説明

隠ぺい性インク組成物

【課題】高い隠ぺいと、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記でき、また、キャップオフ性にも優れる隠ぺい性インク組成物を提供する。
【解決手段】水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、前記固形状ワックスの平均粒子径が1.0〜10μmであり、インク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値が1.0〜10mPa・sであることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠ぺい性インク組成物に関し、更に詳しくは、高い隠ぺい率と、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記でき、また、キャップオフ性にも優れる隠ぺい性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隠ぺい性インク組成物として、酸化チタン、酸化チタンを含む複合粒子、中空粒子などの隠ぺい剤を含む種々のインクが提案されている。
【0003】
例えば、1)白色或いはパステル調の鮮明且つ隠蔽性の高い筆跡を初期及び経時後も形成することができるボールペン用水性組成物を提供するために、必須成分として、酸化チタンを内包したマイクロカプセル顔料と、水と、水溶性有機溶剤とから少なくともなるボールペン用水性白色インク組成物(例えば、特許文献1参照)、2)経時安定性に優れると共に、隠蔽性が高く鮮明な筆跡を長期に亘り維持することができる隠蔽性複合粒子及びそれを用いた筆記具用インク組成物を提供するために、酸化ワックス、または、酸化ワックスと真密度が1.0g/cm以下のポリオレフィンの混合物を少なくとも含有することを特徴とする隠蔽性複合粒子(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のボールペン用水性白色インク組成物では、隠ぺい率を大きくしようとすると、粒子の沈降が生じ、バランスがとれないなどの課題がある。上記特許文献2の隠蔽性複合粒子では、着色剤との一体化に若干の課題があり、また、高コストとなる課題があるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−265105号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2006−96943号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、高い隠ぺい率と、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記でき、また、キャップオフ性にも優れる隠ぺい性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、水と、隠ぺい剤として特定物性となるワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、前記ワックス粒子の平均粒子径を、インク粘度をそれぞれ特定の範囲などとすることにより、上記目的の隠ぺい性インク組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(7)に存する。
(1) 水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、前記固形状ワックスの平均粒子径が1.0〜10μmであり、インク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値が1.0〜10mPa・sであることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
(2) 更に、着色剤を含有してなることを特徴とする上記(1)記載の隠ぺい性インク組成物。
(3) 前記固形状のワックス粒子が高級アルコールであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のる隠ぺい性インク組成物。
(4) 前記高級アルコールがベヘニルアルコールであることを特徴とする上記(3)に記載の隠ぺい性インク組成物。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つの隠ぺい性インク組成物に、固着剤として水溶性ポリマーを含有してなることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
(6) 上記(1)〜(5)の何れか一つの隠ぺい性インク組成物において、ペン先のドライアップ防止剤として、室温下で固体のポリオールを含有してなることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
(7) 上記(1)〜(6)の何れか一つの隠ぺい性インク組成物が黄色インクであり、着色剤が黄色有機顔料または黄色油溶性染料であり、その含有量が0.1〜1質量%の場合、そのインクの隠ぺい率が60〜95%であることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い隠ぺい率と、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記でき、また、キャップオフ性に優れた隠ぺい性インク組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の隠ぺい性インク組成物は、水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、前記固形状ワックスの平均粒子径が1.0〜10μmであり、インク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値が1.0〜10mPa・sであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる隠ぺい剤としての固形状のワックス粒子としては、室温下(25℃、以下同様)で固形状(固体)であれば、特に限定されず、例えば、高級アルコール、高級脂肪酸、パラフィンワックス、酸化型ワックス、ウレタン変性型ワックス、マイクロクリスタリンワックス、並びに、ジグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノステアレートなどのグリセリン誘導体、ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステルなどのアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットヘキサステアレートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、マイクロクリスタリンワックス、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレートなどのペンタエリスリトール誘導体、レシチン、ショ糖エステル、ポリオレフィンロウ、アスコルビン酸ステアレート、ソルビタン酸ステアレートなどから選択される1種又は2種以上の混合物(以下、単に、「少なくとも1種」という)が挙げられる。これらの固形状のワックスの融点は、概ね100℃以下、好ましくは90℃以下である。融点が100℃を超えるとインクの製造に困難を来すこととなり好ましくない。
【0012】
用いることができる高級アルコールとしては、室温下(25℃)で固体となる炭素数13〜23のものが挙げられ、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、n−トリデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、i−ヘプタデカノール、ノナデカノール、1−エイコサノール、ヘンエイコサノール、トリコサノールが挙げられる。
また、用いることができる高級脂肪酸としては、室温下で固体となる炭素数10〜24のものが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、カブリン酸、マルガリン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸や、エライジン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0013】
本発明において、特に好ましい隠ぺい剤としての固形状のワックス粒子としては、更なる隠ぺい率の向上、粒子分散安定性の点から、ベヘニルアルコール、ウレタン変性型ワックス、ステアリン酸を用いることが望ましい。
【0014】
これらの固形状のワックス粒子の平均粒子径は、1.0〜10μmであり、好ましくは、1.0〜5.0μmであるものが望ましい。なお、本発明(後述する実施例等も含む)において、「平均粒子径」は、日機装社製マイクロトラックMT3000にて、調整した隠ぺい性インク組成物における固形状のワックス粒子の粒度分布の小さい方から粒子数を積算し、50%に相当する粒子の粒子径を平均粒子径としたものである。
この「平均粒子径」は、ペイントシェーカー等によってワックス粒子を製造する際に、ビーズの材質及びビーズ径等により、ある程度の制御が可能である。
この平均粒子径が1.0μm未満であると、目の粗い黒画用紙に筆記した場合、隠ぺい剤が紙の中に浸透し、結果として隠ぺい力がでず、好ましくなく、一方、10μmを越えると、ペン芯の目詰まりや、保存安定性が悪くなり、好ましくない。
【0015】
また、これらの固形状のワックス粒子の含有量は、隠ぺい性インク組成物全量に対して、5〜25質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)であり、好ましくは、10〜25%とすることが望ましい。
この固形状のワックス粒子の含有量が5%未満であると、隠ぺい性が不十分となり、好ましくなく、一方、25%を越えて大きくなると、高濃度分散となり、インクが不安定化し、好ましくない。
【0016】
本発明で用いる分散剤は、固形状のワックス粒子を分散する目的で含有するものであり、また、後述するように、着色剤を更に含有する場合の分散効果を発現させることもできる。
用いることができる分散剤としては、界面活性剤、高分子分散剤などであれば特に限定されない。具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、スチレンアクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレンマレイン酸ポリマーなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの分散剤の含有量は、分散作用を効果的に発現せしめる点、インク物性を損なわない点等から、隠ぺい性インク組成物全量に対して、0.1〜5%とすることが好ましくは、更に好ましくは、0.5〜2.5%とすることが望ましい。
【0017】
本発明において、カラバリエーションなどの点から、着色剤を含有することが好ましい。
用いることができる着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料など特に限定されない。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラックや、金属粉等が挙げられる。
また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。染料としては、油溶性染料、造塩体染料などが挙げられる。
これらの着色剤は、ワックスの中に取り込まれていても、単独で分散しても良い。
また、これらの着色剤の含有量は、隠ぺい性インク組成物全量に対して、0.1〜10%とすることが好ましくは、更に好ましくは、0.5〜8%とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明において、非吸収面への固着性付与などの点から、固着剤として固着樹脂を含有することが好ましく、更に、ペン先のドライアップ防止剤として、室温下で固体のポリオールを含有することが好ましい。
用いることができる固着樹脂としては、例えば、水溶性のポリマー、あるいは、水に不溶なポリマーが分散させておくこともできる。水溶性ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、スチレンアクリルポリマー、多糖類、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレンマレイン酸ポリマー、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。水に不溶なポリマーが分散させてなる固着樹脂としては、SBRラテックス、NBRラテックス、ウレタンエマルション、アクリルエマルションなどが挙げられる。
また、これらの固着樹脂の含有量は、隠ぺい性インク組成物全量に対して、(固形分間算で)0.5〜10%とすることが好ましくは、更に好ましくは、1〜5%とすることが望ましい。
【0019】
用いることができるポリオールは、室温下で固体であれば、特に限定されない。好ましくは、1分子中に2個以上の水酸基を有し、更に好ましくは3個以上の水酸基を有するものが望ましい。具体的には、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールや、でんぷん、トレハロースなどが挙げられる。これらのポリオールを隠ぺい性インク組成物に含有すると、ペン先のインクの蒸発を抑制、あるいは大気中の水分の吸湿により、ペン先の耐乾燥性が更に向上する。
これらのポリオールの含有量は、隠ぺい性インク組成物全量に対して、1〜20%とすることが好ましくは、更に好ましくは、1〜10%とすることが望ましい。
【0020】
本発明の隠ぺい性インク組成物には、上記各成分の他、残部として水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整剤、防腐剤などを適宜含有することができる。
【0021】
本発明の隠ぺい性インク組成物において、インク流出の点から、隠ぺい性インク組成物のインク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値で1.0〜10mPa・s、好ましくは、4.0〜8.0mPa・sであることが望ましい。
このインク粘度が1.0mPa・s未満のものは、調合が非常に困難であるうえに、仮に調合出来たとしても、インク流量が多く、描線乾燥性が悪くなり、好ましくなく、一方、10mPa・sを超えて大きいと、インク流量が少なく、隠ぺい性を確保できなくなり、好ましくない。
インク粘度の調整は、水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤、更に好ましく含有する固着樹脂、ポリオール、各含有量等を好適に組み合わせることにより行うことができる。
【0022】
本発明の隠ぺい性インク組成物は、固形状のワックス粒子と、分散剤、水、着色剤、固着樹脂、ポリオールなどを、ホモミキサー、もしくはディスパー、ビーズミル等の攪拌機により攪拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によって隠ぺい性インク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって調製することができる。
【0023】
本発明において、下地隠ぺいの点から、隠ぺい性インク組成物を黄色インクとし、着色剤を黄色有機顔料または黄色油溶性染料を用い、その着色剤の含有量を、隠ぺい性インク組成物全量に対して、0.1〜1%の場合、そのインクの隠ぺい率を60〜95%とすることが好ましい。
得られた隠ぺい性インク組成物は、ペン体に充填して、ホワイトボード用、色画用紙(黒紙)などの筆記、塗布に供することができる。用いるペン体として、ペン先がスライバー芯、フィラメント芯などの中綿式マーキングペン、バルブ式マーキングペンなどが挙げられる。
【0024】
このように構成される本発明の隠ぺい性インク組成物では、水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、固形状ワックスの平均粒子径が1.0〜10μmであり、インク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値が1.0〜10mPa・sとすることにより、初めて、隠ぺい性、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記(塗布)でき、また、キャップオフ性にも優れ、良好な結果となる隠ぺい性インク組成物が得られることとなる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜6及び比較例1〜5〕
下記に示す各調製法で実施例1〜6及び比較例1〜5の隠ぺい性インク組成物を調製した。
得られた各隠ぺい性インク組成物について、上記した方法で平均粒子径を測定し、下記各方法により、インク粘度、隠ぺい率、ノンドライ性、下向き放置性、黒画用紙筆記性、キャップオフ性を評価した。
これらの結果を下記表1及び表示にします。
【0027】
(インク粘度の測定方法)
得られた各隠ぺい性インク組成物を回転粘度計(TV−20、TOKIMEC製)にて、25℃、50rpmでのインク粘度を測定した。
【0028】
(隠ぺい率の測定方法)
用紙の上半分が白、下半分が黒に印刷された隠ぺい率測定紙上に、乾燥前50μmの厚みがひけるアプリケーターにて得られた隠ぺい性インクを塗膜引きし、乾燥後、カラーコンピュータ(スガ試験機社製SC−P)にて黒側のL*値と白側のL*値を測定し、次式により隠ぺい率を算出した。
隠ぺい率=100×(黒側のL*値)÷(白側のL*値)
【0029】
(下向き筆記性の測定方法)
所定のインクを中綿式マーキングペン(三菱鉛筆社製、PWB−7M)のPP樹脂で構成される軸に6.0g充填し、テイボー社製のスライバー芯からなるペン先を下向きの状態で、25℃の恒温室に1ヶ月間放置し、1ヵ月後に「らせん」を5周、紙に筆記し、インクの追従性を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:カスレなく、良好に筆記できる。
△:最初の1〜2周は、カスレがあるが、3周目以降は良好に筆記できる。
×:5周にいたってもカスレの状態であった。
【0030】
(黒画用紙筆記性の測定方法)
所定のインクを上記と同様の中綿式マーキングペンの軸に6.0g充填して、所定の黒画用紙(NTラシャ 日清紡ペーパープロダクツ社製)に「らせん」を筆記し、文字が下地の黒に対しての発色性を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:はっきりと文字が読める。
△:文字がくすんでしまい文字が薄い。
×:黒画用紙の色に隠れてしまい、文字が判読できない。
【0031】
(キャップオフ性の測定方法)
25℃、湿度65%の恒温恒湿室にて、上記中綿式マーキングペンのPP製のキャップをはずし、1時間放置した。その後、フリーハンド紙に「らせん」を筆記し、目視にて下記評価基準でキャップオフ性を評価した。
評価基準:
○:カスレなく、良好に筆記できる。
△:最初の1〜2周は、カスレがあるが、3周目以降は良好に筆記できる。
×:5周にいたってもカスレの状態であった。
【0032】
(実施例1)
リービッヒ冷却管と攪拌棒が取り付けられた4つ口フラスコに、水80gと、ベヘニルアルコール20gと、ドデシル硫酸ナトリウム2.0gと、油溶性染料であるオイルピンク312:0.5g(オリヱント化学工業社製)を投入し、95℃で1時間攪拌混合した。
これを室温まで冷ました後、得られたスラリーを、メディアとしてガラスビーズ1.5mmを用い、充填率70%にてペイントシェーカーにて60分、分散を行った。ビーズを分離して得られた分散ベースは92gであった。これに固着樹脂として、ポリビニルアルコールGL−03(日本合成化学工業社製)10%水溶液を5.0g、水(精製水)を8g、ペンタエリスリトールを2.0g添加し、溶解、攪拌し、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、2.2μmであった。
【0033】
(実施例2)
リービッヒ冷却管と攪拌棒が取り付けられた4つ口フラスコに、水(精製水)80gと、ベヘニルアルコール20gと、スチレンアクリル樹脂溶液であるジョンクリル61J6.0gと、油溶性染料であるオイルブルー613、0.5g(オリヱント化学工業社製)を投入し、95℃で1時間攪拌混合した。
これを室温まで覚ました後、得られたスラリーを、メディアとしてガラスビーズ1.5mmを用い、充填率70%にてペイントシェーカーにて60分、分散を行った。ビーズを分離して得られた分散ベースは、89gであった。これに固着樹脂として、ポリビニルアルコールGL−03(日本合成化学工業社製)10%水溶液を5.0g、水を10g、トレハロースを3.0g添加し、溶解、攪拌し、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、2.4μmであった。
【0034】
(実施例3)
リービッヒ冷却管と攪拌棒が取り付けられた4つ口フラスコに、水(精製水)80gと、ベヘニルアルコール20gと、ドデシル硫酸ナトリウム2.0gと、油溶性染料であるオイルイエローGG−S、0.5g(オリヱント化学工業社製)を投入し、95℃で1時間攪拌混合した。
これを室温まで覚ました後、得られたスラリーを、メディアとしてガラスビーズ1.5mmを用い、充填率70%にてペイントシェーカーにて60分、分散を行った。ビーズを分離して得られた分散ベースは88gであった。これに固着樹脂として、ポリビニルアルコールGL−03(日本合成化学工業社製)10%水溶液を5.0g、水10g、ジペンタエリスリトールを2.0g添加し、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、1.4μmであった。
【0035】
(実施例4)
上記実施例1のベヘニルアルコールの代わりに、ウレタン変性型ワックスであるHAD5090(日本精鑞社製)を同量使用した以外は、実施例1と同様に、配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、2.2μmであった。
【0036】
(実施例5)
上記実施例3のジペンタエリスリトールの代わりに、ペンタエリスリトールを同量使用した以外は、実施例3と同様に、配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、2.4μmであった。
【0037】
(実施例6)
上記実施例3のジペンタエリスリトールの代わりに、グリセリンを同量使用した以外は、実施例3と同様に、配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、2.7μmであった。
【0038】
(比較例1)
上記実施例1のスラリー分散のメディアをガラスビーズ1.5mmからジルコニアビーズ0.1mmに変更し以外は、実施例1と同様のは配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、0.41μmであった。
【0039】
(比較例2)
上記実施例1のベヘニルアルコールの代わりに、酸化チタンR900(デュポン社製)を同量使用した以外は、実施例1と同様に、配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、0.42μmであった。
【0040】
(比較例3)
上記実施例1のベヘニルアルコールの代わりに、中空樹脂粒子であるローペイクウルトラE(ダウ社製、平均粒子径0.4μm)を用い、中空粒子の固形分が、15%になりようにインク配合を行った以外は、実施例1と同様の配合、操作を行って、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、0.41μmであった。
【0041】
(比較例4)
上記実施例1のスラリー分散のメディアのガラスビーズの充填率を20%にした以外は、実施例1と同様の配合、操作を行い、隠ぺい性インク組成物を得た。平均粒子径の測定を行ったところ、12μmであった。
【0042】
(比較例5)
ステアリン酸により処理された親油性酸化チタンITT(日光ケミカルズ社製)40gを、流動パラフィン60g中に、分散剤リン酸エステルRB410(東邦化学工業社製)2gにて、分散し、さらにマイクロカプセル壁生成用の反応物である、イソホロンジアミン3gをさらに分散させ、白色スラリーを得た。
一方で、水(精製水)400gにエポキシ樹脂EP4100(アデカ製)10gを分散、溶解させた水溶液に、前期白色スラリーをホモミキサーにて分散させた。続けてこの乳化液を80℃にて、12時間加温させることで、エポキシ樹脂と、イソホロンジアミンを反応させ、マイクロカプセル壁を生成させ、マクロカプセル含有水溶液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は5.6μmであった。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明をサポートする実施例1〜6の隠ぺい性インク組成物では、高い隠ぺい率と、ペン先のノンドライ性に優れ、カスレはなく良好に筆記でき、また、キャップオフ性にも優れ、良好な結果となる隠ぺい性インク組成物となることがわかる。一方、本発明の条件を満足しない比較例1〜5の隠ぺい性インク組成物では、本発明の課題を解決することはできないことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
バルブ式マーキングペンあるいは中綿式マーキングペンなどに好的な隠ぺい性インク組成物となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、隠ぺい剤として室温下で固形状のワックス粒子と、分散剤とを少なくとも含有し、前記固形状ワックスの平均粒子径が1.0〜10μmであり、インク粘度が25℃における回転粘度計にて50rpmでの測定値が1.0〜10mPa・sであることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
【請求項2】
更に、着色剤を含有してなることを特徴とする請求項1記載の隠ぺい性インク組成物。
【請求項3】
前記固形状のワックス粒子が高級アルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載のる隠ぺい性インク組成物。
【請求項4】
前記高級アルコールがベヘニルアルコールであることを特徴とする請求項3に記載の隠ぺい性インク組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つの隠ぺい性インク組成物に、固着剤として水溶性ポリマーを含有してなることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つの隠ぺい性インク組成物において、ペン先のドライアップ防止剤として、室温下で固体のポリオールを含有してなることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一つの隠ぺい性インク組成物が黄色インクであり、着色剤が黄色有機顔料または黄色油溶性染料であり、その含有量が0.1〜1質量%の場合、そのインクの隠ぺい率が60〜95%であることを特徴とする隠ぺい性インク組成物。

【公開番号】特開2013−32454(P2013−32454A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169720(P2011−169720)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】