説明

集合住宅用防犯扉

【課題】マンションの各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく、押し入り犯罪にも対処し得る防犯扉を提供する。
【解決手段】この防犯扉10は二重扉になっており、その補助扉2が、玄関扉1が設けられた壁面Hに対して配設されるとともに、囲繞姿勢Tおよび格納姿勢Kのそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有している。そして、囲繞姿勢Tにあっては、玄関扉1に隣接する共用空間C側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され且つその囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能になっており、格納姿勢Kにあっては、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って格納されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の集合住宅の防犯扉として好適な防犯扉に関する。
【背景技術】
【0002】
防犯等を目的として、住宅の玄関前に扉等を二重に設置して防犯効果を高める技術が種々提案されている。
例えば特許文献1には、玄関等の補助扉が開示されており、この補助扉は、通常の扉に隣接して設けられ、居室内から外部を視認可能に構成されている。同文献記載の技術によれば、通常の扉の他に補助扉が追加されており、その補助扉は、居室内から外部を視認可能になっているので、防犯効果を高めることができる。
【0003】
また、例えば特許文献2には、戸建て住宅の玄関前に設置する玄関前柵が開示されている。この玄関前柵は、複数の縦桟を配設して柵を形成しており、隣接する縦桟は水平パンタグラフ機構によって連結されている。同文献記載の技術によれば、住宅の玄関前に設置した玄関前柵で防犯効果を高めることができる。そして、この玄関前柵は、水平パンタグラフ機構で伸縮可能なので、玄関の間口幅が異なっていても、間口幅に合わせて設置することができる。
【0004】
また、例えば特許文献3には、出入り口を二重扉とし、最初の扉が閉まらない限り二番目の扉が開かない構成とし、且つ、前記2枚の扉の間の空間を、例えば風防室も兼ねるようにして、人が一人程度入れる空間として構成しており、これにより、侵入者を排除する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−16205号公報
【特許文献2】特開2005−200864号公報
【特許文献3】特開2007−197926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば特許文献1に記載の技術では、居室内に居るときには防犯効果が期待できるものの、補助扉が通常の扉に隣接して設けられているので、外部から居室側に入る際には、二枚の扉を同時に開かなければ入室することができない。そのため、帰宅する人の後を尾行したり、帰宅を待ち伏せしたりして、帰宅する人が扉を開けた瞬間に押し入り、強盗や強姦をするといった犯罪(以下、「押し入り犯罪」という)には対処することができない。
【0006】
これに対し、例えば特許文献2に記載の技術では、玄関前柵は、例えば玄関ポーチ等を利用して、玄関扉との間に人が入れる空間を確保できるため、上記のような押し入り犯罪にも対処可能である。同様に、特許文献3に記載の技術についても、2枚の扉の間の空間を人が一人程度入れる空間として構成しており、これにより侵入者を排除するので、押し入り犯罪にも対処することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、戸建て住宅での玄関を想定した技術であり、外側の扉が玄関ポーチ等を利用してその外部の空間を占有して設置される。そのため、同文献記載の技術を、マンション等の集合住宅用の防犯扉として、各世帯の専用空間の玄関に採用しようとしても、玄関外部の共用空間を常に占有し、共用空間本来の利便性が低下してしまうことになる。そのため、特許文献2に記載の技術を、そのまま集合住宅の防犯扉に採用することは難しい。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術についてもこの点において同様であり、マンション等の共用玄関に対しては採用することはできるものの、これを各世帯個別の玄関に採用しようとする場合、共用空間を使わないで設置するには、例えば各世帯の専用空間内に2枚の扉を設置し、その専用空間内において、人が一人程度入れる空間を設ける必要がある。そのため、居室側の空間がその分の制約をうけることになる。また、仮に共用空間側に同様の構成を設けようとしても、2枚の扉のうちの外側の扉およびその扉を支持するための側壁が共用空間を常に占有することになる。そのため、特許文献2に記載の技術同様、共用空間本来の利便性が低下してしまうため、マンション等の集合住宅での各戸用の防犯扉として採用することは難しく、未だ改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、扉等を二重に設置して、押し入り犯罪にも対処し得る防犯扉を、マンション等の集合住宅の防犯扉として採用する上で好適であり、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく、押し入り犯罪にも対処し得る集合住宅用防犯扉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、マンション等の集合住宅に用いられて、各世帯の専用空間と共用空間との間を仕切る施錠可能な第一の扉と、その第一の扉よりも外側の共用空間側に配設される施錠可能な第二の扉とを有する防犯扉であって、前記第二の扉は、前記第一の扉が設けられた壁面に対して配設されるとともに、囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有し、前記囲繞姿勢にあっては、前記第一の扉に隣接する前記共用空間側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され且つその囲繞された空間内を前記共用空間側から視認可能になっており、前記格納姿勢にあっては、前記第一の扉が設けられた壁面に沿って格納されるようになっていることを特徴としている。
【0011】
第一の発明に係る集合住宅用防犯扉によれば、各世帯の専用空間と共用空間との間を仕切る施錠可能な第一の扉の他に、第二の扉が追加されているので、防犯効果を高めることができる。
そして、この第二の扉は、第一の扉が設けられた壁面に対して配設されるとともに、囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有し、囲繞姿勢にあっては、第一の扉に隣接する共用空間側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され且つその囲繞された空間内を共用空間側から視認可能なので、例えば上述した押し入り犯罪を画策する侵入者がいても、その侵入者を確実に排除することができる。
【0012】
すなわち、この本発明に係る集合住宅用防犯扉を使用する場合、居住者等は、例えば共用空間側から専用空間内に入るときには、前記囲繞すべき空間内で第二の扉を前記囲繞姿勢に位置させてから第二の扉を施錠し、その後に、第一の扉を開けて専用空間内に入り、また、専用空間内から共用空間側に出るときには、第一の扉から前記囲繞された空間内に出てから第一の扉を施錠し、その後に、第二の扉を開錠して格納姿勢に位置させるようにすれば、押し入り犯罪を画策する侵入者がいても、その侵入者を確実に排除可能である。
【0013】
さらに、この集合住宅用防犯扉は、第二の扉の変形構造が、格納姿勢にあっては、前記第一の扉が設けられた壁面に沿って格納されるようになっているので、共用空間での他の世帯の利用を妨げない位置まで格納するように構成可能であり、これにより、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく使用することができる。したがって、共用空間本来の利便性を低下させないようにすることができる。
【0014】
ここで、本発明に係る集合住宅用防犯扉において、前記第二の扉の変形構造は、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネルと、当該複数のガラスパネル相互を回動自在に枢支する複数のヒンジとを有して構成されていることは好ましい。このような構成であれば、上述したような囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造として好適である。
【0015】
また、本発明に係る集合住宅用防犯扉において、前記第二の扉の変形構造は、軸を上下にして配設された複数の桟と、これら複数の桟相互を水平方向に相対移動させるように繋ぐ連結機構と、その連結機構で複数の桟相互を相対移動させるときに、前記囲繞すべき空間に沿って前記複数の桟の上または下の端部を案内する案内レールとを有して構成されていることは好ましい。このような構成であっても、上述したような囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造として好適である。
【0016】
また、本発明に係る集合住宅用防犯扉において、前記第二の扉の変形構造は、モータ等の駆動装置によって自動的に前記囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成されていることは好ましい。このような構成であれば、利便性がより向上するとともに、共用空間を常に占有することのないように格納する上で一層好適である。
また、本発明に係る集合住宅用防犯扉において、前記囲繞される空間内から操作可能な警報装置が設けられていることは好ましい。このような構成であれば、前記囲繞された空間内に居たときに、万が一、上述した押し入り犯罪を画策する侵入者が第二の扉の外側からの侵入を試みようとした場合であっても、警報装置によって直ちに警報をだすことができる。そのため、侵入者をより確実に排除する上で好適である。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、本発明によれば、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく、押し入り犯罪にも対処し得る集合住宅用防犯扉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る集合住宅用防犯扉の第一の実施形態を説明するための斜視図である。また、図2は、その第一の実施形態の防犯扉の平面図であり、同図(a)は、変形構造を有する第二の扉を格納した状態を示し、同図(b)は、その第二の扉を展開(または格納)する途中の状態を示し、同図(c)は、その第二の扉を展開した状態(図1の平面図に相当する)を示している。
【0019】
この集合住宅用防犯扉は、マンション等の集合住宅に用いられるものであり、図1に示すように、玄関扉1と、共用空間C側に配設される補助扉2とを有して構成されている。
詳しくは、図2に示すように、この玄関扉1は、各世帯の専用空間Pと共用空間Cとの間を仕切る第一の扉であり、通常の玄関扉同様に錠を有し専用の鍵によってその施錠および解錠が可能に構成されている。一方、補助扉2は、玄関扉1よりも外側の共用空間C側に配設される第二の扉である。
【0020】
この補助扉2は、玄関扉1が設けられた壁面Hに対して配設され、施錠可能な錠5を有している。そして、本実施形態の例では、この補助扉2の高さは、玄関扉1の高さと略同じ高さに形成されており、また、中央から左右に分離してなる左補助扉2Lと右補助扉2Rとから構成され、観音開き様に開閉されるようになっている。さらに、左右の左補助扉2Lと右補助扉2Rとは、図2(a)に示す格納姿勢K、および、図2(c)に示す囲繞姿勢Tのそれぞれの姿勢をとるように折りたたみ可能に構成された変形構造を有している。
【0021】
より詳しくは、この補助扉2の変形構造は、左補助扉2Lおよび右補助扉2Rのそれぞれが、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネル3を有して構成されている。なお、本実施形態の例では、矩形形状の長尺な強化ガラス製のガラスパネル3を、左右それぞれ5枚有してなる例である。そして、これら複数のガラスパネル3は、複数のヒンジ4によって相互に繋がれている。これら複数のヒンジ4は、隣接するガラスパネル3同士の間それぞれに且つ上下に離間して二箇所設けられており、これにより、複数のガラスパネル3相互を所定の回動範囲内で回動自在に枢支している。また、左右の左補助扉2Lおよび右補助扉2Rは、それぞれを構成する複数のガラスパネル3のうち、最も壁面H側に位置するガラスパネル3が、固定用のヒンジ4Kで壁面Hに回動可能に連結されている。
【0022】
そして、その反対側の端部に位置するガラスパネル3には、上下方向での略中央部に、左右で対をなす上記錠5が装着されており、これら一対の錠5は、左補助扉2Lおよび右補助扉2Rのそれぞれの錠5を相互に掛け止めることで施錠がなされる。
上述の構成により補助扉2の変形構造が構成され、この補助扉2は、図2(a)に示すように、左右の左補助扉2Lおよび右補助扉2Rを左右に離間させ、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って玄関扉1の左右に広げることによって、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って格納される格納姿勢Kをとる。そして、補助扉2は、この格納姿勢Kとすることによって、同図(a)に示すように、共用空間Cでの他の世帯の利用を妨げない位置に格納されるようになっている。
【0023】
また、この補助扉2は、同図(b)に示すように壁面Hから離間する側に湾曲させつつ移動させることによって、同図(c)に示すように、略半円状に湾曲した囲繞姿勢Tになる。なお、この囲繞姿勢Tは、上記複数のヒンジ4のもつ所定の回動範囲によって、略半円状に湾曲した形態が保持されるようになっている。そして、左右の左補助扉2Lおよび右補助扉2Rの対向端に位置する一対の錠5を相互に掛け止めることで施錠がなされて、補助扉2の左右が一体となった状態の囲繞姿勢Tを保持するようになっている。
【0024】
ここで、図2(c)に示す、囲繞姿勢Tに保持された状態の補助扉2と上記玄関扉1とで囲繞された画成空間Rは、少なくとも人が一人入れる広さになっている。換言すれば、この補助扉2は、囲繞姿勢Tにあっては、玄関扉1に隣接する共用空間C側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され、その状態を保持可能に構成されている。
【0025】
そして、左右の左補助扉2Lおよび右補助扉2Rは、上述のように、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネル3で構成されているので、これにより、囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能になっている。なおまた、この囲繞された画成空間Rにおいて、居住者等が同画成空間R内から操作可能な位置に、防犯ブザー9が警報装置として設置されている。これにより、この防犯ブザー9を押すことによって、警報が発せられるようになっている。
【0026】
次に、この防犯扉10の作用・効果について説明する。
この防犯扉10は、上述のように、各世帯の専用空間Pと共用空間Cとの間を仕切る施錠可能な玄関扉1の他に補助扉2が追加されているので、例えば上記特許文献1ないし3に記載の技術同様に、防犯効果を高めることができる。
そして、この防犯扉10によれば、補助扉2は、玄関扉1が設けられた壁面Hに対して配設されるとともに、図2(c)に示す囲繞姿勢T、および同図(a)に示す格納姿勢Kのそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有し、囲繞姿勢Tにあっては、玄関扉1に隣接する共用空間C側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され且つその囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能なので、例えば上述した押し入り犯罪を画策する侵入者がいても、その侵入者を確実に排除することができる。
【0027】
すなわち、この防犯扉10を使用する場合、居住者等は、例えば共用空間C側から専用空間P内に入るときには、前記囲繞すべき画成空間R内で補助扉2を囲繞姿勢Tに位置させてから補助扉2を一対の錠5を相互に掛け止めることで施錠し、その後に、玄関扉1を開けて専用空間P内に入り、また、専用空間P内から共用空間C側に出るときには、玄関扉1から囲繞された画成空間R内に出てから玄関扉1を施錠し、その後に、補助扉2の錠5を開錠して格納姿勢Kに位置させるようにすれば、押し入り犯罪を画策する侵入者がいても、その侵入者を確実に排除可能である。
【0028】
さらに、この防犯扉10は、補助扉2の変形構造が、格納姿勢Kにあっては、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って格納されるようになっているので、共用空間Cでの他の世帯の利用を妨げない位置まで格納するように構成可能である。したがって、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間Pを制約せず且つ共用空間Cを常に占有することなく使用することができる。したがって、共用空間の利便性の低下も抑えられる。
【0029】
また、この防犯扉10によれば、補助扉2の変形構造は、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネル3と、これら複数のガラスパネル3相互を回動自在に枢支する複数のヒンジ4とを有して構成されているので、上述したような囲繞姿勢Tおよび格納姿勢Kのそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造として好適である。
また、この防犯扉10によれば、囲繞される画成空間R内から操作可能な防犯ブザー9が設けられているので、囲繞された画成空間R内に居たときに、万が一、上述した押し入り犯罪を画策する侵入者が補助扉2の外からの侵入を試みようとした場合であっても、この防犯ブザー9で警報を発することができる。そのため、侵入者をより確実に排除することができる。
【0030】
以上説明したように、この防犯扉10によれば、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく、押し入り犯罪にも対処可能である。
なお、本発明に係る防犯扉は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、左右二枚の左補助扉2Lおよび右補助扉2Rが、それぞれ5枚のガラスパネル3を相互にヒンジ4によって繋ぎ、囲繞姿勢Tにおいて、平面視が略半円状に湾曲した形態で画成空間Rを形成する例で説明したが、これに限定されず、囲繞姿勢Tおよび格納姿勢Kになるようにし得る変形構造を有するならば、補助扉2を一枚の扉から構成してもよいし、また、囲繞姿勢Tや格納姿勢Kの形態についても種々の形態とする構成を採用することができる。
【0031】
具体的な変形例(第一の変形例)を図3に示す。
同図に示すように、この第一の変形例は、上述した第一の実施形態に対し、複数のガラスパネル3の枚数、および、囲繞姿勢T並びに格納姿勢Kの形態が異なっている。
つまり、この第一の変形例では、左補助扉2Lおよび右補助扉2Rのそれぞれが、2枚のガラスパネル3を有して構成されている。また、左右2枚のガラスパネル3相互を繋ぐ複数のヒンジ4は、所定の回動範囲が0〜90°の範囲に制限されたヒンジを用いている。
【0032】
そして、この第一の変形例では、同図(a)に示すように、補助扉2が、格納姿勢Kにおいては、左補助扉2Lおよび右補助扉2Rのそれぞれが、2枚のガラスパネル3を壁面Hに対向する方向に積層する変形構造になっており、この積層する折りたたみ状態で壁面Hに沿って格納される。
そして、同図(b)に示すように、補助扉2の手前側のガラスパネル3を引き出すと、90°に開く位置まで回動される。さらに、同図(c)に示すように、2枚のガラスパネル3全体を回動させると、壁面Hに連結されたガラスパネル3も90°に開く位置まで回動され、これにより、囲繞姿勢Tにおいて、平面視が略矩形状の形態で画成空間Rを形成するようになっている。したがって、このような構成であっても、上記第一の実施形態同様の作用および効果を奏する。
【0033】
また、例えば上記実施形態では、囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能とする上で、補助扉2が、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネル3で構成されている例で説明したが、これに限定されず、囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能であれば、種々の構成を採用することができる。
【0034】
図4および図5に第二の変形例を示す。
この第二の変形例の防犯扉10Bは、上述した第一の実施形態に対し、図4に示すように、第二の扉である補助扉2が、軸を上下にして配設された複数の桟13と、これら複数の桟13相互を水平方向に伸縮させるように繋ぐ連結機構14とを有して構成されている点が異なっている。そして、この第二の変形例の防犯扉10Bは、補助扉2の伸縮を案内するために共用廊下B上に敷設された案内レール15を更に有して構成されている。
ここで、補助扉2の高さは、玄関扉1の高さと略同じ高さに形成されており、また、中央から左右に分離してなる左補助扉2Lと右補助扉2Rとから構成されている点は、上記実施形態同様である。
【0035】
しかし、上記実施形態では、左補助扉2Lと右補助扉2Rとが観音開き様に開閉される例を示したが、この第二の変形例の補助扉2は、複数の桟13の途中部分の上下二箇所を連結機構14で繋ぎ、この連結機構14が、複数のリンクをパンタグラフのように菱形形状に組み合わせることで伸縮して複数の桟13相互を水平方向に相対移動させるようになっている。また、案内レール15は、連結機構14を伸縮させるときに、画成空間Rを囲繞すべき線に沿って上記複数の桟13の下側の端部を案内するようになっている。なお、複数の桟13それぞれの上部には、忍び返し13Sが設けられている。このような構成であっても、この第二の変形例の補助扉2は、図5(a)に示す格納姿勢K、および、図5(b)に示す囲繞姿勢Tのそれぞれの姿勢をとることができる。そして、囲繞姿勢Tにおいて、伸縮する連結機構14が伸びることで、隣接する桟13同士が相互に離間するので、囲繞された画成空間R内を共用空間C側から視認可能である。
【0036】
次に、図6および図7に第三の変形例を示す。
この第三の変形例の防犯扉10Cは、上述した第二の変形例同様に、図6に示すように、第二の扉である補助扉2が、軸を上下にして配設された複数の桟13と、これら複数の桟13相互を水平方向に相対移動させるように繋ぐ連結機構14とを有して構成されている点が上記第一の実施形態とは異なっている。
ここで、この第三の変形例の防犯扉10Cは、中央から左右に分離してなる左補助扉2Lと右補助扉2Rとから構成されている点は上記実施形態同様であるが、補助扉2の高さは、共用空間Cの天井Uの高さまで設けられている点が上記実施形態および上記他の変形例とは異なっている。
【0037】
そして、天井Uの高さまで延びる複数の桟13は、この第三の変形例の補助扉2の伸縮を案内するために、共用廊下B上および天井Uにそれぞれ敷設された案内レール15で上下がスライド移動可能に支持されている。なお、この第三の変形例においても第二の変形例同様の構成をもつ連結機構14を有しているが、この第三の変形例の連結機構14は、複数の桟13の両端部を繋ぐとともに、上下の案内レール15内に内蔵される位置に設けられ、これにより、外観のデザインをスッキリしたものとしている。
【0038】
また、この第三の変形例の防犯扉10Cは、上下の案内レール15がそれぞれ左右に分離した案内レール15L、15Rから構成されている。そして、各案内レール15L、15Rは、上記囲繞姿勢Tをとるべき位置において、複数の桟13の上下を支持および案内する湾曲部15mを有している。また、上記格納姿勢Kをとるべき位置において、複数の桟13の上下を、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って支持および案内する直線部15sを有している。そして、これら湾曲部15mと直線部15sとは、連結部15rによって連続的に滑らかに繋がれている。
【0039】
この第三の変形例によれば、防犯扉10Cの補助扉2は、上記実施形態および他の変形例同様に、図7(a)に示す格納姿勢K、および、図7(c)に示す囲繞姿勢Tのそれぞれの姿勢をとることができるとともに、格納姿勢Kにあっては、補助扉2全体が直線部15sに沿って案内および支持されるので、玄関扉1が設けられた壁面Hに沿って格納された姿勢が、例えば上記例示した第二の変形例での格納姿勢Kに比べ(図5(a)参照)、壁面Hとの対向方向での張出し量をより少なくすることができる。そのため、共用空間を常に占有することのないように格納する上で一層好適である。なおまた、格納姿勢Kの位置で補助扉2を覆うように戸袋を設ければ、外観のデザインを一層スッキリしたものとすることもできる。
また、上述した補助扉2の変形構造は、居住者等が手で開閉する構造の例で説明したが、これに限定されず、本発明に係る変形構造は、モータ等の駆動装置によって自動的に開閉することで、囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成することができる。
【0040】
具体的には、例えば図8および図9に第四の変形例を示す。
この第四の変形例の防犯扉10Dでは、補助扉2が、いわゆるグリルシャッター同様の構成を有している。すなわち、この第四の変形例の補助扉2は、図8に示すように、複数の桟であるパイプ部材16と、そのパイプ部材16相互を水平方向に巻き取り可能に繋ぐ連結機構であるリンク部材17とを有して構成されている。そして、玄関扉1の左右には、左右の補助扉2L、2Rを個別に格納するために格納ボックス18が壁面にそれぞれ付設されるとともに、その上部には、電動式の巻取装置を内蔵する駆動部18aがそれぞれ配置されている。
【0041】
そして、駆動部18aを駆動するためのスイッチ(不図示)は、壁面Hの画成空間R内で操作可能な位置および居室内のそれぞれに設けられている。また、この第四の変形例での各補助扉2L、2Rは、上記第三の変形例同様に、天井Uの高さまで延びる複数の各パイプ部材は、補助扉2を案内するために、共用廊下B上および天井Uにそれぞれ敷設された案内レール15で上下がスライド移動可能に支持されている。
【0042】
これにより、各補助扉2L、2Rは、駆動部18a内の巻取装置によって、図9(a)〜(c)に示すように、自動的に巻き取りおよび繰り出しが可能になっている。
つまり、この第四の変形例の補助扉2は、図9(a)に示す巻き取り状態では、格納ボックス18内で最大径に巻き取られた巻回状態で収納されたときに格納姿勢Kとなり、このとき、補助扉2の端部2bは、格納ボックス18の開口スリット部18s(図8参照)で保持される。また、図9(c)に示す繰り出し状態では、左右の補助扉2の端部2bが互いに当接した状態に位置して上記囲繞姿勢Tをとる。なお、このときの格納ボックス18内での巻回部分は最小径となる。
【0043】
この第四の変形例の防犯扉10Dによれば、上記他の例同様に、左右の補助扉2は、玄関扉1が設けられた壁面Hに対して配設されるとともに、囲繞姿勢Tおよび格納姿勢Kのそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有しているので、マンション等の集合住宅に用いても、各世帯の専用空間を制約せず且つ共用空間を常に占有することなく、押し入り犯罪にも対処可能である。
そして、特に、この第四の変形例の防犯扉10Dによれば、補助扉2の変形構造は、モータ等の駆動装置によって自動的に開閉するように構成されているので、共用空間を常に占有することのないように格納する上で一層好適である。また、格納姿勢Kの位置で補助扉2を覆うように格納ボックス18(戸袋)が設けられているので、外観のデザインを一層スッキリしたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る集合住宅用防犯扉の第一の実施形態を説明するための斜視図である。
【図2】第一の実施形態の防犯扉の平面図であり、同図(a)は、変形構造を有する第二の扉を格納した状態を示し、同図(b)は、その第二の扉を展開(または格納)する途中の状態を示し、同図(c)は、その第二の扉を展開した状態(図1の平面図に相当する)を示している。
【図3】本発明に係る防犯扉の変形例(第一の変形例)を説明する図(a)〜(c)であり、同図は図2(a)〜(c)に対応する図を示している。
【図4】本発明に係る防犯扉の変形例(第二の変形例)を説明する斜視図であり、同図は図1に対応する図を示している。
【図5】本発明に係る防犯扉の変形例(第二の変形例)を説明する図(a)および(b)であり、同図は図2(a)および(c)に対応する図を示している。
【図6】本発明に係る防犯扉の変形例(第三の変形例)を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係る防犯扉の変形例(第三の変形例)を説明する図(a)〜(c)であり、同図は図2(a)〜(c)に対応する図を示している。
【図8】本発明に係る防犯扉の変形例(第四の変形例)を説明する斜視図である。
【図9】本発明に係る防犯扉の変形例(第四の変形例)を説明する図(a)〜(c)であり、同図は図2(a)〜(c)に対応する図を示している。
【符号の説明】
【0045】
1 玄関扉(第一の扉)
2 補助扉(第二の扉)
3 ガラスパネル
4 ヒンジ
5 錠
9 防犯ブザー(警報装置)
10 防犯扉
13 桟
14 パンタグラフ機構
15 案内レール
16 パイプ部材(桟)
17 リンク部材(連結機構)
18 格納ボックス
B 共用廊下
C 共用空間
P 専用空間
H (第一の扉が設けられた)壁面
T 囲繞姿勢
K 格納姿勢
U 天井
R 画成空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンション等の集合住宅に用いられて、各世帯の専用空間と共用空間との間を仕切る施錠可能な第一の扉と、その第一の扉よりも外側の共用空間側に配設される施錠可能な第二の扉とを有する防犯扉であって、
前記第二の扉は、前記第一の扉が設けられた壁面に対して配設されるとともに、囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成された変形構造を有し、前記囲繞姿勢にあっては、前記第一の扉に隣接する前記共用空間側の空間を、少なくとも人が一人入れる範囲を囲繞するように展開され且つその囲繞された空間内を前記共用空間側から視認可能になっており、前記格納姿勢にあっては、前記第一の扉が設けられた壁面に沿って格納されるようになっていることを特徴とする集合住宅用防犯扉。
【請求項2】
前記第二の扉の変形構造は、反対の側を視認可能なガラス材からなる複数のガラスパネルと、当該複数のガラスパネル相互を回動自在に枢支する複数のヒンジとを有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の集合住宅用防犯扉。
【請求項3】
前記第二の扉の変形構造は、軸を上下にして配設された複数の桟と、これら複数の桟相互を水平方向に相対移動させるように繋ぐ連結機構と、その連結機構で複数の桟相互を相対移動させるときに、前記囲繞すべき空間に沿って前記複数の桟の上または下の端部を案内する案内レールとを有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の集合住宅用防犯扉。
【請求項4】
前記第二の扉の変形構造は、モータ等の駆動装置によって自動的に前記囲繞姿勢および格納姿勢のそれぞれの姿勢をとるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の集合住宅用防犯扉。
【請求項5】
前記囲繞される空間内から操作可能な警報装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の集合住宅用防犯扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−102908(P2009−102908A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276632(P2007−276632)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(307038964)
【Fターム(参考)】