説明

雄面ファスナー、面ファスナー及び雄面ファスナーの製造方法

【課題】この発明は、断面鉤状の雄形係合子を簡単且つ容易に複数設けることができる雄面ファスナー、面ファスナー及び雄面ファスナーの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】面ファスナー10の雄面ファスナー20は、基板21の表面に沿って形成された断面錨状の突条部21aを、該突条部21aの長手方向と直交する側方から見てスライス角度θ又はθに傾斜して、同一の厚さW又はXに向きを揃えてスライス加工する。次に、スライス加工してなる雄形係合子22Aの先端側頂部22bに、図示しないフック状の引き起こし具を係止する等して、雄形係合子22Aを、基板21の表面に連結された雄形係合子22Aの根元22aを可撓しながら、該雄形係合子22Aの先端側頂部22bが上向きとなる起立姿勢に引き起こす。これにより、断面錨状の雄形係合子22Aが一定の前後間隔に隔てて起立された雄面ファスナー20を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフラットケーブル、ワイヤーハーネス等の配索や固定に用いられる雄面ファスナー、面ファスナー及び雄面ファスナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に市販されている面ファスナーとしては、例えば基板の表面に鉤状の係合子が多数設けられた雄面ファスナーと、基板の表面にループ状の係合子が多数設けられた雌面ファスナーとからなり、雄面ファスナーの鉤状係合子と雌面ファスナーのループ状係合子とを互いに係止することによって、雄面ファスナーと雌面ファスナーを一体的に固定するものがある。
しかし、鉤状の係合子を設ける場合、例えば図示しない押し出し装置によって押し出し成形された基板の表面を鉤状の係合子が残るように削り取るか、基板の表面に鉤状の係合子を編み込む、或いは、植え込む等して設けなければならず、係合子を設ける、その作業に手間及び時間が掛かる。
【0003】
また、他の面ファスナーとしては、例えば基板の少なくとも一表面に、同一方向に湾曲した断面鉤形状を有する複数の連続突起状の係合片が一定の間隔で立設された雄型の成型面ファスナーが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1の成型面ファスナーは、一対の成型面ファスナーに形成された係合片を互いに係合するものであるが、基板の一表面に沿って連続して形成された係合片の全長には、前記雌面ファスナーに形成されたループ状の係合子を差し込むための隙間がなく、ループ状の係合子を引っ掛けることが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−277005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、断面鉤状の雄形係合子を簡単且つ容易に複数設けることができる雄面ファスナー、面ファスナー及び雄面ファスナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、基板の表面に対し鉤状の雄形係合子が複数設けられた雄面ファスナーであって、前記基板の表面に沿って連続して形成された断面鉤状の突条部が、該突条部の長手方向と直交する方向に側方から見て斜めとなる角度で複数にスライス加工され、前記突条部の全長を側方から見て斜めにスライス加工してなる複数の雄形係合子が、該雄形係合子の先端側を引き起こして上向きとなる起立姿勢に起立された雄面ファスナーであることを特徴とする。
これにより、基板の表面に対し断面鉤状の雄形係合子を簡単且つ容易に複数設けることができる。
【0007】
この発明の態様として、前記雄形係合子が、前記突条部を側方から見て斜めにスライス加工する際、前記基板に連結された雄形係合子の根元を残して、該基板から切り離されないようにスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、基板に連結したまま起立姿勢に引き起こすことができる。
【0008】
また、この発明の態様として、前記雄形係合子が、前記突条部を側方から見て同一のスライス角度及び厚さに向きを揃えてスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、側方から見て同一のスライス角度に傾斜し、且つ、同一の前後間隔に隔てて起立することができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記雄形係合子が、前記突条部を側方及び上方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、側方及び上方から見て同一のスライス角度に傾斜し、且つ、同一の前後間隔に隔てて起立することができる。
【0010】
また、この発明は、前記雄面ファスナーと、該雄面ファスナーと係合する雌面ファスナーとで構成される面ファスナーであって、前記雄面ファスナーが、前記断面鉤状の雄形係合子を基板の表面に複数形成して構成され、前記雌面ファスナーが、前記雄形係合子と係合するループ状の雌形係合子を基板の表面に複数形成して構成された面ファスナーであることを特徴とする。
これにより、基板の表面に対し同一断面形状の雄形係合子を簡単且つ容易に設けることができる。雄面ファスナーと雌面ファスナーとを互いに結合することができる。
【0011】
また、この発明は、基板の表面に対し鉤状の雄形係合子が複数設けられた雄面ファスナーの製造方法であって、前記基板の表面に沿って形成された断面鉤状の突条部を、該突条部の長手方向と直交する方向に側方から見て斜めとなる角度で複数にスライス加工した後、前記突条部の全長を側方から見て斜めにスライス加工してなる複数の雄形係合子を、該雄形係合子の先端側を引き起こして上向きとなる起立姿勢に起立する雄面ファスナーの製造方法であることを特徴とする。
これにより、基板の表面に対し断面鉤状の雄形係合子が複数設けられた面ファスナーを簡単且つ容易に製造することができる。
【0012】
この発明の態様として、前記雄形係合子を、前記突条部を側方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工する際、前記基板に連結された雄形係合子の根元を残して、該基板から切り離されないようにスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、基板に連結したまま起立姿勢に引き起こすことができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記雄形係合子は、前記突条部を側方から見て同一のスライス角度及び厚さに向きを揃えてスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、側方から見て同一のスライス角度に傾斜し、且つ、同一の前後間隔に隔てて起立することができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記雄形係合子は、前記突条部を側方及び上方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工して形成することができる。
これにより、雄形係合子を、側方及び上方から見て同一のスライス角度に傾斜し、且つ、同一の前後間隔に隔てて起立することができる。
なお、断面鉤状は、例えば錨状、茸状、楔状、J字状、T字状等の断面形状で構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、基板の表面に沿って形成された断面鉤状の突条部を側方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工した後、該突条部を側方から見て斜めにスライス加工してなる同一断面形状の雄形係合子を起立姿勢に引き起こすだけで、基板の表面に対し断面鉤状の雄形係合子を簡単且つ容易に複数設けることができる。また、雄形係合子を個々に形成、或いは、付設するような手間及び時間が省けるので、製造作業の省力化及び能率アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】面ファスナーの雄面ファスナー及び雌面ファスナーを示す斜視図。
【図2】基板の表面に形成された断面錨状の突条部を示す斜視図。
【図3】第1実施例の雄形係合子を加工する加工方法を示す説明図。
【図4】第1及び第2実施例の雄形係合子を所望するスライス角度で加工する加工方法を示す断面図。
【図5】第3実施例の雄形係合子を加工する加工方法を示す説明図。
【図6】第3実施例の雄形係合子と比較例の雄形係合子との比較状態を示す拡大側面図。
【図7】雄形係合子の他の断面形状を示す拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
図1は、面ファスナー10の雄面ファスナー20及び雌面ファスナー30を示す斜視図、図2は、基板21の表面に形成された断面錨状の突条部21aを示す斜視図、図3は、第1実施例の雄形係合子22Aを加工する加工方法を示す説明図、図4の側面図d1,d2は、雄形係合子22Aを所望するスライス角度θで加工する加工方法を示す断面図である。
【0018】
本実施例の面ファスナー10は、例えば車両のルーフパネルに対し、フラットケーブルやワイヤーハーネス、或いは、ルーフトリム等の取付け部品を固定するために用いられるものであり、その取付け部品側に固定される雄面ファスナー20と、ルーフパネル側に固定される雌面ファスナー30とで構成される。
【0019】
雄面ファスナー20は、柔軟性を有する合成樹脂(例えばPE、PP、PBT)によって一体的に成形されており、該合成樹脂で形成された基板21の表面に沿って断面錨状の雄形係合子22Aが一定の前後間隔に隔てて直列に多数配列されている。
また、雄形係合子22Aを直列に多数配列してなる1列分の突起群23が基板21の幅方向に対し等間隔に隔てて複数列配置されている。さらにまた、雄形係合子22Aを有する雄面ファスナー20の裏面は、例えば両面粘着テープ、接着剤等によって取付け部品側に固定される。
【0020】
雌面ファスナー30は、ポリエステルなどの合成樹脂によって一体的に形成され、該合成樹脂で形成された基板31の表面全体に、前記雄形係合子22Aに対する引っ掛けが許容される大きさ及び形状に形成された合成繊維からなるループ状の雌形係合子32が複数埋め込まれるか織り込まれている。
また、雌形係合子32を有する雌面ファスナー30の裏面は、例えば両面粘着テープ、接着剤等によってルーフパネル側に固定される。
なお、合成樹脂製の基板31に代えて、例えば布地、不織布、織物等で構成される基布を用いてもよい。
【0021】
次に、前記雄形係合子22Aを有する雄面ファスナー20の製造方法を説明する。
先ず、図示しない押し出し装置によって断面板状の基板21を押し出し方向に連続して押し出し成形しながら、該基板21の表面に沿って断面錨状の突条部21aを押し出し方向に連続して押し出し成形する(図2参照)。
これにより、基板21の表面に沿って断面錨状の突条部21aが押し出し方向に向けて連続して直線的に押し出し成形されるとともに、該突条部21aが基板21の幅方向に対し等間隔に隔てて押し出し方向と平行して複数本並列に押し出し成形される(図2のa部参照)。
【0022】
基板21は、並列に配置された2本の導体21bの被覆が許容される厚み及び横幅に形成されている。また、突条部21aは、該基板21に埋め込まれた2本の導体21bと平行して並列に3本配置されている。
なお、一部の突条部21aは、基板21に埋め込まれた導体21bの上方に配置しているが、突条部21aを、導体21bに対し幅方向に変位した位置に配置して、導体21bをなるべく避けて配置してもよい。
【0023】
次に、基板21の表面に形成された突条部21aの全長を、該突条部21aの長手方向と直交する側方から見ておよそ45度のスライス角度θに傾斜して、同一の厚さW1に向きを揃えて複数にスライス加工する(図4の側面図d1参照)。
また、雄形係合子22Aの根元22aに達する位置までスライス加工する。これにより、雄形係合子22Aの根元22aを、基板21から切り離されないように切り残すことができる。
これにより、雄形係合子22Aを同一線上に直列に複数配列してなる1列分の突起群23が形成される(図3の平面図a参照)。
【0024】
さらに、同一方向に向けて斜めに配列された雄形係合子22Aの先端側頂部22bに、図示しないフック状の引き起こし具を係止する等して、雄形係合子22Aを、基板21の表面に連結された雄形係合子22Aの根元22aを可撓しながら、該雄形係合子22Aを先端側頂部22bが上向きとなる起立姿勢に引き起こす(図3の側面図b及び図4の側面図d1に示す矢印参照)。
【0025】
これにより、雄面ファスナー20の基板21の表面に対し断面錨状の雄形係合子22Aを簡単且つ容易に複数設けることができる(図3の側面図c及び図4の側面図d2参照)。
なお、雄形係合子22Aを引き起こす際に可撓された根元22aは、側方から見て弧状に可撓変形されている(図3の側面図cに示すb部参照)。
【0026】
また、雄形係合子22Aが複数設けられた雄面ファスナー20を簡単且つ容易に製造することができる。さらに、雄形係合子22Aを個々に形成、或いは、付設するような手間及び時間が省けるので、雄面ファスナー20を製造する製造作業の省力化及び能率アップを図ることができる。
【0027】
実施例では、雄形係合子22Aを、導体21bが埋め込まれた基板21の表面に形成しているが、導体21bが埋め込まれていない基板21の表面に形成してもよい。
【0028】
図4の側面図d1,d2は、第1実施例の雄形係合子22Aをおよそ45度のスライス角度θで加工する加工方法を示す説明図である。
第1実施例の雄形係合子22Aを加工する場合、図示しないスライス刃を有するスライス加工装置を用いて、図2に示す基板21の表面に形成された突条部21aの全長を、該突条部21aの長手方向と直交する側方から見ておよそ45度のスライス角度θに傾斜して同一の厚さWに向きを揃えて複数にスライス加工する(図4の側面図d1参照)。
これにより、突条部21aの全長に、約0.71mmの厚さWに切り分けられた雄形係合子22Aが斜めに連続して複数形成される。また、雄形係合子22Aを同一線上に直列に複数配列してなる突起群23が形成される。
【0029】
また、突条部21aをスライス加工する際、雄形係合子22Aの根元22a(基部)に達する位置までスライス加工する。
これにより、雄形係合子22Aの根元22aを、基板21の表面に対し約1mmの切残し幅Wだけ残して、基板21から切り離されないように切り残すことができる(図4の側面図d1参照)。
【0030】
また、雄形係合子22Aは、突条部21aの下流側頂部22bから上流側根元22a(図4の側面図d1に示す側方から見て右斜め上方から左斜め下方)に向けておよそ45度のスライス角度θに傾斜されている。
【0031】
次に、雄形係合子22Aの先端側頂部22bに、図示しないフック状の引き起こし具を係止する等して、雄形係合子22Aを、基板21の表面に連結された雄形係合子22Aの根元22aを可撓しながら、雄形係合子22Aの先端側頂部22bが上向きとなる起立姿勢に同一方向に向けて引き起こす(図4の側面図d1に示す矢印参照)。
これにより、雄形係合子22Aが一定の前後間隔、つまり、約0.29mmの間隔Wに隔てて起立される(図4の側面図d2参照)。その雄形係合子22Aの厚さWと間隔Wは、およそ7:3の割合となる。
【0032】
また、突条部21aの平行する上辺(頂部)と底辺(根元)との間を、スライス角度θに傾斜して平行にスライス加工するので、突条部21aをスライス加工してなる雄形係合子22Aの先端もスライス角度θと同一の角度(およそ45度)に形成される。
【0033】
図4の側面図e1,e2は、第2実施例の雄形係合子22Bをおよそ30度のスライス角度θで加工する加工方法を示す説明図である。
第2実施例の雄形係合子22Bを加工する場合、図示しないスライス刃を有するスライス加工装置を用いて、図2に示す基板21の表面に形成された突条部21aの全長を、該突条部21aの長手方向と直交する側方から見ておよそ30度のスライス角度θに傾斜して同一の厚さXに向きを揃えてスライス加工する(図4の側面図e1参照)。
これにより、突条部21aの全長に、約0.5mmの厚さXに切り分けられた雄形係合子22Bが斜めに連続して複数形成される。また、雄形係合子22Bを同一線上に直列に複数配列してなる突起群23が形成される。
【0034】
また、突条部21aをスライス加工する際、前記実施例と同様に、雄形係合子22Bの根元22aに達する位置までスライス加工する。
これにより、雄形係合子22Bの根元22aを、基板21の表面に対し約1mmの切残し幅Xだけ残して、基板21から切り離されないように切り残すことができる(図4の側面図e1参照)。
【0035】
また、雄形係合子22Bは、突条部21aの下流側頂部22bから上流側根元22a(図4の側面図e1に示す側方から見て右斜め上方から左斜め下方)に向けておよそ30度のスライス角度θに傾斜されている。
【0036】
次に、雄形係合子22Bの先端側頂部22bに、図示しないフック状の引き起こし具を係止する等して、雄形係合子22Bを、基板21の表面に連結された雄形係合子22Bの根元22aを可撓しながら、雄形係合子22Bの先端側頂部22bが上向きとなる起立姿勢に同一方向に向けて引き起こす(図4の側面図e1に示す矢印参照)。
これにより、雄形係合子22Bが一定の前後間隔、つまり、約0.5mmの間隔Xに隔てて起立される(図4の側面図e2参照)。その雄形係合子22Bの厚さXと間隔Xはおよそ1:1の割合となる。
【0037】
また、図4の側面図d1に示す突起群23の上辺(頂部)と底辺(根元)が平行であるため、突起群23の上辺とスライス加工の斜面とがなす角度θと、底辺と斜面とがなす角度θが一致する。
【0038】
これにより、雄形係合子22Aの先端側頂部22bを角度θとすることができる(図4の側面図d2参照)。
【0039】
同様に、図4の側面図e1に示す突起群23の上辺(頂部)と底辺(根元)が平行であるため、突起群23の上辺とスライス加工の斜面とがなす角度θと、底辺と斜面とがなす角度θが一致する。
【0040】
これにより、雄形係合子22Bの先端側頂部22bを角度θとすることができる(図4の側面図e2参照)。
【0041】
つまり、突条部21aを、およそ45度のスライス角度θでスライス加工するよりも、およそ30度のスライス角度θでスライス加工した方が、θ>θなので、雄形係合子22Bの先端側頂部22bが鋭角である。
スライス角度θで加工された雄形係合子22Aの先端角度θ(図4の側面図d2参照)に比べて、スライス角度θで加工された雄形係合子22Bの先端角度θ(図4の側面図e2参照)がより鋭角となる。
【0042】
また、スライス角度θで加工された雄形係合子22Aを起立した際の間隔Wよりも、スライス角度θで加工された雄形係合子22Bを起立した際の間隔Xの方が広くなる。
【0043】
これにより、雄面ファスナー20の雄形係合子22Bに、雌面ファスナー30の雌形係合子32が引っ掛かりやすくなるので、雄面ファスナー20と雌面ファスナー30とを確実に結合することができる。
【0044】
また、突条部21aの全長に渡って複数に、該突条部21aの長手方向と直交して幅方向(縦方向)にスライス加工しても、前後に配列された雄形係合子22A又は22Bの間に隙間が形成されることはない。つまり、雌面ファスナー30に形成された雌形係合子32が引っ掛かりにくいので、雄面ファスナー20として使用することが不可能である。
【0045】
一方、本実施例のように、基板21の表面に形成された突条部21aの全長を側方から見て同一のスライス角度θ又はθに傾斜して、同一の厚さW又はXに向きを揃えてスライス加工した後、該突条部21aの全長を斜めにスライス加工してなる雄形係合子22A,22Bを起立姿勢に引き起こせば、雄形係合子22A,22Bが一定の前後間隔W又はXに隔てて起立される。
これにより、雌面ファスナー30の雌形係合子32が引っ掛かりやすく、雄面ファスナー20として使用することができる。
【0046】
図5の平面図f、側面図g、拡大平面図hは、第3実施例の雄形係合子22Cを加工する加工方法を示す説明図、図6の拡大平面図i,jは、第3実施例の雄形係合子22Cと、比較例の雄形係合子100との比較状態を示す拡大側面図である。
【0047】
第3実施例の雄形係合子22Cを加工する場合、図示しないスライス刃を有するスライス加工装置を用いて、図2に示す基板21の表面に形成された突条部21aの全長を、図5の側面図gに示すように、該突条部21aの長手方向と直交する側方から見ておよそ45度のスライス角度θに傾斜してスライス加工する。
且つ、図5の平面図fに示すように、突条部21aの長手方向と直交する上方から見ておよそ50度のスライス角度θに傾斜して、同一の厚さWに向きを揃えてスライス加工する。
【0048】
これにより、突条部21aの全長に、同一の厚さWに切り分けられた雄形係合子22Cが斜めに連続して複数形成される。また、雄形係合子22Cを同一線上に直列に複数配列してなる突起群23が形成される(図5の平面図f及び側面図g参照)。
【0049】
また、突条部21aをスライス加工する際、前記第1及び第2実施例と同様に、雄形係合子22Cの根元22aに達する位置までスライス加工する。
これにより、雄形係合子22Cの根元22aを、基板21の表面に対し約1mmの切残し幅Wだけ残して、基板21から切り離されないように切り残すことができる。
次に、雄形係合子22Cの先端側頂部22bに、図示しないフック状の引き起こし具を係止する等して、雄形係合子22Cを、基板21の表面に連結された雄形係合子22Cの根元22aを可撓しながら、雄形係合子22Cの先端側頂部22bが上向きとなる起立姿勢に同一方向に向けて引き起こす(図5の側面図gに示す矢印参照)。
これにより、雄形係合子22Cが、該雄形係合子22Cの右斜め上方角部24aが右斜め上方に位置し、該雄形係合子22Cの左斜め下方角部24bが左斜め上方に位置する上方から見て斜め姿勢に引き起こされる(図5の側面図h及び図6の拡大平面図i参照)。
【0050】
起立姿勢に引き起こされた雄形係合子22Cは、図6のiに示すように、突起群23の右斜め上縁部から左斜め下縁部(図6の拡大平面図iに示す上方から見て左斜め上方から右斜め下方)に向けておよそ50度のスライス角度θに傾斜されている。
【0051】
次に、図6の拡大平面図iに示す上方から見て斜めにスライス加工してなる雄形係合子22Cと、図6の拡大平面図jに示す上方から見て幅方向と平行してスライス加工してなる雄形係合子100との比較方法を説明する。
【0052】
第3実施例の側方及び上方から見て斜めにスライス加工してなる雌形係合子22Cの角部24a,24bは、上方から見ておよそ50度の鋭角(図6の拡大平面図i参照)に形成されているが、側方から見て斜めにスライス加工してなる雄形係合子100の角部100a,100bは、上方から見ておよそ90度(図6の拡大平面図j参照)に形成されている。
【0053】
すなわち、雄形係合子100の角部100a,100bに比べて、雄形係合子22Cの角部24a,24bが鋭角(図6の拡大平面図i参照)となる。
これにより、スライス角度θ,θで加工された雄形係合子22Cを雄面ファスナー20の基板21上に複数立設すれば、図1に示す雄面ファスナー20の雄形係合子22Cに対し、雌面ファスナー30の雌形係合子32が絡み付きやすく、或いは、引っ掛かりやすくなる。さらに、第1及び第2実施例の雄形係合子22A,22Bを設けるよりも雄面ファスナー20の結合力が向上する。
【0054】
また、雄形係合子22Cと雄形係合子100との水平断面積が同一であっても、側方及び上方から見て斜めにスライス加工してなる雄形係合子22Cの根元22aの水平断面積の幅Yの方が狭くなる。
【0055】
つまり、上方から見て幅方向と平行してスライス加工してなる雄形係合子100の根元22aの水平断面積の幅Yよりも、上方から見て斜めにスライス加工してなる雄形係合子22Cの根元22aの水平断面積の幅Yの方が薄くなる。
【0056】
これにより、側方及び上方から見て斜めにスライス加工してなる雄形係合子22Cを起立姿勢に引き起こす際、雄形係合子22Cの根元22aに付加される応力集中が緩和される。また、雄形係合子22Cを引き起こす際に付加される抵抗が小さく、雄形係合子22Cの引き起こしが簡単且つ容易に行える。
【0057】
また、雄形係合子22A,22B,22Cに比べて、雄形係合子22Cが同一強度で、起立姿勢に引き起こす際の引き起こし性と、起立姿勢を維持する際の癖付け性とが向上すると考えられる。
【0058】
前記雄形係合子22A,22B,22Cの他の断面形状として、図7の拡大端面図kに示す断面茸状や、同図の拡大端面図lに示す断面楔状に形成するか、或いは、同図の拡大端面図mに示すT字状や、同図の拡大端面図nに示す上下逆J字状に形成する等してもよい。
【0059】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の断面鉤状は、実施例の断面錨状に対応し、
以下同様に、
雄形係合子は、雄形係合子22A,22B,22Cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0060】
前記スライス角度θ,θを、例えば45度〜30度の間で所望するスライス角度に変更するか、或いは、30度以下の所望する角度(例えば20度、15度、10度等)に変更してもよい。
また、スライス角度θを、例えば50度以下、或いは、50度以上の所望するスライス角度に変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の雄面ファスナー、面ファスナー及び雄面ファスナーの製造方法は、例えばフラットケーブル、ワイヤーハーネス等の配索や固定する際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…面ファスナー
20…雄面ファスナー
21…基板
21a…突条部
22A,22B,22C,100…雄形係合子
23…突起群
30…雌面ファスナー
31…基板
32…雌形係合子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に対し鉤状の雄形係合子が複数設けられた雄面ファスナーであって、
前記基板の表面に沿って連続して形成された断面鉤状の突条部が、該突条部の長手方向と直交する側方から見て斜めとなる角度で複数にスライス加工され、
前記突条部の全長を側方から見て斜めにスライス加工してなる複数の雄形係合子が、該雄形係合子の先端側を引き起こして上向きとなる起立姿勢に起立された
雄面ファスナー。
【請求項2】
前記雄形係合子が、前記突条部を側方から見て斜めにスライス加工する際、前記基板に連結された雄形係合子の根元を残して、該基板から切り離されないようにスライス加工して形成された
請求項1又は2に記載の雄面ファスナー。
【請求項3】
前記雄形係合子が、前記突条部を側方から見て同一のスライス角度及び厚さに向きを揃えてスライス加工して形成された
請求項1に記載の雄面ファスナー。
【請求項4】
前記雄形係合子が、前記突条部を側方及び上方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工して形成された
請求項1〜3のいずれか一つに記載の雄面ファスナー。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか一つに記載の雄面ファスナーと、該雄面ファスナーと係合する雌面ファスナーとで構成される面ファスナーであって、
前記雄面ファスナーが、前記断面鉤状の雄形係合子を基板の表面に複数形成して構成され、
前記雌面ファスナーが、前記雄形係合子と係合するループ状の雌形係合子を基板の表面に複数形成して構成された
面ファスナー。
【請求項6】
基板の表面に対し鉤状の雄形係合子が複数設けられた雄面ファスナーの製造方法であって、
前記基板の表面に沿って形成された断面鉤状の突条部を、該突条部の長手方向と直交する側方から見て斜めとなる角度で複数にスライス加工した後、
前記突条部の全長を側方から見て斜めにスライス加工してなる複数の雄形係合子を、該雄形係合子の先端側を引き起こして上向きとなる起立姿勢に起立する
雄面ファスナーの製造方法。
【請求項7】
前記雄形係合子を、前記突条部を側方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工する際、前記基板に連結された雄形係合子の根元を残して、該基板から切り離されないようにスライス加工して形成することを特徴とする
請求項6に記載の雄面ファスナーの製造方法。
【請求項8】
前記雄形係合子は、前記突条部を側方から見て同一のスライス角度及び厚さに向きを揃えてスライス加工して形成することを特徴とする
請求項6又は7に記載の雄面ファスナーの製造方法。
【請求項9】
前記雄形係合子は、前記突条部を側方及び上方から見て斜めに向きを揃えてスライス加工して形成することを特徴とする
請求項6〜8のいずれか一つに記載の雄面ファスナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5510(P2012−5510A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141334(P2010−141334)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】