説明

障害発生時における電子バラストのリセット

【課題】プリセット時間中における電力トグルに応じたプリセット時間短縮により、リセットが加速されるランプ駆動用のバラストを提供することである。
【解決手段】コントローラ111が、スタートアップ後の安定運転状態下に障害を検出するとインバーター110の運転を中断させ、ランプ121への駆動電力供給を中断させるプリセット不動時間に入る。プリセット時間経過後コントローラ111はリセットされ、スタートアップサイクルを開始してバラスト100をリスタートさせる。当該プリセット不動時間中に電力をオン−オフ−オンとトグルさせることにより、電流減少回路140がI2/I1比を低下させて自動リセットを強制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
“Electronic Ballast Control Circuit”と称する共同発明及び共同所有の米国特許出願第12/474,049号及び“Relamping Circuit for Dual Lamp Electronic Ballast”と題する共同発明及び共同所有の米国特許出願第12/474,141号は、ここに参照することにより本明細書の一部とする。
本発明は一般に、1つ以上のランプに電力を提供する電子バラストに関し、詳しくは、電源トグルに応じてバラストを素早くリスタートさせることに関する。
【背景技術】
【0002】
バラストは、1つ以上のランプに電力を提供し、各ランプに提供される電流、電圧及びまたは電力を調整する。バラストは、1台以上のコントローラー、集積回路及びその他の、ランプに提供する電力を調整する能動及び受動の各部品をしばしば収納する。バラストの作用は障害により中断され得る。例えば、電源の切断及び接続の如き電力の瞬断はバラストの継続作用に影響を与え得る。バラストの中には、電力トグルが起きるとバラスト電源回路駆動用のコントローラに障害を検出させ、コントローラがリセットされるまで停止するものもある。コントローラはプリセット時間経過後にリセットされる。リセットにより、コントローラはその初期電源投入状態下に“リスタート”してそのスタートアップサイクルを開始する。前記プリセット時間中はバラストは停止されたままであり、コントローラのリセットが完了するまでランプには電力は供給されない。リセット時間は代表的には電源回路の容量放電により決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プリセット時間中における電力トグルに応じたプリセット時間短縮により、リセットが加速されるランプ駆動用のバラストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1様相によれば、ランプ駆動用のバラストが提供される。ある実施形態では、電源に接続した整流器が電源から電気を受ける構成を有する。整流器は電気を受けるとDCバス電圧を発生する。駆動回路が、整流器からDCバス電圧を受け、DCバス電圧を受けるとランプ駆動用電圧を発生する構成を有する。コントローラが、駆動回路を制御し、DCバス電圧に相当する第1電流値を監視し、ランプ電圧に相当する第2電流値を追加的に監視する構成を有する。コントローラは、障害状況を検出するとプリセット時間に渡り駆動回路を停止させ、次いで、リセットされ、駆動回路を制御してランプを駆動させる。コントローラは、第2電流値対第1電流値の比が閾値以下となる場合にもリセットされ得る。電流減少回路は、プリセット時間未満の時間に渡り、コントローラに供給する第2電流値を低下させることにより、障害状況時のコントローラのリセット時間を短縮させる構成を有する。低下された第2電流値対第1電流値の比が閾値以下になるとコントローラがリセットされる。
【0005】
本発明の他の様相によれば、ランプ駆動用の非常用照明システムが提供される。ある実施形態では、上述した如きバラストが主バラストを構成する。非常用照明システムは、主電源切断時にランプをバックアップ電源で選択的に駆動させる構成を有するバックアップバラストリレー202を更に含む。ある実施形態では、バックアップバラストリレー202は、主電源通電時に主バラストの整流器に主電源を選択的に接続する構成を有するリレーを含む。バックアップバラストリレーは、主電源切断時に当該バックアップバラストリレー202をランプに選択的に接続させる構成を有する。リレーは、主電源切断時にランプを駆動回路から選択的に切断する形態を更に有する。主電源を通電させるとランプは主バラストにより駆動され、バックアップバラストリレー202が駆動回路及びランプを選択的に接続する。主電源を切断すると、ランプはバックアップバラストリレー202により駆動され、バックアップバラストリレー202が駆動回路とランプとを選択的に切断する。主バラストのコントローラは駆動回路及びランプの切断による障害状況を検出する。電源を再通電させるとコントローラはリセットされ、主バラストがランプを駆動し、バックアップバラストリレー202が駆動回路及びランプを選択的に接続する。
【発明の効果】
【0006】
プリセット時間中における電力トグルに応じたプリセット時間短縮によりリセットが加速されるランプ駆動用のバラストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の1実施形態に従うランプを駆動するバラスト例の、部分的にブロック形態で且つ部分的に略示したダイヤグラム図である。
【図2】図2は、本発明の1実施形態に従う主バラスト及び非常用バラストを含む非常用照明システム例の、部分的にブロック形態で且つ部分的に略示したダイヤグラム図である。
【図3】図3は、本発明に従うランプバラストと共に使用する電流減少回路例の、部分的にブロック形態で且つ部分的に略示したダイヤグラム図である。
【図4】図4は、ランプバラストの随意的特徴部を例示する、ランプ駆動用バラスト例の、部分的にブロック形態で且つ部分的に略示したダイヤグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態には、ランプ121を駆動するためのバラスト100が含まれる。電源102に接続した整流器120が、電源102から電気を受けてDCバス電圧Vbusを発生する構成を有する。駆動回路117が、整流器120からDCバス電圧Vbusを受けて、ランプ121を駆動するランプ電圧Vbを発生する構成を有する。駆動回路117は、DCバス電圧Vbusに相当する第1電流値108と、ランプ電圧Vbに相当する第2電流値106とを監視するコントローラ111により制御される。
【0009】
通常運転時において、コントローラ111は、障害状況を検出するとプリセット時間経過後にリセットされる。障害状況はランプバラスト100の部品が何らかの理由で予定通り動作しない場合に発生する。従って、ランプバラスト100のある部品が完全に故障した場合(例えば、当該部品が正常に機能しなくなり、適正機能する新品と交換する必要がある場合)のみならず、ランプバラスト100のある部品が間欠且つ一時的に故障する場合(例えば、適正機能部品が故障して適正機能しなくなったが、外的作用を加えることなく適正機能を回復した場合)に生じ得る。従って、障害状況には、例えば、電源102による一時的なスパイク電圧発生のみならず、ランプ121の、内側部品の1つ以上が劣化した寿命切れまたは外的事象による破損が含まれ得る。障害のその他の幾つかの例には以下のものが含まれ得る、即ち、短絡;フィラメント切れまたはオープンフィラメント;開放回路;整流ランプ負荷;アーク放電;地絡;表示復帰;ランプ寿命(EOLL);ランプの外れまたはランプ切れ;停電の如き電力攪乱;非対称の、ランプ電圧、ランプ電流、バス電圧、バス電流;不安定な電圧または電流;始動またはランプ点灯時の異常電圧または異常電流;プリセット範囲外の周波数、位相、電力量、電圧または電流、の1つ以上であり得る。一般に、障害は、コントローラをリセットさせる任意状況であり得るが、ここに例示される以外のその他の障害状況が含まれ得る。
【0010】
コントローラによる、障害検出及びリセットの間のプリセット時間は、しばしば一定定義時間とされる。ある実施形態ではプリセット時間は、コントローラ内部のコントロールタイマがコントローラリセット信号を発生するに要する時間に相当する。ある実施形態では、プリセット時間は容量放電に要する時間とされる。プリセット時間経過後、リセットされたコントローラはその初期電源通電状態となってスタートアップサイクルを開始する。本発明は、プリセット時間中の電力トグルに応じたプリセット時間短縮によりリセットを加速させることを指向するものである。
【0011】
本発明のある実施形態において、電流減少回路が提供され、当該回路は、電力トグルに応じてプリセット時間経過前にコントローラをリセットさせる。詳しくは、電流減少回路は、プリセット時間中にコントローラをリセットさせる。電流減少回路は、電力トグルに応じて、プリセット時間の経過に関わらずコントローラにランプ駆動回路を駆動させる。通常運転時には、第2電流値対第1電流値の比が閾値未満である場合、コントローラは自動リセットする。ある実施形態では、前記電流値の比はDCバス電圧に相当する電流(第2電流値)と、ランプ電圧に相当する電流(第1電流値)との比である。電流減少回路は、当該電流値の比を低下させることで、コントローラの自動リセットを利用してプリセット時間経過前にコントローラを強制自動リセットさせる。
【0012】
本発明の実施形態において、コントローラのリセットは、ランプ側に連結した電流減少回路により、ランプ電圧に対応して加速される。電流減少回路は、電力をオン−オフ−オンとトグルした場合に、コントローラに供給される第2電流値(ランプ電圧に相当)を低下させる。電流減少回路により第2電流値対第1電流値の比が閾値以下となるとコントローラはリセットされてスタートアップサイクルを開始し、駆動回路を制御してランプを駆動させる。従って、障害が発生し且つコントローラのプリセット時間経過後である場合は、電力トグルにより第2電流値を低下させて電流減少回路をリセットさせる。
【0013】
図1には本発明のランプバラスト100の1実施形態が例示される。バラスト100は、交流(AC)電源102で駆動される。バラスト100は、随意的なEMIフィルタ118と、整流器120と、随意的な昇圧型力率改善(PFC)ステージ116と、インバーター110を含む駆動回路117と、コントローラ111と、電流減少回路140と、を含む。
随意的なEMIフィルタ118は、ある実施形態では電源102から受ける電力を調整し、電力線の伝導干渉を抑制する。この実施形態では整流器120は、次いで随意的なEMIフィルタ118からの調整された電力を受ける。全ての実施形態において、整流器120は電力を受け(調整または未調整に拘わらず)、整流した直流(DC)電圧をランプバラスト100用の整流ライン114及び接地115に出力する。
【0014】
キャパシタC1が整流ライン114と接地115との間に接続され、整流DC電圧を調整する。随意的な実施形態では、昇圧型PFCステージ116が当該調整済み整流DC電圧を受け、DCバス112においてDCバス電圧(Vバスとも称する)を出力する。DCバス電圧は整流ライン114の整流DC電圧に渡り増大される。ある実施形態では、昇圧型PFCステージ116は約450ボルトのDCバス電圧を生じさせる。DCバス112及び接地113との間に連結したキャパシタC2が、DCバス112における、キャパシタC1または随意的な昇圧型PFCステージ116の何れから受けた電力を更に調整する。あるいは、ある実施形態では、随意的な昇圧型PFCステージ116がC2を含む。
【0015】
DCバス112及び接地113はインバーター110に連結される。ある実施形態では、インバーター110は、DCバス112及び接地113からDC電力を受け、少なくとも1つのランプ121を駆動する共振フィラメント加熱回路119にAC電力を出力するハーフブリッジインバーターである。ある実施形態では、ランプバラスト100は図示しない複数のランプを駆動する。インバーター110と、幾つかの実施形態における随意的な昇圧型PFCステージ116とは、コントローラ111の1つ以上の出力により、ランプ121を駆動するように制御される。
【0016】
通常運転時におけるコントローラ111の動作モードは3つである。コントローラ111は、その運転開始時においてスタートアップルーチンを実行する。当該運転状況はここではスタートアップサイクル(第1運転状態)と称する。スタートアップサイクル後、コントローラ111はインバーター110を制御してランプ通電を維持させる。当該運転状況をここでは安定状態運転(第2運転状態)と称する。コントローラ111は、障害を検出するとインバーター110の制御を中断してバラスト100をプリセット時間において停止させる。当該状況をここではプリセット不動時間(第3運転状態)と称する。プリセット不動時間経過後、コントローラ111はリセットされてスタートアップサイクルを実行(第1運転状態)し、インバーター110の制御を開始する。
【0017】
安定状態運転では、コントローラ111はインバーター110を制御して共振フィラメント加熱回路119に電力を供給し、結局はランプ121を駆動する電力を供給する。ランプ121は、中でも陰極抵抗Rを持つランプ陰極104と、陰極端子122及び124と、を含む。陰極端子124は抵抗器R9を介してDCバス112に接続し、陰極端子122は、他方の陰極端子が接続ポイント126位置で抵抗器R9に接続する状態下に、接続ポイント125位置でDCブロッキングキャパシタCdc1の端子に接続する。DCブロッキングキャパシタCdc2は、その一方の端子が接続ポイント125位置に接続され、他方の端子が接地される。ある実施例では、DCブロッキングキャパシタCdc2は、接続ポイント125位置での電圧を、DCバス112電圧の半分に低下させる。
【0018】
安定運転状態ではコントローラ111は、ランプ121が適正駆動され且つ陰極104が導電性を有する場合、もしあれば随意的な昇圧型PFCステージ116と、インバーター110とを駆動する。コントローラ111は、入力106(ピン13)位置で、ランプに関連する電流I2及び電圧V2を監視し、入力108(ピン14)位置で、バスに関連する電流I1及び電圧V1を監視する。安定運転状態では、素子R4、R5、R6、R7、R8、R9、C4、C5、Cdc1及びCdc2は、バス電圧V1、電流I1、ランプ電圧V2、電流I2を、I2対I1比が閾値以上となる如き値に維持する。閾値は、ランプ電圧V2及びバス電圧Vbus間に、それ以下の値では受け入れ難い非対称性が生じる値を表わす。詳しくは、ランプ電圧V2(電流I2で表わす)対バス電圧V1(電流I1で表わす)比が閾値以下となると、障害状況を表わす受け入れ難い非対称性が生じる。例えば、前記比が閾値以下となると、バス電圧Vbusが、停電時における如く受け入れ難い程に低下する。
【0019】
従って、コントローラはスタートアップサイクル後の安定運転状態中は以下の態様(電流減少回路140を有するまたは有さない状態下に)下に運転するようプログラムされる。I2/I1比が閾値以上(例えば、3/4または0.75またはそれ以上)である限りにおいて、コントローラ111は、インバーターがランプ121駆動電力を供給するよう当該インバーター110を制御し続ける。
コントローラ111は、スタートアップ後の安定運転状態下に障害を検出すると、インバーター110の運転を中断させ、ランプ121への駆動電力供給を中断させるプリセット不動時間に入る。プリセット時間経過後(即ち、プリセット不動時間経過後)、コントローラ111はリセットされ、スタートアップサイクルを開始してバラスト100をリスタートさせる。ここに記載する如き幾つかの実施形態において、当該プリセット不動時間中にリセットを強制させる要望がある。以下に記述する如く、プリセット不動時間中に電力をオン−オフ−オンとトグルさせることにより、電流減少回路140がI2/I1比を低下させて自動リセットを強制させる。
【0020】
コントローラ111は、電力オフ後に、またはプリセット不動時間経過後に運転を開始してスタートアップサイクルに入り、その間、ランプ121及びランプバラスト100の障害状況をチェックする。コントローラ111は、障害を検出しない場合はスタートアップサイクルを継続する。コントローラ111は、障害が生じない限りにおいて、スタートアップサイクル完了後に安定運転状態下に運転される。
上述した如く、コントローラ111はその初期始動に際して及びプリセット不動時間経過後のリセット後にスタートアップサイクルにおいて運転される。コントローラ111をリセットさせてスタートアップサイクルにおいて運転させる別法がある。上述した如く、コントローラ111は相当する電流I1を監視することによりバス電圧V1を分析し、相当する電流I2を監視することによりランプ電圧V2を分析する。電流I1及び電流I2を監視することにより、コントローラ111は、これに限定しないが、ランプの寿命切れや整流器の効果切れの如きその他の問題(例えば障害)がランプ121に生じているかを判定し得る。また、コントローラ111はI2/I1比を監視して、通常運転時には当該比が閾値(例えば0.75)以上であることを予測する。
【0021】
言い換えると、コントローラ111は安定運転状態中、プリセット不動時間中、更にはスタートアップサイクル中においてI2/I1比を監視し、I2/I1比は通常は閾値以上である。しかしながら、コントローラ111は当該比が閾値以下となるのに反応して即座にリセットされ、スタートアップサイクルを開始する。詳しくは、電力トグル(例えば、オン−オフ−オンの)により起動させた電流減少回路140によりI2が低下されると前記比が閾値以下に低下し、かくしてコントローラ111は強制リセットされ、スタートアップサイクルを開始する。ある実施形態では、当該態様下に動作するコントローラは、ドイツ国NurembergのInfineon Technologies,AGから入手可能なOS2331418またはICB2FLOSRAM(商標名)である。
【0022】
例えば、スタートアップ後の安定運転状態では、I2/I1比が閾値より小さくなるとコントローラ111はインバーター110の運転を中断させ、ランプ121を駆動する電力を断続させる。コントローラ111は即座にリセットされ、リセット後、スタートアップサイクルを開始してバラスト100をリスタートさせる。
【0023】
その他の例として、障害発生後のプリセット不動時間中にI2/I1比が閾値より小さくなると、コントローラ111はプリセット不動時間経過を待たずに(即ち、中断して)即座にリセットされる。リセット後、コントローラ111はスタートアップサイクルを開始し、バラスト100をリスタートさせる。
【0024】
電流減少回路140を使用しない場合、コントローラ111は、スタートアップ後の安定状態での運転中にバラストまたはランプの障害、例えば、電力瞬断、ランプ寿命切れ、整流効果切れ、等を検出するとインバーター110を停止させ、プリセット不動時間の中断を開始させる。ある実施形態では、プリセット不動時間は40秒である。通常運転時のプリセット不動時間中のI2/I1比は継続的に閾値に等しいまたはそれ以上であることから、コントローラ111はプリセット不動時間中にリセットされることはない。
【0025】
電流減少回路140を組み込んだ場合、コントローラ111は、スタートアップ後の安定状態での運転中にバラストまたはランプの障害、例えば、電力瞬断、ランプ寿命切れ、整流効果切れ、等を検出するとインバーター110を停止させ、プリセット不動時間の中断を開始させる。しかしながら、障害が電力トグル(例えば、オフ−オン−オフ)である場合、または、プリセット不動時間経過中に電力をトグルさせると、当該電力トグルにより電流減少回路140が起動され、その結果、電流減少回路140がI2を低下させ、結局、I2/I1比が閾値未満となる。これによりコントローラ111は強制リセットされてスタートアップサイクルを開始する。先に述べた如く、スタートアップサイクルのこの時点において、コントローラ111はランプ121及びランプバラスト100の障害をチェックし、その後、障害が検出されない場合は実質的に即座にランプバラスト100をリスタートさせる。
【0026】
要約すると、電流減少回路140を使用しない場合、スタートアップ後に安定状態運転中のコントローラ111は、電力トグルに伴う障害(例えば、停電またはEOLL障害)を検出するとプリセット不動時間経過後にリセットされる。一方、電流減少回路140を使用する場合、スタートアップ後に安定状態運転中のコントローラ111は、電力トグルに伴う障害を検出すると、電流減少回路140がI2/I1比を閾値以下に低下させ、かくしてコントローラ111のリセットがプリセット不動時間以内に加速される。
【0027】
電力トグルに伴う障害例には以下のものがあり得る。例えば、コントローラ111は、電源102故障により発生した停電を、ランプ電圧V2対バス電圧V1比が閾値以下となって生じた障害と判定する。コントローラは、停電を検出すると駆動回路をシャットダウンさせてプリセット時間(例えば、40秒であり得る)を開始させる。バラスト100のユーザーがプリセット時間(即ち40秒)以内において電源102をトグルさせると、電流減少回路140がI2/I1比を閾値以下に低減させ、かくしてコントローラ111は自動リセットされる。停電障害が解消されるとコントローラ111はプリセット時間経過を待たずにバラストをリスタートさせる。
【0028】
電源トグルに伴う他の障害例には以下のものがあり得る。コントローラ111は、ランプ121の寿命切れをランプ寿命切れ(EOLL)障害として検出し、駆動回路117をシャットダウンさせてプリセット時間(例えば40秒)を開始させる。プリセット時間(即ち、40秒)未満に於いて、バラスト100のユーザーがランプ121を交換して障害を解消し、電源102をトグルさせると電流減少回路140がI2/I1比を閾値以下に低減させ、かくしてコントローラ111は自動リセットされる。EOLL障害が解消されると、コントローラ111はプリセット時間(即ち、40秒)以内にバラストをリスタートさせる。仮に、プリセット時間(即ち、40秒)未満に於いて、ユーザーがランプ121を交換せずに電源102をトグルした場合でも電流減少回路140はI2/I1比を閾値以下に低減させ、コントローラ111は自動リセットされる。しかしコントローラ111がリセットされてもEOLL障害は解消されていないため、スタートアップサイクル中に当該障害を検出し、プリセット時間を開始させる。
【0029】
電流減少回路140は図1ではバラスト100の一部として例示され、図3では当該電流減少回路のみが略示されている。電流減少回路140は陽極及び陰極を持つ能動素子D5を含み、ランプ121側に接続した陽極が、接続ポイント128位置のランプ電圧Vbに相当する。電流減少回路140は、直列接続した第1抵抗R1/R2及び第2抵抗R3を備える分圧器を更に含み、第1抵抗R1/R2の第1端は整流ライン114に接続され、第2端は接続ポイント130位置で能動素子の陰極に接続される。第2抵抗R3の第1端は接続ポイント130位置で能動素子の陰極に接続され、第2端は回路接地に接続される。安定運転状態では陰極電圧Vaは陽極電圧Vb以上であるので、能動素子D5には逆バイアスが掛かり電流は流れない。陰極電圧Vaが陽極電圧Vb未満、例えば、整流ライン114電圧が陽極電圧Vb以下となると、能動素子D5に順バイアスが掛かり電流が流れる。
【0030】
電流減少回路140のある実施形態では、ダイオードである能動素子D5が接続ポイント128及び接続ポイント130位置に接続される。能動素子D5は、電圧Vaが電圧Vb未満である場合は能動素子D5に順バイアスが掛かり電流I3が流れ始める如き態様下に接続される。抵抗R1は、整流ライン114と、接続ポイント130との間で抵抗R2に直列接続される。抵抗R3はその一端が接続ポイント130に接続され、他端は回路接地に接続される。フィルタキャパシタC3が接続ポイント130及び接地に接続され、かくしてフィルタキャパシタC3と抵抗R11とが並列接続される。抵抗R1、R2、R3は、安定状態運転時のVa<Vbを維持する抵抗デバイダを構成する。電力をオン−オフ−オンとトグルした場合に整流ライン114の電圧が低下(電力トグル“オフ”時に)して、例えばVa=0ボルトとなると、能動素子D5には順バイアスが掛かる。能動素子D5は電流I3を伝導させ、かくしてI2及びI1間を不平衡化させ、I2/I1比を、例えば閾値未満とする。ある実施形態では電流減少回路140は、電力をオン−オフ−オンとトグルした場合に1秒あるいはそれ未満の内にI2/I1比を閾値未満に低下させる。
【0031】
図2には非常用照明システム203の実施形態が例示される。非常用照明システム203は、図1に関して先に説明した如き、ランプ121駆動用の主バラスト100を含む。非常用照明システム203はバックアップバラスト200をも含む。バックアップバラスト200は、例えば、バックアップバラストリレー202と、バックアップ電源204と、整流器/DC充電器/リレー用のコントローラ208と、を含み得る。主電源201は通電中は主バラスト100に選択的に接続される。通常運転中、主電源201は通電状態に維持され、ランプ121はバックアップバラストリレー202を介して主バラスト100に選択的に接続され且つ当該主バラスト100により駆動される。
【0032】
主電源201を切断すると電力損失が生じ、ランプ121はバックアップバラスト200のバックアップ電源204により選択的に駆動される。主バラスト100のコントローラ111は、(先に説明した如く)プリセット時間経過後にランプ切れ障害を検出する。整流ライン114における電圧は電力損失により降下し、コントローラ111は電流減少回路140により、(先に説明した如く)プリセット時間未満の時間でリセットされる。主電源201を再通電させると主電源201は主バラスト100に選択的に再接続され、主バラスト100によるランプ121の選択的駆動が再開される。
【0033】
従って、主電源201を通電させると、ランプ121は主バラスト100により駆動され、バックアップバラストリレー202が駆動回路117とランプ121とを選択的に接続する。主電源201を切断するとランプ121はバックアップバラスト200により駆動され、バックアップバラストリレー202が駆動回路117とランプ121との接続を選択的に切断し、コントローラ111が、駆動回路117とランプ121との切断障害を検出する。主電源201への通電を再開すると、コントローラ111はリセットされ、ランプ121は主バラスト100により駆動され、バックアップバラストリレー202が駆動回路117とランプ121とを選択的に接続する。
【0034】
ランプバラスト100は、ランプドライバを選択的に動作させる、図4に示す如き制御回路302を随意的に含み得る。制御回路302は、バラストによる、2つのステージA及びステージBでの4個のランプ(図示せず)の駆動を許容する。ステージAには、上述したコントローラ111に相当するASIC411Aにより何れも制御される、2個のランプを駆動するための、昇圧型力率制御ステージ416A及び複合回路方式ハーフブリッジ型共振LC回路417Aが含まれる。同様に、ステージBには、同じく上述したコントローラ111に相当するASIC411Bにより制御される、2個のランプを駆動する、昇圧型力率制御ステージ416B及び複合回路方式ハーフブリッジ型共振LC回路417Bが含まれる。制御回路302は、ランプに接続するバラストの出力線を取り外すことなく、ランプを駆動するインバーターの一方を停止させることにより、2個のランプを駆動するモードでの当該バラストの動作を許容する。“Electronic Ballast Control Circuit”と称する共同発明及び共同所有の米国特許出願第12/474,049号は、ここに参照することにより本明細書の一部とするものであり、制御回路302の各実施例が説明される。
【0035】
ランプバラスト100は、図4に示す如く、バラストにより給電される第1ランプまたは第2ランプ(図示せず)の何れかをユーザーが交換するのに応じて、バラストをリスタートせしめるランプ再点灯回路300を随意的に更に含み得る。“Relamping Circuit for Dual Lamp Electronic Ballast”と題する共同発明及び共同所有の米国特許出願第12/474,141号は、ここに参照することにより本明細書の一部とし、且つランプ再点灯回路300の実施形態を説明するものとする。
ここで、本発明及びその単数または複数の好ましい実施形態における要素に関する、“1つの”、“この”、“前記”等は、それら要素が1つ以上であることを意味するものとし、また、“含む”、“有する”等については、列挙した各要素以外に追加的な要素が存在することを意味するものとする。
【符号の説明】
【0036】
12 電流
13、14 ピン
100 ランプバラスト
102 電源
104 陰極
106 第2電流値
108 第1電流値
110 インバーター
111 コントローラ
112 DCバス
113、115 接地
114 整流ライン
116 昇圧型PFCステージ
117 駆動回路
118 EMIフィルタ
119 共振フィラメント加熱回路
120 整流器
121 ランプ
122 陰極端子
125、126、128、130 接続ポイント
140 電流減少回路
200 バックアップバラスト
201 主電源
202 バックアップバラストリレー
203 非常用照明システム
204 バックアップ電源
208 コントローラ
300 ランプ再点灯回路
302 制御回路
416A、416B 昇圧型力率制御ステージ
417A 複合回路方式ハーフブリッジ型共振LC回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ駆動用のバラストであって、
電源に接続された整流器にして、電源から電力を受け、当該電力を受けるとDCバス電圧を発生する構成を有する整流器と、
整流器からDCバス電圧を受け、当該DCバス電圧を受けるとランプ駆動用のランプ電圧を発生する構成を有する駆動回路と、
該駆動回路を制御する構成を有するコントローラにして、前記DCバス電圧に相当する第1電流値を監視し、ランプ電圧に相当する第2電流値を監視し、前記コントローラが、障害状況を検出するとプリセット時間において駆動回路を停止させ、次いでリセットされ、駆動回路を制御してランプを駆動させ、第2電流値対第1電流値の比が閾値以下となるとリセットされ、駆動回路を制御してランプを駆動させるコントローラと、
障害状況発生時におけるコントローラのリセットを加速させる構成を有する電流減少回路にして、所定のプリセット時間未満において、コントローラに供給される第2電流値を減少させ、かくして、第2電流値対第1電流値の比を閾値以下に低下させることによりコントローラをリセットさせる電流減少回路と、
を含むバラスト。
【請求項2】
電流減少回路が、
障害状況発生時及び、電力がオン−オフ−オンの順にトグルされた場合に、コントローラのリセットを加速させる構成を有する電流減少回路にして、該コントローラに供給される第2電流値を所定プリセット時間未満において低下させ、該低下した第2電流値対第1電流値の比を閾値以下に低下させることによりコントローラをリセットさせる電流減少回路である請求項1のバラスト。
【請求項3】
コントローラが障害状況を検出しない場合、第2電流値に相当する電流対第1電流値に相当する電流の比が閾値または閾値以上に維持され、かくして電源が整流器に電力を供給する請求項1のバラスト。
【請求項4】
コントローラのリセットを加速するために、電流減少回路が、ランプ電圧に相当するランプ側に接続され、前記電流減少回路が、
陽極及び陰極を備える能動素子にして、陽極がランプ電圧に相当するランプ側に接続した能動素子と、
直列接続した第1及び第2の各抵抗を備える分圧器にして、第1抵抗の第1端が整流ラインに接続され、第1抵抗の第2端が能動素子の陰極に接続され、第2抵抗の第1端が能動素子の陰極に接続され、第2抵抗の第2端が回路接地に接続された分圧器と、
を含み、能動素子が、電源が通電され且つ陰極電圧が陽極電圧より大きい場合は該能動素子に逆バイアスが掛かり電流が流れず、
能動素子が、電源を切断し且つ陰極電圧が陽極電圧未満である場合は該能動素子に順バイアスが掛かり電流が流れる請求項1のバラスト。
【請求項5】
順バイアスが掛かる能動素子が、ランプ電圧に相当するランプ側から離れる方向に電流を送ることにより第1電流値を低下させ、かくして低下した第1電流値対第2電流値の比を閾値以下に低下させることによりコントローラをリセットさせる請求項4のバラスト。
【請求項6】
第2抵抗にフィルタキャパシタが並列接続され、フィルタキャパシタの第1端が第2抵抗の第1端に接続され、フィルタキャパシタの第2端が第2抵抗の第2端に接続される請求項4のバラスト。
【請求項7】
ランプ駆動用の非常用照明システムであって、
ランプ駆動用の主バラストを含み、該主バラストが、
主電源に接続した整流器にして、電源から電力を受け、当該電力を受けるとDCバス電圧を発生する構成を有する整流器と、
整流器からDCバス電圧を受け、当該DCバス電圧を受けるとランプ駆動用のランプ電圧を発生する構成を有する駆動回路と、
該駆動回路を制御する構成を有するコントローラにして、前記DCバス電圧に相当する第1電流値を監視し、ランプ電圧に相当する第2電流値を監視し、前記コントローラが、障害状況を検出するとプリセット時間において駆動回路を停止させ、次いでリセットされ、駆動回路を制御してランプを駆動させ、第2電流値対第1電流値の比が閾値以下となるとリセットされ、駆動回路を制御してランプを駆動させるコントローラと、
電源がトグルされた場合にコントローラのリセットを加速させる構成を有する電流減少回路にして、コントローラに供給される第2電流値を、プリセット時間未満の時間において低下させ、低下された第2電流値対第1電流値の比を閾値以下に低下減少させ、かくしてコントローラをリセットさせる電流減少回路と、
主電源切断時にランプをバックアップ電源により選択的に駆動させる構成を有するバックアップバラストにして、主電源通電時に主電源を主バラストの整流器に接続させ、主電源切断時はバックアップバラストをランプに選択的に接続し、電源切断時にランプを駆動回路から選択的に切断させる構成を有するリレーを含むバックアップバラストと、
主電源を通電させるとランプが主バラストにより駆動され、バックアップバラストリレーが駆動回路とランプとを選択的に接続し、
主電源切断時はランプがバックアップバラストにより駆動され、バックアップバラストリレーが駆動回路とランプとを選択的に切断させ、かくして、コントローラが駆動回路及びランプの切断に基づく障害状況を検出し、
電源を再通電させると、コントローラがリセットされ且つランプが主バラストにより駆動され、バックアップバラストリレーが駆動回路とランプとを選択的に接続するランプ駆動用の非常用照明システム。
【請求項8】
電源がプリセット時間未満の時間において再通電されると、電流減少回路が第2電流値対第1電流値の比を閾値未満に低下させてコントローラをリセットさせ、かくしてランプが主バラストにより駆動される請求項7のランプ駆動用の非常用照明システム。
【請求項9】
障害状況が存在せず且つ主電源通電時は、第2電流値に相当する電流対第1電流値に相当する電流の比が閾値または閾値以上に維持される請求項7のランプ駆動用の非常用照明システム。
【請求項10】
コントローラのリセットを加速させるためにランプ電圧に相当するランプ側に接続した電流減少回路が、
陽極及び陰極を備える能動素子にして、陽極がランプ電圧に相当するランプ側に接続される能動素子と、
直列接続した第1抵抗及び第2抵抗を備える分圧器にして、第1抵抗の第1端が整流器ラインに接続され、第1抵抗の第2端が能動素子の陰極に接続され、第2抵抗の第1端が能動素子の陰極に接続され、第2抵抗の第2端が回路接地に接続され、
電源通電時は、能動素子に逆バイアスが掛かり電流が伝導されず、陰極電圧が陽極電圧より大きく、
電源切断時は能動素子に順バイアスが掛かり電流が伝導され、陰極電圧が陽極電圧未満である請求項7のランプ駆動用の非常用照明システム。
【請求項11】
順バイアスの掛かる能動素子が、ランプ電圧に相当するランプ側から離れる方向に電流を伝導して第1電流値を低下させ、かくして、低下した第1電流値対第2電流値の比が閾値以下となり、コントローラがリセットされる請求項10のランプ駆動用の非常用照明システム。
【請求項12】
フィルタキャパシタが第2抵抗に並列接続され、フィルタキャパシタの第1端が第2抵抗の第1端に接続され、フィルタキャパシタの第2端が第2抵抗の第2端に接続される請求項10のランプ駆動用の非常用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−278008(P2010−278008A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−122788(P2010−122788)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】