説明

集合住宅、及びその施工方法

【課題】横方向に細長い形状の集合住宅において、長手方向の構面を構成する柱や梁の断面寸法をより小さく設定でき、それにより、住戸の室内空間の広がりを確保できるようにする。
【解決手段】横方向に細長い形状の集合住宅10であって、建物の長手方向に幅が広がり、建物の下部から屋上部まで延びるように設けられた壁柱30と、前記屋上部に建物の長手方向に延びるように設けられ、壁柱30と建物の柱22とに結合された壁梁32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に細長い形状である集合住宅及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅として、各階の廊下とバルコニーとの間に複数の住戸が連なるように配され、横方向に細長い形状に構成された板状集合住宅が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、特許文献1、2に記載の板状集合住宅では、住戸の戸境壁を、複数階に亘る連層耐震壁とすることで、耐震性能を確保しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−013848号公報
【特許文献2】特開2009−002107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、中高層の集合住宅では、高層になるほど地震時の揺れが大きくなり大きな地震力が作用する。このため、上記板状集合住宅等の横方向に細長い形状の集合住宅では、長手方向に作用する地震力に対して、抵抗する構面を構成する柱や梁の断面寸法を、高層になるほど大きく設定することで対応しており、住戸では、柱や梁が室内に突出することで室内空間が狭められる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、横方向に細長い形状の集合住宅において、建物の長手方向の構面を構成する柱や梁の断面寸法をより小さく設定でき、それにより、住戸の室内空間の広がりを確保できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る集合住宅は、横方向に細長い形状の集合住宅であって、建物の長手方向に幅が広がり、建物の下部から屋上部まで延びるように設けられた壁柱と、前記屋上部に建物の長手方向に延びるように設けられ、前記壁柱と建物の柱とに結合された壁梁と、を備える。
【0007】
前記集合住宅において、前記壁柱は建物の外周部に設けられてもよい。
【0008】
前記集合住宅において、連層の戸境壁を備えてもよく、前記建物の柱が、前記戸境壁の幅方向の少なくとも一部を構成する戸境の壁柱であってもよい。
【0009】
前記集合住宅において、建物の長手方向に配列された複数の連層の戸境壁を備えてもよく、また、前記建物の柱が、前記戸境壁の幅方向の一部を構成する戸境の壁柱であってもよく、さらに、前記戸境壁の高さ方向の一部では、前記戸境壁の全体が耐震壁で構成されてもよい。
【0010】
また、本発明に係る集合住宅の施工方法は、横方向に細長い形状の集合住宅の施工方法であって、壁柱を、建物の長手方向に幅が広がり、建物の下部から屋上部まで延びるように設け、壁梁を、前記屋上部に建物の長手方向に延びるように設け、前記壁柱と建物の柱とに結合する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、横方向に細長い形状の集合住宅において、建物の長手方向の構面を構成する柱や梁の断面寸法をより小さく設定でき、それにより、住戸の室内空間の広がりを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る板状中高層の集合住宅の架構を示す斜視図である。
【図2】集合住宅の一部の住戸の架構を拡大して示す斜視図である。
【図3】集合住宅の住戸区画(平面計画)を示す図である。
【図4】住戸の概略平面図である。
【図5】集合住宅の一部の住戸を示す透視図である。
【図6】集合住宅の最下階(1階)の区画を示す図である。
【図7】集合住宅の架構を示す伏図である。
【図8】構面A2、A3の軸組図である。
【図9】構面B2の軸組図である。
【図10】壁柱の曲げ変形の概念図である。
【図11】本実施形態に係る集合住宅の架構の作用を示す概念図である。
【図12】他の実施形態に係る集合住宅の架構の屋上を示す伏図である。
【図13】他の実施形態に係る集合住宅の構面B2を示す軸組図である。
【図14】他の実施形態に係る集合住宅の架構の構面A1、A4の軸組図である。
【図15】変形例に係る壁柱を備える住戸を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る板状中高層の集合住宅10のRC造の架構11を示す斜視図であり、図2は、集合住宅10の一部の住戸12の架構を拡大して示す斜視図である。これらの図に示すように、架構11は、集合住宅10の外周に建て込まれたRC造の柱14と、桁行方向(住戸の配列方向)に配列された柱14の間に建て込まれた梁16と、桁行方向両側の張間方向(住戸の配列方向と直交する方向)に並んだ一対の柱14の間に建て込まれた梁18と、住戸12の戸境壁の一部(張間方向の中央部)を構成する壁柱20とを備えている。柱14は、各住戸12の四隅に建て込まれ、梁16は、各住戸12の張間方向の両側に建て込まれている。また、架構11は、桁行方向に配された壁柱20の間に建て込まれた梁26と、壁柱20とその張間方向両側の柱14との間に建て込まれた梁28とを備えている。なお、梁28を設けることは必須ではない。
【0014】
また、集合住宅10の架構は、桁行方向両側にそれぞれ配された一対の壁柱30、一対の壁梁32を備えている。なお、壁柱30及び壁梁32を一対設けることは必須ではなく、桁行方向の片側だけに設けてもよい。各壁柱30は、集合住宅10の外壁から桁行方向に突出するように構築され、一対の壁柱30は、張間方向に並べて配されている。また、各壁梁32は、集合住宅10の屋上階から上方に突出するように構築され、一対の壁梁32は、張間方向に並べて配されている。また、各壁柱30は屋上階まで延びており、その上端に壁梁32が一体化されている。
また,張間方向を幅方向として設けられた壁柱20は、最下階から屋上階まで延びている。ここで、複数の壁柱20の中には、上下一対の耐震壁46、48を備るものが存在する。耐震壁46は最下階の戸境壁の全体を構成し、耐震壁48は最上階の戸境壁の全体を構成する。この点については後述する。なお、最下階の耐震壁46を設けることは必須ではなく、最上階の耐震壁48のみ設けてもよい。また、壁柱30及び壁梁32を備えることと、張間方向に壁柱20と連続する耐震壁46、48を備えることとは、どちらか一方でも構わない。
【0015】
図3は、集合住宅10の住戸区画(平面計画)を示す図である。この図に示すように、集合住宅10では、桁行方向に配列された複数の住戸12の張間方向の一方側に廊下13が区画され、他方側にバルコニー15が区画されている。また、各住戸12の張間方向中央部には台所やユニットバス等が設置された水廻りゾーン12Aが区画され、張間方向の両側に居室ゾーン12B、12Cが区画されている。
【0016】
ここで、各階において複数の住戸12の水廻りゾーン12Aは、桁行方向に一列に配列されており、隣設された住戸12の水廻りゾーン12Aの間に壁柱20が設けられている。即ち、複数の壁柱20は、桁行方向に一列に配列されている。また、壁柱30と、壁柱20の幅方向両端との張間方向の位置が一致している。
【0017】
図4は、住戸12の概略平面図である。この図に示すように、壁柱20は、水廻りゾーン12Aの張間方向両端にそれぞれ建て込まれたRC造の柱22と、張間方向に並んだ一対の柱22の間に設けられたRC造の耐震壁24とを備えている。また、柱22と柱14との間には、乾式遮音壁38が設けられており、隣設の住戸12の居室ゾーン12B同士、および居室ゾーン12C同士が、乾式遮音壁38により区画されている。
【0018】
ここで、壁柱20の耐震壁24は、複数階(例えば、図1に示すように、最下階から最上階まで)に亘る連層耐震壁である。これに対して、乾式遮音壁38は、各住戸12の居室ゾーン12B、12C毎に構築された、石膏ボードやグラスウール等からなる壁であり、耐震壁ではなく、取り外しが可能である。
【0019】
図5は、集合住宅10の一部の住戸12を示す透視図である。この図に示すように、水廻りゾーン12Aのスラブ40は、居室ゾーン12B、12Cのスラブ42よりも低く設定されており、台所や風呂等の床とスラブ40との高低差により形成される空間に、排水管等の排水設備が設置されている。ここで、桁行方向に並んだ壁柱20の柱22の間には梁26が建て込まれているが、この梁26は、スラブ40とスラブ42との段差部に設けられている。
【0020】
図6は、集合住宅10の最下階(1階)の区画を示す図である。この図に示すように、集合住宅10の最下階には、住戸12の他に、エントランス等の共用部19が設けられている。ここで、共用部19の上階には、桁行方向に並んだ三戸の住戸12が設けられており、最下階から最上階まで連続する壁柱20が、この共用部19にも存在する。一方、乾式遮音壁38は、共用部19には設けられていない。
【0021】
また、共用部19の張間方向の一方側では、壁柱20と柱14との間に桁行方向に往来可能な通路19Aが形成されているのに対し、共用部19の張間方向の他方側では、壁柱20と柱14との間にトイレや事務所等のゾーン19Bが区画されている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る集合住宅10では、戸境壁の張間方向の全体ではなく一部(中央部)のみを連層耐震壁たる壁柱20で構成したことにより、壁柱20を最下階の共用部19まで連続させた場合でも、桁行方向への通路19Aを形成でき、共用部19を桁行方向に往来可能な一空間とすることができる。従って、集合住宅10をピロティ形式の建物ではない耐震性能に優れた建物に構成すると共に、最下階の平面計画の自由度を高めることができる。
【0023】
図7は、集合住宅10の架構11を示す伏図である。この図に示すように、集合住宅10の架構11には、それぞれ桁行方向に平行な4構面A1〜A4が形成されている。構面A1は、廊下13側の柱14、梁16により構成され、構面A4は、バルコニー15側の柱14、梁16により構成されている。また、構面A2は、水廻りゾーン12Aと廊下13側の居室ゾーン12Cとの間の柱22、梁26により構成され、構面A3は、水廻りゾーン12Aとバルコニー15側の居室ゾーン12Bとの間の柱22、梁26により構成されている。
【0024】
ここで、本実施形態に係る集合住宅10では、廊下13側とバルコニー15側の2構面A1、A4のみならず、それらの間の2構面A2、A3によっても、桁行方向(図中X方向)の地震力が負担される。これにより、廊下13側とバルコニー15側の2構面A1、A4を構成する柱14、梁16に要求される保有水平耐力が低減されるため、2構面A1、A4を構成する柱14、梁16の断面寸法を縮小でき、以って、住戸12の室内空間を拡大できる。
【0025】
また、張間方向(図中Y方向)の地震力については、壁柱20及び梁28を含む複数の構面B1、B2が負担するところ、構面B1、B2では、張間方向の全体ではなく一部(中央部)のみを連層耐震壁たる壁柱20で構成していることにより、戸境の耐震壁の崩壊形が曲げ降伏先行型となりやすいため、戸境の耐震壁に要求される保有水平耐力を低減できる。従って、戸境の耐震壁たる壁柱20の厚みを縮小でき、以って、住戸12の室内空間を拡大できる。
【0026】
なお、構面B1では、最下階から最上階まで、張間方向の全体ではなく一部(中央部)のみを連層耐震壁たる壁柱20で構成しているが、構面B2では、最下階と最上階とについては、張間方向の全体を耐震壁で構成しており、最下階と最上階との間の階について、張間方向の一部のみを壁柱20で構成している。この点については後述する。
【0027】
また、壁柱20は、一対の柱22とそれらの間の耐震壁24とで構成されており、一対の柱22を連結する梁は設けられていない。このため、水廻りゾーン12Aにおいて戸境壁から梁が突出することがないことから、ユニットバス等の設備を戸境壁に近づけて設置することができ、以って、住戸12内の空間を有効に利用できる。
【0028】
また、スラブ40、42の段差部に梁26を架設して該梁26と柱22とのラーメン架構を構成したことにより、スラブ40、42を支持する構面を柱22、26により構成できる。従って、スラブ40、42に要求される曲げ耐力を低減でき、以って、スラブ40、42の厚さを低減できる。
【0029】
また、水廻りゾーン12Aは、排水設備を設置するための居室ゾーン12B、12Cよりも床高さを低くすることを要するところ、それにより生じるスラブ40、42の段差部に梁26を設けたことにより、住戸12の室内空間を犠牲にすることなく、構面A2、A3を形成することができる。
【0030】
ここで、連層耐震壁の張間方向(住戸の配列方向と直交する方向)の長さが長くなるほど、コンクリートの乾燥収縮が増大し、コンクリートにひび割れが生じ易くなる。そして、戸境壁のコンクリートにひび割れが生じた場合には、住戸間の遮音性能が低下したり、戸境壁の仕上げに支障をきたしたりする。これに対して、本実施形態に係る集合住宅10では、戸境壁の張間方向の全体ではなく一部(中央部)のみを連層耐震壁たる壁柱20を構成し、連層耐震壁の張間方向の長さをより短くしている。また、耐震壁24を張間方向の両側から柱22で拘束している。これにより、コンクリートの乾燥収縮を抑制し、コンクリートにひび割れが生じ難いようにすることができ、以って、住戸間の遮音性能を確保し、戸境壁の仕上げに支障がないようにすることができる。
【0031】
図8は、構面A2、A3の軸組図である。この図に示すように、構面A2、A3の桁行方向(図中X方向)の両側には、壁柱30及び壁梁32が設けられている。壁柱30は、外壁に沿って最下階から屋上まで延びている。また、壁柱30は、桁行方向に対して幅が広がるように設けられている。
【0032】
また、壁梁32は、角住戸の上に桁行方向に対して平行に設けられており、桁行方向の一端が壁柱30の上端に結合され、他端が壁柱20の柱22の上端に結合されている。ここで、壁柱30と壁梁32と柱22とによって門型の架構44が構成されており、この架構44が、桁行方向の地震力を負担することにより、構面A1〜A4が負担する桁行方向の地震力が軽減される。
【0033】
ここで、一般に、中高層の集合住宅では、高層になるほど地震時の揺れが大きくなり大きな地震力が作用することから、柱や梁の断面寸法を大きく設定しており、これにより、柱や梁が室内に突出して室内空間が狭められる。ここで、本実施形態に係る集合住宅10では、構面A2、A3を構成する梁26が存在するが、この梁26が室内空間に突出する場合には、階高を上げることで室内空間の広がりを確保することを要する。
【0034】
これに対して、本実施形態に係る集合住宅10では、架構44により構面A1〜A4が負担する桁行方向の地震力が軽減されることから、構面A1〜A4を構成する柱14、22や梁16、26の断面寸法をより小さく設定でき、住戸12の柱14、22や梁16、26の断面寸法についてもより小さく設定できる。従って、住戸12において柱14、22や梁16、26が室内空間に突出することを抑制でき、室内空間の広がりを確保することができる。また、住戸12については、階高を上げることなく室内空間の広がりを確保することができる。また、柱14、22や梁16、26の断面寸法をより小さく設定できることにより、これらのコストを低減することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る集合住宅10では、壁梁32が壁柱20の上端に結合されており、連層耐震壁たる壁柱20が架構44を構成していることから、架構44による桁行方向の地震力の負担が効果的に増大されている。従って、構面A1〜A4による桁行方向の地震力の負担をより一層軽減でき、構面A1〜A4を構成する柱14や梁16、26の断面寸法をより一層小さく設定できる。
【0036】
また、本実施形態に係る集合住宅10では、壁柱30が外壁に沿って設けられ、壁梁32が屋上に設けられていることから、これらを住戸12の室内空間に突出させることなく、構面A1〜A4による桁行方向の地震力の負担を軽減でき、構面A1〜A4を構成する柱14や梁16、26の断面寸法をより一層小さく設定できる。従って、住戸12の室内空間の広がりを確保することができる。
【0037】
図9は、構面B2の軸組図である。この図に示すように、最下階(1階)と最上階との間の階では、戸境壁の張間方向の中央部のみが連層耐震壁たる壁柱20で構成されているのに対して、最下階と最上階とでは、それぞれ、戸境壁の張間方向の全体が耐震壁46、48で構成されている。
【0038】
ここで、最下階及び最上階において、構面B2は、住戸12の戸境壁を構成し、最下階の共用部19や駐車場等や最上階の二戸分の広さの住戸には位置していない。即ち、構面B2の耐震壁46、48によって、最下階と最上階との平面計画が阻害されることはない。
【0039】
図10は、壁柱20の曲げ変形の概念図である。この図に示すように、壁柱20は、幅方向(張間方向)の寸法が戸境壁の幅方向の寸法よりも短く、高さ方向に細長い形状であることから、幅方向(面内方向)の水平力(地震力や風荷重等)が作用すると、面内方向の曲げ変形が大きくなる。このため、壁柱20の上層階部分では、水平力の負担が小さくなり、廊下13側及びバルコニー15側の柱14、梁28による水平力の負担が大きくなることから、上層階の柱14、梁28の断面寸法を大きく設定することを要する。
【0040】
これに対して、図11に示すように、本実施形態に係る集合住宅10では、最上階及び最下階において廊下13側の柱14からバルコニー15側の柱14まで連続する耐震壁46、48を設けたことにより、壁柱20の面内方向の曲げ変形を抑制できる。即ち、壁柱20が曲げ変形した際に壁柱20に生じる軸力が、廊下13側又はバルコニー15側の柱14に作用し、該柱14がこの軸力に抵抗することにより、壁柱20の面内方向の曲げ変形が抑制される。そして、壁柱20の面内方向の曲げ変形が抑制されることにより、壁柱20の上層階部分での水平力の負担が大きくなり、上層階の廊下13側及びバルコニー15側の柱14、梁28による水平力の負担が小さくなる。これによって、上層階の柱14、梁28の断面寸法をより小さく設定できる。従って、上層階の住戸12において、廊下13側及びバルコニー15側の柱14、梁28が室内空間に突出することを抑制でき、室内空間の広がりを確保することができる。また、柱14、梁28の断面寸法をより小さく設定できることにより、柱14、梁28のコストを低減できる。
【0041】
図12は、他の実施形態に係る集合住宅の架構111の屋上を示す伏図である。この図に示すように、本実施形態に係る集合住宅の架構111では、壁柱30は、架構111の角部に該角部から桁行方向に突出するように設けられており、構面A1、A4の延長線上に位置する。また、壁梁32は、角住戸の上に廊下13側及びバルコニー15側の梁16と平行に設けられており、壁柱30の上端と、該壁柱30と桁行方向に並んだ柱14の上端とに結合されている。
【0042】
本実施形態に係る集合住宅によれば、上述の実施形態と同様、壁柱30と壁梁32と柱14とによって門型の架構144が構成されており、この架構144が、桁行方向の地震力を負担することにより、構面A1〜A4が負担する桁行方向の地震力が軽減される。従って、構面A1〜A4を構成する柱14、22や梁16、26の断面寸法をより小さく設定でき、住戸12の柱14、22や梁16、26の断面寸法についてもより小さく設定できる。
【0043】
図13は、他の実施形態に係る集合住宅211の構面B2を示す軸組図である。この図に示すように、本実施形態に係る集合住宅の架構211では、最上階に耐震壁48が設けられ、中間階に耐震壁46が設けられている。
【0044】
本実施形態に係る集合住宅によれば、上述の実施形態と同様、壁柱20の面内方向の曲げ変形が抑制されることにより、壁柱20の上層階部分での水平力の負担が大きくなり、上層階の廊下13側及びバルコニー15側の柱14、梁28による水平力の負担が小さくなる。従って、上層階の廊下13側及びバルコニー15側の柱14、梁28の断面寸法をより小さく設定できる。
【0045】
図14は、他の実施形態に係る集合住宅の架構311の構面A1、A4の軸組図である。この図に示すように、本実施形態に係る集合住宅の架構311は、桁行方向の中間部に設けられた壁柱330、及び壁梁332を備えている。壁柱330は、桁行方向の中間部の柱14に替えて設けられており、壁梁332は、該柱14の上端の両側の梁16に替えて設けられている。壁柱330は、最下階から屋上まで延びており、壁梁332は、壁柱330の上端と、該壁柱332の両側の柱14の上端とに結合されている。
【0046】
本実施形態に係る集合住宅によれば、上述の実施形態と同様、壁柱330、その両側の壁梁332及び柱14によって架構344が構成されており、この架構344が、桁行方向の地震力を負担することにより、構面A1〜A4が負担する桁行方向の地震力が軽減される。従って、構面A1〜A4を構成する柱14、22や梁16、26の断面寸法をより小さく設定でき、住戸12の柱14、22や梁16、26の断面寸法についてもより小さく設定できる。
【0047】
図15は、壁柱20の変形例に係る壁柱120を備える住戸112を示す概略平面図である。この図に示すように、壁柱120は、耐震壁のみからなり、その壁厚寸法は、上述の壁柱20の柱22の断面寸法と同一である。
【0048】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、板状集合住宅を例に挙げて本発明を説明したが、横方向に細長い形状である他の集合住宅やビル等の建物にも本発明を適用できる。
【0049】
また、上述の実施形態では、壁柱を備える壁柱架構の集合住宅を例に挙げて本発明を説明したが、壁柱を備えない柱梁架構の集合住宅にも本発明を適用できる。さらに、戸境壁の幅方向の一部を壁柱とした集合住宅に限らず、戸境壁の幅方向の全体を壁柱とした集合住宅にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 集合住宅、12 住戸、12A 水廻りゾーン、12B、12C 居室ゾーン、13 廊下、14 柱、15 バルコニー、16、18 梁、19 共用部、19A 通路、19B ゾーン、20 壁柱、21 住戸、21A 通路、21B 外部空間、22 耐震壁、23 住戸、24 柱、25 住戸、25A 光庭、27 住戸、27C 居室ゾーン、26、28 梁、29 住戸、29C 居室ゾーン、30 壁柱、31 住戸、32 壁梁、38 乾式遮音壁、40、42 スラブ、44 架構、46 壁柱、48 壁梁、111 架構、112 住戸、120 壁柱、144 架構、211、311 架構、330 壁柱、332 壁梁、344 架構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に細長い形状の集合住宅であって、
建物の長手方向に幅が広がり、建物の下部から屋上部まで延びるように設けられた壁柱と、
前記屋上部に建物の長手方向に延びるように設けられ、前記壁柱と建物の柱とに結合された壁梁と、
を備える集合住宅。
【請求項2】
前記壁柱は建物の外周部に設けられている請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
連層の戸境壁を備え、
前記建物の柱が、前記戸境壁の幅方向の少なくとも一部を構成する戸境の壁柱である請求項1または請求項2に記載の集合住宅。
【請求項4】
建物の長手方向に配列された複数の連層の戸境壁を備え、
前記建物の柱が、前記戸境壁の幅方向の一部を構成する戸境の壁柱であり、
前記戸境壁の高さ方向の一部では、前記戸境壁の全体が耐震壁で構成されている請求項1または請求項2に記載の集合住宅。
【請求項5】
横方向に細長い形状の集合住宅の施工方法であって、
壁柱を、建物の長手方向に幅が広がり、建物の下部から屋上部まで延びるように設け、
壁梁を、前記屋上部に建物の長手方向に延びるように設け、前記壁柱と建物の柱とに結合する集合住宅の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−225024(P2012−225024A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92278(P2011−92278)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】