説明

集塵ダクトおよびこれを備える移動設備

【課題】固定ダクトと移動ダクト相互の開口部を対向させて相互を連通状態とする連通位置と、ダクト相互を離隔した離隔位置とに位置させる集塵ダクトにおいて、連通位置では集塵に必要十分な連通状態を確保しつつ、移動ダクトを任意に移動しても容易に離隔位置に移動可能とする。
【解決手段】移動ダクト12の先端にはその軸方向に伸縮可能で無負荷時に伸長状態となるエキスパンション部20と、このエキスパンション部20先端のフランジ21とを設け、固定ダクト11にはその径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて前記フランジ21との対向距離が広がるように形成された斜面22aをもつ鍔部22を設け、移動ダクト12が離隔位置から連通位置に移動されるときに、フランジ21の縁部21eが固定ダクト11の鍔部22の斜面22aを乗り上げて前記軸方向への押圧力の作用でエキスパンション部20を短縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに固定ダクトに対し相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互を離隔した離隔位置とにそれぞれ位置させる集塵ダクトに係り、特に、この種の集塵ダクトのダクト相互の開口部の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の集塵ダクトとしては、例えばスラブ連続鋳造機における鋳型上部の浸漬ノズル近傍から排出される塵芥ガスを集塵する集塵ダクトを例示できる。
図10に一例を示すスラブ連続鋳造機100は、同図(a)に示すように、溶鋼Yを注入して凝固させて鋳片Sの外郭形状を形成するための鋳型5を所定の処理位置に有する。この鋳型5の下方には、サポートロール6、ガイドロール7および不図示のピンチロール等からなる複数対の鋳片支持ロールが順に配置されている。また、鋳型5の上方所定位置には、不図示の取鍋から供給される溶鋼Yを鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2がタンディッシュカー8上に設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼Yの流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には浸漬ノズル4が設置され、溶鋼Yが鋳型5内に注入されるようになっている。
【0003】
ここで、鋳型5上部の浸漬ノズル4近傍からは塵芥ガスが排出される。そのため、これを集塵するために、スラブ連続鋳造機には集塵装置130が設けられている。
この集塵装置130は、集塵ダクトとして、先端に開口部110aを有する固定ダクト110と、先端に開口部120aを有する移動ダクト120とを備えている。固定ダクト110の基端側は集塵機13に接続されている。一方、移動ダクト120は、上記タンディッシュカー8に付設され、タンディッシュカー8の移動とともに固定ダクト110に対して移動可能であり、溶鋼Yの注入位置では、ダクト110,120相互の開口部110a,120aを対向させてダクト110,120を連通状態とする連通位置となり、供給される溶鋼Yを取鍋から中継すべき中継位置においては、ダクト110,120相互が離隔された離隔位置に位置するようになっている。
【0004】
ここで、この例の集塵ダクト130のダクト110,120相互の開口部の接続構造は、同図(b)に要部を拡大図示するように、移動ダクト120の先端部には、固定ダクト110との対向方向に伸縮可能な蛇腹部121と、この蛇腹部121を伸縮させるように配置された駆動機構として一対のシリンダ122とが設けられている。これにより、この集塵ダクト130では、上記連通位置においては一対のシリンダ122を伸長させることでダクト110,120相互の開口部110a,120aを密着状態とし、中継位置に移動するときには、シリンダ122を短縮させることでダクト110,120相互の開口部110a,120aを離隔させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−157656号公報
【特許文献2】特開2010−281507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スラブ連続鋳造機においては、鋳型を経由した鋳片の外郭が破れて鋳片表面から湯が漏れ出すブレイクアウトが発生すると、設備を緊急に保全する必要があるため、タンディッシュカーを可及的速やかに退避させなければならない。
しかしながら、上述の集塵ダクト130は、固定ダクト110と移動ダクト120の連通状態が、ダクト110,120相互の開口部110a,120aの密着状態をシリンダ122で強固に保持する構造なので、まず、シリンダ122を短縮させて開口部110a,120aを相互に離隔した後でなければ、タンディッシュカー8の退避動作に移行することができないという問題がある。また、オペレータがタンディッシュカー8の退避動作を急ぐあまりにシリンダ122の短縮作動を行わないままタンディッシュカー8の退避動作に移行すれば、ダクト110,120相互の開口部110a,120aに無理な力が作用して設備が破損してしまうという問題がある。また、上記駆動機構は、一対のシリンダ122を用いているため、シリンダ相互が同調不良を起こすと、やはり誤動作を生じる原因ともなる。
【0007】
なお、この種の集塵ダクトの他の例として、上記のシリンダ等のような駆動機構によって固定ダクトと移動ダクトとを連通位置と離隔位置とにそれぞれ位置させる構造としては、特許文献1ないし2に記載の技術が開示されている。しかし、これら特許文献記載の技術においても、駆動機構によって連通位置と離隔位置とに位置させる点では上述したスラブ連続鋳造機での集塵ダクトの例と同様なので、この種の集塵ダクトでの上記課題を解決することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに固定ダクトに対し相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互を離隔した離隔位置とにそれぞれ位置させる集塵ダクトにおいて、連通位置では集塵に必要十分なダクトの連通状態を確保しつつ、移動ダクトを任意のタイミングで移動した場合であっても容易に離隔位置に位置させることができる集塵ダクトを提供するとともに、これを備える移動設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る集塵ダクトは、先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに前記固定ダクトの径方向に相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互の径方向に離隔した離隔位置とにそれぞれ位置される集塵ダクトであって、一方のダクトは、当該一方のダクト先端に設けられて当該一方のダクトの軸方向に伸縮可能であり無負荷時には伸長状態となる伸縮管路と、該伸縮管路先端に設けられるとともに当該一方のダクトの径方向に張り出したフランジとを有し、他方のダクトは、当該他方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて前記一方のダクトのフランジとの対向距離が広がるように形成された斜面をもつ鍔部を有し、前記移動ダクトが前記離隔位置から前記連通位置に移動されるときに、前記一方のダクトのフランジ縁部が前記他方のダクトの鍔部の斜面を乗り上げることにより、前記軸方向への押圧力の作用で前記伸縮管路を短縮させるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る集塵ダクトによれば、移動ダクトが離隔位置から連通位置に移動されるときには、一方のダクトのフランジ縁部が他方のダクトの鍔部の斜面を乗り上げることにより、軸方向への押圧力の作用で伸縮管路を短縮させるようになっているので、他方のダクトの鍔部の斜面がいわば「カム面」として機能し、「従動部」に相当する一方のダクトのフランジを軸方向に押圧して伸縮管路を短縮させる力を伝えることができる。そのため、特段の駆動機構を不要としつつも離隔位置から連通位置に一方のダクトを移動させることができる。ここで、ダクト相互の連通状態の保持は、伸縮管路が軸方向への押圧力に抗して伸長しようとする力によるが、集塵ダクトの連結は、ブロワ等による集塵機での吸気によりダクト内が負圧となるから、保持力を強固なものとしなくとも(仮に僅かに隙間があっても)塵芥ガスが漏れ出す懸念が少ない。よって、伸縮管路の伸長力で当接させる構成であっても集塵に必要十分なダクトの連通状態を確保することができる。
【0011】
そして、上記のような構成によれば、その逆となる、連通位置から離隔位置への移動についても特段の駆動機構を有しないから、一方のダクトの径方向への移動により、フランジ縁部がダクトの鍔部の斜面を滑り降り、これにより、伸縮管路に対する軸方向の押圧力も解放されて無負荷となるため自然に伸縮管路が伸長状態に戻る。よって、移動ダクトを任意のタイミングで移動した場合であっても容易に離隔位置に位置させることができる。
【0012】
ここで、本発明の一態様に係る集塵ダクトにおいて、前記一方のダクトが前記移動ダクトであり、前記他方のダクトが前記固定ダクトであれば、斜面をもつ鍔部が固定ダクト側になるため、集塵ダクトの移動方向に沿って並設された複数の処理位置があるような設備に適用する場合に好適である。この場合に、前記固定ダクトは、前記鍔部の斜面を前記移動方向の両側にそれぞれ有すれば、いずれの移動方向においても安定した作動を実現する上でより望ましい。また、本発明の一態様に係る集塵ダクトにおいて、前記フランジには、他方のダクト側を向く面に、前記開口部を囲繞するように突設された弾性部材が更に付設されていれば、鍔部の斜面との接触時の衝撃を緩和する上で好適である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の態様に係る集塵ダクトは、先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに前記固定ダクトの径方向に相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互の径方向に離隔した離隔位置とにそれぞれ位置される集塵ダクトであって、一方のダクトは、当該一方のダクト先端に設けられて当該一方のダクトの軸方向に伸縮可能であり無負荷時には伸長状態となる伸縮管路と、該伸縮管路先端に設けられるとともに当該一方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて他方のダクトの開口部の縁部との対向距離が広がるように形成された斜面をもつ第一の鍔部とを有し、他方のダクトは、当該他方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて前記一方のダクトの開口部の縁部との対向距離が広がるように形成された斜面をもつ第二の鍔部を有し、前記移動ダクトが前記離隔位置から前記連通位置に移動されるときに、ダクト相互の鍔部の斜面が互いを乗り上げることにより、前記軸方向への押圧力の作用で前記伸縮管路を短縮させるようになっていることを特徴とする。
【0014】
このような構成であっても、上記本発明の一態様に係る集塵ダクト同様の作用効果を奏する。加えて、この他の態様のような構成であれば、各ダクトそれぞれに斜面をもつ鍔部を設けているので、ダクト相互の鍔部の斜面が互いを乗り上げることにより、鍔部の斜面の接触時の衝撃を緩和する上で好適である。
さらに、本発明のいずれかの態様に係る集塵ダクトにおいて、前記伸縮管路は、前記離隔位置では他方のダクトの開口部縁部にオーバーラップする位置まで伸長しており、前記連通位置では他方のダクトの開口部縁部に密着する位置まで短縮されるものであれば、伸縮管路の伸長力で集塵に必要十分なダクトの連通状態を確保する構成とする上で好適である。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動設備は、集塵ダクトとして、上述した本発明のいずれかの態様に係る集塵ダクトを備えることを特徴とする。このような構成であれば、上述したいずれかの作用効果を奏する集塵ダクトが装備された移動設備となるため、連通位置では集塵に必要十分なダクトの連通状態を確保しつつ、移動ダクトを任意のタイミングで移動した場合であっても容易に離隔位置に位置させることができる。そのため、例えば移動設備がスラブ連続鋳造機であれば、ブレイクアウトが発生した場合であっても、タンディッシュカーを可及的速やかに退避させることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明の一態様に係る集塵ダクトおよびこれを備える移動設備によれば、ダクト相互の連通位置では集塵に必要十分なダクトの連通状態を確保しつつ、移動ダクトを任意のタイミングで移動した場合であっても容易に離隔位置に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る集塵ダクトを備える移動設備の一実施形態であるスラブ連続鋳造機の設備の平面配置を説明する模式図である。
【図2】本発明の一態様に係る集塵ダクトを備える移動設備の一実施形態であるスラブ連続鋳造機を説明する模式図(図1のC矢視図)である。
【図3】図1に示す集塵ダクトの要部(ダクト相互の開口部の接続構造)を説明する図(図1でのA部,図2でのB矢視図に対応する図)であり、同図(a)は離隔位置を示し、(b)は連通位置を示している。
【図4】ダクトの横断面形態の変形例および鍔部の斜面の形態の例を説明する斜視図であり、同図(a)はダクトが円筒状の例であり、(b)は矩形横断面のダクトの例である。
【図5】図1の集塵ダクトの変形例(第一変形例)を説明する図(図3に対応)であり、同図(a)は離隔位置を示し、(b)は連通位置を示している。
【図6】集塵ダクトを移動方向に沿って並設する、複数の処理位置があるスラブ連続鋳造機の設備の変形例を説明する平面配置の模式図を示しており、同図(a)は図1での要部を再掲して示し、(b)は変形例である。
【図7】図1の集塵ダクトの変形例(第二変形例)を説明する図(図3(a)に対応)であり、同図は離隔位置を示している。
【図8】図1の集塵ダクトの変形例(第三変形例)を説明する図(図3(a)に対応)であり、同図は離隔位置を示している。
【図9】図1の集塵ダクトの変形例(第四変形例)を説明する図(図3に対応)であり、同図(a)は離隔位置を示し、(b)は連通位置を示している。
【図10】従来の集塵ダクトを備えるスラブ連続鋳造機の一例を説明する模式図であり、同図(a)はその全体図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、このスラブ連続鋳造機1は、鍛造床の中央に、鋳造を行う所定の処理位置Pが設けられている。そして、この処理位置Pを挟んで、鍛造床上に二台のタンディッシュカー8が配置され、各タンディッシュカー8は、同図の左右方向に移動可能になっている。各タンディッシュカー8上には、タンディッシュ2が設置されている。
【0019】
図2に図1のC矢視図を示すように、このスラブ連続鋳造機1は、上記所定の処理位置Pにおいて、溶鋼Yを注入して凝固させて鋳片Sの外郭形状を形成するための鋳型5を有する。この鋳型5の下方には、サポートロール6、ガイドロール7および不図示のピンチロール等からなる複数対の鋳片支持ロールが配置されている。また、鋳型5の上方所定位置には、上記タンディッシュ2が、不図示の取鍋から供給される溶鋼Yを鋳型5に中継供給可能にタンディッシュカー8上に設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼Yの流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、さらに、このスライディングノズル3の下面には浸漬ノズル4が設置され、溶鋼Yが鋳型5内に注入されるようになっている。
【0020】
ここで、鋳型5上部の浸漬ノズル4近傍からは塵芥ガスが排出される。そのため、これを集塵するために、このスラブ連続鋳造機1には集塵装置10が設けられている。
詳しくは、この集塵装置10は、先端に開口部11aを有する固定ダクト11と、先端に開口部12aを有する移動ダクト12とを備えている。固定ダクト11の基端側は、集塵機13に接続されている。一方、移動ダクト12は、上記タンディッシュカー8に付設されており、タンディッシュカー8の移動とともに固定ダクト11の開口部11aに対してその径方向に相対移動可能であり、溶鋼Yを注入する処理位置Pでは、ダクト11,12相互の開口部11a,12aを対向させてダクト11,12を連通状態とする連通位置となり、供給される溶鋼Yを取鍋から中継すべき中継位置においては、ダクト11,12相互が離隔された離隔位置に位置するようになっている(図1を併せて参照)。なお、図1に示すように、この例では、各タンディッシュ2それぞれに対して、一組のダクト11,12相互の開口部11a,12aの接続構造を設けた例である。
【0021】
以下、この集塵ダクト10のダクト11,12相互の開口部11a,12aの接続構造について、図3を参照しつつ詳しく説明する。
図3(a)に示すように、一方の移動ダクト12は、伸縮管路としてエキスパンション部20を移動ダクト先端に有する。このエキスパンション部20は、移動ダクト12の軸方向に伸縮可能であり無負荷時には伸長状態となるものである。そして、このエキスパンション部20先端に移動ダクト12の径方向に張り出した円環状のフランジ21が設けられている。なお、伸長状態においては、移動ダクト12先端の面は、固定ダクト11先端の面に対して面一または面一となる位置よりもオーバーラップする位置まで伸長されている(同図の破線の位置を参照)。
【0022】
これに対し、他方の固定ダクト11は、固定ダクト11の先端に、鍔部22が設けられている。鍔部22は、移動ダクト12の移動方向に沿って固定ダクト11の径方向の左右に張り出されており、左右の各鍔部22は、縁部に向かうにつれて移動ダクト12のフランジ21との対向距離が広がるように形成された斜面22aをそれぞれ有している。
このような構成により、移動ダクト12が、図3(a)に示す離隔位置から図3(b)に示す連通位置に移動されるときに、移動ダクト12のフランジ21の縁部21eが固定ダクト11の鍔部22の斜面22aを乗り上げることにより、移動ダクト12の軸方向への押圧力Fの作用でエキスパンション部20を短縮させるようになっている。
【0023】
次に、このスラブ連続鋳造機1およびこれが備える集塵装置10の集塵ダクトの作用・効果について説明する。
スラブ連続鋳造機1においてブレイクアウトが発生すると、設備を緊急に保全する必要があるため、タンディッシュカー8を可及的速やかに処理位置Pから退避させなければならない。このとき、このスラブ連続鋳造機1の集塵装置10は、移動ダクト12が離隔位置(図3(a))から連通位置(図3(b))に移動されるときには、移動ダクト12のフランジ縁部21eが固定ダクト11の鍔部22の斜面22aを乗り上げることにより、軸方向への押圧力Fの作用で伸縮管路であるエキスパンション部20を短縮させるようになっているので、固定ダクト11の鍔部22の斜面22aがいわば「カム面」として機能し、「従動部」に相当する移動ダクト12のフランジ21を軸方向に押圧してエキスパンション部20を短縮させる力を伝えることができる。そのため、特段の駆動機構を不要としつつも離隔位置から連通位置に移動ダクト12を移動させることができる。
【0024】
ここで、ダクト11,12相互の連通状態の保持は、エキスパンション部20が軸方向への押圧力Fに抗して伸長しようとする力によるが、この集塵ダクト10の連結は、ブロワ等による集塵機での吸気によりダクト内が負圧となるから、保持力を強固なものとしなくとも(仮に僅かに隙間があっても)塵芥ガスが漏れ出す懸念が少ない。よって、エキスパンション部20の伸長力で当接させる構成であっても集塵に必要十分なダクト11,12の連通状態を確保することができる。
【0025】
そして、上記のような構成によれば、その逆となる、連通位置(図3(b))から離隔位置(図3(a))への移動についても特段の駆動機構を有しないから、移動ダクト12の径方向への移動により、フランジ縁部21eが固定ダクト11の鍔部22の斜面22aを滑り降り、これにより、エキスパンション部20に対する軸方向の押圧力Fも解放されて無負荷となるため自然にエキスパンション部20が伸長状態に戻る。よって、移動ダクト12を任意のタイミングで移動した場合であっても容易に離隔位置に位置させることができる。そのため、例えばブレイクアウトが発生した場合であっても、タンディッシュカー8を可及的速やかに退避させることができる。
【0026】
なお、本発明に係る集塵ダクトおよびこれを備える移動設備は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、移動ダクト12が、伸縮管路としてのエキスパンション部20と、その先端のフランジ21とを有し、固定ダクト11が、斜面22aをもつ鍔部22を有する例で説明したが、ダクト11,12相互の移動関係は相対的なものであるから、逆の構成、つまり、固定ダクト11が、伸縮管路としてのエキスパンション部およびフランジを有し、移動ダクト12が、斜面をもつ鍔部を有する構成としてもよい。但し、上記実施形態のように、斜面をもつ鍔部を固定ダクト側とすれば、集塵ダクトの移動方向に沿って並設された複数の処理位置Pがあるような設備に適用する場合に好適である。
【0027】
この場合に、固定ダクト11は、図4に斜視図を示すように、鍔部22の斜面22aを移動方向の両側にそれぞれ有すれば、いずれの移動方向においても安定した作動を実現する上でより望ましい。また、斜面22aとダクト11の開口部11aの面とが繋がる部分は、R形状(同図の符号R)とすることが安定した作動を実現する上で一層望ましい。なお、上記実施形態では、各ダクトの横断面の形状について特に言及しなかったが、ダクトの横断面の形状は、ガスを吸気可能なものであれば種々の形状を採用できることは当然である。例えば、図4(a)に示すように円筒形状としてよいし、同図(b)に示すように、矩形形状の断面を採用可能である。
【0028】
また、例えば上記実施形態では、移動ダクト12のフランジ縁部21eと固定ダクト11の鍔部22の斜面22aとが直に当接する例で説明したが、これに限らず、例えば図5に示す変形例のように、フランジ21に、他方の固定ダクト11側を向く面に、開口部12aを囲繞するように突設された弾性部材24を更に付設する構成とすれば、鍔部22の斜面22aとの接触時の衝撃を緩和する上で好適である。弾性部材24の厚さ(軸方向の長さ)を適宜設定すれば、接触時の衝撃を緩和しつつも、エキスパンション部20に対する軸方向の押圧力Fを上記実施形態同様に設定できる。なお、弾性部材24の材料としては、ゴムやシリコン素材を好適に採用することができる。
【0029】
また、例えば上記実施形態では、移動設備としてスラブ連続鋳造機を例に掲げつつ、図6(a)に再掲するように、各タンディッシュ2それぞれに対して、一組のダクト11,12相互の開口部11a,12aの接続構造を個別に設けた例で説明したが、これに限らず、例えば同図(b)に示すように、固定ダクト11を一箇所に統合するとともに、各タンディッシュ2に対応する移動ダクト12についても一箇所に統合する構成としてもよい。
【0030】
また、例えば上記実施形態では、移動ダクト12側にはフランジ21を設け、固定ダクト11側には所定の斜面22aをもつ鍔部22を設けた例で説明したが、図7に変形例を示すように、フランジ21に替えて、移動ダクト12側にも、上記実施形態で説明した所定の斜面22aをもつ鍔部22同様の、所定の斜面23aをもつ鍔部23を設ける構成としてもよい。このような構成であっても、上記実施形態同様の作用効果を奏することができる。加えて、このような構成であれば、斜面22a,23a相互による当接となるため、接触時の衝撃を緩和する上で好適であり、それ故、エキスパンション部20のオーバーラップ代を十分確保したい場合により好適である。例えば、上記実施形態の例でいえば、タンディッシュカー8の走行軌道の精度が低いような場合に採用すれば、停止位置のバラツキを吸収する上で好ましい構成となる。
【0031】
また、例えば上記実施形態では、固定ダクト11の鍔部22は、移動ダクト12の移動方向に沿って固定ダクト11の径方向の左右に張り出されており、左右の各鍔部22は、縁部に向かうにつれて移動ダクト12のフランジ21との対向距離が広がるように形成された斜面22aをそれぞれ有している例で説明したが、これに限らず、例えば移動ダクト12の移動方向が、設備の左右の一方側に限られる場合であれば、径方向のいずれか一方(移動方向に対応した側)に限って鍔部を形成してもよい。また、このように移動方向が一方に限定されている場合、図8に変形例を示すように、両ダクト11,12ともにフランジ22,21を設け、その面を傾けて構成することもできる。つまり、相互のフランジ当接面22a,21aを、移動方向の進入側および進入される側での対向する縁部が、軸方向で開口部11a,12aとは反対の側に向けてそれぞれ傾斜した構成とすることができる。
【0032】
また、例えば上記実施形態ないし変形例では、いわば「カム面」として機能する鍔部の斜面に対し、フランジ縁部や、鍔部の斜面、弾性部材等を当接させる例を掲げたが、これに限らず、例えば図9に示す変形例のように、移動ダクト12の先端部に支持腕25aを介して張り出す回転可能なローラ25を設ける構成としてもよい。そして、このローラ25を鍔部22の斜面22aに対して乗り上げさせることで、離隔位置(図9(a))と連通位置(図9(b))の相互の移動を行わせる構成としてもよい。このような構成であっても、鍔部の斜面との接触時の衝撃を緩和可能であり、移動をローラ25の回転を介して行うことができるため、円滑な作動をさせる上で好適である。
【0033】
また、例えば上記実施形態では、本発明の一態様に係る集塵ダクトをスラブ連続鋳造機の集塵装置に適用した例で説明したが、これに限定されず、本発明の集塵ダクトは、先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに前記固定ダクトの径方向に相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互の径方向に離隔した離隔位置とにそれぞれ位置される構造の集塵ダクトや、これを備える移動設備に適用することができる。例えば、その他の移動設備への適用例として、コークス炉の装炭車用集塵機の集塵ダクトにも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 スラブ連続鋳造機(移動設備)
2 タンディッシュ
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 サポートロール
7 ガイドロール
8 タンディッシュカー
10 集塵装置
11 固定ダクト
12 移動ダクト
13 集塵機
20 エキスパンション部(伸縮管路)
21 フランジ
22 鍔部
P 処理位置
Y 溶鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに前記固定ダクトの径方向に相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互の径方向に離隔した離隔位置とにそれぞれ位置される集塵ダクトであって、
一方のダクトは、当該一方のダクト先端に設けられて当該一方のダクトの軸方向に伸縮可能であり無負荷時には伸長状態となる伸縮管路と、該伸縮管路先端に設けられるとともに当該一方のダクトの径方向に張り出したフランジとを有し、他方のダクトは、当該他方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて前記一方のダクトのフランジとの対向距離が広がるように形成された斜面をもつ鍔部を有し、
前記移動ダクトが前記離隔位置から前記連通位置に移動されるときに、前記一方のダクトのフランジ縁部が前記他方のダクトの鍔部の斜面を乗り上げることにより、前記軸方向への押圧力の作用で前記伸縮管路を短縮させるようになっていることを特徴とする集塵ダクト。
【請求項2】
前記一方のダクトが前記移動ダクトであり、前記他方のダクトが前記固定ダクトであることを特徴とする請求項1に記載の集塵ダクト。
【請求項3】
前記固定ダクトは、前記鍔部の斜面を前記移動方向の両側にそれぞれ有することを特徴とする請求項2に記載の集塵ダクト。
【請求項4】
前記フランジには、他方のダクト側を向く面に、前記開口部を囲繞するように突設された弾性部材が更に付設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の集塵ダクト。
【請求項5】
先端に開口部を有する固定ダクトと、先端に開口部を有するとともに前記固定ダクトの径方向に相対移動可能に設けられた移動ダクトとを備え、ダクトの相対移動により、ダクト相互の開口部を対向させてダクトを連通状態とする連通位置と、ダクト相互の径方向に離隔した離隔位置とにそれぞれ位置される集塵ダクトであって、
一方のダクトは、当該一方のダクト先端に設けられて当該一方のダクトの軸方向に伸縮可能であり無負荷時には伸長状態となる伸縮管路と、該伸縮管路先端に設けられるとともに当該一方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて他方のダクトの開口部の縁部との対向距離が広がるように形成された斜面をもつ第一の鍔部とを有し、他方のダクトは、当該他方のダクトの径方向に張り出し且つ縁部に向かうにつれて前記一方のダクトの開口部の縁部との対向距離が広がるように形成された斜面をもつ第二の鍔部を有し、
前記移動ダクトが前記離隔位置から前記連通位置に移動されるときに、ダクト相互の鍔部の斜面が互いを乗り上げることにより、前記軸方向への押圧力の作用で前記伸縮管路を短縮させるようになっていることを特徴とする集塵ダクト。
【請求項6】
前記伸縮管路は、前記離隔位置では他方のダクトの開口部縁部にオーバーラップする位置まで伸長しており、前記連通位置では他方のダクトの開口部縁部に密着する位置まで短縮されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の集塵ダクト。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の集塵ダクトを備えることを特徴とする移動設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94806(P2013−94806A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238919(P2011−238919)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】