説明

集団検出によるアリコート選別

本明細書では、態様の中でも、生体粒子を含有する懸濁液に由来するアリコートを選別するための方法および装置が記載される。特定の実施形態では、生体粒子が、細胞、細胞小器官、タンパク質、DNA、生物学的起源の破砕物、生物学的化合物によりコーティングされたマイクロビーズ、またはウイルス粒子でありうる。したがって、本明細書で記載される方法および装置は、循環する癌細胞、胎児細胞、および体液中に存在する他の希少細胞などの希少細胞を定量化して、疾患を診断、予後診断、または治療するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年4月13日に出願された米国仮特許出願61/168,892号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、あらゆる目的のために本明細書中に明確に参考として援用される。
【0002】
政府支援の研究または開発の下で行われた発明に対する権利に関する陳述
該当なし
コンパクトディスクで提出した「配列表」、表またはコンピュータプログラムリスト附表への参照
該当なし
【背景技術】
【0003】
発明の背景
体液は、液体中の生体粒子による複合懸濁液である。例えば、血液は、血漿および細胞(赤血球、白血球、血小板)を包含し、これらの細胞は、血液の約55%を占める。血漿は、大半が水であり、タンパク質、イオン、ビタミン、酵素、ホルモン、ならびに他の化学物質を、体内の細胞へと移動させる。
【0004】
赤血球は、サイズが約6〜8μmであり、細胞に酸素を供給するのに用いられる。白血球は、直径が約10〜13μmであり、免疫系の一部として外来のウイルスおよび細菌に対して抗戦することにより、身体を疾患から防御する。血小板は、1.5〜3μmと細胞で最も小さく、血餅を形成することにより出血を停止させる。
【0005】
血液に加えて、唾液、涙液、尿、脳脊髄液のほか、各種の内臓(例えば、肺)と接触する他の体液などの流体は、細胞と生体粒子との混合物を含有する。具体的な体液(例えば、血液)中に存在する細胞および生体粒子の種類および量は、その生物の健康についての情報を明らかにし、感染個体の場合は、その疾患の診断および予後診断についての情報を明らかにする。
【0006】
一部の細胞または生体粒子は、血液細胞の名目濃度と比較して、希少量で存在する。それらの生起が希少であるにもかかわらず、これらの細胞または生体粒子は、体内で生じて個体の健康状態を変化させる重大事象と複雑に結びつく場合がある。これらの細胞を一般に、「希少細胞」と称する。
【0007】
例えば、原発性腫瘍から癌細胞が播種されることは、癌患者における再発の確率および生存の比率を統御する重要な因子である。癌細胞が制御されない形で増殖し、互いに対して接着する能力を喪失するにつれ、それらは、血液循環およびリンパ液循環中に侵入して全身を循環する場合がある。これらの細胞は一般に、循環腫瘍細胞(CTC)、播種性腫瘍細胞(DTC)、循環癌細胞(CCC)、循環上皮細胞(CEC)、潜伏腫瘍細胞(OTC)、または充実性腫瘍に対する直接の生検により得られる標本と対照的なこれらの細胞の移動的性質を指し示す他の類似の呼び換えとして称される。CTCは、すべての主要な癌:前立腺癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、腎癌、肺癌、膵臓癌、および他の癌に罹患する患者の血液中において検出されている。
【0008】
このようにして、体液中に存在するCTCをカウントする検査が開発され、癌患者に予後診断を提供する際の一助となっている。「CTC検査」はまた、具体的な治療(例えば、放射線療法または化学療法)プロトコールが患者に奏効したかどうかをモニタリングするのにも用いることができる。CTC検査の結果に基づき、癌患者は、健康保険が支給されない場合であることが多い、さらなる不要で高価な診断検査および治療、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは陽電子放射断層撮影(PET)スキャンを最小限とするか、または有効でない薬物治療を短縮することにより、費用があまりかからないようにすることが可能となりうる。
【0009】
しかし、末梢血中におけるCTCの存在は極めて低濃度であり、単核細胞10〜10個当たり腫瘍細胞1個のオーダーであると推定され、これは、末梢血0.5ml〜5ml当たり腫瘍細胞1個と同等の濃度である。このような低濃度では、少なくとも1個のCTCを99.995%の確実性で検出するために、推定1億個の単核細胞を伴う試料をスクリーニングしなければならない。典型的には細胞800個/秒の速度で走査する自動式デジタル顕微鏡(ADM)など、従来の技法を用いるなら、このサイズの試料を完全に走査するのに18時間が要求されることから、臨床で用いるには費用および時間の面で非実用的となるであろう。
【0010】
例えば、従来のフローサイトメトリーを用いて、血液試料中におけるCTCの存在または量を決定することができる。しかし、フローサイトメトリーは、細胞が一列の直線状に構成されることを要請し、既存の技法を用いては、2つの細胞を同時に検出しても正確には解釈できないため、各細胞を1個ずつ検出する。フローサイトメトリーでは、所与の任意の時点において、単一の粒子だけを照射するように、レーザービームを集光する。例えば、非蛍光細胞が、フローサイトメーターにより検出可能となるように構成された蛍光細胞と同時に検出容量を横切る場合であれば、このフローサイトメーターにとって不可視である非蛍光細胞も、蛍光細胞と同じ流跡へと方向づけられるであろう。フローサイトメトリーでは、解釈の誤りを回避するため、検出容量中において2つの細胞が重複することを回避するのに十分な細胞間距離を可能とするように、細胞懸濁液を希釈または緩徐化することが日常的である。最新のフローサイトメーターの分取上限は、検体100,000個/秒である。
【0011】
したがって、フローサイトメトリーは、希少細胞を検出または回収するのに適さない。細胞を一度に1個ずつ(直列的に)検出し、各細胞の流跡について判定を行うことは、莫大な個数の細胞を解析する場合、時間を取りすぎる。例えば、10ミリリットルの血液は、約100億個の細胞を含有しているので、最新のフローサイトメーターの最高分取速度である、1秒当たり細胞100,000個では、10mLの含量を完全に分取するのに、100,000秒間または28時間を要するであろう。希少細胞の場合、統計学的に有意な数の希少細胞を捕集するには、7〜15mLの血液が要求されることが多く、フローサイトメーターを用いて希少細胞を回収することは、臨床資源を非実用的な形で浪費することであり、極めて高額の検査費用に転換しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、流体試料中における希少粒子および希少細胞を検出および定量化するための単純で費用/時間効果の高い技法が必要とされている。流体試料において希少粒子を検出するための方法および装置を提供することにより、本発明は、これらおよび他の必要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
他の態様にもまして、本発明は、アリコートを選別することにより、大容量の流体を迅速に走査して、所望の生体粒子を検出および/または定量化するための方法および装置を提供する。一態様では、用いられる、集団判定のためのアリコート選別(「eDAR」)と称する概念が、体液(biofluid)中における希少細胞を検出するのに特に有用である。
【0014】
一態様では、本発明は、流体試料中における希少粒子を検出する方法であって、該流体試料のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップと;該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとを含む方法を提供する。
【0015】
第2の実施形態では、本発明は、生物学的流体中に希少粒子の存在を伴う状態について、被験体に診断または予後診断を提供する方法であって、該生物学的流体のアリコートにおいて該希少粒子の存在または不在を検出するステップと;該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;該割り当てられた値に基づき、該被験体に診断または予後診断を提供するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
第3の態様では、本発明は、流体試料において希少試料を検出するためのデバイスであって、少なくとも第1の流入路と;少なくとも2つの流出路と;該流体試料のアリコートにおいて1以上の希少粒子を検出することが可能な少なくとも1つの検出器と;該アリコートの流動を方向づける機械装置と;該アリコート中における該希少粒子の存在、不在、内容、組成、または量に基づき、該アリコートに値を割り当てることが可能なコンピュータであって、該検出器ならびに該アリコートの流動を方向づける該機械装置と通信するコンピュータとを含むデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、アリコート中における複数の粒子の同時検出、およびアリコートの方向を示す図である。
【図2】図2は、eDARで用いられてシグナル対ノイズ比を改善する、開口部を伴う遮蔽を示す図である。
【図3】図3は、eDARで用いられてシグナル対ノイズ比を改善する、緊密な間隔の開口部を伴う遮蔽を示す図である。
【図4】図4は、単一の流路と、2つのレーザーと、3つの検出器とからなるeDAR装置を示す図である。
【図5】図5は、3つの流路と、1つのレーザーと、1つの検出器とからなるeDAR装置を示す図である。
【図6】図6は、3つの流路と、1つのレーザーと、3つの検出器とからなるeDAR装置を示す図である。
【図7】図7は、5つの流路と、1つのレーザーと、3つの検出器とからなるeDAR装置を示す図である。
【図8】図8は、eDAR(上側パネル)および市販の機器(Veridex製CellSearch;下側パネル)を用いて、血液に由来する循環腫瘍細胞(CTC)カウントを比較したことを示す図である。
【図9】図9A〜Cは、各種の照明下において、eDARを用いて患者血液から捕獲した癌細胞の光学的画像を示す(矢印によりCTCを示す)図である。図9Aは、赤血球中におけるCTCの明視野画像である。図9Bは、パンサイトケラチンの存在を表示する蛍光画像である。図9Cは、CD45の不在を表示する蛍光画像であり、これにより、白血球をCTCとして偽同定する可能性が除外される。
【図10】図10A〜Dは、通常の癌細胞から識別される癌幹細胞の光学的画像を示す図である。矢印は、癌幹細胞(CD44+/CD24−)を指し示す。図10Aは、Alexa 488−抗CD44抗体(緑色)を検出する蛍光画像(500〜540nm)であり;図10Bは、Alexa 647−抗CD24抗体(赤色)を検出する蛍光画像(645〜700nm)であり;図10Cは、明視野画像である。図10Dは、CD44+/CD24−細胞を表示する合成画像(矢印により、癌幹細胞を指し示す)である。
【図11】図11A〜Dは、懸濁液をアリコート分割するためのデバイス1110の作動を例示する図である。
【図12】図12A〜Cは、接合部1240で接合される5つの流路(1211、1212、1213、1214、および1215)を伴う、懸濁液をアリコート分割するために用いられるデバイス1210を例示する図である。
【図13】図13は、接合部1116(または1240)の上流および下流の異なる位置に配置された2つのアバランシェ光ダイオード(APD)から捕集された蛍光シグナルを示す図である。プロット1310が、検出容量1140(または1270)のアリコート中おいてEpCAM分子の存在を検出するように構成された第1のAPDからのシグナルトレース1311を示すのに対し、プロット1320は、流路1114(または1214)内におけるEpCAM分子の存在を検出するように構成された第2のAPDからのシグナルトレース1321を示す。
【図14】図14は、eDARを用いて、回収された癌細胞の百分率をパルス長の関数として例示する、プロット1410を示す図である。トレース1420は、パルス幅が10ミリ秒以下の場合、100%の癌細胞が適正な流路に捕集されたことを示す。
【図15】図15は、回収された希少細胞の百分率を流入流速の関数として表示するトレース1520を伴う、プロット1510を示す図である。
【図16】図16は、検出容量に到達する前に、不混和相により分離される別々の水性アリコートを用いて生体粒子を封入したことを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.概観
一態様では、本発明は、流体試料中における希少粒子を検出および/または回収するための方法および装置を提供する。本明細書では、この態様において具体化される概念を、「集団判定のためのアリコート選別」または「eDAR」と称する。一実施形態では、eDAR法を、(i)流体試料のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップ;(ii)希少粒子の存在または不在により、該アリコートを選別するステップ;および(iii)該割り当てられた選別に基づき、該全アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとして特徴づけることができる。
【0019】
希少細胞を見出す場合、eDARは、速度において驚嘆すべき利点をもたらす。この例として、所望の希少細胞10個を含有する10mLの細胞懸濁液について考察する。この場合、懸濁液容量のうちの約99.9999%は、所望の希少細胞を1個も含有しない。フローサイトメトリー、FACS等など、既存の技法は、全懸濁液容量内に含有されるすべての細胞を直列的に無差別走査し、その結果、ほぼすべての時間が、所望の細胞を含有しない、懸濁液容量の99.9999%の走査に費やされる。eDARは、懸濁液をアリコート分割することにより、全懸濁液の迅速で高レベルのスクリーニングを可能とする。細胞が、実際に希少であれば、大半のアリコートは、所望の細胞を含有しない。一実施形態では、これらのアリコートをヌルとして選別し、第1の流路を介して廃棄する。これに対し、希少細胞を確かに含有する少数のアリコートは非ゼロとして選別し、別個の流路またはチャンバーに捕集する。
【0020】
このように、eDARは、従来のフローサイトメトリーとは異なる。フローサイトメトリーは、(1)粒子列を含有するシース流を用いることにより、生体粒子を、単一の縦列で(すなわち、列中において1個ずつ)流動させるステップと;(2)生体粒子を一度に1個だけ検出するステップと;(3)検出された生体粒子の流跡を決定するステップとにより作動する。検出された生体粒子が所望の場合は、例えば、各種の方法のうちの1つによりその生体粒子を方向づけ、特定の流跡に従わせ、捕集容器に到達させる。検出された生体粒子が所望でない場合は、その生体粒子を異なる流跡に方向づけ、異なる捕集容器に到達させる。
【0021】
従来のフローサイトメトリーとは対照的に、eDARは、流体のアリコート(すなわち三次元細分)全体を探査して、アリコート全体に集団判定を行う。直列化(流体の1D細分であり、この結果、生体粒子は、単一の列に配列される)または平面化(流体の2D細分であり、この結果、生体粒子は、平面内における複数の平行列に配列される)と異なり、アリコート分割は、はるかにより高度のスループットをもたらす。フローサイトメトリーは、その検出器が、単一の細胞または単一の細胞平面に由来するシグナルだけを捕集するように構成されているため、アリコートを解析することは不可能である。フローサイトメーターで用いられる検出器には、検出点または検出平面の外部にある生体粒子が完全に不可視であり、その結果、生体粒子が、該検出点または検出平面の外部へと移動することを防止するために、シース流、誘導緩衝液、または他の流体力学的または幾何学的な絞込み機構が必要となる。eDARでは、1つを超える生体粒子平面または生体粒子層に及ぶアリコートの全体を解析する。eDARでは、単一の検出点または検出平面とは対照的に、アリコートの全体から発生するシグナルを解析する。
【0022】
eDARは、希少細胞を検出または単離する既存の方法を上回る著明な高感度をもたらす。eDARの検出構成要素は、アリコート内の全体で発生した単一の光子も検出することが可能であり、したがって、検出可能な特徴を呈する生体粒子を逸することがない。アリコートの選別は、所望の生体粒子を完全に欠くと選別されるアリコートだけを排除するように構成されているため、偽陰性率が極めて低い。
【0023】
本発明による実施形態は、体液から癌細胞または癌幹細胞を捕捉して癌の予後診断を提供すること;Giardia属またはCryptosporidium属などの寄生虫を捕捉して水質モニタリングを行うこと;マラリアに感染した赤血球を捕捉してマラリアの診断を行うこと;リンパ球および白血球を捕捉してHIVのモニタリングを行うこと;母体血液中の胎児細胞を捕捉して疾患のスクリーニングを行うこと;幹細胞を捕捉して治療を行うこと;プリオン感染細胞を捕捉してプリオン関連疾患(例えば、狂牛病)のスクリーニングを行うことを含め、生物学および疾患の診断における多種多様な適用において用いることができる。
【0024】
マラリアに加えて、本主題内容は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の診断およびモニタリングにおけるCD4+ Tリンパ球(CD4+ T細胞)のモニタリングにも用いることができる。CD4+ Tリンパ球の絶対カウントは、抗レトロウイルス治療、およびHIV感染患者における日和見感染予防を開始するための基準として用いることができる。白血球(leucocytes)(白血球(white blood cells))の部分集団であるCD4+ Tリンパ球の減少は、免疫学的防御の低下と強く相関する。すべてのHIV感染者において、3〜6カ月ごとにCD4+ Tリンパ球(CD4+ T細胞)レベルをモニタリングすることは、適切な治療戦略を開始し、治療の有効性を評価するための方法として、米国CDCの公衆衛生局により推奨されている。
【0025】
一部の検査室では、3つの検査法による全白血球カウント、リンパ球である白血球の百分率、ならびにCD4+ T細胞であるリンパ球の百分率の積を用いて、CD4+ T細胞の絶対数が確立されている。FACSCount(BD Biosciences製)など、単一のプラットフォームによるフローサイトメーターは、開発途上国では市販されていないか、または携帯用デバイスとしては市販されていない。本主題内容による実施形態は、CD4+ Tリンパ球を、他の白血球およびRBCから迅速に識別するのに用いることができる。
【0026】
本発明による実施形態が対象とする、分離、濃縮、および/または単離のさらなる可能な適用には、母体血液中における胎児細胞をモニタリングして、遺伝子障害の診断およびプリオンの検出を出生前に行うことが含まれる。プリオンは、核酸を改変する手順による不活化に耐性である、低分子の感染性タンパク質粒子を包含する。加えて、本主題内容による実施形態は、胎児細胞、または他のマイクロ生体粒子もしくはナノ生体粒子に対して用いることもできる。
【0027】
II.定義
本明細書で用いられる「流体試料」とは、対象の希少粒子を含有する場合もあり、含有しない場合もある、任意の液体を指す。ある実施形態では、流体試料が、生物学的流体試料、例えば、血液試料、血漿試料、唾液試料、尿試料、リンパ試料、脊髄液試料などでありうる。他の実施形態では、試料が、環境流体試料、例えば、湖沼、河川、海洋、池、小河川、湧水、沼沢、貯水池などに由来する流体試料である。さらに他の実施形態では、試料が、水試料、例えば、海水脱塩処理場、浄水場、貯水池、湧水、小河川、氷水流、貯水塔、または飲用水の水源として意図されうる他の水源に由来する水試料でありうる。
【0028】
本明細書で用いられる「希少粒子」とは、流体試料中に低レベルで存在する細胞または高分子を指す。ある実施形態では、希少粒子が、細胞、タンパク質、タンパク質複合体、核酸、核タンパク質複合体、炭水化物、代謝物、異化生成物などでありうる。ある実施形態では、粒子が、流体試料において、該流体中における全粒子集団の約10%未満、または該流体中における全粒子集団の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.01%未満、またはさらに低い%の濃度で存在する場合、その粒子を希少であると考えることができる。さらに他の実施形態では、希少粒子が、流体試料において、該流体中における全粒子集団の約10分の1未満、または該流体中における全粒子集団の約10分の1、10分の1、10分の1、10分の1、10分の1、10分の1、1010分の1、1011分の1、1012分の1以下で存在しうる。
【0029】
具体的な実施形態では、希少粒子が、希少細胞である。希少細胞は、有核細胞の場合もあり、無核細胞の場合もある。希少細胞には、悪性の表現型を発現している細胞;母体の末梢血中における胎児細胞などの胎児細胞、腫瘍から血液または他の体液中へと流出した腫瘍細胞などの腫瘍細胞;HIVに感染した細胞、被験体の遺伝子をトランスフェクトした細胞など、ウイルスに感染した細胞;および自己反応性障害に罹患する被験体の末梢血中に存在する、T細胞またはB細胞の異常な亜型が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書で用いられる「集団判定」とは、粒子集団内または粒子群内における特徴の存在または不在の検出に基づいてなされる判定を指す。ある実施形態では、複数の粒子を含有する流体試料のアリコート中における単一の特徴的粒子の存在または不在に基づき、集団判定がなされる。単一粒子の存在または不在に基づいてなされる集団判定は、アリコートの全体に(すなわち、アリコート中に存在するすべての粒子に)適用されることが重要である。
【0031】
本明細書で用いられる「アリコート」とは、解析される流体試料の全容量のうちの一部を指す。アリコートは、三次元空間を占め、その中の粒子は、組織化されることなく、無作為に分布している。アリコートは、厚さが有限であり、粒子は、識別可能な層をなすことなく、厚さ方向に分布することが可能である。本発明の文脈では、アリコートを、細分化することなく、その全体において解析する。二次元空間を示唆し、流体力学的絞込みを用いることが典型的な現行の細胞分取法(例えば、フローサイトメトリー、FACS等)を説明するのに用いられる、シート、リボン、平面、または類似の用語は、アリコートと考えられない。
【0032】
ある実施形態では、アリコートが、より大量の流体試料の画分、例えば、流体試料の約1/2、または流体試料の約1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10以下からなる場合がある、ある実施形態では、アリコートが、例えば、流体試料の約10%、または流体試料の約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、約0.1%、約0.05%、約0.01%、0.001%、またはさらに低い%からなる場合がある。したがって、本明細書で記載されるeDAR法により検討または処理される流体は、例えば、少なくとも約2つのアリコート、または少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、225、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、1,000万以上のアリコートへと分割できる。当業者であれば、流体試料を区分するアリコートの数は、流体中において予測される希少粒子の数、および該流体試料の全容量に依存することを理解するであろう。
【0033】
ある実施形態では、アリコートの容量が、例えば、約0.1nL〜約10mL、または約1nL〜約1mL、または約1nL〜約100μL、または約1nL〜約10μL、または約1nL〜約1μL、または約1nL〜約100nLでありうる。
【0034】
本明細書で用いられる「選別」という用語は、類別することにより、アリコートの定量的特性、定性的特性、または重要性を評価することを指す。一実施形態では、アリコートを、ヌル(例えば、アリコートにおいて希少粒子が検出されない場合)または非ゼロ(例えば、アリコートにおいて少なくとも1つの希少粒子が検出される場合)に選別することができる。一実施形態では、選別が二分法でありうる。他の実施形態では、例えば、アリコート中における希少粒子の濃度、アリコート中における希少粒子の本質(identity)、アリコート中における複数の異なる希少粒子の本質などと相関するさらなる類型によりアリコートを選別することができる。このように、例えば、約1〜10、約11〜20、約1〜50、約51〜100、約1〜100、約101〜201等の濃度範囲に基づき、任意の数の類型を割り当てることができる。これらの選別には、所定の定量的類型の数もしくは定性的類型の数(例えば、0、1、2、3、4、5等)のうちの1つに対応する任意の数、またはアリコート中における希少粒子の数もしくは概数の実際の値に対応する数が割り当てられる。
【0035】
本明細書で用いられる「検出可能な特徴」とは、希少粒子に随伴する特性、例えば、該希少粒子に内在的であるか、または該希少粒子に結合させるかもしくはコンジュゲートした検出可能部分に随伴する、感光特性、電気活性特性、生物活性特性、もしくは磁性特性を指す。
【0036】
感光特性の例には、例えば、生体粒子の形態(粒子のサイズ、粒度、細胞内構造)、により一般的に誘導される、光の強度(光の反射、散乱、屈折、透過、または吸収)、蛍光、免疫蛍光などの変化が含まれる。
【0037】
電気活性特性の例には、例えば、電荷、酸化状態、スピン状態、キャパシタンス、コンダクタンス、誘電特性、電気泳動における移動性、または分極率の変化が含まれる。
【0038】
生物活性特性の例には、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、β−ガラクトシダーゼなどの酵素、および、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)、OPD(o−フェニレンジアミン)、ABTS(2,2’−アジノジエチルベンゾチアゾリンスルホネート)、クロロナフトール(chlornaphthol)、AEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)、DAB(ジアミノベンジジン)、pNPP(p−ニトロフェニルホスフェート)、BCIP/NBT(ブロモクロロインドリルホスフェート−ニトロブルーテトラゾリウム)などが含まれるがこれらに限定されない、これらの化学発光基質、発色(colometric)基質、または化学蛍光基質との検出可能な相互作用が含まれる。
【0039】
ある実施形態では、希少粒子を検出するのに用いうる部分には、ナノ粒子、マイクロビーズ、抗体およびそれらの断片、蛍光性抗体、磁性ナノ粒子、ポリマー分子、色素分子、DNA分子またはRNA分子(例えば、アプタマー)、脂質分子、タンパク質分子などが含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書で用いられる「抗体」とは、抗原に特異的に結合してこれを認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその断片に由来するフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。認知されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ定常領域遺伝子、ラムダ定常領域遺伝子、アルファ定常領域遺伝子、ガンマ定常領域遺伝子、デルタ定常領域遺伝子、イプシロン定常領域遺伝子、およびミュー定常領域遺伝子のほか、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパ鎖またはラムダ鎖として分類される。重鎖は、ガンマ鎖、ミュー鎖、アルファ鎖、デルタ鎖、またはイプシロン鎖として分類され、これらにより、免疫グロブリンのクラスである、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEがそれぞれ定められる。典型的には、抗体の抗原結合領域が、結合の特異性およびアフィニティーにおいて最も重要である。抗体は、ポリクローナルの場合もあり、モノクローナルの場合もあり、血清に由来する場合もあり、ハイブリドーマに由来する場合もあり、組換えによりクローニングされる場合もあり、また、キメラの場合もあり、霊長動物化される場合もあり、ヒト化される場合もある。
【0041】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含む。各四量体は、各対が、1つの「軽」鎖(約25kD)と、1つの「重」鎖(約50〜70kD)とを有する、2つの同一のポリペプチド鎖対からなる。各鎖のN末端は、抗原認識の主因となる、約100〜110以上のアミノ酸による可変領域を定める。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0042】
抗体は、例えば、完全な免疫グロブリンとして、または各種のペプチダーゼで消化することにより生成される、多数の十分に特徴づけされた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下方において抗体を消化し、それ自体、ジスルフィド結合により軽鎖がV−C1へと連結されたFabの二量体であるF(ab)’をもたらす。F(ab)’を軽度の還元条件下で還元して、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断し、これにより、F(ab)’二量体をFab’単量体へと転換することができる。Fab’単量体とは、本質的に、ヒンジ領域の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology(Paul編、第3版、1993年)を参照されたい)。完全抗体の消化との関連で、各種の抗体断片が定義されているが、化学的に、または組換えDNA法を用いることにより、このような抗体断片を新規に合成しうることを、当業者は理解するであろう。したがって、本明細書で用いられる抗体という用語はまた、全抗体を改変することにより作製される抗体断片、または組換えDNA法を用いて新規に合成される抗体断片(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定される抗体断片(例えば、McCaffertyら、Nature、348巻:552〜554頁(1990年)を参照されたい)も包含する。
【0043】
一実施形態では、抗体を、標識または検出可能な部分にコンジュゲートする。
【0044】
本明細書で用いられる「標識」または「検出可能部分」とは、分光分析的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理的手段により検出可能な組成物を指す。例えば、有用な標識には、放射性核種、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、Oregon Green(商標)、ロダミン、テキサスレッド、イソチオシアン酸テトラメチルローダミン(tetrarhodimine isothiocynate)(TRITC)、Cy3、Cy5等)、蛍光マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリン等)、腫瘍関連プロテアーゼにより活性化される自己消光性蛍光化合物、酵素(例えば、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0045】
ある実施形態では、検出試薬を還流させて、単離細胞を選択的に標識することもでき、これらを目立たせることもできる。このような試薬の例には、蛍光分子、免疫蛍光分子、色素コンジュゲート分子(抗体、fab断片、アプタマー、ポリマー、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、またはこれらの組合せなど)、磁性化合物、電気活性化合物、生物活性化合物、または感光性化合物が含まれるがこれらに限定されない。例は、上皮癌性細胞内における細胞骨格に不可欠な構成要素であるサイトケラチンと反応する染色剤を用いることである。他の色素の例には、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)コンジュゲートマウス抗ヒト上皮抗体(HEA)およびフィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗CD45抗体が含まれる。色素コンジュゲート抗体の他の例には、パンサイトケラチン抗体であるA45B/B3、AE1/AE3、またはCAM5.2(サイトケラチン8(CK8)、サイトケラチン18(CK18)、またはサイトケラチン19(CK19)を認識するパンサイトケラチン抗体)、ならびに乳癌抗原NY−BR−1(また、B726P、ANKRD30A、アンキリン反復ドメイン30Aとしても公知である);B305DアイソフォームAまたはC(B305D−AまたはB305D−C;また、抗原B305Dとしても公知である);ヘルメス抗原(また、抗原CD44、PGP1としても公知である);E−カドヘリン(また、ウボモルリン、カドヘリン1、CDH1としても公知である);癌胎児性抗原(CEA;また、CEACAM5または癌胎児性抗原関連細胞接着分子5としても公知である);β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(gonadotophin)(β−HCG;また、CGB、絨毛性(Chronic)ゴナドトロピン、βポリペプチドとしても公知である);カテプシンD(また、CTSDとしても公知である);ニューロペプチドY受容体Y3(また、NPY3R;リポ多糖会合タンパク質3(LAP3)融合体としても公知である);ケモカイン(CXCモチーフ受容体4;CXCR4);癌遺伝子ERBB1(また、c−erbB−1、上皮細胞増殖因子受容体、EGFRとしても公知である);Her−2 Neu(また、c−erbB−2またはERBB2としても公知である);GABA受容体Aパイ(π)ポリペプチド(また、GABARAP、GABA−A受容体パイ(π)ポリペプチド(GABA A(π)、γ−アミノ酪酸A型受容体パイ(π)サブユニット)、または GABRPとしても公知である);ppGalNac−T(6)(また、β−1−4−N−アセチル−ガラクトサミニル−トランスフェラーゼ6、GalNAcトランスフェラーゼ6、GalNAcT6、UDP−N−アセチル−d−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ6、またはGALNT6としても公知である);CK7(また、サイトケラチン7、サルコレクチン、SCL、ケラチン7、またはKRT7としても公知である);CK8(また、サイトケラチン8、ケラチン8、またはKRT8としても公知である);CK18(また、サイトケラチン18、ケラチン18、またはKRT18としても公知である);CK19(また、サイトケラチン19、ケラチン19、または KRT19としても公知である);CK20(また、サイトケラチン20、ケラチン20、またはKRT20としても公知である);Mage(また、黒色腫抗原ファミリーA亜型またはMAGE−A亜型としても公知である);Mage3(また、黒色腫抗原ファミリーA3、またはMAGA3としても公知である);肝細胞増殖因子受容体(また、HGFR、乳頭状腎細胞癌遺伝子2、RCCP2、原癌遺伝子met、またはMETとしても公知である);Mucin−1(また、MUC1、癌抗原15.3、(CA15.3)、癌抗原27.29(CA27.29);CD227抗原、エピシアリン、上皮膜抗原(EMA)、多形性上皮ムチン(PEM)、ラッカセイ反応性尿ムチン(PUM)、腫瘍関連糖タンパク質12(TAG12)としても公知である);嚢胞性疾患体液粗タンパク質(また、GCDFP−15、プロラクチン誘導性タンパク質、PIPとしても公知である);ウロキナーゼ受容体(また、uPR、CD87抗原、プラスミノーゲン活性化因子受容体ウロキナーゼ型、PLAURとしても公知である);PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質;また、PTHLHとしても公知である);BS106(また、B511S、低分子乳房上皮ムチン、またはSBEMとしても公知である);プロスタテイン様リポフィリンB(LPB、LPHB;また、抗原BU101、セクレトグロビンファミリー1−Dメンバー2、SCGB1−D2としても公知である);マンマグロビン2(MGB2;また、マンマグロビンB、MGBB、ラクリグロビン(LGB)、リポフィリンC(LPC、LPHC)、セクレトグロビンファミリー2Aメンバー1、またはSCGB2A1としても公知である);マンマグロビン(MGB;また、マンマグロビン1、MGB1、マンマグロビンA、MGBA、セクレトグロビンファミリー2Aメンバー2、またはSCGB2A2としても公知である);哺乳動物セリンプロテアーゼ阻害剤(マスピン、また、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤クレードB(オボアルブミン)メンバー5、またはSERPINB5としても公知である);前立腺上皮特異性Ets転写因子(PDEF;また、ステライルアルファモチーフ指向ドメイン含有ets転写因子、またはSPDEFとしても公知である);腫瘍関連カルシウムシグナル伝達性転写因子1(また、結腸直腸癌抗原CO17−1A、上皮糖タンパク質2(EGP2)、40kDaの上皮糖タンパク質(EGP40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮特異性抗原(ESA)、消化管腫瘍関連抗原733−2(GA733−2)、KS1/4抗原、第4染色体膜構成要素表面マーカー1(M4S1)、MK−1抗原、MIC18抗原、TROP−1抗原、またはTACSTD1としても公知である);テロメラーゼ逆転写酵素(また、テロメラーゼ触媒サブユニット、またはTERTとしても公知である);トレフォイル因子1(また、乳癌エストロゲン誘導性配列、BCEI、消化管トレフォイルタンパク質、GTF、pS2タンパク質、またはTFF1としても公知である);葉酸;またはトレフォイル因子3(また、腸トレフォイル因子、ITF、p1.B;またはTFF3としても公知である)に対する色素コンジュゲート抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」という語句、または、希少粒子、例えば、タンパク質、核酸、もしくは細胞に言及する場合における「〜と特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という語句は、異種粒子集団および他の生物学的物質中におけることが多い希少粒子の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定のイムノアッセイ条件下において、特定の抗体は、具体的な希少粒子に、バックグラウンドの少なくとも2倍の強さで、およびより典型的には、バックグラウンドの10〜100倍超の強さで結合する。このような条件下における抗体に対する特異的な結合には、具体的な粒子に対するその特異性について選択された抗体が要求される。例えば、選択された抗原と特異的に免疫反応性であるが、他のタンパク質とは免疫反応性でないポリクローナル抗体だけを得るように、ポリクローナル抗体を選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を除外することにより達成することができる。
【0047】
一態様では、本発明は、試料流体中において1以上の希少生体粒子を検出する方法であって、a)前記試料流体の1以上のアリコートを探査するステップと;b)単回の測定により、前記1以上のアリコートの各々において、前記1以上の希少生体粒子の存在または不在を検出するステップであって、前記1以上のアリコートのうちの少なくとも1つが、複数の生体粒子を含むステップと;c)前記1以上の希少生体粒子の存在または不在に基づき、前記アリコートを選別するステップとを含む方法を提供する。ある実施形態では、希少生体粒子が、細胞である。ある実施形態では、希少生体粒子が、蛍光標識細胞である。
【0048】
本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、単回の測定により複数のパラメータが検出される。具体的な実施形態では、複数のパラメータが、異なる蛍光色である。
【0049】
本明細書で記載される方法のある実施形態では、前記生体粒子またはそれらの組合せを含めた試料中における細胞の凝集を防止する化合物である、抗凝固剤を添加することにより、試料流体を安定化させる。
【0050】
一部の実施形態では、アリコートの選別が二分法であり、例えば、アリコートが希少粒子を含有しない場合は、該アリコートに値「0」が割り当てられ、アリコートが希少粒子を含有する場合は、値「1」が割り当てられる。他の実施形態では、選別が二分法ではなく、例えば、アリコート中に存在する希少粒子の数、または試料中における希少粒子の本質に基づいて値が割り当てられる。ある実施形態では、コンピュータおよび選別アルゴリズムであるソフトウェアにより選別が実施される。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書で記載される方法が、アリコートを、それらの選別に基づいて流すステップをさらに含む。例えば、アリコートに割り当てられた値に基づき、アリコートの流動または捕集を方向づける。ある実施形態では、外部場を用いることにより、または流動を撹乱させることによりこれを達成する。
【0052】
ある実施形態では、方法が、前記選別が同様であるアリコートを捕集および/またはプールすることにより、希少生体粒子を濃縮するステップを含みうる。
【0053】
本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、希少生体粒子が、癌細胞、癌幹細胞、Giardia属、Cryptosporidium(cryptosporium)属、マラリアに感染した赤血球、リンパ球、白血球、胎児細胞、幹細胞、およびプリオン感染細胞からなる群から選択される。
【0054】
別の態様では、本発明は、試料流体中における1以上の希少生体粒子を検出するデバイスであって、a)1以上のアリコートの各々において1以上の希少生体粒子の存在または不在を検出する1以上の検出器であって、前記1以上のアリコートのうちの少なくとも1つが、複数の生体粒子を含む検出器と;b)前記1以上の希少生体粒子の存在または不在に基づき、前記アリコートを選別するためのソフトウェアを伴うコンピュータとを含むデバイスを提供する。一実施形態では、選別が二分法である。デバイスを用いて複数種類の生体粒子を検出する他の実施形態では、選別が非二分法である。
【0055】
ある実施形態では、デバイスが、前記選別に基づき、前記アリコートを流すための流路をさらに含みうる。ある実施形態では、抗凝固化合物、希少生体粒子に優先的に結合する化合物、生体粒子の凝集を防止する化合物、またはこれらの組合せにより流路を処理する。
【0056】
ある実施形態では、デバイスが、前記生体粒子の流跡を追跡および操作するための電極をさらに含みうる。他の実施形態では、デバイスが、磁性粒子を結合させた生体粒子を分離するための磁性エレメントをさらに含みうる。他の実施形態では、デバイスが、前記生体粒子の流跡を追跡および操作するための音響エレメントをさらに含みうる。
【0057】
本明細書で記載されるデバイスおよび装置のある実施形態では、デバイスが、カメラ、電子増倍管、電荷結合素子(CCD)による画像センサー、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード(APD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、または相補性金属酸化物半導体(CMOS)による画像センサーから選択される1以上の検出器を含む。
【0058】
本明細書で記載されるデバイスおよび装置のある実施形態では、デバイスが、前記試料流体の1以上のアリコートを探査するための1以上の線源をさらに含みうる。例えば、電磁放射線源である。具体的な実施形態では、探査するための1以上の線源が、レーザー(固体レーザー、ダイオード励起レーザー、イオンレーザー、または色素レーザー)、発光ダイオード(LED)、ランプ、アーク放電、磁気パルス、または天然光から選択される。生体粒子が化学発光または生体発光などの発光を呈するさらに他の実施形態では、アリコートを探査するための線源が要求されない。
【0059】
III.実施形態
A.検出方法
一態様では、本発明は、流体試料中における希少粒子を検出する方法であって、(a)該流体試料のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップと;(b)該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとを含む方法を提供する。
【0060】
一実施形態では、該希少粒子の存在を検出する該ステップが、(i)検出試薬を該検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、該流体試料を、該検出試薬と接触させるサブステップと;(ii)ステップ(i)で形成された複合体の存在または不在を、該流体試料のアリコートにおいて検出するサブステップとを含む。
【0061】
ある実施形態では、検出試薬が、標識抗体または未標識抗体、fab断片、アプタマー、ポリマー、ナノ粒子、マイクロビーズ、蛍光抗体、磁性ナノ粒子、ポリマー分子、色素分子、アプタマー、脂質分子、タンパク質分子などを含みうる。
【0062】
別の実施形態では、該希少粒子の存在を検出する該ステップが、(i)外部の電磁放射線源により該アリコートを探査するサブステップと;(ii)該希少粒子の蛍光を検出するサブステップとを含む。
【0063】
一実施形態では、希少粒子が、蛍光標識細胞を含みうる。ある実施形態では、蛍光標識細胞が、蛍光タンパク質を発現させる細胞、または蛍光検出試薬により標識されている細胞を含みうる。例えば、赤色蛍光タンパク質または緑色蛍光タンパク質を一過性にまたは安定的に発現させる細胞である。
【0064】
希少粒子が内在的な化学発光または生物発光を呈するさらに別の実施形態では、希少粒子の存在を検出するステップが、該希少粒子の生物発光または化学発光を検出するステップを含む。
【0065】
ある実施形態では、希少粒子が、細胞、タンパク質、タンパク質複合体、核酸、核タンパク質複合体、炭水化物、代謝物、異化生成物などでありうる。一実施形態では、希少粒子が、細胞である。具体的な実施形態では、細胞が、癌細胞、循環腫瘍細胞(CTC)、癌幹細胞、癌表面抗原、例えば、CD44、CD2、CD3、CD10、CD14、CD16、CD24、CD31、CD45、CD64、CD140b、またはこれらの組合せからなる群から選択される表面抗原を提示する癌細胞でありうる。
【0066】
CD44、CD2、CD3、CD10、CD14、CD16、CD24、CD31、CD45、CD64、またはCD140bが含まれうるがこれらに限定されないバイオマーカーに選択的に結合する他の試薬を還流させることにより、癌幹細胞を、通常の癌細胞から識別することができる。
【0067】
希少粒子が癌細胞である、ある実施形態では、希少細胞を有するものとして同定されたアリコート内に含有される細胞を、さらに個別に分析することができる。例えば、従来のフローサイトメトリーまたはeDARを介して、これらの細胞をさらに区分または分取することができ、所望の細胞を分析して、細胞機構の機能不全の原因を理解することができる。各細胞内の内容物を、DNA、RNA、DNA配列、代謝物、脂質、炭水化物、タンパク質含量などについて個別に解析することができる。
【0068】
他の実施形態では、希少細胞が、寄生虫細胞または寄生虫生物体、例えば、Giardia属種またはCryptosporidium属種、Plasmodium属種に感染した赤血球、HIVに感染したリンパ球または白血球、母体血液中における胎児細胞、幹細胞、プリオン感染細胞、CD4+ T細胞などでありうる。
【0069】
一実施形態では、流体試料が、1つを超える種類の希少粒子、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10種類以上の希少粒子を含みうる。したがって、ある実施形態では、各々が異なる特異性を有する、識別が可能となる複数の検出試薬を、前記検出試薬および複数の希少粒子を含む複数の複合体へと転換するのに十分な条件下において、流体試料を、前記複数の検出試薬と同時に接触させる。一部の実施形態では、例えば、1つを超える探査デバイスおよび/または1つを超える検出デバイスを含むeDAR装置を用いることにより、複数の複合体を同時に検出する。
【0070】
例えば、2つの希少粒子を同時に検出する場合は、各希少粒子を、それらの各々が2つの検出デバイスのうちの1つにより検出されうる、識別が可能となる検出試薬と接触させることができる。さらに、検出試薬が蛍光部分を含む場合は、2つの探査デバイス(例えば、異なる蛍光部分の励起波長に対応する異なる波長の放射を生じる2つのレーザー)を用いることができ、2つの異なる検出デバイスにより、それぞれの蛍光放射を検出することができる。したがって、一実施形態では、異なる波長の蛍光により、検出試薬が弁別可能となる。
【0071】
さらに別の実施形態では、2つ以上の希少粒子を、順次検出することができる。例えば、一実施形態では、方法が、第1の希少粒子をeDAR装置の第1の場所で検出し、第2の希少細胞をeDAR装置の第2の場所で検出するステップを含みうる。このように、第1および第2の粒子が在中するアリコートを、第1の検出ステップの後で流すこともでき、第2の検出ステップの後で流すこともでき、両方の検出ステップの後で流すこともできる。
【0072】
本発明のある実施形態では、細胞集団から特徴を検出することが、同時的になされる場合もあり、ある時間にわたり累積的になされる場合もある。例えば、特徴の検出は、生体粒子集団を含有する大量のアリコートから一度に(「同時的」に)生じうる。
【0073】
方法が同時的方式で実施されるある実施形態では、生体粒子を、速度が可変的な流動により移送することができる。例として述べると、生体粒子に検出容量中を横切らせるとき、これらを一定の流動により移送することができる。代替的に、細胞に検出容量中を横切らせるとき、流動を停止させることもでき、減速させることもでき、加速させることもできる。検出容量の上流または下流において、以下:バルブ、泡沫、電場、磁場、光場、空気圧源、固体粒子、膜、不混和性の液滴、重力差、または流路の表面張力を変化させるコーティングのうちの1つにより、流動を制御することができる。
【0074】
本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、検出ステップを、流体試料が流路を連続的に流動する間に実施する。ある実施形態では、別々のアリコートを物理的に分離せず、光学的な検出ステップにより規定する、すなわち、アリコートを、検出が生起する瞬間に検出容量中に存在する粒子集団として規定することができる。
【0075】
ある実施形態では、検出イベントを、検出容量のサイズおよび流体試料の流速の両方に依存する、規則的な頻度で生起させる。例えば、具体的な装置の検出容量が10μLであり、流体試料が100μL/秒の速度で該装置内を流動する場合、異なるアリコートは、0.1秒間ごと、または10Hzの速度で検出される。
【0076】
ある実施形態では、装置の形状および処理される流体の容量に応じて、別々のアリコートに検出容量中を横切らせる速度が、0.1kHz〜100MHzである。別の実施形態では、別々のアリコートに検出容量中を横切らせる速度が、約10Hz〜約10MHzである。他の実施形態では、別々のアリコートに検出容量中を横切らせうる頻度が、約0.1kHz〜約100MHz、または約1kHz〜約10MHz、または約1kHz〜約5MHz、または約1kHz〜約1MHzである。ある実施形態では、別々のアリコートに検出容量中を横切らせる頻度が、少なくとも約0.1kHz、または少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、200、250、300、400、500、600、700、800、もしくは900kHz、または少なくとも約1MHz、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、もしくは100MHzでありうる。
【0077】
本明細書で記載される方法の他の実施形態では、細胞集団から特徴を検出することが、単一細胞のオーダーにある少量の検出容量から、ある時間にわたり(「累積的」に)生じうるが、流動を用いることにより、検出容量中を複数の細胞に横切らせることもできる。eDARの累積的方式は、単一の生体粒子から生じる逐次的なシグナルまたはフレームを低速度で重ね合わせることとは異なる;単一の生体粒子を低速度で重ね合せても、生体粒子集団は構成されない。同時的判定および累積的判定のいずれにおいても、判定が行われるのは、特徴が細胞集団から検出された後に限られる。
【0078】
本明細書で記載される方法のさらに他の実施形態では、検出前に、アリコートを物理的に分離することができる。これは、例えば、試料流体を、空気または連続的な油性不混和流体相により分離された別々の水性アリコートへと、例えば、液滴へと区分することにより達成することができる。
【0079】
一実施形態では、水性アリコートを分離するのに用いられる不混和相には、有機相、油、鉱油および大豆油などの天然油、AR−20油、AS−4油、PDMS油などのシリコーン油、Fluorinertおよびペルフルオロデカリン(perfluorordecalin)などのフッ化油、ヘキサデカンおよびアセトフェノンなどの有機溶媒、蝋、空気、またはガスが含まれうる。
【0080】
ある実施形態では、不混和相が、連続相(すなわち、別々のアリコートの全体を取り囲む)の場合もあり、分断相(すなわち、別々のアリコート間の空隙だけを占め、これらのアリコートを完全には取り囲まない)の場合もある。
【0081】
例えば、図16は、別々のアリコートの全体を取り囲む不混和相(1642)を例示する。
【0082】
一実施形態では、別々のアリコートが、液滴である。別の実施形態では、別々のアリコートが、栓流である。
【0083】
一実施形態では、別々のアリコートを、流路と流体連絡したeDAR装置上の流路において逐次的に形成することができる。
【0084】
ある実施形態では、別々のアリコートを、eDAR装置の外部で形成させるが、流路と流体連絡したチューブ、ポート、または接続部を介して、該装置の流路へと流動させることができる。
【0085】
一実施形態では、細胞懸濁液または不混和相に界面活性剤を添加して、別々のアリコートを安定化させることができる。界面活性剤には、アルブミン(ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、Span 80、Pluronic、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート(DDAPS)などの両性イオン性界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)などの陰イオン性界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)などの陽イオン性界面活性剤、ならびにシリコーンベースの界面活性剤、PEG化界面活性剤、およびフッ素化界面活性剤が含まれうる。
【0086】
さらに別の実施形態では、検出ステップの前に、流体試料をアリコートに区分し、eDAR装置の別個の流路またはチャンバーへと物理的に分離することができる。次いで、後続の検出ステップを、並行的に(すなわち、複数の検出デバイスまたは単一の検出デバイスを同時に用いて)実施することもでき、例えば、別々のアリコートを、1以上の検出容量内へと逐次的に方向づけることにより、逐次的に実施することもできる。
【0087】
本発明の一部の実施形態では、希少粒子を検出する前に、流体試料、例えば、生物学的流体試料を安定化させることができる。ある実施形態では、クエン酸、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)などの抗凝固剤;メチロール、ホルムアルデヒド、ジアゾリジニル尿素(diazolinidinyl urea)、イミダゾリジニル尿素、メテナミン、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはグリオキサールなどのアミンまたはアミドのヒドロキシメチル誘導体などのアルデヒドなどが含まれるがこれらに限定されない試薬により流体を安定化させることができる。
【0088】
本発明のさらに他の実施形態では、本明細書で記載される方法を、所望のアリコートを流した後で生起する副次的な過程とさらに組み合わせることができる。本明細書で記載される方法と組み合わせうる過程および/または機能の例には、例えば、細胞内容物(例えば、細胞内に封入されたDNA、RNA、マイクロRNA、脂質、代謝物、炭水化物、またはタンパク質)を同定するための選択的な反応が含まれる。これらの反応には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、等温PCR、DNAの後成的状態を決定するための反応、マイクロRNA含量およびsiRNA含量を決定するための、単一分子によるハイブリダイゼーション反応、またはアプタマー(DNAの短鎖)選択反応が含まれる。
【0089】
ある実施形態では、本明細書で記載される方法を、アリコートまたは細胞の単離を行った後のアッセイプロトコールとさらに組み合わせることができる。本明細書で記載される方法と組み合わせうるアッセイの非限定的な例には、RNAの抽出(増幅を伴う抽出または増幅を伴わない抽出)、cDNAの合成(逆転写)、遺伝子のマイクロアレイ、DNAの抽出、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(単独PCR、ネスト化PCR、定量的リアルタイムPCR、またはリンカー−アダプターPCR)、またはDNAメチル化解析など、核酸ベースの方法;蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞分取(FACS)、細胞培養、または比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)研究などのサイトメトリー法;電気泳動、サザンブロット解析、または酵素結合免疫測定アッセイ(ELISA)などの化学的アッセイ法;マイクロRNA含量およびsiRNA含量を決定するためのアッセイ;DNA/RNA含量を決定するためのアッセイ;脂質含量を決定するためのアッセイ;炭水化物含量を決定するためのアッセイ;代謝物含量を決定するためのアッセイ;タンパク質含量を決定するためのアッセイ;ならびに機能的細胞アッセイ(例えば、アポトーシスアッセイ、細胞泳動アッセイ、細胞増殖アッセイ、細胞分化アッセイ等)などが含まれる。
【0090】
さらに別の実施形態では、本明細書で記載される方法を、フローサイトメトリーとさらに組み合わせ、例えば、選択されたアリコート中に存在する希少粒子をさらに区分または単離することができる。一実施形態では、本明細書で記載される方法に用いられるeDARデバイスの流路を、フローサイトメーターと流体連絡させることができる。ある実施形態では、eDARとフローサイトメトリーとを組み合わせることにより、選択されたアリコートをさらに検討するか、または直列的に分取し、希少粒子または希少細胞の集団をさらに濃縮することができる。本明細書で記載される方法のある実施形態では、この構成により、上流において希少粒子または希少細胞を大まかに分取し、希少粒子または希少細胞を含有するアリコートだけを、フローサイトメトリーなど、下流の過程へと方向づけることが可能となり、これは、時間集約的、費用集約的、および/または労働集約的である。
【0091】
ある実施形態では、本明細書で記載されるeDAR装置を用いて、本明細書で記載される方法を実施することができる。
【0092】
1.有利な特色
上述の通り、一つには、個々の細胞または粒子ではなく、全アリコートの集団検出および集団選別のために、eDAR法は、現在用いられている従来のフローサイトメトリー法よりはるかに迅速かつ廉価である。eDAR法の改良には、複数の特色が寄与している。
【0093】
例えば、本明細書で記載される方法の一実施形態では、アリコートが、1つを超える粒子、細胞、または蛍光実体を含む。この点で、単一の細胞もしくは粒子、または細胞もしくは粒子の二次元シートではなく、複数の細胞または粒子を含有する別々の容量を同時に探査することができる。
【0094】
本明細書で記載される方法の関連する実施形態では、流体のうちの粒子または細胞を、検出スポットまたは検出容量へと直列的に(すなわち、重複して存在させることなく、順々に)導入する必要がない。関連する実施形態では、粒子を単一の列または単一のシートの形で、検出スポットまたは検出容量へと導入する必要がない。したがって、本明細書で記載される方法の一実施形態では、単一のアリコート中における複数の生体粒子に、流路の断面または断面容量、例えば、探査容量および/または検出容量を、同時に流過させることができる。
【0095】
本明細書で記載される方法の一実施形態では、生体粒子を単一の列に絞り込んで探査および/または検出するための、シース流、誘導緩衝液、または他の流体力学的もしくは幾何学的な絞込み機構を必要としない。
【0096】
本明細書で記載される方法の一実施形態では、個々の生体粒子を分取する代わりに、全アリコートの選別スキームまたは値割当てスキームを用いる。
【0097】
本明細書で記載される方法の一実施形態では、粒子集団または細胞集団が、例えば、より大量の流体試料の単一のアリコートとして、同時に検出される。関連する実施形態では、アリコートについてなされる判定が、該アリコート内に含有される粒子集団または細胞集団の全体に及ぶ。さらに別の関連する実施形態では、アリコート内において同時に検出される粒子集団または細胞集団が、粒子集団または細胞集団として維持される。
【0098】
2.アリコートの選別
本明細書で記載される方法の一実施形態では、アリコートに、アリコートが希少粒子を含有すれば第1の値、またはアリコートが希少粒子を含有しなければ第2の値を割り当てる。ある実施形態では、選別(すなわち、値の割当て)が二分法である。例えば、少なくとも1つの希少粒子を含有する各アリコートに値1を割り当てる一方で、希少粒子を含有しない各アリコートには値0を割り当てる。
【0099】
本明細書で記載される方法の別の実施形態では、アリコート中に存在する希少粒子の量により、アリコートに値を割り当てる。例えば、4個の希少粒子を含有するアリコートには、値4を割り当てる。代替的に、4個の粒子を含有するアリコートには、特定の希少粒子量の範囲、例えば、粒子0〜5個、1〜10個、4〜6個等に対応する値を割り当てることもできる。
【0100】
単一の流体試料中に複数種類の希少粒子が存在する、本明細書で記載される方法のさらに別の実施形態では、アリコート中における任意の希少粒子の本質により、該アリコートに値を割り当てる。例えば、流体試料が、2つの希少粒子であるAおよびBを含有する場合、AまたはBのいずれも含有しないアリコートには値0を割り当てることができ、Aだけを含有するアリコートには値1を割り当てることができ、Bだけを含有するアリコートには値2を割り当てることができ、AおよびBの両方を含有するアリコートには値3を割り当てることができる。したがって、本明細書で記載される方法の一実施形態では、単一の流体試料中に複数種類の希少粒子が存在する場合、選別(すなわち、値の割当て)は、二分法ではない。
【0101】
ある実施形態では、ヌル以外の割当て値が、希少粒子の本質または希少粒子の濃度に依存しうる。
【0102】
ある実施形態では、割当て値が同じである複数のアリコートを、併せてプールするかまたは併せて流す。
【0103】
本発明の方法の一実施形態では、アリコートを選別するか、またはこれに値を割り当てるには、能動的な判定が要請される。ある実施形態では、コンピュータ、コントローラー、集積回路を伴うチップ、プリント基板、電子素子、ソフトウェア、および/またはアルゴリズムを用いて、アリコートを選別するか、またはこれに値を割り当てる。
【0104】
3.アリコートの流れおよび流体の流動
本発明のある実施形態では、アリコートの流動または捕集を方向づけることが、該アリコートに割り当てられた値に基づく。例えば、流体試料中に単一種類の希少粒子が存在する実施形態では、ヌルの値または値「0」を割り当てられたアリコートを、第1の流路へと方向づける(流す)または排出口へと方向づけ、正の値または値「1」を割り当てられたアリコートを、第2の流路または捕集チャンバーへと方向づけることができる。
【0105】
流体試料中に複数種類の希少粒子が存在する、本発明の他の実施形態では、アリコート中に存在する希少粒子の具体的な組成に基づき、該アリコートを流すことができる。一実施形態では、希少粒子を含有しないアリコートを、第1の流路または排出口へと方向づけることができ、第1の種類の希少粒子を含有するアリコートを第2の流路または第1の捕集チャンバーへと方向づけることができ、第2の種類の希少粒子を含有するアリコートを第3の流路または第2の捕集チャンバーへと方向づけることができる。
【0106】
ある実施形態では、複数種類の希少粒子を含有するアリコートを、具体的な流路または捕集チャンバーへと方向づけることができる。代替的に、アリコートを混合チャンバーまたは希釈チャンバーへと方向づけ、その後、希少細胞が、異なるサブアリコートへと区分されるように、混合または希釈されたアリコートを、サブアリコートへとさらに区分することができる。次いで、希少細胞を互いから分離しうるように、サブアリコート中の希少細胞を再度検出することができる。
【0107】
本明細書で記載される方法の一実施形態では、外部場を用いることにより、または流動を撹乱させることにより、流すステップ(すなわち、アリコートの流動または捕集を方向づけるステップ)を実施することができる。
【0108】
本発明の一態様では、アリコートが選別されたら、外部場を用いて、アリコートの方向づけを変化させることができる。外部場には、電場、磁場、動電力、電気泳動力、誘電泳動力、流体力、重力、空気圧式力、または光学力が含まれる。代替的に、空気、不混和性有機液体、またはマイクロビーズなど、細胞懸濁液と混和しない物質を導入することにより、流動の撹乱を外部から導入することもできる。
【0109】
ある実施形態では、例えば、機械的原理(例えば、外部のシリンジ式ポンプ、空気式膜ポンプ、振動式膜ポンプ、真空デバイス、遠心力、および毛細管作用);電気的原理または磁気的原理(例えば、電気浸透圧流、動電式ポンプ、圧電/超音波式ポンプ、磁気流体プラグ、電気流体力学式ポンプ、および磁気流体力学式ポンプ);熱力学的原理(例えば、気泡発生/相変化誘導による容量拡張);表面湿潤原理(例えば、エレクトロウェッティング、化学的に、熱的に、ならびに放射線により誘導される表面張力勾配)などに基づいて作動する方法およびデバイスが含まれるがこれらに限定されない、流体力学的な流体圧を誘導する方法およびデバイスにより、流動を送達することができる。
【0110】
さらに他の実施形態では、自重送液、表面張力(毛細管作用など)、静電力(動電流)、遠心流(コンパクトディスク上に基質を配置し、回転させる)、磁気力(振動するイオンにより流動が引き起こされる)、磁気流体力学力および真空または圧力差により供給される流体駆動力を介して、流体を送達するかまたは流すことができる。
【0111】
ある実施形態では、流体力学的流体圧または流体駆動力を誘導する方法およびデバイスに関して列挙したデバイスなどの流体流制御デバイスを、本主題内容の流入ポートまたは流出ポートと連結することができる。一例では、注入および排出の一方または両方に複数のポートをもたらし、1以上のポートを、流体流制御デバイスに連結する。
【0112】
B.診断および予後診断の方法
一態様では、本発明が、流体試料、例えば、血液試料などの生物学的流体中に希少粒子の存在を伴う状態について、被験体に診断または予後診断を提供する方法を提供する。
【0113】
一実施形態では、方法が、(a)生物学的流体のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップと;(b)該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとを含む。
【0114】
別の実施形態では、方法が、(a)検出試薬を該検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、該被験体に由来する生物学的流体を、該検出試薬と接触させるステップと;(b)ステップ(a)で形成された複合体の存在または不在を、該生物学的流体のアリコートにおいて検出するステップと;(c)ステップ(a)で形成された複合体の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(d)該割り当てられた値に基づき、該被験体に診断または予後診断を提供するステップとを含む。
【0115】
別の実施形態では、該希少粒子の存在を検出する該ステップが、(i)外部の電磁放射線源により該アリコートを探査するサブステップと;(ii)該希少粒子の蛍光を検出するサブステップとを含む。
【0116】
100年を超える以前から、医師らには、細胞を血液中に流出させることにより癌が拡大することが知られてきた。血液が、これらの癌細胞を内臓から内臓へと移送し、癌が転移する。これらの遊離腫瘍細胞を、循環腫瘍細胞(CTC)と称する。一態様では、本発明が、末梢血から癌細胞をカウントおよび単離する正確な方法をもたらす。
【0117】
天文学的な数の赤血球および白血球もまた存在するため、血液中のCTCを正確に検出することは、極めて困難であることが分かっている。最大で50億個の赤血球と、500万個の白血球とが共存して、単一のCTCを覆い隠しているので、CTCを検出することの問題は、文字通り、干し草の中で1本の針を見つけ出すことの問題である。
【0118】
血液中における癌細胞の数を正確にカウントすることにより、本発明は、癌が拡大する過程についてのリアルタイムにおけるスナップショットをもたらす。CTC血液検査を、従来の予後診断ツール(例えば、リンパ節の状態、腫瘍サイズ、および腫瘍の形態学的特色)から最も顕著に差別化するものは、CTC血液検査を用いて、癌治療が有効であるかどうかについて、早期のフィードバックを提供しうるということである。6カ月にわたり化学療法を受けている患者は、3〜4週間ごとにCTCカウントを測定され;このカウントが依然として高値であれば、癌専門医は、現行の治療が有効でないとみなし、新規の薬物を処方することができる。患者の観点から述べると、CTC検査を受けることにより、(1)薬物1種類当たり、約3,000ドル/月〜10,000ドル/月の費用がかかる場合がある、有効でない化学療法を排除することにより、実質的な節約が得られ、(2)それが遅きに失する前に、有効な治療を見出す貴重な機会が与えられる。これらの理由だけでも、癌専門医が、日常的に高価な放射線画像走査(例えば、CTまたはMRI)を処方するのに十分な程度に重要である。しかし、一態様では、本発明が、放射線画像走査より安価で、安全で、より再現性が高い、迅速で廉価なCTC検査を提供し、かつ、放射線画像走査より正確ではないまでも、同程度に正確な予後診断情報を、これより6週間早く提供する。現在のところ、同様の利点をもたらすバイオマーカー検査はなされていない。
【0119】
癌細胞の検出に高感度であるため、本明細書で説明される方法は、それらの濃度が、競合する技法の検出下限に達する前に癌細胞を検出する可能性をもたらす。これは、本明細書で記載される方法が、競合する技法より早期に有意味な結果をもたらしうることを意味する。結果として、癌専門医は、例えば、本明細書で記載される方法の使用を、癌の症状をまだ呈していない一般公衆に定期的に処方することにより、本技法の使用を病期IVの転移性癌に限定することなく、その使用を早期診断(すなわち、病期III、病期II、病期I、または転移性癌、または前癌性状態の診断)へと拡張することができる。一般に、健康者は、血液中にCTCを有さず;本発明を用いて、癌が疑われない患者においてCTCがいくらかでも検出されれば、さらなる検査(例えば、CT、MRI)を処方して、腫瘍を位置特定し、状態を確認することができる。
【0120】
別の実施形態では、本発明を用いて単離された腫瘍細胞を、さらに部分集団解析(例えば、遺伝子型または表現型による)にかけ、標的化治療を進めることができる。例として述べると、単離された腫瘍細胞を、特定の薬物標的に結合する蛍光抗体と共にインキュベートして、薬物標的の存在または発現度を決定することができる。薬物標的の発現が確認されたら、癌専門医は、その発現を標的とするように特異的に開発された薬物からの選択を確信することができる。一例では、単離された腫瘍細胞を、Her2受容体に特異的に結合する蛍光抗体と共にインキュベートして、CTCを流出させる乳房腫瘍がHer2陽性であるかどうかを決定することができる。Herceptin(トラスツズマブ)は、HER2タンパク質過剰発現による機能を標的化および遮断するようにデザインされているので、単離された腫瘍細胞が、高度なHer2発現を呈する場合、癌専門医は、この薬物を処方することができる。BCR−ABLまたはPDGFR(薬物Gleevecにより標的とされる)、ERBB2(Herceptinにより標的とされる)、EFGR(Iressa、Tarcevaにより標的とされる)、RARアルファ(ATRAにより標的とされる)、エストロゲン受容体(Tamoxifenにより標的とされる)、アロマターゼ(Letrazoleにより標的とされる)、アンドロゲン受容体(Flutamide、Biclutamideにより標的とされる)、CD20(Rituximabにより標的とされる)、VEGF受容体(Avastinにより標的とされる)を含めた他の公知の薬物標的もまた同様に、適切な化学療法レジメンを処方する前に、単離された腫瘍細胞からスクリーニングすることができる。
【0121】
特定の実施形態では、希少粒子が、癌細胞または循環腫瘍細胞(CTC)である。他の実施形態では、希少細胞が、寄生虫細胞または寄生虫生物体、例えば、Giardia属種またはCryptosporidium属種、Plasmodium属種に感染した赤血球、HIVに感染したリンパ球または白血球、母体血液中における胎児細胞、幹細胞、プリオン感染細胞、CD4+ T細胞などでありうる。
【0122】
一実施形態では、マラリアを診断する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、Plasmodium属種に感染した赤血球を検出するステップを含む方法が提供される。
【0123】
別の実施形態では、HIV感染を診断する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、HIVウイルスに感染したリンパ球または白血球を検出するステップを含む方法が提供される。
【0124】
さらに別の実施形態では、プリオンに関連する疾患を診断する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、ヒトまたは他の動物(例えば、ウシ)に由来する生物学的流体中においてプリオンを検出するステップを含む方法が提供される。一実施形態では、プリオンに関連する疾患は、狂牛病である。
【0125】
1.癌の診断
具体的な一実施形態では、方法が、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、被験体に由来する血液試料において循環腫瘍細胞を検出するステップを含む。ある実施形態では、被験体が、病期I、病期II、病期III、または病期IVの癌を有すると既に診断されている患者でありうる。癌を有すると既に診断されている患者に由来する血液試料においてCTCが検出されるある実施形態では、この患者が、転移性癌を有するとさらに診断される可能性がある。
【0126】
一実施形態では、充実性腫瘍を有すると既に診断されている被験体において、転移性癌を診断する方法であって、(a)該被験体に由来する血液試料のアリコートにおいてCTCの存在または不在を検出するステップと;(b)該CTCの存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとを含む方法が提供される。一実施形態では、血液試料中におけるCTCの不在が、転移性癌を有さない被験体と相関する。別の実施形態では、血液試料中における少なくとも1つのCTCの存在が、転移性癌を有する被験体と相関する。さらに別の実施形態では、血液中における少なくとも基準数のCTCの存在が、転移性癌を有する被験体と相関する。一部の実施形態では、方法が、(d)血液試料においてCTCが検出されなければ、被験体が転移性癌を有さないと診断するか、または血液試料において少なくとも1つのCTCが検出されれば、被験体が転移性癌を有すると診断するステップをさらに含みうる。
【0127】
関連する実施形態では、癌を有すると診断された被験体をモニタリングする方法であって、本明細書で記載されるeDAR法を用いて、被験体に由来する血液試料のアリコートにおいてCTCの存在または不在を検出するステップを含む方法が提供される。ある実施形態では、転移性癌への癌の進行について、例えば、1年に少なくとも1回、1年に少なくとも2回、または1年に少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回以上の定期的な間隔で、患者をモニタリングすることができる。一部の実施形態では、1カ月に約1回、または1カ月に少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上にわたり、被験体をモニタリングすることができる。一実施形態では、血液試料中におけるCTCの不在が、転移性癌を有さない被験体と相関する。別の実施形態では、血液試料中における少なくとも1つのCTCの存在が、転移性癌を有する被験体と相関する。さらに別の実施形態では、血液中における少なくとも基準数のCTCの存在が、転移性癌を有する被験体と相関する。一部の実施形態では、方法が、(d)血液試料においてCTCが検出されなければ、転移性癌を有さないものとして被験体を診断するか、または血液試料において少なくとも1つのCTCが検出されれば、転移性癌を有するものとして被験体を診断するステップをさらに含みうる。
【0128】
血液試料においてCTCが検出される実施形態では、方法が、CTCを含有するものとして同定される1以上のアリコートをさらなる解析にかけ、1以上のCTC細胞の1以上の特徴を同定するステップをさらに含みうる。例えば、CTCを含有するアリコートまたはアリコートのプールを、1以上の癌特異的表面抗原に特異的な、1以上の検出試薬と接触させることができる。CTCの表面上に、どの癌特異的抗原が存在するかを決定することにより、発現した表面抗原を標的とするように治療をデザインすることができる。それについてアッセイしうる癌特異的表面抗原の非限定的な例には、BCR−ABLまたはPDGFR(薬物Gleevecにより標的とされる)、ERBB2(Herceptinにより標的とされる)、EFGR(Iressa、Tarcevaにより標的とされる)、RARアルファ(ATRAにより標的とされる)、エストロゲン受容体(Tamoxifenにより標的とされる)、アロマターゼ(Letrazoleにより標的とされる)、アンドロゲン受容体(Flutamide、Biclutamideにより標的とされる)、CD20(Rituximabにより標的とされる)、VEGF受容体(Avastinにより標的とされる)などが含まれるがこれらに限定されない。したがって、ある実施形態では、方法が、CTC上において存在する特異的な表面抗原の検出に基づき、標的化療法を被験体に割り当てるステップをさらに含みうる。
【0129】
ある実施形態では、本明細書で提供されるeDAR法を用いて、例えば、識別が可能となる形で標識された複数の検出試薬を、CTCの表面上において存在する癌特異的抗原を伴う複合体へと転換するのに適する条件下において、プールされたアリコートを、該検出試薬と接触させ、複数の検出デバイスを用いて該複合体を検出することにより、さらなる解析を実施することができる。
【0130】
他の実施形態では、最初のeDAR法を、従来のフローサイトメトリー法または免疫化学法(例えば、免疫ブロット法、ELISA法、xMAP多重アッセイ法等)と組み合わせることにより、さらなる解析を実施することができる。ある実施形態では、CTCを検出するのに用いられるeDARデバイスを、第2のデバイスまたは手段と流体連絡させて、さらなる解析を実施することができる。
【0131】
被験体が転移性癌を有すると診断する実施形態では、方法が、転移性癌のための治療を被験体に割り当てるステップをさらに含みうる。
【0132】
別の具体的な実施形態では、方法が、癌を有する被験体を診断する方法であって、該被験体から採取された血液試料においてCTCを検出するステップを含む方法が提供される。例えば、かつて癌を有すると診断されたことのない被験体に由来する血液試料においてCTCを検出するステップである。一部の実施形態では、被験体が、癌を有するかまたは発生させる危険性が高い可能性があり、例えば、被験体が、癌の家族歴を有するか、喫煙者であるか、または他の形で発癌物質(すなわち、アスベスト、ベンゼン、カドミウム、ラドン、放射線など)に曝露されている可能性がある。
【0133】
したがって、ある実施形態では、かつて癌を有すると診断されたことのない被験体をモニタリングする方法であって、(a)該被験体に由来する血液試料のアリコートにおいて、CTCの存在または不在を検出するステップと;(b)該CTCの存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップとを含む方法が提供される。一実施形態では、血液試料中におけるCTCの不在が、転移性癌を有さない被験体と相関する。別の実施形態では、血液試料中における少なくとも1つのCTCの存在が、癌を有する被験体と相関する。さらに別の実施形態では、血液中における少なくとも基準数のCTCの存在が、癌または転移性癌を有する被験体と相関する。一部の実施形態では、方法が、(d)血液試料においてCTCが検出されなければ、癌を有さないものとして被験体を診断するか、または血液試料において少なくとも1つのCTCが検出されれば、癌を有するものとして被験体を診断するステップをさらに含みうる。
【0134】
ある実施形態では、CTCの存在または不在を検出するステップを、上記で説明した通りに、例えば、(i)検出試薬を前記検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、被験体に由来する生物学的流体を、該検出試薬と接触させるステップ;および(ii)ステップ(i)で形成された複合体の存在または不在を、該生物学的流体のアリコートにおいて検出するステップにより、または(i)外部の電磁放射線源により該アリコートを探査するステップ;および(ii)該希少粒子の蛍光を検出するステップにより実施することができる。
【0135】
2.予後診断を提供する方法
一態様では、本発明が、生物学的流体中に希少粒子の存在を伴う疾患または状態について、予後診断を提供する方法を提供する。一実施形態では、方法が、(a)被験体に由来する生物学的試料のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップと;(b)該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップと;(d)該試料において希少粒子が検出されなければ予後良好の診断を下し、該試料において希少粒子が検出されれば予後不良の診断を提供するステップとを含む。
【0136】
他の実施形態では、アリコート中における希少粒子の量または内容に基づき、該アリコートに値を割り当てる。これらの実施形態のうちのあるものでは、試料中における希少粒子の量に基づき、予後良好または予後不良の診断を提供する。例えば、一実施形態では、試料中における希少粒子の量が所定の基準値未満であれば予後良好の診断を下し、試料中における希少粒子の量が基準値以上であれば予後不良の診断を提供する。
【0137】
ある実施形態では、所定の基準値が、具体的な療法が奏効する可能性、または全生存期間もしくは無病生存期間が、ある期間、例えば、少なくとも6カ月間、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20年間以上にわたる可能性と連関しうる。
【0138】
ある実施形態では、希少粒子の存在または不在を検出するステップを、上記で説明した通りに、例えば、(i)検出試薬を前記検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、被験体に由来する生物学的流体を、該検出試薬と接触させるステップ;および(ii)ステップ(i)で形成された複合体の存在または不在を、該生物学的流体のアリコートにおいて検出するステップにより、または(i)外部の電磁放射線源により該アリコートを探査するステップ;および(ii)該希少粒子の蛍光を検出するステップにより実施することができる。
【0139】
ある実施形態では、本明細書で記載される方法を用いて、希少粒子を伴う任意の疾患について予後診断を提供することができる。一実施形態では、マラリアについて予後診断を提供する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、個体に由来する血液試料においてPlasmodium属種に感染した赤血球の数を決定するステップと、該血液試料において検出される感染赤血球の総数が所定の基準値未満であれば予後良好の診断を提供するか、または該試料において検出される感染赤血球の総数が基準値以上であれば予後不良の診断を提供するステップとを含む方法が提供される。
【0140】
別の実施形態では、HIV感染について予後診断を提供する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、個体に由来する血液試料においてHIVウイルスに感染したリンパ球または白血球の数を決定するステップと、該血液試料において検出される感染細胞の総数が所定の基準値未満であれば予後良好の診断を提供するか、または該試料において検出される感染細胞の総数が基準値以上であれば予後不良の診断を提供するステップとを含む方法が提供される。
【0141】
さらに別の実施形態では、プリオンに関連する疾患について予後診断を提供する方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、被験体に由来する生物学的流体試料においてプリオンの数を決定するステップと、該試料において検出されるプリオンの総数が所定の基準値未満であれば予後良好の診断を提供するか、または該試料において検出されるプリオンの総数が基準値以上であれば予後不良の診断を提供するステップとを含む方法が提供される。
【0142】
ある実施形態では、所定の基準値が、特定の療法が奏効する可能性、または全生存期間もしくは無病生存期間が、ある期間、例えば、少なくとも6カ月間、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20年間以上にわたる可能性と連関しうる。
【0143】
特定の実施形態では、本発明が、充実性腫瘍を有すると診断された被験体について予後診断を提供する方法を提供する。一実施形態では、方法が、(a)該被験体に由来する血液試料のアリコートにおいてCTCの存在または不在を検出するステップと;(b)該CTCの存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップと;(d)CTCが検出されなければ予後良好の診断を下し、CTCが検出されれば予後不良の診断を提供するステップとを含む。
【0144】
別の実施形態では、転移性癌を有すると診断された被験体について予後診断を提供する方法であって、(a)該被験体に由来する血液試料のアリコートにおいてCTCの存在または不在を検出するステップと;(b)該アリコートにおいて検出されたCTCの数に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップと;(d)該血液試料において検出されるCTCの総数が所定の基準値未満であれば予後良好の診断を下し、該試料において検出されるCTCの総数が基準値以上であれば予後不良の診断を提供するステップとを含む方法が提供される。
【0145】
ある実施形態では、所定の基準値が、特定の療法が奏効する可能性、または全生存期間もしくは無病生存期間が、ある期間、例えば、少なくとも6カ月間、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20年間以上にわたる可能性と連関しうる。
【0146】
3.疾患の進行または治療の奏効についてのモニタリング
別の態様では、本発明が、疾患の進行または治療の奏効についてモニタリングする方法であって、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、流体試料において希少粒子を検出するステップを含む方法を提供する。
【0147】
一実施形態では、方法が、(a)初回に被験体から採取した第1の生物学的試料の複数のアリコートにおいて、希少粒子の存在または不在を検出するステップと;(b)該希少粒子の存在、不在、量、または内容に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該第1の試料に由来するすべてのアリコートについて、合計値を決定するステップと;(d)2回目に被験体から採取した第2の生物学的試料の複数のアリコートにおいて、希少粒子の存在または不在を検出するステップと;(e)該希少粒子の存在、不在、量、または内容に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(f)該第2の試料に由来するすべてのアリコートについて、合計値を決定するステップと;(g)該第1の試料に割り当てられた合計値を、該第2の試料に割り当てられた合計値と比較し、該第1の試料と比較して、該第2の試料に割り当てられた値が増大していれば、疾患の進行および/もしくは治療の奏効不良と相関し、かつ/または該第1の試料と比較して、該第2の試料に割り当てられた値が減少していれば、疾患の退縮および/もしくは治療の奏効と相関するステップとを含む。
【0148】
ある実施形態では、割り当てられた値に基づき、アリコートを具体的な流路またはチャンバーへとさらに方向づけ(流し)、捕集、さらなる濃縮、またはさらなる解析を行うことができる。
【0149】
ある実施形態では、疾患を診断するか、または治療レジメを開始した後に、定期的なベースで、疾患の進行または治療の奏効についてモニタリングする方法を用いることができる。例えば、1年に少なくとも1回、1年に少なくとも2回、または1年に少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回以上にわたり、被験体から試料を捕集することができる。一部の実施形態では、1カ月に約1回、または1カ月に少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上にわたり、被験体をモニタリングすることができる。
【0150】
疾患の進行または治療の奏効不良が見出されるある実施形態では、方法が、治療を割り当てるステップ、用量レジメを増大させるステップ、治療レジメを変更するステップなどをさらに含みうる。
【0151】
ある実施形態では、希少粒子を伴う疾患または状態が、癌、マラリア、HIV/エイズ、プリオン関連疾患などである。
C.水質をモニタリングする方法
別の態様では、本明細書で記載されるeDAR法および/またはeDAR装置を用いて、水試料において、1以上の希少粒子による汚染物質を検出することにより水質をモニタリングする方法を、本発明が提供する。
【0152】
一実施形態では、方法が、(a)水源から採取された試料のアリコートにおいて水汚染物質の存在または不在を検出するステップと;(b)該アリコート中における水汚染物質の存在、不在、量、または内容に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップであって、該方法において検出されるすべてのアリコートに割り当てられた合計値に基づき、該水源の水質を判定するステップとを含む。
【0153】
ある実施形態では、水源が、湖沼、貯水プール、河川、小河川、また他の天然の水体でありうる。これらの実施形態のうちのあるものでは、水を検査して、人間が生む活動または物質が水体に対して現在もしくは未来において及ぼす影響を判定もしくは予測するか、または該水体を用いて人口に飲用水を供給することの妥当性もしくは安全性を評価することができる。
【0154】
他の実施形態では、水源が、浄水場の貯水プールもしくは池、貯水池、貯水塔、または人口に飲用水を供給することを目的とする他の捕集された水体でありうる。これらの実施形態のうちのあるものでは、水を検査して、該水体を用いて人口に飲用水を供給することの妥当性または安全性を評価することができる。
【0155】
ある実施形態では、本明細書で記載される方法を用いて、例えば、浄水場または貯水塔もしくは貯水池において、人口に飲用水を供給するのに用いられる水源の水質を定期的にモニタリングすることができる。このような実施形態では、1年に少なくとも1回、1年に少なくとも2回、または1年に少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回以上にわたり、水源をモニタリングすることができる。一部の実施形態では、1カ月に約1回、または1カ月に少なくとも約2、3、4、5回以上にわたり、被験体をモニタリングすることができる。さらに他の実施形態では、1週間に少なくとも1回、もしくは1週間に少なくとも約2、3、4、5、6回以上、または少なくとも毎日、もしくは1日に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上にわたりに水を検査することができる。
【0156】
他の実施形態では、自然災害(例えば、ハリケーン、津波、または地震)、事故、またはテロ行為の後における水体を用いて人口に飲用水を供給することの妥当性または安全性を判定するのに、本明細書で記載される方法を用いることができる。
【0157】
水の安全性または水質を検査またはモニタリングする方法は、水汚染物質、例えば、Giardia属種、Cryptosporidium属種などの寄生虫、または少量でも存在すると公衆衛生に対して危険性を示す有機もしくは無機の他の水汚染物質である希少粒子の検出を含みうる。
【0158】
D.装置
一態様では、本発明が、生物学的流体中において希少粒子を検出するデバイスを提供する。
【0159】
一実施形態では、デバイスが、(a)少なくとも第1の流入路と;(b)少なくとも2つの流出路と;(c)生物学的流体のアリコートにおいて1以上の希少粒子を検出することが可能な少なくとも1つの検出器と;(d)該アリコートの流動を方向づける機械装置と;(e)該アリコート中における該希少粒子の存在、不在、内容、組成、または量に基づき、該アリコートに値を割り当てることが可能な選別デバイスであって、検出器、ならびに該アリコートの流動を方向づける機械装置と通信するコンピュータとを含む。
【0160】
一部の実施形態では、装置が、アリコートを探査するための線源をさらに含む。希少粒子または細胞が、化学発光または生物発光を内因的に呈する他の実施形態では、装置が、アリコートを探査するための線源を要求しない場合がある。
【0161】
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、希少細胞に対する不用意の損傷を最小化するデザインの特色を伴う、壁面により封入され、かつ/または基板上に微細加工された流路を含む。希少細胞に対する不用意な損傷を減少させることにより、患者に誤った診断または予後診断を下しうる偽陰性率が低下する。米国特許出願第2007/0037172号および同第2008/0248499号で説明される通り、流路は、わずかでもストレスまたは損傷を伴う生体細胞を除外するよう、流体力学的にデザインされた開口部を伴う流路をさらに含みうる。前述の特許出願において、一次元(「1−D」)開口部を伴う流路として言及されるこのような流路は、細胞除外過程において細胞が受ける流体力学的圧力を軽減し、したがって、細胞溶解の可能性を低下させる。1−D開口部を伴う流路を、米国特許第2008/0318324号において説明される「流出式濾過」構成に従ってアレイ型に戦略的に配置して、流動をさらに方向転換することもでき、区分することもでき、減衰させることもでき、分散させることもでき、その結果として、除外の瞬間において細胞が受ける衝撃力を軽減することができる。eDAR装置が、医療デバイスの製造を規制する法規に準拠するように、PCT/US2009/02426において説明される手順に従うUVキュアリング処理を用いて、医療デバイスグレードのポリマーである生体適合性の基質材料から、流路を封入する壁面を加工することができる。
【0162】
1.アリコートの流動を方向づける機械装置
ある実施形態では、流動を方向づける機械装置により、アリコートが希少粒子を含有すれば、該アリコートの流動を第1の流出路へと方向づけ、アリコートが希少粒子を含有しなければ、これを第2の流出路へと方向づける。
【0163】
別の実施形態では、流動を方向づける機械装置により、希少粒子を含有するアリコートの流動を、該希少粒子の本質、組成、または量に応じて、複数の流出路のうちの1つへと方向づける。
【0164】
ある実施形態では、アリコートの流動を方向づける機械装置が、電極、磁気エレメント、音響エレメント、電気作動型エレメント、電場、または磁場を含む。
【0165】
さらに他の実施形態では、アリコートの流動を方向づける機械装置が、1以上の電気作動型バルブまたは電気作動型ピストンを含み、該バルブまたはピストンが、第1の接合部で第1の流入路および2つの流出路と交わる、少なくとも第1の方向の流路における液体の流動を制御する。
【0166】
一実施形態では、ソレノイドピストンが、電気作動型ソレノイドバルブの部分構成要素である。別の実施形態では、ソレノイドピストンが、鋳造成形によりデバイス内に埋め込まれる。さらに別の実施形態では、埋め込まれたソレノイドピストンを、チューブを介して流体連絡するソレノイドバルブで置き換えることができる。
【0167】
具体的な一実施形態では、本明細書で記載される装置が、粒子、アリコート、または流体試料の流跡または流動を追跡および/または走査するための1以上の電極を含みうる。ある実施形態では、電極により、誘電泳動またはエレクトロウェッティングなどの現象に基づき、アリコートの分離を増強することができる。
【0168】
ある実施形態では、本発明の装置が、粒子、アリコート、または流体試料の流跡または流動を追跡および/または走査するための1以上の音響エレメントを含みうる。ある実施形態では、音響エレメントを用いて、音響エネルギー(すなわち、音響泳動、超音波、またはメガソニック波)により、選択粒子または選択細胞の流跡を操作し、圧締圧力波に対する細胞の反応に基づき、細胞の分離を改善することができる。
【0169】
別の実施形態では、本明細書で記載される装置が、磁気粒子に結合するか、またはこれが結合する希少粒子または希少細胞を分離するための磁気エレメントをさらに含みうる。ある実施形態では、磁気エレメントにより、粒子または細胞に結合したマイクロ磁気粒子またはナノ磁気粒子の磁気感受性に基づき、アリコート、粒子、または細胞の分離を増強することができる。
【0170】
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、流体圧力の変化、流速の変化、または電気浸透圧流の変化を用いて、選択粒子または選択細胞の流跡を操作することを含みうる。
【0171】
2.検出デバイス
ある実施形態では、検出器が、カメラ、電子増倍管、電荷結合素子(CCD)による画像センサー、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード(APD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、および相補性金属酸化物半導体(CMOS)による画像センサーからなる群から選択される。
【0172】
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、選択細胞の運動を追跡するか、またはアリコート中に存在する選択粒子もしくは選択細胞を数え上げる、光検出器、電子検出器、音響検出器、または磁気検出器を含みうる。
【0173】
一部の実施形態では、本明細書で記載される装置または方法により、蛍光(単色または多色)顕微鏡法による画像化を、明視野顕微鏡、落射蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、DIC(微分干渉顕微鏡)、暗視野顕微鏡、ホフマン顕微鏡、または位相差顕微鏡が含まれるがこれらに限定されない各種の構成に組み込むことができる。
【0174】
一部の実施形態では、本明細書で記載される装置が、複数の検出デバイス、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の検出デバイスを含みうる。本発明の方法、例えば、1つを超える希少粒子もしくは希少細胞が流体試料中に存在するか、1つを超える細胞マーカーを用いて異なる細胞種類を弁別するか、または複数の検出試薬が同時に検出される方法を実施するには、複数の検出デバイスが必要となる場合がある。
3.探査デバイス
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、アリコート中に存在する検出可能部分を探査するかまたは励起させるための線源をさらに含みうる。ある実施形態では、探査するための線源が、例えば、レーザー(固体レーザー、ダイオード励起レーザー、イオンレーザー、または色素レーザー)、発光ダイオード(LED)、ランプ、アーク放電、磁気パルス、または天然光源から選択される。
【0175】
一部の実施形態では、本明細書で記載される装置が、複数の探査デバイス、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の検出デバイスを含みうる。本発明の方法、例えば、1つを超える希少粒子もしくは希少細胞が流体試料中に存在するか、1つを超える細胞マーカーを用いて異なる細胞種類を弁別するか、または複数の検出試薬が同時に検出される方法を実施するには、複数の探査デバイスが必要となる場合がある。
【0176】
4.選別デバイス
ある実施形態では、コンピュータ、コントローラー、集積回路を伴うチップ、プリント基板、電子素子、ソフトウェア、アルゴリズム、またはこれらの組合せから選別デバイスを選択することができる。
【0177】
5.流路およびチャンバー
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、1以上の流入路(すなわち、アリコートを検出容量に取り込むための流路)、および1以上の流出路(すなわち、アリコートを検出容量から取り出すための流路)を含め、複数の流路を含みうる。一部の実施形態では、本明細書で記載される装置が、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100本以上の流入路と、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100本以上の流出路との組合せを含みうる。
【0178】
ある実施形態では、装置が、主要流路に連結されて、さらなる流体を注入し、局所的な速度を変化させる複数の流路を含みうる。
【0179】
一実施形態では、本明細書で記載される装置が、ポリマー材料(ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタンメタクリレート(PUMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン、ポリエステル(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、パリレン、ポリ塩化ビニル、フルオロエチルプロピレン、レキサン、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルカーボネート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリケトン、ポリフタルアミド、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、エポキシポリマー、耐熱プラスチック、フルオロポリマー、およびポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド)、無機材料(ガラス、石英、ケイ素、GaAs、窒化ケイ素)、融合シリカ、セラミック、ガラス(有機)、金属、および/または他の材料、ならびにこれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない材料から加工された壁面により封入された流路またはチャンバーを含みうる。
【0180】
ある実施形態では、壁面材料を、多孔性膜、毛、金属(例えば、ステンレス鋼またはMonel鋼)、ガラス、紙、または合成物質(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、パリレン、および各種のポリエステル)、焼結ステンレス鋼および他の金属による繊維織物または不織繊維(布またはメッシュなど)、ならびにアルミナ、シリカ、または炭素などの多孔性無機材料により加工することができる。
【0181】
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、化学的分子または生体分子により前処理された流路またはチャンバーを含みうる。例えば、流体試料中における粒子の会合を防止または軽減する抗凝固化合物、流体試料中における粒子、例えば希少粒子もしくは細胞に優先的に結合する化合物、または流体試料中における粒子の凝集または集合を防止または軽減する化合物により流路またはチャンバーを処理することができる。
【0182】
一実施形態では、抗凝固化合物、循環腫瘍細胞に優先的に結合する化合物、または細胞の粘着を防止する化合物により流路表面またはチャンバー表面を処理することができる。
【0183】
ある実施形態では、流路表面またはチャンバー表面を化学修飾して、選択細胞、選択粒子、または選択分子の保湿を増強することもでき、これらの吸着を助長することもできる。表面修飾のための化学物質には、トリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン、クロロジメチルオクチルシラン、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、またはγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methyacryloxypropyltrimethyoxy−silane)などのシラン;アクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリエチレングリコール(PEG)、エポキシポリ(ジメチルアクリルアミド)(EPDMA)、またはPEG−モノメトキシアクリレートなどのポリマー;Pluronic界面活性剤、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ベースの界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTAC)、セチルトリエチルアンモニウムブロミド(CTAB)、またはPolybrene(PB)などの界面活性剤;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、またはトリエタノールアミンなどのアミン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはTeflonを含有するフッ素含有化合物などのフッ素含有化合物が含まれうるがこれらに限定されない。
【0184】
6.バックグラウンドを軽減するための手段
ある実施形態では、本明細書で記載される装置が、過剰なバックグラウンドシグナルを軽減し、かつ/またはシグナル対ノイズ比を改善するための手段をさらに含みうる。過剰なバックグラウンドシグナルを軽減し、シグナル対ノイズ比を増大させることにより、希釈率の大きなアリコートに由来する微弱なシグナルであっても正確に検出しうるので、検出の感度が増強される。言い換えれば、シグナル対ノイズ比が向上するほど、走査しうるアリコートは大量となる。直接的な結果として、走査を必要とするアリコートがより少数(しかしより大量)となるので、これに対応して、流体のスループットが増大する。
【0185】
一実施形態では、バックグラウンドシグナルを軽減するための手段が、遮蔽を含む。遮蔽は、周期的な間隔を伴う場合であれ、これを伴わない場合であれ、任意の方向に配置された、任意の形態またはサイズの、任意の数の開口部からなりうる。例えば、図3は、検出容量と、検出可能な特徴により選択的に検出することを可能とする検出器との間に配置された一連の開口部(311)を含有する遮蔽(301)を例示する。
【0186】
ある実施形態では、遮蔽が、ある波長の光を選択的に透過させる光エレメント、例えば、低域フィルター、高域フィルター、もしくは帯域フィルター、または音響−光変調器、空間−光変調器、光チョッパー、加工型ホログラム、物理的開口部、またはガルバノスキャナーを含みうる。
【0187】
他の実施形態では、遮蔽が、磁場の透過を選択的に防止する磁気エレメントからなりうる。
【0188】
一部の実施形態では、シグナル対ノイズ比を同様に上昇させる他のデバイスを、遮蔽の代わりに、または遮蔽と共に用いることができる。例えば、ある実施形態では、ロックイン増幅器、走査検出器、変調型探査器もしくは変調型検出器、または周波数もしくは強度を変調させる任意の装置から選択されるデバイスを用いて、シグナル対ノイズ比を増大させることができる。
【0189】
さらに他の実施形態では、内部に直接組み込まれた遮蔽の空間修飾機能を伴う検出器を、本明細書で記載される装置と共に用いることができる。ある実施形態では、別個の遮蔽が存在しない。他の実施形態では、別個の遮蔽もまた存在する。遮蔽機能が組み込まれた検出器の非限定的な例には、個々の光ダイオードまたはカメラの選択ピクセルのシグナルが除去または保持されうるような光ダイオードアレイまたは空間的ピクセル化を伴うカメラが含まれる。
【0190】
7.さらなるエレメント
ある実施形態では、本発明で示される装置が、本明細書で記載されるeDAR法と組み合わせる形で、アッセイ、過程、または検査を実施するのに有用なさらなるエレメントをさらに含みうる。
【0191】
一実施形態では、本明細書で記載される装置が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)など、オンチップでの細胞アッセイを実施するための、1以上の耐熱エレメントをさらに含みうる。
【0192】
さらに他の実施形態では、本明細書で記載される装置が、例えば、電気泳動または電気クロマトグラフィーなど、オンチップでの化学アッセイを実施するための1以上の電極をさらに含みうる。
【0193】
別の実施形態では、本明細書で記載される装置が、フィルターエレメントをさらに含みうる。具体的な実施形態では、フィルターエレメントが、マイクロポスト、マイクロインパクター、マイクロシーブ、生体粒子より小さな開口部を伴う流路、生体粒子がそこに流入することは防止するが、流体にはそれを介して該生体粒子の周囲を流動し続けることを可能とするような開口部を伴う流路(「1−D流路」)、マイクロビーズ、多孔性膜、壁面からの突出部、接着性コーティング、毛、金属(例えば、ステンレス鋼またはMonel鋼)、ガラス、紙、もしくは合成物質(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、パリレン、およびポリエステル)、焼結ステンレス鋼もしくは他の金属による繊維織物もしくは不織繊維(布またはメッシュなど)、またはアルミナ、シリカ、もしくは炭素などの多孔性無機材料の形態でありうる。
【0194】
例えば、図16は、所望の生体粒子を保持しながら、流体部分の流過を選択的に可能とする、流出路(1621)などの流路に配置されうるフィルターエレメント(1622)を例示する。
【0195】
さらに別の実施形態では、本明細書で記載される装置を、従来のフローサイトメーターと組み合わせることができる。
【0196】
例えば、図16は、希少細胞1602を含有する別々のアリコート1661が、さらに検討されるかまたは直列的に(細胞1個ずつ)分取されるような、従来のフローサイトメーター(フィルターエレメント1622を伴う場合であれ、伴わない場合であれ)と流体連絡させうる流出路(1621)を例示する。
【実施例】
【0197】
IV.実施例
(A.実施例1)
流体中における希少粒子を検出または定量化するための、単一の流入ポートおよび流出ポートを伴うeDAR装置の例である。
【0198】
図4は、細胞懸濁液をアリコート分割するデバイス(411)、探査デバイス(421および422)、検出デバイスまたは画像化デバイス(431、432、および433)、ならびに選別デバイス(コンピュータであるが図示しない)からなるeDAR装置の例を示す。この具体例では、細胞懸濁液をアリコート分割するデバイス(411)が、壁面内に格納される流路(414)と、流体ポート(412および413)とからなりうる。レーザーを探査デバイスとして用いる。光ダイオード、光電子増倍管、またはカメラを伴う倒立顕微鏡を検出デバイスとして用いる。遮蔽(451)を、流路(414)と、検出デバイス(431、432、および433)との間の経路に配置する。コンピュータは、検出デバイスからシグナルを受容し、アルゴリズムによりアリコートを選別する。次いで、コンピュータは、選別の値(すなわち、流体試料中における希少粒子の存在、不在、量、内容、または組成)に基づき、アリコートを適正な流路へと方向づける。図4は、3つの検出デバイス(431、432、および433)および2つの探査デバイス(421および422)を例示するが、実際のeDARは、1つの検出デバイスおよび1つの探査デバイスだけからなる場合もあり、複数の検出デバイスおよび探査デバイスからなる場合もある。
【0199】
図4に例示される装置の一使用では、探査デバイス(421および422)が、倒立顕微鏡内へと方向づけられる、488nmの固体ダイオード励起レーザーと、633nmのHeNeレーザーとからなった。2つのレーザービームは、該顕微鏡の対物レンズに入射する前に、10対1のアスペクト比を有する、視準された楕円形のビームを形成するように、円筒形の光学素子を用いて成形された。半波長板および偏光ビームスプリッターの組合せを用いるならば、鏡により個別に光を誘導して、空間的に共局在化された励起領域を創出しながら、各ビームの強度を調整しうるであろう。生体粒子からの蛍光は、2つのダイクロイックミラーにより3つの波長帯へと分光された後、帯域フィルター内を透過し、3つの単一光子アバランシェダイオード(SPAD;431、432、および433)へと再集光される。第1のSPADは、波長が560〜610nmの範囲内にある蛍光を捕集し、第2のSPADは、645〜700nmの範囲内にある蛍光を捕集し、第3のSPADは、500〜540nmの範囲内にある蛍光を捕集した。SPADの出力は、カウンター/タイマーボードを伴うコンピュータへと方向づけ、複数のアルゴリズムにより解析した。
【0200】
(B.実施例2)
流体中における希少粒子を検出または定量化するための2つの流出ポートを伴うeDAR装置である。
【0201】
図5は、細胞懸濁液をアリコート分割するデバイス(510)、探査デバイス(521)、検出デバイスまたは画像化デバイス(531)、選別デバイス(コンピュータであるが図示しない)、および割り当てられた選別によりアリコートを方向づける装置からなるeDAR装置を例示する。この装置はまた、単一の流入ポート(511)、2つの流出ポート(512および513)、ならびに単一の地点で接合されて流体をアリコート分割する3つの流路(514)も包含する。レーザーを探査デバイス(521)として用い、光ダイオード、光電子増倍管、またはカメラを伴う倒立顕微鏡を検出デバイス(531)として用いる。遮蔽(551)を、流路(514)と、検出デバイス(531)との間に配置する。コンピュータは、検出デバイスからシグナルを受容し、アルゴリズムによりアリコートを選別する。次いで、デバイスは、割り当てられた選別に従い、電気的手段、磁気的手段、流体力学的手段、または空気的手段を用いて、アリコートを流出口512または流出口513へと方向づける。
【0202】
単一の探査デバイスおよび単一の検出デバイスを伴う、上記で説明したeDAR装置に加え、複数の探査デバイスおよび複数の検出デバイスを、本明細書で説明されるeDAR装置と共に用いることもできる。例えば、図6は、1つの探査デバイス(640)および3つの検出デバイス(650、651、および652)を伴うeDAR装置を例示する。
【0203】
(C.実施例3)
流体中における希少粒子を検出または定量化するための複数の流入ポートおよび/または流出ポートを伴うeDAR装置である。
【0204】
本発明の各種の態様では、eDAR装置が、複数の流入ポートおよび/または流出ポートからなる場合がある。例えば、図7は、5つのポート(711、712、713、714、および715)、ならびに単一の地点で接合される5つの流路716を伴う、懸濁液をアリコート分割するデバイス(710)を例示する。流入口として1以上のポートを用いることができ;流出口として1以上のポートを用いることができる。例えば、2つのポートを流入ポートとして用い、3つのポートを流出ポートとして用いるように装置を用いることもでき、1つのポートを流入ポートとして用い、4つのポートを流出ポートとして用いる等のように装置を用いることもできる。原理的に述べると、デバイス(710)は、任意の数の流入口および流出口、ならびに任意の数の流路を含有しうる。これらの流路は、1つを超える地点で接合することができ、該接合点の周囲に流入口または流出口を配置する必要はない。
【0205】
(D.実施例4)
eDARを用いた、乳癌患者の血液中における循環腫瘍細胞(CTC)の検出である。
【0206】
単回の穿刺により、病期IVの転移性乳癌患者に由来する新鮮な静脈穿刺血を3本の別個の試験管へと引き入れた。皮膚穿刺に由来する上皮細胞による汚染の可能性を回避するため、第1の血液部分(第1の試験管)を廃棄した。第2の部分を、安定化試薬を含有するVeridex製CellSave試験管内へと捕集し、Veridex製CellSearchシステムを用いて循環腫瘍細胞を検出した。第3の部分は、EDTA抗凝固剤を含有する捕集試験管へと捕集し、eDARを用いる別個の解析を行った。
【0207】
第3の部分は、酵素、固定化剤、透過性試薬、およびパンサイトケラチン、CD45、上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的とする蛍光抗体と共にインキュベートした。循環腫瘍細胞陽性の同定を、パンサイトケラチンおよびEpCAMを発現するが、CD45は発現しない細胞と定義する。CD45は、白血球共通抗原として一般に公知であり、白血球を表示する。3つの抗体すべてと結合する検体は、タンパク質凝集の結果であることが多い偽陽性とみなす。
【0208】
略述すると、7.6psiを供給して流動を駆動する圧縮空気源を用いて、5〜10mLの抗体標識した血液試料に、約10〜500μL/分の流速で、実施例1において説明したeDAR装置内を流動させた。eDAR装置は、連続流動(同時)モードで作動させた。これらの実験では、幅200μm×高さ50μmのマイクロ流路を用いた。標識抗体複合体を探査するために、488nmおよび633nmの線共焦点励起ビームを与え、これにより、厚さ約5〜10μmの光シートが照射された。したがって、線共焦点検出容量は、約200μm(幅)×50μm(高さ)×10μm(厚さ)の寸法を有し、約0、1nLの検出容量を与えた。3つのSPAD検出デバイスは、10,000Hzのサンプリング速度で作動させ、450〜610nm、645〜700nm、および500〜540nmで細胞から発生する蛍光シグナルを検出するように構成した。この速度では、各アリコートが、1nLから50nLのオーダーであり、5〜250個の白血球および5,000〜25,000個の赤血球を含有すると推定された。したがって、5〜10mLの試料の場合、500μL/分の流速で試料を処理するのに、10〜20分間を要した。このようにして処理された5mLの試料は、各々が50nLの容量を有する10,000個のアリコートへと等分される。
【0209】
したがって、2つの流出路を有するeDAR装置を用いる場合、フィルターを用いず、わずか10分間で、200個のCTCを含有する5mLの試料を10μLの容量へと縮減することができる。eDAR装置を、さらにフローサイトメーターと液体連絡させたならば、フローサイトメトリーを行う前に、eDARステップを実装することにより、5mLの試料中に存在する200個のCTC細胞すべてを、通常時間のわずか2%でカウントし、かつ/または個々に単離することができるであろう。
【0210】
図8は、Veridex製CellSearchシステム(下側パネル)およびeDAR(上側パネル)を用いて、病期IVの乳癌患者に由来する27例の血液試料(異なる検査日に複数の患者から採取した試料)によるCTCカウントを示す。容易に見て取れる通り、CellSearchシステムを用いたところ、大半の患者試料が、CTCカウント0を記録した。これに対し、同じ患者の血液採取物をeDARで解析したところ、その50%超が、200〜400CTCカウントを含有することが判明した。これは、市販のVeridex製CellSearchシステムを用いる場合と比較して、eDARを用いることによる感度が100倍を超えることを十分に裏付ける。eDARが高感度であることは、アリコートの選別および遮蔽の使用により、CTCとバックグラウンドとが正確に識別されることによる。
【0211】
これもまた図8に示す通り、eDARにより解析した患者試料の100%がCTCの存在を表示したのに対し、Veridex製CellSearchシステムにより解析した患者試料でなんらかのCTCの存在を表示したのは、そのうちの40%に過ぎなかった。これは、eDARにより与えられる偽陰性率が著明に低いことを裏付けた。CTC検査における偽陰性率が高ければ、転移についての予後診断が不正確となり、既存の治療レジメンが十分であるという偽の安全保障感を患者に抱かせる場合がある。
【0212】
このeDAR法により検出されたCTCの例示的画像を、図9に与える。略述すると、この図は、各種の照射下においてeDARを用いて患者血液から捕獲した癌細胞の光学的画像を示す(矢印によりCTCを示す)。図9Aは、赤血球中におけるCTCの明視野画像である。図9Bは、パンサイトケラチンの存在を示す蛍光画像である。図9Cは、CD45の不在を表示する蛍光画像であり、これにより、白血球をCTCとして偽同定する可能性がなくなる。
【0213】
(E.実施例5)
癌細胞集団中における癌幹細胞の検出である。
【0214】
eDARにより分離された癌細胞をさらに解析して、生物学的流体中における部分集団を識別することができる。特定のタンパク質を標的とするさらなる蛍光抗体で還流することにより、一部の癌細胞を、他の癌細胞から区別することができる。例えば、CD44タンパク質を発現するが、CD24タンパク質を発現しない癌細胞は、それらが転移の可能性の高さと連関するために、近年、癌幹細胞と呼ばれている。他のタンパク質は、各種の細胞形質を伴いうる。
【0215】
例えば、図10は、乳癌幹細胞の同定を裏付ける(矢印により示す)。略述すると、乳癌細胞(MCF−7)を、Alexa 488−抗CD44抗体(陽性)およびAlexa 647−抗CD24抗体(陰性)により標識した。図10Aは、Alexa 488−抗CD44抗体(緑色)を検出する蛍光画像(500〜540nm)であり;図10Bは、Alexa 647−抗CD24抗体(赤色)を検出する蛍光画像(645〜700nm)であり;図10Cは、明視野画像である。図10Dは、CD44+/CD24−を示す合成画像(矢印により、癌幹細胞を表示する)である。癌細胞のうち約25%が、CD44を発現するが、CD24を発現せず、これにより、癌幹細胞の基準を満たすことが判明した。このように、eDARを用いて、生物学的流体中における癌細胞の部分集団を区別することができる。
【0216】
(F.実施例6)
eDARによる、別々のアリコートを用いる検出である。
【0217】
本明細書で記載される方法の一実施例では、検出ステップの前に、不混和相により分離される別々の水性アリコートを用いることによりeDARを作動させ、生体粒子を封入することができる。図16は、このようにして作動するeDAR装置を例示する。例えば、所望されない細胞(1601)を含有する細胞懸濁液と、所望される希少細胞1602を含有する細胞懸濁液とを、不混和相(1642)により互いに分離される別々のアリコート(1631、1641、1651、1661)へと区分する。流路(1603)内を左から右へと流動するように、別々のアリコートを方向づける。アリコート1641が検出容量(1604;円筒形の輪郭)を横切ると、別々のアリコート(1641)内に封入された複数の細胞が同時に検出される。所望の細胞が検出されなければ、別々のアリコート(1641)をヌルと選別し、流路1611へと方向づける(例えば、アリコート1651を参照されたい)。所望される希少細胞がいくらかでも検出されれば、別々のアリコートを非ゼロと選別し、流路1621へと方向づける(例えば、アリコート1661を参照されたい)。
【0218】
一実施形態では、フィルターエレメント1622を流路1621内に配置して、所望の生体粒子を保持しながら、流体部分を選択的に流過させることができる。一実施形態では、eDAR装置を従来のフローサイトメーターと組み合わせることができる。例えば、図16では、希少細胞1602を含有する別々のアリコート1661を、さらに検討するかまたは直列的に(一度に細胞1個ずつ)分取するように、流路1621を、従来のフローサイトメーター(フィルターエレメント1622を伴うものであれ、伴わないものであれ)と流体連絡させることができる。
【0219】
不混和相(1642)は、図16に例示する通り、連続相(すなわち、別々のアリコートを完全に取り囲む)の場合もあり、分断相(すなわち、不混和相1642が、別々のアリコート間の空隙だけを占め、アリコートを完全には取り囲まない)の場合もある。
【0220】
(G.実施例7)
本発明の一態様を用いる一例として述べると、10mLの細胞懸濁液が含有する所望の希少細胞が、所望されない細胞100億個中にわずか9個である場合、その最も単純な形態によるeDARであれば、10のアリコート中に含有される所望の細胞に由来する特徴を検出することが要請されるであろう。所望の細胞は9個しか存在しないので、少なくとも1つのアリコートは所望の細胞を欠くであろうし、ヌルと選別され、即座に廃棄される可能性がある。廃棄された部分に含有される所望されない細胞は、個々にスクリーニングする必要がなくなるであろう。結果として、アリコートが10だけである場合、全容量のうち少なくとも1/10は即座に廃棄され、所望されない細胞のうちの1/10(廃棄された容量中に含有される)は、個々に検出する必要がなくなるであろう。全体的に述べると、所望されない細胞10億個は、1回の判定で集団として排除される。検体70,000個/秒の超高速で作動する最新式の細胞分取装置の場合なら、この1回の判定により、1,000,000,000/70,000=14,300秒間または4時間が結果として節約される。この結果、時間効率が著明に増大する。
【0221】
上記で提示した想定に従い、10mLの細胞懸濁液を各々100μLずつの100アリコートへと区分するとすれば、細胞懸濁液の容量全体で含有する所望の細胞が9個だけなので、少なくとも91の部分は、所望の細胞を含有しないことになるであろう。したがって、走査を100回実施し、判定を100回行うだけで、91アリコート×100μL=9.1mLを即座に排除することができる。廃棄された部分内に含有される細胞は91億個となるであろう、または所望されない細胞のうちの91%が、100回以内の判定で排除される。
【0222】
(H.実施例8)
図1は、同時モードで作動させながら、アリコートにおいて希少粒子の特徴を検出する、本発明の具体的な実施形態を例示する。略述すると、流路(103)内を左から右へと流動するように、所望されない細胞(101)を含有する細胞懸濁液と、所望される希少細胞(102)を含有する細胞懸濁液とを方向づける。所与の時点において、複数の細胞が、影を付けた円筒により囲まれる検出容量(104)を横切る可能性があり、これらを同時に検出することができる。所望の細胞が検出されなければ、検出容量と等量のアリコートをヌルと選別し、流路111へと方向づける。所望の細胞がいくらかでも検出されれば、アリコートを非ゼロと選別し、流路121へと方向づける。
【0223】
場合によって、フィルターエレメント(122)を、流路121内に配置して、所望の生体粒子を保持しながら、流体部分を選択的に流過させることができる。フィルターエレメントは、マイクロポスト、マイクロインパクター、マイクロシーブ、生体分子より小さな開口部を伴う流路、生体粒子がそこに流入することは防止するが、流体にはそれを介して該生体粒子の周囲を流動し続けることを可能とするような開口部を伴う流路(「1−D流路」)、マイクロビーズ、多孔性膜、壁面からの突出部、接着性コーティング、毛、金属(例えば、ステンレス鋼またはMonel鋼)、ガラス、紙、もしくは合成物質(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、パリレン、およびポリエステル)、焼結ステンレス鋼もしくは他の金属による繊維織物もしくは不織繊維(布またはメッシュなど)、またはアルミナ、シリカ、もしくは炭素などの多孔性無機材料の形態でありうる。
【0224】
(I.実施例9)
同時モードで作動するeDARの別の例では、方法が、さらに、過剰なバックグラウンドシグナルを軽減し、シグナル対ノイズ比を改善するように、アリコートを選択的に遮蔽することからなる場合がある。図2は、検出容量と、検出可能な特徴により選択的に検出することを可能とする検出器との間に配置された一連の開口部(212)を含有する遮蔽(211)の使用を例示する。遮蔽(211)を用いてもなお、複数の生体粒子を同時に検出することができる。過剰なバックグラウンドシグナルを軽減し、シグナル対ノイズ比を増大させることにより、希釈率の大きなアリコートに由来する微弱なシグナルであっても正確に検出しうるので、検出の感度が増強される。言い換えれば、シグナル対ノイズ比が向上するほど、走査しうるアリコートは大量となる。直接的な結果として、走査を必要とするアリコートがより少数(しかしより大量)となるので、これに対応して、流体のスループットが増大する。所望の生体粒子が検出されなければ、検出容量と等量のアリコートをヌルと選別し、流路221へと方向づける。所望の生体粒子がいくらかでも検出されれば、アリコートを非ゼロと選別し、流路222へと方向づける。
【0225】
(J.実施例10)
デバイス710(図7)の拡大例示である図11パネルAは、接合部1116で接合される5つの流路(1111、1112、1113、1114、および1115)を伴う、懸濁液をアリコート分割するためのデバイス1110を例示する。流路1111、1112、1113が流体を接合部1116へと移送したのに対し、流路1114および1115は、流体を接合部1116から移送した。ソレノイドピストン1120を流路1111の上部に配置し、ソレノイドピストン1121を流路1112の上部に配置した。ソレノイドピストン1120および1121は、ピストン1120および1121を、流路1111および1112内の流体から分離する、ポリジメチルシロキサン(PDMS)によるエラストマー膜上に押し下げられるように構成した。
【0226】
図11パネルAは、デバイス1110を作動させて、懸濁液をアリコート分割することを例示する。ソレノイドピストン1120を、流路1111の上部にあるPDMS膜上へと押し下げることにより、流路1111を閉鎖した。同時に、流体に流路1112内を接合部1116へと流過させるように、ソレノイドピストン1121を構成した。結果として、流入路1112内において希少細胞を含有する血液を、左側の流出路1114(パネルB:0ミリ秒を参照されたい)へと転導した。アリコート1130を、右側の流出路1115へと方向づけるには、ソレノイドピストン1120を流路1111の上部にあるPDMS膜から引き抜く一方で、ソレノイドピストン1121を、流路1112の上部にあるPDMS膜へと押し下げた。この結果、希少細胞を含有する血液のアリコート1130が、右側の流出路1115へと方向づけられた(パネルC:5ミリ秒;およびパネルD:10ミリ秒)。説明したソレノイドピストンを用いるアリコートの方向転換は、5ミリ秒の短時間しか要求しなかった。
【0227】
(K.実施例11)
図12パネルAは、接合部1240で接合される5つの流路(1211、1212、1213、1214、および1215)を伴う、懸濁液をアリコート分割するのに用いられるデバイス1210を例示する。流路1211、1212、1213が流体を接合部1240へと移送したのに対し、流路1214および1215は、流体を接合部1240から移送した。ソレノイドバルブ1220は、チューブ1221を介して、流路1211と流体連絡されたポート1216へと接続し、ソレノイドバルブ1222は、チューブ1223を介して、流路1212と流体連絡されたポート1217へと接続した。
【0228】
ソレノイドバルブ1220および1222は、電気シグナルまたはコンピュータシグナル(例えば、TTLシグナル)により閉鎖または開放するように作動させた。ソレノイドバルブ1222の開放を維持しながらソレノイドバルブ1220を閉鎖したところ、流入路1213内において希少細胞を含有する血液のアリコート1260が、左側の流出路1214へと転導された(パネルB:0ミリ秒を参照されたい)。ソレノイドバルブ1222の閉鎖を維持しながらソレノイドバルブ1220を開放したところ、流入路1213内において希少細胞を含有する血液のアリコート1260が、右側の流出路1215へと転導された(パネルC:2ミリ秒を参照されたい)。ソレノイドバルブ1220および1222の組合せを用いるアリコートの方向転換は、2ミリ秒の短時間で、アリコートを1つのチャネルから別のチャネルへと流すことができた。
【0229】
(L.実施例12)
eDARデバイスの能力を検査するため、以下の手順により、血液と癌細胞との混合物を調製した:1×10個/mLのMCF−7細胞を、20μLの蛍光EpCAM抗体で標識した。次いで、この細胞混合物を、Isoton血液希釈剤で1×10細胞/mLへと希釈した。次いで、10μLの希釈した細胞混合物を、2mLのヒト全血液に添加し、アリコート分割デバイス内を流過させた。別段に表示しない限り、アリコート分割デバイス内における流速は、30μL/分の名目速度であった。
【0230】
図13は、接合部1116(または1240)の上流および下流における異なる位置に配置される2つのアバランシェ光ダイオード(APD)から捕集された蛍光シグナルを示す。プロット1310が、検出容量1140(または1270)のアリコートにおいてEpCAM分子の存在を検出するように構成された第1のAPDからのシグナルトレース1311を示すのに対し、プロット1320は、流路1114(または1214)内におけるEpCAM分子の存在を検出するように構成された第2のAPDからのシグナルトレース1321を示す。シグナルピーク1312が、シグナルピーク1322と実質的に合致したことから、アリコートの流れが適正であり、その結果、希少細胞の回収率が高かったことが表示される。
【0231】
eDARデバイスの能力をさらに精査するため、ソレノイドバルブ(1220、1222)またはソレノイドピストン(1120、1121)が閉鎖または開放を維持する時間の長さ(「パルス長」)を調整しながら、適正な流路へと方向づけられた癌細胞の数をカウントし、次いで、これを捕集(「回収」)した。適正な流路に捕集された希少細胞の数を、検出容量1140または1270においてAPDにより検出された希少細胞の数で除することにより、回収百分率を計算した。図14のプロット1410は、回収された癌細胞の百分率を、パルス長の関数として示す。トレース1420は、パルス幅が10ミリ秒以下の場合、100%の癌細胞が適正な流路に捕集されたことを示す。パルス幅が増大するにつれて、トレース1420が減少したことから、細胞が誤った流路へと失われたことが表示される。
【0232】
流入路1113(または1213)の流速を調整することにより、本発明者らはまた、回収率が最適化されうるであろうことも観察した。図15は、回収された希少細胞の百分率を流入流速の関数として表示するトレース1520を伴うプロット1510を示す。流速が30μL/分未満の場合、回収率は89〜100%であった。しかし、流速が増大するにつれ回収率が低下したことから、誤った流路への希少細胞の喪失が増大したことが表示される。
【0233】
本明細書で説明される実施例および実施形態は、例示だけを目的とするものであり、当業者には、例示の観点における各種の改変または変更が示唆され、これらは、本出願の精神および視野ならびに付属の特許請求の範囲の内に包含されるものとすることが理解される。本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、すべての目的で、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中における希少粒子を検出する方法であって、
(a)該流体試料のアリコートにおいて希少粒子の存在または不在を検出するステップと;
(b)該希少粒子の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;
(c)該割り当てられた値に基づき、該アリコートの流動または捕集を方向づけるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記希少粒子の存在を検出する前記ステップが、
(i)検出試薬を該検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、前記流体試料を、該検出試薬と接触させるサブステップと;
(ii)ステップ(i)で形成された複合体の存在または不在を、該流体試料のアリコートにおいて検出するサブステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希少粒子の存在を検出する前記ステップが、
(i)外部の電磁放射線源により前記アリコートを探査するサブステップと;
(ii)前記希少粒子の蛍光を検出するサブステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
希少粒子の存在を検出する前記ステップが、該希少粒子の生物発光または化学発光を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記希少粒子が、希少細胞である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アリコートが、1つを超える希少粒子を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流体試料が、生物学的流体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各々が異なる特異性を有する、識別が可能となる複数の検出試薬を、該複数の検出試薬および複数の希少粒子を含む複数の複合体へと転換するのに十分な条件下において、前記流体試料を、該複数の検出試薬と同時に接触させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の複合体を同時に検出する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記検出試薬が、異なる波長の蛍光により識別が可能となる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記アリコートが希少粒子を含有すれば第1の値を該アリコートにを割り当てるか、または該アリコートが希少粒子を含有しなければ第2の値を該アリコートに割り当てる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の値が、前記アリコート中における前記希少粒子の本質または該アリコート中における該希少粒子の濃度のいずれかに依存する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記割り当てられた値が同じ値を有する複数のアリコートを併せてプールする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記検出するステップを、生物学的試料が、流路を連続的に流動する間に実施する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記検出ステップの前に、前記流体試料の1つを超えるアリコートを物理的に分離する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記検出ステップの前に、前記アリコートを、別個の流路またはチャンバーへと区分する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
生物学的流体中に希少粒子の存在を伴う状態について、被験体に診断または予後診断を提供する方法であって、
(a)検出試薬を該検出試薬および希少粒子を含む複合体へと転換するのに適する条件下において、前記被験体に由来する生物学的流体を、該検出試薬と接触させるステップと;
(b)ステップ(a)で形成された複合体の存在または不在を、該生物学的流体のアリコートにおいて検出するステップと;
(c)ステップ(a)で形成された複合体の存在または不在に基づき、該アリコートに値を割り当てるステップと;
(d)該割り当てられた値に基づき、該被験体に診断または予後診断を提供するステップと
を含む方法。
【請求項18】
流体試料において希少粒子を検出するための装置であって、
(a)少なくとも第1の流入路と;
(b)少なくとも2つの流出路と;
(c)該流体試料のアリコートにおいて1以上の希少粒子を検出することが可能な少なくとも1つの検出器と;
(d)該アリコートの流動を方向づける機械装置と;
(e)該アリコートにおける該希少粒子の存在、不在、本質、組成、または量に基づき、該アリコートに値を割り当てることが可能なコンピュータであって、該検出器および該アリコートの流動を方向づける該機械装置と通信するコンピュータと
を含む装置。
【請求項19】
前記機械装置により、前記アリコートの流動を、該アリコートが希少粒子を含有すれば第1の流出路へと方向づけるか、または該アリコートが希少粒子を含有しなければ第2の流出路へと方向づける、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記機械装置により、希少粒子を含有するアリコートの流動を、前記希少粒子の本質、組成、または量に応じて、複数の流出路のうちの1つへと方向づける、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記アリコートの流動を方向づける前記機械装置が、電極、磁気エレメント、音響エレメント、または電気作動型エレメントを含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記アリコートの流動を方向づける前記機械装置が、1以上の電気作動型バルブまたは電気作動型ピストンを含み、前記バルブまたはピストンが、第1の接合部で前記第1の流入路および前記2つの流出路と交わる、少なくとも第1の方向の流路における液体の流動を制御する、請求項18から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記検出器が、カメラ、電子増倍管、電荷結合素子(CCD)による画像センサー、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード(APD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、および相補性金属酸化物半導体(CMOS)による画像センサーからなる群から選択される、請求項18から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記アリコートを探査するための電磁放射線源をさらに含む、請求項18から23のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A−10B】
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【図10C−10D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−523572(P2012−523572A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504934(P2012−504934)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030938
【国際公開番号】WO2010/120818
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】