説明

隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガー

【課題】左右のファスナーエレメント列の噛合時に強い横引き力を受けてもファスナーエレメントが表面側から見えない隠蔽性のある隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーを提供する。
【解決手段】ファスナーストリンガー1はテープ主体部4とエレメント取付部5を持つファスナーテープ2とエレメント取付部5に織込れたファスナーエレメント3を備え、テープ主体部4の側縁がU字状に折り返され、エレメント3の噛合頭部7を外方に突出した隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガー1でエレメント取付部5に、エレメント6の上下脚部8,9上を走行する複数本の上下固定用経糸23,24と前記エレメント6の上下脚部8,9間で交錯し、上脚部8と前記下脚部9を交互に跨ぐ様に走行する複数の締付用経糸25が配されている。又、下固定用経糸24のトータル繊度が、上固定用経糸23のトータル繊度よりも大きく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のファスナーテープのエレメント取付部に沿って織り込まれた連続状のファスナーエレメント列を噛合させたときに、噛合したファスナーエレメント列がテープ表面から見えなくなる隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
隠しスライドファスナーは、左右のファスナーテープに沿って織り込まれたファスナーエレメント列を噛合させることにより、ファスナーエレメント列を見えなくするという隠蔽性を有している。このため、隠しスライドファスナーは、その隠蔽性から製品のデザイン性を妨げないという利点を生かして各種衣類や靴等の製品に好適に使用されている。
【0003】
このような隠しスライドファスナーの一例が、例えば特許第3414110号公報(特許文献1)や実開平2−132419号公報(特許文献2)に開示されている。例えば、前記特許文献1に記載されている隠しスライドファスナー54は、図5に示したように、地経糸48と地緯糸49とによってファスナーテープ42が織製されており、このファスナーテープ42のエレメント取付部47に、コイル状ファスナーエレメント列41が噛合頭部44をファスナーテープ42の内側に向けて固定用経糸51と固定用緯糸52とによって織り込まれている。
【0004】
また特許文献1では、ファスナーエレメント列41の連結部45側に複数本の芯紐50が挿通されており、前記固定用経糸51がファスナーエレメント列41の上脚部46上を走行して地緯糸49に交絡させ、芯紐50を上下脚部46間に挟着している。更に、前記固定用緯糸52は、芯紐50間を走行する固定用経糸51に交絡し、噛合頭部44側の芯紐50の外面を走行して地緯糸49に交絡させている。
【0005】
そして、このようにエレメント取付部47にファスナーエレメント列41が織り込まれたファスナーテープ42のテープ主体部55側を折り返して、ファスナーエレメント列41の噛合頭部44をその折返部から突出させた状態で、左右のファスナーエレメント列41をスライダー部材53の案内路に挿通することにより、隠しスライドファスナー54が構成されている。これにより、簡単な織製手段によってファスナーエレメント列41をファスナーテープ42に強固に固定することが可能となり、更には、ファスナーエレメント列41の各エレメント間の間隔(ピッチ)を安定させることができる。
【0006】
一方、前記特許文献2に記載されている隠しスライドファスナーのファスナーストリンガー61は、図6に示したように、地経糸78と地緯糸79とによってファスナーテープ62が織製されており、このファスナーテープ62の側縁に形成されたエレメント取付部80に、コイル状ファスナーエレメント列63が噛合頭部65をファスナーテープ62の内側に向けて織り込まれている。
【0007】
この特許文献2のファスナーストリンガー61において、ファスナーエレメント列63は、各エレメント68の上下脚部70,71に交錯して走行する締付用経糸72,73と、各エレメントの上脚部70の上面74上及び下脚部71の下面75上のそれぞれを経方向に走行する複数本の上固定用経糸76及び下固定用経糸77と、地緯糸79とによって織り込まれており、前記特許文献1のような芯紐は配されていない。また特許文献2では、各上固定用経糸76間や各下固定用経糸77間には締付用経糸72,73が配されており、締付用経糸72,73よりも噛合頭部65側には、上固定用経糸76と下固定用経糸77とが1本ずつ配されている。
【0008】
このようなファスナーストリンガー61を用いて隠しスライドファスナーを構成することにより、ファスナーエレメント列63の各エレメント68間の間隔が安定してチェーン割れが生じ難く、また、ファスナーエレメント列63の織り込み部分の厚さを薄く形成して、柔軟性に優れた隠しスライドファスナーを得ることができる。
【特許文献1】特許第3414110号公報
【特許文献2】実開平2−132419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、隠しスライドファスナーは、その利点を生かして、各種衣類や靴等の製品だけでなく、例えば自動車や列車の座席シート用シートカバー等の様々な製品にも、その用途が広がってきている。このため、隠しスライドファスナーには、様々な環境や条件で使用されても、隠蔽性、柔軟性、及び噛合強度等を確保できるようなより高い性能が要求されている。
【0010】
例えば隠しスライドファスナーが自動車のシートカバーに使用される場合について具体的に説明すると、自動車の座席シートでは、一般的に、所定の形状に成形されたクッション体にシートカバーが被覆されている。このとき、シートカバーはクッション体の外形寸法よりも小さく形成されており、クッション体を圧縮状態で被覆することにより、外観形状に生じる緩みや変形などの発生を極力抑制するようにしている。
【0011】
このため、隠しスライドファスナーがシートカバーに使用されていると、ファスナーエレメント列が噛合されるときや噛合状態にあるときに、ファスナーストリンガーのファスナーテープが左右両側から引っ張られる強い横引き力を受ける。従って、隠しスライドファスナーは、このような横引き力を受けても、その隠蔽性が損なわれないことが求められている。また、隠しスライドファスナーは、クッション体のクッション性や感触が損なわれないようにするため、例えば隠しスライドファスナー自体に柔軟性を持たせることやスライダー部材を小さく構成すること等も求められている。
【0012】
しかし、例えば前記特許文献1に記載されている隠しスライドファスナー54は、前述のようにファスナーエレメント列41に複数本の芯紐50が挿通されて構成されているため、ファスナーエレメント列41の厚さが厚くなり柔軟性に欠ける。また、ファスナーエレメント列41を挿通するスライダー部材53のサイズが大きくなり、座席シートのクッション性や感触に違和感を与えるという不具合があった。
【0013】
一方、前記特許文献2に記載されている隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガー61は、前述のように、ファスナーエレメント列63の厚さが薄いため柔軟性に優れている。しかしながら、例えばファスナーテープ62が左右両側から引っ張られるような強い横引き力を受けた際に、左右のファスナーテープ62間に隙間が生じ易く、ファスナーエレメント列63が表面側から見えてしまうため、隠しスライドファスナー特有の隠蔽性が損なわれるという問題があった。
【0014】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、ファスナーエレメント列に芯紐が挿通されてなく、左右のファスナーエレメント列が噛合しているときに強い横引き力を受けても、ファスナーエレメント列が表面側から見えない優れた隠蔽性を有する隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるファスナーストリンガーは、基本的な構成として、テープ主体部、及び前記テープ主体部の側縁に形成されたエレメント取付部を有する左右一対の織製されたファスナーテープと、前記ファスナーテープの織製と同時に前記エレメント取付部に織り込まれた左右の連続状のファスナーエレメント列とを備え、前記ファスナーエレメント列の各エレメントは、噛合頭部と、前記噛合頭部から延出し、前記エレメント取付部に織り込まれる上下脚部と、隣接するエレメントの前記上下脚部間を連結する連結部とを有し、前記テープ主体部の側縁がU字状に折り返され、前記ファスナーエレメント列の前記噛合頭部をU字状折返部から外方に突出させてなる、隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガーであって、前記エレメント取付部に、前記ファスナーエレメント列の各エレメントの上脚部及び下脚部のそれぞれの外面上を経方向に走行する複数本の上固定用経糸及び下固定用経糸と、前記エレメントの前記上下脚部間で交錯し、前記上脚部と前記下脚部とを交互に跨ぐように経方向に走行する複数本の締付用経糸と、が配されており、複数の前記下固定用経糸のうち、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記下固定用経糸のトータル繊度が、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記上固定用経糸のトータル繊度よりも大きく構成されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0016】
この場合、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記下固定用経糸の単糸の繊度と、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記上固定用経糸の単糸の繊度とが同一であり、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記下固定用経糸の本数が、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記上固定用経糸よりも多く配されていることにより、前述のように下固定用経糸のトータル繊度を上固定用経糸よりも大きく構成することが好ましい。
【0017】
また、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記下固定用経糸の本数と前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記上固定用経糸の本数とが同一であり、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記下固定用経糸の単糸の繊度が、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する前記上固定用経糸の単糸の繊度よりも大きく形成されていることにより、下固定用経糸のトータル繊度を上固定用経糸よりも大きく構成することもできる。
【0018】
本発明に係るファスナーストリンガーでは、前記ファスナーエレメント列の各エレメント間において、複数本の前記下固定用経糸の下面側を走行し、前記エレメントの前記連結部側に配された少なくとも1本の前記下固定用経糸を介して反転し、複数本の前記上固定用経糸の上面側を走行するように緯入れされた緯糸が、前記エレメント取付部に配されていることが好ましい。
【0019】
また、前記下固定用経糸の下面側を走行する前記緯糸と前記上固定用経糸の上面側を走行する前記緯糸とに交錯しながら経方向に走行し、前記上下固定用経糸の緯方向の位置を規制する位置決め用経糸が、前記エレメント取付部に配されていることが好ましい。
【0020】
更に本発明では、前記締付用経糸よりも前記噛合頭部側を走行する複数本の前記下固定用経糸は、前記位置決め用経糸によって複数の領域に区分されて配されていることが好ましい。
この場合、前記位置決め用経糸により区分された領域のなかで前記噛合頭部に最も近い領域に、2本以上の前記下固定用経糸が配されていることが更に好ましく、また、前記位置決め用経糸によって区分された前記領域は、前記噛合頭部に近い前記領域ほど、より多くの前記下固定用経糸が配されていることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガーは、連続状のファスナーエレメント列が織り込まれるエレメント取付部に、エレメントの上脚部及び下脚部のそれぞれの外面上を走行する複数本の上固定用経糸及び下固定用経糸と、エレメントの上下脚部間で交錯し、上脚部と下脚部とを交互に跨ぐように経方向に走行する複数本の締付用経糸とが配されている。また、複数の前記下固定用経糸のうち、締付用経糸よりもエレメントの噛合頭部側を走行する下固定用経糸のトータル繊度が、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸のトータル繊度よりも大きく構成されている。
【0022】
このような構成を有するエレメント取付部にファスナーエレメント列が織り込まれたファスナーストリンガーであれば、例えば隠しスライドファスナーを構成して、左右のファスナーエレメント列を噛合させた状態で強い横引き力を受けた場合でも、締付用経糸よりもエレメントの噛合頭部側を走行する複数の下固定用経糸が緻密に配されているため、下固定用経糸の位置がずれることはない。
【0023】
このため、ファスナーテープのU字状折返部の位置が左右に開くことを防いで、左右のファスナーテープ間に隙間が生じることを効果的に防止することができる。従って、ファスナーエレメント列はファスナーテープの表面側から見えることはなく、強い横引き力を受けても隠しスライドファスナーの優れた隠蔽性を維持することができる。
【0024】
また、本発明のファスナーストリンガーは、ファスナーエレメント列に芯紐を挿通せずに構成することができるため、ファスナーエレメント列の肉厚を薄くして適切な柔軟性を確保することができる。またこの場合、ファスナーエレメント列を挿通するスライダー部材を小さく構成することが可能となるため、例えば隠しスライドファスナーを自動車のシートカバーに使用しても、スライダー部材が座席シートのクッション性や感触に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0025】
本発明に係るファスナーストリンガーにおいて、下固定用経糸のトータル繊度を上固定用経糸よりも大きくするためには、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸の単糸の繊度と、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸の単糸の繊度とが同一であり、また、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸の本数が、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸よりも多く配されるようにしてエレメント取付部を構成すれば良い。これにより、ファスナーテープを織製するときに、例えば上固定用経糸及び下固定用経糸の単糸として同じ糸を使用することができる。このため、ファスナーストリンガーのコストダウンを図ることが可能となるとともに、織機における上固定用経糸の供給部と下固定用経糸の供給部とを同じような構成で形成し、織機の構造を簡単にすることも可能となる。
【0026】
また本発明において、下固定用経糸のトータル繊度を上固定用経糸よりも大きくするためには、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸の本数と締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸の本数とが同一であり、また、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸の単糸の繊度が、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸の単糸の繊度に比べて大きくなるようにしてエレメント取付部を構成しても良い。これにより、下固定用経糸のトータル繊度を大きくするために下固定用経糸の本数を上固定用経糸よりも多く配さなくても良く、織機における筬の数を少なくすることが可能となる。その結果、例えば織機の小型化が図れることが可能となり、また、織製時における作業性の向上を図ることも可能となる。
【0027】
本発明のファスナーストリンガーでは、ファスナーテープのエレメント取付部に、下固定用経糸の下面側を走行し、エレメントの連結部側に配された下固定用経糸を介して反転し、更に上固定用経糸の上面側を走行するように緯入れされた緯糸が配されている。このような緯糸が配されていることにより、ファスナーエレメント列をエレメント取付部に上下固定用経糸や締付用経糸とともに安定して織り込むことができ、ファスナーエレメント列を強固に固定することができる。
【0028】
また、ファスナーテープのエレメント取付部には、下固定用経糸の下面側を走行する緯糸と上固定用経糸の上面側を走行する緯糸とに交錯しながら走行する位置決め用経糸が配されている。これにより、上下固定用経糸や締付用経糸の位置を規制して安定させることができ、経糸の位置がずれることや、経糸同士が上下に重なることを防ぐことができる。また、位置決め用経糸が緯糸に交錯することにより、緯糸が弛まないようにすることもできる。このため、エレメント取付部の織組織を安定させることができ、隠しスライドファスナーの隠蔽性や噛合強度を長期にわたって維持することができる。
【0029】
更に本発明では、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する複数本の下固定用経糸が、位置決め用経糸によって複数の領域に区分されて配されている。これにより、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する複数の下固定用経糸の位置がずれることや、互いに隣接する下固定用経糸が上下に重なることを防止できる。このため、エレメント取付部の織組織を更に安定させて、隠しスライドファスナーの隠蔽性を一層確実に維持することができる。
【0030】
この場合、位置決め用経糸により区分された領域のなかで噛合頭部に最も近い領域に、2本以上の下固定用経糸、好ましくは3本以上の下固定用経糸が配されていることにより、位置決め用経糸よりも噛合頭部側に所定長さのエレメント取付部を緻密に形成することもできる。これにより、左右のファスナーテープのU字状折返部間の間隔が拡大することを防いで、隠しスライドファスナーの隠蔽性をより確実に維持することができる。
【0031】
更に本発明において、位置決め用経糸によって区分された領域では、噛合頭部に近い領域ほど、より多くの下固定用経糸が配されている。これにより、例えばファスナーエレメント列を織り込みながらファスナーテープを編製した後、左右のファスナーエレメント列を噛合させたときに、下固定用経糸の位置がエレメントの連結部側に移動することを防ぎ、その一方で、上固定用経糸をエレメントの連結部側へ容易に移動させることができる。このため、隠しスライドファスナーの隠蔽性が損なわれずに、ファスナーエレメント列の噛合強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例1に係る隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーを噛合させたときの断面を示す断面図であり、図2は、一方のファスナーストリンガーを織製した直後の糸の配置を示す断面図であり、図3は、同ファスナーストリンガーの織組織を模式的に示す部分斜視図である。
【0034】
なお、これらの図は本発明の特徴を理解し易くするために、緯糸及び各種の経糸を相対的に細く示し、また織込構造(織組織)を粗く示している。しかし実際には、ファスナーストリンガーとしての機能を考慮して、各種の緯糸及び経糸には所要の太さの糸条が使用され、また、織組織も緻密に構成されている。
【0035】
本実施例1に係る隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガー1は、織製された左右一対のファスナーテープ2と、ファスナーテープ2に織り込まれた左右のコイル状ファスナーエレメント列3とを備えており、ファスナーテープ2は、テープ主体部4と、このテープ主体部4の側縁に形成され、ファスナーエレメント列3が織り込まれるエレメント取付部5とを有している。
【0036】
また、ファスナーエレメント列3は、合成樹脂製のモノフィラメントからコイル状に連続して成形された多数のエレメント6を有しており、各エレメント6は、噛合頭部7と、噛合頭部7から延びるように形成された上下脚部8,9と、上下脚部8,9の各延端部をテープ長手方向の前後に隣接するエレメント6の上下脚部8,9の何れかと連結する連結部10とを有している。
【0037】
このファスナーエレメント列3は、図3に示したように、噛合頭部7をファスナーテープ2の内側に向けた状態で、上下脚部8,9をファスナーテープ2の織製と同時にエレメント取付部5に織り込むことにより、ファスナーテープ2に取り付けられている。そして、ファスナーエレメント列3を織り込みながらファスナーテープ2を織製した後に、テープ主体部4の側縁をU字状に折り返して、ファスナーエレメント列3の噛合頭部7をそのU字状折返部11から外方に突出させた状態で熱セットを行うことにより、本実施例1の隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガー1が得られる。
【0038】
本実施例1のファスナーストリンガー1におけるファスナーテープ2の織組織は、図3に示したように、経糸の開口内にキャリアーバーを往復動させて地緯糸21を緯入することにより形成されており、テープ主体部4は双糸からなる地緯糸21と地経糸22とにより織製されている。また、テープ主体部4のエレメント取付部5が形成される側とは反対側の端部には、図示せぬ編み針が差し通され、次位の地緯糸を順次引っ掛けてループ折り返し端を連結することにより、耳部12が形成されている。
【0039】
また、ファスナーテープ2のエレメント取付部5は、図2及び図3に示したように、各エレメント6の下脚部9の下面側を経方向に走行する10本の下固定用経糸24と、エレメント6の上脚部8の上面側を経方向に走行する4本の上固定用経糸23と、エレメントの上下脚部8,9間で交錯するように経方向に走行する4本の締付用経糸25と、上下固定用経糸23,24の緯方向の位置を規制する位置決め用経糸26と、テープ主体部4から緯入れされた地緯糸21とにより構成されている。
【0040】
前記下固定用経糸24は、織製時にテープ主体部4の織組織と略同一面上に配されている。また、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側の部分には、6本の下固定用経糸24が配されている。また、締付用経糸25よりもエレメント6の連結部10側には2本の下固定用経糸24が配されており、この2本の下固定用経糸24によって地緯糸21を反転させる反転部13を形成している。更に、2組の締付用経糸25の間には、2本の下固定用経糸24が配されている。このような10本の下固定用経糸24をエレメント6の下脚部9の下面側に配することにより、ファスナーエレメント列3を載置して支持することが可能な取付面を安定して形成することができる。
【0041】
前記上固定用経糸23は、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側と連結部10側とに2本ずつ配されており、これらの2本1組の上固定用経糸23は、エレメント6の上脚部8側を走行する地緯糸21を下脚部9側に向けて折り曲げる折曲部14を形成している。また、噛合頭部7側に配された2本の上固定用経糸23は、織製直後の状態において、図2に示すように、地緯糸21によって上脚部8側に押さえられているだけである。このため、例えばファスナーテープ2を織製した後に、地緯糸21の上脚部8と下脚部9との間で縦に走行する縦走行部15が連結部10側に向けて押し込まれることにより、上固定用経糸23は上脚部8上で連結部10側に向けて容易に移動させられる。
【0042】
なお、本実施例1では、地緯糸21を反転させる反転部13や地緯糸21を折り曲げる折曲部14には、下固定用経糸24又は上固定用経糸23が2本ずつ配されている。これにより、エレメント取付部5の端部における強度を高めることができ、例えば地緯糸21によって反転部13や折曲部14に対して大きな負荷がかかっても、反転部13や折曲部14に毛羽立ちが生じたり、また、上下固定用経糸23,24が容易に切断されたりすることを防ぐことができる。
【0043】
前記締付用経糸25は、エレメント6の上下脚部8,9間で交錯し、上脚部8と下脚部9とを交互に跨ぐことにより上下脚部8,9を上下方向で締め付けるようにして走行している。また、この締付用経糸25は、走行方向が上下対称となる隣接した2本の締付用経糸25を1組として、2組の締付用経糸25が所定の間隔をあけて配されている。このような締付用経糸25が配されていることにより、ファスナーエレメント列3をエレメント取付部5へ強固に織り込むことができるとともに、織り込まれたファスナーエレメント列3の各エレメント6間のピッチを安定させることができる。
【0044】
前記位置決め用経糸26は、下固定用経糸24の下面側を走行する地緯糸21と上固定用経糸23の上面側を走行する地緯糸21とに交錯しながら経方向に走行しており、4本の位置決め用経糸26がエレメント取付部5に配されている。このような位置決め用経糸26が配されていることにより、エレメント取付部5にファスナーエレメント列3をより安定して固定することができ、また、地緯糸21が弛むことを防ぐことができる。
【0045】
また、これら4本の位置決め用経糸26のうちの1本は、締付用経糸25よりもエレメント6の連結部10側に配されており、エレメントの連結部10側に配した2本の上固定用経糸23の位置を規制している。また、2組の締付用経糸25間にも1本の位置決め用経糸26が配されており、この1本の位置決め用経糸26と2組の締付用経糸25とにより、2本の下固定用経糸24の位置を規制している。本実施例1では、このような連結部10側に配されている位置決め用経糸26によって、上下固定用経糸23,24の位置が左右幅方向にずれることを防いで、ファスナーエレメント列3の固定を安定させている。
【0046】
更に、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側に配された2本の位置決め用経糸26は、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側に配された6本の下固定用経糸24の位置を規制している。特に、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側は、2本の位置決め用経糸26によって3つの領域に区分されており、それぞれの領域には、噛合頭部7側から、3本の下固定用経糸24、2本の下固定用経糸24、1本の下固定用経糸24が分けて配されるように、下固定用経糸24の位置が規制されている。
【0047】
このように噛合頭部7側に配された6本の下固定用経糸24が位置決め用経糸26によって規制されていることによって、下固定用経糸24の位置がずれることや、複数の下固定用経糸24が上下に重なることを防いで、エレメント取付部5の織組織を安定させることができる。
【0048】
特に本実施例1では、噛合頭部7に近い領域ほど多くの下固定用経糸24が配されているため、例えばファスナーテープ2の編製後に左右のファスナーエレメント列3を噛合させたときに(図1を参照)、噛合頭部7側に配された6本の下固定用経糸24がエレメント6の連結部10側に移動することを防ぎ、その一方で、上固定用経糸23を連結部10側に移動させ易くすることができる。
【0049】
これにより、噛合頭部7に上固定用経糸23や地緯糸21がかかることを防ぐことができるため、ファスナーエレメント列3の噛合状態を安定させて噛合強度を高めることができ、しかも、6本の下固定用経糸24は連結部10側に移動しないため、左右のファスナーテープ2のU字状折返部11間の距離が拡がることを防ぐことができる。
【0050】
前記地緯糸21は、ファスナーエレメント列3の各エレメント6間において、テープ主体部4から8本の下固定用経糸24の下面側を走行し、エレメントの連結部10側に配された2本の下固定用経糸24(反転部13)を介して反転してエレメント6の上脚部8側に向かい、4本の上固定用経糸の上面側を走行した後、上下脚部8,9間を縦方向に走行してテープ主体部4に戻るように緯入れされ、又は、その反対方向へ走行するように緯入れされている。このようにして地緯糸21が緯入れされていることにより、エレメント6の上下脚部8,9を上固定用経糸23及び下固定用経糸24を介して挟み込むようにして織り込んで、エレメント取付部5に強固に固定することができる。
【0051】
本実施例1において、ファスナーテープ2のテープ主体部4及びエレメント取付部5に配される地緯糸21及び各種の経糸22,23,24,25,26の各単糸には、330デシテックスの太さを有するポリエステル加工糸が用いられている。なお、本発明において、地緯糸及び各種の経糸の太さや材質は特に限定されるものではなく、ファスナーエレメント列3のサイズや隠しスライドファスナーの用途等に応じて、適宜変更することができる。
【0052】
そして、図3に示したような織組織を有するファスナーストリンガー1を織製した後、得られたファスナーストリンガー1のテープ主体部4の側縁をU字状に折り返して、そのU字状折返部11からファスナーエレメント列3の噛合頭部7を外方に突出させた状態で保持する。更に、そのファスナーストリンガー1に低温で熱セット処理を行うことによって、ファスナーストリンガー1の形状を予備的に安定させる。
【0053】
続いて、左右のファスナーエレメント列3を図示しないスライダー部材に挿通し、そのスライダー部材を左右のファスナーエレメント列3に沿って摺動させることによって、左右のファスナーエレメント列3を噛合させる。このように左右のファスナーエレメント列3を噛合させることにより、図1に示したように、噛合頭部7側で上下脚部8,9間を上下に走行する地緯糸21の縦走行部15が、相対するエレメントの噛合頭部7によってエレメントの連結部10側に押し込まれる。
【0054】
また、この地緯糸21の縦走行部15が押し込まれることによって、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配した2本の上固定用経糸23と最も噛合頭部7側に配した位置決め用経糸26とが、エレメントの連結部10側に移動させられる。これにより、左右のファスナーエレメント列3の噛合を安定して行うことができる。
【0055】
一方、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配した6本の下固定用経糸24は、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配した上固定用経糸23よりも本数が多く、且つ、緻密に引き揃えられている。このため、前述のように地緯糸21の縦走行部15が連結部10側に押し込まれても、その位置がずれることはない。従って、ファスナーテープ2のU字状折返部11の位置も、ファスナーエレメント列3に対してエレメントの連結部10側に相対的に移動することはなく、左右のファスナーテープ2間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0056】
その後、図1に示した噛合状態のファスナーストリンガー1に熱セット処理を行うことによって、ファスナーストリンガー1の形状を安定させるとともに、地緯糸21及び各種の経糸22,23,24,25,26を熱収縮させて、ファスナーテープ2の織組織を緻密化し、ファスナーエレメント列3をより強固に固定する。これにより、本実施例1のファスナーストリンガー1を備えた隠しスライドファスナーを構成することができる。なお、図1に示したファスナーストリンガー1においては、図面の下方側が隠しスライドファスナーを構成したときの表面側となる。
【0057】
以上のような本実施例1のファスナーストリンガー1は、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側を走行する下固定用経糸24が、締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23に比べて多くの本数で緻密に配され、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側を走行する下固定用経糸24のトータル繊度が、締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23のトータル繊度よりも大きくなるように構成されている。
【0058】
このため、例えば図1に示したようにファスナーエレメント列3が噛合している状態で、ファスナーテープ2が左右両側から引っ張られる強い横引き力を受けても、下固定用経糸24の位置がずれることがない。従って、ファスナーストリンガー1の左右ファスナーテープ2間に隙間が生じることを効果的に防ぐことができ、ファスナーエレメント列3をテープ表面側から見えなくする優れた隠蔽性を維持することができる。
【0059】
また、本実施例1のファスナーストリンガー1は、ファスナーエレメント列3に芯紐が挿通されていないため、ファスナーエレメント列3の厚さを薄くして、適切な柔軟性を備えることができる。更に、ファスナーエレメント列3に芯紐が挿通されていないことにより、ファスナーエレメント列3を挿通するスライダー部材を小さく構成することが可能となる。このため、例えば隠しスライドファスナーを自動車のシートカバーに使用しても、スライダー部材が座席シートのクッション性や感触に及ぼす影響を小さくすることができる。
【実施例2】
【0060】
次に、本発明の実施例2に係る隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーについて図面を参照しながら説明する。ここで、図4は、本実施例2に係るファスナーストリンガーの織製した直後の糸の配置を示す断面図である。なお、本実施例2において、前記実施例1と同様の構成を有する部材については同じ符号を用いて表しており、これによってその部材の説明を省略することとする。
【0061】
本実施例2に係るファスナーストリンガー1′において、ファスナーテープ2のエレメント取付部5は、各エレメント6の下脚部9の下面側を経方向に走行する8本の下固定用経糸24′,24″と、エレメント6の上脚部8の上面側を経方向に走行する6本の上固定用経糸23′と、エレメントの上下脚部8,9間で交錯するように経方向に走行する4本の締付用経糸25と、上下固定用経糸23,24の緯方向の位置を規制する位置決め用経糸26と、テープ主体部4から緯入れされた地緯糸21とにより構成されている。
【0062】
前記下固定用経糸は、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配された4本の第1下固定用経糸24′と、2組の締付用経糸25の間及び締付用経糸25よりも連結部10側に配された4本の第2下固定用経糸24″とを有している。本実施例2において、第1下固定用経糸24′の各単糸には、450デシテックスの太さを有するポリエステル加工糸が用いられており、第2下固定用経糸24″の各単糸には、150デシテックスの太さを有するポリエステル加工糸が用いられている。このような第1及び第2下固定用経糸24′,24″を下脚部9の下面側に配することにより、ファスナーエレメント列3の取付面を安定して形成することができる。
【0063】
前記上固定用経糸23′は、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側に4本配されており、その中で噛合頭部7に近い2本の上固定用経糸23′は、上脚部8側を走行する地緯糸21を下脚部9側に向けて折り曲げる折曲部14を形成している。また、締付用経糸25よりも連結部10側には2本の上固定用経糸23′が配されており、これらの2本の上固定用経糸23′も折曲部14を形成している。また、この上固定用経糸23′の各単糸には、150デシテックスの太さを有するポリエステル加工糸が用いられている。
【0064】
また、本実施例2において、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配される第1下固定用経糸24′と上固定用経糸23′の本数は等しいものの、前述のように、第1下固定用経糸24′の単糸における太さを450デシテックスに設定し、上固定用経糸23′の単糸における太さを150デシテックスに設定している。
【0065】
このように、上固定用経糸23′よりも第1下固定用経糸24′の単糸を太く形成したことにより、第1下固定用経糸24′と上固定用経糸23′の本数を等しくしても、締付用経糸25よりもエレメント6の噛合頭部7側を走行する下固定用経糸24のトータル繊度を、締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23のトータル繊度よりも大きくして、第1下固定用経糸24′を締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23に比べて緻密に引き揃えることができる。
【0066】
これにより、本実施例2における左右のファスナーストリンガー1′のファスナーエレメント列3を噛合させて、地緯糸21の縦走行部15が連結部10側に押し込まれたときに、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配した上固定用経糸23′は連結部10側に大きく移動するものの、4本の第1下固定用経糸24′は連結部10側に移動し難い。
【0067】
更に、本実施例2のファスナーストリンガー1′においては、相対する左右のファスナーエレメント列3が噛合している状態で、ファスナーテープ2が左右両側から引っ張られる強い横引き力を受けても、下固定用経糸24が緻密に引き揃えられているため、その位置がずれることはない。従って、ファスナーストリンガー1の左右ファスナーテープ2間に隙間が生じることを効果的に防ぐことができ、優れた隠蔽性を維持することができる。
【0068】
また、本実施例2のファスナーストリンガー1′は、前記実施例1と同様に、ファスナーエレメント列3に芯紐が挿通されていないため、ファスナーエレメント列3の厚さを薄くして、適切な柔軟性を備えることができる。更に、ファスナーエレメント列3に芯紐が挿通されていないことにより、ファスナーエレメント列3を挿通するスライダー部材を小さく構成することが可能となる。
【0069】
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、前記実施形態では、エレメント取付部5を構成する各種経糸の本数を具体的に例示して説明を行っているが、各種経糸の本数はファスナーエレメント列3のサイズや隠しスライドファスナーの用途等に応じて任意に変更することが可能である。
【0070】
また、前記実施例1において、下固定用経糸24及び上固定用経糸23の各単糸における繊度を等しくしているものの、本発明では、下固定用経糸24の各単糸における繊度を上固定用経糸23よりも大きくすることも可能である。これにより、隠しスライドファスナーを形成した際に、隠しスライドファスナーの隠蔽性を更に確実に維持することが可能となる。なお、本発明では、締付用経糸25よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸24のトータル繊度が、上固定用経糸23側よりも大きくなりさえすれば、下固定用経糸24の各単糸における繊度を上固定用経糸23よりも小さくすることも可能である。
【0071】
また、前記実施例2において、締付用経糸25よりも噛合頭部7側に配される第1下固定用経糸24′と上固定用経糸23′の本数を等しくしているものの、本発明では、第1下固定用経糸24′の本数を締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23に比べて多くすることも可能である。更に、第1下固定用経糸24′のトータル繊度が、締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23に比べて大きくなりさえすれば、第1下固定用経糸24′の本数を締付用経糸25よりも噛合頭部7側を走行する上固定用経糸23に比べて少なくすることも可能である。
【0072】
即ち、本発明においては、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する下固定用経糸のトータル繊度を、締付用経糸よりも噛合頭部側を走行する上固定用経糸のトータル繊度に比べて大きくすれば、隠しスライドファスナーを形成した際に、隠しスライドファスナーの優れた隠蔽性を確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1に係る隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーを噛合させたときの断面を示す断面図である。
【図2】一方のファスナーストリンガーにおける織製した直後の糸の配置を示す断面図である。
【図3】同ファスナーストリンガーの織組織を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】本発明の実施例2に係る隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーにおける織製した直後の糸の配置を示す断面図である。
【図5】従来の隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーの断面を示す断面図である。
【図6】従来の他の隠しスライドファスナー用ファスナーストリンガーの断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,1′ ファスナーストリンガー
2 ファスナーテープ
3 ファスナーエレメント列
4 テープ主体部
5 エレメント取付部
6 エレメント
7 噛合頭部
8 上脚部
9 下脚部
10 連結部
11 U字状折返部
12 耳部
13 反転部
14 折曲部
15 縦走行部
21 地緯糸
22 地経糸
23,23′ 上固定用経糸
24 下固定用経糸
24′ 第1下固定用経糸
24″ 第2下固定用経糸
25 締付用経糸
26 位置決め用経糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ主体部(4)、及び前記テープ主体部(4)の側縁に形成されたエレメント取付部(5)を有する左右一対の織製されたファスナーテープ(2)と、前記ファスナーテープ(2)の織製と同時に前記エレメント取付部(5)に織り込まれた左右の連続状のファスナーエレメント列(3)とを備え、
前記ファスナーエレメント列(3)の各エレメント(6)は、噛合頭部(7)と、前記噛合頭部(7)から延出し、前記エレメント取付部(5)に織り込まれる上下脚部(8,9)と、隣接するエレメント(6)の前記上下脚部(8,9)間を連結する連結部(10)とを有し、
前記テープ主体部(4)の側縁がU字状に折り返され、前記ファスナーエレメント列(3)の前記噛合頭部(7)をU字状折返部(11)から外方に突出させてなる、
隠しスライドファスナー用のファスナーストリンガー(1,1')であって、
前記エレメント取付部(5)に、
前記ファスナーエレメント列(3)の各エレメント(6)の上脚部(8)及び下脚部(9)のそれぞれの外面上を経方向に走行する複数本の上固定用経糸(23,23')及び下固定用経糸(24,24',24")と、
前記エレメント(6)の前記上下脚部(8,9)間で交錯し、前記上脚部(8)と前記下脚部(9)とを交互に跨ぐように経方向に走行する複数本の締付用経糸(25)と、
が配されており、
複数の前記下固定用経糸(24,24',24")のうち、前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記下固定用経糸(24,24')のトータル繊度が、前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記上固定用経糸(23,23')のトータル繊度よりも大きく構成されてなる、
ことを特徴とするファスナーストリンガー。
【請求項2】
前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記下固定用経糸(24)の単糸の繊度と、前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記上固定用経糸(23)の単糸の繊度とが同一であり、
前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記下固定用経糸(24)の本数が、前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記上固定用経糸(23)よりも多く配されてなる、
請求項1記載のファスナーストリンガー。
【請求項3】
前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記下固定用経糸(24')の本数と前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記上固定用経糸(23') の本数とが同一であり、
前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記下固定用経糸(24')の単糸の繊度が、前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する前記上固定用経糸(23')の単糸の繊度よりも大きく形成されてなる、
請求項1又は2記載のファスナーストリンガー。
【請求項4】
前記ファスナーエレメント列(3)の各エレメント(6)間において、複数本の前記下固定用経糸(24,24',24")の下面側を走行し、前記エレメント(6)の前記連結部(10)側に配された少なくとも1本の前記下固定用経糸(24,24") を介して反転し、複数本の前記上固定用経糸(23,23')の上面側を走行するように緯入れされた緯糸(21)が、前記エレメント取付部(5)に配されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のファスナーストリンガー。
【請求項5】
前記下固定用経糸(24,24',24")の下面側を走行する前記緯糸(21)と前記上固定用経糸(23,23')の上面側を走行する前記緯糸(21)とに交錯しながら経方向に走行し、前記上下固定用経糸(23,24)の緯方向の位置を規制する位置決め用経糸(26)が、前記エレメント取付部(5)に配されてなる請求項4記載のファスナーストリンガー。
【請求項6】
前記締付用経糸(25)よりも前記噛合頭部(7)側を走行する複数本の前記下固定用経糸(24,24')は、前記位置決め用経糸(26)によって複数の領域に区分されて配されてなる請求項5記載のファスナーストリンガー。
【請求項7】
前記位置決め用経糸(26)により区分された領域のなかで前記噛合頭部(7)に最も近い領域に、2本以上の前記下固定用経糸(24,24')が配されてなる請求項6記載のファスナーストリンガー。
【請求項8】
前記位置決め用経糸(26)によって区分された前記領域は、前記噛合頭部(7)に近い前記領域ほど、より多くの前記下固定用経糸(24,24')が配されてなる請求項6又は7記載のファスナーストリンガー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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