説明

障害物検出および警告のためのシステムおよび方法

【課題】すべての潜在的に危険な障害物を適切に検出できる障害物検出システムを提供する。
【解決手段】障害物検出システム100は、無線周波数(RF)信号を放射するように動作可能な送信アンテナ112と、そのアンテナからのRF信号の送信を制御するように動作可能な送信器102とを備える。この障害物検出システムはまた、RF信号の反射を受信するように動作可能な受信アンテナ110と、障害物、およびその障害物の1つまたは複数の物理的属性を識別するために、受信された反射のレーダ断面積RCSの複数の特性を解析するように動作可能な処理回路106とを備える。送信器は、前記送信アンテナを介した周波数変調連続波(FMCW)無線周波数信号の送信を制御するように動作可能である。送信アンテナは、非ポラリメトリックRF信号を送信するように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれている、本出願と同日に出願された以下の同時係属の米国特許出願に関連する。
【0002】
米国特許出願第12/245,334号(「RADAR SYSTEM FOR OBSTACLE AVOIDANCE(障害物回避のためのレーダシステム)」という名称の整理番号H0019377−5615)、これを本明細書では‘377出願と称する。
【0003】
米国特許出願第12/245,593号(「MULTI−SECTOR RADAR SYSTEM(マルチセクタ・レーダシステム)」という名称の整理番号H0019378−5615)、これを本明細書では‘378出願と称する。
【背景技術】
【0004】
自動車または航空機などの移動ビークルは、通常、障害物を回避するのを補助するためのシステムを用いる。たとえば航空機は、通常、航空機に脅威を与える障害物を検出するためにレーダを用いる。しかし従来のレーダシステムは、すべての潜在的に危険な障害物を適切に検出しない。たとえば、従来のレーダシステムは、ヘリコプタに重大な脅威を与えるケーブルを適切に検出しない。さらに、塵雲などの気象条件は、従来のレーダシステムがケーブルなどの障害物を検出するのに、より大きな困難さをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第12/245,334号
【特許文献2】米国特許出願第12/245,593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の理由により、また本出願を読み、考察することによって当業者には明らかとなるであろう他の理由により、当技術分野では改良された障害物検出システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、障害物検出システムが提供される。この障害物検出システムは、無線周波数(RF)信号を放射するように動作可能な送信アンテナと、そのアンテナからのRF信号の送信を制御するように動作可能な送信器とを備える。この障害物検出システムはまた、RF信号の反射を受信するように動作可能な受信アンテナと、障害物、およびその障害物の1つまたは複数の物理的属性を識別するために、受信された反射のレーダ断面積(RCS)の複数の特性を解析するように動作可能な処理回路とを備える。
【0008】
図面は本発明の例示的実施形態を示すのみであり、したがって範囲を限定するものでははなく、添付の図面を用いて、さらに特定し、かつ詳細に例示的実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】障害物検出システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】例示の戻り信号を示すグラフである。
【図3】ケーブルの例示の属性を示す図である。
【図4】障害物検出システムの一実施形態によって用いられる例示の周波数帯域を示すグラフである。
【図5】例示の障害物検出システムの視野を示す図である。
【図6】障害物検出システムの別の実施形態を示すブロック図である。
【図7】障害物を検出する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
慣例に従って、説明される様々な特徴は、原寸に比例して描かれてなく、本発明に関わる特定の特徴を強調するように描かれている。様々な図面において同じ参照番号および名称は、同じ要素を示す。
【0011】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部となる添付の図面が参照され、図面には説明のために、本発明を実施することができる特定の例示的実施形態が示される。これらの実施形態は当業者が本発明を実施できるようにするのに十分に詳細に説明され、他の実施形態を使用し得ること、ならびに本発明の範囲から逸脱せずに論理的、機械的、および電気的変更を行い得ることを理解されたい。さらに、図面または明細書に示された方法は、個々のステップを行うことができる順序を限定するものと理解されるべきではない。したがって以下の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられるべきではない。
【0012】
図1は、障害物検出システム100の一実施形態のブロック図である。システム100は、送信器102、送信アンテナ112、受信器104、受信アンテナ110、および処理回路106を含む。送信アンテナ112および受信アンテナ110は、システム100において回転可能な構成にて実装することができる。送信アンテナ112は、処理回路106および送信器102によって指示されるのに従って、無線周波数(RF)信号を送信する。この実施形態では、送信アンテナ112、送信器102、受信器104、および受信アンテナ110は、非ポラリメトリック・レーダを構成する。すなわち送信器102から送信され、受信アンテナ110にて受信されるRF信号は、単一の偏波を有する。しかし他の実施形態では、ポラリメトリック・レーダシステムを用い得ることを理解されたい。
【0013】
1つの例示的実施形態では、送信アンテナ112は、周波数変調連続波(FMCW)RF信号を送信する。FMCW RF信号は、処理回路106が検出された障害物までの距離を計算することを可能にする。いくつかのこのような実施形態では、RF信号は周波数帯域を有し、送信器102と受信器104は、RF周波数帯域内の周波数にわたって線形的に掃引する。送信されるRF信号の線形掃引は、受信される反射信号の処理と同期する。
【0014】
システム100は、システム100が位置する移動ビークルの進路の近くの障害物を検出する。たとえば一実施形態ではシステム100は、ヘリコプタなどの航空ビークルの近くのケーブルを検出することができる。しかし他の実施形態では、自動車または水上の水上艦船などの他のタイプのビークルを用い得ることを理解されたい。さらに本明細書では、「障害物」という用語は、照明柱、ケーブル、桟橋など、ビークルに潜在的な危険をもたらす静止物体を指す。
【0015】
ケーブルなどの障害物は、送信されたRF信号を反射することになる。受信アンテナ110は、RF信号の反射を受信し、解析のために、受信器104を通じて反射された信号を処理回路106に供給する。処理回路106は、ケーブルなどの障害物を検出するために、受信された反射信号のレーダ断面積(RCS)の特性を解析する。RCSは、送信アンテナ112および受信アンテナ110が回転するのに従って変化する。反射信号のRCSと入射角の関係の例示のグラフは、図2に示される。具体的には図2は、特定の期間においてズームインされており、戻されたすべてのデータのサブセットを示す。さらに、図2のグラフは、FMCW RF信号の反射からの例示のデータを示す。図2のグラフは例示のための示されるものであり、限定するためのものではなく、他のケーブルまたは障害物はこれとは異なるようにRF信号を反射することができ、したがってRCS対入射角の異なるグラフを生じることを理解されたい。
【0016】
本明細書では、反射信号のRCSの「特性」という用語は、反射信号(本明細書では戻り信号とも呼ばれる)の電気的性質または特質を指す。したがって、RCSの1つまたは複数の特性の解析は、反射信号の単なる検出より多くのものを含む。処理回路106によって解析される例示の特性は、非限定的に、図2に示されるようにピーク振幅204、ピーク分離間隔202、ピーク幅208、およびピークの周期性206を含む。いくつかの実施形態では、処理回路106は、1つまたは複数の特性を、種々の障害物の実証的研究を通して得られた特性のデータベースと比較する。次いで処理回路106は、RCSの1つまたは複数の特性がデータベース内の特性とほぼ一致する場合は、障害物を識別する。
【0017】
他の実施形態では、処理回路106は、データベースと比較せずに、1つまたは複数の特性の値を解析して障害物を識別または検出する。たとえば、最小および/または最大ピーク分離間隔などの閾値を設定することができる。(1つまたは複数の)閾値に対するピーク分離間隔の値は、障害物を識別するのに用いられる。
【0018】
さらに一実施形態では、処理回路106は、反射信号のRCSの1つまたは複数の特性を解析して、障害物の検出に加えて障害物の属性を決定する。本明細書では、障害物の「属性」という用語は、障害物の物理的性質または特徴を指す。たとえば図3は、処理回路106によって決定することができる、ケーブルの例示の物理的属性を示す。図3に示される例示の属性は、個々の素線の素線直径(d)、ケーブル全体のケーブル直径(D)、ケーブルの表面の間隔(L)、および素線の回転の間隔(P)を含む。しかし他の実施形態において、および他の障害物のタイプに対しては、他の属性が処理回路106によって決定され得ることを理解されたい。
【0019】
障害物が検出されると、処理回路106は、ユーザに検出された障害物の指示をもたらすために、出力装置108(図1)に信号を出力する。出力装置108は、たとえば音声装置または視覚表示装置として実装することができる。さらに、いくつかの実施形態では、出力装置108は、音声および視覚的警告に加えて、またはそれらの代わりに、ステアリングホイールの振動などの他の知覚的警告をもたらすように構成される。さらに、いくつかの実施形態では、出力装置108に供給され、それから出力される情報は、検出された障害物の1つまたは複数の属性、および/または計算された障害物までの距離を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、RF信号は約94GHzの周波数にて送信される。しかし他の実施形態では、約35GHzなど、他の周波数が用いられることを理解されたい。いくつかのこのような例示的実施形態では、図4に示されるようにFMCW RF信号は、約94GHzを中心とし約800MHzの幅をもつ周波数帯域402を有する。したがって送信器および受信器は、93.6MHzと94.4MHzの間の周波数帯域を線形的に掃引する。
【0021】
さらに、図5に示されるように、送信アンテナ112はビーム幅502を有する。図5の実施例では、ビーム幅502は±1度程度である。システム100は、RF信号ビーム幅502より大きな領域を走査するために、方位角面(すなわち、ビークルの進行方向に平行な平面)に沿って送信アンテナ112および受信アンテナ110を回転させる。具体的にはシステム100は、中心線504から±90度を走査することができる。しかし他の実施形態では、システム100は他の領域の大きさを走査し得ることを理解されたい。たとえば他の実施形態では、システム100は±180度を走査することができる。システム100が、ある領域を走査するのに従って、静止障害物に接触する送信されたRF信号の入射角は変化し、図2に示されるように受信アンテナ110にて受信される反射信号のパワー(すなわちRCS)に影響を与える。
【0022】
上述の反射信号の処理のすべてまたは一部は、コンピュータ可読媒体上に有形に具体化され、処理回路106などの処理ユニットによって実行されるソフトウェア命令にて実施することができる。このようなコンピュータ可読媒体は、汎用または専用コンピュータまたはプロセッサ、または任意のプログラマブル論理デバイスによってアクセスし得る任意の利用可能な媒体とすることができる。適当なコンピュータ可読媒体は、たとえばディスクまたはCD−ROMなどの磁気または光媒体など、RAM(たとえばSDRAM、DDR SDRAM、RDRAM、SRAMなど)、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなどの揮発性または不揮発性媒体などの記憶またはメモリ媒体、およびネットワークおよび/または無線リンクなどの通信媒体を通じて伝達される電気信号、電磁信号、またはデジタル信号などの伝送媒体を含むことができる。
【0023】
図6に示される障害物検出システム600の別の実施形態では、2つの受信アンテナ110−1および110−2が用いられる。アンテナ110−1および110−2は、ある垂直間隔だけ離され、処理回路106が、システム600が位置するビークルに対する検出された障害物の高さを検証することを可能にする。具体的には処理回路106は、‘377出願にさらに詳細に述べられているように、受信アンテナ110−1によって受信した反射された信号と、受信アンテナ110−2によって受信した反射された信号の間の位相差を解析してビークルに対する障害物の高さを決定する。いくつかの実施形態では、2つの受信アンテナ110−1および110−2が用いられる場合、処理回路106はまた、RCSの1つの特性として受信アンテナ110−1と110−2間のレーダ反射の相関を解析する。
【0024】
図7は、障害物を検出する方法700の一実施形態を示すフローチャートである。方法700は、上述のシステム100などのシステムにおいて実施することができる。702では送信アンテナはRF信号を送信する。いくつかの実施形態では、送信されるRF信号はFMCW RF信号である。さらにいくつかの実施形態では、FMCW RF信号を送信するステップは、約800MHzの幅を有し約94GHzを中心とする周波数帯域信号を送信するステップを含む。いくつかのこのような実施形態では、RF信号を送信するステップは、周波数の帯域にわたって線形的に掃引するステップを含む。704では、送信されたRF信号の反射が受信アンテナにて受信される。
【0025】
706では処理回路は、受信された反射信号の1つまたは複数の特性を解析する。具体的には処理回路は、ピーク振幅、ピーク分離間隔、ピーク幅、およびピークの周期性のうちの1つまたは複数を解析する。さらにいくつかの実施形態では、反射信号の1つまたは複数の特性は、障害物、および障害物の少なくとも1つの属性を検出するために解析される。いくつかの実施形態では、検出される障害物はケーブルである。いくつかのこのような実施形態では、反射信号の1つまたは複数の特性の解析によって検出される属性は、非限定的に、個々の素線の素線直径、ケーブル全体のケーブル直径、ケーブルの表面の間隔、および素線の回転の間隔を含む。
【0026】
708にて障害物が識別または検出された場合は、710にてユーザに警報が発せられる。ユーザに警報を発するステップは、非限定的に、上述のように音声警報、視覚的警報、または機械的構成部品の振動を発するステップを含むことができる。さらにいくつかの実施形態では、警報を発するステップは、障害物の少なくとも1つの検出された属性、および障害物までの距離に関する情報をもたらすステップを含む。次いで方法700は、702にて繰り返し、障害物を検出するためにRF信号を送信し続ける。708にて障害物が検出されない場合は、方法700は702にて繰り返し、障害物を検出するためにRF信号を送信し続ける。
【0027】
以上、特定の実施形態を示し説明してきたが、当業者なら、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように適応された任意の構成で置き換えることができることが理解されよう。本出願は、本発明の任意の適応形態または変形形態も包含することを意図するものである。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されることを明確に意図するものである。
【符号の説明】
【0028】
100 障害物検出システム
102 送信器
104 受信器
104−1 受信器
104−2 受信器
106 処理回路
108 出力装置
110 受信アンテナ
110−1 受信アンテナ
110−2 受信アンテナ
112 送信アンテナ
600 障害物検出システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)信号を放射するように動作可能な送信アンテナ(112)と、
前記送信アンテナからの前記RF信号の送信を制御するように動作可能な送信器(102)と、
前記RF信号の反射を受信するように動作可能な受信アンテナ(110)と、
障害物、および前記障害物の1つまたは複数の物理的属性を識別するために、前記受信された反射のレーダ断面積(RCS)の複数の特性を解析するように動作可能な処理回路(106)と
を備える、障害物検出システム(100)。
【請求項2】
前記送信器は、前記送信アンテナを介した周波数変調連続波(FMCW)無線周波数信号の送信を制御するように動作可能である、請求項1に記載の障害物検出システム。
【請求項3】
前記送信アンテナ(112)は、非ポラリメトリックRF信号を送信するように動作可能である、請求項1に記載の障害物検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−96757(P2010−96757A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−227242(P2009−227242)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】