説明

隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置

【課題】オペレータが隠蔽印刷付き紙葉類の剥離装置に1回セットするだけで隠蔽印刷の剥離とバーコードの読み取りを完了させることができる隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置を提供する。
【解決手段】紙葉類に付されたバーコードに隠蔽印刷が施された隠蔽印刷層を剥離する剥離機構と、剥離されたバーコードを読み取る読取機構と、剥離機構と読取機構との間で紙葉類を搬送する搬送機構と、剥離機構が隠蔽印刷層を剥離した後、剥離されたバーコードを読み取るように、剥離機構と読取機構と搬送機構とを制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽印刷付き紙葉類の隠蔽印刷を剥離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隠蔽印刷付き紙葉類の隠蔽印刷を剥離する装置においては、隠蔽印刷付き紙葉類の隠蔽印刷を剥離する機能に限定されている。したがって、隠蔽されていたバーコード情報を光学的に読み取るためには、剥離の終了した紙葉類を、別のバーコード読み取り装置で読み取らせる必要があり、オペレータの操作は、手間がかかる状態となっている。
【0003】
また、隠蔽印刷付き紙葉類の隠蔽印刷の剥離が完全でない場合は、別のバーコード読み取り装置で読み取らせた時に、初めて不読となって削り残しに気づき、削り残しを手動で削るか、また隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置で処理する必要があり、運用や操作が煩雑になっているという問題点があった。また、ユーザは、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置とバーコード読み取り装置を、別々で準備する必要があり、設置スペースや、装置購入の費用面でユーザにとってデメリットになってしまう。
【0004】
さらに、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置と、バーコード読み取り装置が別であると、連動した動作で、剥離機構を制御できないという問題があった。つまり、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置として独立していると、バーコード読み取りのため、完全な剥離が課題となる。このような隠蔽印刷付き紙葉類の隠蔽印刷を剥離する機能を有した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267623号公報
【特許文献2】特開2006−001158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来技術においては、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置とバーコード読み取り装置とが別であると、連動した動作で、剥離機構を制御できないという問題がある。つまり、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置として独立していると、バーコード読み取りのため、完全な剥離が課題となる。
【0007】
また、剥離機構部は、紙葉類への刃のあたり方として、押圧力、角度などの変化要素があり、また紙葉類の折れ、しわ等の影響があり安定的かつ継続的に剥離機能を維持させる技術は困難が予想される。従来技術の製品においては、安定的、継続的な剥離を行うために、ユーザ自身がメンテナンスを頻繁に実施し、折れ、しわ媒体はセットしないなど、運用面でカバーして、別製品のバーコードリーダで読み取りをせざるを得ない。
【0008】
また、従来技術では、紙葉類を逆向きにセットしてしまった場合には、剥離機構部が、隠蔽印刷以外の通常印刷されている部分を削る可能性があり、特に湿気を含んだ紙葉類、折れ、しわ紙葉類で逆向きセットにて、剥離対象部位以外が削れてしまうケースがある。さらに、従来技術では、剥離が不完全のまま、剥離機からでてきた状態では、別で設置されているバーコードリーダで読み取れないことを知るまで解らない状態であり、バーコードリーダで読み取れないと判断するのも、紙葉類の隠蔽印刷の剥離状態を確認することも、オペレータにゆだねられており、手間がかかるといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オペレータが隠蔽印刷付き紙葉類の剥離装置に1回セットするだけで隠蔽印刷の剥離とバーコードの読み取りを完了させることができる隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置は、紙葉類に付されたバーコードに隠蔽印刷が施された隠蔽印刷層を剥離する剥離機構と、剥離されたバーコードを読み取る読取機構と、前記剥離機構と前記読取機構との間で前記紙葉類を搬送する搬送機構と、前記剥離機構が前記隠蔽印刷層を剥離した後、前記剥離されたバーコードを読み取るように、前記剥離機構と前記読取機構と前記搬送機構とを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オペレータが隠蔽印刷付き紙葉類の剥離装置に1回セットするだけで隠蔽印刷の剥離とバーコードの読み取りを完了させることができる隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3A】図1に示した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置で行われる制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3B】図1に示した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置で行われる制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】剥離の再実行の処理手順を示すフローチャートである。
【図5A】スキャナ読取機構が読み取ったイメージデータのうち、バーコード部のみを切り出した画像を示す図である。
【図5B】縦方向に画素毎に画素値(AD値)の和を算出した後、縦方向の画素ごとのAD値の平均値を算出した場合における平均値のグラフを示す図である。
【図5C】隠蔽印刷の削り残しの影響により、スキャナ読取機構がバーコードを読み取らないケースの実画像データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図5Cを参照して、本発明にかかる隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000の構成例を示す図である。図1に示すように、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000は、隠蔽印刷の剥離とバーコードを読み取るために、剥離機構4とスキャナ読取機構13の両方を具備している。
【0015】
剥離機構4は、紙葉類に施された隠蔽印刷を剥離するための機構であり、刃開閉ソレノイド7と、押圧調整機構8とを有している。刃開閉ソレノイド7は、刃の開閉が可能であり、剥離をしない紙葉類を搬送する場合は、削り刃6を開けるようにしている。また、押圧調整機構8は、エンコーダ付きモータでネジを押し込み押圧調整ができる機構を有している。その他機構として、剥離屑を紙葉類から除くための剥離屑除去機構10や、紙葉類をセットするホッパ−2や、搬送機構として紙葉類を給紙するためのピックローラ3や搬送ローラ5、用紙排出を保持するスタッカ15を兼備している。
【0016】
上述した搬送機構は、ホッパー2からピックローラ3、搬送ローラ5の駆動により、スタッカー15まで紙葉類を搬送させる機能である。この搬送の間に剥離機構4と剥離屑除去機構10とスキャナ読取機構13とを搬送方向に並べて配置している。剥離機構4は、刃開閉ソレノイドで刃の開閉が可能であり、剥離をしない搬送の場合は刃を開けるようにしている。また、押圧調整機構8は上述した機構を有し、剥離屑除去機構10は、ブラシローラ1とブラシローラ2とからなり、ブラシローラ1は、剥離屑を紙葉類から除き、ブラシローラ2は、ブラシローラ1の剥離屑を除くようになっている。ブラシローラ2で掃いている剥離屑は、剥離屑収納ボックス12に収納される。そして、屑を除いた紙葉類の表面が、スキャナ読取機構13によって読み取られる。
【0017】
本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000は、このような配置構成で紙葉類の隠蔽印刷の剥離とバーコードを光学的に読み取っている。なお、剥離屑除去機構10は、必ずしもブラシローラ1とブラシローラ2とによって構成される必要はなく、少なくともスキャナ読取機構13で読み取る時に剥離屑が取り込まないような構造や機構を具備させればよい。また、以下の説明では、ホッパー2からスタッカー15まで紙葉類を搬送させる機構であるが、剥離とバーコード読み取りを実施して、またホッパー2へ戻す機構として制御することも可能となっている。
【0018】
剥離機構4は、紙葉類への刃のあたり方として、押圧力、角度などの変化要素があり、また、折れ、しわ等の紙葉類の条件があり、剥離は、隠蔽印刷の削り残しが発生する。このため、従来のバーコード読み取り装置では、走査方向に対して、1ライン分は、剥離されて白黒バーが成立していなとバーコードが読み取りできないため、隠蔽印刷の残り方によって、バーコード読み取りができない問題があるが、本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000では、剥離機構4とスキャナ読取機構13の両方を具備させ、剥離機構の剥離が不完全であった場合でも、スキャナ読取機構のイメージデータを隠蔽印刷の削り残りを想定し、後述するように工夫した処理をすることによってバーコード読み取りする。
【0019】
また、従来技術では、紙葉類を逆向きにセットしてしまった場合、剥離機構部が、隠蔽印刷以外の通常印刷されている部分を削る可能性がある。特に湿気を含んだ紙葉類、折れ、しわ紙葉類では、そのような逆向きでのセットにより、剥離対象部位以外が、削れてしまうケースがある。この点において、本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000では、後述するように、紙葉類のセット方向を判定して、隠蔽印刷以外の印刷部分(例えば、図案)には刃があたらないようにタイミングを変えて処理を行っている。
【0020】
図2は、図1に示した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000の機能的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000は、機能的には、光源制御部41Aと、光源41Bと、ADC(Analog Digital Converter)42と、イメージデータ格納メモリ44と、紙葉類搬送制御部45と、刃開閉ソレノイド制御部47と、押圧調整機構制御部48とは、CPU(主制御部)40のI/Oポートや、バスに接続されている。また、ADC42は、1次元CCD(Charge Coupled Device)43(またはCIS(Contact Image Sensor)43)と接続されており、CCD43の出力を255デジタル値に変換する機能を有している。イメージデータ処理は、イメージデータ格納メモリ44をアクセスし、画像の切り出し、演算を行うことで実現できる。
【0021】
図3A、図3Bは、図1に示した隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000で行われる制御処理の処理手順を示すフローチャートである。図3Aに示すように、まず、隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000は、初期設定として、押圧調整機構制御部48が押圧調整機構8を初期位置に設定し、刃開閉ソレノイド制御部47は刃開閉ソレノイド7が削り刃6を「開」状態にするように制御する(ステップ50)。
【0022】
その後、紙葉類搬送制御部45は、ホッパー2が紙葉類を検知したか否かを判定し(ステップS51)、ホッパー2が紙葉類を検知していないと判定した場合(ステップS51;No)、検知するまでそのまま待機する。一方、紙葉類搬送制御部45は、ホッパー2が紙葉類を検知したと判定した場合(ステップS51;Yes)、搬送モータ(不図示)を駆動してピックローラ3および搬送ローラ5を回転させて紙葉類を搬送する(ステップ52)。
【0023】
紙葉類搬送制御部45は、紙葉類が所定の読み取り開始位置まで搬送されたか否かを判定し(ステップS53)、紙葉類が所定の読み取り開始位置まで搬送されていないと判定した場合(ステップS53;No)、その開始位置に紙葉類が搬送されるまでそのまま待機する。一方、紙葉類搬送制御部45は、紙葉類が所定の読み取り開始位置まで搬送されたと判定した場合(ステップS53;Yes)、スキャナ14が紙葉類の読取を開始する(ステップ54)。
【0024】
そして、主制御部40は、スキャナ14が取り込んだイメージデータをイメージデータ格納メモリ44に格納し、紙葉類搬送制御部45はモータを停止させ(ステップ55)、CCD43は、隠蔽されていないバーコード(第1バーコード)を検索し、検索したその第1バーコードをデコードする(ステップS56)。
【0025】
主制御部40は、CCD43が第1バーコードをデコードできたか否かを判定する(ステップS57)。第1バーコードをデコードできたか否かは、隠蔽印刷されていないバーコードが、紙葉類の端面(例えば、搬送方向の先端)から予め定められた位置にあることを利用して、その位置にある第1のバーコードを読み取って正しくデコードできるか否かを判定することによって判定している。このように、主制御部40は、第1バーコードの位置が所定の位置にあるか否かを判定することによって、紙葉類が搬送されている方向を検知している。
【0026】
なお、このステップ57の処理では、主制御部40は、紙葉類が搬送方向から180度反転させた場合における第1バーコードの位置についても、これと同様に判定しているため、紙葉類が逆向きに搬送されてきた場合であっても、第1バーコードがデコードできるようになっている。また、スキャナ14を搬送路の下部にも配置した場合には、紙葉類の裏面にある第1バーコードの位置についても判定することが可能となる。この場合には、紙葉類はスタッカー15まで排出されることとなる。
【0027】
主制御部40が、CCD43が第1バーコードをデコードできたと判定した場合(ステップS57;Yes)、刃開閉ソレノイド制御部47は、順方向(正規向き)で紙葉類が挿入されて搬送されてきたと判定し、正規向きでの隠蔽印刷位置に合うように、刃開閉ソレノイド7の開閉タイミングを設定する(ステップS58)。
【0028】
一方、主制御部40が、CCD43が第1バーコードをデコードできないと判定した場合(ステップS57;No)、刃開閉ソレノイド制御部47は、逆方向(逆向き)で紙葉類が挿入されて搬送されてきたと判定し、逆向きでの隠蔽印刷位置に合うように、刃開閉ソレノイド7の開閉タイミングを設定する(ステップS59)。
【0029】
その後、紙葉類搬送制御部45は、モータを逆回転で駆動して紙葉類をホッパ2まで搬送して停止させた後(ステップS60)、給紙搬送方向にモータを正転させる(ステップS61)。そして、刃開閉ソレノイド制御部47は、搬送されてきた紙葉類に対して、ステップS58またはステップS59で紙葉類の方向により設定した刃開閉ソレノイドの閉タイミングで、刃を閉じて剥離させる(ステップS62)。
【0030】
そして、隠蔽印刷を剥離させると、主制御部40は、ステップS53における処理の場合と同様に、紙葉類が所定の読み取り開始位置まで搬送されたか否かを判定し(ステップS63)、紙葉類が所定の読み取り開始位置まで搬送されたと判定した場合(ステップS63;Yes)、スキャナ14が紙葉類の読取を開始する(ステップ64)。
【0031】
そして、ステップS55における処理の場合と同様に、主制御部40は、スキャナ14が取り込んだイメージデータをイメージデータ格納メモリ44に格納し、紙葉類搬送制御部45はモータを停止させ(ステップ65)、主制御部40は、CCD43が隠蔽されていたバーコード(第2バーコード)をデコードできたか否かを判定する(ステップS66)。第2バーコードをデコードできたか否かの判定は、例えば、隠蔽印刷が剥離された面積が、あらかじめ定められたバーコードのデコードが可能な面積分(あるいはバーコード全体の面積に対する割合分)の剥離ができていない(その面積に満たない)場合には、主制御部40は、第2バーコードをデコードできないと判定する。
【0032】
主制御部40が、第2バーコードがデコードできないと判定した場合(ステップS66;No)、ステップS60に戻って、以降の処理を繰り返す。一方、主制御部40が、第2バーコードがデコードできたと判定した場合(ステップS66;Yes)、紙葉類搬送制御部45は、モータを正転させて紙葉類をスタッカ15まで搬送させ(ステップS67)、処理を終了させる。このステップS67の処理が終了すると、図3A、図3Bに示した全ての処理が終了する。
【0033】
従来技術では、剥離が不完全のまま、剥離機からでてきた状態では、別で設置されているバーコードリーダで読み取れないことがはっきりするまで解らない状態であり、バーコードリーダで読み取れないと判断すること、さらには紙葉類の隠蔽印刷の剥離状態を確認することも、オペレータがその判断をする必要があり、手間がかかるといった問題があった。しかし、本実施の形態においては、剥離機構とスキャナ読取機構の両方を具備させているので、剥離機構の剥離が不完全である場合であっても、人手を介することなくバーコードのデコードに必要な情報を読み取るための判定を、装置内のイメージデータを元に行うことができるようになっている。さらにこの判定により、隠蔽印刷の削りを、剥離機構の手前まで戻し、剥離の再実行することが可能となる。
【0034】
続いて、隠蔽印刷が完全に剥離できなかった場合における剥離の再実行の処理手順について説明する。図4は、剥離の再実行の処理手順を示すフローチャートである。なお、図4において、ステップS80〜ステップS85までの処理は、図3Bに示したステップS60〜ステップS65までの各処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0035】
ステップS86において、主制御部40は、剥離されたバーコードがデコードできたか否かを判定し(ステップS86)、剥離されたバーコードがデコードできないと判定した場合(ステップS86;No)、刃開閉ソレノイド制御部47は、刃開閉ソレノイド7の刃を開き(ステップS88)、紙葉類搬送制御部45は、モータを逆回転に駆動して、刃開閉ソレノイド7の刃が過ぎる位置まで紙葉類を搬送し(ステップS89)、再び刃開閉ソレノイド制御部47は、刃開閉ソレノイド7の刃を閉じて(ステップS90)、ステップS82以降の処理を繰り返す。
【0036】
一方、主制御部40が、剥離されたバーコードがデコードできたと判定した場合(ステップS86;Yes)、紙葉類搬送制御部45は、モータを正転させて紙葉類をスタッカ15まで搬送させ(ステップS87)、処理を終了させる。このステップS87の処理が終了すると、図4に示した全ての処理が終了する。
【0037】
続いて、図4に示した処理において、剥離機構の剥離が不完全であった場合でも、処理を工夫して読み取る方式について、図5A〜図5Cを用いて説明する。
【0038】
図5Aにおいて、スキャナ読取機構13が読み取ったイメージデータのうち、バーコード部のみを切り出した画像101を示している。まず始めに、主制御部40は、イメージデータのうち、あらかじめ設定されている切り出し枠104にある部分を切り出し、切り出し枠範囲内で、縦方向に画素毎に画素値(AD値)の和を算出した後、縦方向の画素ごとのAD値の平均値を算出する。
【0039】
図5Bは、このように算出した平均値のグラフ102を示す図である。図5Bに示すように、グラフ102では、縦方向の画素ごとのAD値の平均値が、横方向(画素NO.)の画素ごとにプロットされている。グラフ102では、縦方向がAD値で、横方向が画素NO.である。図5Bに示す例では、AD値の値が大きいほど白に近いことを示しており、AD値の値が小さいほど黒に近いことを示している。
【0040】
このAD値を白黒判別するため、主制御部40は、ノイズ108の成分を移動平均などでノイズサプレスした後に、それぞれ波形の頂点を検出し、隣りあう頂点との中点をつないで、しきい値107とする。このしきい値107を設定することにより、イメージデータの中で、その画素が白バーエリアに属するものか、黒バーエリアに属するものかを判定し、バーコードのデコードを行っている。
【0041】
図5Bに示すように、決定した白黒バーエリアで、デコードした結果を検証する場合には、白バーエリアにおいては縦方向に、最も白い部分として最大AD値を抽出し、黒バーエリアにおいては、縦方向に、最も黒い部分として最小AD値を抽出する。図5Bの下段では、その軌跡105を示している。このような処理を横方向に全ての画素を対象に行うことによって、イメージデータ全体におけるAD値の波形を抽出することができる。この波形は、遮蔽印刷が白黒の中間色であることが前提であるが、その中間色を排除した波形になっているため、削り残しの影響を受けていないことになる。この波形でバーコードのデコード結果が、一致していれば、削り残しの影響を受けずに結果が出たと判断できる。尚、図5Bに示した波形は、テストで取得した処理の説明をするものであり、光量、感度、アンプゲイン等の最適化をした波形を記載しているものではないため、適宜最適化した上で処理を行うことが望ましい。
【0042】
図5Cは、隠蔽印刷の削り残しの影響により、スキャナ読取機構13がバーコードを読み取らないケースの実画像データを示す図である。図5Cに示すように、範囲111の部分においては、バーの高さ方向をすべて、隠蔽印刷が覆っているため、情報の処理で読み取る方法がない状態であるが、この場合においては、図4に示したように、ステップS86において、剥離の再実行を行うことにより、スキャナ読取機構13がバーコードを読み取ることが可能となる。
【0043】
このように、本実施の形態における隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置1000において上述した処理を行うことにより、オペレータが隠蔽印刷付き紙葉類の剥離装置に1回セットするだけで隠蔽印刷の剥離とバーコードの読み取りを完了させることができる。
【0044】
また、バーコード読み取り機構を内蔵させているので、装置内でバーコードが読み取りできるためのポイントを押さえた剥離ができればよいことになり、剥離機構部に求められる精度を高める必要がなくなり、剥離機構部を簡素化でき、装置全体を小型化、安価にできる。
【0045】
さらに、装置内にバーコード読取部を備えていることにより、押圧力、角度などの変化要素や折れ、しわ等の条件媒体により、削り残しが発生してもバーコードの認識に影響しないイメージ認識処理をさせることができる。つまり、剥離機構部の削り残しがなくなるように、ユーザ自身によるメンテナンスや、条件媒体をセットしないように注意しなければいけない点を軽減できる。
【符号の説明】
【0046】
1 紙葉類 2 ホッパー 3 ピックローラ
4 剥離機構 5 搬送ローラ 6 削り刃
7 刃開閉ソレノイド 8 押厚調整機構 9 剥離屑除去機構
10 ブラシローラ1 11 ブラシローラ2 12 剥離屑収納ボックス
13 スキャナ読取機構 14 スキャナ 15 スタッカー
1000 隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類に付されたバーコードに隠蔽印刷が施された隠蔽印刷層を剥離する剥離機構と、
剥離されたバーコードを読み取る読取機構と、
前記剥離機構と前記読取機構との間で前記紙葉類を搬送する搬送機構と、
前記剥離機構が前記隠蔽印刷層を剥離した後、前記剥離されたバーコードを読み取るように、前記剥離機構と前記読取機構と前記搬送機構とを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記読取機構が剥離された前記バーコードを読み取った多値データから前記バーコードの走査ラインごとに画素値を算出し、算出した前記走査ラインごとの前記画素値の総和と前記走査ラインごとの前記画素値の平均とに基づいて、前記バーコードの白エリアおよび黒エリアを定める、
ことを特徴とする請求項1に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記走査ラインごとの画素値の最大値および最小値を算出し、算出された前記最大値および最小値を結んだ波形に基づいて、前記走査ラインごとの画素が前記バーコードの白エリアまたは黒エリアのいずれのエリアに属するか判定し、判定した結果に基づいて、前記バーコードをデコードする、
ことを特徴とする請求項2に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バーコードがデコードできるか否かを判定し、前記バーコードがデコードできないと判定した場合、前記読取機構から前記剥離機構まで前記紙葉類を搬送するように前記搬送機構を制御し、前記剥離機構に前記隠蔽印刷層を再剥離させ、前記読取機構に前記剥離されたバーコードを再読み取りさせる、
ことを特徴とする請求項3に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記隠蔽印刷層が剥離された面積があらかじめ定められた面積を満たすか否かを判定し、前記隠蔽印刷層が剥離された面積があらかじめ定められた面積に満たないと判定した場合に、前記バーコードがデコードできないと判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記隠蔽印刷層を剥離しない状態で前記紙葉類を前記読取機構まで搬送するように前記剥離機構と前記搬送機構とを制御し、搬送された前記紙葉類を前記読取機構がスキャンした画像に基づいて、前記紙葉類の向きを判別する、
ことを特徴とする請求項1〜5に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項7】
前記制御部は、搬送されてくる前記紙葉類の向きに応じて、前記剥離機構が前記隠蔽印刷層を剥離するタイミングを定める、
ことを特徴とする請求項6に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項8】
前記制御部は、定められた前記タイミングにあわせて前記隠蔽印刷層を剥離する位置まで前記紙葉類を搬送するように前記搬送機構を制御する、
ことを特徴とする請求項7に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。
【請求項9】
前記剥離機構は、前記隠蔽印刷層を剥離するための剥離刃を有し、
前記制御部は、定められた前記タイミングに応じて前記剥離刃を開閉させることにより、前記隠蔽印刷層を剥離させるように前記剥離機構を制御する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の隠蔽印刷付き紙葉類剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2012−240793(P2012−240793A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112481(P2011−112481)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】