説明

障害区間判定装置

【課題】 光通信網で発生した通信障害の障害区間を適正に判定する。
【解決手段】 通信障害の発生を示す障害発生情報を光通信装置Tから受信する通信部14と、光回線の敷設経路と光通信装置Tの接続位置とを含む通信網情報と、通信部14で受信した障害発生情報の送信元である光通信装置Tとに基づいて、通信障害が生じた回線区間Lを判定する障害区間判定部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光通信網で通信障害が発生した場合に、その障害区間を判定する障害区間判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、OPGW(Optical Ground Wire)を利用した光通信網では、電力制御信号等の重要情報も伝送されるため、安定供給に対する要望が高い。そのため、光通信網の通信状況は、常時、監視センタ(中央通信所)で監視され、障害発生時に迅速な対応が可能な体制がとられている。
【0003】
ここで、光通信網において障害が発生すると、その光通信網を構成している光回線の終端に接続された光通信装置から、障害発生情報(警報アラーム)が監視センタへ送信される。すなわち、光通信網中のある地点で通信障害が発生すると、その地点の光回線に接続されているすべての光通信装置から多量の障害発生情報が一斉に送信される。このため、監視センタでは運転員が、障害回線(障害要素:何が停止してどのような影響が出ているか、どこに連絡しなければいけないか)の特定に追われ、障害原因、障害区間の究明にはすぐに着手できない状況にある。そして、運転員は受信した障害発生情報と、光回線の敷設情報、系統情報などに基づいて、正常な光回線(生きている系統)と障害が発生した光回線(切れた系統)を相対比較しながら、さらに、障害区間を判定しなくてはならなかった。しかしながら、多数の光通信装置に障害が発生し、一度に多数の障害発生情報を受信した場合、障害区間の判定に時間を要し、さらには、障害復旧に時間を要してしまうおそれがある。また、人による判定であるため、障害区間を誤判定するおそれもあった。
【0004】
一方、障害の原因を想定するのに要する時間を短縮するために、発生した障害が光通信装置の故障によるものか、回線の障害によるものかを短時間でかつ簡単に切り分けることが可能な光線路故障検出装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−103526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この装置では、障害が光回線の故障であった場合であっても、その通信障害が生じた回線区間を判定することまではできず、通信障害が生じた回線区間は運転員が判定しなくてはならなかった。つまり、この装置を用いても、発生した障害が光通信装置の故障によるものか、回線の障害によるものかを切り分けることができるに過ぎず、障害区間の判定に多大な労力と時間とを要する。また、障害区間を誤判定する可能性が残ったままである。
【0007】
そこでこの発明は、前記の課題を解決し、光通信網で障害が発生した場合に、通信障害が生じた回線区間を適正に判定することが可能な障害区間判定装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の光回線を束ねた光回線群から少なくともひとつの光回線が分岐する分岐点を区間端とし、隣接する前記区間端間および前記区間端と隣接する前記光回線の終端との間を回線区間とし、前記光回線の終端に光通信装置が接続された光通信網において、前記光回線に通信障害が生じた場合に、通信障害が生じた回線区間を判定する光通信網の障害区間判定装置であって、通信障害の発生を示す障害発生情報を前記光通信装置から受信する障害情報受信手段と、前記光回線の敷設経路と前記光通信装置の接続位置とを含む通信網情報と、前記障害情報受信手段で受信した前記障害発生情報の送信元である光通信装置とに基づいて、通信障害が生じた回線区間を判定する区間判定手段と、を備えことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、通信障害が発生すると、光通信装置から送信された障害発生情報が障害情報受信手段で受信され、障害発生情報を送信した光通信装置と通信網情報とに基づいて、区間判定手段によって通信障害が生じた回線区間が判定される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の障害区間判定装置において、前記区間判定手段は、前記通信網情報に基づいて特定の回線区間に通信障害が生じた場合に通信障害が発生する光通信装置を示す障害発生テーブルを参照することで、通信障害が生じた回線区間を判定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の障害区間判定装置において、前記障害情報受信手段が、前記光回線の両終端に接続されている前記光通信装置からそれぞれ前記障害発生情報を受信した場合に、前記光回線の通信障害が生じたと判定する障害判定手段を備え、前記障害判定手段によって前記光回線の通信障害が生じたと判定された場合に、前記区間判定手段によって通信障害が生じた回線区間を判定する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、通信障害が発生すると、光通信装置から送信された障害発生情報が障害情報受信手段で受信され、障害判定手段によって光回線の通信障害が生じたと判定されると、障害発生情報を送信した光通信装置と通信網情報とに基づいて、区間判定手段によって通信障害が生じた回線区間が判定される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、通信網情報と光通信装置とに基づいて、通信障害が生じた回線区間が適正に判定される。すなわち、光通信網に接続された特定の光通信装置のみから障害発生情報を受信した場合に、障害区間となり得る回線区間を光回線の敷設経路や光通信装置の接続位置に基づいて割り出し、判定するため、障害が発生した区間を適正に判定することが可能となる。このため、障害発生時に、運転員は障害区間の判定を行なう必要がなく、また、運転員による誤判定が生じることもないため、適正な障害区間に対して迅速に復旧措置などを行うことが可能となる。さらに、従来の通信回線管理システム(NMS)での処理と並行処理ができるので、障害回線の特定などの迅速化を図ることができる。
【0014】
また、障害発生情報を受信すると障害区間判定装置が動作するので、障害から瞬時復帰した場合であっても、障害区間が判定される。このため、全障害発生情報に対して障害区間を判定し、その判定結果を情報として蓄積することで、回線区間ごとに障害の発生頻度を正確に算出するなど、障害発生情報の分析に役立てることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、障害区間の判定に障害発生テーブルを用いるので、判定に要する時間を短縮することが可能となる。また、光通信網が変更された場合であっても、障害発生テーブルを追加または変更するだけで、変更された光通信網について障害区間を判定することができる。この発明は、光回線(OPGWなど)の障害区間判定だけではなく、IPネットワークの障害区間判定にも応用することが可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、障害の原因を判定し、光回線の障害の場合にのみ、障害区間を判定するので、より適正に障害区間を判定することが可能となる。また、障害判定手段で光回線の障害ではないと判定された場合には、通信障害が光通信装置などのその他の異常によるものであると推定され、光通信装置の修理または交換などの措置を迅速かつ適正に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る障害区間判定装置の概略構成ブロック図である。
【図2】図1の障害区間判定装置の通信網情報データベースに記憶されている通信網情報の第1の例を示す図である。
【図3】図1の障害区間判定装置の障害発生データベースに記憶され、図2の光通信網に対する障害発生テーブルを示す図である。
【図4】図1の障害区間判定装置の通信網情報データベースに記憶されている通信網情報の第2の例を示す図である。
【図5】図1の障害区間判定装置の障害発生データベースに記憶され、図4の光通信網に対する障害発生テーブルを示す図である。
【図6】図1の障害区間判定装置の通信網情報データベースに記憶されている通信網情報の第3の例を示す図である。
【図7】図1の障害区間判定装置の障害発生データベースに記憶され、図6の光通信網に対する障害発生テーブルを示す図である。
【図8】図1の障害区間判定装置の障害発生情報データベースのデータ構成図である。
【図9】図1の障害区間判定装置の障害区間判定部による処理を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおける一部心線断の場合の判定タスクを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る障害区間判定装置1の概略構成ブロック図である。この障害区間判定装置1は、光通信装置(OPT:Optical Terminal Equipment)に通信障害が生じた場合に、通信障害が生じた回線区間を判定などする装置であり、主として、障害発生情報データベース11、通信網情報データベース(通信網情報テーブル)12、障害発生データベース(障害発生テーブル)13、通信部(障害情報受信手段)14、障害区間判定部(障害判定手段、区間判定手段)15、および、これらを管理かつ制御する中央制御部16とを備えている。また、この障害区間判定装置1は、監視センタ(中央通信所)に設置され、光通信装置Tと有線または無線で通信可能に接続されている。
【0020】
障害発生情報データベース11には、図8に示すように、光通信装置ID111、地域112、情報113などが記憶されている。そして、後述するようにして光通信装置Tから障害発生情報を受信する度に、光通信装置ID111に、障害発生情報を送信した(アラームを発生した)光通信装置Tの識別番号が記憶される。また、地域112には、光通信装置Tが配設されている光通信網の地域(系統)を示す、発電所や変電所などが記憶され、情報113には、発生した障害に関する情報、つまり、通信障害の発生日時、復旧日時などが記憶される。
【0021】
通信網情報データベース12は、例えば、図2、図4および図6に示すような地域Aごとの光通信網の通信網情報テーブルが記憶されている。すなわち、地域Aごとの光通信網の敷設経路や光通信装置Tの接続位置などの通信網情報が記憶されている。ここで、この実施の形態では、光通信網がOPGW(光回線群)で構成され、OPGWには複数の光回線が束ねられているものとする。また、各OPGWから少なくともひとつの光回線が分岐する分岐点を区間端とし、隣接する区間端と区間端および区間端と隣接する光回線の終端との間を回線区間とする。例えば、図2に示す光通信網では、回線区間がL11〜L17までに分けられるとする。また、各光回線の終端に光通信装置Tが接続され、ひとつの光回線の両終端に通信相手となる一対の光通信装置Ta、Tbが接続されている。ここで、図中「T」と「a」の間および「T」と「b」の間に示す数字は、光回線を識別する数字である。
【0022】
ここで、具体的に、例えば地域A1の光通信網について図2を用いて説明する。地域A1の光通信網には5つの光回線が敷設され、その光回線は7つの区間L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17に分けられる。また、各光回線にはそれぞれ一対の対向する光通信装置T11aとT11b、T12aとT12b、T13aとT13b、T14aとT14b、T15aとT15bが光回線の各終端に接続されている。光通信装置T11aとT11bが終端に接続されている光回線は、区間L11、L12、L13、L14を経由している。このように、各光回線の両終端には一対の光通信装置Ta、Tbが接続されているため、光回線に通信障害が発生した場合には、両終端に接続された光通信装置Ta、Tbからそれぞれ障害発生情報が送信される。なお、この障害発生データベース13への書き込み、更新は、定数データベースであるので、光通信網の敷設時や変更時などに行われる。
【0023】
障害発生データベース13は、例えば図3、図5および図7に示すように、通信網情報に基づいて、特定の回線区間に通信障害が生じた場合に通信障害が発生する光通信装置Tを示す障害発生テーブルを、光通信網の地域Aごとに記憶したデータベースである。すなわち、ある回線区間Lに通信障害が生じた場合に、通信障害が発生して障害発生情報を送信する光通信装置Tには「×」、通信障害が発生しない光通信装置Tには「○」を記した障害発生テーブルが、記憶されている。
【0024】
具体的には、例えば、上記例の地域A1について図3を用いて説明すると、区間L11でOPGWが切断などして通信障害が発生した場合、すべての光通信装置T11a、T11b、T12a、T12b、T13a、T13b、T14a、T14b、T15aおよびT15bに通信障害が発生するため、「×」が記憶されている。さらに、区間L13で同様な通信障害が発生した場合、光通信装置T11a、T11b、T12a、T12b、T15aおよびT15bに通信障害が発生するため、「×」が記憶されている。また、その他の光通信装置T13a、T13b、T14aおよびT14bには通信障害が発生しないので、「○」が記憶されている。さらに、区間L17で通信障害が発生した場合、光通信装置T15aおよびT15bに通信障害が発生するため、「×」が記憶され、その他の光通信装置T11a、T11b、T12a、T12b、T13a、T13b、T14aおよびT14bは障害発生情報には通信障害が発生しないので、「○」が記憶されている。このような障害発生データベース13への書き込み、更新は、定数データベースであるので、光通信網の敷設時や変更時などに行われる。
【0025】
通信部14は、通信網を介して各光通信装置Tとデータの送受信を行うインターフェイスであり、主として、通信障害の発生を示す障害発生情報を各光通信装置Tから受信するものである。ここで、障害発生情報には、光通信装置Tの識別番号、光通信装置Tが配設されている光通信網の地域などが含まれる。
【0026】
障害区間判定部15は、通信網情報と通信部14で受信した障害発生情報の送信元である光通信装置Tとに基づいて、通信障害が生じた回線区間Lなどを判定するプログラム・タスクであり、光通信装置Tから障害発生情報を受信するごとに中央制御部16によって起動される。
【0027】
まず、図9に示すように、起動パラメータから受信した障害発生情報から地域Aを取得し、当該地域Aからの障害発生情報が初めてであるか否かを判断する(ステップS11)。この判断は、当該地域Aのタイマのカウンタがスタートされているか否かで行う。そして、当該地域Aの障害発生が初めである場合(ステップS11で「YES」の場合)には、当該地域Aのタイマを作成しカウンタをスタートさせ(ステップS12)、ステップS13へ進む。一方、当該地域Aの障害発生が初めではない場合(ステップS11で「NO」の場合)、当該地域Aのタイマが待ち時間を超過するまで待機する(ステップS13)。ここで、タイマの待ち時間は、障害が生じたすべての光通信装置Tから障害発生情報を受信するのに十分な時間に設定し、例えば、数秒から数十秒程度に設定する。また、図示されていないが、ステップS13の前に、受信した障害発生情報に基づいて、障害発生情報データベース11に各種情報を(ID111、地域112、情報113など)記憶する。
【0028】
次に、タイマの待ち時間が経過した場合(ステップS13で「YES」の場合)、当該地域Aにおいて障害発生情報を送信したすべての光通信装置Tの識別番号を、障害発生情報データベース11(ID111)から取得する(ステップS14)。そして、通信障害が光回線の通信障害によるものであるか否かを判断する(ステップS15)。この判断(ステップS15)は、光回線の両終端に接続されている光通信装置Tから、それぞれ障害発生情報を受信した場合に、光回線の通信障害が生じたと判定する。すなわち、ステップS14で取得したすべての光通信装置Tが、対向する光通信装置Tと対になっているか否かで判断し、対向する光通信装置TaまたはTbが存在せず、一方の光通信装置TbまたはTaのみから障害発生情報が送信されている場合には、光回線の通信障害ではないと判断する。
【0029】
この結果、光回線の通信障害である場合(ステップS15で「YES」の場合)には、障害発生情報を送信した光通信装置Tの識別番号に基づいて、障害発生データベース13中の当該地域Aの障害発生テーブルを参照する(ステップS16)。すなわち、障害発生情報を送信した光通信装置Tの組み合わせから、障害発生テーブル中の障害区間を検索、取得する。その結果、ひとつの障害区間が取得された場合は、障害区間が判定・特定されたことになる。このようにして障害区間を判定した場合、(ステップS17で「YES」の場合)には、判定した障害区間をディスプレイ(図示せず)に表示するとともに、結果ファイル(図示せず)に出力し(ステップS18)、当該地域Aのタイマをリセットする(ステップS20)。
【0030】
一方、障害区間が判定されなかった場合(ステップS17で「NO」の場合)には、判定不可の旨をディスプレイに表示して、障害区間判定部15による処理を終了する。また、光回線の通信障害ではない場合(ステップS15で「NO」の場合)には、光通信装置Tの異常・故障による通信障害と推定されるため、その旨をディスプレイに表示して結果ファイルに出力し(ステップS19)、当該地域Aのタイマをリセットする(ステップS20)ものである。
【0031】
次に、このような構成の障害区間判定装置1の作用・動作について説明する。ここで、上記例の地域A1の回線区間L12で、OPGWの全断(すべての光回線が切断)による通信障害が生じた場合を例にして、説明する。
【0032】
回線区間L12でOPGWの全断が発生すると、この区間L12(OPGW)の全光回線に接続されているすべての光通信装置T11a、T11b、T12a、T12b、T14a、T14b、T15aおよびT15bから、それぞれ障害発生情報が送信され、各障害発生情報が通信部14によって順次受信される。この受信により、障害区間判定部15が中央制御部16によって起動され、上記のようにしてタイマのカウントなどが行われる。続いて、最初に障害発生情報を受信してから一定の時間が経過すると、上記のようにして、光回線の通信障害であるか否かが判断される。この場合、各光回線において対向する両光通信装置Ta、Tbから障害発生情報を受信するため、光回線の通信障害であると判定される。
【0033】
続いて、上記のようにして障害発生データベース13の障害発生テーブルが参照され、障害区間が区間L12であると判定される。そして、その結果がディスプレイに表示され、結果ファイルに出力される。これにより、障害区間である回線区間L12に対して、復旧措置などが行えるものである。
【0034】
また、例えば、光通信装置T15aのみから障害発生情報を受信した場合、上記のようにして、障害区間判定部15によって光回線の通信障害ではないと判定され、光通信装置Tの異常・故障による通信障害である旨がディスプレイに表示され、結果ファイルに出力される。例えば、「光通信装置T15aの異常・故障による通信障害が発生しました。」などというメッセージが、ディスプレイに表示される。これにより、異常・故障と推定される光通信装置T15aに対して、修理、交換などが行えるものである。
【0035】
図4、5に示す地域A2や、図6、7に示す地域A3通信障害が生じた場合も、同様にして、光回線の通信障害によるものか否かの判定および、光回線の通信障害による場合の障害区間の判定などが行われる。
【0036】
以上のように、この障害区間判定装置1によれば、通信網情報つまり障害発生テーブルと、通信障害が生じた光通信装置Tとに基づいて、通信障害が生じた回線区間Lを迅速かつ適正に判定することができる。つまり、人によって障害区間を判定するものではないため、障害区間の誤判定をなくし、かつ、判定に要する時間を短縮することが可能となる。この結果、適正な障害区間に対して迅速な対応・措置をとることが可能となり、さらには、復旧の迅速化が可能となる。
【0037】
しかも、障害発生テーブルを参照することで障害区間を判定するため、判定に要する時間をより短縮することが可能となる。また、光通信網が変更された場合であっても、障害発生データベース13の障害発生テーブルを追加または変更するだけで、変更された光通信網に対して、障害区間を適正に判定することができる。
【0038】
さらに、光回線の通信障害と判定した場合にのみ、障害区間を判定するので、より適正に障害区間を判定することが可能となる。一方、光回線の通信障害ではないと判定された場合には、光通信装置Tの異常・故障による通信障害である旨がディスプレイに表示されるため、光通信装置Tの修理、交換などを迅速かつ適正に行うことが可能となる。
【0039】
また、光通信装置Tで通信障害が発生すると障害区間判定装置1が作動し、すべての通信障害に対して障害要因(光回線によるものか等)の判定や障害区間の判定が行われる。このため、この判定結果や障害発生状況(障害発生情報データベース11のデータ)などを蓄積して、回線区間Lごとの障害発生頻度などを算出、分析することで、通信障害の防止策の検討などに役立てることが可能となる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態1では、OPGWが全断した場合について説明したが、この実施の形態では、OPGWの一部の光回線に通信障害(切断・分断等)が生じた場合について説明する。ここで、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することで、その説明を省略する。OPGWの一部の光回線に通信障害が生じた場合、実施の形態1の障害区間判定部15では、障害区間が判定されない(ステップS17で「NO」となる)。そこで、ステップS21の一部心線断の場合の判定タスクを実行し、一部心線断の障害区間を判定する。
【0041】
まず、図10に示すように、起動パラメータから受信した当該地域Aと、ステップS14で参照・取得した当該地域Aの障害発生テーブルのデータと、当該地域Aの通信網情報とを参照し、障害発生情報を送信した(障害発生情報データベースにデータがある)光通信装置T(ケース1)と、障害発生情報を送信していない(障害発生情報データベースにデータがない)光通信装置T(ケース2)を分類する(ステップS211)。そして、ケース1の光通信装置Tが2対向以上である場合(ステップS212で「YES」の場合)には、ステップS213に進む。そして、ケース1、2の光通信装置Tが同一の回線区間Lを経由しているか否かを通信網情報テーブル12を参照して判定し、同一の回線区間Lを経由している場合(ステップS213で「YES」の場合)は、一部断心である旨をディスプレイに表示する(ステップS214)。つまり、同一の回線区間Lを経由している(同一の系統の)光通信装置Tで、障害発生情報を送信した光通信装置Tと、送信していない光通信装置Tとがあるので、その回線区間LでOPGWの一部の光回線に通信障害が生じたと判断するためである。
【0042】
次に、ケース1の光通信装置Tが共通して経由する回線区間Lを、ケース1の光通信装置Tの識別番号に基づいて、障害発生データベース13中の当該地域Aの障害発生テーブルを参照して取得する(ステップS215)。すなわち、障害発生情報を送信した光通信装置Tの組み合わせから、障害発生テーブル中の障害区間を検索、取得する。その結果、取得された障害区間が一部心線断の区間となる。そして、ステップS215で取得した障害区間をディスプレイに表示し、結果ファイルに出力する(ステップS216)。
【0043】
一方、一部心線断の場合の判定タスクでの処理の対象外となる、ケース1の光通信装置Tが1対向の場合(ステップS212で「NO」の場合)、ケース1、2の光通信装置Tが同一の回線区間を経由していない場合(ステップS213で「NO」の場合)には、判定不能である旨をディスプレイに表示して(ステップS217)、本処理を終了するものである(ステップS218)。
【0044】
次に、このような構成の一部心線断の場合の障害区間判定装置1の作用、動作について説明する。ここで、上記例の地域A1の回線区間L11、L12、L13のいずれかでOPGWの一部断心(一部の光回線が切断)による通信障害が発生すると、各区間の光回線に接続されている光通信装置Tの一部から、それぞれ障害発生情報が送信される。ここでは、光通信装置T11a、T11b、T15aおよびT15bから、それぞれ障害発生情報が送信された場合を例にして、説明する。
【0045】
回線区間L11、L12、L13のいずれかでOPGWの一部断心が発生した場合は、光通信装置T11a、T11b、T15aおよびT15bから、それぞれ障害発生情報が送信され、各障害発生情報が通信部14によって受信される。この受信により、障害区間判定部15が中央制御部16によって起動され、上記のようにしてタイマのカウントなどが行われる。続いて、最初に障害発生情報を受信してから一定の時間が経過すると、上記のようにして、光回線の通信障害であるか否かが判断される。この場合、各光回線において対向する両光通信装置Ta、Tbから障害発生情報を受信するため、光回線の通信障害であると判定される。そして、上記のようにして障害発生データベース13の障害発生テーブルが参照されるが、障害区間が特定できないため、一部心線断の場合の判定タスク(S21)が実行される。
【0046】
続いて、障害発生情報データベース11の障害発生情報テーブルと、通信網情報データベース12の通信網情報テーブルとを参照し、当該地域A1のケース1に該当する光通信装置T11a、T11b、T15aおよびT15bと、ケース2に該当する光通信装置T12a、T12b、T13a、T13b、T14aおよびT14bとが分類される。そして、障害発生データベース13の障害発生テーブルを参照し、ケース1の光通信装置Tに共通する回線区間L11、L12、L13が抽出される。そして、その結果がディスプレイに表示され、結果ファイルに出力される。これにより、一部断心の障害区間である回線区間がL11、L12、L13に絞り込むことができたので、復旧措置などが行えるものである。
【0047】
このように、この実施の形態によれば、OPGWの一部の光回線に通信障害が生じた場合であっても、適正に障害区間を判定することが可能なものである。
【0048】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、障害発生テーブルを参照することで障害区間を判定しているが、通信網情報と通信障害の光通信装置Tとに基づいて、直接的、論理的に(所定のアルゴリズムに沿って)障害区間を判定するようにしてもよい。例えば、図2に示すような通信網情報で発生した通信障害の障害区間を判定する場合には、次のようなアルゴリズムで判定するようにしてもよい。
【0049】
(1)すべての光通信装置Tに通信障害が発生した場合(すべての光通信装置Tから障害発生情報が送信されている場合)は、障害区間は最初の分岐点から前の幹線OPGWである。(2)幹線OPGWに接続されているすべての光通信装置Tに通信障害が発生し、かつ、(2−1)分岐OPGWに接続されている光通信装置Tが正常である場合は、障害区間はその分岐OPGWの分岐点以降の幹線OPGWである。(2−2)分岐OPGWに接続されている光通信装置Tに通信障害が発生した場合は、障害区間はその分岐OPGWの分岐点から前の幹線OPGWである。(3)幹線OPGWに接続されているすべての光通信装置Tが正常で、かつ、分岐OPGWに接続されている光通信装置Tに通信障害が発生した場合は、障害区間はその分岐OPGWの分岐点以降の分岐OPGWである。このようにして、順次障害区間を判定するようにしてもよい。
【0050】
また、障害区間判定部15が障害判定手段と区間判定手段とを兼ねているが、障害判定手段と区間判定部とを別に設けてもよい。さらに、光回線を監視する既存の通信回線監視制御装置(NMS)に、上記のような障害区間判定部15などを備えることで、障害区間判定装置1を構築するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 障害区間判定装置
11 障害発生情報データベース
12 通信網情報データベース
13 障害発生データベース
14 通信部(障害情報受信手段)
15 障害区間判定部(区間判定手段、障害判定手段)
16 中央制御部
T 光通信装置
L 回線区間
A 地域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光回線を束ねた光回線群から少なくともひとつの光回線が分岐する分岐点を区間端とし、隣接する前記区間端間および前記区間端と隣接する前記光回線の終端との間を回線区間とし、
前記光回線の終端に光通信装置が接続された光通信網において、前記光回線に通信障害が生じた場合に、通信障害が生じた回線区間を判定する光通信網の障害区間判定装置であって、
通信障害の発生を示す障害発生情報を前記光通信装置から受信する障害情報受信手段と、
前記光回線の敷設経路と前記光通信装置の接続位置とを含む通信網情報と、前記障害情報受信手段で受信した前記障害発生情報の送信元である光通信装置とに基づいて、通信障害が生じた回線区間を判定する区間判定手段と、
を備えることを特徴とする光通信網の障害区間判定装置。
【請求項2】
前記区間判定手段は、前記通信網情報に基づいて特定の回線区間に通信障害が生じた場合に通信障害が発生する光通信装置を示す障害発生テーブルを参照することで、通信障害が生じた回線区間を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信網の障害区間判定装置。
【請求項3】
前記障害情報受信手段が、前記光回線の両終端に接続されている前記光通信装置からそれぞれ前記障害発生情報を受信した場合に、前記光回線の通信障害が生じたと判定する障害判定手段を備え、
前記障害判定手段によって前記光回線の通信障害が生じたと判定された場合に、前記区間判定手段によって通信障害が生じた回線区間を判定する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の光通信網の障害区間判定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−160086(P2011−160086A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18624(P2010−18624)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】