説明

集塵機

【課題】本体の運搬と移動の操作性の改善を図ることができる集塵機を提供すること。
【解決手段】モータと該モータにより回転駆動される集塵ファン及び前記モータの運転・停止を行うスイッチを収納したヘッド部2と、該ヘッド部2の下部に設けられたタンク3を備え、前記タンク3の下部に回転自在なキャスタ4,5を設けて成る集塵機1において、前記タンク3(又はヘッド部2)にスライドハンドル9を孔嵌合によって上下方向(又は斜め上下方向)に摺動可能に設けるとともに、該スライドハンドル9の下端に弾性体10を被着したことを特徴とする。例えば、タンク3の側部に複数の摺動案内部7,8を設け、該摺動案内部7,8に、パイプ材にて逆U字状に成形された前記スライドハンドル9を摺動可能に嵌挿させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場等への持ち込みと移動が可能な集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に集塵機は、モータによって回転駆動される集塵ファンによって空気を吸引し、吸引された空気に含まれる塵をフィルタで分離してタンク内に回収するものである。
【0003】
ところで、斯かる集塵機が使用される環境としては、家庭以外に建築現場やリフォーム現場等があり、建築現場等での電動工具による切断、切削、研削等の作業によって周囲に飛散した粉塵の掃除の用途に供される比較的大型の集塵機も知られている。この種の集塵機は、盗難等を防止するために作業終了後に毎日自動車で持ち帰るのが一般的であるが、場所によっては駐車場や空きスペースの問題により、現場の近くまで自動車の乗り入れができない場合も多い。
【0004】
従来の集塵機は、モータ及び集塵ファンが内蔵されたヘッド部の下方にタンクを設け、タンクの下面に回転可能に設けられた複数のキャスタによって床面上を移動することができる。ここで、ヘッド部は、任意の位置に設けられた起動・停止用スイッチを覆うヘッドカバーを有しており、このヘッドカバーの上面には凸形状の把手が形成されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−073687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、使用する場所まで集塵機を移動させるときは、ヘッドカバー上面の把手で本体を持ち上げて移動させる。或はヘッドカバー上面の把手を手で押し、キャスタを転がしながら本体を床面上で移動させる場合もあるが、この場合は集塵機の本体高さが低いために押しづらく疲労も大きい。
【0007】
ところで、建築現場等で使用される集塵機を自動車で運搬する場合、前述のように場所によっては、駐車場や空きスペース等の問題により、現場の近くまで自動車の乗り入れができない場合も多いため、可成り長い距離(例えば、300m程度)を把手で本体を持ち上げてこれを運ぶか、或は把手を手で押してキャスタを転がしながら本体を移動させなければならず、多大の労力を要し不便であった。
【0008】
又、集塵機を自動車(特に、トラックの荷台)に積み込んで運搬する場合には、タンクの下部に設けたキャスタが回転可能であるために本体が動いてしまい、本体をロープ等で固定する必要があり、その作業も面倒であった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、本体の運搬と移動の操作性の改善を図ることができる集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、モータと該モータにより回転駆動される集塵ファン及び前記モータの運転・停止を行うスイッチを収納したヘッド部と、該ヘッド部の下部に設けられたタンクを備え、前記タンクの下部に回転自在なキャスタを設けて成る集塵機において、前記タンク又はヘッド部にスライドハンドルを孔嵌合によって上下方向又は斜め上下方向に摺動可能に設けるとともに、該スライドハンドルの下端に弾性体を被着したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記タンクの側部に複数の摺動案内部を設け、該摺動案内部に、パイプ材にて逆U字状に成形された前記スライドハンドルを摺動可能に挿通させたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記スライドハンドルの摺動方向と直交するネジ孔に螺合するノブボルトを設け、該ノブボルトによって前記スライドハンドルの摺動をロックするようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記弾性体を前記スライドハンドルの下端に着脱可能に被着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び2記載の発明によれば、当該集塵機の移動に際しては、スライドハンドルを弾性体がタンク部の摺動案内部に突き当たるまで上方に引き上げ、該スライドハンドルを手で引いて本体を移動させることができる。このため、場所によって駐車場や空きスペースの問題により、現場の近くまで自動車の乗り入れができない場合であっても、可成りの距離(例えば、300m程度)離れた建築現場まで集塵機を作業性良く且つ大きな労力を要することなく簡単に移動させることができる。
【0015】
又、スライドハンドルを床面まで押し下げ、その下端に被着されたゴム等の弾性体を床面に押し付ければ、該弾性体がストッパとして機能し、これと床面との間に発生する大きな摩擦力によって集塵機の移動がロックされるため、例えば集塵機をトラックの荷台にそのまま乗せて運搬することができ、従来のように本体をロープで固定する等の面倒な作業を省略することができる。
【0016】
そして、スライドハンドルと弾性体を追加するだけで、構造単純且つ安価に上記効果を奏することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、スライドハンドルの摺動方向と直交するネジ孔に螺合するノブボルトによってスライドハンドルの摺動をロックすることができるため、スライドハンドルを作業者の好みに応じた任意の高さ位置で固定することができ、作業性が高められて集塵機を更に作業性良く容易に移動させることができる。又、スライドハンドルを床面まで押し下げ、その下端に被着された弾性体を所定量だけ変形させた状態でノブボルトによってスライドハンドルを固定すれば、弾性体の変形量を所定値に維持することができ、該弾性体と床面との間に所定の大きさの摩擦力を確保して集塵機の床面上での移動を一層確実にロックすることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、弾性体をスライドハンドルの下端に対して着脱可能としたため、例えば集塵機を使用しないためにこれを収納しておく場合等には、弾性体をスライドハンドルから取り外した後、スライドハンドルを本体のタンクから取り外すことができ、集塵機の収納スペースが小さくて済むために好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る集塵機のスライドハンドルを引き上げた状態を示す一部破断側面図、図2は同集塵機の一部破断背面図、図3は同集塵機の平面図、図4は同集塵機のスライドハンドルを押し下げた状態を示す一部破断側面図である。
【0021】
本発明に係る集塵機1は、ヘッド部2の下方にドラム状のタンク3を設け、該タンク3の下面に大小の計4つのキャスタ4,5を回転自在に軸支して構成され、従って、ヘッド部2とタンク3とで構成される本体はキャスタ4,5によって床面上を自由に移動することができる。尚、以後の説明においては、図1に示す集塵機1のヘッド部2の方向を上方、キャスタ4,5の方向を下方とする。
【0022】
ここで、前記ヘッド部2の内部には、駆動源としての不図示のモータと該モータによって回転駆動される不図示の集塵ファンが内蔵されるとともに、前記モータの運転・停止を行うスイッチ6(図3参照)が設けられている。
【0023】
又、前記タンク3は、内部に不図示のフィルタを備え、ヘッド部2に内蔵された前記集塵ファンによって吸い込まれた空気に含まれる塵をフィルタによって分離してこれを回収するためのものである。
【0024】
ところで、本実施の形態に係る集塵機1においては、ヘッド部2の背面(図1の右端面)には、左右一対のブロック状の摺動案内部7,8が上下2段に亘って計4つ設けられている。尚、本実施の形態では、摺動案内部7,8はタンク3と一体に形成されているが、これをタンク3と別体に構成し、タンク3に後付けするようにしても良い。
【0025】
上記摺動案内部7,8には円孔7a,8aがそれぞれ上下方向に貫設されており、各円孔7a,8aには、パイプ材にて正面視逆U字状に成形されたスライドハンドル9の左右の垂直部9aが上下摺動可能に挿通されている。そして、このスライドハンドル9の左右の垂直部9aの下段側の左右の摺動案内部8から下方へ突出する下端部には、該スライドハンドル9の外径よりも大きな外径を有する円柱状のゴム等の弾性体10が着脱可能に被着されている。
【0026】
以上のように構成された集塵機1において、ヘッド部2のスイッチ6をONにすると、ヘッド部2内に内蔵された不図示のモータによって集塵ファンが回転駆動され、タンク3の不図示の吸込口から空気が吸引され、この吸引された空気に含まれる塵がタンク3内の不図示のフィルタによって分離されてタンク3内に回収される。
【0027】
而して、建築現場内で集塵機1を移動させる場合には、図1〜図3に示すように、左右の弾性体10の端面が下段側の摺動案内部8の下面に当接するまでスライドハンドル9を上方に引き上げる。そして、集塵機1の本体のスライドハンドル9が設けられた背面側をキャスタ4を中心として傾け、その状態でスライドハンドル9の水平把手部9bを手で持って本体を引けば、本体はキャスタ4によって自由に移動することができる。
【0028】
従って、作業者は楽な姿勢で作業性良く、且つ、大きな労力を要することなく、集塵機1を所望の場所に容易に移動させることができる。又、場所によって駐車場や空きスペースの問題により、現場の近くまで自動車の乗り入れができない場合であっても、可成りの距離(例えば、300m程度)離れた建築現場まで集塵機1を作業性良く且つ大きな労力を要することなく移動させることができる。
【0029】
他方、集塵機1を不図示のトラックの荷台に乗せて建築現場まで運搬し、或は建築現場から持ち帰る場合は、トラックの荷台に乗せた集塵機1のスライドハンドル9を図4に示すように弾性体10が床面に接触するまで下方に押し下げる。すると、弾性体10がストッパとして機能し、これと床面との間に発生する大きな摩擦力によって集塵機1の移動がロックされるため、従来のように本体をロープ等で固定しなくても、又、トラックが多少揺れたりしても、集塵機1が荷台上を移動することがない。このため、集塵機1をトラックの荷台にそのまま乗せて簡単に運搬することができ、従来のように本体をロープで固定する等の面倒な作業を省略することができる。
【0030】
更に、弾性体10をスライドハンドル9の下端に対して着脱可能としたため、例えば集塵機1を使用しないためにこれを収納しておく場合等には、弾性体10をスライドハンドル9から取り外した後、スライドハンドル9を本体のタンク3から取り外すことができ、集塵機1の収納スペースが小さくて済むために好都合である。
【0031】
而して、本実施の形態に係る集塵機1においては、スライドハンドル9と弾性体10を追加するだけで、構造単純且つ安価に上記効果を奏することができる。
【0032】
ところで、図5に示すように、例えば摺動案内部7にスライドハンドル9の摺動方向と直交するネジ孔7bを形成し、このネジ孔7bにノブボルト11を螺合せしめ、該ノブボルト11を回してスライドハンドル9を摺動案内部7に固定子てその摺動をロックするようにしても良い。
【0033】
上記構成を採用すれば、スライドハンドル9を作業者の好みに応じた任意の高さ位置で固定することができ、操作性が高められて集塵機1を更に作業性良く容易に移動させることができる。
【0034】
又、スライドハンドル9を床面まで押し下げ、その下端に被着された弾性体10を所定量だけ変形させた状態でノブボルト11によってスライドハンドル9を固定すれば、弾性体10の変形量を所定値に維持することができ、該弾性体10と床面との間に所定の大きさの摩擦力を確保して集塵機1のトラックの床面上での移動を一層確実にロックすることができる。
【0035】
尚、本実施の形態では、スライドハンドル9を上下方向に摺動可能に設ける構成を採用したが、スライドハンドル9を斜め上下方向に摺動可能に設ける構成を採用しても良い。又、スライドハンドル9をタンク3に設けたが、スライドハンドル9をヘッド部2に設ける構成を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、建築現場等で使用され、トラックに乗せて運搬される比較的大型の集塵機に対して特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る集塵機のスライドハンドルを引き上げた状態を示す一部破断側面図である。
【図2】本発明に係る集塵機のスライドハンドルを引き上げた状態を示す一部破断背面図である。
【図3】本発明に係る集塵機の平面図である。
【図4】本発明に係る集塵機のスライドハンドルを押し下げた状態を示す一部破断側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る集塵機の一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 集塵機
2 ヘッド部
3 タンク
4,5 キャスタ
6 スイッチ
7,8 摺動案内部
7a,8a 円孔
7b ネジ孔
9 スライドハンドル
9a スライドハンドルの垂直部
9b スライドハンドルの水平把手部
10 弾性体
11 ノブボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと該モータにより回転駆動される集塵ファン及び前記モータの運転・停止を行うスイッチを収納したヘッド部と、該ヘッド部の下部に設けられたタンクを備え、前記タンクの下部に回転自在なキャスタを設けて成る集塵機において、
前記タンク又はヘッド部にスライドハンドルを孔嵌合によって上下方向又は斜め上下方向に摺動可能に設けるとともに、該スライドハンドルの下端に弾性体を被着したことを特徴とする集塵機。
【請求項2】
前記タンクの側部に複数の摺動案内部を設け、該摺動案内部に、パイプ材にて逆U字状に成形された前記スライドハンドルを摺動可能に挿通させたことを特徴とする請求項1記載の集塵機。
【請求項3】
前記スライドハンドルの摺動方向と直交するネジ孔に螺合するノブボルトを設け、該ノブボルトによって前記スライドハンドルの摺動をロックするようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の集塵機。
【請求項4】
前記弾性体を前記スライドハンドルの下端に着脱可能に被着したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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