、等のような空間又は方向的用語は、種々の別な配位を包含すものと理解され、従ってそのような用語は限定するものとして考えるべきではない。
【0015】
更に、本明細書及び特許請求の範囲の範囲で用いられている大きさ、物理的特徴、処理パラメーター、成分量、反応条件等を表現するここで用いられている全ての数字は、どの場合でも用語「約」によって修正できるものとして理解すべきである。従って、反対のことが指示されていない限り、次の明細書及び特許請求の範囲中に記載された数値は、本発明によって得られるように求められる希望の性質に依存して変化させることができる。最低限、特許請求の範囲に均等論を適用することを制限しようとする意図としではなく、各数値は、少なくとも、多数の報告された重要な数値を参照し、通常の端数を丸める方法を適用することにより得られたものと見做すべきである。更に、ここに記載した多くの範囲は、初めと終わりの範囲値を含み、その中に含まれるどのような小さい範囲でも全て包含されるものと理解すべきである。例えば、「1〜10」と述べた範囲は、1の最小値と10の最大値の間に入る(それらの数値をも含めて)どのような小さい範囲でも全て包含するものと考えるべきである。即ち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる全ての小範囲、例えば1.0〜3.8、6.6〜9.7、及び5.5〜10.0のような範囲が含まれる。
【0016】
ここで用いられる用語、「の上に(on)」、「の上に/を覆って適用した(applied on/over)」、「の上に/を覆って形成した(formed on/over)」、「の上に/を覆って堆積した(deposited on/over)」、「を覆って横たわる(overlay)」、及び「の上に/を覆って与えられた(provided on/over)」とは、上ではあるが必ずしも表面とは接触しないで形成、堆積、又は与えられていることを意味する。例えば、基体「を覆って形成した」被覆層とは、形成した被覆層と基体との間に位置する同じか又は異なる組成物の一つ以上の他の被覆層が存在することを排除するものではない。例えば、基体(例えば、ガラス又はセラミック)は、基体を被覆する分野で知られている被覆のような慣用的被覆を含むことができる。
【0017】
本発明は、少なくとも一つの障壁被覆層、及び熱及び化学的侵食(それらに限定されるものではない)のような或る条件に曝すと劣化を受け易い少なくとも一つの被覆層を含む被覆構成体にある。劣化を受け易い被覆層は、ここでは「劣化性層」として言及する。
【0018】
本発明による障壁被覆層は、単一の層でもよく、或は複数の被覆層でもよい。障壁被覆層は、酸素、銅、ハロゲン化物、硫化物、硫黄、アルカリ、水等(それらに限定されるものではない)のような種々の材料に対する障壁として働くことができる。本発明の障壁被覆層は、実質的に安定であり、実質的に非消耗性であり、実質的に非反応性である。実質的に安定で、実質的に非消耗性であり、実質的に非反応性であるとは、障壁層内の成分対Oの化学量論的比が、±5%より大きく変化することはないことを意味する。障壁被覆層が暴露される条件とは無関係に、それは実質的に同じ構成状態を維持するであろう。例えば、酸素障壁被覆の場合には、その障壁被覆層が完全に酸化され始めると、それら条件とは無関係に完全に酸化されたままになるであろう。
【0019】
本発明により、障壁被覆層が劣化性層を酸素から保護する場合、その障壁被覆層は、酸素に対し低い透過率を有する。本発明の非限定的態様として、障壁被覆層は、900°Fの温度で10g/m/日以下、例えば、8g/m/日以下、或は5g/m/日以下の酸素透過率を示す。
【0020】
次に、酸素透過率をどのようにして測定することができるかを例示する。アルミナとシリカ(60重量%のアルミナ及び40重量%のシリカ)の合金を含む1400Åの厚さの第一障壁層で、3枚の透明ガラスを被覆した。次に前記アルミナ/シリカ合金層を覆って114Åのチタン層を含む被覆を適用した。最後にそれら試料を、アルミナとシリカ(60重量%のアルミナ及び40重量%のシリカ)の合金を含む第二障壁被覆層で被覆した。第二障壁層の厚さは、それぞれの試料で異なっていた。一つの試料(試料A)は、266Åの厚さを有する第二障壁層を持っていた。別の試料(試料B)は、515Åの厚さを有する第二障壁被覆層を持っていた。最後試料(試料C)は、1,071Åの厚さを有する第二障壁層を持っていた。最初は、全ての試料がチタン層による吸収の結果として透過側では暗く見えた。
【0021】
試料を調製した後、各試料を1300°Fに加熱した。試料が透明になる(吸収がなくなる)までにかかる時間の長さを記録した。試料が透明になった時、それは最初に堆積したチタンが完全に酸化され、チタニアになったことを示している。試料Aは完全に酸化されるまで80分かかった。試料Bは完全に酸化されるまで115分かかった。そして、試料Cは完全に酸化されるまで130分かかった。記録した「酸化」時間を用いて、次の式により透過率(P)を計算した:
P=T/10E[Å/cm]×4.5[g/cm]×10E4[cm/m]/47.9[g/モル]×32[g/モル]/R×1440[分/日]
式中、
T=チタン層の厚さ[Å];
4.5g/cm=チタンの密度;
47.9g/モル=チタンの原子重量;
32g/モル=Oの分子量;及び
R=記録された酸化時間(分)。
【0022】
試料Aの透過率は、計算により0.6g/m/日であった。試料Bの透過率は、計算により0.4g/m/日であった。試料Cの透過率は、計算により0.4g/m/日であった。
【0023】
本発明により、障壁被覆層は、550nmでどのような値に等しい屈折率にでもすることができる。障壁被覆層が複数の層からなる場合、全障壁被覆層の屈折率は、当分野でよく知られている標準的方法を用いて計算することができる。非限定的態様として、全障壁被覆層は、3に等しいか又はそれより小さな屈折率、例えば、2.5以下、又は1.8以下の屈折率を有する。
【0024】
本発明の非限定的態様として、障壁被覆層は、アルミナ、シリカ、又はそれらの混合物(それらに限定されるものではない)のような一種類以上の金属酸化物材料から構成された一つの層である。例えば、障壁被覆層は、全部アルミナ、又は全部シリカから作られていてもよい。別の非限定的態様として、障壁被覆層は、アルミナとシリカとの組合せ、例えば、5重量%〜95重量%のアルミナ及び95重量%〜5重量%のシリカ、又は、10重量%〜90重量%のアルミナ及び90重量%〜10重量%のシリカ、又は、15重量%〜90重量%のアルミナ及び85重量%〜10重量%のシリカ、又は、50重量%〜75重量%のアルミナ及び50重量%〜25重量%のシリカ、(それらに限定されるものではない)にすることができる。
【0025】
本発明の非限定的態様として、障壁被覆層は、一つの層を含み、障壁被覆の組成が全体に亙って変化している。例えば、障壁被覆の組成は、二種類の材料、第一材料及び第二材料から構成することができる。障壁被覆層を基体上に、その障壁被覆の第一材料の濃度が基体に近い所で最大であり、障壁被覆の第二材料の濃度が、基体からの距離が増大するに従って、例えば、徐々に増大するようなやり方で適用する。基体から最も遠い所の障壁被覆の組成は、第二材料の濃度が最大になっている。本発明の別の非限定的態様として、障壁被覆が一つの層で、障壁被覆の組成が全体に亙って一般に均一である。
【0026】
本発明の非限定的態様として、障壁被覆層の厚さは、2μ(20,000Å)までの範囲、例えば、50Å〜5,400Å、又は85Å〜600Åの範囲にすることができる。
【0027】
障壁被覆層が複数の層から構成されている場合の本発明の非限定的態様として、障壁被覆は、シリカ及び/又はアルミナの第二層を覆って適用されたシリカ及び/又はアルミナの第一層を含む。例えば、第一層は、アルミナ、或は5重量%より多いアルミナ、例えば、10重量%より多いアルミナ、又は15重量%より多いアルミナを含むシリカ/アルミナ混合物にすることができる。第一層は、1μまでの厚さ、例えば、50Å〜400Å、又は60Å〜30Åの厚さにすることができる。第二層は、40重量%より多くのシリカ、例えば、50重量%より多いシリカ、又は60重量%より多いシリカを含むシリカ/アルミナ混合物を含むことができる。第二層は、1μまでの厚さ、例えば、50Å〜5,000Å、又は60Å〜300Åの厚さを有することができる。障壁被覆層を含む層の各々は、均一な組成を持っていてもよく、或は全体に亙って変化する組成を持っていてもよい。
【0028】
本発明により、障壁被覆層を、当分野で知られているどのような機能性被覆中にでも組込むことができる。本発明の非限定的態様として、障壁被覆層を、金属系被覆構成体中へ組込む。ここで用いる金属系被覆構成体には、少なくとも一つの金属層を含むどのような被覆でも含まれる。特に障壁被覆層は、下で詳細に記述する金属系被覆積層体ユニットの一つ以上の層を含む金属系被覆構成体中へ組込むことができる。金属系被覆積層体ユニットは、当分野でよく知られているカスケード式構図を生ずるように何回でも繰り返すことができる。
【0029】
金属系被覆積層体ユニットは、誘電体材料の第一層、電磁波反射性材料の層、下地層、及び誘電体材料の第二層を含む。誘電体材料の第一層は、可視光に対し透明な金属酸化物又は金属合金の酸化物から構成することができる。適当な金属酸化物の例には、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、及びそれらの混合物及び合金(例えば、錫酸亜鉛)が含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、誘電体材料の第一層は、亜鉛と錫の合金を、10〜90重量%の亜鉛、例えば、30〜60重量%の亜鉛、又は46〜50重量%の亜鉛の範囲の割合で含むことができる。別の例として、誘電体材料の第一層は、複数の層、例えば、錫酸亜鉛の一つの層と、酸化亜鉛の別の層から構成することができる。誘電体材料の適当な第一層は、米国特許第4,610,771号及び第5,821,001号明細書(それらは参考のためここに入れてある)に記載されている。
【0030】
誘電体材料の第一層の厚さは、100Å〜800Å、例えば、200Å〜750Å、又は280Å〜700Åの範囲にすることができる。
【0031】
電磁波反射性材料の層を、誘電体材料の第一層の少なくとも一部分を覆って適用する。電磁波反射性材料は、太陽光赤外領域、熱赤外領域、及び/又はマイクロ波領域で反射することができる。電磁波反射性材料は、金、銅、又は銀のような金属を含むことができる。電磁波反射性材料は、上述の金属の組合せのみならず、それらの合金も含むことができる。記載した金属系被覆積層体ユニットでは、電磁波反射性材料の層は、劣化性層である。
【0032】
電磁波反射性材料の層の厚さは、50Å〜300Å、例えば、60Å〜200Å、又は70Å〜150Åの範囲にすることができる。
【0033】
電磁波反射性材料の層の少なくとも一部分を覆って下地層を適用する。下地層は、ゲッター/捕集用材料、即ち、ガスを吸収し易い物質として当分野で知られているどのような材料にでもすることができる。下地に適切な材料には、チタン、銅、アルミニウム、ニッケル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、及びそれらの合金;ニッケル・クロム合金及びコバルト・クロム合金;インジウム錫亜酸化物、チタン亜酸化物、及び亜鉛アルミニウム亜酸化物のような亜酸化物;及び窒化珪素のような窒化物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の非限定的態様として、下地層は、例えば、O含有プラズマに曝すことにより、又は空気中で加熱した結果として金属から酸化物へ転化するか、亜酸化物から酸化物へ転化することができる。下地は、時間と共にゲッター/捕集剤としての能力を失うことがあっても、下地としてのその分類に影響を与えるものではない。例えば、本発明による被覆積層体は、チタン金属から最初構成された下地層を含むことができる。時間と共にチタン金属層は酸素を吸収し、チタン金属はチタニア、即ち、TiOに転化するであろう。チタニアはもはや酸素とは反応しない。そのような場合、最初チタン金属として被覆積層体中に存在していたチタニアは、下地層と考えられる。
【0035】
下地層の厚さは、50Åまで、例えば、5Å〜35Å、又は8Å〜30Å、又は10Å〜18Åの範囲にすることができる。
【0036】
下地層の少なくとも一部分を覆って誘電体材料の第二層を適用する。誘電体材料の第二層に適した材料及び適用した層の厚さは、誘電体材料の第一層について上に記載した通りである。
【0037】
障壁被覆層は、上に記載した一つ以上の金属系被覆積層体ユニットから構成された被覆構成体内のどの場所に適用してもよい。本発明の非限定的態様として、被覆構成体は、一つの金属系被覆積層体ユニットを含み、障壁被覆層を誘電体材料の第二層を覆って適用する。本発明の別の非限定的態様として、被覆構成体は、一つ金属系被覆積層体ユニットを含む、障壁被覆層を誘電体材料の第一層を覆って適用する。本発明の更に別の非限定的態様として、障壁被覆層を基体の上に適用し、一つの金属系被覆積層体ユニットを、障壁被覆層を覆って適用する。
【0038】
本発明の別の非限定的態様として、少なくとも一つの障壁被覆層を、上に記載した金属系被覆積層体ユニットを少なくとも2回繰り返した被覆構成体中のどの場所にでも組込まれ、例えば、3回繰り返した場合、被覆積層体は電磁波反射性材料の三つの層を含む。特別な態様として、被覆構成体は、三つの金属系被覆積層体ユニットを含み、障壁被覆層は最後の被覆層であり、即ち、それは、第三金属系被覆積層体ユニットの誘電体材料の第二層の少なくとも一部分の上に適用されている。別の特別な態様として、二つの障壁被覆層が、被覆積層体の第一層及び最後の層を、その障壁被覆層が形成しているようにして含まれている。
【0039】
本発明の種々の非限定的態様として、障壁被覆層を覆って、種々の材料から構成された他の被覆層を適用することができる。特に障壁被覆層が被覆積層体の最後の被覆層である場合にはそうである。本発明の一つの非限定的態様として、チタン金属の層を障壁被覆層を覆って適用する。別の非限定的態様として、炭素の層を障壁被覆層を覆って適用する。障壁被覆層を覆って炭素のような暗い熱吸収性被覆層を適用すると、被覆された基体の加熱速度を増大することができる。
【0040】
本発明の別の非限定的態様として、障壁被覆層を、少なくとも次の層:少なくとも一つの透明伝導性酸化物の層、例えば、フッ素をドープした酸化チタン、インジウム錫酸化物、又は亜鉛アルミニウム酸化物、及び窒化チタン又は窒化ジルコニウムのような、少なくとも一つの伝導性窒化物の層;を含む被覆積層体中に組込む。伝導性窒化物の層と透明伝導性酸化物層との配列は重要ではない。即ち、伝導性窒化物の層を、透明伝導性酸化物層の少なくとも一部分の上に適用してもよく、その逆を行なってもよい。この態様では、障壁被覆層は積層体中の第一及び/又は最後の被覆にすることができる。
【0041】
上に記載した被覆積層体では、伝導性窒化物層は劣化性層である。
【0042】
透明伝導性酸化物層の厚さは、1Å〜5,000Å、例えば、5Å〜2,500Åの範囲にすることができる。伝導性窒化物の層の厚さは、1Å〜2,500Å、例えば、5Å〜1,000Å、又は10Å〜500Åの範囲にすることができる。
【0043】
種々の被覆構成体の外に、本発明は、それら被覆を製造する方法を包含する。特に、本発明は、基体の上に劣化性被覆層を適用し、前記劣化性被覆層の上に障壁被覆層を適用することを含む多層被覆基体の形成方法を包含し、この場合、前記障壁被覆層は900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する。障壁被覆層は被覆積層体の最後の層にしてもよく、或はそれは被覆積層体中に配置してもよい。非限定的態様として、本発明は、更に、劣化性被覆層の上に更に別の被覆層を適用し、然る後、障壁被覆層を適用することを含む。別の非限定的態様として、本発明は、更に、基体上に別の障壁被覆層を適用し、然る後、劣化性被覆層を適用することを含む。
【0044】
上で論じた種々の被覆層は、化学蒸着(CVD)、噴霧熱分解、及びマグネトロンスパッター真空蒸着(MSVD)のような慣用的技術を用いて適用することができる。
【0045】
適当なCVD蒸着法は、参考のためここに入れる次の文献に記載されている:米国特許第4,853,257号、第4,971,843号、第5,536,718号、第5,464,657号、第5,599,387号、及び第5,948,131号明細書。
【0046】
適当な噴霧熱分解堆積法は、参考のためここに入れる次の文献に記載されている:米国特許第4,719,126号、第4,719,127号、第4,111,150号、及び第3,660,061号明細書。
【0047】
適当なMSVD蒸着法は、参考のためここに入れる次の文献に記載されている:米国特許第4,379,040号、第4,861,669号、及び第4,900,633号明細書。障壁被覆層を蒸着するためにMSVDを用いる本発明の非限定的態様として、60重量%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットをスパッターして、アルミナとシリカの混合物、合金、又は組合せを含む障壁被覆層を蒸着することができる。
【0048】
本発明の多層被覆構成体は、種々の基体上に適用することができる。適当な基体の例には、プラスチック基体〔例えば、ポリアクリレートのようなアクリル重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート等のようなポリアルキルメタクリレート;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のようなポリアルキルテレフタレート;ポリシロキサン含有重合体;又はそれらを製造するための単量体の共重合体、又はそれらの混合物〕;鋼、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム(それらに限定されるものではない)のような金属基体;セラミック基体;タイル基体;ガラス基体;それらのいずれかの混合物又は組合せ;が含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、基体は、慣用的無色ソーダ・石灰・シリカガラス、即ち、「透明ガラス」でもよく、或は有色又は他の仕方で着色したガラス、硼珪酸塩ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、非強化ガラス、アニールしたガラス、又は熱強化ガラスにすることができる。ガラスはどのような種類のものでもよく、例えば、慣用的フロート法ガラス又は平板ガラスでもよく、どのような光学的性質、例えば、可視光透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、及び/又は全太陽エネルギー透過率のどのような値でも、それらを持つどのような組成物からなっていてもよい。本発明の実施に適したガラスの種類は、例えば、米国特許第4,746,347号、第4,792,536号、第5,240,886号、第5,385,872号、及び第5,393,593号明細書に記載されているが、それらに限定されるものと考えるべきではない。
【0049】
基体はどのような厚さにでもすることができる。基体がガラスである態様では、一般に基体は自動車用途の場合よりも建築用途のための方が厚い。建築用途についての非限定的態様として、基体は、1mm〜20mm、例えば、1mm〜10mm、又は2mm〜6mmの範囲の厚さを有するガラスにすることができる。自動車用途についての非限定的態様として、基体は積層自動車風防ガラス又は横窓での少なくとも1枚のガラスにすることができ、基体は5.0mmの厚さまで、例えば、4.0mmまで、又は3.0mmまで、又は2.5mmの厚さまで、又は2.1mmの厚さまでにすることができる。
【0050】
基体がガラスである場合、そのガラスは、米国特許第3,083,551号、第3,220,816号、及び第3,843,346号明細書(これらは参考のためここに入れてある)に記載されているような慣用的フロート法を用いて製造することができる。本発明の非限定的態様として、ここに論ずる被覆層は、フロート法ガラス処理中、例えば、ガラスをフロート浴内の溶融錫上にガラスを支持している間に、ガラスに適用することができる。
【0051】
非限定的態様として、本発明は、下に記載する被覆した基体を包含する。錫酸亜鉛から構成された第一誘電体層を、250Å〜490Å、例えば、340Å〜440及び、又は375Å〜425Åの厚さで基体上に堆積する。第一銀層は、第一誘電体層の上に50Å〜175Å、例えば、60Å〜125Å、又は67Å〜90Åの厚さで堆積する。第一チタン下地層は、第一銀層の上に10Å〜30Å、例えば、12Å〜25Å、又は15Å〜22Åの厚さで堆積する。第二錫酸亜鉛誘電体層は、第一下地層の上に600Å〜800Å、例えば、650Å〜750Å、又は675Å〜725Åの厚さで堆積する。第二銀層は、第二誘電体層の上に50Å〜175Å、例えば、60Å〜125Å、又は67Å〜90Åの厚さで堆積する。第二チタン下地層は、第二誘電体層の上に10Å〜30Å、例えば、12Å〜25Å、又は15Å〜22Åの厚さで堆積する。第三錫酸亜鉛誘電体層は、第二下地層の上に290Å〜490Å、例えば、340Å〜440Å、又は375Å〜425Åの厚さで堆積する。60重量%のアルミナ及び40重量%の珪素を含むアルミナとシリカとの混合物、合金、又は組合せから構成された障壁層を、第三誘電体層の上に100Å〜600Å、例えば、150Å〜500Å、又は175Å〜400Åの厚さで堆積する。100Å〜600Å、例えば、150Å〜500Å、又は175Å〜400Åの範囲の厚さを有するチタニア層を、アルミナ/シリカ層を覆って堆積し、被覆に付加的耐久性を与える。
【0052】
本発明による被覆基体は種々の用途に用いることができ、例えば、自動車用透明体、自動車横窓、風防ガラス、後窓、サンルーフ又はムーンルーフ、及び住宅又は商業的窓、ガス、電気、及びマイクロ波オーブンのためのオーブン扉のための絶縁ガラスユニットに用いることができるが、それらに限定されるものではない。
【0053】
本発明による被覆で被覆された基体は、慣用的被覆基体よりも優れた性能を示す。例えば、本発明により被覆された基体は、一般に電気抵抗率、曇り、太陽光IR反射率、可視光透過率等に関して、それを製品製造中に加熱した後でも、特に自動車風防ガラスを製造するためにガラス板を曲げるか、又はガラスシートを強化する場合に伴われる種類の加熱後でも、一層よい性能を有するであろう。なぜなら、劣化性層(単数又は複数)が元のままに残っているからである。また、障壁被覆層が被覆積層体中の最後の被覆層である場合、本発明による被覆基体は、取扱い、輸送、及び貯蔵中、機械的及び/又は化学的傷害に一層よく耐えることができる。更に、被覆積層体は、マイクロ波オーブン扉のようなものとして使用中、一層よい機械的耐久性、化学的耐久性、及び熱安定性を有する。
【0054】
本発明は、少なくとも一つの障壁被覆層を被覆積層体中に組込むことにより、多層被覆内で囲まれた系を形成する方法も包含する。障壁層は被覆積層体中のどこにでも、即ち、金属系被覆積層体ユニットの個々の層中及び/又は金属系被覆積層体ユニットの間に組込むことができる。囲まれた系とは、二つの障壁被覆層の間、又は一つの障壁被覆層と基体との間の領域を指す。囲まれた系内には、本質的に物質は出入りすることができない。囲みを通ってフロウすることができる物質は、上に記載した透過率によって規定されている。
【0055】
本発明の方法は、被覆積層体中の被覆層の間の相互作用を、希望の相互作用だけが起きるように操作することができるようにしている。他の機能性被覆層、又は囲まれた系の外側のOのような他の物質は、囲まれた系内の層と接触したり反応したりしないように抑制される。
【0056】
本発明の方法は、被覆積層体が、或る物質に曝されないようにすべき層(単数又は複数)を含む場合に特に有利である。例えば、被覆積層体は、もし酸素に暴露されると劣化するかも知れない銀のような金属層を含むことがある。そのような場合、本発明の方法は、金属層の周囲にOが存在しない包まれた領域を、その金属層の下及び上の両方に障壁被覆層を適用するか、又は金属層の上に障壁被覆層を適用し、他の酸素障壁層として金属層の前に基体を用いることにより、形成するのに用いることができる。
【0057】
次の例は、本発明の利点を明らかにしている。基体を、上に記載した積層体に類似した三つの基本積層体を含む多層被覆構成体で被覆する。被覆積層体はMSVDにより形成し、全被覆は、三つの銀層、四つの誘電体材料層(第一基礎積層体の第二誘電体層を、第二基礎積層体の第一誘電体層と一緒にし、一つの誘電体層を形成し、第二基礎積層体の第二誘電体層を、第三金属系被覆積層体ユニットの第一誘電体基礎積層体と一緒にし、別の一つの誘電体層を形成する)、及び三つの下地層を含む。誘電体材料層は銀層を挟んでいる。誘電体層を適用する前に、銀層の上に下地層を適用する。障壁被覆層を、被覆積層体中の第四誘電体材料層を覆って適用する。障壁被覆層は、その障壁被覆層と基体との間に囲まれた領域を形成する。従って、被覆積層体の設計のために考慮に入れなければならない酸素は、例えば、酸素環境中でMSVDにより誘電体層を蒸着した結果として被覆積層体が形成される時に系内に含まれる酸素だけである。外部酸素は関係がない。なぜなら、被覆積層体は囲まれた系だからである。
【0058】
本発明の結果として、下地層は、劣化性材料、例えば銀の層(単数又は複数)を、それを覆って存在する誘電体層を堆積する間、保護するために必要な最低限の厚さにすることができる。更に、当分野で現在教示されているよりも薄い下地で劣化性材料、例えば、銀の層(単数又は複数)を、被覆基体を希望の輪郭へ曲げるか、又は被覆ガラスを強化するために必要などのような加熱工程中でも保護する。なぜなら、周囲Oは、その系中に限定されているからである。上で言及したように、加熱した後、過剰の下地は、個々の被覆層の界面の所で劣化する結果になることがある。
【0059】
積層体の形状中、下地層は12Å位に薄くすることができることが判明している。それは、障壁被覆層を用いずに、堆積処理及び基体を曲げるか又は強化するために必要な加熱条件に耐えることができなければならない同様な被覆形状で必要な厚さの半分である。
【0060】
本発明は、記載した被覆積層体で一層薄い下地層を用いることができるようにしているため、下地層として新しい材料を用いることができる。特に、従来はある材料は用いることができなかった。なぜなら下地層が加熱で完全には酸化されないようにするためには、それら下地層を非常に厚くしなければならず、銀と合金を形成するような危険が存在するからであるが、本発明では用いることができる。そのような材料には、アルミニウム、ハフニウム、コバルト・クロム合金が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0061】
本発明を、次の実施例により例示するが、本発明は、それらに限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
図1は、次のやり方で行われた加熱研究を示す。ガラス基体を次のやり方で製造した:3in×6in×0.08inの透明フロート法ガラス板に、フォン・アルデネ(Von Ardenne)からの製品MSVD被覆機のコンベヤーベルトの上で上向きに被覆で被覆した。2枚の3in×3in×0.08inの透明ガラスシートを前記被覆されたガラスの上に配置し、前記被覆を覆った。その積層体を、5つの領域を有するリンドバーグ(Lindberg)炉を通過させた。各領域は10inの長さを持っていた。炉の入口から記載して、第一領域は約1350°Fの温度になっており、第二領域は約1130°Fの温度で、第三領域は約1180°Fの温度で、第四領域は約1205°Fの温度で、第五領域は約1195°Fの温度になっていた。
【0063】
例として、被覆した基体を種々の速度でその炉を通って走行させた。炉を出た時、被覆ガラスの上の3in×3inのガラスシートが除去され、0.03in厚さのポリビニルブチラール(PVB)のシートが被覆ガラス基体の半分を覆って置かれていた。次にそのPVBを、前に除去した3×3×0.09inの1枚のガラスシートで覆い、被覆ガラスの半分を覆う積層体を形成した。被覆ガラスシートの半分の積層部分は照明Aを用いて可視光線透過率(LTA)を測定した。
【0064】
ベルトの速度が遅くなる程、被覆ガラスが炉条件に曝される時間は長くなり、被覆された基体が一層熱くなることは認められるべきである。ベルトの速度は限界熱量に関係している。特にベルト速度が遅くなる程、長い時間被覆が高温に曝され、被覆が良好な性能を示すために耐えなければならない限界熱量は大きくなるであろう。
【0065】
熱研究では、全ての被覆を3in×6in×2.1mm透明フロート法ガラスシート上に適用した。例としての被覆基体についての指定を下に記載する。「3×Ag(500)」として指定する被覆基体は、次のやり方で作った:基体の上に錫酸亜鉛の第一層を390Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第一層の上に銀の第一層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第一層の上にチタン金属の第一層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第一層の上に錫酸亜鉛の第二層を690Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第二層の上に銀の第二層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第二層の上にチタン金属の第二層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第二層の上に錫酸亜鉛の第三層を690Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第三層の上に銀の第三層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第三層の上にチタン金属の第三層を15Åの厚さで適用した;前記チタンの第三層の上に錫酸亜鉛の第四層を390Åの厚さに適用した;そしてアルミナとシリカとの合金から構成された障壁被覆層を、60重量%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットからスパッターし、前記誘電体材料の第四層の上に500Åの厚さで適用した。
【0066】
次のやり方で「3×Ag(金属)」として指定する被覆基体を作った:基体の上に錫酸亜鉛の第一層を390Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第一層の上に銀の第一層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第一層の上にチタン金属の第一層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第一層の上に錫酸亜鉛の第二層を690Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第二層の上に銀の第二層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第二層の上にチタン金属の第二層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第二層の上に錫酸亜鉛の第三層を690Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第三層の上に銀の第三層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第三層の上にチタン金属の第三層を15Åの厚さで適用した;前記チタンの第三層の上に錫酸亜鉛の第四層を100Åの厚さを有するように適用した;前記錫酸亜鉛の第四層の上にチタン金属の層を26Åの厚さに適用した。
【0067】
次のやり方で「2×Ag(500)」として指定する被覆基体を作った:基体の上に錫酸亜鉛の第一層を390Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第一層の上に銀の第一層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第一層の上にチタン金属の第一層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第一層の上に錫酸亜鉛の第二層を690Åの厚さで適用した;前記錫酸亜鉛の第二層の上に銀の第二層を75Åの厚さで適用した;前記銀の第二層の上にチタン金属の第二層を15Åの厚さで適用した;前記チタン金属の第二層の上に錫酸亜鉛の第三層を390Åの厚さで適用した;そしてアルミナとシリカとの合金から構成された障壁被覆層を、60重量%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットからスパッターし、錫酸亜鉛の第三層の上に500Åの厚さで適用した。
【0068】
市販の試料は図1に含まれている。この試料では、ガラス基体を、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPGインダストリーズから市販されているサンゲート(Sungate)(登録商標名)自動車被覆No.5(SA05)で被覆した。SA05は、二重銀層で、加熱可能な被覆である。
【0069】
結論
図1の加熱研究で示されているように、本発明の障壁被覆は、劣化性層(単数又は複数)を保護し、それにより被覆の性能を維持する。本発明による500Åの障壁被覆層を有する被覆基体:「3×Ag(500)」及び「2×Ag(500)」;は、ベルトの速度とは無関係にかなり一定のLTAを維持していた。3×Ag(500)として指定した試料は、ベルトの速度を9ipmから3ipmへ低下すると、77%から74%へのLTAの低下を示した。2×Ag(500)として指定した試料は、ベルトの速度を9ipmから3ipmへ低下すると、76%から72%へのLTAの低下を示した。「3×Ag(500)」及び「2×Ag(500)」は、15Åの厚さの下地層を含むので、ベルト速度の減少によるLTAの減少は、予想されたよりも遥かに少ない。
【0070】
本発明による障壁被覆層を持たない基体は、ベルト速度の低下と共にLTAに関し、本発明により被覆された基体よりも遥かにひどく低下したことを示していた。3×Ag(金属)として指定した試料は、ベルト速度が9ipmから3ipmへ低下すると、75%から62%へのLTAの低下を示した。これらの結果は、チタンが、本発明で記載した障壁被覆層程の良好な障壁性を持たないことを示している。市販の試料は、ベルト速度が9ipmから5ipmへ低下すると、72%から61%へのLTAの低下を示し、次に、ベルト速度が5ipmから3ipmへ低下すると、LTAは61%から64%へ増大した。
【0071】
前記説明で開示した概念から離れることなく本発明に修正を行えることは当業者には容易に認められるであろう。そのような修正は本発明の範囲内に含まれるものと考えられるべきである。従って、上に詳細に記述した特別な態様は、単に例示のためであり、本発明の範囲に対する限定ではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の全範囲及びそれと同等なもの全てに対し与えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の特徴を組込んだ幾つかの被覆基体について行われた加熱研究を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの劣化性層、及び
少なくとも一つの障壁被覆層、
を含み、然も、前記少なくとも一つの障壁被覆層が、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する、被覆構成体。
【請求項2】
少なくとも一つの障壁被覆層が、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びそれらの混合物から選択された一種類以上の金属酸化物材料を含む単一の層である、請求項1に記載の被覆構成体。
【請求項3】
少なくとも一つの障壁被覆層が、60%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットからスパッターされたアルミナとシリカとの混合物、合金、又は組合せを含む、請求項2に記載の被覆構成体。
【請求項4】
少なくとも一つの障壁被覆層が2μまでの厚さを有する、請求項2に記載の被覆構成体。
【請求項5】
少なくとも一つの障壁被覆層が、シリカ、アルミナ、及びそれらの混合物から選択された第二層の上に適用された、シリカ、アルミナ、及びそれらの混合物から選択された第一層を含む多層被覆である、請求項1に記載の被覆構成体。
【請求項6】
少なくとも一つの劣化性層が、金、銅、銀、伝導性窒化物、及びそれらの混合物から選択された電磁波反射性材料である、請求項1に記載の被覆構成体。
【請求項7】
少なくとも一つの劣化性層が銀である、請求項6に記載の被覆構成体。
【請求項8】
被覆構成体が、更に、誘電体材料の第一及び第二層及び少なくとも一つの下地層を含み、更に劣化性層が前記誘電体材料の第一層の少なくとも一部分の上に存在し、前記少なくとも一つの下地層が前記劣化性層の少なくとも一部分の上に存在し、前記誘電体材料の第二層が、前記少なくとも一つの下地層の少なくとも一部分の上に存在し、少なくとも一つの障壁被覆層が前記誘電体材料の第二層の少なくとも一部分の上に存在する、請求項7に記載の被覆構成体。
【請求項9】
第一及び第二の誘電体材料層が、それぞれ、インジウム錫酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、それらの混合物及び合金から選択されている、請求項8に記載の被覆構成体。
【請求項10】
第一及び第二の誘電体材料層が、それぞれ100Å〜800Åの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の被覆構成体。
【請求項11】
電磁波反射性材料の層が、50Å〜300Åの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の被覆構成体。
【請求項12】
少なくとも一つの下地層が、10Å〜30Åの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の被覆構成体。
【請求項13】
少なくとも一つの下地層が、チタン、銅、アルミニウム、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、及びそれらの混合物及び合金;ニッケル・クロム合金;コバルト・クロム合金;インジウム錫亜酸化物;チタン亜酸化物、亜鉛アルミニウム亜酸化物;窒化珪素;及びそれらの混合物から選択されている、請求項12に記載の被覆構成体。
【請求項14】
劣化性層が、伝導性窒化物の層である、請求項6に記載の被覆構成体。
【請求項15】
被覆構成体が、更に、透明伝導性酸化物層を含む、請求項14に記載の被覆構成体。
【請求項16】
少なくとも一つの劣化性層が、透明伝導性酸化物層の少なくとも一部分の上にあり、少なくとも一つの障壁被覆層が、前記少なくとも一つの劣化性層の少なくとも一部分の上にある、請求項15に記載の被覆構成体。
【請求項17】
透明伝導性酸化物層が、少なくとも一つの劣化性層の少なくとも一部分の上にあり、障壁被覆層が、前記透明伝導性酸化物層の少なくとも一部分の上にある、請求項15に記載の被覆構成体。
【請求項18】
透明伝導性酸化物が、フッ素をドープした錫酸化物、インジウム錫酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、及びそれらの混合物から選択されている、請求項16に記載の被覆構成体。
【請求項19】
透明伝導性酸化物層が、1Å〜2500Åの範囲の厚さを有する、請求項16に記載の被覆構成体。
【請求項20】
伝導性窒化物層が、窒化チタン、窒化ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択されている、請求項16に記載の被覆構成体。
【請求項21】
伝導性窒化物層が、10Å〜500Åの範囲の厚さを有する、請求項16に記載の被覆構成体。
【請求項22】
少なくとも一つの障壁被覆層が、少なくとも100Åの厚さを有する、請求項16に記載の被覆構成体。
【請求項23】
基体;
前記基体の少なくとも一部分の上の被覆構成体で:
少なくとも一つの劣化性層;及び
少なくとも一つの障壁被覆層で、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する障壁被覆層;
を含む被覆構成体;
を含む被覆基体。
【請求項24】
少なくとも一つの障壁被覆層が、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びそれらの混合物から選択された一種類以上の金属酸化物材料から構成された単一の層である、請求項23に記載の被覆基体。
【請求項25】
少なくとも一つの障壁被覆層が、60重量%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットからスパッターされたアルミナとシリカとの混合物、合金、又は組合せを含む、請求項24に記載の被覆基体。
【請求項26】
障壁被覆層が、2μまでの厚さを有する、請求項23に記載の被覆基体。
【請求項27】
少なくとも一つの劣化性層が、金、銅、銀、伝導性窒化物、及びそれらの混合物から選択された電磁波反射性材料である、請求項24に記載の被覆基体。
【請求項28】
少なくとも一つの劣化性層が銀である、請求項27に記載の被覆基体。
【請求項29】
被覆構成体が、更に、誘電体材料の第一及び第二層、及び少なくとも一つの下地層を含み、然も、前記誘電体材料の第一層が基体の少なくとも一部分を覆って横たわり、少なくとも一つの劣化性層が誘電体材料の第一層の少なくとも一部分を覆って横たわり、前記少なくとも一つの下地層が前記少なくとも一つの劣化性層の少なくとも一部分を覆って横たわり、前記誘電体材料の第二層が前記少なくとも一つの下地層の少なくとも一部分を覆って横たわり、少なくとも一つの障壁被覆層が前記誘電体材料の第二層の少なくとも一部分を覆って横たわっている、請求項27に記載の被覆基体。
【請求項30】
誘電体材料の第一及び第二層が、それぞれ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、及びそれらの混合物及び合金から選択されている、請求項29に記載の被覆基体。
【請求項31】
誘電体材料の第一及び第二層が、それぞれ、100Å〜800Åの範囲の厚さを有する、請求項29に記載の被覆基体。
【請求項32】
電磁波反射性材料の層が、50Å〜300Åの範囲の厚さを有する、請求項29に記載の被覆基体。
【請求項33】
少なくとも一つの下地層が、10Å〜30Åの範囲の厚さを有する、請求項29に記載の被覆基体。
【請求項34】
少なくとも一つの下地層が、チタン、銅、アルミニウム、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、及びそれらの混合物及び合金;ニッケル・クロム合金;コバルト・クロム合金;インジウム錫亜酸化物;チタン亜酸化物、亜鉛アルミニウム亜酸化物;窒化珪素;及びそれらの混合物から選択されている、請求項33に記載の被覆基体。
【請求項35】
少なくとも一つの劣化性層が、伝導性窒化物の層である、請求項27に記載の被覆基体。
【請求項36】
被覆構成体が、更に、透明伝導性酸化物層を含む、請求項35に記載の被覆基体。
【請求項37】
少なくとも一つの劣化性層が、透明伝導性酸化物層の少なくとも一部分を覆って横たわり、少なくとも一つの障壁被覆層が、前記少なくとも一つの劣化性層の少なくとも一部分を覆って横たわる、請求項36に記載の被覆基体。
【請求項38】
透明伝導性酸化物が、フッ素をドープした錫酸化物、インジウム錫酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、及びそれらの混合物から選択されている、請求項37に記載の被覆基体。
【請求項39】
透明伝導性酸化物層が、1Å〜2500Åの範囲の厚さを有する、請求項37に記載の被覆基体。
【請求項40】
伝導性窒化物層が、窒化チタン、窒化ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択されている、請求項36に記載の被覆基体。
【請求項41】
少なくとも一つの劣化性層が、10Å〜500Åの範囲の厚さを有する、請求項37に記載の被覆基体。
【請求項42】
少なくとも一つの障壁被覆層が、少なくとも100Åの厚さを有する、請求項37に記載の被覆基体。
【請求項43】
基体が、プラスチック、金属、セラミック、タイル、ガラス、及びそれらの組合せから選択されている、請求項23に記載の被覆基体。
【請求項44】
基体がガラスである、請求項43に記載の被覆基体。
【請求項45】
ガラスが、1枚の自動車用透明体である、請求項44に記載の被覆基体。
【請求項46】
基体;
前記基体上の錫酸亜鉛を含む誘電体材料の第一層;
前記誘電体材料の第一層の少なくとも一部分の上の銀を含む第一劣化性層;
前記第一劣化性層の少なくとも一部分の上のチタニアを含む第一下地層;
前記第一下地層の少なくとも一部分の上に適用された錫酸亜鉛を含む誘電体材料の第二層;
前記誘電体材料の第二層の少なくとも一部分の上の銀を含む第二劣化性層;
前記第二劣化性層の少なくとも一部分の上のチタニアを含む第二下地層;
前記第二下地層の少なくとも一部分の上の錫酸亜鉛を含む誘電体材料の第三層;
前記誘電体材料の第三層少なくとも一部分の上の銀を含む第三劣化性層;及び
前記第三劣化性層の少なくとも一部分の上のチタニアを含む第三下地層;
前記第三下地層の少なくとも一部分の上の錫酸亜鉛を含む誘電体材料の第四層;及び
60重量%のアルミニウム及び40重量%の珪素を含むターゲットからスパッターされたアルミナとシリカとの混合物、合金、又は組合せを含む障壁層を含む、前記誘電体材料の第四層の少なくとも一部分の上の障壁被覆層で、然も、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する障壁被覆層;
を含む被覆基体。
【請求項47】
誘電体材料の第一、第二、第三、及び第四層が、100Å〜800Åの範囲の厚さを有する、請求項46に記載の被覆基体。
【請求項48】
第一、第二、及び第三下地層が、10Å〜18Åの範囲の厚さを有する、請求項46に記載の被覆基体。
【請求項49】
第一、第二、及び第三劣化性層が、50Å〜300Åの範囲の厚さを有する、請求項46に記載の被覆基体。
【請求項50】
基体上に劣化性被覆層を適用し、そして
前記劣化性被覆層の上に障壁被覆層で、900°Fの温度で10g/m/日以下の酸素透過率を有する障壁被覆層を適用する、
ことを含む、多層被覆基体を形成する方法。
【請求項51】
更に、障壁被覆層を適用する前に、劣化性被覆層の上に付加的被覆層を適用することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
更に、劣化性被覆層を適用する前に、基体上に付加的障壁被覆層を適用することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
障壁被覆層が、基体に適用された最後の被覆層である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
更に、障壁被覆層を適用した後、付加的被覆層を適用することを含む、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−531644(P2007−531644A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506355(P2007−506355)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011353
【国際公開番号】WO2005/108064
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】