説明

集光式太陽光発電装置

【課題】各プリズム部の幅及び色収差の影響を考慮した集光レンズを提供し、集光効率の高い集光式太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】フレネルレンズと、受光部とを含む集光式太陽光発電装置において、フレネルレンズの断面の各プリズム部の入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有しており、各プリズム部の入射面には、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定され、各プリズム部の出射面傾き角α及び入射面傾き角βは、第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに受光部に到達するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光レンズによって太陽電池面に太陽光を集光するようにした集光式太陽光発電装置に関するものである。とりわけ、集光レンズの形状を適切に決定することにより集光効率を高め、さらに太陽追尾誤差やレンズ組付け誤差等の影響を低減し、安定した発電を行えるようにした集光式太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集光式太陽光発電装置は常に太陽方向へ向けた集光レンズによって比較的小面積の太陽電池面に太陽光を集光して効率的な発電を行うものである。集光レンズとしてはフレネルレンズを使用することが多い。フレネルレンズは、通常のレンズを同心円環状の多数のプリズム状の領域に分割し、厚みを減らしたレンズである。従来のフレネルレンズとしては、プリズム部を同一平面上に並べ、フレネルレンズ中心の光軸に近い領域は屈折を利用し、フレネルレンズ中心の光軸から遠い領域は全反射を利用し、レンズ作用を得ているものがある(特許文献1)。集光式太陽光発電装置の全体像は、特許文献2に示されたものが一例としてある。
【0003】
フレネルレンズの設計においては、各プリズム部のプリズム幅中央に入射する光を設計光として設定し、その光路を考慮して、各プリズム部の形状を設定するのが通常である。また、設計光の波長は、代表的なある単波長を設定するのが通常である。
【0004】
太陽光には、様々な波長の光が含まれている。波長によって屈折率は異なり、プリズムを通過した光の進む方向は波長によって異なるため、レンズは色収差を持つ。発電波長領域の異なる多数の素子を接合した多接合型太陽電池を使用した場合には、広い波長域の太陽光を太陽電池に入射させることにより効率的な発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258246号公報
【特許文献2】特開2008−004661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリズムの幅中央に入射する設計光のみを考慮したフレネルレンズの場合、プリズムの幅中央から外れた点に入射する光のなかには、受光部に到達しないものも生じる。また、設計光として単波長のみを考慮すると、設計光と異なる波長のなかには、受光部に到達しないものも生じる。
【0007】
また、集光式太陽光発電装置において、追尾誤差やフレネルレンズの組付け誤差等によって集光レンズの向きが僅かに太陽方向から外れると太陽電池の受光面上の照度が急激に低下して発電量が大きく損なわれるという課題もある。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決するものであり、各プリズム部の幅及び色収差の影響を考慮した集光レンズを提供し、集光効率の高い集光式太陽光発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、フレネルレンズと、受光部とを含む集光式太陽光発電装置において、
フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含み、
各プリズム部は入射面および出射面を有し、入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有しており、
各プリズム部の入射面には、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定され、各プリズム部の出射面傾き角α及び入射面傾き角βは、第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに受光部に到達するように設定されたことを特徴とする集光式太陽光発電装置を提供する。
ここで、光軸とは、光源、レンズ、受光部の中心を連ねる直線である。いわゆるリニアフレネルレンズの構成の場合は、各断面において光源、レンズ、受光部の中心を連ねる直線をそれぞれ光軸とする。
フレネルレンズの断面とは、光軸を含む平面で切ったときの断面を意味する。いわゆるリニアフレネルレンズの構成の場合は、レンズの直線方向(出斜面長手方向)に延びる方向に垂直であり、かつ光軸を含む平面で切ったときの断面を意味する。
【0010】
本発明の第1の実施形態では、第1の光および第2の光は、それぞれ設計波長範囲の最短波長または最長波長の光に設定されている。
本発明の第2の実施形態では、第1の光および第2の光は、それぞれ設計許容入射半角で入射する光に設定されている。
本発明の第3の実施形態では、第1の光は、受光部上面の各プリズム部に近い側の端部に到達し、第2の光は、受光部上面の各プリズム部に遠い側の端部に到達する。
本発明の第4の実施形態では、フレネルレンズの光軸周辺において、プリズム部は入射面傾き角βが略0°となっており、平坦な入射面を備えている。
本発明の第5の実施形態では、設計波長範囲の最短波長の光は、紫外線であることが好ましく、とりわけ、設計波長範囲の最短波長は、250nm〜400nmであることが好ましい。
本発明の第6の実施形態では、設計波長範囲の最長波長の光は、赤外線であることが好ましく、とりわけ、設計波長範囲の最長波長は、700nm〜2500nmであることが好ましい。
本発明の第7の実施形態では、設計許容入射半角は、0°〜25.0°であることが好ましい。0°〜1.0°であることが更に好ましい。
本発明の第2の観点では、受光部を含む集光式太陽光発電装置のフレネルレンズにおいて、
フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含み、
各プリズム部は入射面および出射面を有し、入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有しており、
各プリズム部の入射面には、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定され、各プリズム部の出射面傾き角α及び入射面傾き角βは、第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに受光部に到達するように設定されたことを特徴とするフレネルレンズを提供する。
本発明の第3の観点では、受光部を含む集光式太陽光発電装置のフレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法において、
フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含ませ、
各プリズム部は入射面および出射面を有し、入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有するものとし、
各プリズム部の入射面に、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定し、各プリズム部の出射面傾き角α及び入射面傾き角βを、第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに受光部に到達するように設定し、
各プリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べることを特徴とする、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の集光式太陽光発電装置は、プリズム幅に対する入射位置に関わらず、発電に利用できる広い波長域の光を受光部に導くことができるため、集光効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の集光式太陽光発電装置の例を示す概略図である。
【図2】一つのプリズム部を抜き出し、一波長一入射点設計をした場合についての例を示す図である。
【図3】一つのプリズム部を抜き出し、二波長一入射点設計をした場合についての例を示す図である。
【図4】入射面傾き角β<入射半角θのとき、短い波長の光と長い波長の光の光路を示す図である。
【図5】入射面傾き角β≧入射半角θのとき、短い波長の光と長い波長の光の光路を示す図である。
【図6】一つのプリズム部を抜き出し、二波長二入射点設計をした場合についての例を示す図である。
【図7】一波長一入射点設計をした場合の、プリズム位置と出射面傾き角α及び入射面傾き角βとの関係を示した図である。
【図8】二波長一入射点設計をした場合の、プリズム位置と出射面傾き角α及び入射面傾き角βとの関係を示した図である。
【図9】二波長二入射点設計をした場合の、プリズム位置と出射面傾き角α及び入射面傾き角βとの関係を示した図である。
【図10】光学的効率を示した図である。
【実施例】
【0013】
本発明の集光式太陽光発電装置1の構成の一例を概略的に図1に示す。集光式発電光装置1は、フレネルレンズ3及び受光部7を含む。フレネルレンズ3の断面は、多数の台形状のプリズム部5を光軸9の周りに同心円環状に並べた形状となっている。受光部7は、フレネルレンズ3で集光した光を受光する位置に配置されている。
【0014】
ところで、図2はフレネルレンズから一つプリズム部を抜き出して例示しており、単波長(例えば550nm)の光が入射面11のプリズム幅中央から、光軸9に対して入射半角θ(例えば0.7°)の角度を持って入射した場合について示している。各プリズム部5の断面は、台形状の形状をしており、入射面11、出射面12、内周側面13、及び外周側面14により形成されている。入射面11のプリズム幅中央から、光軸9に対して入射半角θの角度を持って入射した太陽光17は、入射面11において屈折し、プリズム部5内を進行し、出射面12において屈折し、受光部7へ向けて進行する。ここで、予め入射半角θを持つ光を設計光として設定しているのは、設計許容入射半角θを持つ光が入射しても受光部に到達するようにプリズム部の形状を決定するためである。図2では、光軸9から近い側へ設計許容入射半角θを持つ太陽光17と、光軸9から遠い側へ設計許容入射半角θ(−θと表わす)を持つ太陽光19の光路を示している。太陽光17は、受光部7の上面右端20に到達し、太陽光19は受光部7の上面左端22に到達している。このように、プリズム幅中央に入射する単波長の光を設計光として設定し、プリズム部の形状を設計する方法を、便宜上、一波長一入射点設計と呼ぶこととする。
【0015】
図3は一つのプリズム部を抜き出して例示しており、入射面11のプリズム幅中央から、光軸9に対して入射半角θの角度を持って太陽光が入射した場合について、短い波長(例えば400nm)と、長い波長(例えば1100nm)の光路について示している。図3からは、太陽光のなかの短い波長と、長い波長の光路の違いが分かる。短い波長の光は、長い波長の光よりも屈折率が大きいため、大きく屈折する。図3に示した例では、プリズム部5内を、太陽光17のなかの短い波長の光31が長い波長の光32より大きく屈折して進み、受光部においては長い波長の光32の方が短い波長の光31よりも右側に到達している。また、太陽光19については、受光部においては短い波長の光33の方が長い波長の光34よりも左側に到達している。
図3に示した設計方法では、太陽光17のうち設計波長範囲の最短波長の光31と最長波長の光32について考慮し、受光部中央から見て外側に到達する光32が、受光部7の上面右端20に到達している。そして、太陽光19のうち設計波長範囲の最短波長の光33と最長波長の光34について考慮し、受光部中央から見て外側に到達する光33が、受光部7の上面左端22に到達している。ここで、このような設計方法を、便宜上、二波長一入射点設計と呼ぶこととする。
【0016】
図3においては、例えば、太陽光19については、受光部において短い波長の光の方が左側に到達しているが、入射半角θと入射面傾き角βとの関係によっては、長い波長の光の方が左側に到達することもある。
具体的には、β<θの場合(図4参照)、入射半角θで入射した光17は、入射面に対する垂線45の左側から入射し、短い波長の光41が長い波長の光42よりも大きく屈折するため、受光部右端においては、長い波長の光42が短い波長の光41よりも受光部中央から見て外側に到達する。入射半角−θで入射した光19は、入射面に対する垂線45の右側から入射し、短い波長の光43が長い波長の光44よりも大きく屈折するため、受光部左端においては、長い波長の光44が短い波長の光43よりも受光部中央から見て外側に到達する。
次に、β≧θの場合(図5参照)、入射半角θで入射した光17は、入射面に対する垂線45の左側から入射し、受光部右端においては、長い波長の光52が短い波長の光51よりも受光部中央から見て外側に到達する。入射半角−θで入射した光19も、入射面に対する垂線45の左側から入射するため、受光部左端においては、短い波長の光53が長い波長の光54よりも受光部中央から見て外側に到達する。
【0017】
図6には、本発明において考慮する設計光を示している。本発明においては、設計光が入射する位置を2つ設定している。図6では、太陽光がプリズム入射面の右側端点近傍に位置する第1の入射点65から、光軸9に対して入射半角θの角度を持って入射した光について、短い波長と長い波長の光路について示している。また、太陽光がプリズム入射面の左側端点近傍に位置する第2の入射点66から、光軸9に対して入射半角−θの角度を持って入射した光について、短い波長と長い波長の光路について示している。図6に示した例では、太陽光17のうち長い波長の光62が短い波長の光61よりも、受光部においては受光部中央から見て外側に到達している。また、太陽光19については、短い波長の光63が長い波長の光64よりも、受光部においては受光部中央から見て外側に到達している。
図6に示した設計方法では、第1の入射点65から入射した太陽光17のうち設計波長範囲の最短波長の光61と最長波長の光62について考慮し、受光部中央から見て外側に到達する光62が、受光部7の上面右端20に到達している。そして、第2の入射点66から入射した太陽光19のうち設計波長範囲の最短波長の光63と最長波長の光64について考慮し、受光部中央から見て外側に到達する光63が、受光部7の上面左端22に到達している。ここで、このような設計方法を、便宜上、二波長二入射点設計と呼ぶこととする。
本発明においては、設計波長範囲の波長をもつ光のうち、受光部中央から見て最も外側に到達する光(図6では光62及び63)が受光部上面に到達するようにプリズムの形状を決定している。
【0018】
具体的には、入力値として、受光部半幅d、レンズ受光部間距離h、プリズム幅w、レンズ厚さδ、屈折率n、プリズム位置、及び設計許容入射半角θを条件設定し、プリズム出射面傾き角α及びプリズム入射面傾き角βを求める。上記の入力条件が与えられれば、第1の入射点に入射する光のうち設計最短波長が受光部上面平面において到達する点71と、設計最長波長の光が受光部上面平面において到達する点72を、α及びβをパラメータとして幾何学的に求めることができる。両点のうち右側に到達する点(図では点72)が受光部上面右端20に一致するということを第1の条件とする。この条件は、設計波長範囲内の波長をもつ全ての光が受光面に到達するようにするということを表わす。
同様に、第2の入射点に入射する光のうち設計最短波長が受光部上面平面において到達する点73と、設計最長波長の光が受光部上面平面において到達する点74を、α及びβをパラメータとして幾何学的に求めることができる。両点のうち左側に到達する点(図では点73)が受光部上面左端22に一致するということを第2の条件とする。この条件は、設計波長範囲内の波長をもつ全ての光が受光面に到達するようにするということを表わす。
この2つの条件式を連立させて、αとβを求める。これにより、各プリズムの形状が決定される。光軸から順次プリズム部の形状を決定し、並べていくことによって集光レンズの全体の形状が決定される。
【0019】
以上のように各プリズムの形状を設定したフレネルレンズを使用する集光式太陽光発電装置によれば、プリズム幅に対する入射位置に関わらず、発電に利用できる広い波長域の光を受光部に導くことができるため、集光効率が向上する。
【0020】
図1の実施例では、光軸周辺のプリズム部の入射面傾き角βを0°とし、入射面が光軸に対して垂直方向に平坦な面を形成させている。これにより、光軸周辺の位置においては、周辺部の設計許容入射半角よりもさらに大きい入射半角でも許容できるようになっている。
具体的には、前述の幾何学的関係において、受光部半幅d、レンズ受光部間距離h、プリズム幅w、レンズ厚さδ、屈折率n、プリズム位置、及びプリズム入射面傾き角β=0°を入力値として、プリズム出射面傾き角α及び最大許容入射半角θmaxを求める。求まった最大許容入射半角θmaxが、設計許容入射半角θを上回る場合には、そのプリズム部の入射面傾き角βを0°として形成している。これは、平坦部においては、周辺部の設計許容入射半角以上の入射半角を許容することを意味し、入射半角が設計許容入射半角を超えた場合にも、集光効率の低下をさらに抑制するという効果がある。さらに、本発明フレネルレンズのドーム高さを小さくすることができ、コンパクトな集光レンズを得るという利点もある。
【0021】
図7、図8、及び図9は、下記の設計条件によって、求めた出射面傾き角α及び入射面傾き角βを示す。比較のために、図7は、図2に示したように一波長一入射点設計によって設計した場合を示す。図8は、図3に示したように二波長一入射点設計によって設計した場合を示す。図9は、図6に示したように二波長二入射点設計によって設計した場合を示す。
各種レンズパラメータ
幾何学的集光比 625倍
設計許容入射半角θ 0.7°
レンズ受光部間距離h 40
プリズム幅w 0.25
プリズム厚みδ 1
最短波長及び最長波長の光の入射屈折率 1.48、1.50
ここで、h、w、δは受光部半幅dにより無次元化した値である。
【0022】
図10は、一波長一入射点設計、二波長一入射点設計、及び、二波長二入射点設計により得られたフレネルレンズの光学的効率を示す。本発明による二波長二入射点設計のフレネルレンズは、入射半角0°〜0.7°の全範囲において、一波長一入射点設計、二波長一入射点設計よりも、極めて高い光学的効率を実現している。さらに、入射半角が0.7°まで大きくなっても、一波長一入射点設計および二波長一入射点設計と比較し、効率低下が著しく小さいことが分かる。
【実施例1】
【0023】
さらに、下記に示す実施例1によって、集光効率の高いフレネルレンズが提供される。
集光倍率R 625倍
受光部半幅d 3.5mm
フレネルレンズ受光部間距離H 140mm
フレネルレンズ半径D 88mm
ここで、フレネルレンズ受光部間距離Hは、フレネルレンズの頂上部と受光部との距離を表わし、フレネルレンズ半径Dはフレネルレンズの半径を表わす(図1参照)。
集光倍率Rは、フレネルレンズの投影面積と受光部面積の比率を表わす。すなわち、集光倍率Rは、フレネルレンズ半径Dと受光部半幅dの比(比の値)の2乗に相当する。
【実施例2】
【0024】
さらに、下記に示す実施例2によっても、集光効率の高いフレネルレンズが提供される。
集光倍率R 800倍
受光部半幅d 0.5mm
フレネルレンズ受光部間距離H 15mm
フレネルレンズ半径D 15mm
【実施例3】
【0025】
さらに、下記に示す実施例3によっても、集光効率の高いフレネルレンズが提供される。
集光倍率R 900倍
受光部半幅d 1.0mm
フレネルレンズ受光部間距離H 100mm
フレネルレンズ半径D 30mm
【実施例4】
【0026】
さらに、下記に示す実施例4によっても、集光効率の高いフレネルレンズが提供される。
集光倍率R 1200倍
受光部半幅d 5.0mm
フレネルレンズ受光部間距離H 675mm
フレネルレンズ半径D 175mm
【0027】
以上から、縦軸にフレネルレンズ受光部間距離H/フレネルレンズ半径Dをとり、横軸に集光倍率Rをとったグラフに、実施例1〜4をプロットし整理した。その結果、集光効率の高いフレネルレンズを得るためには、フレネルレンズ受光部間距離H/フレネルレンズ半径Dが1.0〜−0.003×R+7.5の範囲にあり、かつ、集光倍率Rが500〜1700の範囲にあることが好ましいことが判明した。
【0028】
上述した実施形態では、各プリズム部が光軸に対して同心円環上に形成されていたが、各プリズム部は直線状に延びるものであってもよい。各プリズム部が直線状である場合、光は直線状の受光部に集光されることになり、いわゆるリニアフレネルレンズの構成となる。
【符号の説明】
【0029】
1 集光式太陽光発電装置
3 フレネルレンズ
5 プリズム部
7 受光部
9 光軸
11 入射面
12 出射面
13 内周側面
14 外周側面
17、19 太陽光
20 受光部の上面右端
22 受光部の上面左端
31、33、41、43、51、53、61、63 短い波長の光
32、34、42、44、52、54、62、64 長い波長の光
71 短い波長の光61の受光部上面平面において到達する点
72 長い波長の光62の受光部上面平面において到達する点
73 短い波長の光63の受光部上面平面において到達する点
74 長い波長の光64の受光部上面平面において到達する点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレネルレンズと、受光部とを含む集光式太陽光発電装置において、
前記フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含み、
前記各プリズム部は入射面および出射面を有し、前記入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、前記出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有しており、
前記各プリズム部の前記入射面には、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定され、前記各プリズム部の前記出射面傾き角α及び前記入射面傾き角βは、前記第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および前記第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに前記受光部に到達するように設定されたことを特徴とする集光式太陽光発電装置。
【請求項2】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計波長範囲の最短波長または最長波長の光に設定されたことを特徴とする、請求項1に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項3】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計許容入射半角で入射する光に設定されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項4】
前記第1の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に近い側の端部に到達し、前記第2の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に遠い側の端部に到達することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項5】
前記フレネルレンズの光軸周辺において、前記プリズム部は前記入射面傾き角βが略0°となっており、平坦な入射面を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項6】
前記設計波長範囲の最短波長の光は、紫外線であることを特徴とする、請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項7】
前記設計波長範囲の最短波長は、250nm〜400nmであることを特徴とする、請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項8】
前記設計波長範囲の最長波長の光は、赤外線であることを特徴とする、請求項2から請求項7までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項9】
前記設計波長範囲の最長波長は、700nm〜2500nmであることを特徴とする、請求項2から請求項7までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項10】
前記設計許容入射半角は、0°〜25.0°であることを特徴とする、請求項3から請求項9までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項11】
前記フレネルレンズは、フレネルレンズ受光部間距離H/フレネルレンズ半径Dが1.0〜−0.003×R+7.5の範囲にあり、かつ、集光倍率Rが500〜1700の範囲にあり、
ここで、前記フレネルレンズ受光部間距離Hは、前記フレネルレンズの頂上部と前記受光部との距離を表わし、前記フレネルレンズ半径Dはフレネルレンズの半径を表わし、前記集光倍率Rは、前記フレネルレンズ半径Dと前記受光部の受光部半幅dの比の2乗を表わすことを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された集光式太陽光発電装置。
【請求項12】
受光部を含む集光式太陽光発電装置のフレネルレンズにおいて、
前記フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含み、
前記各プリズム部は入射面および出射面を有し、前記入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、前記出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有しており、
前記各プリズム部の前記入射面には、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定され、前記各プリズム部の前記出射面傾き角α及び前記入射面傾き角βは、前記第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および前記第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに前記受光部に到達するように設定されたことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項13】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計波長範囲の最短波長または最長波長の光に設定されたことを特徴とする、請求項12に記載されたフレネルレンズ。
【請求項14】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計許容入射半角で入射する光に設定されたことを特徴とする、請求項12または請求項13に記載されたフレネルレンズ。
【請求項15】
前記第1の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に近い側の端部に到達し、前記第2の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に遠い側の端部に到達することを特徴とする、請求項12から請求項14までのいずれか一項に記載されたフレネルレンズ。
【請求項16】
前記フレネルレンズの光軸周辺において、前記プリズム部は前記入射面傾き角βが略0°となっており、平坦な入射面を備えていることを特徴とする、請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載されたフレネルレンズ。
【請求項17】
前記フレネルレンズは、フレネルレンズ受光部間距離H/フレネルレンズ半径Dが1.0〜−0.003×R+7.5の範囲にあり、かつ、集光倍率Rが500〜1700の範囲にあり、
ここで、前記フレネルレンズ受光部間距離Hは、前記フレネルレンズの頂上部と前記受光部との距離を表わし、前記フレネルレンズ半径Dはフレネルレンズの半径を表わし、前記集光倍率Rは、前記フレネルレンズ半径Dと前記受光部の受光部半幅dの比の2乗を表わすことを特徴とする、請求項12から請求項16までのいずれか一項に記載されたフレネルレンズ。
【請求項18】
受光部を含む集光式太陽光発電装置のフレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法において、
前記フレネルレンズの断面は、複数のプリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べた形状を含ませ、
前記各プリズム部は入射面および出射面を有し、前記入射面は光軸に垂直な方向に対して入射面傾き角βを有し、前記出射面は光軸に垂直な方向に対して出射面傾き角αを有するものとし、
前記各プリズム部の前記入射面に、光軸から遠い側の端点近傍に位置する第1の入射点、及び光軸から近い側の端点近傍に位置する第2の入射点が仮定し、前記各プリズム部の前記出射面傾き角α及び前記入射面傾き角βを、前記第1の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第1の光、および前記第2の入射点から入射し、出射面において屈折し、出射面から出射する第2の光が、ともに前記受光部に到達するように設定し、
前記各プリズム部を光軸から離れる方向または光軸に近づく方向へ並べることを特徴とする、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法。
【請求項19】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計波長範囲の最短波長または最長波長の光に設定されたことを特徴とする、請求項18に記載された、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法。
【請求項20】
前記第1の光および前記第2の光は、それぞれ設計許容入射半角で入射する光に設定されたことを特徴とする、請求項18または請求項19に記載された、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法。
【請求項21】
前記第1の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に近い側の端部に到達し、前記第2の光は、前記受光部上面の前記各プリズム部に遠い側の端部に到達することを特徴とする、請求項18から請求項20までのいずれか一項に記載された、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法。
【請求項22】
前記フレネルレンズの光軸周辺において、前記プリズム部は前記入射面傾き角βが略0°となっており、平坦な入射面を備えていることを特徴とする、請求項18から請求項21までのいずれか一項に記載された、フレネルレンズの形状を設計し、フレネルレンズを生産する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9846(P2012−9846A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113061(P2011−113061)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】