説明

集中分岐型ネットワークシステム及びジョイントコネクタ

【課題】集中分岐点での波形歪みを分散させることにより、データ送信の精度を向上させることのできる集中分岐型ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】伝送路2に接続されたジョイントコネクタ3a,3bを有し、このジョイントコネクタ3a,3bから複数に分岐した分岐路2bに、ノード1が接続された集中分岐型ネットワークシステムに関する発明であり、ジョイントコネクタ3a,3bは、このジョイントコネクタ3a,3bに接続される複数個のノード1を接続するための複数個の接続端子T1〜T8を有し、互いに隣接する接続端子T1〜T8間に例えば導体11等の特性インピーダンスを持つ回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中分岐型ネットワークシステム及びこのネットワークシステムで用いられるジョイントコネクタに係り、特に、ジョイントコネクタ部分での波形歪みを低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるネットワークシステムでは、図6に示す如くの集中分岐型ネットワークシステムが採用されている。同図に示すように、このネットワークシステムは、複数のノード101(101-1〜101-8)が伝送路102を介して接続されるように構成されている。即ち、伝送路102は、幹線路102aと、該幹線路102aの2つの端部の集中分岐点P11,P12から分岐して配置される複数の分岐路102bを備えており、各分岐路102bにそれぞれノード101が接続されている。
【0003】
そして、各ノード101は、伝送路102を介してデータの送受信を行うことにより、各ノード101間でのデータの授受が行われ、車両に搭載される各種電装機器の総括的な制御を行うことができる(例えば、特開2000−151153号公報参照)。
【0004】
このような集中分岐型ネットワークシステムでは、あるノード101から他のノード101へデータを送信する際に、集中分岐点P11,P12にてインピーダンスの不整合に起因して送信信号に波形歪みが発生してしまう。
【0005】
例えば、図6に示すノード101-1から他のノード101-2〜101-8にデータを送信する際には、ノード101-1と集中分岐点P11との間の分岐路102bの特性インピーダンスと、集中分岐点P11より先の分岐路102b及び幹線路102aを合計した特性インピーダンスとが大きく相違するため、この集中分岐点P11にて送信信号に大きな波形歪みが発生するという問題が生じる。
【0006】
図7は、ノード101-1より送信された信号の電圧波形を示す特性図であり、符号R1に示す部分が集中分岐点P11における歪みを示し、符号R2に示す部分が集中分岐点P12における歪みを示しており、データにエラーが生じる程度の大きな歪みが発生していることが理解される。
【特許文献1】特開2000−151153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来における集中分岐型ネットワークシステムでは、集中分岐点P11,P12にて複数個の分岐路102bに分岐する構成となっているので、この部分で波形歪みが発生してしまい、データの送受信の精度が低下していまうという問題があった。
【0008】
この発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、集中分岐点での波形歪みを分散させることにより、データ送信の精度を向上させることのできる集中分岐型ネットワークシステム及びこれに用いるジョイントコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の集中分岐型ネットワークシステムは、伝送路に接続されたジョイントコネクタを有し、該ジョイントコネクタから複数に分岐した分岐路に、ノードが接続された集中分岐型ネットワークシステムにおいて、前記ジョイントコネクタは、該ジョイントコネクタに接続される複数個のノードを接続するための複数個の接続端子を有し、互いに隣接する前記接続端子間に特性インピーダンスを持つ回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記特性インピーダンスを持つ回路は、導体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記特性インピーダンスを持つ回路は、前記伝送路と等価的に構成されたLC回路であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ノードは、車両に搭載される電装機器であり、前記伝送路は、車両用ネットワーク用の伝送路であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のジョイントコネクタは、伝送路の集中分岐点に設けられ、複数のノードへの分岐路を形成するジョイントコネクタにおいて、前記複数個のノードを接続するための複数個の接続端子を有し、互いに隣接する前記接続端子間に特性インピーダンスを持つ回路を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記特性インピーダンスを持つ回路は、導体であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記特性インピーダンスを持つ回路は、前記伝送路と等価的に構成されたLC回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1に記載の集中分岐型ネットワークシステムでは、ジョイントコネクタの各接続端子間に、特性インピーダンスを持つ回路を設ける構成としたので、送信ノードから信号が送信された際に、伝送路の分岐点で大きな歪みが生じることを回避することができ、送信エラーの発生を著しく低減させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、特性インピーダンスを持つ回路として、ある程度の長さを有する導体を用いるので、上述した請求項1と同様に、伝送路の分岐点での歪みの発生を抑制することができ、データ通信の信頼性を向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、特性インピーダンスを持つ回路として、コイル及びコンデンサからなるLC回路を用いるので、上述した請求項1と同様に、伝送路の分岐点での歪みの発生を抑制することができ、データ通信の信頼性を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、車内通信システムとして本発明の集中分岐型ネットワークシステムを用いるので、車内通信の信頼性を著しく向上させることができる。
【0020】
請求項5に記載のジョイントコネクタでは、複数の接続端子間に特性インピーダンスを持つ回路を設けたので、該ジョイントコネクタに接続される複数のノードが一点に集中して接続されないので、送信ノードより送信される信号に生じる波形歪みを抑制することができ、送信エラーの発生を著しく低減させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、特性インピーダンスを持つ回路として、ある程度の長さを有する導体を用いるので、上述した請求項5と同様に、伝送路の分岐点での歪みの発生を抑制することができ、データ通信の信頼性を向上させることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、特性インピーダンスを持つ回路として、コイル及びコンデンサからなるLC回路を用いるので、上述した請求項5と同様に、伝送路の分岐点での歪みの発生を抑制することができ、データ通信の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、このネットワークシステムは、複数個(この例では、8個)のノード1(1-1〜1-8)と、各ノード1を連結するための伝送路2を備えている。ノード1は、例えば、車両に搭載される各ECU(Electronic Control Unit)である。
【0024】
伝送路2は、幹線路2aと、該幹線路2aの両端に設けられたジョイントコネクタ3a,3bと、各ジョイントコネクタ(J/C)3a,3bに接続された複数(この例では4つ)の分岐路2bを有している。そして、各分岐路2bにそれぞれノード1が接続されている。
【0025】
ジョイントコネクタ3a,3bは、4つの接続端子T1〜T4及びT5〜T8を備えており、該接続端子T1〜T4、T5〜T8は、分岐路2bを介して各ノード1(1-1〜1-4或いは1-5〜1-8)に接続されている。また、ジョイントコネクタ3a,3bの互いに隣接する端子T1〜T4、T5〜T8間には、導体(特性インピーダンスを有する回路)11が設けられている。導体11は、例えば基板上に蛇行状に形成された距離X[m]のパターンである。
【0026】
すると、図1に示したネットワークシステムは、図2に示す如くの等価回路で示すことができる。即ち、ノード1-1〜ノード1-4、ノード1-5〜1-8は、それぞれ距離X[m]の導体11を介して接続されていることになり、各ノード1間には導体11が有する所定の特性インピーダンスが存在することになる。
【0027】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムの動作について説明する。いま、ノード1-1よりデータが送信される場合には、送信信号はジョイントコネクタ3a内の分岐点P1にてインピーダンスの不整合が生じるので、波形が歪むことになる。同様に、分岐点P2,P3、及びジョイントコネクタ3b内の分岐点P4〜P6においても波形が歪むことになる。なお、図1,2のノード1-1に示すTxはノード1-1が送信部であることを示す。
【0028】
この際、各分岐点P1〜P6では、従来例の図6に示した集中分岐点P11,P12のように、特性インピーダンスが極端に変化するものではないので、歪みの大きさは著しく低減されることになる。即ち、図3は、ノード1-1より送信された送信信号の波形を示す特性図であり、同図の符号R3に示す領域から理解されるように、各分岐点P1〜P6にて分散して波形歪みが発生しているものの、波形歪みの大きさは従来と比較して著しく低減されており、送信データにエラーが発生することを防止することができる。
【0029】
このようにして、本実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムでは、幹線路2aの両端にジョイントコネクタ3a,3bを設け、該ジョイントコネクタ3a,3b内の各端子T1〜T4,或いはT5〜T8間に所定の特性インピーダンスを有する導体11を設ける構成としたので、送信信号に生じる歪みが一点に集中せず分散化されるので、極端な波形歪みの発生を抑制することができ、送信信号に生じるデータエラーの発生を防止することができ、データ伝送の信頼性を向上させることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムは、前述した第1の実施形態と比較して、ジョイントコネクタの構成が相違するのみである。図4は、第2の実施形態に係るジョイントコネクタ13a,13b、及び該ジョイントコネクタ13a,13bに接続される各ノード1-1〜1-8の構成を示すブロック図である。
【0031】
同図に示すように、ジョイントコネクタ13a,13b内の、互いに隣接する端子T1〜T4間、或いはT5〜T8間には、伝送路2の分岐路2bと特性インピーダンスが等価になる等価回路14が設けられている。また、図5は、ジョイントコネクタ13a内の詳細な構成を示す回路図であり、図示のように、等価回路14は、2つのコイル及びコンデンサによるインピーダンス回路(LC回路)から構成されている。従って、ジョイントコネクタ13aの各端子T1〜T4の間には、図2に示したバス型回路と等価な回路が形成されるので、前述した第1の実施形態と同様に、波形歪みを著しく低減することができるようになり、信頼性の高い通信が可能になる。
【0032】
以上、本発明の集中分岐型ネットワークシステム及びジョイントコネクタを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0033】
例えば、上記した実施形態では、伝送路2中に2つのジョイントコネクタを備える例を挙げて説明したが、ジョイントコネクタの数は2個に限定されるものではなく、1個或いは3個以上でも良い。
【0034】
また、上記した実施形態では、ネットワークシステムが用いられる例として、車両用の通信システムを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の集中分岐型ネットワークシステムについても適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
各ノード間でのデータ通信の信頼性を向上させる上で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したネットワークシステムの、ジョイントコネクタ内の等価回路を示す説明図である。
【図3】送信信号に生じる波形歪みを示す特性図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る集中分岐型ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示したネットワークシステムの、ジョイントコネクタ内の等価回路を示す説明図である。
【図6】従来における集中分岐型ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】従来における集中分岐型ネットワークシステムを用いた際に、送信信号に生じる波形歪みを示す特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1(1-1〜1-8) ノード
2 伝送路
2a 幹線路
2b 分岐路
3a,3b ジョイントコネクタ
P1,P2 集中分岐点
T1〜T8 接続端子
11 導体
13a,13b ジョイントコネクタ
14 等価回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路に接続されたジョイントコネクタを有し、該ジョイントコネクタから複数に分岐した分岐路に、ノードが接続された集中分岐型ネットワークシステムにおいて、
前記ジョイントコネクタは、該ジョイントコネクタに接続される複数個のノードを接続するための複数個の接続端子を有し、互いに隣接する前記接続端子間に特性インピーダンスを持つ回路を備えたことを特徴とする集中分岐型ネットワークシステム。
【請求項2】
前記特性インピーダンスを持つ回路は、導体であることを特徴とする請求項1に記載の集中分岐型ネットワークシステム。
【請求項3】
前記特性インピーダンスを持つ回路は、前記伝送路と等価的に構成されたLC回路であることを特徴とする請求項1に記載の集中分岐型ネットワークシステム。
【請求項4】
前記ノードは、車両に搭載される電装機器であり、前記伝送路は、車両用ネットワーク用の伝送路であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の集中分岐型ネットワークシステム。
【請求項5】
伝送路の集中分岐点に設けられ、複数のノードへの分岐路を形成するジョイントコネクタにおいて、
前記複数個のノードを接続するための複数個の接続端子を有し、互いに隣接する前記接続端子間に特性インピーダンスを持つ回路を備えたことを特徴とするジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記特性インピーダンスを持つ回路は、導体であることを特徴とする請求項5に記載のジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記特性インピーダンスを持つ回路は、前記伝送路と等価的に構成されたLC回路であることを特徴とする請求項5に記載のジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−12592(P2006−12592A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187878(P2004−187878)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】