説明

集合住宅電力システム

【課題】燃料電池に対する制御を要することなく、燃料電池の発電効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】電力を消費するM戸の居住部{110−1〜110−M}を含む集合住宅100で用いられる集合住宅電力システムであって、M戸の居住部{110−1〜110−M}のうちN(N<M)戸の居住部{110−1〜110−N}に対応して設置されたN個の燃料電池{111−1〜111−N}と、N個の燃料電池{111−1〜111−N}が発電した電力を集合住宅100内で共用するための分電盤130と、を有する。集合住宅100における燃料電池の設置個数Nは、集合住宅100で最低限消費されるベース消費電力量と、各燃料電池111の最適発電量と、に応じて定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を消費する複数の居住部を含む集合住宅で用いられる集合住宅電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅における電力系統の補助電源として燃料電池の普及が進んでいる。燃料電池は、天然ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応により電気を作り出す発電装置である。化学反応の際に発生する熱を熱交換によりお湯にして貯湯槽に貯えておき、貯湯槽内の貯湯を給湯に供するコジェネレーションシステムも知られている。
【0003】
また、複数の居住部を備える集合住宅(マンションなど)において燃料電池により電力供給を行う集合住宅電力システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の集合住宅電力システムは、複数の居住部に対応して設けられ、対応する居住部に供給するべき電力を発電して供給する複数の燃料電池と、燃料電池が発電する電力のうち、対応する居住部に供給する電力以外の余剰電力を他の居住部に供給する電力ネットワークと、を有する。
【0005】
また、特許文献1に記載の集合住宅電力システムは、居住部に供給するべき電力量が閾値よりも小さい場合、当該居住部に対応する燃料電池の発電を停止させ、当該居住部に供給するべき電力を、他の燃料電池に余剰電力として発電させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−262697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の集合住宅電力システムには、以下のような問題がある。
【0008】
第1に、居住部の消費電力量に応じて燃料電池の発電を停止・起動するといった特別な制御が必要であり、燃料電池に対する制御が複雑になってしまうという問題があった。
【0009】
第2に、燃料電池は連続的な運転に適しており、燃料電池の発電を頻繁に停止・起動すると、燃料電池の性能劣化を引き起こす問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、燃料電池に対する制御を要することなく、燃料電池の発電効率を向上させることができる集合住宅電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0012】
本発明に係る集合住宅電力システムの特徴は、電力を消費するM戸の居住部(例えば、居住部{110−1〜110−M})を含む集合住宅(例えば、集合住宅100)で用いられる集合住宅電力システムであって、前記M戸の居住部のうちN(N<M)戸の居住部(例えば、居住部{110−1〜110−N})に対応して設置されたN個の燃料電池(例えば、燃料電池{111−1〜111−N})と、前記燃料電池が発電した電力を前記集合住宅内で共用するための分電手段(例えば、分電盤130)と、を有し、前記集合住宅における前記燃料電池の設置個数Nは、前記集合住宅で最低限消費されるベース消費電力量と、前記燃料電池の発電効率が最適となる最適発電量と、に応じて定められることを要旨とする。
【0013】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記燃料電池は、前記最適発電量で一定出力運転を行うことを要旨とする。
【0014】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記燃料電池毎に設けられ、当該燃料電池の発電時の排熱を熱交換によりお湯にして貯えるための貯湯槽(例えば、貯湯槽112)をさらに有することを要旨とする。
【0015】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記集合住宅における前記燃料電池の設置個数Nは、前記燃料電池が前記最適発電量で発電を行う場合の総発電量が、前記ベース消費電力量と同等になるように定められることを要旨とする。
【0016】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記分電手段は、前記集合住宅の総消費電力量に対して前記燃料電池の総発電量が不足する場合に、当該不足分の電力を、他の電力供給手段(例えば、系統電源10及び変電設備20)が供給する電力によって補うように構成されることを要旨とする。
【0017】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記分電手段を制御する第1の制御手段(例えば、分電盤制御部144)をさらに有し、前記集合住宅は、前記集合住宅の居住者によって共用され且つ電力を消費する共用部(例えば、共用部120)をさらに含み、前記第1の制御手段は、前記他の電力供給手段の電力供給停止時において、前記N戸の居住部の総消費電力量と前記共用部の消費電力量との和が前記燃料電池の総発電量以上である場合に、前記M戸の居住部のうち前記N戸の居住部を除いた(M−N)戸の居住部(例えば、居住部{110−(N+1)〜110−M})に対し、前記燃料電池が発電した電力の供給を停止するように、前記分電手段を制御する供給停止制御を行うことを要旨とする。
【0018】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記集合住宅における消費電力量を制御する第2の制御手段(例えば、負荷制御部145)をさらに有し、前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段によって前記供給停止制御が行われても、前記共用部で消費される電力が不足する場合には、前記N戸の居住部の消費電力量を制限する。
【0019】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記分電手段を制御する第1の制御手段(例えば、分電盤制御部144)をさらに有し、前記集合住宅は、前記集合住宅の居住者によって共用され且つ電力を消費する共用部(例えば、共用部120)をさらに含み、前記第1の制御手段は、前記他の電力供給手段の電力供給停止時において、前記N戸の居住部の総消費電力量と前記共用部の消費電力量との和が前記燃料電池の総発電量よりも小さい場合に、前記燃料電池が発電した電力から前記N戸の居住部及び前記共用部のそれぞれの消費電力を差し引いた余剰電力を、前記M戸の居住部のうち前記N戸の居住部を除いた(M−N)戸の居住部(例えば、居住部{110−(N+1)〜110−M})に対して供給するよう前記分電手段を制御する余剰電力供給制御を行うことを要旨とする。
【0020】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記集合住宅における消費電力量を制御する第2の制御手段(例えば、負荷制御部145)をさらに有し、前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段によって前記余剰電力供給制御が行われる際に、前記(M−N)戸の居住部の総消費電力量が前記余剰電力の電力量以下になるように、前記(M−N)戸の居住部の消費電力量を制限することを要旨とする。
【0021】
本発明に係る集合住宅電力システムの他の特徴は、上述した特徴において、前記N戸の居住部のそれぞれは、対応する燃料電池が発電した電力のうち、他の居住部又は前記共用部へ供給した電力量を売電電力量として測定する測定手段(例えば、売電メーター114)を有し、前記第2の制御手段により前記N戸の居住部の消費電力量が制限される期間の前記売電電力量は、他の期間の前記売電電力量と分けて管理されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池に対する制御を要することなく、燃料電池の発電効率を向上させることができる集合住宅電力システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】集合住宅電力システムが適用される集合住宅の概略構成図である。
【図2】集合住宅電力システムのブロック図である。
【図3】燃料電池が設置された居住部のブロック図である。
【図4】燃料電池が設置されない居住部のブロック図である。
【図5】制御装置のブロック図である。
【図6】集合住宅電力システムにおける停電時の動作フロー図 である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の実施形態に係る図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0025】
図1は、本実施形態に係る集合住宅電力システムが適用される集合住宅100の概略構成図である。以下の図1〜図4において、電力ラインは太線で示し、通信ラインは破線で示している。なお、通信ラインは有線に限らず、無線であってもよい。
【0026】
図1に示すように、集合住宅100は、一括受電会社によって管理される変電設備20から低圧電力の供給を受ける。変電設備20は、電力会社によって管理される系統電源10から高圧電力の供給を受ける受電部21と、系統電源10から供給される高圧電力を低圧電力に変換して集合住宅100に供給する変圧部22と、を含む。
【0027】
図2は、本実施形態に係る集合住宅電力システムのブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る集合住宅電力システムは、電力を消費するM(M≧2)戸の居住部{110−1〜110−M}と、集合住宅100の居住者によって共用され且つ電力を消費する共用部120と、M戸の居住部{110−1〜110−M}のうちN(N<M)戸の居住部{110−1〜110−N}に対応して設置されたN個の燃料電池{111−1〜111−N}と、N個の燃料電池{111−1〜111−N}が発電した電力を集合住宅100内で共用するための分電盤130と、各種の制御を行う制御装置140と、を有する。
【0029】
M戸の居住部{110−1〜110−M}のそれぞれは、電力ラインを介して分電盤130と接続され、通信ラインを介して制御装置140と接続される。
【0030】
N戸の居住部{110−1〜110−N}には、それぞれ対応する居住部110に電力を供給するN個の燃料電池{111−1〜111−N}が設置されている。詳細には、居住部110−1には燃料電池111−1が設置され、居住部110−2には燃料電池111−2が設置される。M戸の居住部{110−1〜110−M}のうちN戸の居住部{110−1〜110−N}を除いた(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}には、燃料電池111が設置されていない。
【0031】
N戸の居住部{110−1〜110−N}のそれぞれは、対応する燃料電池111が発電する電力と、分電盤130を介して供給される電力と、を消費する。本実施形態では、N戸の居住部{110−1〜110−N}のそれぞれは、対応する燃料電池111が発電した電力を優先的に消費する。そして、対応する燃料電池111が発電した電力に不足がある場合には、分電盤130を介して供給される電力によって当該不足分を賄う。これに対し、対応する燃料電池111が発電した電力に余剰がある場合には、当該余剰分(余剰電力)を分電盤130に出力する。
【0032】
(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}のそれぞれは、燃料電池111が設置されていないため、分電盤130を介して供給される電力を消費する。居住部110の構成については後述する。
【0033】
燃料電池111は、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)であり、天然ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応により発電を行い、発電した電力を出力する。燃料電池111は、定格出力電力量で発電運転を行うと、エネルギー変換効率が最も高くなる。言い換えると、燃料電池111は、定格出力電力量よりも少ない出力電力量で発電運転を行うと、エネルギー変換効率は低くなる。よって、当該定格出力電力量が燃料電池111の最適発電量となる。本実施形態では、燃料電池{111−1〜111−N}のそれぞれは、最適発電量で一定出力運転を行う。
【0034】
共用部120は、電力ラインを介して分電盤130と接続され、通信ラインを介して制御装置140と接続される。共用部120は、例えば、集合住宅100のエントランス部(自動ドアなど)やエレベーターを含む。共用部120は、分電盤130を介して供給される電力を消費する。
【0035】
分電盤130は、電力ラインを介して変電設備20と接続され、電力ラインを介して居住部110及び共用部120と接続され、通信ラインを介して制御装置140と接続される。分電盤130は、変電設備20から供給される電力(低圧電力)を居住部110及び共用部120に分配する。
【0036】
分電盤130は、集合住宅100の総消費電力量に対して燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量が不足する場合に、当該不足分の電力を、他の電力供給手段(変電設備20)から供給される電力によって補うように構成される。
【0037】
本実施形態では、分電盤130は、燃料電池111が設置される居住部110については、対応する燃料電池111が発電した電力に不足がある場合には、当該居住部110に対して、燃料電池111が設置される他の居住部110からの電力を供給することで、当該不足分の電力を賄い、それでもまだ不足がある場合には、変電設備20からの電力を供給する。
【0038】
また、分電盤130は、燃料電池111が設置される居住部110については、対応する燃料電池111が発電した電力に余剰がある場合には、当該余剰分の電力を他の居住部110に供給することで、当該燃料電池111が発電した電力を居住部{110−1〜110−M}で共用するように構成される。
【0039】
分電盤130は、居住部110毎に設けられた電力供給停止用リレー131を含む。電力供給停止用リレー131は、通常は導通状態(オン状態)であるが、制御装置140からの制御に応じて非導通状態(オフ状態)に切り替わる。電力供給停止用リレー131がオフ状態である場合、当該電力供給停止用リレー131に対応する居住部110には、変電設備20からの電力及び燃料電池111が設置される他の居住部110からの電力が供給されない。
【0040】
制御装置140は、集合住宅100でのエネルギー管理を行うためのエネルギー管理システム(EMS)に相当する。本実施形態では、制御装置140は、居住部110、共用部120、及び分電盤130のそれぞれの状態(消費電力量など)を監視したり、居住部110、共用部120、及び分電盤130のそれぞれに対する制御を行ったりする。制御装置140の構成については後述する。
【0041】
このような集合住宅電力システムにおいて、集合住宅100における燃料電池111の設置個数Nは、集合住宅100のベース消費電力量と、N個の燃料電池{111−1〜111−N}の発電効率が最適となる最適発電量と、に応じて定められる。詳細には、燃料電池111の設置個数Nは、燃料電池111が最適発電量で発電を行う場合の総発電量が、集合住宅100のベース消費電力量と同等になるように定められる。
【0042】
ここで、集合住宅100のベース消費電力量とは、集合住宅100で最低限消費される電力量である。例えば、ベース消費電力量は、必ず消費される電力量であり、共用部120の消費電力量の最小値と、居住部110毎の消費電力量の最小値との和により定められる。居住部110の消費電力量の最小値とは、当該居住部110において継続的に動作させる必要のある負荷(冷蔵庫など)の消費電力量に相当する。また、燃料電池111の最適発電量とは、上述したように、当該燃料電池111の定格出力電力量である。よって、燃料電池{111−1〜111−N}のそれぞれの定格出力電力量が等しいと仮定し、集合住宅100のベース消費電力量をX[W]、燃料電池111の定格出力電力量をY[W]とすると、集合住宅100における燃料電池111の設置個数Nは、XをYで除算した値(余りを除く)である。
【0043】
このように、燃料電池111が最適発電量(定格出力電力量)で発電を行う場合の総発電量が、集合住宅100のベース消費電力量と同等になるように、燃料電池111の設置個数Nを定めることによって、燃料電池{111−1〜111−N}のそれぞれが最適発電量で一定出力運転を行っても、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量を集合住宅100内で消費できる。
【0044】
ただし、このように燃料電池111の設置個数Nを定めると、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量のみで集合住宅100の総消費電力量を十分に賄うことは期待できない。このため、集合住宅100の総消費電力量に対して燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量が不足する場合に、当該不足分の電力を、変電設備20から供給される電力によって賄うようにしている。
【0045】
次に、居住部110の構成を説明する。図3は、燃料電池111が設置された居住部110のブロック図である。
【0046】
図3に示すように、居住部110は、燃料電池111と、貯湯槽112と、複数の負荷{113−1〜113−n}と、売電メーター114と、買電メーター115と、を含む。
【0047】
燃料電池111は、例えばSOFCであり、天然ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応により発電を行い、発電した電力を出力する。上述したように、燃料電池111は、最適発電量(定格出力電力量)で一定出力運転を行う。
【0048】
貯湯槽112は、居住部110における給湯のために、燃料電池111の発電時の排熱を熱交換によりお湯にして貯える。燃料電池111の発電電力量が大きいほど、貯湯槽112に貯えられるお湯も多くなるため、燃料電池111が最適発電量で一定出力運転を行うことによって、燃料電池111が設置された居住部110での給湯可能量を多くできる。
【0049】
負荷113は、燃料電池111からの電力(及び分電盤130からの電力)を消費する機器であり、例えば冷蔵庫、空調機、照明、テレビ受像機などである。空調機、テレビ受像機などは継続的に動作しない機器であるが、冷蔵庫は継続的に動作することが必要な機器であるため、上述したベース消費電力量を算定するに際して冷蔵庫の消費電力量が使用される。本実施形態では、負荷113は、通信ラインを介して制御装置140に接続されており、制御装置140からの制御を受け付け可能である。負荷113は、制御装置140からの制御に応じて、通常モードから低消費電力モードへ切り替え可能に構成される。ただし、居住部110に専用のEMS(いわゆる、HEMS)が設置される場合には、負荷113は、当該HEMSを介して、制御装置140からの制御を受け付けてもよい。
【0050】
売電メーター114は、燃料電池111及び負荷113と、分電盤130と、の間の電力ライン上に設置される。売電メーター114は、通信ラインを介して制御装置140と接続される。売電メーター114は、燃料電池111からの電力を分電盤130に出力する電力量(すなわち、他の居住部110又は共用部120へ供給した電力量)を売電電力量として測定し、測定した売電電力量を蓄積(積算)する。また、売電メーター114は、記憶している売電電力量を、通信ラインを介して制御装置140に出力する。
【0051】
買電メーター115は、燃料電池111及び負荷113と、分電盤130と、の間の電力ライン上に設置される。買電メーター115は、通信ラインを介して制御装置140と接続される。買電メーター115は、分電盤130から負荷113に供給される電力量を買電電力量として測定し、測定した買電電力量を蓄積(積算)する。また、買電メーター115は、記憶している買電電力量を、通信ラインを介して制御装置140に出力する。
【0052】
図4は、燃料電池111が設置されない居住部110のブロック図である。
【0053】
図4に示すように、居住部110は、燃料電池111と、貯湯槽112と、売電メーター114と、を有していない点で、図3の居住部110とは異なる。その他の構成は、図3の居住部110と同様である。
【0054】
次に、制御装置140の構成を説明する。図5は、制御装置140のブロック図である。
【0055】
図5に示すように、制御装置140は、通信部141と、処理部146と、を含む。通信部141は、通信ラインを介して、居住部110、共用部120、及び分電盤130のそれぞれと通信する。処理部146は、CPUやメモリを用いて構成されており、当該メモリに記憶されているプログラムを実行することで、後述する各種の機能部を構成する。
【0056】
処理部146は、取得部142と、電力管理部143と、分電盤制御部144と、負荷制御部145と、を含む。
【0057】
取得部142は、居住部110、共用部120、及び分電盤130のそれぞれから各種の情報を取得する。例えば、取得部142は、燃料電池111が設置された居住部{110−1〜110−N}のそれぞれから売電電力量及び買電電力量を定期的に取得し、燃料電池111が設置されない居住部{110−(N+1)〜110−M}のそれぞれから買電電力量を定期的に取得する。
【0058】
電力管理部143は、取得部142が取得する売電電力量及び買電電力量を居住部110毎に記憶及び管理する。電力管理部143によって管理される情報は、例えば一括受電会社によって、居住部110毎の電気料金の精算に利用される。
【0059】
分電盤制御部144及び負荷制御部145は、変電設備20からの電力供給停止時(すなわち、停電時)において、共用部120に対する電力供給を優先するための制御を行う。当該制御については後述する。
【0060】
次に、本実施形態に係る集合住宅電力システムにおける停電時の動作を説明する。図6は、本実施形態に係る集合住宅電力システムにおける停電時の動作フロー図である。本フローは、制御装置140が停電を検知した場合に定期的に実施される。制御装置140は、分電盤130からの情報又は外部ネットワーク(不図示)からの情報によって停電を検知する。
【0061】
図6に示すように、ステップS11において、取得部142は、燃料電池111が設置されたN戸の居住部{110−1〜110−N}の総消費電力量と、共用部120の消費電力量と、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量と、を取得する。そして、N戸の居住部{110−1〜110−N}の総消費電力量と共用部120の消費電力量との和を、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量と比較する。
【0062】
N戸の居住部{110−1〜110−N}の総消費電力量と共用部120の消費電力量との和が、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量以上である場合(ステップS12;YES)、ステップS12において、分電盤制御部144は、燃料電池111が設置されない(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}に対し、N個の燃料電池{111−1〜111−N}が発電した電力の供給を停止するように、分電盤130を制御する供給停止制御を行う。詳細には、分電盤制御部144は、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}のそれぞれに対応する電力供給停止用リレー131をオフするように制御する。これにより、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}への電力供給よりも、N戸の居住部{110−1〜110−N}及び共用部120への電力供給を優先することができる。
【0063】
ステップS14において、負荷制御部145は、共用部120へ供給される電力量が十分であるか否かを判定する。具体的な判定としては、予め共用部120に必要とされる電力量を計測あるいは算出して記憶しておき、供給される電力量と記憶した電力量とを比較することで十分であるか否かを判定する。
【0064】
共用部120へ供給される電力量が不十分である場合(ステップS14;NO)、ステップS15において、負荷制御部145は、N戸の居住部{110−1〜110−N}の消費電力量を制限する。詳細には、負荷制御部145は、N個の燃料電池{111−1〜111−N}のそれぞれに設けられた各負荷113を通常モードから低消費電力モードに切り替えるように制御する。これにより、N戸の居住部{110−1〜110−N}への電力供給よりも、共用部120への電力供給を優先することができる。
【0065】
一方、ステップS12において、N戸の居住部{110−1〜110−N}の総消費電力量と共用部120の消費電力量との和が、燃料電池{111−1〜111−N}の総発電量未満である場合、ステップS16において、分電盤制御部144は、N個の燃料電池{111−1〜111−N}が発電した電力からN戸の居住部{110−1〜110−N}及び共用部120のそれぞれの消費電力を差し引いた余剰電力を、M戸の居住部{110−1〜110−M}のうちN戸の居住部{110−1〜110−N}を除いた(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}に対して供給するよう分電盤130を制御する余剰電力供給制御を行う。具体的な制御としては、(M−N)戸全てに供給することが困難な場合は、事前に優先順位付けされたX戸以外に対して供給を停止する制御を行う。あるいは、分電盤130の制御ではないが、(M−N)戸においては家電使用を制限し(例えば冷蔵庫のみ使用可能にする)、その消費電力和が余剰電力と同等になるような制御をしてもよい。
【0066】
これにより、N戸の居住部{110−1〜110−N}及び共用部120への電力供給だけでなく、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}への電力供給も可能になる。
【0067】
ステップS17において、負荷制御部145は、このような余剰電力供給制御に当たり、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}の総消費電力量が余剰電力の電力量以下になるように、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}の消費電力量を制限する。詳細には、負荷制御部145は、(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}のそれぞれに設けられた各負荷113のうち、余剰電力の電力量に応じた数の負荷113を通常モードから低消費電力モードに切り替えるように制御する。これにより、余剰電力の電力量と(M−N)戸の居住部{110−(N+1)〜110−M}の総消費電力量とを同等にすることができる。
【0068】
なお、売電メーター114及び/又は電力管理部143は、このような停電時制御を考慮して、N戸の居住部{110−1〜110−N}のそれぞれの売電電力量を管理する。本実施形態では、売電メーター114及び/又は電力管理部143は、通常時の売電電力量と、停電時の売電電力量と、停電時に消費電力量が制限される期間の売電電力量と、を分けて管理する。このように分けて管理することで、通常時の売電電力量と、停電時の売電電力量と、停電時に消費電力量が制限される期間の売電電力量と、で売電電力料金を異ならせることができる。例えば、居住部110毎の電気料金を精算する一括受電会社は、通常時の売電電力量よりも停電時の売電電力量を高額にし、且つ、停電時の売電電力量よりも停電時に消費電力量が制限される期間の売電電力量を高額にすることができる。
【0069】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0070】
上述した実施形態では、各燃料電池111が最適発電量で一定出力運転を行う一例を説明したが、各燃料電池111が、負荷消費電力量に応じて発電量を制御(負荷追従制御)してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、燃料電池111は、居住部110の内部に設置されていたが、居住部110の外部に設置されてもよい。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、燃料電池111毎(居住部110毎)に貯湯槽112が設けられていたが、複数の燃料電池111(複数の居住部110)で1つの貯湯槽を共用する構成でもよい。
【0073】
上述した実施形態では、集合住宅100が、一括受電会社によって管理される変電設備20から低圧電力の供給を受ける一例を説明したが、一括受電会社によって管理される変電設備20を介さずに、系統電源10から低圧電力を集合住宅100に供給してもよい。また、集合住宅100に太陽電池及び/又は蓄電池が設置され、当該太陽電池及び/又は当該蓄電池が分電盤130に接続されていてもよい。
【0074】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0075】
10…系統電源、20…変電設備、21…受電部、22…変圧部、100…集合住宅、110…居住部、111…燃料電池、112…貯湯槽、113…負荷、114…売電メーター、115…買電メーター、120…共用部、130…分電盤、131…電力供給停止用リレー、140…制御装置、141…通信部、142…取得部、143…電力管理部、144…分電盤制御部、145…負荷制御部、146…処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を消費するM戸の居住部を含む集合住宅で用いられる集合住宅電力システムであって、
前記M戸の居住部のうちN(N<M)戸の居住部に対応して設置されたN個の燃料電池と、
前記燃料電池が発電した電力を前記集合住宅内で共用するための分電手段と、を有し、
前記集合住宅における前記燃料電池の設置個数Nは、前記集合住宅で最低限消費されるベース消費電力量と、前記燃料電池の発電効率が最適となる最適発電量と、に応じて定められる、
ことを特徴とする集合住宅電力システム。
【請求項2】
前記集合住宅における前記燃料電池の設置個数Nは、前記燃料電池が前記最適発電量で発電を行う場合の総発電量が、前記ベース消費電力量と同等になるように定められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の集合住宅電力システム。
【請求項3】
前記燃料電池は、前記最適発電量で一定出力運転を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の集合住宅電力システム。
【請求項4】
前記燃料電池毎に設けられ、当該燃料電池の発電時の排熱を熱交換によりお湯にして貯えるための貯湯槽をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の集合住宅電力システム。
【請求項5】
前記分電手段は、前記集合住宅の総消費電力量に対して前記燃料電池の総発電量が不足する場合に、当該不足分の電力を、他の電力供給手段が供給する電力によって補うように構成される、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の集合住宅電力システム。
【請求項6】
前記分電手段を制御する第1の制御手段をさらに有し、
前記集合住宅は、前記集合住宅の居住者によって共用され且つ電力を消費する共用部をさらに含み、
前記第1の制御手段は、前記他の電力供給手段の電力供給停止時において、前記N戸の居住部の総消費電力量と前記共用部の消費電力量との和が前記燃料電池の総発電量以上である場合に、前記M戸の居住部のうち前記N戸の居住部を除いた(M−N)戸の居住部に対し、前記燃料電池が発電した電力の供給を停止するように、前記分電手段を制御する供給停止制御を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の集合住宅電力システム。
【請求項7】
前記集合住宅における消費電力量を制御する第2の制御手段をさらに有し、
前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段によって前記供給停止制御が行われても、前記共用部で消費される電力が不足する場合には、前記N戸の居住部の消費電力量を制限する、
ことを特徴とする請求項6に記載の集合住宅電力システム。
【請求項8】
前記N戸の居住部のそれぞれは、対応する燃料電池が発電した電力のうち、他の居住部又は前記共用部へ供給した電力量を売電電力量として測定する測定手段を有し、
前記第2の制御手段により前記N戸の居住部の消費電力量が制限される期間の前記売電電力量は、他の期間の前記売電電力量と分けて管理される、
ことを特徴とする請求項7に記載の集合住宅電力システム。
【請求項9】
前記分電手段を制御する第1の制御手段をさらに有し、
前記集合住宅は、前記集合住宅の居住者によって共用され且つ電力を消費する共用部をさらに含み、
前記第1の制御手段は、前記他の電力供給手段の電力供給停止時において、前記N戸の居住部の総消費電力量と前記共用部の消費電力量との和が前記燃料電池の総発電量よりも小さい場合に、前記燃料電池が発電した電力から前記N戸の居住部及び前記共用部のそれぞれの消費電力を差し引いた余剰電力を、前記M戸の居住部のうち前記N戸の居住部を除いた(M−N)戸の居住部に対して供給するよう前記分電手段を制御する余剰電力供給制御を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の集合住宅電力システム。
【請求項10】
前記集合住宅における消費電力量を制御する第2の制御手段をさらに有し、
前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段によって前記余剰電力供給制御が行われる際に、前記(M−N)戸の居住部の総消費電力量が前記余剰電力の電力量以下になるように、前記(M−N)戸の居住部の消費電力量を制限する、
ことを特徴とする請求項9に記載の集合住宅電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38838(P2013−38838A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170561(P2011−170561)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】