説明

隠蔽層付き印刷物

【課題】印刷内容が完全に隠蔽され、擦ると隠蔽されていた印刷内容が完全に表示され、しかも擦る際に、擦り付けるものを摩耗、破損させず、ゴミもでない印刷物を提供する。
【解決手段】基材10と、基材上に設けられた印刷層13と、印刷層13の一部又は全部を隠蔽する隠蔽層14とを備える隠蔽層付き印刷物であって、隠蔽層が、樹脂母材中に有機低分子物質を分散してなる感圧透明材料より構成されており、圧力を加える前は白色で圧力を加えると透明になることを特徴とする隠蔽層付き印刷物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬貨、爪などで擦って圧力を加えると隠蔽された情報が現れる隠蔽層付き印刷物に関し、特に、店頭やイベントなどで販売若しくは配布されるスクラッチクジやイベント券などに好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】従来、硬貨や爪で擦ることにより隠蔽された文字を確認可能であるクジは、一般にスクラッチクジと呼ばれ、例えば実公昭44−12094号公報に見られるように、不透明なインキを文字上に印刷することにより形成した隠蔽層を削ぎ落とす方法が主流である。不透明のインキとしては、アルミペーストなどの隠蔽性が高いインキが使用され、かかるインキの密着性を適当にコントロールするための離間層が設けられており、銀色を呈する隠蔽層を剥がし易くした構成となっている。
【0003】しかし、この方法は、隠蔽層を剥がすとその隠蔽層がゴミとなってしまうという問題がある。
【0004】そこで、例えば特公平6−78089号公報のように、目視上ほとんど目立たないが、硬貨などの金属で擦ると文字が現れる方法が提案されている。これは、擦る金属よりも硬度が大きい材料を用いて文字や絵柄の印刷を施しておくことで、硬貨などの金属で擦るとその金属が削れて印刷物に付着するため、文字が現れるというものである。
【0005】しかし、この方法にも、次のような問題がある。第1に、擦り付けた硬貨などの金属が削られるので、硬貨などの金属そのものが摩滅、破損する。
【0006】第2に、隠れている文字を形成する印刷インキには硬貨などの金属よりも硬度の大きい材料を含むので、印刷インキの基材に対する接着力が弱くなっている。従って、硬貨などの金属を擦り付けると印刷インキ自体が基材から削り落とされ、文字が再現できなくなる。
【0007】第3に、擦り付けた金属を削るための印刷部の表面が他の部分と微妙に異なり、注意深く観察すると隠れている印刷内容が読めてしまう。従って、高額商品が景品となっているクジなどには使用できず、用途が限定されてしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術の諸問題を鑑みてなされたもので、印刷内容が完全に隠蔽され、擦ると隠蔽されていた印刷内容が完全に表示され、しかも擦る際に、擦り付けるものを摩耗、破損させず、ゴミもでない印刷物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明において上記の課題を達成するために、まず請求項1の発明では、基材と、基材上に設けられた印刷層と、印刷層の一部又は全部を隠蔽する隠蔽層とを備える隠蔽層付き印刷物であって、隠蔽層が、樹脂母材中に有機低分子物質を分散してなる感圧透明材料より構成されており、圧力を加える前は白色で圧力を加えると透明になることを特徴とする隠蔽層付き印刷物としたものである。
【0010】また請求項2の発明では、隠蔽層の上に耐スクラッチ性保護層を設けたことを特徴とする請求項1記載の隠蔽層付き印刷物としたものである。
【0011】また請求項3の発明では、隠蔽層によって隠蔽された印刷層の部分が、文字絵柄印刷層と、その周囲に色調が類似した下地絵柄印刷層とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の隠蔽層付き印刷物としたものである。
【0012】また請求項4の発明では、印刷層と基材との間に光反射層又は光散乱層を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の隠蔽層付き印刷物としたものである。
【0013】また請求項5の発明では、印刷層と基材との間、或いは印刷層と光反射層又は光散乱層との間に感熱発色層を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の隠蔽層付き印刷物としたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】<本発明の隠蔽層付き印刷物の構成>隠蔽層付き印刷物は、基本的には、図1に示すように、順次、基材10の上に印刷層13を設け、この印刷層13の上に樹脂母材中に有機低分子物質が分散している感圧透明材料からなる隠蔽層14を設けた積層体である。印刷層13は、少なくとも文字絵柄印刷層11を含み、この文字絵柄印刷層11は、例えばクジであれば、「あたり」、「はずれ」などの情報を文字や絵柄で表現する。
【0016】隠蔽層14は、図2に示すように、樹脂母材16に有機低分子物質17が分散している感圧透明材料からなる薄膜である。隠蔽層14の圧力を加えていない部分では、分散している有機低分子物質17と樹脂母材16との間に空隙18が存在し、この空隙18により外部から入射する光は乱反射をするので、白色に見える白濁部19が形成される。このため、光は印刷層13にまで到達できず隠蔽状態となる。硬貨や爪などで擦ることによって隠蔽層14に圧力を加えると、空隙18は消滅し透明部20が形成され、外からの入射光は印刷層13に到達し、図3に示すように、文字絵柄印刷層11が表現する情報が目視できるようになる。
【0017】この際、隠蔽層14は削り落とされることがなく、硬貨や爪が摩耗、破損することもないので、ゴミの発生を解消できる。このことを、より確実にするために、また隠蔽層14を外傷から保護するために、図4に示すように、隠蔽層14の上に、耐スクラッチ性保護膜15を設けても良い。
【0018】印刷層13が、文字絵柄印刷層11そのものであるときは、隠蔽層14によって文字絵柄印刷層11を隠蔽しきれない場合がある。これに対処するには、2つの方法がある。第1の方法は、図5に示すように、文字絵柄印刷層11の周囲に、それと類似した色調の下地絵柄印刷層12を設け、これら2つで印刷層13を構成することである。例えば、類似する任意の色調の目視可能な色や、更にこれに網点面積や濃度の差を設けたものを、下地印刷層12とする。図6に、文字絵柄印刷層11と同じ色で、その文字絵柄印刷層11よりも網点面積が小さい下地印刷層12を設けた例を示す。この図6は、図3の下地絵柄印刷層12を設けない場合に比較して、文字絵柄印刷層11が表現する文字「あたり」が見難くなっているけれども、隠蔽層11による隠蔽がより完璧なものになる。
【0019】尚、図5の隠蔽層付き印刷物では、上述したように隠蔽層14を保護するために、耐スクラッチ保護層15を設けてある。
【0020】隠蔽層14による文字絵柄印刷層11の隠蔽を完全にする第2の方法は、図7に示すように、文字絵柄印刷層11(印刷層13)と基材10との間に、光を散乱する光散乱層、又は光を反射する光反射層を設けることである。図7では、これら光散乱層と光反射層とを総称して、光散乱(反射)層8として図示してある。この光散乱(反射)層8によって、隠蔽層14の光散乱性が向上し、そのために隠蔽層14の隠蔽性が向上する。
【0021】もちろん、下地印刷層12と光散乱(反射)層8とを共に設けても良い。
【0022】ところで、隠蔽層14は、圧力によって透明化する性質の他に、温度によって透明状態と白濁状態との間を可逆的に繰り返し変化することが可能な可逆性感熱記録層の性質も併せ持っている。従って、硬貨や爪で擦って圧力を加えて隠蔽層14を透明化し、文字絵柄印刷層11が表現する情報を確認した後に、可逆性感熱記録層としての透明化温度域を越える温度まで加熱して、透明化させた痕跡をほとんど残すことなく白濁化するという不正を許すことになってしまう。そこで、このような不正を防止するために、可逆性感熱記録層としての透明化温度領域の上限温度以上の温度域において発色する感熱発色層9を、図8に示すように隠蔽層14を透明化したときに見えるよう印刷層13と光散乱(反射)層8との間に設けることが好ましい。光散乱(反射)層8を設けないときは、感熱記録発色層9を印刷層13と基材10との間に設ける。
【0023】<本発明の隠蔽層付き印刷物を構成する各層の詳細>基材10は、プラスチック、ガラス、金属など、従来から公知の材料を使用可能である。目的とする強度、硬さ、可撓性、重量、形状などにより使い分けることができる。一般的には、上質紙、コート紙、アート紙などの紙や、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック材料が使用される。
【0024】文字絵柄印刷層11は、上述したように隠蔽しようとする情報を、例えば数字、アルファベット、漢字などの文字、或いは絵柄で表現したものである。文字や絵柄の色は任意だが、隠蔽層14で十分に隠蔽できるように、目視可能な程度の淡色、例えば白色や水色などが好ましいが、これに限るものではない。文字絵柄印刷層11は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷方法などの印刷方法で設けられる。
【0025】同様にして、下地絵柄印刷層12も、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷方法などの印刷方法で設けられる。
【0026】隠蔽層14は、上述したように、樹脂母材16に有機低分子物質17が分散している感圧透明材料からなる薄膜であって、有機溶剤中に樹脂母材及び有機低分子物質を溶解した塗料を印刷法、コーティング法などで塗布し、乾燥させることで膜厚4〜30μm程度に設ける。
【0027】樹脂母材としては、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、セルロースアセテート系樹脂の単独、混合、或いは共重合物が用いられる。例えば、塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル系樹脂としては酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合物としては塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合樹脂が挙げられる。また例えば、アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0028】有機低分子物質としては、有機酸又はその誘導体が用いられる。有機酸の例としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などのモノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられる。飽和脂肪酸の具体例としては、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチル酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。不飽和脂肪酸の具体例としては、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、ソルビン酸、ステアロール酸などが挙げられる。脂肪酸ジカルボン酸の具体例としては、アピジン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸などが挙げられる。脂環式カルボン酸の具体例としては、シクロヘキサン−ジカルボン酸などが挙げられる。有機酸の誘導体の例としては、そのエステル、アミドなどが挙げられる。
【0029】有機低分子物質として、これらの有機酸又はその誘導体を単独で用いても良いが、これらの2つ以上の混合物を用いても良い。例えば、ベヘン酸、ステアリン酸やそのエステル、アミドなどを主成分として、それらのエステル類、アピジン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸などの脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル、アミドなど、シクロヘキサン−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸又はそのエステル、アミドを添加することが好ましい。
【0030】尚、隠蔽層14の擦り耐性を向上させるために、樹脂母材に対して三次元架橋をする硬化剤、架橋剤などを、その樹脂母材に対して、0.5〜10%重量部添加しても良い。
【0031】耐スクラッチ保護層15は、樹脂層であって、使用される樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線または電子線硬化樹脂を、単独或いは、混合して用いる。更に、擦り耐性を向上させるため、樹脂を架橋する硬化剤、ポリエチレンワッス、カルナバワックス、シリコンワックスなどのワックス類、或いは炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリカ、アルミナ、タルクなどの体質顔料、シリコ−ン油脂などの油脂類を透明性を損なわない範囲で添加することができる。この耐スクラッチ性保護層15に用いる樹脂は、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルコーター法などの塗布手段およびオフセット印刷法、フレキソ印刷法などの印刷手段により塗工する。
【0032】光散乱層としての光散乱(反射)膜9は、例えば、ガラスビーズや空気層、樹脂中空ビーズなど、光散乱性を有する材料を必要に応じて、樹脂に添加して設けられる。
【0033】光反射層としての光散乱(反射)層9は、光を効率良く反射する金属の膜を蒸着、スパッタ、印刷で形成することにより設けられる。光反射層の鏡面性を向上させるために、この金属の膜と基材10との間に、アンカー層又は平滑化層などを設けても良い。
【0034】感熱発色層9に用いる材料の1例として、ラクトン環を有するロイコ系染料と、かかるロイコ系染料を発色させるためのプロトンを放出する顕色剤を組み合わせた感熱発色材料が挙げられる。このタイプの感熱発色材料は、顕色剤の融点を制御することによって発色温度域を可変することが可能なので、特に有効である。
【0035】ロイコ染料としてはクリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、2−(2−クロルフェニルアミン)−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−t−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)−フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−N−メチルシクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチルペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を挙げることができる。
【0036】一方、フェノール性水酸基を有する顕色剤としては、4,4’−イソプロピリデンフェノール、ベンジル−p−ヒドロキシベンゾエート、4,4’−ジヒドロキシ−3,5’−ジアリジフェニルスルホン、メチル−ビス(ヒドロキシフェニル)アセテート、没食子酸エステル、p−フェニルフェノール等が挙げられる。
【0037】また、他の熱時発色する組み合わせとして、芳香族イソシアナート化合物とイミノ化合物の組み合わせが挙げられる。例えば、芳香族性イソシアナート化合物として、2,6−ジクロロフェニルイソシアナート、p−クロロフェニルイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,3ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアナート、1,4ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−エトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジエトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジブトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアナート、ナフタリン1,4−ジイソシアナート、ナフタリン1,5−ジイソシアナート、ナフタリン2,6−ジイソシアナート、ナフタリン2,7−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ベンゾフェノン−3,3’−ジイソシアナート、フルオレン−2,7−ジイソシアナート、アンスラキノン−2,6−ジイソシアナート、9−エチルカルバゾール−3,6−ジイソシアナート、ピレン−3,8−ジイソシアナート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアナート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアナート、4,4’,4”−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン、p−ジメチルアミノフェニルイソシアナート等が挙げられる。
【0038】一方のイミノ化合物としては、1個の>C=NHを有し、一般式Ф>C=NH(Фは隣接するC=Nと共役系を形成しうる芳香族性化合物残基)で表されるごとき化合物で、常温固体の無色または淡色の化合物である。主な例をあげると、3−イミノインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−5,6−ジクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メトキシイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト−イソインドリン−1−オン、3−イミノ−6−ニトロソインドリン−1−オン、3−イミノ−イソインドリン−1−スピロ−ジオキソラン、1,1−ジメトキシ−3−イミノ−イソインドリン、1,1−ジエトキシ−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−エトキシ−3−イミノイソインドリン、1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロインドリン、1,3−ジイミノ−6−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−シアノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,7−ジチア−5,5,6,6テトラヒドロイソインドリン、7−アミノ−2,3−ジメチル−5−オキソピロロ〔3、4b〕ピラジン、1−イミノナフタル酸イミド、1−イミノジフェニン酸イミド1−フェニルイミノ−3−イミノイソインドリン、1−(3’−クロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,4’,5−トリクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−シアノ−4’ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−クロロ−5’シアノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,6’−ジクロロ−4’ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジメトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジエトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4’−N,N−ジメチルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、3−イミノ−1−スルホ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−クロロ安息香酸イミド等がある。
【0039】
【実施例】以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0040】<実施例1>コート紙(三菱製紙製「特菱アートEX」)のコート層上にオフセット印刷法を用いて文字絵柄印刷インキで、「あたり」の文字を印刷した。この上層に樹脂母材中に分散された有機低分子物質から成る隠蔽層塗料をバーコート法を用いて乾燥温度130℃、塗布厚10μm塗布した。この上に耐スクラッチ性保護層塗料をバーコート法を用いて3μm塗布して、その後、波長205nmの紫外線を照射し耐スクラッチ製保護層を硬化させ隠蔽層付き印刷物を得た。
【0041】以下に、使用したインキ及び塗料の組成について示す。
【0042】
(文字絵柄印刷インキ)
UVオフセットインキ …100重量部 (色調:東洋インキ製造製ニュートラルCF0763)
【0043】
(隠蔽層塗料)
塩酢ビ共重合体樹脂 … 20重量部 ベヘン酸 … 10重量部 テトラヒドロフラン … 70重量部 トルエン … 20重量部
【0044】
(耐スクラッチ性保護層塗料)
ウレタンアクリレートモノマー … 60重量部 ラジカル重合開始剤 … 3重量部 メチルエチルケトン … 37重量部
【0045】実施例1の隠蔽層付き印刷物の隠蔽層は塗布・乾燥することで白濁状態を示し、文字絵柄印刷があることの判別はできず、硬貨で擦ることにより、擦られた感圧隠蔽層は透明化し「あたり」の文字が判別できた。更に、硬貨で擦った部分からはゴミの発生は認められず、硬貨自体の破損も認められなかった。
【0046】<実施例2>実施例2は188μmの白色ポリエチレンテレフタレート基材(東レ製「ルミラーE22」)を用いて、上記実施例1の文字絵柄印刷インキをUVオフセット法を用いて「当選されました」の文字を網点率40%で網点印刷した。更に文字絵柄印刷部分の周囲に下地絵柄印刷インキを用いて網点率30%でぬき印刷した。この上に樹脂母材中に分散された有機低分子物質から成る上記実施例1の隠蔽層塗料をバーコート法を用いて乾燥温度130℃、塗布厚15μm塗布した。この上に上記実施例1の耐スクラッチ性保護層塗料をバーコート法を用いて3μm塗布して、その後、波長205nmの紫外線を照射し耐スクラッチ性保護層を硬化させ隠蔽層付き印刷物を得た。
【0047】以下に、使用した下地絵柄印刷インキの組成について示す。
【0048】
<下地印刷インキ> UVオフセットインキ …100重量部 (色調:東洋インキ製造製ニュートラルCF0764)
【0049】実施例2の隠蔽層付き印刷物の隠蔽層は塗布・乾燥することで白濁状態を示し、文字絵柄印刷があることの判別はできず、硬貨で擦ることにより、擦られた感圧隠蔽層は透明化し「当選されました」の文字が判別できた。更に、硬貨で擦った部分からはゴミの発生は認められず、硬貨自体の破損も認められなかった。
【0050】<実施例3>基材として、188μm厚の白色ポリエチレンテレフタレート基材(東レ製「ルミラーE22」)を用い、この上にアルミを真空蒸着法にて50nmの厚みで設け、光反射層とした。さらに、この上に、感熱発色層塗料をワイヤバーコータにて乾燥厚み5μmに設け、感熱発色層とした。続いて、オフセット印刷にて白色の文字を設け、文字絵柄印刷層とした。さらにこの上に、隠滅層塗料をサンドミルにて十分にビヒクルに分散した塗料をワイヤバーコータにて乾燥厚み10μm厚に設け、隠滅層とした。
【0051】以下に、使用した塗料の組成について示す。
(感熱発色層塗料)
ロイコ染料 TG−21(日本化薬(株)製) … 1重量部 顕色剤 ビスフェノールA … 3重量部 アクリル樹脂 … 1重量部 トルエン … 20重量部
【0052】
(隠蔽層塗料)
ベヘン酸 … 3重量部 セバチン酸 … 1重量部 ビニルアルコール変性塩酢ビ樹脂 ソルバインA(日信化学(株)製) … 10重量部 トルエン … 86重量部
【0053】実施例3の隠蔽層付き印刷物は隠蔽層が白濁状態で、白色の文字印刷層が完全に隠蔽されていて、このままでは内部の情報を読み取ることは不可能であった。次に、上から爪で擦るとその部分だけ透明になり、下層の文字絵柄印刷層を確認することができた。更に、爪で擦った部分からはゴミの発生は認められず、爪自体の破損も認められなかった。
【0054】<比較例1>実施例3の隠蔽層付き印刷物において、感熱発色層を省いた構成のものを作成し、比較例1とした。このようにして作成された隠蔽層付き印刷物は隠蔽層が白濁状態で、白色の文字印刷層が完全に隠蔽されていて、このままでは内部の情報を読み取ることは不可能であった。次に、上から爪で擦るとその部分だけ透明になり、下層の白色文字層を確認することができた。更に、爪で擦った部分からはゴミの発生は認められず、爪自体の破損も認められなかった。
【0055】しかしながら、実施例3、比較例1をライターの火であぶってみると、前者は感熱発色層の発色により、黒色となって明らかに一度のぞき見をしたと判断できるが、後者は爪で擦って透明になった部分が元の通り白濁し、のぞき見の痕跡がつかめず、両者の差は明らかであった。
【0056】
【発明の効果】以上の結果、本発明には、以下の効果がある。
【0057】請求項1〜5の発明では、その隠蔽層は、圧力を加える前は分散された有機低分子材料と樹脂母材との間に空隙が存在し、この空隙により白濁化して見えるため、内部にある文字絵柄印刷層が表現する情報は隠蔽され、目視不可能であり、硬貨や爪等で擦ることによって感圧隠蔽層の空隙は消滅しその情報が目視化できる。この際、隠蔽層が削り落とされる、或いは、硬貨や爪そのものが摩滅、破損しないためゴミの発生を解消できる。
【0058】請求項5の発明では、さらに、文字絵柄印刷層が表現する情報を見た後に再白濁を試みても、感熱発色層が発色することで、その痕跡は明らかに残るため、隠蔽層付き印刷物としてのセキュリティ性も高いものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】隠蔽層付き印刷物の基本構成を示す断面図。
【図2】隠蔽層の機能を説明する断面図。
【図3】隠蔽層の透明部から現れた文字絵柄を示す図。
【図4】耐スクラッチ保護膜を設けた隠蔽層付き印刷物の断面図。
【図5】下地印刷層と耐スクラッチ保護膜とを設けた隠蔽層付き印刷物の断面図。
【図6】隠蔽層の透明部から現れた文字絵柄と下地絵柄を示す図。
【図7】光乱射(反射)層を設けた隠蔽層付き印刷物の断面図。
【図8】感熱発色層と光乱射(反射)層とを設けた隠蔽層付き印刷物の断面図。
【符号の説明】
8…光乱射(反射)層
9…感熱発色層
10…基材
11…文字絵柄印刷層
12…下地絵柄印刷層
13…印刷層
14…隠蔽層
15…耐スクラッチ性保護層
16…樹脂母材
17…有機低分子物質
18…空隙
19…白濁部
20…透明部

【特許請求の範囲】
【請求項1】基材と、基材上に設けられた印刷層と、印刷層の一部又は全部を隠蔽する隠蔽層とを備える隠蔽層付き印刷物であって、隠蔽層が、樹脂母材中に有機低分子物質を分散してなる感圧透明材料より構成されており、圧力を加える前は白色で圧力を加えると透明になることを特徴とする隠蔽層付き印刷物。
【請求項2】隠蔽層の上に耐スクラッチ性保護層を設けたことを特徴とする請求項1記載の隠蔽層付き印刷物。
【請求項3】隠蔽層によって隠蔽された印刷層の部分が、文字絵柄印刷層と、その周囲に色調が類似した下地絵柄印刷層とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の隠蔽層付き印刷物。
【請求項4】印刷層と基材との間に光反射層又は光散乱層を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の隠蔽層付き印刷物。
【請求項5】印刷層と基材との間、或いは印刷層と光反射層又は光散乱層との間に感熱発色層を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の隠蔽層付き印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−113860(P2001−113860A)
【公開日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−299321
【出願日】平成11年10月21日(1999.10.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】