説明

集光型太陽光発電ユニット及び装置

【課題】 樹脂製レンズ及び金属製ケースを用いながらも、集光効率の低下や密閉性の劣化がし難い集光型太陽光発電ユニット及び装置を提供する。
【解決手段】 保持部材5にホモジナイザー3及び太陽光発電素子4が組み付けられた後、ケース6の上端部の開口を塞ぐようにフレネルレンズ2が組み付けられ、ケース6の下端部の開口を塞ぐように保持部材5が組み付けられることにより、内部に太陽光発電素子4が収容された1つの集光型太陽光発電ユニット1を製作することができる。1つのケース6ごとに1つのフレネルレンズ2を組み付けてユニット化することにより、樹脂製のフレネルレンズ2と金属製のケース6との熱膨張差によってフレネルレンズ2に反りや歪みが生じたとしても、他の集光型太陽光発電ユニット1に影響が及ぶことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を集光する樹脂製レンズと、該樹脂製レンズにより集光された光を受光して発電する太陽光発電素子と、両端部に開口を有し、内部に空間が形成される枠状の金属製ケースと、前記太陽光発電素子を保持する保持部材と、を備える集光型太陽光発電ユニット、及び複数個の集光型太陽光発電ユニットを配置する集光型太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集光型太陽光発電装置は、太陽光を集光するための複数のフレネルレンズと、その複数のフレネルレンズを太陽に対向させるように傾斜させて用いるケースとを備え、そのケースの内部には、フレネルレンズにより各々集光された光を各々受光して発電する複数の太陽電池セルを備えたものが商品化されている。この集光型太陽光発電装置は、ケースの上部材として複数のフレネルレンズを用いることにより、ケース内に複数の太陽電池セルを収容するための空間を作り出している。また、ケース内の空間の密閉性を高くするため、各々の樹脂製のフレネルレンズを接着剤で互いに接合したり、接合した複数個の樹脂製のフレネルレンズを金属製のケースの開口部に固定部材で固定したりすることで、ケース内にゴミや水分が侵入し難くなるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。なお、フレネルレンズとしては、平板または球面のいずれかに形成されるものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−4661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された集光型太陽光発電装置では、フレネルレンズが四角形状で形成されているが、各々の樹脂製のフレネルレンズを接着剤で互いに接合したり、接合した複数個の樹脂製のフレネルレンズを金属製のケースの開口部に固定部材で固定したりすることにより、フレネルレンズの外周部の4辺がいずれも接着剤や固定部材で拘束された状態である。また、太陽光による発電時には、太陽電池セルの発熱によって蓄熱が起こるため、樹脂製のフレネルレンズが熱膨張するが、四角形状の2辺間と対角方向とでは熱膨張量が異なる。また、太陽光による発電時には、金属製のケースも熱膨張するが、樹脂製のフレネルレンズに比べて熱膨張量が小さい。すなわち、複数の樹脂製のフレネルレンズが金属製のケースの開口部に拘束された状態で、樹脂製のフレネルレンズが熱膨張すると、樹脂製のフレネルレンズに圧縮応力がかかって弾性変形し、反りや歪みが生じてしまう。このため、集光型太陽光発電装置では、太陽電池セル間の距離が変化したり、太陽光の集光位置にずれが生じたりして、集光効率が低下する恐れがあった。
【0005】
また、昼間の発電時と夜間の発電停止時とでは、集光型太陽光発電装置の使用環境温度が変化するため、温度差の熱サイクリックで樹脂製のフレネルレンズと金属製のケースとの熱膨張差により、局部的な応力が接着剤での各々のフレネルレンズの接合部分にかかり、ケース内の空間の密閉性が劣化する恐れがあった。特に、ケースの開口部を長方形状で形成することや、1つのケースに多数のフレネルレンズを拘束するほど、樹脂製のフレネルレンズと金属製のケースとの熱膨張差の影響が大きくなり、集光効率の低下や密閉性の劣化がし易くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製レンズ及び金属製ケースを用いながらも、集光効率の低下や密閉性の劣化がし難い集光型太陽光発電ユニット及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、太陽光を集光する樹脂製レンズと、該樹脂製レンズにより集光された光を受光して発電する太陽光発電素子と、両端部に開口を有し、内部に空間が形成される枠状の金属製ケースと、前記太陽光発電素子を保持する保持部材と、を備える集光型太陽光発電ユニットであって、前記樹脂製レンズの外周部は、円形または正多角形の形状とし、前記金属製ケースの少なくとも一方の端部の開口は、前記樹脂製レンズの外周部と同じ形状とし、前記樹脂製レンズの外周部の中心位置と前記金属製ケースの一方の端部の開口の中心位置とが同心となるように形成され、前記金属製ケースの一方の端部の開口には、前記太陽光発電素子に向けて光が集光するように1つの前記樹脂製レンズの外周部が当該金属製ケースに当接して組み付けられ、前記金属製ケースの他方の端部の開口には、当該金属製ケースの内部に前記太陽光発電素子が収容されるように前記保持部材が組み付けられることにより、1つにユニット化されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1記載の集光型太陽光発電ユニットにおいて、前記樹脂製レンズは、太陽光の入射方向に対向する方向に膨出形状とすることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に記載の集光型太陽光発電ユニットにおいて、前記金属製ケースの一方の端部の開口は、前記樹脂製レンズの外周部が当接する位置よりも突出して形成されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複数個の集光型太陽光発電ユニットが、集光型太陽光発電装置として、隣り合う前記集光型太陽光発電ユニットの前記金属製ケース間に空間が形成されるように設置部材に対して着脱可能に配置されることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に係る発明においては、請求項4記載の集光型太陽光発電装置において、前記集光型太陽光発電ユニットの前記金属製ケース間に形成される空間は、前記金属製ケースの一方の端部から他方の端部の開口に向かって次第に広くなるように前記金属製ケースが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、1つの金属製ケースごとに1つの樹脂製レンズを組み付けてユニット化することにより、従来の集光型太陽光発電装置のように複数の樹脂製レンズを互いに接合する必要がなく、樹脂製レンズと金属製ケースとの熱膨張差によって樹脂製レンズに反りや歪みが生じたとしても、他のユニットの樹脂製レンズに影響が及ぶことがない。また、従来の集光型太陽光発電装置とは異なり、1つの樹脂製レンズが金属製ケースの開口に拘束されるのみであり、樹脂製レンズによる太陽光の焦点位置の軸線方向のずれが生じ難く、集光効率を低下し難くすることができる。また、集光型太陽光発電ユニットの使用環境や発電時の蓄熱による温度変化を見込んで、樹脂製レンズによる太陽光の焦点位置の設計も可能である。
【0013】
また、樹脂製レンズと金属製ケースとの当接部には、各々の熱膨張差による応力が発生し得るが、樹脂製レンズの外周部を円形または正多角形の形状で形成することにより、当接部の全周に亘って応力差が小さくなる。このため、樹脂製レンズと金属製ケースとの当接部には、各々の熱膨張差による応力が分散して局部的な応力が発生し難く、当接部の破損も起き難くなり、金属製ケース内の空間の密閉性を長期に持続させることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明においては、樹脂製レンズを太陽光の入射方向に対向する方向に膨出形状とすることにより、樹脂製レンズと金属製ケースとの熱膨張差によって樹脂製レンズに反りが生ずるとしても、必ず太陽光の入射方向に対向する方向に反るようになる。このため、集光型太陽光発電ユニットの使用環境や発電時の蓄熱による温度変化を見込んで、樹脂製レンズによる太陽光の焦点位置を容易に設計することができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明においては、金属製ケースの一方の端部の開口を樹脂製レンズの外周部が当接する位置よりも突出して形成することにより、金属製ケースの一方の端部の開口を樹脂製レンズの外周部と一致させるよりも、樹脂製レンズと金属製ケースとの組付精度が要求されず、集光型太陽光発電ユニットの製造コストを抑えることができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明においては、複数個の集光型太陽光発電ユニットが、集光型太陽光発電装置として、隣り合う集光型太陽光発電ユニットの金属製ケース間に空間が形成されるように設置部材に着脱可能に配置されることにより、各々の集光型太陽光発電ユニットにおける発電時の蓄熱を、空間を介して放熱することができる。また、複数個の集光型太陽光発電ユニットを設置部材に配置したとしても、集光型太陽光発電装置を屋外に設置した際には、空間を介して風の通り抜けが容易となり、耐風性に優れている。さらに、従来の集光型太陽光発電装置とは異なり、集光型太陽光発電ユニットごとに取付や交換が可能であるため、施工する際の取り扱いを容易とすることができる。
【0017】
さらに、請求項5に係る発明においては、集光型太陽光発電ユニットの金属製ケース間に形成される空間が、金属製ケースの一方の端部から他方の端部の開口に向かって次第に広くなるように金属製ケースを形成することにより、金属製ケースの他方の端部の開口、すなわち設置部材側での空間が広くなるため、集光型太陽光発電装置を屋外に設置した際に風の通り抜けがさらに容易となり、耐風性に優れた集光型太陽光発電装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】集光型太陽光発電ユニットの斜視図である。
【図2】集光型太陽光発電ユニットの分解斜視図である。
【図3】(A)は、ケースの上端部の開口がフレネルレンズの外周部と一致する場合における角錐体の形状のケースを用いた集光型太陽光発電ユニットの斜視図であり、(B)は、ケースの上端部の開口がフレネルレンズの外周部よりも突出する場合における角錐体の形状のケースを用いた集光型太陽光発電ユニットの斜視図である。
【図4】複数個の集光型太陽光発電ユニットを設置した集光型太陽光発電装置の具体例を示す斜視図である。
【図5】(A)は、光学系レンズとして球面形状のフレネルレンズを用いた場合の集光型太陽光発電ユニットの側面図であり、(B)は、光学系レンズとして平板形状のフレネルレンズを用いた場合の集光型太陽光発電ユニットの側面図であり、(C)は、光学系レンズとして表面が球面形状の屈折レンズを用いた場合の集光型太陽光発電ユニットの側面図であり、(D)は、光学系レンズとして表面が平板形状の屈折レンズを用いた場合の集光型太陽光発電ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、集光型太陽光発電ユニット1の斜視図であり、図2は、集光型太陽光発電ユニット1の分解斜視図である。なお、上記した図は、実施形態に係る集光型太陽光発電ユニット1の概略図であり、構成,構造等を理解し易くするために各箇所が誇張あるいは省略して描かれている。
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る集光型太陽光発電ユニット1は、太陽光を集光する球面形状の樹脂製のフレネルレンズ2(一次光学系)と、フレネルレンズ2により集光された光の強度を均等化して太陽光発電素子4に光を導くホモジナイザー3(二次光学系)と、フレネルレンズ2及びホモジナイザー3により集光された光を受光して発電する太陽光発電素子4と、ホモジナイザー3及び太陽光発電素子4を保持する保持部材5と、フレネルレンズ2及び保持部材5を組み付けて1つにユニット化する金属製のケース6と、を備えている。
【0021】
フレネルレンズ2は、表面が球面形状に、裏面が階段状の環状段差を有する凹凸状に構成されている。この構成により、受光した光を太陽光発電素子4に集光するようになっている。また、フレネルレンズ2は、光学的性質に優れた樹脂材料、例えばアクリル樹脂によって形成されている。
【0022】
ホモジナイザー3は、その上面(フレネルレンズ2側の表面)に対してフレネルレンズ2からの光が集光するような位置に配置されている。また、ホモジナイザー3の下面には、太陽光発電素子4の受光面(上面)が接するように組み付けられている。この構成により、フレネルレンズ2により集光された光の強度を均等化して太陽光発電素子4に光を導くことができる。なお、本発明の実施形態に係る集光型太陽光発電ユニット1には、ホモジナイザー3が備えられているが、ホモジナイザー3を備えない構成としてもよい。この場合には、太陽光発電素子4の受光面に対してフレネルレンズ2からの光が直接的に集光するような位置に太陽光発電素子4を配置すればよい。
【0023】
太陽光発電素子4は、多接合太陽光発電素子からなり、フレネルレンズ2及びホモジナイザー3により集光された光を受光面で受光して発電し、太陽光発電素子4で発生した電力を保持部材5に形成した配線(図示しない)を介して外部に出力するように構成されている。また、太陽光発電素子4は、ホモジナイザー3とともに保持部材5に組み付けられている。
【0024】
保持部材5の側部には、同心円環状の冷却フィンを複数有する放熱部7が形成されている。この構成により、放熱部7の表面積の分だけ保持部材5が外部に接する面積を多くすることが可能となり、保持部材5の放熱効果を向上することができる。すなわち、太陽光発電素子4の後面が接するように組み付けられた保持部材5を介して、太陽光発電素子4に集光した光による蓄熱を放熱することができる。なお、放熱部7として同心円環状の冷却フィンを例示しているが、保持部材5が外部に接する面積を多くする形状であればよく、例えば保持部材5の一部が突起した形状であってもよい。
【0025】
ケース6は、上下端部に開口を有し、上端部から下端部の開口にかけて次第に内部の空間が狭くなるように円錐体の形状で形成されている。フレネルレンズ2の外周部は、軸中心線方向から視認して円形の形状で形成されるのに対し、ケース6の上端部における開口は、フレネルレンズ2の外周部と略一致する形状で形成されている。一方、保持部材5の上面の外周部は、円形の形状で形成されるのに対し、ケース6の下端部における開口は、保持部材5の上面の外周部と略一致する形状で形成されている。また、ケース6は、機械工作が可能な金属材料、例えばアルミニウムやステンレス鋼によって形成されている。なお、図1及び図2には、円錐体の形状のケース6を例示しているが、内部に太陽光発電素子4を収容するための空間を有すればよく、例えば角錐体などの他の錐体、円柱体や角柱体などの他の柱体の形状であってもよい。
【0026】
上記のように構成されるケース6には、保持部材5にホモジナイザー3及び太陽光発電素子4が組み付けられた後、上端部の開口を塞ぐようにフレネルレンズ2が組み付けられ、下端部の開口を塞ぐように保持部材5が組み付けられることにより、ケース6の内部の空間が密閉され、内部に太陽光発電素子4が収容された1つの集光型太陽光発電ユニット1を製作することができる。なお、ケース6にフレネルレンズ2が組み付けられた際には、フレネルレンズ2の外周部の中心位置とケース6の上端部の開口の中心位置とが同心となるように構成されている。このように、1つのケース6ごとに1つのフレネルレンズ2を組み付けてユニット化することにより、従来の集光型太陽光発電装置のように複数のフレネルレンズ2を互いに接合する必要がなく、樹脂製のフレネルレンズ2と金属製のケース6との熱膨張差によってフレネルレンズ2に反りや歪みが生じたとしても、他の集光型太陽光発電ユニット1に影響が及ぶことがない。また、従来の集光型太陽光発電装置とは異なり、1つのフレネルレンズ2がケース6の開口に拘束されるのみであり、フレネルレンズ2による太陽光の焦点位置の軸線方向のずれが生じ難く、集光効率を低下し難くすることができる。また、集光型太陽光発電ユニット1の使用環境や発電時の蓄熱による温度変化を見込んで、フレネルレンズ2による太陽光の焦点位置の設計も可能である。
【0027】
また、ケース6にフレネルレンズ2が組み付けられた接合部には、樹脂材料と金属材料との各々の熱膨張差による応力が発生し得るが、フレネルレンズ2の外周部を円形の形状とすることにより、接合部の全周に亘って応力が均一となる。このため、フレネルレンズ2とケース6との接合部には、各々の熱膨張差による応力が分散して局部的な応力が発生することがなく、接合部の破損も起き難くなり、ケース6内の空間の密閉性を長期に持続させることができる。
【0028】
また、球面形状のフレネルレンズ2は、ケース6に組み付けられた際、太陽光の入射方向に対向する方向に膨出形状となるように形成されている。この構成により、樹脂製のフレネルレンズ2と金属製のケース6との熱膨張差によってフレネルレンズ2に反りが生ずるとしても、必ず太陽光の入射方向に対向する方向に反るようになるため、集光型太陽光発電ユニット1の使用環境や発電時の蓄熱による温度変化を見込んで、フレネルレンズ2による太陽光の焦点位置を容易に設計することができる。
【0029】
また、ケース6の内部には、フレネルレンズ2及び保持部材5が組み付けられた状態で密閉した空間を形成し、真空状態または不活性ガスで充満することが望ましい。この構成により、ケース6の内部に結露が生じることがないため、フレネルレンズ2により集光された光が乱反射することがなく、太陽光発電素子4に光を安定して集光し、太陽光発電素子4の発電効率が低下することを防止することができる。また、集光型太陽光発電ユニット1の発電時の蓄熱量が大きい場合には、ケース6の側面に通気孔を形成することもできる。
【0030】
次に、上記した集光型太陽光発電ユニット1とはケース6の形状が異なる集光型太陽光発電ユニット1について、図3を参照して説明する。図3(A)は、ケース6の上端部の開口がフレネルレンズ2の外周部と一致する場合における角錐体の形状のケース6を用いた集光型太陽光発電ユニット1の斜視図であり、図3(B)は、ケース6の上端部の開口がフレネルレンズ2の外周部よりも突出する場合における角錐体の形状のケース6を用いた集光型太陽光発電ユニット1の斜視図である。なお、上記した集光型太陽光発電ユニット1と同じ機能を奏する部材については、同じ符号が付してある。
【0031】
ケース6の内部には、太陽光発電素子4を収容するための空間を有すればよく、図1及び図2で説明した円錐体の形状のケース6の他にも、図3(A)に示すように、角錐体の形状のケース6を用いてもよい。このとき、フレネルレンズ2の外周部は、軸中心線方向から視認して正四角形(正方形)の形状で形成されるのに対し、ケース6の上端部における開口は、レネルレンズ2の外周部と略一致する形状で形成されている。このように、フレネルレンズ2の外周部は、円形の形状とすることが好ましいが、線対称の軸を有すればよく、軸中心線方向から視認して正四角形などの正多角形の形状であってもよい。この場合にも、ケース6にフレネルレンズ2が組み付けられた接合部には、樹脂材料と金属材料との各々の熱膨張差による応力が発生し得るが、フレネルレンズ2の外周部を正多角形の形状とすることにより、接合部の全周に亘って応力差が小さくなる。このため、フレネルレンズ2とケース6との接合部には、各々の熱膨張差による応力が分散して局部的な応力が発生し難く、接合部の破損も起き難くなり、ケース6内の空間の密閉性を長期に持続させることができる。
【0032】
また、ケース6の形状は、ケース6の上端部の開口がフレネルレンズ2の外周部と一致するように形成される他にも、図3(B)に示すように、ケース6の上端部の開口がフレネルレンズ2の外周部との接合部よりも突出して形成されてもよい。このとき、フレネルレンズ2の外周部は、軸中心線方向から視認して正四角形(正方形)の形状で形成されるのに対し、ケース6の上端部の開口からフレネルレンズ2の外周部との接合部においては、レネルレンズ2の外周部と略一致する形状で形成されている。この構成により、ケース6の上端部の開口をフレネルレンズ2の外周部と一致させるよりも、ケース6にフレネルレンズ2を組み付ける際の組付精度が要求されず、集光型太陽光発電ユニット1の製造コストを抑えることができる。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る集光型太陽光発電ユニット1を複数個設置した集光型太陽光発電装置10について、図4を参照して説明する。図4は、複数個の集光型太陽光発電ユニット1を設置した集光型太陽光発電装置10の具体例を示す斜視図である。なお、上記した図は、実施形態に係る集光型太陽光発電装置10の概略図であり、構成,構造等を理解し易くするために各箇所が誇張あるいは省略して描かれている。
【0034】
まず、集光型太陽光発電装置10を構成する平板形状の設置部材11には、その表面に、5個の集光型太陽光発電ユニット1を一列に並べて設置することが可能なレール部12が等間隔で5列形成されている。そして、集光型太陽光発電ユニット1の保持部材5の所定箇所を設置部材11のレール部12に固定することにより、図示のような縦横方向に合計で25個の集光型太陽光発電ユニット1が空間を介して設置された集光型太陽光発電装置10を製作することができる。そして、集光型太陽光発電ユニット1を適宜の個数の組み合わせで接続すれば、必要な電力を出力する集光型太陽光発電装置10を製作することができる。また、集光型太陽光発電装置10には、集光型太陽光発電ユニット1のフレネルレンズ2が常に太陽方向へ正対するように追尾駆動することが可能な機構(図示しない)が設置部材11に組み付けられている。
【0035】
上記のように、複数個の集光型太陽光発電ユニット1が、集光型太陽光発電装置10として、隣り合う集光型太陽光発電ユニット1のケース6間に空間が形成されるように設置部材11のレール部12に着脱可能に配置されることにより、各々の集光型太陽光発電ユニット1における発電時の蓄熱を、空間を介して放熱することができる。また、複数個の集光型太陽光発電ユニット1を設置部材11に配置したとしても、集光型太陽光発電装置10を屋外に設置した際には、空間を介して風の通り抜けが容易となり、耐風性に優れている。さらに、従来の集光型太陽光発電装置とは異なり、集光型太陽光発電ユニット1ごとに取付や交換が可能であるため、施工する際の取り扱いを容易とすることができる。
【0036】
なお、図示の実施形態においては、集光型太陽光発電ユニット1の設置部材として平板形状の設置部材11を例示しているが、これに限定されない。例えば、複数個の集光型太陽光発電ユニット1を設置部材11に設置した際に隣り合う集光型太陽光発電ユニット1のケース6間に対して空間を有すればよく、棒状や意匠性を有する形状などの設置部材11であってもよい。また、図示の実施形態においては、集光型太陽光発電ユニット1の設置箇所としてレール部12を例示しているが、これに限定されない。例えば、設置部材11に対して集光型太陽光発電ユニット1が1個ずつ着脱可能であればよく、集光型太陽光発電ユニット1の保持部材5を嵌め合わせることが可能なソケットタイプであってもよい。
【0037】
また、図示の実施形態においては、集光型太陽光発電装置10に各々設置された集光型太陽光発電ユニット1において、ケース6の上端部から下端部の開口に向かって次第に内部の空間が狭くなるように円錐体の形状で形成されている。すなわち、複数個の集光型太陽光発電ユニット1を設置部材11に設置した際には、隣り合う集光型太陽光発電ユニット1のケース6間に形成される空間が、ケース6の上端部から下端部の開口に向かって次第に広くなるようにケース6が形成されている。この構成により、集光型太陽光発電装置10として複数個の集光型太陽光発電ユニット1を配置したとしても、ケース6の下端部の開口、すなわち設置部材11側での空間が広くなるため、集光型太陽光発電装置10を屋外に設置した際に風の通り抜けがさらに容易となり、耐風性に優れた集光型太陽光発電装置10を実現することができる。
【0038】
次に、上記した集光型太陽光発電ユニット1とは光学系レンズの構成が異なる集光型太陽光発電ユニット1について、図5を参照して説明する。図5(A)は、光学系レンズとして球面形状のフレネルレンズ2を用いた場合の集光型太陽光発電ユニット1の側面図であり、図5(B)は、光学系レンズとして平板形状のフレネルレンズ2を用いた場合の集光型太陽光発電ユニット1の側面図であり、図5(C)は、光学系レンズとして表面が球面形状の屈折レンズ13を用いた場合の集光型太陽光発電ユニット1の側面図であり、図5(D)は、光学系レンズとして表面が平板形状の屈折レンズ13を用いた場合の集光型太陽光発電ユニット1の側面図である。なお、上記した集光型太陽光発電ユニット1と同じ機能を奏する部材については、同じ符号が付してある。
【0039】
図5(A)に示すように、図1で説明した集光型太陽光発電ユニット1には、球面形状のフレネルレンズ2を用いることにより、太陽方向と正対したときに太陽光をホモジナイザー3に集光可能としている。このフレネルレンズ2は、太陽光をホモジナイザー3に集光可能な形状であればよく、図5(B)に示すように、表面に同心円環状の突条を有する平板形状のフレネルレンズ2を用いてもよい。
【0040】
また、図5(C)に示すように、集光型太陽光発電ユニット1には、フレネルレンズ2の他にも一般的な光学系レンズとして表面が球面形状の屈折レンズ13を用いてもよい。しかしながら、屈折レンズ13は、太陽方向と正対したとしてもフレネルレンズ2ほど太陽光が屈折しないため、太陽光を短い距離で集光することができない。このため、集光型太陽光発電ユニット1に屈折レンズ13を用いた場合、ケース6の内面には、屈折レンズ13により屈折された光を反射して集光する一次リフレクター14を有し、屈折レンズ13の裏面の中央部には、一次リフレクター14により集光された光をさらに反射して太陽光発電素子4に向けて集光する二次リフレクター15を有する構成とした。この構成により、屈折レンズ13を用いても、一次リフレクター14及び二次リフレクター15による光の反射を利用するため、太陽方向と正対したときに太陽光を短い距離で太陽光発電素子4に集光することができる。なお、集光型太陽光発電ユニット1に屈折レンズ13を用いた場合、ケース6自体が一次リフレクター14としての役割を果たせばよく、屈折レンズ13により屈折された光を反射して二次リフレクター15に向けて集光するように椀型の形状でケース6を形成すればよい。また、屈折レンズ13は、一次リフレクター14に照射可能な形状であればよく、図5(D)に示すように、表面が平板形状の屈折レンズ13を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 集光型太陽光発電ユニット
2 フレネルレンズ
3 ホモジナイザー
4 太陽光発電素子
5 保持部材
6 ケース
7 放熱部
10 集光型太陽光発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光する樹脂製レンズと、該樹脂製レンズにより集光された光を受光して発電する太陽光発電素子と、両端部に開口を有し、内部に空間が形成される枠状の金属製ケースと、前記太陽光発電素子を保持する保持部材と、を備える集光型太陽光発電ユニットであって、
前記樹脂製レンズの外周部は、円形または正多角形の形状とし、前記金属製ケースの少なくとも一方の端部の開口は、前記樹脂製レンズの外周部と同じ形状とし、前記樹脂製レンズの外周部の中心位置と前記金属製ケースの一方の端部の開口の中心位置とが同心となるように形成され、
前記金属製ケースの一方の端部の開口には、前記太陽光発電素子に向けて光が集光するように1つの前記樹脂製レンズの外周部が当該金属製ケースに当接して組み付けられ、前記金属製ケースの他方の端部の開口には、当該金属製ケースの内部に前記太陽光発電素子が収容されるように前記保持部材が組み付けられることにより、1つにユニット化されたことを特徴とする集光型太陽光発電ユニット。
【請求項2】
前記樹脂製レンズは、太陽光の入射方向に対向する方向に膨出形状とすることを特徴とする請求項1記載の集光型太陽光発電ユニット。
【請求項3】
前記金属製ケースの一方の端部の開口は、前記樹脂製レンズの外周部が当接する位置よりも突出して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の集光型太陽光発電ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複数個の集光型太陽光発電ユニットは、隣り合う前記集光型太陽光発電ユニットの前記金属製ケース間に空間が形成されるように設置部材に対して着脱可能に配置されることを特徴とする集光型太陽光発電装置。
【請求項5】
前記集光型太陽光発電ユニットの前記金属製ケース間に形成される空間は、前記金属製ケースの一方の端部から他方の端部の開口に向かって次第に広くなるように前記金属製ケースが形成されることを特徴とする請求項4記載の集光型太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−129218(P2012−129218A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276438(P2010−276438)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】