説明

集光装置、及び、該集光装置を用いた培養装置

【課題】 開放系の培養槽にて光合成の促進を図る。
【解決手段】 中心位置の鉛直断面形状が、下面側の曲率半径の方が上面側の曲率半径よりも大となる両凸レンズ形状となる集光装置1を形成する。集光装置1は、上部側を光透過性を有する比重が1よりも小さい樹脂とし、下部側を光透過性を有する比重が1よりも大きい樹脂として、全体の比重を1未満にしてあると共に、重心を没水側に偏在させた構成としてある。上部開放式のレースウェイ型の培養槽3に貯留された培養液2の液面に、多数の集光装置1を、一方の凸側を没水させた姿勢で該液面を覆うように浮遊させる。これにより、培養液2の中に、各集光装置1で集光された光が照射される明部4と、暗部5とを水平方向に交互に形成させる。培養槽3内で循環流を形成させる培養液2に含まれる微細藻類を、明部4と暗部5を交互に通過させることで、フラッシングライト効果により光合成を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類等の光合成生物を、開放系の培養容器に貯留した培養液で培養するときに、太陽光等の外部照明光を集光して上記光合成生物の培養液に照射するために用いる集光装置、及び、該集光装置を用いた培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細藻類等の光合成生物の培養を行う培養手法の1つとしては、該光合成生物の懸濁された培養液を、屋外の浅いプール(池)等の開放系の培養槽に貯留して培養する手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の開放系の培養槽は、その平面積が大きくされているので、大量の培養液が貯留されるようになっている。更に、上記開放系の培養槽は、上部開放式として太陽光を水面に直接受けるようにすることにより、光合成生物に光合成を行わせるための照明光として太陽光が利用できるようにしてあり、上記光合成生物の大量培養に有利であるとされている。
【0004】
ところで、藻類の懸濁された培養液を培養槽に流通させながら培養を行う形式の培養装置は、一例として、上記培養槽に、以下の集光手段を備えた構成としたものが従来提案されている。
【0005】
上記集光手段は、散乱光集光シートの下にフレネルレンズが取り付けられた集光部を有している。上記集光部は、下側に該集光部で集光される光を伝達する側面出光型光ファイバが取り付けられている。
【0006】
上記集光手段を備えた培養装置は、その使用を行う場合、上記集光手段の集光部が、培養液の液面上に配置される。又、上記集光手段の側面出光型光ファイバは、培養槽内の培養液に没入される。
【0007】
これにより、上記培養装置は、上記集光手段で集光された光が、培養槽内の培養液中に配置されている上記側面出光型光ファイバより出光されるようになる。よって、上記培養装置は、培養槽内の培養液に、深さ方向や流れ方向に均一な光を照射できるとされている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
又、藻類の懸濁された培養液を培養槽に流通させながら培養を行う形式の培養装置は、別の例として、以下のような集光プラグを備えた構成とすることが提案されている。
【0009】
上記集光プラグは、集光レンズと反射壁とからなる入光部を有している。上記入光部は、下側に該入光部からの光を培養槽内へ照射する出光筒が取り付けられている。
【0010】
かかる集光プラグを備えた培養装置は、その使用を行う場合、培養槽の天井部に、上記集光プラグの入光部が取り付けられる。この際、該入光部は、培養槽の天井部の上面側に露出されるように取り付けられる。
【0011】
更に、上記出光筒は、培養槽内の培養液に没入されて配置される。
【0012】
これにより、上記培養装置は、上記集光プラグで集光された光が、上記培養槽内の培養液中に配置されている出光筒より出光されるようになる。よって、上記培養装置は、上記培養槽内の培養液に対して効率よく光が照射できるとされている(たとえば、特許文献3参照)。
【0013】
なお、藻類等の光合成生物の培養を行う際に、照明光の明暗を交互に与えることで、フラッシングライト効果(光合成の明反応、暗反応サイクル効果)により光合成の効率を高めることができることは、従来知られている(たとえば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表平7−184631号公報
【特許文献2】特開平5−76343号公報
【特許文献3】特開平8−9809号公報
【特許文献4】特開2007−43909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、上記特許文献1に示された開放系の培養槽は、外部の太陽光等の照明光が照射されるのが、液面のみとされている。
【0016】
そのために、上記開放系の培養槽は、光合成生物の増殖に伴って、培養槽内の培養液の濁度が増加すると、該培養槽の底の方の領域に存在している光合成生物には、照明光が届きにくくなるという問題がある。
【0017】
この点、特許文献2に示されたものは、藻類の増殖に伴って培養槽内の培養液の濁度が増加しても、集光手段の側面出光型光ファイバを経ることで、培養槽の底部付近まで照明光を照射させられる。
【0018】
同様に、特許文献3に示されたものは、藻類の増殖に伴って培養槽内の培養液の濁度が増加しても、集光プラグの出光筒を経ることで、培養槽の底部付近まで照明光を照射させられる。
【0019】
しかし、特許文献2や特許文献3に示されたものは、上記集光手段や集光プラグを設置するために、培養槽に天井部が必要とされる。そのために、上記特許文献2や特許文献3に示されたものは、培養槽の平面積が大きくなると、該培養槽に天井部を設けるための設備コストが嵩むと共に、保守のためのコストも嵩むという問題が生じる。
【0020】
更に、特許文献2に示されている集光装置2の側面出光型光ファイバは、培養槽内を流通する培養液の流れの中に配置されるものである。又、特許文献3に示されている集光プラグの出光筒は、培養槽内を流通する培養液の流れの中に配置されるものである。
【0021】
そのため、上記特許文献2、特許文献3に示されたものでは、培養槽内の培養液の流れが妨げられ易くなってしまう。よって、上記側面集光型光ファイバや、上記出光筒は、培養液中の藻類が付着し易くなってしまう。更には、上記特許文献2、特許文献3に示されたものは、上記培養槽にて培養液を流通させるために消費するエネルギーが大となってしまう。
【0022】
又、上記特許文献1、特許文献2、特許文献3には、いずれにも、光合成生物の光合成をフラッシングライト効果により促進する考えは示されていない。
【0023】
一方、特許文献4に示されたものには、上記したように、フラッシングライト効果による光合成生物の光合成を促進させる考えが示されている。
【0024】
しかし、特許文献4に示された上記光合成生物に光の明暗を与える手段は、培養容器内で発生させるゲルトラー渦により、光合成生物が培養容器の周壁近傍の明部と、容器中央部の暗部を交互に移動することで行われている。そのため、上記特許文献4に示された光の明暗を与える手段は、開放系の培養槽にそのまま適用できるものではない。
【0025】
そこで、本発明は、開放系の培養槽にて、培養液中に懸濁された光合成生物に効率よくフラッシングライト効果を与えて、該光合成生物の増殖の促進化を図ることができる集光装置、及び、該集光装置を用いた培養装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、光透過性を有する素材製であって、且つ中心位置の鉛直断面形状が両凸となる凸レンズとしてあり、更に、全体の比重を1未満としてあって、培養槽に貯留された光合成生物の培養液に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊できるようにしてなる構成を有する集光装置とする。
【0027】
又、上記構成において、中心位置の鉛直断面形状を、培養液に没水する下面側の曲率半径の方が上面側の曲率半径よりも大となる両凸レンズ形状とした構成の集光装置とする。
【0028】
同様に、上記構成において、中心位置の鉛直断面形状を、上面側を円弧面とする平凸レンズ形状とし、下面側を頂角が下向きとなる二等辺三角形状としてなる形状とした構成の集光装置とする。
【0029】
更に、上記各構成において、上部側を比重が1よりも小さい樹脂とし、下部側を比重が1よりも大きい樹脂として、重心の位置を没水側に偏在させるようにした構成の集光装置とする。
【0030】
上述の各構成において、没水する下面側の焦点が、培養槽に貯留される培養液の液面から、該培養液の液深の1/2から2/3の距離となる位置に配置されるようにした構成の集光装置とする。
【0031】
又、請求項6に対応して、光合成微生物の培養液を貯留させて、該培養液を循環流通させる培養槽と、光透過性を有する素材製で且つ中心位置の鉛直断面形状が上下方向に両凸となる凸レンズとし、更に、全体の比重を1未満としてなる集光装置とを備え、該集光装置を、上記培養槽の培養液の液面に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊させて用いるようにした構成を有する培養装置とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)光透過性を有する素材製であって、且つ中心位置の鉛直断面形状が両凸となる凸レンズとしてあり、更に、全体の比重を1未満としてあって、培養槽に貯留された光合成生物の培養液に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊できるようにしてなる構成を有する集光装置としてあるので、培養槽の培養液の液面に多数浮遊させることで、該培養液の中に、各集光装置の直下位置毎に照明光が集光して照射される明部と、暗部とを形成することができる。
(2)更に、上記培養液に含まれる光合成生物が、培養槽での培養液の流れに乗って上記明部と暗部を交互に通過するようにすることで、フラッシングライト効果による光合成の促進を図ることができる。よって、上記光合成生物の増殖の促進化を図ることができる。(3)光合成微生物の培養液を貯留させて、該培養液を循環流通させる培養槽と、光透過性を有する素材製で且つ中心位置の鉛直断面形状が上下方向に両凸となる両凸レンズとし、更に、全体の比重を1未満としてなる集光装置とを備え、該集光装置を、上記培養槽の培養液の液面に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊させて用いるようにした構成を有する培養装置とすることにより、上記(1)(2)の効果を有する光合成生物の培養を実施するための装置構成を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の集光装置の実施の一形態を示す概略切断側面図である。
【図2】図1の集光装置を開放系の培養槽に適用した状態を示す概略側面図である。
【図3】図1の集光装置を適用した開放系の培養装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図4】本発明の集光装置の実施の他の形態を示す概略切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0035】
図1及び図2は本発明の集光装置の実施の一形態を示すものである。
【0036】
すなわち、図1に示すように、本発明の集光装置1は、光透過性を有する素材製であって、且つ中心位置での鉛直断面形状を上下方向に両凸とした凸レンズとされている。更に、上記本発明の集光装置1は、全体の比重が1未満とされている。これにより、該本発明の集光装置1は、光合成生物の培養液2の液面に浮遊させることができるように構成されている。
【0037】
詳述すると、上記本発明の集光装置1は、中心位置の鉛直断面形状が、上面側の曲率半径よりも、下面側の曲率半径の方が大となる両凸レンズ形状とされている。具体的には、たとえば、上記鉛直断面形状は、上面側を半円とし、下面側が上記半円よりも曲率半径の大きな円弧形状となるように形成されている。これにより、本発明の集光装置1は、上面側から下面側へ透過する光が、該本発明の集光装置1の下方へ後述する所定寸法離れた位置に設定された焦点fに向けて集光されるように構成されている。
【0038】
更に、上記本発明の集光装置1は、全体が均質であると仮定した場合の仮想の重心位置(物体としての中心)が、上記図1に示した中心位置での鉛直断面形状における図心Aの位置に一致するが、本発明の集光装置1の実際の重心Gは、上記図心Aの下方に配置されるようにしてある。これにより、上記重心Gの位置が、没水側となる下面側に偏在されるようにしてある。
【0039】
上記のように本発明の集光装置1は、実際の重心Gの位置を上記図心Aに対して低くするために、上面側(上部側)と下面側(下部側)を比重の異なる素材で形成した複合構造とされている。
【0040】
具体的には、本発明の集光装置1の上部側は、たとえば、ポリメチルペンテンやポリプロピレン等の光透過性を有し且つ比重が1よりも小さい樹脂で形成されている。一方、本発明の集光装置1の下部側は、光透過性を有し且つ比重が1よりも大きい樹脂、たとえば、比重が1.1程度の樹脂で形成するようにすればよい。なお、この際、本発明の集光装置1は全体の比重が1未満となるようにするという点に鑑みて、上記上部側の素材と、下部側の素材の使用割合は、両者の比重に応じて適宜調整するようにしてあるものとする。
【0041】
これにより、上記本発明の集光装置1は、図1に示すように、培養液2の液面に浮遊させると、上述した図心Aと実際の重心Gの位置とのずれに基づいて、上面側が空気中に露出され、且つ下面側が培養液2に没水された姿勢が自動的にとられるようにしてある。
【0042】
本発明の集光装置1を上面側から下面側へ透過する光の焦点fは、図1に示すように、本発明の集光装置1を適用する培養槽3に貯留された培養液2の液面から、該培養液2の液深dの1/2から2/3程度の距離となる位置に結ばれるようにすることが望ましい。なお、図1は、上記焦点fが、上記培養液2の液面から液深dの2/3となる距離に配置されるように設定された状態が示してある。
【0043】
これにより、上記培養液2の液面に浮遊させた状態の本発明の集光装置1により集光された光は、該本発明の集光装置1の真下に位置する培養液2に対して照射されるようにしてある。更に、上記集光された光は、上記焦点fを通過した後に上記培養槽3の底に達するまで、上記本発明の集光装置1に入射する時点よりも集光された状態が保持されるようにしてある。
【0044】
したがって、本発明の集光装置1は、図2に示すように、上部開放式の培養槽3に貯留された培養液2の液面を覆うように浮遊させられることにより、上記培養液2に対し、該各本発明の集光装置1の直下位置毎に、集光された光が照射される明部4が形成させられることになる。これにより、上記培養液2の中には、上記各本発明の集光装置1の直下位置毎の明部4と、該明部4よりも光量が減少する暗部5とが、水平方向に交互に配列して形成させられることになる。
【0045】
本発明の集光装置1の平面サイズは、上述したように培養液2の液面を覆うように浮遊させた本発明の集光装置1の直下位置毎に形成される明部4と、暗部5が、水平方向に或る所定のピッチで配列されるように設定されている。この明部4と暗部5のピッチは、後述するように培養槽3内で流れを形成させる培養液2に含まれる光合成生物、たとえば、微細藻類が上記明部4と暗部5を交互に通過するときの時間間隔が、光合成の促進に最適なフラッシングライト効果を与える光の明滅サイクルに一致するように設定すればよい。
【0046】
なお、本発明の集光装置1の平面形状は、適用する培養槽3に貯留された培養液2の液面をできるだけ隙間を少なくした状態で覆うことができるようにしてあれば、丸型(図3参照)、正方形や正六角形等の正多角形、矩形等、任意の形状を採用してよい。
【0047】
次に、以上の構成としてある本発明の集光装置1の使用方法を、たとえば、図3に示すような培養装置に適用する場合に沿って説明する。
【0048】
ここで、図3の培養装置の構成について概説すると、該培養装置は、上部開放式のレースウェイ型の培養槽3が備えられている。上記培養槽3には、光合成生物としての微細藻類を懸濁した培養液2が貯留されている。
【0049】
更に、上記培養槽3は、上記培養液2の流通経路の一部となる周方向の一部に、パドル式の撹拌装置6が設けられている。これにより、培養槽3は、該パドル式の撹拌装置6を運転することで、上記培養槽3に貯留されている培養液2全体に、図3に矢印2aで示す如き培養液2の循環流(図3では平面視反時計回り方向の循環流)が形成されるようにしてある。
【0050】
なお、上記培養槽3には、培養液2中に上記培養対象となる微細藻類が光合成する際に必要とされる二酸化炭素を供給するための図示しない二酸化炭素供給手段が、周方向の所定個所に備えられている。
【0051】
かかる構成としてある培養装置には、上記本発明の集光装置1を適用するに際して、予め、図3に示す如く、上記培養槽3における上記パドル式の撹拌装置6の上流側近傍位置及び下流側近傍位置の少なくとも液面部分に、ネット等の浮遊物移動阻止部材7a,7bを設けておくようにする。これにより、後述するように上記培養槽3に貯留された培養液2の液面に浮遊させる本発明の集光装置1が、上記パドル式の撹拌装置6に巻き込まれる虞を回避できるようにしておく。
【0052】
次に、上記培養装置に、上記本発明の集光装置1を適用する場合は、上記パドル式の撹拌装置6を運転して、培養槽3内の培養液2に循環流(図3の矢印2a参照)が形成されるようにする。
【0053】
次いで、上記培養槽3には、上記パドル式の撹拌装置6の直ぐ下流側位置となる個所にて、多数の本発明の集光装置1を培養槽3へ順次投入させる。上記培養槽3に投入された本発明の集光装置1は、培養液2の液面に浮遊して、上面側が空気中に露出され、且つ下面側を培養液2に没水された姿勢が自動的にとられるようになる。
【0054】
その後、上記培養液2の液面に浮遊する本発明の集光装置1は、上記培養槽3内に形成されている培養液2の循環流により搬送されることにより、上記パドル式の撹拌装置6の上流側近傍位置にある浮遊物移動阻止部材7aの設置個所を最前列として順に滞留させられる。これにより、該培養液2の表面が、本発明の集光装置1で隙間なく覆われるようになる。
【0055】
上記培養槽3の培養液2の液面が、上記本発明の集光装置1によりほぼ隙間なく覆われると、その時点で、上記培養槽3への本発明の集光装置1の投入は停止させるようにする。
【0056】
このようにして、培養槽3は、培養液2の液面が本発明の集光装置1で覆われた状態で、太陽光のような照明光が照射されると、上記培養液2の中には、図2に示したように、各本発明の集光装置1の直下位置毎に上記照明光が集光されて照射される明部4と、暗部5が水平方向に交互に配列されて形成される。
【0057】
更に、上記明部4は、上記照明光を本発明の集光装置1で集光して培養液2中に照射することで形成されているため、微細藻類の増殖により該培養液2の濁度が高まっていても、該濁度の高い培養液2の奥深くまで該明部4を形成させることができる。
【0058】
よって、この状態で、上記培養槽3の内部を循環する培養液2に含まれている微細藻類は、図2に矢印2bで示すように、上記明部4と暗部5を交互に通過するようになるため、フラッシングライト効果による光合成の促進が受けられるようになる。
【0059】
このように、本発明の集光装置1によれば、培養槽3に貯留された培養液2の液面を覆うように浮遊させることで、該培養液2の中に、培養液2の液面に対する照明光を集光して該培養液2中に照射した明部4と、暗部5を水平方向に交互配列で形成させることができる。
【0060】
よって、上記培養槽3内で流通させられる培養液2では、該培養液2に含まれる微細藻類について、フラッシングライト効果による光合成の促進を図ることができて、該微細藻類の増殖が促されることになる。
【0061】
本発明の集光装置1は、下面側の曲率半径が、上面側の曲率半径よりも大となるようにしてあるため、上記培養槽3における培養液2の流れの妨げとなる虞はない。よって、上記培養槽3に培養液2を流通させるためのエネルギー消費を抑制することができる。
【0062】
更に、本発明の集光装置1は、使用時に機械的な固定は行っていないため、培養対象である微細藻類の付着等により該本発明の集光装置1の光透過性が低下した場合は、網等の固液分離可能な回収手段を用いて上記培養槽3の培養液2の液面より容易に回収することができる。その後は、回収後、洗浄して光透過性を回復させた本発明の集光装置1、あるいは、新たな本発明の集光装置1を、上記培養槽3に単に投入することで、前述したように上記培養槽3の培養液2の液面を覆うように容易に配置することができる。よって、本発明の集光装置1は、該本発明の集光装置1自体の保守を容易なものとすることができる。
【0063】
更に、本発明の集光装置1は、培養槽3に貯留された培養液2の液面を覆うように浮遊させて使用することにより、以下のような効果も得ることができる。
【0064】
第1の効果としては、上記培養槽3の天井部を不要にできる。よって、該培養槽3の設備コストや、保守のためのコストが増加することが防止される。
【0065】
第2の効果としては、上記培養液2の液面が大気に接する部分の面積を低減させることができる。よって、上記培養液2へ供給している二酸化炭素の該培養液2の液面からの放散が抑制されることになる。このため、上記培養液2に供給する二酸化炭素の量を低減させることができる。更に、培養液2に、外部から、たとえば、培養対象である微細藻類を捕食するワムシ等の微小動物や、培養対象以外の光合成生物の侵入が抑制されることになる。
【0066】
第3の効果としては、本発明の集光装置1の素材として断熱性に優れたものを用いるようにすることで、上記培養槽3に貯留された培養液2と外気との断熱効果が得られるようになる。
【0067】
次に、図4は本発明の実施の他の形態として、集光装置の別の例を示すものである。
【0068】
すなわち、図4に示す集光装置1aは、図1及び図2に示した集光装置1と同様に、中心位置での鉛直断面形状を上下方向に両凸となる凸レンズとする構成において、該中心位置での鉛直断面形状を、上下両側を円弧形状とした両凸レンズ形状とする構成に代えて、該中心位置の鉛直断面形状を、上面側(上部側)を円弧面とする平凸レンズ形状とし、下面側(下部側)を頂角が下向きとなる二等辺三角形状としてなる形状とした構成とする。
【0069】
なお、本実施の形態の集光装置1aの平面形状は、図1及び図2に示した集光装置1と同様に、丸型、正方形や正六角形等の正多角形、矩形等、任意の形状を採用してよい。
【0070】
この際、本実施の形態の集光装置1aは、上記したように、中心位置での鉛直断面形状の下面側が、頂角が下向きとなる二等辺三角形状となるようにしてあるため、本実施の形態の集光装置1aの下部の3次元形状は、上記した本実施の形態の集光装置1aの平面形状に応じて、円錐(アキシコンレンズ)形状、角錐形状、又は、三角プリズム形状のいずれかを採用するようにすればよい。
【0071】
更に、本実施の形態の集光装置1aは、上面側から下面側へ透過する光が、上記図1及び図2の実施の形態の集光装置1の焦点fと同様に設定された焦点fに向けて集光されるようにしてある。
【0072】
その他の構成は図1及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0073】
したがって、本実施の形態の集光装置1aは、図2に示した集光装置1と同様に、上部開放式の培養槽3に貯留された培養液2の液面を覆うように浮遊させられることにより、上記培養液2に対し、該各本実施の形態の集光装置1aの直下位置毎に、集光された光が照射される明部4を形成することができる。これにより、上記培養液2の中には、上記各本実施の形態の集光装置1aの直下位置毎の明部4と、該明部4よりも光量が減少する暗部5が、水平方向に交互に配列して形成されるようになる。
【0074】
よって、本実施の形態の集光装置1aは、図1及び図2に示した集光装置1と同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、培養槽3に貯留された培養液2の液深に応じて本発明の集光装置1,1aに要求される焦点fまでの距離が得られるようにしてあれば、図1及び図2の実施の形態の集光装置1は、上面側と下面側の曲率半径を適宜変更してもよい。同様に、図4の実施の形態の集光装置1aは、上面側の曲率半径、及び、下部の鉛直断面形状の二等辺三角形状の斜辺の角度を適宜変更してもよい。
【0076】
本発明の集光装置1,1aを適用する培養装置は、上部開放式のレースウェイ型の培養槽3が備えられていれば、平面形状が円形や楕円形、その他、図3に示した以外の任意の形式の培養槽3を備えた培養装置に適用してもよい。
【0077】
又、上記培養槽3内に培養液2の循環流を形成させることができるようにしてあれば、培養槽3に装備する撹拌装置は、パドル式以外の任意の形式の撹拌装置であってもよい。
【0078】
本発明の集光装置1,1aは、培養槽3に貯留された培養液2に懸濁させた状態で培養することができる光合成生物であれば、微細藻類以外のいかなる光合成生物を培養する場合に適用してもよい。
【0079】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
1,1a 集光装置
2 培養液
3 培養槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する素材製であって、且つ中心位置の鉛直断面形状が両凸となる凸レンズとしてあり、更に、全体の比重を1未満としてあって、培養槽に貯留された光合成生物の培養液に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊できるようにしてなる構成を有することを特徴とする集光装置。
【請求項2】
中心位置の鉛直断面形状を、培養液に没水する下面側の曲率半径の方が上面側の曲率半径よりも大となる両凸レンズ形状とした請求項1記載の集光装置。
【請求項3】
中心位置の鉛直断面形状を、上面側を円弧面とする平凸レンズ形状とし、下面側を頂角が下向きとなる二等辺三角形状としてなる形状とした請求項1記載の集光装置。
【請求項4】
上部側を比重が1よりも小さい樹脂とし、下部側を比重が1よりも大きい樹脂として、重心の位置を没水側に偏在させるようにした請求項1、2又は3記載の集光装置。
【請求項5】
没水する下面側の焦点が、培養槽に貯留される培養液の液面から、該培養液の液深の1/2から2/3の距離となる位置に配置されるようにした請求項1、2、3又は4記載の集光装置。
【請求項6】
光合成微生物の培養液を貯留させて、該培養液を循環流通させる培養槽と、光透過性を有する素材製で且つ中心位置の鉛直断面形状が上下方向に両凸となる凸レンズとし、更に、全体の比重を1未満としてなる集光装置とを備え、該集光装置を、上記培養槽の培養液の液面に一方の凸側が没水する姿勢で浮遊させて用いるようにした構成を有することを特徴とする培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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