説明

集合住宅用充電システム

【課題】 集合住宅の契約電力を超過することなく、集合住宅の駐車場に駐車された電気自動車を共用部消費電力で効率よく充電する。
【解決手段】 集合住宅11の駐車場12に駐車された複数の電気自動車13を集合住宅11の共用部消費電力でもって順次充電する集合住宅用充電システムであって、集合住宅11の契約電力の範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブに応じて、夜間に充電待ちとなる電気自動車13を昼間に充電するようにシフトさせる制御ボックス16を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマンション等の集合住宅に設置され、その集合住宅の駐車場に駐車された複数の車両を集合住宅の共用部消費電力でもって順次充電する集合住宅用充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題から、内燃機関を搭載したガソリン自動車に代わるものとして、エネルギー源としてバッテリを搭載したプラグインハイブリッド車・電気自動車が開発されている。これら電気自動車の場合、走行を継続する必要性から、バッテリを充電しなければならない。そのため、これら電気自動車の普及拡大を目的として、バッテリを充電するための給電インフラの整備が進められている。
【0003】
これら電気自動車の普及拡大に伴って、電気自動車のバッテリを充電するための給電装置が市街地などの各所に設置されることになる。電気自動車のユーザは、市街地などのいずれかの場所に移動し、その場所に設置された給電装置でもって電気自動車のバッテリを充電しなければならない。
【0004】
また、マンション等の集合住宅においても、その集合住宅の駐車場に駐車された複数の電気自動車のバッテリを、その駐車場の所定箇所に設置された給電装置でもって充電することになる。この場合、電気自動車のバッテリは、集合住宅に設置された各種の照明器具やエレベータ等を駆動する共用部消費電力でもって充電されることになる。
【0005】
従来、このような集合住宅の駐車場に駐車された電気自動車を集合住宅の共用電灯で充電する充電システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1における充電システムは、利用者を特定するための利用者情報を入力する入力手段と、利用者情報に基づいてこの充電システムの利用を許可するか否かを判定する判定手段と、利用許可の判定により共用電灯を使用して電気自動車を充電する充電手段と、充電開始から充電終了までの電力量を計測する計測手段と、利用者情報と電力量とを対応付けて記憶する記憶手段とを備えている。
【0007】
以上のような構成を具備した充電システムを利用した場合、集合住宅の各住人がそれぞれの電気自動車の充電にどれだけの共用電灯を使用したかを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−187451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述した従来の充電システムは、集合住宅の駐車場に駐車された電気自動車を集合住宅の共用電灯で充電する上で、集合住宅の各住人がそれぞれの電気自動車の充電にどれだけの共用電灯を使用したかを把握できるようにしたものである。
【0010】
しかしながら、前述した集合住宅では契約電力の制約があり、一度に多数台の電気自動車を充電すると契約電力を超過してしまうことになる。このように契約電力を超過してしまうと電力料金が高騰することから、契約電力の超過を回避する必要がある。
【0011】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、集合住宅の契約電力を超過することなく、集合住宅の駐車場に駐車された電気自動車を共用部消費電力で効率よく充電し得る集合住宅用充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、集合住宅の駐車場に駐車された複数の車両を集合住宅の共用部消費電力でもって順次充電する集合住宅用充電システムであって、集合住宅の契約電力の範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブに応じて、夜間に充電待ちとなる車両を昼間に充電するようにシフトさせる制御部を具備したことを特徴とする。
【0013】
本発明では、集合住宅の契約電力の範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブに応じて、夜間に充電待ちとなる車両を充電するようにシフトさせる制御部を具備したことにより、集合住宅の契約電力を超過することなく、夜間に充電待ちの車両を契約電力まで余裕のある昼間に充電することで、負荷の平準化が実現できる。その結果、集合住宅の駐車場に駐車された複数台の車両を共用部消費電力で効率よく充電することができる。
【0014】
本発明における制御部は、集合住宅に設置された照度センサの検出信号に基づいて車両の充電を停止し、その充電停止完了後に集合住宅の各照明器具を点灯させることが望ましい。
【0015】
このように、照度センサにより昼間であっても天候の変化により暗くなってきた場合、その照度センサの検出信号に基づいて車両の充電を停止する。そして、充電停止完了後に集合住宅の各照明器具を点灯させることにより、昼間でも照明器具を点灯させなければならない場合であっても、車両の充電を確実に停止させることで、集合住宅の契約電力を超過することはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、集合住宅の契約電力の範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブに応じて、夜間に充電待ちとなる車両を充電するようにシフトさせる制御部を具備したことにより、集合住宅の契約電力を超過することなく、夜間に充電待ちの車両を契約電力まで余裕のある昼間に充電することで、負荷の平準化が実現できる。その結果、集合住宅の契約電力を超過することなく、集合住宅の駐車場に駐車された複数台の車両を共用部消費電力で効率よく充電することができ、その実用的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態で、集合住宅用充電システム全体の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の充電システムにおけるシフト充電制御(夜間および昼間)を説明するための説明図である。
【図3】(A)(B)は図1の充電システムにおけるシフト充電制御(昼間)を説明するための説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態で、照明制御を付加した充電システム全体の概略構成を示す模式図である。
【図5】図4の充電システムにおける照明制御のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】図4の充電システムにおける照明制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る集合住宅用充電システムの実施形態を以下に詳述する。
【0019】
図1は集合住宅の駐車場に駐車された複数の車両を集合住宅の共用部消費電力でもって順次充電する集合住宅用充電システムの全体構成を示す。
【0020】
同図に示すように、マンション等の集合住宅11の立体駐車場12に駐車された複数台(例えば10台)の車両である電気自動車13(EV)が充電可能なように、その立体駐車場12に10台分の充電コンセント14を設置すると共に、電気自動車13のバッテリへの充電を開始するための操作パネル15と、電気自動車13のバッテリへの充電を制御する制御部である制御ボックス16とを立体駐車場12の柱などに設置している。
【0021】
前述の制御ボックス16は、10台分の充電コンセント14に対応させてその充電コンセント14と同数の計量センサ17および開閉器18と、それら計量センサ17および開閉器18を制御する充電制御用CPU19を内蔵している。この充電システムでは、電気自動車13を集合住宅11の共用部消費電力でもって充電することから、配電線が電力量計20およびEV用分電盤21を介して制御ボックス16の計量センサ17に電源線22で接続され、その計量センサ17が開閉器18を介して充電コンセント14に電源線22で接続されている。
【0022】
この制御ボックス16内では、各計量センサ17および開閉器18が充電制御用CPU19と通信線23で接続されている。また、前述の操作パネル15が制御ボックス16の充電制御用CPU19と制御信号線24で接続されている。この操作パネル15は、タッチパネルによる充電操作が可能で、電気自動車13が駐車された区画番号を押すと、その区画番号に対応する立体駐車場12の充電コンセント14の状況(「充電中」、「充電待ち」など)を色分けで表示する。
【0023】
なお、インターネット網25を介してサーバ26と接続された給電装置27を設置することも可能で、その給電装置27を設置する場合には制御ボックス16の充電制御用CPU19に通信線23で接続される。この給電装置27の設置により、充電使用量をサーバ26で管理することができ、駐車場管理者はその充電使用量を参照することができる。
【0024】
以上の構成からなる充電システムでは、駐車場使用者が自己の電気自動車13を駐車している区画番号を操作パネル15で選択することにより、その操作パネル15では、区画番号に対応する立体駐車場13の充電コンセント14の状況(「充電中」、「充電待ち」など)を色分けで表示する。その充電コンセント14の状況が充電可能であれば、操作パネル15の表示が「充電中」となり、制御ボックス16の開閉器18を閉成すると共に計量センサ17が充電使用量を計測開始する。また、充電コンセント14の状況が充電不可能であれば、操作パネル15の表示が「充電待ち」となり、制御ボックス16の開閉器18を開成すると共に計量センサ17が動作しない。
【0025】
この制御ボックス16の充電制御用CPU19は、充電コンセント14の状況、つまり、「充電中」と「充電待ち」とを以下のように制御する。つまり、図2に示すように、集合住宅11の契約電力Lの範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブSに応じて、夜間に充電待ちとなる電気自動車13を昼間に充電するようにシフトさせる。
【0026】
集合住宅11では契約電力Lの制約があり、一度に多数台の電気自動車13を充電することにより、契約電力Lを超過してしまうと電力料金が高騰することから、契約電力Lの超過を回避する必要がある。また、集合住宅11において、夜間については、照明器具を点灯させると共にエレベータを作動させることから共用部消費電力が多く、これに対して、昼間については、照明器具を消灯させてエレベータのみを作動させることから共用部消費電力が少ない負荷カーブSとなる(図2参照)。
【0027】
夜間において、共用部消費電力の負荷カーブSが契約電力Lに達する状態(図中のA部分)では、例えば10台全ての電気自動車13が「充電待ち」となる。また、共用部消費電力の負荷カーブSが契約電力Lよりも若干少なく余裕がない状態(図中のB部分)では、例えば1台のみの電気自動車13が「充電中」となり、残り9台の電気自動車13が「充電待ち」となる。これに対して、昼間になって、共用部消費電力の負荷カーブSが契約電力Lよりもかなり少なく余裕がある状態(図中のC部分)では、夜間に「充電待ち」であった残り9台の電気自動車13についてシフトさせ、9台の電気自動車13のうち、契約電力Lを超過しない範囲で充電可能な台数の電気自動車13を「充電中」とする。
【0028】
この昼間において、9台(2台目〜10台目)の電気自動車13を充電するための電力が契約電力Lを下回っている場合には、9台全ての電気自動車13が充電可能で「充電中」となる。また、図3(A)に示すように、9台(2台目〜10台目)の電気自動車13のうち、6台(2台目〜7台目)の電気自動車13が充電可能であれば、6台の電気自動車13が「充電中」となり、残り3台(8台目〜10台目)の電気自動車13が「充電待ち」となる。そして、図3(B)に示すように、6台(2台目〜7台目)の電気自動車13のうち、1台(2台目)の電気自動車13の充電が完了すれば、6台(3台目〜8台目)の電気自動車13が「充電中」となり、残り2台(9台目〜10台目)の電気自動車13が「充電待ち」となる。
【0029】
以上のようにして、集合住宅11の契約電力Lの範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブSに応じて、夜間に充電待ちとなる電気自動車13を充電するようにシフトさせることにより、集合住宅11の契約電力Lを超過することなく、夜間に充電待ちの電気自動車13を契約電力Lまで余裕のある昼間に充電することで、負荷の平準化が実現できる。その結果、集合住宅11の駐車場12に駐車された複数台の電気自動車13を共用部消費電力で効率よく充電することができる。
【0030】
図4は図1の充電システムに照明制御を付加した充電システムの全体構成を示す。図5は充電システムにおける照明制御のハードウェア構成を示し、図6はその照明制御のフローチャートである。なお、図4の充電システムにおいて図1の充電システムと同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。
【0031】
図4に示すようにEV用分電盤21を収容した共用部分電盤28に照明分電盤29を格納すると共に、その共用部分電盤28に照明制御用CPU30と自動照明制御装置31を内蔵させる。この照明制御用CPU30は、制御ボックス16の充電制御用CPU19に通信線23で接続されると共に、配電線に設けられた計量センサ32に通信線23で接続され、さらに、自動照明制御装置31に制御信号線24で接続されている。一方、自動照明制御装置31は、前述の計量センサ32に電源線22で接続されると共に、図5に示すように集合住宅11の各所に設けられた複数の照明器具33が接続され、昼間における天候悪化による照度低下を検出するための照度センサ34が接続されている。
【0032】
集合住宅11では、昼間においても天候の悪化でもって暗くなってくると、集合住宅11の各所に設けられた照明器具33を点灯させることになる。この状態で、電気自動車13の充電を継続すると、集合住宅11の契約電力Lを超過する可能性がある。
【0033】
そこで、この充電システムでは、図5および図6に示すように、昼間において天候の悪化により暗くなってくると(STEP1)、照度センサ34により照度の低下を検出し(STEP2)、その照度センサ34の検出信号に基づいて共用部分電盤28の自動照明制御装置31では照度センサON信号を照度制御用CPU30に出力する(STEP3)。共用部分電盤28の照度制御用CPU30では、自動照明制御装置31から出力された照度センサON信号に基づいて制御ボックス16の充電制御用CPU19に充電停止指令を出力する(STEP4)。充電制御用CPU19では、この充電停止指令に基づいて開閉器18を開成することにより電気自動車13の充電を停止する(STEP5)。
【0034】
このようにして電気自動車13の充電停止が完了すると、制御ボックス16の充電制御用CPU19から充電停止完了指令を共用部分電盤28の照明制御用CPU30に出力する(STEP6)。この照明制御用CPU30では、充電制御用CPU19から出力される充電停止完了指令に基づいて照明ON準備完了指令を自動照明制御装置31に出力する(STEP7)。この共用部分電盤28の自動照明制御装置31では、照明制御用CPU30から出力される照明ON準備完了指令に基づいて照明ON指令を出力し(STEP8)、その照明ON指令に基づいて各照明器具33を点灯させる(STEP9)。
【0035】
このようにして、昼間であっても天候の変化により暗くなってきた場合、照明センサ34の検出信号に基づいて電気自動車13の充電を停止した上で、集合住宅11の各照明器具33の点灯を開始することにより、電気自動車13の充電中である昼間に照明器具33を点灯させなければならない場合であっても、電気自動車13の充電を一旦停止させてから照明器具33を点灯させるので、集合住宅11の契約電力Lを超過することはない。
【0036】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0037】
11 集合住宅
12 駐車場
13 車両(電気自動車)
16 制御部(制御ボックス)
33 照明器具
34 照度センサ
L 契約電力
S 負荷カーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の駐車場に駐車された複数の車両を前記集合住宅の共用部消費電力でもって順次充電する集合住宅用充電システムであって、前記集合住宅の契約電力の範囲内で、共用部消費電力が夜間に多く昼間に少ない負荷カーブに応じて、夜間に充電待ちとなる車両を昼間に充電するようにシフトさせる制御部を具備したことを特徴とする集合住宅用充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、集合住宅に設置された照度センサの検出信号に基づいて車両の充電を停止し、その充電停止完了後に前記集合住宅の各照明器具を点灯させる請求項1に記載の集合住宅用充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99135(P2013−99135A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240389(P2011−240389)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000220882)株式会社エネゲート (42)
【Fターム(参考)】