説明

集合展示施設および動物展示室

【課題】動物展示の効率を高め、かつ動物を収容する収容体の内部を見ることができ、収容体内部への係員のアクセスを容易とする。
【解決手段】動物を収容可能な収容体を複数集合した集合展示施設であり、複数の前記収容体を環状に配置し、この集合展示施設の外周の少なくとも一部は透明なガラス張りとされており、収容体の内部の状態を容易に視認することができる。さらに集合展示施設の内部には、収容体により取り囲まれた所定の内部空間が形成され、この集合展示施設の外部と前記内部空間とを繋ぐ通路を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の展示などに用いる集合展示施設に関する。
【背景技術】
【0002】
動物を収容可能な収容体を複数集合して、飼育者や管理者による管理を容易にする施設が提案されている(下記特許文献1なし3参照)。こうした施設では、ペットなどの動物を収容する所定の大きさの収容体を複数集合し、施設外壁を透明または開放して顧客から動物を見えるようにしている。また施設の内部には、管理者が歩く通路を設け、動物への給餌、給水、診療などの管理業務を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130994号公報
【特許文献2】特開2006−170691号公報
【特許文献3】特開2004−187693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の展示販売用の施設やブースでは、動物を収容するブースや小部屋を通路に沿って配置しているので、管理者が通路に沿って移動しないと、管理業務を遂行できないという問題があった。また、多数の動物が、それぞれのブースに入れられているとはいえ、オープンスペースに収容されるので、一部の動物に病気が発生すると、多数の動物が感染しやすいという課題も指摘されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的としてなされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
動物を収容可能な収容体を複数集合した集合展示施設であって、
複数の前記収容体を環状に配置し、
当該集合展示施設の外周の少なくとも一部は前記収容体の少なくとも一つの内部の状態が視認可能に形成され、
当該集合展示施設の内部には、前記収容体により取り囲まれた所定の内部空間が形成され、
当該集合展示施設の外部と前記内部空間とを繋ぐ通路を設けた
集合展示施設。
【0007】
かかる集合展示施設では、収容体を環状に配置しているので、外部からは収容体の少なくとも一つについては、内部を容易に視認することができ、他方、通路を介して内部空間に入った飼育者(管理者)は、各収容体に対して容易にアクセスすることができる。なお、環状とは必ずしも完全に閉じている必要はなく、後述する実施例で詳しく説明するように、内部空間への出入り口に必要な部分が切れていても、収容体により取り囲まれた内部空間が形成されるのであれば、差し支えない。展示小間を備えた収容体組立を完全に環状に配置し、内部空間には、例えば床側に設けた通路などで入るようにしても良いし、あるいは少なくとも一つの収容体組立が移動して、内部空間に入る通路を形成する構成などでも良い。
【0008】
[適用例2]
前記集合展示施設の外形はN角形(Nは3以上の整数)である適用例1記載の集合展示施設。
外形がN角形であれば、内部にN個以上の収容体を設けることが容易となる。もとより、N角形以外の形状、例えば平面円形、楕円形、長円形、異形形状などでも差し支えない。
【0009】
[適用例3]
前記収容体は、当該集合展示施設の外部に対しては閉塞され、前記内部空間に対しては開放されている適用例1または適用例2記載の集合展示施設。
外部に対して閉塞されていると、収容体に動物を飼育した場合でも、外部に匂いなどが漏れ出ることを抑制することができる。また外部に対して閉塞されていれば、内部で病気などが起きても外部への感染を抑制することができる。また、内部の音などが外部に漏れ出ない構成とすることも容易である。他方、内部空間に対しては開放されていれば、飼育者(管理者)による収容体内部の管理や動物の飼育に必要な処置は容易となる。
【0010】
[適用例4]
隣接する収容体間の少なくとも一部は、仕切られている適用例1ないし適用例3のいずれか記載の集合展示施設。
こうすれば、収容体を更に細かく分け、一度に飼育や展示する動物の数や種類を増やすことができる。
【0011】
[適用例5]
前記収容体の内部は少なくとも上下2段に区分され、該区分毎に動物を収容可能である適用例1ないし適用例4のいずれか記載の集合展示施設。
[適用例6]
前記収容体の内部は少なくとも左右2以上に区分され、該区分毎に動物を収容可能である適用例1ないし適用例5のいずれか記載の集合展示施設。
かかる構成を採用すれば、集合展示施設における展示数を容易に増加することができる。
【0012】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか記載の集合展示施設であって、
前記収容体は、少なくとも一部が透明な外壁と、該外壁から連設された左右2つの側壁と、該左右の側壁の前端により画定される前面とからなり、
前面外壁の幅よりも前記前面の幅が狭くなるように、前記左右の側壁は形成されており、
前記収容体を複数隣接配置することにより、該収容体を環状に配置した
集合展示施設。
[適用例8]
隣接された収容体の側壁は兼用されている適用例7記載の集合展示施設。
こうした収容体を基本単位とし、これを複数隣接配置することにより、容易に、本願発明の集合展示施設を形成することができる。このとき、収容体の側壁を兼用しても良いし、所定の厚みのある仕切壁を介しても差し支えない。こうした仕切壁には、後述する機能部品を収納しても良い。
【0013】
[適用例9]
前記収容体の天井、床または側壁に機能部品が設置された適用例1ないし適用例8のいずれか記載の集合展示施設。
[適用例10]
前記機能部品は、前記収容体内部の状況の検出機能、前記収容体内部の環境の調整機能、前記収容体内部への物品の供給機能の少なくともいずれか一つを行なうものである適用例9記載の集合展示施設。
機能部品としては、様々なものを考えることができ、収容体内部の環境を調整したり、収容体内部に餌や水などを供給するといったことができる。こうした機能部品としては、集合展示施設内部の温度や湿度を一定に保つ空調設備、煙探知機やライト、スピーカー、換気用のファン、人の指示によりあるいは自動的に給餌あるいは給水を行なう給餌装置や給水装置、音を収録するマイクなどの集音装置、映像を撮るカメラやビデオカメラ等の撮像装置、消臭装置、芳香発生装置、薬剤の散布装置などが考えられる。
【0014】
[適用例11]
前記通路には、扉が設けられ、該扉を閉めたとき、前記内部空間は当該集合展示施設の外部とは隔離される適用例1ないし適用例10のいずれか記載の集合展示施設。
集合展示施設の通路に扉を設ければ、集合展示施設の内部空間と外部との連通・遮蔽を容易に実現することができる。
【0015】
[適用例12]
適用例1ないし適用例11のいずれか記載の集合展示施設を室内に複数個、互いに離間して設けた動物展示室。
[適用例13]
適用例1ないし適用例11のいずれか記載の集合展示施設を室内に複数個設け、
前記集合展示施設の一部が連設された動物展示室。
かかる動物展示室では、複数の集合展示施設を設けることで、限られたスペースに多数の動物を展示することが可能となる。しかも、各集合展示施設は、独立しているので、内部で病気などが発生しても、他の集合展示施設に与える影響を限定的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例としての集合展示施設の外観を示す説明図である。
【図2】実施例の集合展示施設の正面図である。
【図3】実施例の集合展示施設の背面図である。
【図4】実施例の集合展示施設の上面図である。
【図5】実施例の集合展示施設に複数設けられた収容体の構造を示す斜視図である。
【図6】収容体を垂直方向に破断して示す断面図である。
【図7】実施例において5つ設けられた収容体の内側を展開して示す説明図である。
【図8】複数の集合展示施設を配置した動物展示室の上面図である。
【図9】集合展示施設の他の実施例の一つを例示する説明図である。
【図10】集合展示施設の他の形態を例示する説明図である。
【図11】集合展示施設の他の実施例の一つを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、実施例を挙げて説明する。図1は、第1実施例としての集合展示施設10の外観を示す斜視図である。また、図2はこの集合展示施設10の正面図、図3は同じく背面図、図4は同じく上面図である。図示するように、この集合展示施設10は、天井12と床14との間に設置され、ほぼ正六角柱の形状をしている。図示はしていないが、天井12には空調設備が設けられており、この集合展示施設10の真上に、空調設備の換気口が位置している。
【0018】
ほぼ正六角柱の形状をした集合展示施設10は、図4に示したように、外周の6箇所の角部には、支柱S1ないしS6が設けられている。この支柱S1〜S6に内接するように、所定の厚みを有する下部床材70および上部床材75が取り付けられている。支柱S1〜S6は、天井12および床14に固定されている。
【0019】
集合展示施設10の外側の6面の一つ(正面部20という)は、支柱S1と支柱S6とにより挟まれたており、ここには、後述する内部空間へ入場するためのドア15が設けられている。ドア15は、その内外に設けられたドアノブ17を操作することで開閉可能である。ドア15を閉じると、集合展示施設10の内部と外部は遮断される。ドア15は、アルミ製の枠体18に厚さ10ミリの透明なガラス19が嵌め込まれている。従って、ドア15を介して内部を視認することができる。もとより、ドア15は半透明や不透明としても良い。また自動ドアにすることも差し支えない。正面部20のドア15を除いた部分も、図2に示したように、ガラス31ないし35が嵌め込まれている。
【0020】
この集合展示施設10の外側の残り5面は、正面部20の右手側から、順に、第1側部21,第2側部22,第3側部23,第4側部24,第5側部25を形成している。これらの第1ないし第5側部21〜25にも、透明な上部ガラス41、45、51、55、61および下部ガラス43、47、53、57、63がはめ込まれている。これらのガラスは、いずれも厚さ10ミリあり、集合展示施設10は、堅牢な構造となっている。なお、これらの上部ガラスや下部ガラスの一部は、半透明または不透明であっても差し支えないし、透明度を調整可能なガラスであっても差し支えない。こうした透明度を調整可能なガラスとしては、ガラスにカーセルを貼付したものなどがある。カーセルに印加する電圧を調整することで、透明度を調整することができる。
【0021】
次に、集合展示施設10の内部構成について説明する。図4に示したように、集合展示施設10の内部には、第1ないし第5側部21ないし25に対応して、5つの収容体組立91ないし95が設けられている。各収容体組立の詳細については後述する。外形六角柱の集合展示施設10の内部には、相似縮小形の内部空間80が設けられている。収容体組立91ないし95の各々は、集合展示施設10の外形形状からこの内部空間80を除いた略環状の部分を、中心から放射状にほぼ6等分した一つの形状を有している。収容体組立は全部で5つなので、図4に示したように、6等分した一つは、収容体組立が存在せず、ここはドア15から内部空間80への通路79とされている。
【0022】
5つの収容体組立91ないし95は、すべて同じ形状をしている。このうちの一つ、収容体組立91を、図5に示した。この収容体組立91は、外側の支柱S1,S2と内部空間80側の前支柱84,85とにより囲まれた台形の柱状形状をしている。平面的には、図4に示したように、内部空間80側が短辺、外側が長辺となる台形形状となっている。収容体組立91の内部は、上部床材75により、上下に分けられており、ペットなどの動物を展示するための上部展示小間26と下部展示小間96とが設けられている。この展示小間が、請求項の収容体に相当する。
【0023】
上部展示小間26は、上部床材75、上部ガラス41、右上部しきり板68、左上部しきり板71により取り囲まれ、前面には観音開きの右扉86aおよび左扉86bを備えている。左右の前支柱84,85の上端の間には、横バー76が差し渡されており、横バー76の中央には、上部床材75との間にセンター支柱78が設けられている。左右の扉86a,86bは、左右の前支柱84,85に蝶番により取り付けられ、それぞれ、前支柱84,85、センター支柱78,横バー76,上部床材75により囲まれている枠内に、手前に向かって開閉可能に設けられている。左右扉86a,86bの外側(内部空間80側)には、開閉用のハンドル83a,83bが設けられており、内側の一部には鏡(図示せず)が貼付され、これを避ける位置に給水(あるいは給餌)皿(図示せず)が設けられている。
【0024】
上部展示小間26の中央には、中央しきり板81が設けられており、上部展示小間26を、左右に区分している。この中央しきり板81は、取り外し可能であり、取り外せば一つの展示小間26として機能し、中央しきり板81を嵌めれば右上部展示小間26a、左上部展示小間26bとして機能する。この上部展示小間26は、外側が透明なガラスとなっており、扉の内側に鏡が貼られていることから、外側から、内部で飼育されているペットなどの動物を容易に観察することができる。また中央しきり板81もガラスなので、外側からは一度に2匹の動物を容易に観察したり比較したりすることができる。
【0025】
上部展示小間26の真下に位置する下部展示小間96は、下部床材70、下部ガラス43、右下部しきり板69、左下部しきり板73、センター支柱78により囲まれており、左右扉87a,87bの上の横バーがない点を除いて、上部展示小間26とほぼ同一の構成を備えている。左右扉87a,87bの外側(内部空間80側)に開閉用のハンドル89a,89bが設けられており、内側に鏡や給水(あるいは給餌)皿(図示せず)が設けられている点も、上部展示小間26と同様である。下部展示小間96には、上部展示小間26と同様に、ガラス製の中央しきり板が設けられているが、図5では、センター支柱78の陰になっており、下部展示小間96用の中央しきり板は、図示されていない。中央しきり板の設置または取り外しにより、右下部展示小間96a,左下部展示小間96bとしても、あるいは一つの下部展示小間96としても機能する。従って、動物展示の法規制の変更や、あるいは展示する動物の大きさの違い、成長などの変化に対応して、適切な展示小間サイズとすることができる。
【0026】
この下部展示小間96も、下部ガラス43の外側から、内部を容易に視認することができる。扉87a,87bの内側には鏡が設けられており、内部の視認性を高めていることは、上部展示小間と同様である。上部展示小間26と下部展示小間96との関係を、側面から示したのが図6である。図示するように、下部展示小間96の扉の高さは、上部展示小間26の扉より高いこと、および下部展示小間96では左右のしきり板69,73が下部床材70から上部床材75まで覆っていること、などから、下部展示小間96は、上部展示小間26より閉塞性が高いものとなっている。他方、上部展示小間26は、扉の高さが低いこと、左右のしきり板が天井まで届いていないことから、下部展示小間96、開放性の高いものとなっている。なお、本実施例では、左右の上部仕切板68,71および下部仕切板69,73は、不透明な木製としたが、透明あるいは半透明のガラスやプラスチックや、鏡としても良い。
【0027】
また、図6に示したように、天井12には空調設備98が、上部床材75には下部展示小間96内を照明するライト99が、それぞれ設けられている。空調設備98は、集合展示施設10内部の温度や湿度を一定に保つことができる。天井12には、こうした空調設備98の他、煙探知機やライト、スピーカー、などの機能部品を設けても良い。また、上部床材75にライト99が設けられていることから、上部展示小間26より暗くなりがちな下部展示小間96を明るく照らしている。なお、ライト99に代えて、あるいはライト99と共に、他の機能部品、例えば、換気用のファン、スピーカー、煙探知機などを設けてもよい。こうした機能部品は、天井12や上部床材75だけでなく、下部床材70に設けても良い。また、両隣の収容体組立間に空間を設け、ここに機能部品を設けても良い。機能部品としては、このほか、人の指示によりあるいは自動的に給餌あるいは給水を行なう給餌装置や給水装置、音を収録するマイクなどの集音装置、映像を撮るカメラやビデオカメラ等の撮像装置、消臭装置、芳香発生装置、薬剤の散布装置などを用いることもできる。
【0028】
以上、収容体組立91ないし95のうち、第1収容体組立91について説明した。収容体組立91ないし95は、図4に示したように、内部空間80を取り囲むように設けられている。従って、内部空間80に入ると、図7に示したように、第1ないし第5収容体組立91ないし95は、等距離に存在し、ほとんど移動することなく、扉を開け閉めして、展示小間にアクセスすることができる。なお、各扉は木製なので、内部の動物が対面の収容体組立の展示小間内の動物を見て興奮するといったことはないが、内部空間80の飼育者は、扉上部の開放部を介して、展示小間内の様子を見ることができる。飼育者は、扉を開けて、展示小間に置かれた皿82や扉内側の給水皿に給水したり、給餌したり、動物に直接触れて、ミルクを飲ませたり診察などを行なうことができる。
【0029】
以上説明した集合展示施設10は、内部に最大20個の展示小間を備え、かつ外側からはガラスを通して、内部の動物を容易に観察することができる。ドア15をしめた状態では、動物が展示または飼育されている展示小間の空間は、外部とは遮断されており、しかも天井12の空調設備98により、内部の空気調和がなされている。従って、動物の飼育に伴って生じる臭いなどは、外部では、ほとんど感じられない。一方、ドア15を開け、通路79を通って内部空間80に入れば、各展示小間へのアクセスは容易であり、例えば、展示された動物をガラス越しに見た購入予定者が希望するペットを管理者が取り出して、集合展示施設10の外に連れ出すことも容易である。
【0030】
図8は、動物の展示室115内に、2つの集合展示施設10,110,112を配置した様子を示す説明図である。本実施例の集合展示施設10等は、ほぼ六角柱の形状をしているので、室内に効率よく配置することができる。ドアの方向は、図8に例示したように、それぞれ異なる方向としても良いし、同方向、あるいは互いに対向する方向としても良い。ペットの購入などを希望する顧客は、集合展示施設10,110,112の外側を歩きながら、必要に応じて立ち止まり、展示小間内の動物を眺めることができる。図8に示した展示室115の例では、3基の集合展示施設が配置されているので、室内を巡るだけで、最大20×3=60の展示小間に収容された動物を見ることができる。
【0031】
しかも、実施例の集合展示施設は、それぞれの独立性が高く、内部が外部に対して遮蔽されているので、一つの集合展示施設で病気などが発生しても、他の集合展示施設への影響は限定的なものとなる。また、動物、特に集団性の強い動物では、一頭がパニックになると、他の動物に伝搬しやすいが、集合展示施設の外部には、音や匂いなどが漏れないので、こうした状況が他の集合展示施設に伝搬することがない。また、給餌などの際にも、集合展示施設一つずつ、給餌が行なわれるので、餌(食事)の匂いなどの影響も、集合展示施設内に限られる。
【0032】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に限られず、種々なる態様で実施できることはもちろんである。例えば、図9に示すように、集合展示施設を断面円形とすることも差し支えない。この場合、外側のガラスは曲面ガラスとすればよい。内部はいくつに区分しても差し支えないが、図9に示した集合展示施設150では、上記実施例に合わせて、第1ないし第5収容体組立131ないし135に区分した。この場合、内部空間140も概ね円形としたが、各収容体組立131ないし135を内部空間140側を平面にすれば、内部空間140の平面形状は、図4に示した実施例と同様になる。なお、図9の例では、ドア145も曲面形状としたが、ドア145を設ける外周面のみ平面として、上記実施例と同様のドアとしても良い。
【0033】
上記実施例では、集合展示施設10の外周は、上部ガラスと下部ガラスに分けたが、上から下まで一枚のガラスとしてもよい。また、ガラスに代えて強化プラスチックなどを用いることもできる。上記実施例では、各集合展示施設は、床14と天井12との間に設置し、集合展示施設の上面は天井で仕切るものとしたが、各集合展示施設毎に天井板を設けても良い。各集合展示施設を一つずつ独立したものとして構成すれば、下部床材70にキャスタなどを設置し、移動可能あるいは回転可能としても良い。移動や回転ができれば、展示室外の通路を通り過ぎる通行人に、時として異なる集合展示施設や同じ集合展示施設であっても異なる展示小間を見せることができ、好適である。
【0034】
上記実施例の集合展示施設では、内部を上下2段として、複数の展示小間を配置しているが、上下2段以外の構成、例えば一段、あるいは3段以上に区切っても良い。実施例の集合展示施設10は、床14から天井12まで一階分の高さとしたが、数階分の高さとし、外部と内部に螺旋階段を設け、展示小間を何層にも構成しても良い。
【0035】
集合展示施設の形状は、実施例の六角形以外に、三角形、四角形、五角形など、N角形(Nは3以上の整数)とすることができ、あるいは円形や楕円形、長円形なども差し支えない。内部の収容体が、環状に配列されれば良い。なお、ここで言う環状とは必ずしも閉じている必要はなく、実施例に示したように、そのうちの内部空間への出入り口に必要な部分が切れていても差し支えない。展示小間を備えた収容体組立を完全に環状に配置し、内部空間には、例えば床側に設けた通路などで入るようにしても良い。あるいは少なくとも一つの収容体組立が移動して、内部空間に入る通路を形成するものとしても良い。
【0036】
集合展示施設は、六角形や円形などの幾何学的な形状にこだわらず、異形形状であっても差し支えない。更に、外部の形状と内部の分割の数や位置は異なってもよい。集合展示施設の内部形状の各例を、図10(A)ないし(D)に示した。図10(A)(B)は、平面N角形の集合展示施設内を、放射線状に分割して展示小間を設けた例であり、図10(C)(D)は、平面N角形の集合展示施設内を、N角形の形状とは無関係に分割して展示小間を設けた事例を示している。図10において、符号DRは、内部空間ISに至る通路PWの入口に設けられたドアを示している。
【0037】
上記実施例では、各展示小間の内部空間側には、観音開きの扉を設けたが、扉は左右の展示小間共通に一枚としても良い。また手前に開くドロアタイプとしても良い。更には、扉とせず単なる仕切としても良い。また、展示小間全体が抽斗のように、手前に引き出せる構成としても良い。この場合、展示小間は外側に向かって幅広の構成となっているので、図11に示すように、隣接する展示小間211〜215の間に仕切壁200を設け、展示小間を長方形とすればよい。図11の例では、展示小間211〜215の各々を抽斗のように構成し、把手230を設けて、引き出すようにしている。仕切壁200は、単なる仕切用の壁であって差し支えないが、内部に種々の機能部品を組み込んでも良い。例えば、自動給餌、自動給水装置などを組み込むことも可能である。
【0038】
図8に示した展示室115では、3基の集合展示施設はそれぞれ完全に独立した配置としたが、少なくとも一部の集合展示施設をその一角あるいは一辺で接する配置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10,110,112…集合展示施設
12…天井
14…床
15…ドア
17…ドアノブ
18…枠体
19…ガラス
20…正面部
21〜25…第1〜第5側部
26…上部展示小間
26a…右上部展示小間
26b…左上部展示小間
31〜35…ガラス
41,45,51,55,61…上部ガラス
43,47,53,57,63…下部ガラス
68…右上部仕切板
69…右下部仕切板
70…下部床材
71…左上部仕切板
73…左下部仕切板
75…上部床材
76…横バー
78…センター支柱
79…通路
80…内部空間
81…仕切板
82…皿
83a,83b…ハンドル
84,85…前支柱
86a,86b…左右扉
87a,87b…左右扉
89a,89b…ハンドル
91〜95…第1〜第5収容体組立
96…下部展示小間
96a…右下部展示小間
96b…左下部展示小間
98…空調設備
99…ライト
115…展示室
131〜135…第1〜第5収容体組立
140…内部空間
145…ドア
150…集合展示施設
200…仕切壁
211〜215…展示小間
230…把手
S1〜S6…支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物を収容可能な収容体を複数集合した集合展示施設であって、
複数の前記収容体を環状に配置し、
当該集合展示施設の外周の少なくとも一部は前記収容体の少なくとも一つの内部の状態が視認可能に形成され、
当該集合展示施設の内部には、前記収容体により取り囲まれた所定の内部空間が形成され、
当該集合展示施設の外部と前記内部空間とを繋ぐ通路を設けた
集合展示施設。
【請求項2】
前記集合展示施設の外形はN角形(Nは3以上の整数)である請求項1記載の集合展示施設。
【請求項3】
前記収容体は、当該集合展示施設の外部に対しては閉塞され、前記内部空間に対しては開放されている請求項1または請求項2記載の集合展示施設。
【請求項4】
隣接する収容体間の少なくとも一部は、仕切られている請求項1ないし請求項3のいずれか記載の集合展示施設。
【請求項5】
前記収容体の内部は少なくとも上下2段に区分され、該区分毎に動物を収容可能である請求項1ないし請求項4のいずれか記載の集合展示施設。
【請求項6】
前記収容体の内部は少なくとも左右2以上に区分され、該区分毎に動物を収容可能である請求項1ないし請求項5のいずれか記載の集合展示施設。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の集合展示施設であって、
前記収容体は、少なくとも一部が透明な外壁と、該外壁から連設された左右2つの側壁と、該左右の側壁の前端により画定される前面とからなり、
前面外壁の幅よりも前記前面の幅が狭くなるように、前記左右の側壁は形成されており、
前記収容体を複数隣接配置することにより、該収容体を環状に配置した
集合展示施設。
【請求項8】
隣接された収容体の側壁は兼用されている請求項7記載の集合展示施設。
【請求項9】
前記収容体の天井、床または側壁に機能部品が設置された請求項1ないし請求項8のいずれか記載の集合展示施設。
【請求項10】
前記機能部品は、前記収容体内部の状況の検出機能、前記収容体内部の環境の調整機能、前記収容体内部への物品の供給機能の少なくともいずれか一つを行なうものである請求項9記載の集合展示施設。
【請求項11】
前記通路には、扉が設けられ、該扉を閉めたとき、前記内部空間は当該集合展示施設の外部とは隔離される請求項1ないし請求項10のいずれか記載の集合展示施設。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか記載の集合展示施設を室内に複数個、互いに離間して設けた動物展示室。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11のいずれか記載の集合展示施設を室内に複数個設け、
前記集合展示施設の一部が連設された動物展示室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−19727(P2012−19727A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159623(P2010−159623)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【特許番号】特許第4674270号(P4674270)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(508261574)有限会社ワンラブ (1)
【Fターム(参考)】