説明

障害および疾患に対する全身治療のためのTGF−βスーパーファミリーメンバー含有タンパク質の末梢投与

本発明は、末梢投与様式を介して、それだけには限らないが、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質などの最小に可溶性の生物活性剤の全身送達を達成するための方法および組成物を対象とする。本発明によれば、例示的生物活性剤として、BMP−7がある。本発明は、骨粗鬆症などの骨格障害に対する最小に侵襲性の全身治療ならびに傷害されたまたは病変した非石灰化組織および腎臓などの臓器に対する最小に侵襲性の全身治療をさらに提供する。本発明の実施は、生物活性剤が静脈内投与される末梢部位での有害な副作用を排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年2月12日に出願された米国仮特許出願第61/151,909号の優先権および利益を主張し、この米国仮特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
骨形成タンパク質(BMP)は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)のスーパーファミリーに属し、パターン形成および組織の特殊化ならびに成体組織における創傷治癒プロセスおよび修復プロセスの促進など、細胞プロセスおよび発達プロセスの多様なセットを制御する。BMPは、骨および軟骨形成を誘導するその能力によって最初に単離されたが、その他の組織および器官の修復にとってのその有用性が今では広く認められている。
【0003】
今日まで、臨床上有効な用量のBMPの非局所送達、特にBMPの反復投与を伴わない長期間にわたる非局所送達、のための信頼できる手段は当業者の手に入らなかった。実際、ほとんどのタンパク質性生物薬剤(proteinaceous biologic agent)の有効な送達は、概して、未解決の課題のままとなっている。タンパク質技術および製薬化学の進歩にもかかわらず、少なくとも2つの問題が、患者へBMP(複数可)の治療用量を提供することを必要とする臨床医を悩ませ続けている。
【0004】
第1に、ほとんどの治療薬の好ましい投与様式は、経口または注射によってである。しかし、経口投与は、タンパク質などの高分子薬剤にとっては、それらのほとんどが消化管によって無傷で吸収されず、それによって、特定の投薬計画の有効性が損なわれ得るので不適当であることが多い。さらに、特定の治療用タンパク質またはタンパク性薬剤が、通常の注射法によって投与される場合には、これらの薬剤が短い薬物動態半減期を有し得るので頻繁な、複数回の注射が必要とされる。したがって、最も一般的な、通常の医薬の投与手段は、患者に実質的に身体的負担を課し、患者管理に関連する相当な管理費を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、生物学的に活性な薬剤、特に、BMPおよびその他のタンパク質性高分子生物製剤または薬物などの高分子の代替提供様式が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例示的BMPであるBMP−7を、血管系を傷つけることなく、非外科的に、非局所的に哺乳類に提供できるという発見に基づいている。本発明の実施によって、これまでに観察された有害作用を伴わない、全身治療目的の、BMP−7の複数回の反復された血管内末梢投与が可能となる。一般に、通常の注射法を使用するBMPの末梢静脈内投与は、それだけには限らないが、ニードルおよび/またはカテーテルの導入部位の血管および血管周囲組織両方の中およびその周りにおける、浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成をはじめとする著しい局所作用を伴う(例えば、ラット、イヌおよびサルでは)。これらの望ましくない局所作用により、同じ血管へのそのタンパク質の2回以上または3回以上の注射が不可能となり、それによって、多数の異なる末梢血管の使用が必要となり、注射に使用されたあらゆる血管に望ましくない作用の蓄積をもたらす。臨床診療では、このような有害作用の発生により、週に2回以上の投与が不可能になり、そして、4〜5回の注射後には、最終的に、任意の末梢血管にそのタンパク質を静脈内に注射できないことになる。
【0007】
本発明は、BMP−7を末梢部位に脈管内投与する場合には、実際の送達部位での内膜組織完全性は、実質的に損なわれないはずであるという発見を利用する。すなわち、実際の送達部位で、任意のそのタンパク質が、血管の周囲に、血管壁に、または周囲組織に漏出する場合に、血管組織および/または血管周囲組織中およびその周りにおいて、浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成という望ましくない作用が生じる。投与部位または静脈穿刺部位と、送達部位間の距離は、血管および血管腔を含む関連組織、血管周囲組織および皮下組織に対する任意の外傷点または損傷点を超えた、治療薬、例えば、BMP−7の送達を可能にし、それによって、周囲組織への治療薬の漏出を防ぐ距離であることが最適である。投与部位または静脈穿刺部位と、送達部位間の距離は、血管の種類(例えば、動脈または静脈)、血管の大きさ(大または小)および血管の構造(例えば、弁、分枝などの存在)をはじめとする種々の因子に応じて変わる。漏出の防止は、BMP−7などのBMPの投与では、そうでなければ、BMP−7に伴われる、投与部位での特定の副作用、すなわち、軟骨性または骨性増殖または小結節を防ぐために、特に重要である。したがって、本発明の実施は、タンパク質の送達を、血管の任意の外傷点または損傷点(例えば、物理的注射部位または血管穿刺部位;投与部位)から下流の、またはその点を超えた(例えば、少なくとも約1〜約3cm)血管に向けることを含むが、これは、このような外傷または損傷が、そのタンパク質の血管の組織への、または周囲組織への漏出を可能にするからである。本発明は、本明細書に記載されるように実施される場合には、血管の物理的貫通によって誘導される穴、裂傷および/または外傷のない血管のセグメントへのタンパク質送達を可能にする。
【0008】
本明細書において意図されるように、本発明は、静脈穿刺部位を約1cm超えた、少なくとも約1cm超えた、約2cm超えた、または少なくとも約2cm超え、最大約5cm超えた、通常のニードルまたはカテーテルイントロデューサーを介したカテーテルの留置を含むが、いずれの場合も、血管の任意の誘発された外傷を少なくとも超える。例えば、まず、カテーテル単独(ニードルもイントロデューサーも伴わない)を血管腔への導入の直近部位を超えて配置し、次いで、静脈穿刺部位を超えて、および/または任意の関連外傷を超えて、好ましくは、約1cm、少なくとも約1〜約2cm、少なくとも2cm、2cmを超えて、より好ましくは、約2〜約4cm、最大約40cmの範囲まで通す。それからはじめて、そのタンパク質が実際に送達される。ニードルおよびカテーテルの直径(ゲージ)ならびに使用されるカテーテルの長さは、患者の種、年齢、性別、体重および/または大きさに応じて変わる。任意の末梢血管(例えば、手、腕、脚、足の静脈または動脈および/または頚静脈)を使用してよいが、一般に、好ましい血管は、四肢の皮下組織の静脈である。
【0009】
本明細書において別の場所で説明されるように、本発明の態様は、いくつか挙げると、pH、添加剤(excipient)および/または濃度などの製剤パラメータ、ならびに製剤パラメータおよび/または投与速度の操作によって達成される、このような製剤の投与速度およびその有効な投与量を含む、最小に侵襲性の全身送達に適したタンパク質製剤をさらに含む。
【0010】
いくつかの全身性病状はBMP治療から恩恵を受け得るということを裏付ける前臨床エビデンスの有用性を考慮すると、全身治療への上記の最小に侵襲性のアプローチの重要性を軽視できない。特に、それによって影響を受ける石灰化組織ならびに非石灰化組織を含む代謝性骨疾患は、相当に重要なものである。さらに、前臨床研究によって、慢性および急性腎臓病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、肥満症、糖尿病、癌、眼の瘢痕、肝臓線維症、炎症性障害および神経系障害などの疾患または障害によって影響を受ける組織および/または臓器を含む、BMP治療が有益であり得るいくつかの全身性病状が確認されている。
【0011】
第1の態様では、本発明は、生物薬剤および生物薬剤を血管に投与するための静脈穿刺装置を含む組成物を対象とする。静脈穿刺装置は、外傷のない血管の領域に生物薬剤を送達するよう適応させている。特定の好ましい実施形態では、生物薬剤は、最小に可溶性のタンパク質である。一実施形態では、タンパク質性生物薬剤は、生理学的pHで実質的に不溶性であるタンパク質である。一実施形態では、タンパク質性生物薬剤は、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバーである。本発明の別の実施形態は、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーのメンバーであるタンパク質性生物薬剤を提供する。本発明の一実施形態では、タンパク質性生物薬剤は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7である。本発明の別の態様では、タンパク質性生物薬剤は、BMP−7である。本発明はまた、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7のうち任意の1種の配列バリアントであるタンパク質性生物薬剤を提供する。本発明の別の態様では、タンパク質性生物薬剤は、保存されたC末端システインリッチドメイン内で、BMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。
【0012】
本発明に従って、静脈穿刺装置は、被験体の血管系へのアクセスを提供するものであり;その血管系は、末梢血管であることが好ましい。本発明の場合には、静脈穿刺装置は、外傷のない被験体の末梢血管の領域に生物薬剤を送達するよう適応させている。本発明によって意図されるように、好ましい血管アクセス構造物は、被験体の末梢の外部または内部に埋め込み可能である。特定の実施形態では、このような構造物は、実際の埋め込み部位、例えば、静脈穿刺部位または挿入部位から離れた部位で、被験体の血流中に生物薬剤を送達するよう機能し得る。さらにその他の好ましい実施形態では、静脈穿刺装置は、損傷を与えない遠位末端を備えている。
【0013】
一実施形態では、本発明は、骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身に投与することによって患者において疾患を治療する方法を提供する。本方法は、血管アクセス構造物を介して投与部位で患者に骨形成タンパク質を投与するステップを含む。投与部位は、末梢であり、骨形成タンパク質は、患者に、投与部位から少なくとも1cm末梢に位置する送達部位に送達される。さらなる一実施形態では、送達部位は、送達部位から少なくとも2cmまたは少なくとも4cmまたは少なくとも5cmである。別の実施形態では、本方法は、患者において末梢投与部位に血管アクセス構造物を埋め込むステップをさらに含む。例えば、末梢投与部位は、患者の手、脚、足、腕または頭部の静脈である。さらなる一実施形態では、末梢に位置する送達部位は、実質的に浮腫を含まず、実質的に乱されておらず(non−perturbed)、別の実施形態では、送達部位は、細静脈の弁を含まない。さらなる実施形態によれば、投与される骨形成タンパク質は、BMP−7である。さらなる実施形態によれば、骨形成タンパク質は、上記投与部位での3回の別個の投与で少なくとも3回施行される。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身に投与することによって、患者における疾患を治療する方法を提供する。本方法は、患者中の治癒された血管アクセス構造物を介して投与部位で患者に骨形成タンパク質を投与するステップを含む。この実施形態によれば、投与部位は、末梢であり、骨形成タンパク質は、投与部位から約2cm末梢に位置する送達部位で患者に送達される。例えば、いくつかの実施形態によれば、末梢投与部位は、患者の足、手、頭、腕または脚の静脈または動脈である。その他の実施形態では、骨形成タンパク質は、BMP−7である。いくつかの実施形態によれば、骨形成タンパク質は、投与部位で複数回患者に投与される。さらなる一実施形態では、複数回の投与後、患者は、BMP投与に伴う、投与の部位の周囲の副作用、すなわち、小結節形成、骨形成などを示さない。
【0015】
現在好ましい実施形態では、傷害または疾患を改善させるのに適した本発明の組成物は、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバー、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーのメンバーおよび保存されたC末端システインリッチドメイン内でBMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質からなる群から選択される生物薬剤ならびにカテーテル、ニードル、カテーテルニードル、前記薬剤を血管の外傷を含まない領域に送達するよう適応させている装置、それと機能的にまたは構造的に同様の配置を有する構造物からなる群から選択される静脈穿刺装置を含む。本明細書において意図されるように、生物薬剤は、傷害または疾患を改善させるのに有効な量であり、ここで、静脈穿刺装置は、生物薬剤を、選択された血管の外傷を含まない領域に送達するよう適応させている。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、上記の組成物に含まれるのに適している、生物薬剤を組織傷害または疾患を改善するのに有効な量で含む製剤を提供する。一実施形態では、改善されるべき傷害は、石灰化または非石灰化骨格組織傷害である。別の実施形態では、改善されるべき傷害または疾患は、代謝性骨疾患、変形性関節症、骨軟骨性疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、パジェット病、歯周炎、象牙質形成、軟骨疾患、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性症、加齢性軟骨変性症、関節軟骨傷害および疾患、全層軟骨疾患、表層性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板のヘルニア形成および断裂、椎間板の変性性疾患、骨軟骨症(osteocondrosis)または靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の傷害および疾患である。別の実施形態では、改善されるべき傷害または疾患は、肝臓疾患、肝臓切除(liver resection)、肝切除術(hepatectomy)、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血または外傷、神経障害、運動ニューロン傷害、樹状細胞欠乏症および異常症、パーキンソン病、眼の疾患、眼の瘢痕、網膜瘢痕または消化管の潰瘍性疾患である。さらに別の実施形態では、組成物は、腫瘍細胞増殖を抑制するか、腫瘍退縮を促進するのに有効な量で存在する生物薬剤を含む。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、それだけには限らないが、最小に侵襲性であるTGF−βスーパーファミリーのタンパク質などのタンパク質を使用して全身を治療する方法を意図する。本明細書において使用する場合、「全身」とは、非局所を意味する。当業者ならば、非局所は、タンパク質またはその他の生物活性剤が、それだけには限らないが、末梢経皮的部位などの単一の局所部位で被験体に導入され、単に単一の局所部位ではなく被験体の身体全体の治療を達成する方法を含み得ることを理解する。「全身」とはまた、投与される治療薬の治療的血液レベルが、ある時点で血液中に存在することを意味し得る。「全身」投与はまた、投与された治療薬の治療的血液レベルを提供することによって、投与の部位から離れた患者の身体のある部位の治療も達成し得る。本明細書において使用する場合、「最小に侵襲性の」とは、非侵襲性または非オープンフィールドの手術法を意味する。当業者ならば、このような方法は、切開術(複数可)または医療デバイス(複数可)の埋め込みを含む手順を含み得ることを理解する。
【0018】
特定の現在好ましい実施形態では、傷害された組織または病変した組織の治療方法は、投与部位に、生物薬剤および血管に生物薬剤を投与するための静脈穿刺装置を含む組成物を提供するステップを含み、そこでは、生物薬剤が傷害された組織または病変した組織を治療するのに有効な量で送達され、そしてその装置が、血管の外傷のない領域に生物薬剤を送達するよう適応させている。物理的投与部位は、生物薬剤の実際の送達部位から離れていることが好ましい。好ましい実施形態では、投与部位は、末梢部位である。
【0019】
現在好ましい実施形態では、生物薬剤は、その送達の際に、送達の部位から離れた部位で生物学的に有効な用量を提供するのに十分な速度で分散する。特に好ましい実施形態では、生物薬剤は、少なくとも1ml/分の速度で分散する。本発明に従って、送達部位は、実質的に浮腫を含まない、および/または実質的に乱されておらず、損なわれていない。さらに別の特に特に好ましい実施形態では、送達部位の近くのまたは送達部位に隣接する非血管組織は、送達後に生物薬剤を実質的に含まない。
【0020】
本発明の別の現在好ましい実施形態では、傷害された組織または病変した組織の治療方法は、生物薬剤を含む組成物を投与部位に投与することおよび送達部位の内膜組織完全性が実質的に損なわれないように、組成物を静脈内送達部位に送達することを含む。この実施形態では、生物薬剤は、送達部位から傷害された組織または病変した組織を治療するのに有効な速度で、および量で分散する。特定の実施形態では、投与部位および送達部位は、同一である。その他の実施形態では、送達部位は、投与部位から離れている。現在好ましい一実施形態では、送達部位は、投与部位から約1cm下流である。特に好ましい実施形態では、送達部位は、細静脈の弁を含まない。別の特に好ましい実施形態では、送達部位の血流速度は、送達部位から離れた部位で生物学的に有効な用量を提供するのに十分である。特に好ましい実施形態では、生物薬剤は、少なくとも約1ml/分の速度で分散する。さらに別の特に好ましい実施形態では、送達ステップは、損傷を与えない配置で遠位末端を有する静脈内装置を使用して達成される。
【0021】
本発明の教示と一致して、現在好ましい生物薬剤は、BMP−7であり、傷害された非石灰化組織または病変した非石灰化組織が、治療の現在好ましい対象である。このような傷害された組織または病変した組織は、臓器であり得る。特に好ましい治療方法では、生物薬剤は、少なくとも約0.5時間、より好ましくは、少なくとも約2時間、少なくとも約8時間;約1日、好ましくは、1日を超えて生物学的利用能がある。有効な量は、約10マイクログラム〜約1000マイクログラムの生物薬剤、より好ましくは、約50マイクログラム〜約500マイクログラム、最も好ましくは、100マイクログラム〜約300マイクログラムである。
【0022】
別の態様では、本発明はまた、上記の方法を用いて使用するのに適している生物薬剤を、組織傷害または疾患を改善させるのに有効な量で含む製剤を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身に投与することにおいて使用するためのキットを提供する。一実施形態では、このようなキットは、骨形成タンパク質および、患者の末梢に埋め込むための末梢血管アクセス構造物を含む。代替実施形態では、キットは、患者に骨形成タンパク質を末梢投与を介して全身に投与するための使用説明書をさらに含む。さらなる一実施形態では、使用説明書は、骨形成タンパク質の投与の点および送達の点が、ヒトにおける投与については1cm超離れていると規定する。さらなる一実施形態では、骨形成タンパク質はBMP−7である。なおさらなる実施形態では、骨形成タンパク質は、適した薬学的キャリアを含む組成物で提供される。
【0024】
別の実施形態では、キットは、骨形成タンパク質および患者に骨形成タンパク質を末梢投与を介して全身に投与するための使用説明書を含む。別の実施形態では、キットは、患者の末梢に埋め込むための末梢血管アクセス構造物をさらに含む。さらに別の実施形態では、骨形成タンパク質はBMP−7である。
【0025】
以下の図、説明および特許請求の範囲から、本発明の前述の、およびその他の特徴および利点ならびに本発明自体が、より完全に理解される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、例示的骨形成タンパク質(BMP)であるBMP−7を、有害作用を伴わずに、非外科的に、非局所的に哺乳類に提供できるという発見に基づいている。本発明の実施によって、これまでに観察された有害作用を伴わない、全身治療目的の、このような例示的タンパク質の複数回の反復された血管内末梢投与が可能となる。一般に、通常の注射法を使用するBMP−7などのBMPの末梢静脈内投与は、それだけには限らないが、ニードルおよび/またはカテーテルの導入部位の血管および血管周囲組織両方の中およびその周りにおける、浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成をはじめとする著しい局所作用を伴う(例えば、ラット、イヌおよびサルでは)。これらの望ましくない局所作用は、同一血管へのタンパク質の2回以上または3回以上の注射を不可能にし、それによって、多数の異なる末梢血管の使用が必要になり、注射に使用されたあらゆる血管における望ましくない作用の蓄積をもたらす。臨床診療では、このような有害作用の発生により、週に2回以上の投与が不可能になり、そして4〜5回の注射後には、最終的に、任意の末梢血管にもそのタンパク質を静脈内注射できないことになる。
【0027】
本発明は、BMP−7などの例示的タンパク質を末梢部位に脈管内投与する場合には、実際の送達部位での内膜組織完全性は、実質的に損なわれないはずであるという発見を利用する。すなわち、実際の送達部位で、任意のそのタンパク質が、血管の周囲に、血管壁に、または周囲組織に漏出する場合に、血管組織および/または血管周囲組織中およびその周りにおいて、浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成という望ましくない作用が生じる。したがって、本発明の実施は、タンパク質の送達を、血管の任意の外傷点または損傷点(例えば、物理的注射部位または血管穿刺部位;投与部位)から下流の、またはその点を超えた(例えば、少なくとも約1〜約3cm)血管に向けることを含むが、これは、このような外傷または損傷が、そのタンパク質の血管の組織への、または周囲組織への漏出を可能にするからである。本発明は、本明細書に記載されるように実施される場合には、血管の物理的貫通によって誘導される穴、裂傷および/または外傷のない血管のセグメントへのタンパク質送達を可能にする。本明細書において意図されるように、本発明は、静脈穿刺部位を少なくとも約1cm超えた、最大約5cm超えた、通常のニードルまたはカテーテルイントロデューサーを介したカテーテルの留置を含むが、いずれの場合も、血管の任意の誘発された外傷を少なくとも超える。例えば、カテーテル単独(ニードルもイントロデューサーも伴わない)をまず、血管腔への導入の中間部位を超えて配置し、次いで、静脈穿刺部位を超えて、および/または任意の関連外傷を超えて、好ましくは、少なくとも約1〜約2cm、より好ましくは、約2cm〜約4cm、最大約40cmの範囲まで通す。それからはじめて、タンパク質が実際に送達される。ニードルおよびカテーテルの直径(ゲージ)ならびに使用されるカテーテルの長さは、患者の種、年齢、性別、体重および/または大きさに応じて変わる。任意の末梢血管(例えば、手、腕、脚、足および/または頚静脈)を使用してよいが、一般に、好ましい血管は、四肢の皮下組織の静脈である。
【0028】
本明細書において別の場所で説明されるように、本発明の態様は、いくつか挙げると、pH、添加剤および/または濃度などの製剤パラメータ、ならびに製剤パラメータおよび/または投与速度の操作によって達成される、このような製剤の投与速度およびその有効な投与量を含む、最小に侵襲性の全身送達に適したタンパク質製剤をさらに含む。
【0029】
いくつかの全身性病状はBMP治療から恩恵を受け得るということを裏付ける前臨床エビデンスの有用性を考慮すると、全身治療への上記の最小に侵襲性のアプローチの重要性を軽視できない。特に、それによって影響を受ける石灰化ならびに非石灰化組織を含む代謝性骨疾患は、相当に重要なものである。さらに、前臨床研究によって、慢性および急性腎臓病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、肥満症、糖尿病、癌、眼の瘢痕、肝臓線維症、炎症性障害および神経系障害などの疾患または障害によって影響を受ける組織および/または臓器を含む、BMP治療が有益であり得るいくつかの全身性病状が確認されている。
【0030】
先に説明されるように、TGFβファミリーメンバーなどの薬剤は、ニードルおよびシリンジを介して、または標準的な静脈内一時的カテーテル(カテーテルおよびニードル送達デバイス)を使用して、末梢血管に直接注入される場合には、それだけには限らないが、ニードルおよび/またはカテーテルの導入部位(例えば、静脈穿刺部位)で、血管および血管周囲組織中およびその周りにおける、浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成をはじめとする著しい局所作用を伴う。対照的に、同じタンパク質の、例えば、血管穿刺部位を超えて、血管腔へ約2cm以上伸長する末梢カテーテルを介する方向づけられた送達では、ニードルおよび/またはカテーテルの導入部位のすぐ近くで、血管組織および/または血管周囲組織の中およびその周りにおける浮腫、線維症ならびに骨および/または軟骨の形成という通常の望ましくない作用がないか、または大幅に消失している。当業者には理解されるが、通される距離は、静脈内でそのタンパク質を受け取る種の大きさに応じて変わり;例えば、全ラットは、頭部から尾まで約8cmの長さであり得るが、イヌの上腕はそれ自体で8cmあり得る)。成人ヒトにおける標準的な腕または手の血管は、送達に先立って、投与部位のニードル外傷の部位から、カテーテルの先端が、投与点を少なくとも2cm越えて挿入され得るような直線長を有する。さらなる一実施形態では、物質の送達に先立って、カテーテルは、十分に挿入された導入ニードルの遠位端を少なくとも2cm越えて導入され得る。
【0031】
さらに、本明細書において他のところで説明されるように、本発明の態様は、いくつか挙げると、pH、添加剤および/または濃度などの製剤パラメータ、ならびに製剤パラメータおよび/または投与速度の操作によって達成される、このような製剤の投与速度およびその有効な投与量を含む、最小に侵襲性の全身送達に適したタンパク質製剤をさらに含む。
【0032】
BMPなどのタンパク質ならびに組織モルフォゲンのTGF−βスーパーファミリーのその他のメンバーの現在の臨床適用は、局所骨成長および修復を誘導するための、局所的な、外科的に侵襲性の埋め込みに限定されているが、前臨床研究によって、BMP治療が有益であり得るいくつかの全身性病状が確認されている。これらとして、それだけには限らないが、それによって影響を受ける石灰化組織ならびに非石灰化組織を含む代謝性骨疾患における適用が挙げられる。さらに、前臨床研究によって、慢性および急性腎臓病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、肥満症、糖尿病、癌、眼の瘢痕、肝臓線維症、炎症性障害および神経系障害などの疾患または障害によって影響を受ける組織および/または臓器を含む、BMP治療が有益であり得るいくつかの全身性病状が確認されている。本発明を使用するこのような疾患の治療に従って、BMP−7の非局所投与は、現在最適アプローチであると理解されている。しかし、本発明によって、直接末梢投与(例えば、皮下、筋肉内または腹腔内投与による;さらに従来のシリンジニードルを備えたシリンジを使用する静脈内投与を含む)などの従来の、現在使用されている全身投与の方法は、注射部位での異所性骨および/または線維性組織の形成および/または例えば、末梢浮腫などの局在化した組織外傷の誘発をはじめとする望ましくない作用を有し得ることがさらに確認される。本明細書において別の場所で説明されるように、本発明は、このような望ましくない作用を回避し、生物薬剤、特に、それだけには限らないが、BMPなどのタンパク質性高分子の最小に侵襲性の全身送達を促進するためのこれまで記載されていない方法に関する。本明細書において意図される最小に侵襲性の全身送達は、経口、非経口または局所送達(topical delivery)を含まないことはさらに理解される。
【0033】
骨形成タンパク質をはじめとする生物薬剤
手短には、本発明は、適した生物薬剤は、タンパク質性であることを意図する。1つの適したタンパク性薬剤として、最小に可溶性のタンパク質がある。すなわち、好ましい生物薬剤は、生理学的pHで実質的に不溶性であるタンパク質である。例えば、1つの例示的なタンパク質性生物薬剤として、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバーがある。本発明は、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーのメンバーであるタンパク質性生物薬剤をさらに提供する。本発明の特定の実施形態では、タンパク質性生物薬剤は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7である。本発明の好ましい実施形態では、タンパク質性生物薬剤はBMP−7である。本発明はまた、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7のうちいずれか1種の配列バリアントであるタンパク質性生物薬剤を提供する。本発明の別の実施形態では、タンパク質性生物薬剤は、保存されたC末端システインリッドメイン内でBMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。
【0034】
上記のように、BMPは、本発明の目的上、好ましい例示的生物薬剤であり、TGF−βスーパーファミリーに属する。TGF−βスーパーファミリータンパク質は、6個の保存されたシステイン残基を特徴とするサイトカインである。ヒトゲノムは、TGF−βスーパーファミリータンパク質をコードする約42のオープンリーディングフレームを含む。TGF−βスーパーファミリータンパク質は、配列相同性およびそれらが活性化する特定のシグナル伝達経路に基づいて、BMPサブファミリー生物薬剤およびTGF−βサブファミリー生物薬剤に少なくとも分割され得る。BMPサブファミリーとして、それだけには限らないが、BMP−2、BMP−3(オステオゲニン)、BMP−3b(GDF−10)、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(骨原性タンパク質−1またはOP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−8B(OP−3)、BMP−9(GDF−2)、BMP−10、BMP−11(GDF−11)、BMP−12(GDF−7)、BMP−13(GDF−6、CDMP−2)、BMP−15(GDF−9)、BMP−16、GDF−1、GDF−3、GDF−5(CDMP−1、MP−52)およびGDF−8(ミオスタチン)が挙げられる。本発明の目的上、好ましいスーパーファミリータンパク質として、BMP−2、−4、−5、−6および−7ならびにGDF−5、−6および−7ならびにMP−52が挙げられる。特に好ましいタンパク質として、BMP−2、BMP−7およびGDF−5、−6および−7が挙げられる。最も好ましい例示的BMPは、BMP−7である。BMPはまた、その他の動物種に存在する。さらに、ヒト集団の異なるメンバー間で、BMP配列中に対立遺伝子変異があり、今日までに発見され、特性決定されたBMP間には種間変動がある。
【0035】
TGF−βサブファミリーとして、それだけには限らないが、TGF(例えば、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)、アクチビン(例えば、アクチビンA)およびインヒビン、マクロファージ阻害性サイトカイン−1(MIC−1)、ミュラー管抑制物質、抗ミュラー管ホルモンおよびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられる。本明細書において使用する場合、「TGF−βサブファミリー」、「TGF−βs」、「TGF−βリガンド」およびその文法上の同等物は、特別に別に示されない限り、TGF−βサブファミリーメンバーを指す。
【0036】
順に、TGF−βスーパーファミリーは、システインノットサイトカインスーパーファミリーのサブセットである。システインノットサイトカインスーパーファミリーのさらなるメンバーとして、それだけには限らないが、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、ノギン、ニューロトロフィン(BDNF、NT3、NT4およびβNGF)、ゴナドトロピン、フォリトロピン、ルトロピン、インターロイキン−17およびコアグロゲンが挙げられる。
【0037】
これらの配列ならびにその化学的および物理的特性を開示する刊行物として、BMP−7およびOP−2(米国特許第5,011,691号;同5,266,683号;Ozkaynakら、EMBO J.、9、2085〜2093頁(1990年);OP−3(WO94/10203(PCT US93/10520))、BMP−2、BMP−4、(WO88/00205;WozneyらScience、242、1528〜1534頁(1988年))、BMP−5およびBMP−6、(Celesteら、PNAS、87、9843〜9847頁(1991年))、Vgr−1(Lyonsら、PNAS、86、4554〜4558頁(1989年));DPP(Padgettら Nature、325、81〜84頁(1987年));Vg−1(Weeks、Cell、51、861〜867頁(1987年));BMP−9(WO95/33830(PCT/US95/07084);BMP−10(WO94/26893(PCT/US94/05290);BMP−11(WO94/26892(PCT/US94/05288);BMP−12(WO95/16035(PCT/US94/14030);BMP−13(WO95/16035(PCT/US94/14030);GDF−1(WO92/00382(PCT/US91/04096)およびLeeら PNAS、88、4250〜4254頁(1991);GDF−8(WO94/21681(PCT/US94/03019);GDF−9(WO94/15966(PCT/US94/00685);GDF−10(WO95/10539(PCT/US94/11440);GDF−11(WO96/01845(PCT/US95/08543);BMP−15(WO96/36710(PCT/US96/06540);MP−121(WO96/01316(PCT/EP95/02552);GDF−5(CDMP−1、MP52)(WO94/15949(PCT/US94/00657)およびWO96/14335(PCT/US94/12814)およびWO93/16099(PCT/EP93/00350));GDF−6(CDMP−2、BMP13)(WO95/01801(PCT/US94/07762)およびWO96/14335およびWO95/10635(PCT/US94/14030));GDF−7(CDMP−3、BMP12)(WO95/10802(PCT/US94/07799)およびWO95/10635(PCT/US94/14030))が挙げられる。上記の刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書において使用する場合、「TGF−βスーパーファミリーメンバー」または「TGF−βスーパーファミリータンパク質」とは、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーとして当業者に公知のタンパク質を意味する。構造的に、このようなタンパク質は、疎水性シグナル配列、数百個のアミノ酸のN末端プロ領域ならびに可変N末端領域および保存された6個または7個のシステイン骨格を有する特徴的なシステインモチーフを有する約100個のアミノ酸を含有する高度に保存されたC末端領域を含む成熟ドメインを含有する大きな前駆体ポリペプチド鎖として発現される、ホモまたはヘテロ二量体である。これらの構造的に関連するタンパク質は、種々の発生事象に関与していると同定されている。
【0039】
用語「形態形成タンパク質」とは、真の形態形成活性を有するTGF−βスーパーファミリーのタンパク質に属するタンパク質を指す。例えば、このようなタンパク質は、前駆細胞が増殖するのを誘導し、および/または局所環境要因(cue)に応じて、軟骨、骨、腱、靭帯、神経またはその他の種類の分化組織の形成につながる分化経路における事象のカスケードを開始できる。したがって、本発明において有用である形態形成タンパク質は、異なる環境で異なって挙動し得る。特定の実施形態では、本発明の形態形成タンパク質は、ホモ二量体種またはヘテロ二量体種であり得る。
【0040】
用語「骨原性タンパク質(OP)」とは、前駆細胞がまた軟骨および/または骨を形成するのを誘導できる形態形成タンパク質を指す。骨は、膜性骨または軟骨性骨であり得る。最も骨原性のタンパク質は、BMPサブファミリーのメンバーであり、したがって、同様に、BMPである。しかし、逆は真実ではない場合がある。本発明によれば、DNA配列相同性またはアミノ酸配列同一性によって同定されたBMPはまた、骨原性タンパク質であるためには、機能的生物検定法において実証可能な骨原性または軟骨形成活性を有するべきである。適当な生物検定法は、当技術分野で周知であり;特に有用な生物検定法として、異所性骨形成アッセイがある(例えば、米国特許第5,011,691号;同5,266,683号参照のこと)。
【0041】
構造的に、BMPは、二量体のシステインノットタンパク質である。各BMPモノマーは、複数の分子内ジスルフィド結合を含む。さらなる分子間ジスルフィド結合は、ほとんどのBMPにおいて二量体化を媒介する。BMPは、ホモ二量体を形成し得る。いくつかのBMPは、ヘテロ二量体を形成し得る。BMPは、長いプロドメイン、1以上の切断部位および成熟ドメインを含むプロタンパク質として発現される。プロドメインは、BMPの正しいフォールディングおよびプロセシングを補助すると考えられている。さらに、一部ではあるがすべてではないBMPでは、プロドメインは、非共有結合によって成熟ドメインと結合し得、阻害剤として作用し得る(例えば、Thiesら(2001年)Growth Factors18:251〜259頁)。
【0042】
BMPは、長いプロドメイン、1以上の切断部位および成熟ドメインを含むプロタンパク質として天然に発現される。次いで、このプロタンパク質は、細胞機構によってプロセシングされて、二量体の成熟BMP分子が生じる。プロドメインは、BMPの正しいフォールディングおよびプロセシングを補助すると考えられている。さらに、一部ではあるがすべてではないBMPでは、プロドメインは、非共有結合によって成熟ドメインと結合し得、シャペロンならびに阻害剤として作用し得る(例えば、Thiesら(2001年)Growth Factors、18:251〜259頁)。
【0043】
本明細書において意図されるように、用語「BMP」とは、DNA相同性およびアミノ酸配列同一性に基づいて定義されるTGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーに属するタンパク質を指す。本発明に従って、タンパク質は、BMPサブファミリーを特徴付ける保存されたC末端システインリッチドメイン内で、公知BMPサブファミリーメンバーと少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する場合に、BMPサブファミリーに属する。BMPサブファミリーのメンバーは、全体では50%未満のDNAまたはアミノ酸配列同一性を有し得る。本明細書において使用する場合、用語「BMP」とは、アミノ酸配列バリアント、ドメイン交換バリアントならびに天然に存在する骨形成タンパク質の末端切断物および活性な断片ならびに2種の異なるモノマーBMPペプチドから形成されるヘテロ二量体タンパク質、例えば、BMP−2/7;BMP−4/7:BMP−2/6;BMP−2/5;BMP−4/7;BMP−4/5およびBMP−4/6ヘテロ二量体であるタンパク質をさらに指す。適したBMPバリアントおよびヘテロ二量体として、US2006/0235204;WO07/087053;WO05/097825;WO00/020607;WO00/020591;WO00/020449;WO05/113585;WO95/016034およびWO93/009229に示されるものが挙げられる。
【0044】
本明細書において使用する用語「薬物」「医薬品」または「生物薬剤」/「生物薬剤」(すなわち、生物学的に活性な薬剤)とは、制限するものではないが、身体において局所的にまたは全身に作用し得る、生物学的に、生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。生物薬剤は、疾患または疾病の治療、予防、診断、治癒または軽減のために使用される物質であり、身体の構造または機能に影響を及ぼす物質または好ましい生理学的環境に存在もしくは接触した後に、生物学的に活性に、もしくはより活性になるプロドラッグである。また、種々の形態の生物薬剤を使用してよい。これらとして、制限するものではないが、身体に注射されると生物学的に活性化される、無電荷の分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミドなどといった形態が挙げられる。好ましい生物薬剤として、それだけには限らないが、酵素、増殖因子、ホルモン、分化因子、サイトカイン、ケモカインおよび抗体をはじめとする治療活性または予防活性を有するタンパク質が挙げられる。
【0045】
当業者には、水性環境において放出され得る任意の生物薬剤を、開示される本発明において利用できる。好ましい実施形態では、生物薬剤は、タンパク質性である。別の好ましい実施形態では、生物薬剤は、最小に可溶性である。より好ましい実施形態では、生物薬剤は、実質的に生理学的に不溶性である。さらに好ましい実施形態では、生物薬剤は、生理学的pHで実質的に不溶性である。別の好ましい実施形態では、生物薬剤は、投薬後、in vivoで、有効性をもって1時間、より好ましくは、24時間、より好ましくは、48時間、さらにより好ましくは、1週間、さらにより好ましくは、1カ月、なおさらにより好ましくは、数カ月持続し得るものである。より特に好ましい実施形態では、生物薬剤は、TGF−βスーパーファミリーのメンバーである。なおさらにより特に好ましい実施形態では、生物薬剤は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7ならびにそれらのありとあらゆるバリアントおよび相同体からなる群から選択される。例えば、有用なBMPとして、BMP−2、BMP4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7のC末端システインドメインと、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、最も好ましくは、少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を共有する相同体またはバリアントである配列を含有するものが挙げられる。本明細書において意図されるように、好ましいBMPとして、保存的アミノ酸置換を含有するバリアントをはじめとする任意のこのようなBMPの生物学的に活性なバリアントが挙げられる。本発明によって必要とされるすべては、これらのバリアントが、天然の形態に匹敵する生物活性を保持することである。本明細書において使用する場合、用語「BMP関連タンパク質」または「複数のBMP関連タンパク質」とは、前記タンパク質のうち任意の1種またはすべてを意味する。
【0046】
本明細書において有用な形態形成タンパク質は、対立遺伝子対応物、系統発生対応物およびそれらのその他のバリアントを含む、任意の公知の天然に存在する天然タンパク質を含む。これらのバリアントは、様々なグリコシル化パターン、様々なN末端および天然タンパク質の活性な末端切断形態または変異形態を有する形態を含む。有用な形態形成タンパク質はまた、生合成的に産生されるタンパク質(例えば、「ムテイン」または「変異体タンパク質」)および一般的な形態形成ファミリーのタンパク質の新規の、形態形成的に活性なメンバーであるタンパク質も含む。
【0047】
投与および送達の様式;血管アクセス構造物を含む
本発明が、それだけには限らないが、最小に侵襲性である、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質などのタンパク質を使用する全身治療の方法を意図することが特に重要である。本明細書において使用する場合、「全身の」とは、非局所を意味する。当業者ならば、非局所は、タンパク質またはその他の生物活性剤が、それだけには限らないが、末梢経皮的部位などの単一の局所部位で被験体に導入されて、単に単一の局所部位でではなく被験体の全身の治療を達成する方法を含み得ることは理解する。本明細書において使用する場合、「最小に侵襲性の」とは、非侵襲性または非オープンフィールドの手術法を意味する。当業者ならば、最小に侵襲性の方法は、切開術(複数可)または医療デバイス(複数可)の埋め込みを含む手順を含み得ることは理解する。
【0048】
すでに記載されたように、本発明は、最小に可溶性の生物活性剤を、経口投与、腹腔注射または反復性末梢注射などの従来の経路以外によって被験体に提供できるという発見に基づいている。すなわち、ここで、タンパク質などの最小に可溶性の生物活性剤を、有害作用を伴わずに、外科的介入を伴わずに、全身経路によって今や効率的に提供できる。
【0049】
本発明の目的上「送達部位」とは、生物活性剤が実際に血液と直接接触する解剖学的部位を意味するが、「投与部位」とは、生物活性剤が、レシピエントに物理的に最初に導入される解剖学的部位を意味する。投与部位は、その部位でニードルおよび/またはカテーテルの導入による外傷を受け得る。
【0050】
本発明は、特定の的確な生理学的判定基準が、BMP−7などの例示的タンパク質をはじめとするタンパク質などの最小に可溶性の生物活性剤の投与および送達の成功において決定的であるという発見を利用する。まず第1に、本発明の実施には、実際の送達の静脈内部位が、実質的に損なわれないことが必要である。例えば、最も好ましい部位は外傷を含まない、例えば、浮腫を含まない。最も好ましい部位での血管周囲組織、血管組織および/または血管内膜組織の完全性は、無傷である。内膜完全性の指標には、タンパク質が、送達部位で血管組織、血管周囲組織および/または非血管組織へ進入または漏出する程度であり、組織の漏出または浸透がないことが好ましい。すなわち、本発明の教示によれば、送達部位での、送達部位付近のまたは送達部位に隣接する血管組織、血管周囲組織および/または非血管組織は、送達後に実質的に生物薬剤を含むべきでない。前記しるしの各々は、通常の材料および方法を使用して当業者によって容易に測定可能である。
【0051】
本発明の最適な実施のための別の判断基準は、好ましい送達部位が、好ましくは、細静脈弁を含むべきでなく;最も好ましい送達部位は、細静脈弁に極接近すべきでないということである。前述のパラメータは、通常の材料および方法を使用して当業者によって容易に識別可能である。
【0052】
本発明を実施するためのさらに別の判断基準は、投与部位に対応する送達部位の実際の位置に関する。本発明に従って、実際の投与部位および/または静脈穿刺の部位に対する実際の送達部位の近接がモニタリングされるべきである。本発明は、治療目的の患者へのタンパク質(例えば、特定の例としてBMP−7をはじめとするTGFβファミリーメンバー)の複数の(反復された)血管内注射を可能にするプロセスである。本プロセスの主な成果は、その血管の組織への、または周囲の組織への薬物の漏出を可能にする血管の任意の外傷点または損傷点(血管穿刺部位)を超えて(例えば、少なくとも約1〜約3cm)血管に薬物を導入(注射)することである。したがって、本プロセスは、穴、裂傷、外傷または注射された薬物の血管周囲または傍血管(paravascular)の漏出を可能にするものを有さない血管への注射を可能にするプロセスである。特定の実施形態では、このプロセスは、血管へのニードルおよびカテーテルによる外傷の点を約1〜約5cm超えた(やはり、動物/患者の大きさに依存する)、通常のニードルまたはカテーテルイントロデューサーを介したカテーテルの留置を可能にする。すなわち、特定の実施形態では、カテーテル単独(ニードルもイントロデューサーも伴わない)を、血管穿刺または血管腔への導入の直近部位を超えて配置し、穿刺の部位を超えて約1cm、少なくとも約2〜約4cm、最大約40cm通す。例えば、好ましい実施形態では、カテーテルを、投与部位、すなわち、血管の外傷の点を超えて2cmの最小距離に挿入し、投与の点から2cmのその最小の距離でタンパク質の送達が生じる。別の実施形態では、送達部位は、十分に挿入された導入ニードル遠位端を少なくとも2cm超える。ニードルおよびカテーテルの直径(ゲージ)ならびに使用されるカテーテルの長さは、患者の種、年齢、性別および体重および大きさに応じて変わる。任意の末梢血管を使用してよい(手、腕、脚または足ならびに頚静脈)が、通常の血管は、四肢の皮下組織の静脈である。
【0053】
先に記載したように、本発明の方法によって、新しい部位を探す必要がなく、同じ投与部位での例示的タンパク質の複数回の、すなわち、反復された注射が可能となる。本明細書に記載される本発明の方法に従う投与が、本明細書においてこれまでに記載された副作用を実質的に低減または排除するので、複数回の注射が可能となる。本発明の方法によれば、タンパク質は、同じ投与部位で患者に少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回または少なくとも10回投与してよい。例えば、タンパク質を、同じ投与部位で患者に1日に1回または1日に2回、例えば、1週間、2週間、3週間または4週間投与してもよい。さらなる一実施形態では、タンパク質は、同じ投与部位で患者に1週間に1回、例えば、2週間、3週間または4週間投与してもよい。さらなる一実施形態では、タンパク質を、同じ投与部位で患者に1日おきに、例えば、2週間、3週間または4週間投与してもよい。さらなる一実施形態では、タンパク質は、同じ投与部位で患者に1週間に2回、例えば、2週間、3週間または4週間投与してもよい。
【0054】
本発明を実施する場合には、実際の送達部位を、実際の投与部位および/または静脈穿刺の部位から少なくとも約2cmまたは約〜約6cm;少なくとも約4〜約10cm;少なくとも約10cm;または少なくとも約15cm下流に位置づけることが好ましい。例えば、これは、本発明の方法に従って、ニードルまたはカテーテルイントロデューサーの先端を越えて導入されたカテーテル;または本明細書において別の場所で同定されるいずれかの好ましい静脈穿刺装置を使用して容易に達成される。当然ながら、当業者ならば、実際の投与部位から下流の最適な距離が、患者の大きさに応じて変わることを理解する。
【0055】
いくつかの実施形態では、実際の送達部位の位置は、提案された送達部位で0.9%の滅菌食塩水溶液などの良性の流体を注射して、漏出が生じないことを確実にすることによって決定される。しかし、いくつかの実施形態によれば、良性の流体を用いる漏出についての最初の試験を有さずに、漏出を日常的に避けることができるよう、送達部位が投与部位を少なくとも2cm越えていることが本発明の利点である。例えば、ヒトでは、漏出を日常的に避けることができるよう、送達部位は投与部位を少なくとも2cm越える。さらなる一実施形態では、ヒトでは、漏出を日常的に避けることができるよう、送達部位は投与部位を約3〜5cm越える。
【0056】
したがって、本発明の現在好ましい実施形態では、傷害された組織または病変した組織の治療方法は、送達部位での内膜組織完全性が実質的に損なわれないよう、投与部位に生物薬剤を含む組成物を投与することおよび組成物を静脈内送達部位に送達することを含む。この実施形態では、生物薬剤は、傷害された組織または病変した組織を治療するのに有効な速度および量で送達部位から分散する。特に好ましい実施形態では、送達部位は、細静脈弁を含まない。別の特に好ましい実施形態では、送達部位での血流速度は、送達部位から離れた部位で生物学的に有効な用量を提供するのに十分である。さらに別の特に好ましい実施形態では、送達ステップは、損傷を与えない配置で遠位末端を有する静脈内装置を使用して達成される。
【0057】
関連態様では、本発明は、生物薬剤および静脈穿刺装置または関連装置を含む組成物を対象とする。本明細書において意図されるように、静脈穿刺装置は、本発明に従って有効量の生物薬剤を提供するために使用できる任意のデバイスまたは装置である。好ましい装置は、送達部位で内膜組織を破壊しないか、最小にしか破壊しない装置である。本発明に従って、静脈穿刺装置は、被験体の末梢血管系へのアクセスを提供するデバイスである。本発明によって意図されるように、静脈穿刺構造物は、被験体の外部または内部に埋め込み可能である。特定の実施形態では、このような装置は、埋め込み部位から離れた部位で、被験体の末梢血流へ生物薬剤を送達するよう機能し得る。
【0058】
当業者ならば、通常、このような適した静脈穿刺装置には精通している。本明細書において意図される装置として、例えば、その全長が導入されておらず、むしろ血管の外傷部位を超えて伸長するのに十分な長さのみ導入されるが、依然として、末梢血管内に送達部位を提供するPICCカテーテルが挙げられる。
【0059】
特定の現在好ましい実施形態では、傷害された組織または病変した組織の治療方法は、生物薬剤および静脈穿刺装置を含む組成物を投与部位に提供するステップを含み、そこでは、生物薬剤が傷害された組織または病変した組織を全身的に治療するのに有効な量で末梢に送達される。本明細書において別の場所で説明されるように、身体の投与部位は末梢であり、生物薬剤の末梢送達の実際の部位とは離れている。
【0060】
本発明の教示と一致して、現在好ましい生物薬剤は、BMP−7であり、傷害された組織または病変した非石灰化組織は、治療の現在好ましい対象である。このような傷害された組織または病変した組織は、臓器であり得る。特に好ましい治療方法では、生物薬剤は、少なくとも約0.5時間、より好ましくは、少なくとも約2時間、少なくとも約8時間;約1日、好ましくは、1日を超えて生物学的利用能である。また、有効な量は、約10マイクログラム〜約1000マイクログラムの生物薬剤、より好ましくは、約50マイクログラム〜約500マイクログラム、最も好ましくは、約100マイクログラム〜約300マイクログラムである。
【0061】
別の態様によれば、本発明は、BMP−7などのBMPまたは本明細書に開示される任意のその他のタンパク質が、本明細書に記載される副作用を引き起こさずに首尾よく投与されるように、送達部位での内膜組織完全性は実質的に損なわれるべきではないという、本明細書に記載される洞察に基づいたさらなる投与方法を含む。例えば、本発明にしたがって、本方法は、ヒールドインカテーテル(healed−in catheter)によってBMPを患者に投与することを含む。カテーテルがヒールドイン(healed−in)である結果として、静脈穿刺部位または投与部位の組織は、浮腫および周囲組織への任意の投与される薬剤の漏出がおこりにくい。例えば、ヒールドインカテーテルは、静脈穿刺部位の外傷が治癒する機会を有するよう患者中で数日間維持される。例えば、本発明の1つの実施形態によれば、ヒールドインカテーテルは、持続性のあるカテーテルまたはポートである。本発明によれば、用語「治癒する(heal)」または「治癒した(healed)」は、組織完全性が実質的に損なわれていないこと、および/または静脈穿刺部位が実質的に組織損傷を含まないことを示唆する。言い換えれば、用語「治癒する」は、傷害された部位または損なわれた部位の完全な修復を必要としないが、「治癒した」組織は完全に修復された、または損なわれていないものであり得る。用語「治癒する」または「治癒した」は、一実施形態では、損傷を受けた組織または病変した組織が、瘢痕組織を含み得る新規組織増殖物で実質的に置換されていることを示唆する。
【0062】
1つの実施形態によれば、BMP−7などのBMPは、末梢血管のヒールドインカテーテルによって患者に投与され、送達部位は、投与部位から1cm未満であり、約1cm、約2cmまたは2cmを超える。別の実施形態によれば、本発明は、BMPを患者に投与する方法を含む。この方法は、投与部位で患者の末梢静脈にカテーテルを導入するステップ、投与部位が実質的に損なわれないように、適所で投与部位がカテーテルで治癒することを可能にするステップと、前記カテーテルによって患者にBMPを投与するステップを含み、ここで、送達部位は、投与部位の投与部位から1cm未満または約1cmまたは約2cmまたは2cmを超える。
【0063】
当業者ならば、本発明の治療および投与方法は、それだけには限らないが、適応症、疾患の病状および個体の身体特性をはじめとする多数の因子を考慮して、個体の治療を最適化するよう改変または変更してよいことを理解する。
【0064】
治療的介入
上記で説明したように、本発明はまた、任意の生物薬剤またはその製剤を、生物薬剤が有効である任意の公知な状態または潜在的状態を改善させる、および/または予防するのに有効な量で含有する、本発明の組成物を使用して治療する方法を提供する。本明細書において使用する場合、「有効な量」とは、それが投与される生体において状態を治療するのに有効である生物薬剤の量を意味する。例えば、本発明のBMP製剤を使用して、骨および軟骨などの結合組織の疾患または傷害を患う患者を治療できる。さらに、以下に記載されるように、本発明のBMP製剤を使用してその他の組織の疾患または傷害を治療できる。
【0065】
本発明の一実施形態では、改善されるべき傷害は、石灰化または非石灰化骨格組織傷害である。別の実施形態では、改善されるべき傷害または疾患は、代謝性骨疾患、変形性関節症、骨軟骨性疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、パジェット病、歯周炎、象牙質形成、軟骨疾患、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性症、加齢性軟骨変性症、関節軟骨傷害および疾患、全層軟骨疾患、表層性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板のヘルニア形成および断裂、椎間板の変性性疾患、骨軟骨症または靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の傷害および疾患である。別の実施形態では、改善されるべき傷害または疾患は、肝臓疾患、肝臓切除、肝切除術、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血または外傷、神経障害、運動ニューロン傷害、樹状細胞欠乏症および異常症、パーキンソン病、眼の疾患、眼の瘢痕、網膜瘢痕または消化管の潰瘍性疾患である。
【0066】
BMPは、骨または軟骨とは異なる哺乳類におけるさまざまな組織についての骨形態形成および組織形態形成の発達カスケードを誘導できる。この形態形成活性は、前駆細胞の増殖および分化を誘導する能力ならびに骨、軟骨、非石灰化骨格または結合組織ならびにその他の成体組織の形成をもたらす事象の進行によって、分化した表現型を支持および維持する能力を含む。
【0067】
例えば、BMPは、代謝性骨疾患において骨量の減少を防ぐ、および/または骨量を増加させるための治療に使用できる。骨原性タンパク質を使用して、代謝性骨疾患において骨量の減少を防ぐ、および/または骨量を増加させるための一般的な治療方法が、米国特許第5,674,844号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明のBMPは、歯周組織再生に使用できる。骨原性タンパク質を使用する歯周組織再生のための一般的な方法は、米国特許第5,733,878号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、肝臓再生のために使用できる。骨原性タンパク質を使用する肝臓再生のための一般的な方法は、米国特許第5,849,686号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、慢性腎不全の治療のために使用できる。骨原性タンパク質を使用する慢性腎不全の一般的な治療方法は、米国特許第6,861,404号に開示されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、中枢神経系虚血または外傷後の機能回復の増強に使用できる。骨原性タンパク質を使用する、中枢神経系虚血または外傷後の機能回復の増強のための一般的な方法は、米国特許第6,407,060号に開示されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、樹枝状成長の誘導のために使用できる。骨原性タンパク質を使用する、樹枝状成長の誘導のための一般的な方法は、米国特許第6,949,505号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、神経細胞接着の誘導のために使用できる。骨原性タンパク質を使用する、神経細胞間接着の誘導のための一般的な方法は、米国特許第6,800,603号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。BMPは、パーキンソン病の治療および予防のために使用できる。骨原性タンパク質を使用する、パーキンソン病の治療および予防のための一般的な方法は、米国特許第6,506,729号に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
さらに、BMPは、病変したまたは損傷を受けた哺乳類組織を修復するために使用できる。その位置に存在する組織は、病変していようと、損傷を受けていようと、適当なマトリックスを提供して、前駆細胞の増殖および組織特異的分化を可能にする。さらに、損傷を受けた、または病変した組織の位置、特に、外科的手段によってさらに攻撃された位置は、形態形成的に許容される環境を提供する。
【0069】
BMPはまた、傷害後の瘢痕組織形成を防ぐか、または実質的に阻害するために使用できる。それは、その位置での組織形態形成を誘導でき、移動する線維芽細胞の非分化結合組織への凝集を防ぐ。例えば、BMPを、部分肝切除術後の実質的に傷害された肝臓組織のタンパク質誘導性形態形成のために使用できる。
【0070】
別の例として、BMPを、象牙質形成を誘導するために使用できる。今日まで、傷害に対する歯髄組織の予測不可能な応答は、歯学における根本的な臨床上の問題である。さらに別の例として、BMPは、ラット脳穿刺モデルを使用して評価され得る、中枢神経系(CNS)修復における再生効果を誘導し得る。
【0071】
骨格障害の場合には、哺乳類では、外傷および炎症性疾患をはじめとするいくつかの因子が、軟骨変性を引き起こすか、その一因であり得る。炎症反応の作用に起因する細胞に対する損傷は、関節の疾患(例えば、関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA))における軟骨機能の低下または軟骨機能の喪失の原因と関連があるとされてきた。さらに、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症などの自己免疫疾患は、結合組織の分解を特徴とし得る。変形性関節症(OA)などのいくつかの軟骨変性性疾患の場合には、関節軟骨の正常な加齢が、病的なOA過程に変化する機序は、現在まだわかっていない。以上の疾患の各々は、本発明の材料および方法を用いて効果的に治療され得る。
【0072】
製剤
本発明の生物薬剤、特に、BMPは、それを必要とする哺乳類、好ましくは、ヒトへの投与のために、薬学的組成物の一部として製剤化できる。特に好ましい実施形態では、生物薬剤はBMP−7である。本発明の現在好ましい実施形態は、トレハロース、好ましくは、乳酸バッファーのトレハロース、最も好ましくは、9%トレハロースを含む10mM乳酸塩のバッファーのBMP−7を含むBMP製剤を含む。本発明の前記実施形態を実施することは、当技術分野における技術の範囲内であり、ならびに、当業者が認識する本発明のありとあらゆる変法および改変は、in vivoでの生物薬剤の有効な投薬を提供する。
【0073】
なおさらに、本発明の生物薬剤は、それを必要とする哺乳類に、単独で、または組織形態形成に対して有益な効果を有することが公知である別の物質と組み合わせて投与できる。このような物質(本明細書においては、補助因子)の例として、制限するものではないが、組織修復および再生を促進し、かつ/または炎症を阻害する物質が挙げられる。骨粗鬆症の個体において骨組織成長を刺激するための有用な補助因子の例として、例えば、それだけには限らないが、ビタミンD、カルシトニン、プロスタグランジン、副甲状腺ホルモン、デキサメタゾン、エストロゲンおよびIGF−IまたはIGF−IIが挙げられる。神経組織修復および再生にとって有用な補助因子として、それだけには限らないが、神経成長因子を挙げることができる。その他の有用な補助因子として、それだけには限らないが、防腐薬、抗生物質、抗ウイルス薬および抗真菌薬、鎮痛薬および麻酔薬をはじめとする症状を軽減する補助因子が挙げられる。
【0074】
当業者には当然であるが、治療用組成物において記載される化合物の濃度は、制限するものではないが、投与される薬物の投薬量、使用される化合物の化学的特性(例えば、疎水性)および投与経路をはじめとするいくつかの因子に応じて変わる。投与される薬物の好ましい投薬量はまた、それだけには限らないが、疾患の種類および程度、組織喪失または欠損、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的有効性、化合物の製剤、製剤における添加剤の存在および種類、および投与経路をはじめとする変数に応じて変わる可能性がある。本発明の治療用分子は、通常の用量が、1日あたり約10ng/kg体重〜約1g/kg体重の範囲である場合に個体に提供され得;好ましい用量範囲は、約0.1mg/kg体重〜100mg/kg体重であり、10〜1000μg/用量のより特に好ましい投薬量範囲を有する。熟練した臨床医には当然であるが、本発明の有効な用量は、それだけには限らないが、適応症、疾患の病状および個体の身体特性をはじめとする多数の因子を考慮して改変され得る。ありとあらゆる前記因子を考慮して用量を変更、改変または最適化することが、当技術分野の技術の範囲内であることは明らかである。
【0075】
本発明の特定の実施形態のパラメータおよび状態に従って、生物薬剤のアベイラビリティーを制御できる。特に、製剤に由来する生物薬剤のアベイラビリティーの速度および程度は、それだけには限らないが、ポリマーの種類および分子量、速度改変剤(rate modifying agent)の使用、可塑剤および浸出可能剤(leachable agent)の使用ならびに熱可塑性ポリマーおよび生物薬剤の濃度および種類などの特性のバリエーションによって制御できる。
【0076】
生物薬剤の放出速度および必要に応じて含まれるマトリックスの柔軟性を管理するために、速度改変剤、可塑剤および浸出可能剤を含めてもよい。速度改変剤は、マトリックスに組み込まれる速度改変剤の性質に応じて放出の速度を増大または遅延し得る。公知の可塑剤ならびにポリマー系における二次的擬結合形成(pseudobonding)に適している有機化合物が、速度改変剤として、また柔軟性改変剤(pliability modifier)および浸出剤(leaching agent)としても許容される。通常、これらの薬剤は、モノ、ジおよびトリカルボン酸のエステル、ジオールおよびポリオール、ポリエーテル、非イオン性界面活性剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、植物油などのオイルなどである。マトリックス内のこのような薬剤の濃度は、マトリックスの総重量に対して、総計で最大60重量%、好ましくは、最大30重量%、より好ましくは、最大15重量%の範囲であり得る。概して、これらの速度改変剤、浸出剤、可塑剤および柔軟性改変剤およびその適用は、米国特許第5,702,716号および同5,447,725号に記載されており、その開示内容は、使用されるポリマーが生体適合性および/または生分解性であるという条件で参照により本明細書に組み込まれる。当業者には当然であるが、本発明は、生物薬剤の可溶化速度または生物薬剤のための任意のキャリアの分解速度もしくは浸食速度を増大させ得る当技術分野内のありとあらゆる薬剤を含む。したがって、本発明の実施に従うその他の薬剤として、それだけには限らないが、同時局在化のpH改変剤および張度改変剤が挙げられる。特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、生物薬剤の可溶化速度を実質的に増大させる濃度または量で提供される、同時局在化のpH改変剤または張度改変剤を含む。別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、キャリアの分解速度または浸食速度を実質的に増大させる濃度または量で提供される、同時局在化のpH改変剤または張度改変剤を含む。当業者には当然であるが、本発明の速度改変剤、浸出剤、可塑剤、柔軟性改変剤、pH改変剤および張度改変剤は、性質または濃度において置換、改変、変更され得、それだけには限らないが、所望の放出速度、キャリアの性質(もしあれば)、適応症、疾患の病状および個体の身体特性をはじめとする多数の因子を考慮して最適化され得る。
【0077】
本発明の生物薬剤の製剤は、1種以上の添加剤をさらに含み得る。添加剤の例は、the American Pharmaceutical Associationおよびthe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されている。本発明の製剤および薬学的組成物の製造および使用において使用してもよい添加剤として、それだけには限らないが、酢酸、氷酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、希塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸などの酸性化剤;安息香酸デナトリウム、メチルイソブチルケトン、スクロースオクタアセテートなどのアルコール変性剤;強アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミンなどのアルカリ化剤;ジメチコン、シメチコンなどの消泡剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼルトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモールなどの抗菌保存剤;アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、トコフェロール添加剤などの抗酸化剤;酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム溶液、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの緩衝剤;エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸および塩、エデト酸などのキレート化剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬用グレーズ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、酢酸フタル酸ポリビニル、セラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバロウ、微晶質ワックス、ゼインなどのコーティング剤;カラメル、赤、黄色、黒またはブレンド、酸化鉄などの色;エチレンジアミン四酢酸および塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチジン酸エタノールアミド(ethanolmaide)、硫酸オキシキノリンなどの錯化剤;塩化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化シリコンなどの乾燥剤;アラビアガム、コレステロール、ジエタノールアミン(補助剤)、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノおよびジグリセリド、モノエタノールアミン(補助剤)、オレイン酸(補助剤)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、二酢酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソリタン(soritan)モノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン、乳化ワックスなどの乳化剤および/または可溶化剤;粉末セルロース、精製ケイ質土などの濾過助剤;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化シリコン、タルクなどの流動促進剤および/またはアンチケーキング剤;グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトールなどの保湿剤;ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノ−およびジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチルなどの可塑剤;酢酸セルロースなどのポリマー膜;アセトン、酢酸、アルコール、希アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーンオイル、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱油、ピーナッツオイル、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、ゴマ油、注射用水、滅菌注射用水、洗浄用滅菌水、精製水などの溶剤;粉末セルロース、木炭、精製ケイ質土および二酸化炭素吸着剤などの吸収剤;硬化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、固い脂肪、パラフィン、ポリエチレン添加剤、ステアリルアルコール、乳化ワックス、白ろう、黄ろうなどの硬化剤;アラビアガム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微晶質およびカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、ペクチン、酸化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化シリコン、コロイド状二酸化シリコン、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガムなどの懸濁化剤および/または増粘剤;ならびに塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドキュセートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オキトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、硬化ヒマシ油、ポリオキシル50ステアレート、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、チロキサポールなどの湿潤剤および/または可溶化剤が挙げられる。
【0078】
生物活性助剤
本発明はまた、本発明の生物薬剤組成物と同時投与できる「生物活性助剤」を意図し、これとして、それだけには限らないが、タンパク質同化剤、制酸剤、抗喘息薬、抗高コレステロール血症薬および抗脂質薬、抗凝固薬、抗けいれん薬、止痢薬、制吐薬、例えば、抗細菌薬および抗菌薬を含めた抗感染薬、抗炎症薬、抗躁薬、代謝拮抗薬、制嘔吐剤、抗新生物薬剤、抗骨吸収剤、抗肥満症薬、解熱剤および鎮痛薬、鎮痙薬、抗血栓剤、鎮咳薬、抗尿酸血症薬、抗狭心症薬、抗ヒスタミン剤、食欲抑制剤、生物製剤、脳血管拡張剤(cerebral dilators)、冠動脈拡張剤、気管支拡張剤、細胞傷害性薬剤、鬱血除去薬、利尿薬、診断薬、赤血球生成剤(erythropoietic agents)、去痰薬、胃腸の鎮静剤、血糖上昇剤、睡眠薬、血糖降下剤、免疫調節剤、イオン交換樹脂、緩下剤、ミメラルサプリメント、粘液溶解薬、神経筋薬物、末梢血管拡張薬、向精神剤、鎮静剤、刺激薬、甲状腺薬および抗甲状腺薬、組織増殖剤、子宮弛緩薬、ビタミンまたは抗原性物質が挙げられる。
【0079】
より詳しくは、本発明との同時投与に好ましい生物活性助剤として、それだけには限らないが、アンドロゲン阻害剤、多糖類、増殖因子、ホルモン、ビスホスホネート、抗新脈管形成因子、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロロフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸シュードエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ、ミメラルサプリメント、コレスチラミン(cholestryramine)、N−アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカインおよびワクチンが挙げられる。本発明と同時投与できるその他の代表的生物活性助剤として、それだけには限らないが、ペプチド薬物、タンパク質薬物、脱感作物質、抗原、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス性物質、抗細菌性物質、抗寄生虫性物質、抗真菌性物質などの抗感染薬およびそれらの組合せ、抗アレルギー剤、アンドロゲンステロイド、鬱血除去薬、催眠薬、ステロイド性抗炎症薬、抗コリン作動薬、交感神経作動薬、鎮静剤、縮瞳薬、精神賦活剤、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン作用薬、体液性物質、プロスタグランジン、鎮痛薬、鎮痙薬、抗マラリア剤、抗ヒスタミン剤、心臓作用薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗パーキンソン病薬、抗高血圧薬、β−アドレナリン作動性遮断薬、栄養剤およびベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられる。生物活性助剤は、さらに、刺激薬、鎮静薬、催眠薬、鎮痛薬、抗けいれん薬などとして作用できる物質であり得る。
【0080】
生物活性助剤は、細胞および組織の成長および生存を促進できる、または例えば、血液細胞、ニューロン、筋肉、骨髄、骨細胞および組織などのような機能性細胞の活性を増強できる物質またはその代謝前駆体であり得る。例えば、同時投与してもよい生物活性助剤として、制限するものではないが、例えば、ガングリオシド、ホスファチジルセリン、神経成長因子、脳由来神経栄養因子のような神経成長促進物質が挙げられる。生物活性助剤はまた、いくつか挙げると、例えば、線維芽細胞増殖因子、上皮成長因子、内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン様成長因子、歯根膜細胞増殖因子のような軟部または線維性結合組織のための増殖因子であり得る。
【実施例】
【0081】
1.末梢静脈送達による例示的BMPの最小に侵襲性の送達
(a)イヌにおけるBMP−7の末梢静脈送達
本研究の目的は、ビーグル犬の末梢静脈にBMP−7を安全に静脈内(IV)に送達する方法を決定することであった。この研究は、パイロットセグメント(2匹の成体の雌のビーグル)ならびに第I相および第II相(2匹の成体の雌のビーグル)を有していた。研究のパイロット部分の目的は、末梢血管における反復投与を可能にするための最適カテーテルシステムおよびゲージを決定することであった。この研究の第I相では、イヌに対し、1週間に1回、4回の注射の間、末梢静脈へIV投薬し;各注射では、100μg/kgのBMP−7を投与した。イヌには、対側の末梢血管においての等容量のビヒクルを単独で与えた。研究の第II相の間に、100μg/kgのBMP−7の投薬頻度は、4週間の間、1週間あたり3回とした。
【0082】
パイロットセグメントでは、1匹のイヌが、注射後約9日で、投与部位(ニードルおよびカテーテル導入部位)で左前脚に2つの小さい、堅い皮下小結節を有していた。これは、カテーテル留置の試みの失敗後のBMP−7の血管周囲注射による可能性がある。小結節は、約8週間かけて消散した。第2のパイロットのイヌは、注射後約9日で、投与部位で左背側前脚にわたって皮下肥厚の小さい領域を有しており、同様に、カテーテル留置の試みの失敗後のBMP−7の血管周囲注射による可能性がある。
【0083】
第I相および第II相では、イヌに、末梢静脈から挿入された中心静脈カテーテル(PICC)を使用して注射した。カテーテルは26〜20ゲージの範囲であり、血管内を首尾よく進め、挿入部位から、4cmから最大40cm挿入した。第I相では、両方のイヌが、1週間に1回、4週間の間、首尾よく投薬され、異常な臨床兆候はなかった。第II相では、4週間の間、1週間に3回のBMP−7投薬頻度を用い、PICCシステムは28〜20ゲージの範囲であり、使用したカテーテルに応じて挿入部位を12から30cm超えて進めた。両方のイヌとも、1週間に3回、4週間の間、首尾よく投薬され、異常な臨床兆候はなかった。第I相および第II相では、イヌは、BMP−7のIV投与と関連していると考えられる臨床兆候を有していなかった。
【0084】
(b)成体の雌のビーグル犬に静脈内投与されたBMP−7と関連している末梢静脈刺激作用の評価
本研究の目的は、ビーグル犬の末梢静脈にBMP−7を安全に静脈内(IV)送達する方法を決定することであった。この研究の目的は、末梢血管における反復投与を可能にするための最適カテーテルシステムおよびゲージを決定することおよび注射部位を組織学的に調べることであった。イヌに対し、1週間に3回、2週間の間、合計6回の注射を末梢静脈にIV投薬し;各注射は、100μg/kgのBMP−7を投与した。血管腔に通されたカテーテルの先端までの、十分に挿入されたカテーテルニードルの遠位末端からの距離は、少なくとも2cmであった。イヌには、対側の末梢血管に等容量のビヒクルを単独で与えた。PICCラインが適当に使用され、留置された、BMP−7を注射されたイヌには、炎症、線維症および任意のその他の反応のエビデンスはなかった。解剖学的異常(分枝した、小さい橈側皮静脈)を有し、剖検で顕著な肉眼的所見を有していたイヌ(7番)は、PICCラインでの静脈の穿刺およびBMP−7の血管外投与によって注射部位で限局性の線維症を臨床的に有していた(肉眼で確認できる、小さい1cmの直径の小結節)
(c)ビーグル犬における静脈内毒性および局所耐性の評価
この研究の目的は、雌のビーグル犬の末梢静脈への1週間に2回、合計8回の注射の反復静脈内(IV)注射後の、BMP−7の毒性および局所耐性を評価することであった。血管腔に通されたカテーテルの先端までの、十分に挿入されたカテーテルニードルの遠位末端からの距離は、少なくとも2cmであった。合計12匹のイヌについて群あたり3匹のイヌに、ビヒクル対照(群1、5mM ラクトースおよび9% トレハロース)またはBMP−7(群2−0.1mg/kg BMP−7、群3−0.3mg/kg BMP−7および群4−1.0mg/kg BMP−7)を用いて1週間に2回、末梢静脈にIV注射した。
【0085】
投薬前(IV注射前)および終結(安楽死で、最後のIV注射後±1日)の血液学、臨床化学および凝固プロフィールを、ベースライン、対照動物および参照および病歴範囲と比較した相違について分析した。剖検所見、臓器重量および注射部位の顕微鏡所見(および肉眼的所見)を、処置しれた動物と対照動物を比較して分析した。顕微鏡所見を除く、評価したすべてのパラメータが、すべての時点ですべての動物について正常の範囲内であった。
【0086】
顕微鏡的には、PICCラインによる薬物投与に使用されたすべての血管は、1匹の動物を除き、所見がなかった。これらの所見は、カテーテルの先端による臨床的に観察された血管の貫通を有していた1匹の群4(1mg/kg BMP−7)の雌における骨の単一の病巣としてこの1匹のイヌにおいてのみ見られた。
【0087】
この研究の条件下で、末梢静脈への8回のIV注射(1週間に2回で4週間)を用いる成体の雌のビーグル犬の処置は、カテーテルによる血管の外傷および貫通を有していた一匹の動物においてのみ有害作用(局所骨形成)を伴っていた。
【0088】
したがって、これらの研究は、本発明の実施が、局所の望ましくない作用を伴わずに、BMP−7および同様の生物薬剤の末梢投与を達成することおよび本発明が、全身治療薬としてのBMP−7および同様の生物薬剤の臨床使用を可能にすることを示す。望ましくない局所注射部位作用の誘発は、静脈内に投与される薬物としてのBMP−7および同様の生物薬剤の使用を妨げる。
【0089】
(d)霊長類におけるBMP−7の末梢静脈送達
霊長類被験体は、本明細書において意図される好ましい静脈穿刺装置を使用してBMP−7の調製物を投与され;適した対照被験体は、タンパク質を含まない調製物を受ける。ニードルによって誘発された、および/またはカテーテルによって誘発された血管への外傷の部位を超えて、約2cm未満対2cm超導入されたカテーテルを使用して、最大10mg/mlのBMP−7を投与する。BMP−7を、1週間に最大3回、最大4週間投与する。少なくとも4例の被験体を調べる。ニードル誘発性またはカテーテル誘発性外傷を2cm超超えて送達部位を有する患者において、投与の部位での小結節形成または骨形成などの有害な副作用を有さないことが見出されるが、約2cm未満で投与を受ける患者は、投与部位でおよび投与部位の周囲で小結節形成または骨形成などの副作用を示すことが予測される。
【0090】
2.腎不全を有する成体の雌のネコのための治療としての骨形成タンパク質−7
腎不全の病歴を有する約14歳の2.5kgの雌の卵巣を切除したネコに、28ゲージPICCカテーテルによって、橈側皮静脈に100μg/kgのBMP−7を、1カ月に約1回、4カ月間、静脈内投与した。PICCラインは、送達のためのニードル導入部位を超えて静脈に少なくとも2および最大8cm進められた。
【0091】
血清化学分析のために各投薬の前に血液を採取した。尿比重および尿タンパク質/クレアチニン比のために、尿を最初の投薬の前および第2の投薬の後に採取した。食欲、姿勢、排尿容量および外皮の質ならびに注射部位での任意の観察結果をはじめとする臨床兆候が、飼い主によってモニタリングされた。クレアチニン(Cr)は、より正常なレベルに、13.6%低下した。血中尿素窒素(BUN)は、研究を通じて有意な変化を示さなかった。尿比重および尿タンパク質/クレアチニン比は、研究を通じて正常であった。
【0092】
BMP−7投与前の臨床兆候は、尿容量の増大、嗜眠、乱れた(脂ぎった)被毛、食欲不振および筋肉の消耗を含んでいた。BMP−7の4回の投薬後、尿容量は正常に減少し、被毛は著しく改善された。ネコは、より活動的で、双方向的であると記録された。この動物は、食欲を増大させ、筋肉の消耗を減少させ;そのネコは約1kg体重が増えた。注射部位(右および左橈側皮静脈)は所見を有しておらず、肉眼的に正常であった。この研究の結果に基づいて、BMP−7は、特に、本発明の方法に従って、末梢血管によって全身に投与された場合に、軽度の腎不全を有するネコにおいて臨床兆候を改善する能力を有し得る。
【0093】
3.ヒトにおける、例示的BMPの最小に侵襲性の末梢送達のための全身使用
(a)骨粗鬆症
骨粗鬆症の確定された臨床診断を有するヒト患者の集団に、BMP−7を本発明の方法に従って末梢血管によって投与する。特に、末梢に留置されたカテーテルを使用して、0.01〜3.0μg/kgのBMP−7のi.v.用量を、1週間に1回投与し、BMP−7を、投与の点から少なくとも2cmの点で、および血管へのカテーテルまたはニードル挿入によって引き起こされる任意の外傷を越えて送達する。このような治療において、処置された患者集団において統計的に有意な程度にその疾患を調節すること、および投与部位の周囲にBMP−7投与に伴う副作用がないことが予想される。
【0094】
(b)代謝性骨疾患
代謝性骨疾患の確定された臨床診断を有するヒト患者の集団に、BMP−7を本発明の方法に従って投与する。特に、末梢に留置されたカテーテルを使用して、0.01〜3.0μg/kgのBMP−7のi.v.用量を、1週間に1回投与し、BMP−7を、投与の点から少なくとも2cmの点で、および血管へのカテーテルまたはニードル挿入によって引き起こされる任意の外傷を越えて送達する。このような治療において、処置された患者集団において統計的に有意な程度にその疾患を調節すること、および投与部位の周囲にBMP−7投与に伴う副作用がないことが予想される。
【0095】
(c)肝臓の、肺の、心臓のおよび腎臓の徴候を含めた線維症
肝臓の、肺の、心臓のおよび腎臓の線維症の各々をはじめとする線維症の確定された臨床診断を有するヒト患者の集団に、BMP−7を本発明の方法に従って投与する。特に、末梢に留置されたカテーテルを使用して、0.01〜3.0μg/kgのBMP−7のi.v.用量を、1週間に1回投与し、BMP−7を、投与の点から少なくとも2cmの点で、および血管へのカテーテルまたはニードル挿入によって引き起こされる任意の外傷を越えて送達する。このような治療において、処置された患者集団各々において統計的に有意な程度にその疾患を調節すること、および投与部位の周囲にBMP−7投与に伴う副作用がないことが予想される。
【0096】
(d)神経および脊髄傷害
神経および脊髄傷害の各々の確定された臨床診断を有するヒト患者の集団に、BMP−7を本発明の方法に従って投与する。特に、末梢に留置されたカテーテルを使用して、0.01〜3.0μg/kgのBMP−7のi.v.用量を、1週間に1回投与し、BMP−7を、投与の点から少なくとも2cmの点で、および血管へのカテーテルまたはニードル挿入によって引き起こされる任意の外傷を越えて送達する。このような治療において、処置された患者集団各々において統計的に有意にその疾患を調節すること、および投与部位の周囲にBMP−7投与に伴う副作用がないことが予想される。
【0097】
(e)腫瘍転移
腫瘍転移の確定された臨床診断を有するヒト患者の集団に、BMP−7を本発明の方法に従って投与する。特に、末梢に留置されたカテーテルを使用して、0.01〜3.0μg/kgのBMP−7のi.v.用量を、1週間に1回投与し、BMP−7を、投与の点から少なくとも2cmの点で、および血管へのカテーテルまたはニードル挿入によって引き起こされる任意の外傷を越えて送達する。このような治療において、処置された患者集団において統計的に有意な程度にその疾患を調節すること、また投与部位の周囲にBMP−7投与に伴う副作用がないことが予想される。
【0098】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態で具体化され得る。したがって、本実施形態は、例示的なものであって、制限的なものではないとみなすべきであり、本発明の範囲は、前記説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入るすべての変化が、その中に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身投与することによって、患者における疾患を治療する方法であって、
血管アクセス構造物を介して投与部位で、前記患者に前記骨形成タンパク質を投与するステップを含み、ここで、前記投与部位が末梢であり、前記骨形成タンパク質が、前記投与部位から少なくとも1cmの末梢に位置する送達部位において前記患者に送達される方法。
【請求項2】
前記患者における前記末梢投与部位で血管アクセス構造物を埋め込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記末梢投与部位が、前記患者の手、脚、足、腕または頭部の静脈である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨形成タンパク質がBMP−7である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記末梢に位置する送達部位が、実質的に浮腫を含まず、実質的に乱されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記骨形成タンパク質が、前記投与部位を介して前記送達部位に、前記患者に複数回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記骨形成タンパク質が、3回の別個の投与で少なくとも3回投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記末梢に位置する送達部位が、前記投与部位から少なくとも2cm、少なくとも4cmまたは少なくとも5cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記末梢に位置する送達部位が、細静脈弁を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
傷害された組織または病変した組織を全身治療する方法であって、
末梢投与部位に、生物薬剤を含む組成物を提供するステップを含み、そこでは、前記生物薬剤が、前記傷害された組織または前記病変した組織を治療するのに有効な量で送達される、
方法。
【請求項11】
前記投与部位が、前記生物薬剤の送達部位から離れている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記送達部位が末梢部位である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記送達部位が、実質的に浮腫を含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記送達部位が、実質的に乱されていない、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
送達後に、前記送達部位の非血管組織が、前記送達部位付近の非血管組織が、または前記送達部位に隣接する非血管組織が、実質的に生物薬剤を含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記生物薬剤がBMP−7である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記傷害された組織または前記病変した組織が、非石灰化組織である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記傷害された組織または前記病変した組織が、臓器である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生物薬剤が、少なくとも約2時間の間、生物学的利用能がある、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記有効な量が、生物薬剤について約100〜約300マイクログラムである、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記送達部位が、前記投与部位から約1cm下流である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
傷害された組織または病変した組織の治療方法であって、
末梢投与部位に生物薬剤を含む組成物を投与するステップと、
末梢静脈内送達部位の内膜組織完全性が実質的に損なわれないように、前記送達部位に組成物を送達するステップとを含む方法であって、
そこでは、前記生物薬剤が、前記傷害された組織または前記病変した組織を治療するのに有効な量で存在する、
方法。
【請求項23】
前記投与部位および前記送達部位が同一である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記送達ステップが、損傷を与えない配置で遠位末端を有する静脈内装置を使用して達成される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記送達部位が、前記投与部位から約1cm下流である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身投与することによって、患者において疾患を治療する方法であって、
前記骨形成タンパク質を、前記患者中で治癒された血管アクセス構造物を介して投与部位で前記患者に投与するステップを含み、前記投与部位が、末梢であり、前記骨形成タンパク質が、前記投与部位から少なくとも1cmの末梢に位置する送達部位で前記患者に送達される方法。
【請求項27】
前記骨形成タンパク質がBMP−7である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記骨形成タンパク質が、前記投与部位で前記患者に複数回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記末梢投与部位が、前記患者の足、手、腕、脚または頭部の静脈である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
傷害または疾患を改善させるのに適した組成物であって、
傷害または疾患を改善させるのに有効な量の生物薬剤と、
前記薬剤を血管に投与するための静脈穿刺装置と
を含み、前記装置が、前記血管の外傷のない領域に前記薬剤を送達するよう適応させている組成物。
【請求項31】
前記生物薬剤が、タンパク質性である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記生物薬剤が、最小に可溶性のタンパク質である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記生物薬剤が、生理学的pHで実質的に不溶性である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記生物薬剤が、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバーである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記生物薬剤が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6 GDF−7、MP−52および前記のもののうち任意の1種の配列バリアントからなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記生物薬剤が、BMP−2、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7およびMP−52からなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記生物薬剤が、GDF−5、GDF−6およびGDF−7からなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記生物薬剤がBMP−7である、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
前記生物薬剤が、前記TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーのメンバーである、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記生物薬剤が、保存されたC末端システインリッチドメイン内で、前記BMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記生物薬剤が、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバーではないタンパク質である、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記生物薬剤が、代謝性骨疾患、変形性関節症、骨軟骨性疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、パジェット病、歯周炎および象牙質形成からなる群から選択される骨格組織傷害または疾患を改善させるのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項43】
前記生物薬剤が、変形性関節症、骨軟骨性疾患、軟骨疾患、関節リウマチ、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性症、加齢性軟骨変性症、関節軟骨傷害および疾患、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板のヘルニア形成および断裂、椎間板の変性性疾患、骨軟骨症、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の傷害および疾患からなる群から選択される非石灰化骨格組織傷害または疾患を改善させるのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項44】
前記生物薬剤が、外傷誘発性および炎症誘発性軟骨変性症、関節軟骨傷害、全層軟骨欠損、表層性軟骨欠損、椎間板のヘルニア形成および断裂、傷害(複数可)による椎間板の変性、ならびに靭帯、腱、滑液包、滑膜および半月板組織の傷害からなる群から選択される組織傷害を改善させるのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項45】
前記生物薬剤が、肝臓疾患、肝臓切除、肝切除術、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血または外傷、神経障害、運動ニューロン傷害、脊髄傷害、樹状細胞欠乏症および異常症、パーキンソン病、眼の疾患、眼の瘢痕、網膜瘢痕および消化管の潰瘍性疾患からなる群から選択される組織の傷害または疾患を改善させるのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項46】
前記生物薬剤が、慢性および急性腎臓病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、心臓線維症、腎臓線維症、肥満症、糖尿病、癌、眼の瘢痕、肝臓線維症、炎症性障害および神経系の障害からなる群から選択される組織の傷害または疾患を改善させるのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項47】
前記生物薬剤が、腫瘍細胞増殖を抑制または腫瘍退縮を促進するのに有効な量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項48】
傷害または疾患を改善させるのに適した組成物であって、
TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のメンバー、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質のBMPサブファミリーのメンバーおよび保存されたC末端システインリッチドメイン内でBMPサブファミリーのメンバーと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質からなる群から選択される生物薬剤(ここで前記生物薬剤は、傷害または疾患を改善させるのに有効な量で存在する)と、
前記薬剤を血管に投与するための静脈穿刺装置であって、カテーテル、ニードル、カテーテルニードル、カテーテルイントロデューサー、PICCラインおよび前記装置のうちのいずれか1種の構造的等価物からなる群から選択される装置(ここで、前記装置は、前記薬剤を、前記血管の外傷のない領域に送達するよう適応させている)と
を含む組成物。
【請求項49】
請求項10に記載の方法とともに使用するのに適した生物薬剤の製剤。
【請求項50】
請求項22に記載の方法とともに使用するのに適した生物薬剤の製剤。
【請求項51】
骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身投与することにおいて使用するためのキットであって、
骨形成タンパク質と、
前記患者の末梢に埋め込むための末梢血管アクセス構造物と
を含むキット。
【請求項52】
前記骨形成タンパク質を、末梢投与を介して前記患者に全身投与するための使用説明書をさらに含む、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記使用説明書が、ヒトにおける投与については、前記骨形成タンパク質の投与の点および送達の点が、1cm超離れていると規定する、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
前記骨形成タンパク質がBMP−7である、請求項51に記載のキット。
【請求項55】
前記骨形成タンパク質が、適した薬学的キャリアを含む組成物で提供される、請求項51に記載のキット。
【請求項56】
骨形成タンパク質を、それを必要とする患者に全身投与することにおいて使用するためのキットであって、
骨形成タンパク質と、
前記骨形成タンパク質を、末梢投与を介して前記患者に全身投与するための使用説明書と
を含むキット。
【請求項57】
前記患者の末梢に埋め込むための末梢血管アクセス構造物をさらに含む、請求項56に記載のキット。

【公表番号】特表2012−517482(P2012−517482A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550274(P2011−550274)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024106
【国際公開番号】WO2010/093925
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】